JP6491740B2 - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents

金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属/樹脂複合構造体、金属部材および金属/樹脂複合構造体の製造方法に関する。
各種部品の軽量化の観点から、金属の代替品として樹脂が使用されている。しかし、全ての金属部品を樹脂で代替することは難しい場合も多い。そのような場合には、金属成形体と樹脂成形体を接合一体化することで新たな複合部品を製造することが考えられる。しかしながら、金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化できる技術は実用化されていない。
近年、金属成形体と樹脂成形体を接合一体化する技術として、金属部材の表面に微細な凹凸を形成させたものに、その金属部材と親和性を有する極性基を持つエンジニアリングプラスチックを接合させることが検討されている(例えば、特許文献1〜6等)。
特許文献1〜6には、例えば、金属部材をヒドラジン水溶液で浸漬処理することによって、その表面に凹部を形成した後、該処理面に熱可塑性樹脂を接合させる技術が開示されている。
特開2004−216425号公報 特開2009−6721号公報 国際公開第2003/064150号パンフレット 特開2010−064496号公報 特開2012−066383号公報 特開2005−119005号公報
特許文献1〜6に記載の金属部材の粗化処理技術では、粗化処理液として、毒性が強いヒドラジン水溶液を用いている。そのため、金属部材の粗化処理作業時の換気・防災対策の観点から、ヒドラジン水溶液と同等の粗化処理機能を有しながら、毒性がより弱い粗化処理液が求められていた。しかし、ヒドラジン水溶液に代わる安全な粗化処理液が無いのが実情であった。
また、特許文献1〜6に記載の金属部材の粗化処理技術では、粗化処理後の金属部材表面にヒドラジンが吸着して残存しており、その残存ヒドラジンが樹脂部材との強固な接合の要因になっているとされている(例えば、特許文献4の段落0004参照)。すなわち、特許文献1〜6に記載の金属部材の粗化処理技術では、金属部材と樹脂部材との接合工程においてもヒドラジンによる作業者への健康リスクが懸念される。
以上から、特許文献1〜6に記載の金属部材の粗化処理技術は製造時の安全性の点で改善の余地があった。
さらに特許文献1〜6に記載された粗化処理方法で得られる金属粗化面は、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂と接合し難いという問題点があった。この原因として本発明者らは、ヒドラジン水溶液で粗化処理された金属表面がスポンジ状の凹み構造を有しているためと推測している。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、製造時の安全性に優れ、かつ、金属部材とポリオレフィン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供するものである。
本発明者らは、製造時の安全性に優れ、かつ、金属部材とポリオレフィン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供するため鋭意検討した。その結果、三次元曲面を有する複数の突起物を表面に有する金属部材を用いることにより、製造時の安全性に優れ、かつ、金属部材と熱可塑性樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を得ることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示す金属/樹脂複合構造体、金属部材および金属/樹脂複合構造体の製造方法が提供される。
[1]
金属部材と、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡(SEM、30°傾斜)により観察したとき、三次元曲面を有する複数の突起物が観測される金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記三次元曲面を有する突起物と最近接する突起物との間隔周期が1nm以上500nm以下である金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記三次元曲面を有する突起物が、10000nm当たり1個以上40個以下観測される金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との上記接合部表面が、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)により粗化処理されている金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記[4]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)、アンモニウム塩(A2)およびアミン塩(A3)から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記[5]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記化合物(A)が分子内に上記酸素官能基を有するアミン(A1)を含み、
上記分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)が、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物および下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
Figure 0006491740
(上記式(1)中、Rは水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基である)
Figure 0006491740
(上記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、または1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基であり、R〜Rの少なくとも1つが、1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基である)
[7]
上記[6]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記モルホリン系化合物がN−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびN−n−プロピルモルホリンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
[8]
上記[6]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記アルカノールアミン系化合物がトリエタノールアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
[9]
上記[5]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記化合物(A)が上記アンモニウム塩(A2)を含み、
上記アンモニウム塩(A2)が、アンモニア、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
[10]
上記[4]乃至[9]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
少なくとも上記金属部材の上記接合部表面が、上記粗化処理水溶液(Z)による上記粗化処理の前に、酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液による化学的エッチング処理がなされている金属/樹脂複合構造体。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材はアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、およびスズから選択される一種または二種以上の金属材料により構成されたものである金属/樹脂複合構造体。
[13]
熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材との接合のために用いられる金属部材であって、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡(SEM、30°傾斜)により観察したとき、三次元曲面を有する複数の突起物が観測される金属部材。
[14]
金属部材と、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材と、が接合してなる金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面に、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)を接触させる工程と、
上記熱可塑性樹脂部材の少なくとも一部が上記金属部材の上記接合部表面に接するように、上記熱可塑性樹脂部材を成形し、上記金属部材と上記熱可塑性樹脂部材とを接合させる工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[15]
上記[14]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)、アンモニウム塩(A2)およびアミン塩(A3)から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[16]
上記[14]または[15]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[17]
上記[14]乃至[16]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記金属部材はアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、およびスズから選択される一種または二種以上の金属材料により構成されたものである金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[18]
上記[14]乃至[17]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との上記接合部表面に酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液を接触させる工程の後に、上記粗化処理水溶液(Z)を接触させる工程をおこなう金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[19]
上記[15]乃至[18]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)を含み、
上記分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)が、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物および下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
Figure 0006491740
(上記式(1)中、Rは水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基である)
Figure 0006491740
(上記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、または1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基であり、R〜Rの少なくとも1つが、1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基である)
[20]
上記[19]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記モルホリン系化合物がN−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびN−n−プロピルモルホリンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[21]
上記[19]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記アルカノールアミン系化合物がトリエタノールアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[22]
上記[15]乃至[18]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記化合物(A)がアンモニウム塩(A2)を含み、
上記アンモニウム塩(A2)が、アンモニア、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
本発明によれば、製造時の安全性に優れ、かつ、金属部材とポリオレフィン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供することができる。
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
本実施形態の金属/樹脂複合構造体の構造の一例を模式的に示した外観図である。 本実施形態の金属/樹脂複合構造体を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。 本実施形態に係る金属部材1の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 本実施形態に係る金属部材2の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 本実施形態に係る金属部材3−1の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 本実施形態に係る金属部材5の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字範囲を示す「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
[金属/樹脂複合構造体]
まず、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と、熱可塑性樹脂(P1)または熱可塑性樹脂(P1)を含む樹脂組成物(P2)により構成された熱可塑性樹脂部材105とが接合されており、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105とを接合することにより得られる。
また、金属部材103において、少なくとも熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104を走査型電子顕微鏡(SEM、30°傾斜)により観察したとき、丸みをおびた凸部、すなわち三次元曲面を有する突起物が林立状態で観測される。なお、三次元曲面とは具体的には、球状、なめらかな端部を持つ円柱あるいはイボ状、カリン糖状等の三次元曲面を保有する形状を指す。
また、このような金属部材103は特に限定されないが、例えば、少なくとも金属部材103の熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104を25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)により粗化処理することにより得ることができる。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、熱可塑性樹脂部材105を構成する熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)が、金属部材103の表面110に形成された、三次元曲面を有する突起物が林立している微細凹凸構造に進入して金属部材103と熱可塑性樹脂部材105が接合し、金属―樹脂界面を形成することにより得られる。
すなわち、金属部材103の表面110には、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合強度向上に適した微細凹凸構造が形成されているため、接着剤を使用せずに金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合性確保が可能となる。
具体的には、金属部材103の表面110の三次元曲面を有する突起物が林立している微細凹凸構造の中に熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)が進入することによって、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、通常では接合が困難な金属部材103と、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)により構成された熱可塑性樹脂部材105と、を強固に接合することが可能になったものと考えられる。
このようにして得られた金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105の界面への水分や湿気の浸入を防ぐこともできる。つまり、金属/樹脂複合構造体106の付着界面における気密性や水密性を向上させることもできる。
また、金属/樹脂複合構造体106は製造工程において、毒性が強いヒドラジンを使用しないため、製造時の安全性に優れている。
以上から、本実施形態によれば、製造時の安全性に優れ、かつ、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体106を提供することができる。
以下、金属/樹脂複合構造体106を構成する各部材について説明する。
<金属部材>
以下、本実施形態に係る金属部材103について説明する。
金属部材103において、少なくとも熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104には三次元曲面を有する突起物が林立状態で形成されている。
このような金属部材103を用いると、接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体106が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材103の接合部表面104が、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間のアンカー効果が効果的に発現できる構造になっているためと考えられる。
金属部材103を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛およびスズ等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6061、6063、7075等が好ましく用いられる。
金属部材103の形状は、熱可塑性樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、熱可塑性樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
金属部材103は、金属材料を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
金属部材103において、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合強度と金属部材103の機械的強度とのバランスを向上させる観点から、少なくとも熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104の顕微鏡観察において、丸みをおびた凸部、すなわち三次元曲面を有する突起物が林立状態で観測され、凸部と最近接する凸部との間隔周期が1nm以上500nm以下の微細凹凸構造が観測されることが好ましい。
この場合、上記間隔周期は、好ましくは5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上300nm以下である。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、上記微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部材105が十分に進入することができ、その結果、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合強度をより効果的に向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、得られる金属/樹脂複合構造体106の金属―樹脂界面に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/樹脂複合構造体106を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
ここで、上記微細凹凸構造の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真から求めることができる。具体的には金属部材103の接合部表面104を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とすることができる。
なお、通常、金属部材103の接合部表面104だけでなく、金属部材103の表面全体に対し、粗化処理が施されているため、金属部材103の接合部表面104と同一面で、接合部表面104以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
また、上記三次元曲面を有する突起物は特に限定されないが、例えば、金属部材103の少なくとも熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104において、10000nm当たり、好ましくは100nm四方当たり、好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは3個以上40個以下、さらに好ましくは5個以上40個以下観測される。
(金属部材表面の粗化処理方法)
次に、金属部材103の表面の粗化処理方法について説明する。
以下、本実施形態に係る金属部材表面の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材表面の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
(1)前処理工程
まず、後述する粗化処理水溶液(Z)による粗化処理の前に、金属部材103に対し、前処理をおこない、金属部材103の表面に粗い凹凸を形成することが好ましい。
このような前処理としては、例えば、ブラスト処理やローレット加工等の物理的処理;レーザースキャニング加工等のレーザー処理;侵食性水溶液または侵食性懸濁液による化学的エッチング処理;陽極酸化法による酸化処理等が挙げられる。これらの方法の中でも、侵食性水溶液として酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液を用いる化学的エッチング処理が好んで採用される。
酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液による化学的エッチング処理は、例えば、以下の手順でおこなうことができる。
まず、金属部材103を市販の金属部材用脱脂剤の水溶液に、例えば、30〜80℃で1〜10分間浸漬し、その後、金属部材103を水洗する。
つづいて、濃度が0.1〜5質量%の酸性水溶液に金属部材103を、例えば、30〜80℃で0.1〜10分間浸漬し、その後、金属部材103を水洗する。酸性水溶液を使用する目的は主に酸化被膜の除去である。この目的に合う酸性水溶液であれ特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、炭酸等が挙げられる。
次いで、濃度が0.1〜3質量%の塩基性水溶液に金属部材103を、例えば、30〜80℃で1〜10分間浸漬し、その後、金属部材103を水洗する。塩基性水溶液に使う塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類の水酸化物、これらが含まれた安価な材料であるソーダ灰(NaCO、無水炭酸ナトリウム)等が挙げられる。また、水酸化アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)類も使用できる。塩基性水溶液に浸漬することにより、金属部材103の表面は水素を放ちつつイオンになって溶解し、金属部材103の表面は微細なエッチング面になる。
次いで、濃度が0.1〜5質量%の酸性水溶液に金属部材103を、例えば、30〜80℃で0.1〜10分間浸漬し、その後、金属部材103を水洗する。酸性水溶液を使用する目的はスマット除去ならびに中和である。塩基が金属部材103表面に残存すると、本工程に続く粗化処理工程における処理液のpH調整が煩雑になる場合があるので中和が必要となる。また、金属部材103内に固溶していた金属が塩基性水溶液の前工程では完全溶解せずに表面近傍に水酸化物その他の組成物となって存在している場合、酸性水溶液に浸漬することでこれらを取り除くこともできる。この目的に合う酸性水溶液であれ特に限定されず、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素酸等が挙げられる。
(2)粗化処理工程
本実施形態においては、粗化処理は後述する粗化処理水溶液によって行われる。本実施形態における粗化処理水溶液とは、金属部材の浸漬を全く受けていないフレッシュな粗化処理水溶液(後述の説明ではバージン液と呼称する場合がある)のみならず、金属部材の浸漬処理を受けた後の水溶液(後述の説明では回収液と呼称する場合がある)をも指す用語として定義される。
粗化処理工程では、少なくとも金属部材103の熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104に、例えば、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)を接触させることにより、接合部表面104の粗化処理をおこなう。
本実施形態においては、粗化処理水溶液(Z)のpH値は、バージン液では高い値を示し、粗化処理を繰り返して金属部材の浸漬回数の多い回収液ほどpH値が漸減する傾向を示すが、バージン液、回収液を問わず、少なくともpH値が9.0以上11.0以下である場合にポリオレフィンも含めた熱可塑性樹脂と強固に接合する金属部材103を得ることができる。
水素イオン濃度指数(pH)は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合強度をより向上させる観点から、9.2以上10.9以下の範囲が好ましい。
また、金属部材103表面をより均一に粗化できる観点から、粗化処理水溶液(Z)中の分子内に窒素原子を有する化合物(A)の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上12質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上7質量%以下がさらに好ましく、1質量%以上6質量%以下がさらにより好ましい。
上記分子内に窒素原子を有する化合物(A)の含有量が上記下限値以上であれば、金属部材103の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記分子内に窒素原子を有する化合物(A)の含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
上記粗化処理水溶液(Z)を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。金属部材103表面をより均一に粗化できる観点から、処理温度は、粗化処理水溶液(Z)のpH値および粗化処理時間にもよるが、通常20〜80℃である。この際の処理時間は通常、1〜15分間、好ましくは2〜10分間程度である。
本実施形態においては、粗化処理水溶液(Z)のpHが低い、すなわち粗化処理水溶液(Z)中の上記分子内に窒素原子を有する化合物(A)の濃度が低い場合は、処理温度を高めるか処理時間を延ばす等の方法がとられ、逆に水溶液(Z)のpHが高い、すなわち化合物(A)の濃度が高い場合には処理温度を低める、処理時間を短くする等の方法が採用される。
上記粗化処理水溶液(Z)を用いた粗化処理によって、金属部材103の表面が微細凹凸構造に粗化される。
なお、本実施形態では、上記粗化処理水溶液(Z)を用いて金属部材103を粗化処理する際、金属部材103表面の全面を粗化処理してもよく、熱可塑性樹脂部材105が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
(3)後処理工程
本実施形態では、上記粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが、室温の水に浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
(分子内に窒素原子を有する化合物(A))
本実施形態において、金属部材103表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、分子内に窒素原子を有する化合物(A)が好ましい。分子内に窒素原子を有する化合物(A)で処理することにより、金属部材103の表面に、熱可塑性樹脂部材105との間の密着性向上に適した微細凹凸構造が形成され、そのアンカー効果により金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合強度が向上するものと考えられる。
以下、本実施形態で使用できる分子内に窒素原子を有する化合物(A)について説明する。
上記分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)としては、安全性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂部材105との接合強度により優れた接合部表面104を形成できる観点から、分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)、アンモニウム塩(A2)およびアミン塩(A3)から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。ヒドラジンを用いる場合では、作業者の安全衛生を確保するための設備が必要となり、また粗化処理後の金属表面の形状に三次元局面を有する突起物が生起しないため熱可塑性樹脂部材105との接合強度に劣る場合がある。
・酸素官能基を有するアミン(A1)
上記酸素官能基を有するアミン(A1)は、エーテル基や水酸基、エステル基、カルボキシル基等の酸素官能基を有するアミン(A1)であれば特に限定されないが、安全性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂部材105との接合強度により優れた接合部表面104を形成できる観点から、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物および下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物等から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。また、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になり、接合強度のバラツキが少ない金属/樹脂複合構造体106を得ることができる観点から、下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物が特に好ましい。
Figure 0006491740
(式(1)中、Rは水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基である)
Figure 0006491740
(式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、または1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基であり、R〜Rの少なくとも1つが、1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基である)
上記式(1)により示されるモルホリン系化合物としては、例えば、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−n−プロピルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、N−n−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリン等が挙げられる。これらの中でも、安全性および入手容易性により優れる観点から、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびN−n−プロピルモルホリンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。
これらの中でも、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になるとともに、安全性および入手容易性にも優れる観点から、トリエタノールアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
・アンモニウム塩(A2)
上記アンモニウム塩(A2)としては、例えば、アンモニア、重炭酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸−水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、酒石酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、ペンタン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、シュウ酸水素アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、メチル硫酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、安全性および入手容易性により優れる観点から、アンモニア、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。上記アンモニウム塩(A2)は、通常アンモニアを含み、アンモニウム塩(A2)とアンモニアの比率は、後述するように混合物の25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲になるように適宜決められる。
・アミン塩(A3)
上記アミン塩(A3)としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、アリルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、その他のアミン類等から選択される一種または二種以上の水溶性アミンの中和塩等が挙げられる。
水溶性アミンの中和塩としては、例えば、重炭酸アミン塩、四ホウ酸アミン塩、フッ化アミン塩、臭化アミン塩、ヨウ化アミン塩、塩化アミン塩、リン酸−水素二アミン塩、リン酸二水素アミン塩、硫酸水素アミン塩、酒石酸アミン塩、硫酸アミン塩、硝酸アミン塩、チオ硫酸アミン塩、チオシアン酸アミン塩、ギ酸アミン塩、乳酸アミン塩、酢酸アミン塩、プロピオン酸アミン塩、酪酸アミン塩、ペンタン酸アミン塩、クエン酸アミン塩、シュウ酸アミン塩、炭酸アミン塩、五ホウ酸アミン塩、亜硫酸アミン塩、安息香酸アミン塩、シュウ酸水素アミン塩、クエン酸水素アミン塩、メチル硫酸アミン塩、テトラフルオロホウ酸アミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、上記アミン塩(A3)としては、安全性および入手容易性により優れる観点から、塩化アミン塩を含むことが好ましい。上記のアミン塩(A3)は、通常、対応する裸のアミンを含み、アミン塩(A3)と裸のアミンの比率は、後述するように混合物の25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲になるように適宜決められる。
本実施形態の粗化処理水溶液(Z)は、上記の各成分をイオン交換水等に溶解させ、各成分の濃度や酸塩基を添加して、25℃における水素イオン濃度指数(pH)を9.0以上11.0以下の範囲に調整することにより容易に調製することができる。
<熱可塑性樹脂部材>
以下、本実施形態に係る熱可塑性樹脂部材105について説明する。
熱可塑性樹脂部材105は熱可塑性樹脂(P1)または熱可塑性樹脂(P1)を含む樹脂組成物(P2)により構成されている。樹脂組成物(P2)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(P1)と、必要に応じて充填材(B)と、含む。さらに、樹脂組成物(P2)は必要に応じてその他の配合剤を含む。
(熱可塑性樹脂(P1))
熱可塑性樹脂(P1)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂(P1)としては、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合強度向上効果がより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを重合して得られる重合体を特に限定なく使用することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン等が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜30、好ましくは炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。より具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
上記環状オレフィンとしては、炭素原子数3〜30の環状オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜20である。より具体的には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとして好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンであり、さらに好ましくはエチレンまたはプロピレンである。
上記ポリオレフィン系樹脂は、上述したオレフィンを一種単独で重合して得られたもの、または二種以上を組み合わせてランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合して得られたものであってもよい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状のものであっても、分岐構造を導入したものであってもよい。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、PA6、PA12等の開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66、PA46、PA610、PA612、PA11等の重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPA等の半芳香族ポリアミド;ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、アミド系エラストマー等が挙げられる。
(充填材(B))
樹脂組成物(P2)は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との線膨張係数差の調整や熱可塑性樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
充填材(B)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
なお、樹脂組成物(P2)が充填材(B)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物(P2)全体を100質量%としたとき、通常5質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
充填材(B)は、熱可塑性樹脂部材105の剛性を高める効果の他、熱可塑性樹脂部材105の線膨張係数を制御できる効果がある。特に、本実施形態の金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との複合体の場合は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると複合体に歪みが掛かりやすい。熱可塑性樹脂部材105が上記充填材(B)を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、上記充填材(B)の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
本実施形態において、充填材(B)は繊維状無機充填材であることが好ましく、ガラス繊維、炭素繊維であることがより好ましく、ガラス繊維であることが特に好ましい。
これにより、成形後の熱可塑性樹脂部材105の収縮を抑制することができるため、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との接合をより強固なものとすることができる。
本実施形態において、熱可塑性樹脂部材105中の繊維状無機充填材の含有量は、熱可塑性樹脂部材105の成形性を維持しつつ接合強度を向上させる観点から、熱可塑性樹脂部材105全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下、特に好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
(その他の配合剤)
樹脂組成物(P2)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。
上記配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
(樹脂組成物(P2)の製造方法)
樹脂組成物(P2)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記熱可塑性樹脂(P1)と、必要に応じて上記充填材(B)と、さらに必要に応じて上記その他の配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、樹脂組成物(P2)が得られる。
[金属/樹脂複合構造体の製造方法]
つづいて、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法について説明する。
金属/樹脂複合構造体106の製造方法は特に限定されないが、少なくとも以下の工程を含むことが好ましい。
(1)少なくとも金属部材103の熱可塑性樹脂部材105との接合部表面104に、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)を接触させる工程
(2)熱可塑性樹脂部材105の少なくとも一部が金属部材103の接合部表面104に接するように、熱可塑性樹脂部材105を成形し、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105とを接合させる工程
すなわち、上記粗化処理を行った金属部材103に対して、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を所望の熱可塑性樹脂部材105の形状になるように成形しながら接合させることにより得られる。上記(1)の工程については、金属部材103の粗化処理工程で述べたため、ここでは説明を省略する。
熱可塑性樹脂部材105の成形方法としては、射出成形、押出成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)、溶射成形等の樹脂成形方法を採用できる。
また、金属部材103に熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)皮膜をコーティングした金属部材−熱可塑性樹脂皮膜からなる複合体を製造する場合は、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を溶剤に溶解または分散させて樹脂ワニスを調製し、その樹脂ワニスを金属部材103に塗布するコーティング法や、その他の各種塗装方法を採用できる。その他の塗装方法としては、焼き付け塗装、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、紫外線硬化塗装等を例示できる。
これらの中でも、金属/樹脂複合構造体106の製造方法としては、射出成形法が好ましく、具体的には、金属部材103を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を金型に射出する射出成形法により製造することが好ましい。具体的には、以下の(i)〜(iii)の工程を含む方法が好ましい。
(i)熱可塑性樹脂(P1)を準備する工程、または樹脂組成物(P2)を製造する工程
(ii)金属部材103を射出成形用の金型内に設置する工程
(iii)熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を、金属部材103の少なくとも一部と接するように、上記金型内に射出成形し、熱可塑性樹脂部材105を形成する工程
以下、各工程について説明する。
(i)樹脂組成物(P2)を製造する工程については、上述の樹脂組成物(P2)の製造方法の通りである。
次いで、(ii)、(iii)の工程による射出成形方法について説明する。
まず、射出成形用の金型を用意し、その金型を開いてそのキャビティ部(空間部)に金属部材103を設置する。その後、金型を閉じ、樹脂組成物(P2)の少なくとも一部が金属部材103の微細凹凸構造を形成した面に接するように、上記金型内に熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を射出して固化する。その後、金型を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
また、上記(i)〜(iii)の工程による射出成形にあわせて、射出発泡成形や、金型を急速に加熱冷却する高速ヒートサイクル成形(RHCM、ヒート&クール成形)を併用してもよい。
射出発泡成形の方法として、化学発泡剤を樹脂に添加する方法や、射出成形機のシリンダー部に直接、窒素ガスや炭酸ガスを注入する方法、あるいは、窒素ガスや炭酸ガスを超臨界状態で射出成形機のシリンダー部に注入するMuCell射出発泡成形法があるが、いずれの方法でも樹脂部材が発泡体である金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。また、いずれの方法でも、金型の制御方法として、カウンタープレッシャーを使用したり、成形品の形状によってはコアバックを利用したりすることも可能である。
高速ヒートサイクル成形は、急速加熱冷却装置を金型に接続することにより、実施することができる。急速加熱冷却装置は、一般的に使用されている方式で構わない。加熱方法として、蒸気式、加圧熱水式、熱水式、熱油式、電気ヒータ式、電磁誘導過熱式のいずれか1方式またはそれらを複数組み合わせた方式でよい。
冷却方法としては、冷水式、冷油式のいずれか1方式またはそれらを組み合わせた方式でよい。高速ヒートサイクル成形法の条件としては、例えば、射出成形金型を100℃以上250℃以下の温度に加熱し、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)の射出が完了した後、上記射出成形金型を冷却することが望ましい。
金型を加熱する温度は、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)を構成する熱可塑性樹脂(P1)によって好ましい範囲が異なり、結晶性樹脂で融点が200℃未満の樹脂であれば、100℃以上150℃以下が好ましく、結晶性樹脂で融点が200℃以上の樹脂であれば、140℃以上250℃以下が望ましい。非晶性樹脂については、50℃以上250℃以下が望ましく、100℃以上180℃以下がより望ましい。
次に、金属部材103への塗膜の形成方法について説明する。
金属部材103への塗膜の形成方法としては、従来用いられている塗膜の形成方法を制限なく利用することができる。
例えば、エアスプレー、エアレススプレー等のスプレー塗装、ディップ塗装、刷毛塗り、ローラー塗り、コーター塗り等の方法によって、上記各種塗料を金属部材103の表面に塗布することで行うことができる。
[金属/樹脂複合構造体の用途]
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤ等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
また、金属部材103の高い熱伝導率と、熱可塑性樹脂部材105の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
これらについては、金属部材103の表面を粗化することによって表面積が増加するため、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との間の接触面積が増加し、接触界面の熱抵抗を低減させることができることに由来する。
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダー等の文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トング等の調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボット等が挙げられる。
以上、本発明の金属/樹脂複合構造体の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
なお、図1、2は各実施例の共通の図として使用する。
図1は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を模式的に示した外観図である。
図2は、金属部材103と熱可塑性樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。具体的には所定形状に加工され、表面に微細凹凸構造を有する接合部表面(表面処理領域)104が形成された金属部材103を射出成形用の金型102内に設置し、射出成形機101により、熱可塑性樹脂(P1)または樹脂組成物(P2)をゲート/ランナー107を通して射出し、微細凹凸構造が形成された金属部材103と熱可塑性樹脂部材105とが一体化された金属/樹脂複合構造体106を製造する過程を模式的に示している。
(金属部材表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期の測定)
金属部材表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X100)を用いて測定した。具体的には金属部材表面を撮影し、その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定した。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とした。
(金属部材表面に形成された微細凹凸構造の写真観察)
粗化処理された金属表面の任意の3ヶ所について、日本電子社製の走査型電子顕微鏡(傾斜角30°)を用いて測定した。次いで、各々の測定写真について、無作為に抽出した任意の10ヶ所について100nm四方当たりに観測される三次元曲面を有する突起物数を目視で観察した。後述する調製例においては、30ヶ所において計数された突起物数の最小値と最大値を範囲表記した。
(接合強度の評価方法)
引っ張り試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積で除することにより接合強度(MPa)を得た。
(金属部材の表面粗化処理)
[調製例1]
(前処理)
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム板材(厚み:1.6mm)を、長さ45mm、幅18mmの形状になるように切断した。次いで任意の20枚のアルミニウム板材について、特許文献5(特開2012−066383号)の実験例1に記載の方法に準拠して表面処理した。
すなわち、1Lのビーカーに市販アルミニウム合金用脱脂剤NE−6(メルテックス社製)と水を投入して60℃、アルミニウム合金用脱脂剤の濃度が7.5質量%の水溶液600mlとした。これにアルミニウム板材20枚を重ならないように7分間浸漬した。浸漬後はよく水洗した。
つづいて、第二の1Lのビーカーに40℃とした1質量%濃度の塩酸水溶液600mlを用意し、これに上記のアルミニウム板材20枚を重ならないように1分間浸漬した。浸漬後はよく水洗した。次いで第三の1Lのビーカーに40℃とした1.5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液600mlを用意し、水洗後のアルミニム板20枚を重ならないように4分間浸漬した。浸漬後はよく水洗した。次いで、第四の1Lのビーカーに40℃とした3質量%濃度の硝酸水溶液を600ml用意し、これにアルミニウム板材20枚を重ならないように1分間浸漬した。浸漬後はよく水洗した。以上の手順により、前処理アルミニウム板材を得た。
(N−エチルモルホリン水溶液による表面粗化処理)
次いで、上記の前処理アルミニウム板材から任意の1枚を選び、N−エチルモルホリン(東京化成社製)の3.5質量%水溶液200mlの中に、板が容器壁に触れないように40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、N−エチルモルホリン(許容濃度:ACGIH TWA 5ppm)の3.5質量%水溶液の25℃におけるpHは10.54であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材1を得た。この操作を残りの3枚についても、同様に1枚ずつ実施して、表面処理済みの金属部材1を合計4枚作製した。以下の説明では、前処理に続く表面粗化処理を本処理と呼ぶ場合がある。金属部材1表面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。金属部材1表面には三次元曲面を有する複数の突起物が観察され、その数は10000nm当たり10〜18個であった。また、金属部材1表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例2](アンモニア/塩化アンモニウム緩衝水溶液による表面粗化処理)
28質量%アンモニア水(東京化成社製)を3質量%になるように水希釈したアンモニア水に、pHが10.40(25℃)になるように希塩酸を添加することによってアンモニア/塩化アンモニウム緩衝水溶液(アンモニアとしての許容濃度:ACGIH TWA 25ppm)を調製した。調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、上記緩衝水溶液200ml中に40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材2を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材2を合計4枚作製した。金属部材2表面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。金属部材2表面には三次元曲面を有する複数の突起物が観察され、その数は10000nm当たり8〜16個であった。また、金属部材2表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は35nmであった。
[調製例3―1](トリエタノールアミン水溶液による表面粗化処理1)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、トリエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の2.0質量%水溶液200mlの中に40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは10.50であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材3―1を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材3―1を合計4枚作製した。金属部材3―1表面の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。金属部材3―1表面には三次元曲面を有する複数の突起物が観察され、その数は10000nm当たり12〜20個であった。また、金属部材3―1表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例3−2](トリエタノールアミン水溶液による表面粗化処理2)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、トリエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の3.5質量%水溶液200mlの中に40℃下で12分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは10.70であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材3−2を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材3−2を合計4枚作製した。金属部材3−2表面には三次元曲面を有する複数の突起物が観察され、その数は10000nm当たり12〜20個であった。また、金属部材3−2表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例3−3](トリエタノールアミン水溶液による表面粗化処理3)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、トリエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の0.1質量%水溶液200mlの中に70℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは10.10であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材3−3を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材3−3を合計4枚作製した。金属部材3−3表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例3−4](トリエタノールアミン水溶液による表面粗化処理4)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、トリエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の0.3質量%水溶液200mlの中に70℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは10.30であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材3−4を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材3−4を合計4枚作製した。金属部材3−4表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例4−1](モノエタノールアミン水溶液による表面粗化処理1)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、モノエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の0.2質量%水溶液200mlの中に40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは10.90であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材4−1を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材4−1を合計4枚作製した。金属部材4−1表面には三次元曲面を有する複数の突起物が観察され、その数は10000nm当たり5〜20個であった。また、金属部材4−1表面に形成された微細凹凸構造の間隔周期は30nmであった。
[調製例4−2](モノエタノールアミン水溶液による表面粗化処理2)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、モノエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の0.5質量%水溶液200mlの中に40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは11.20であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材4−2を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材4−2を合計4枚作製した。金属部材4−2表面には凸構造(三次元曲面を有する突起物)は観測されなかった。
[調製例4−3](モノエタノールアミン水溶液による表面粗化処理3)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、モノエタノールアミン(東京化成社製)(許容濃度:ACGIH TWA 3ppm)の1.0質量%水溶液200mlの中に40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチングした。なお、上記の水溶液の25℃におけるpHは11.30であった。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材4−3を得た。この操作を残りの3枚についても実施して、表面処理済みの金属部材4−3を合計4枚作製した。金属部材4−3表面には凸構造(三次元曲面を有する突起物)は観測されなかった。
[調製例5]特許文献6(特開2005−119005号公報)の実施例1に記載の表面粗化処理)
調製例1で調製した前処理アルミニウム板材1枚を、60℃の2.5質量%濃度の1水和ヒドラジン水溶液(25℃にけるpHは11.2)(許容濃度:ACGIH TWA 0.01ppm)を入れた第1ビドラジン処理槽に1分間浸漬し、40℃の0.5質量%濃度の1水和ヒドラジン水溶液(25℃におけるpHは10.5)を入れた第2ヒドラジン処理槽に0.5分間浸漬し、その後水洗した。これを40℃で15分間、60℃で5分程度温風乾燥させることにより、表面処理済みの金属部材5を得た。同様な操作を残りのアルミニウム板3枚についても実施し、合計4枚分の表面処理済みの金属部材5を合計4枚作製した。金属部材5表面の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
ここで、金属部材5表面には凸構造(三次元曲面を有する突起物)は観測されなかった。
[調製例6](トリエタノールアミン水溶液による表面粗化処理5)
調製例6では、粗化処理水溶液(トリエタノールアミン水溶液)に、前処理アルミニウム板を浸漬・流水超音波洗浄・乾燥する工程を複数回実施する場合の、処理液pH値の測定・確認と、後述する実施例で熱可塑性樹脂(PPS)との接合実験に供するためのアルミニウム板の確保のために行った連続バッチ処理実験である。
まず、調製例1の前処理と同様な方法で、前処理アルミニウム板材合計100枚を作製した。次いで、上記の前処理アルミニウム板材から任意の5枚を選び、粗化処理液としてのフレッシュなトリエタノールアミン(東京化成社製)の2.5質量%水溶液1L(25℃におけるpHは10.67)の中に、板が重ならないように40℃下で8分間浸漬しながら揺動させることによって前処理アルミニウム板材の表面をエッチング、次いで調製例1と同様に流水・超音波洗浄・乾燥処理した。このような操作で得られた表面処理済み金属部材を金属部材6−1とし、使用済みの粗化処理水溶液を粗化処理液(回収液)6−1とする。同様な操作を更に1回ずつ繰り返すことによって、金属部材6−2と粗化処理液(回収液)6−2、金属部材6−3と粗化処理液(回収液)6−3、金属部材6−4と粗化処理液(回収液)6−4、金属部材6−5と粗化処理液(回収液)6−5、金属部材6−6と粗化処理液(回収液)6−6、金属部材6−7と粗化処理液(回収液)6−7、および金属部材6−8と粗化処理液(回収液)6−8を得た。粗化処理液(回収液)6−2、粗化処理液(回収液)6−4、および粗化処理液(回収液)6−7のpHは、各々9.94、9.80および9.60であった。
[実施例1]
日本製鋼所社製のJ85AD110Hに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に調製例1によって調製された金属部材1(103)を設置した。次いで、その金型102内に熱可塑性樹脂(P1)として、市販のPPS樹脂「SGX120」(東ソー社製)を、シリンダー温度250℃、金型温度120℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。同様の射出成形を他の2枚の金属部材1について実施した。接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材2を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材2について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材3―1を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材3―1について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、PPS樹脂の代わりに市販のPBT樹脂(ポリプラ社製930HL、GF強化品、GF含量は30重量%、1401X31)を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材1について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例4において、金属部材1の代わりに金属部材3−2を用いた以外は実施例4と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材3−2について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、PPS樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂(以下、PPと略称)(プライムポリマー社製J105G、230℃、2.16kg荷重下でのMFR:9g/10分)を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材1について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例6において、金属部材1の代わりに金属部材3−3を用いた以外は実施例6と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材3−3について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例6において、金属部材1の代わりに金属部材3−4を用いた以外は実施例6と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材3−4について測定した接合強度の評価結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材4−1を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材4−1について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[実施例10]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材6−1を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材6−1について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[実施例11]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材6−2を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材6−2について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[実施例12]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材6−4を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材6−4について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[実施例13]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材6−7を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材6−7について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材5を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材5について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例6において、金属部材1の代わりに金属部材5を用いた以外は実施例6と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材5について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例4において、金属部材1の代わりに金属部材5を用いた以外は実施例4と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材5について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材4−2を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材4−2について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
[比較例5]
実施例1において、金属部材1の代わりに金属部材4−3を用いた以外は実施例1と同様に射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。合計3枚の金属部材4−3について測定した接合強度の評価結果を表2に示す。
Figure 0006491740
Figure 0006491740
この出願は、2015年3月27日に出願された日本出願特願2015−066936号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (18)

  1. 金属部材と、熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
    少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡(SEM、30°傾斜)により観察したとき、三次元曲面を有する複数の突起物が観測され、
    前記突起物が少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との接合部表面上に林立状態で形成されており、
    前記金属部材はアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、およびスズから選択される一種または二種以上の金属材料により構成されたものであり、
    三次元曲面を有する前記突起物が球状、なめらかな端部を持つ円柱、イボ状またはカリン糖状であり、
    前記三次元曲面を有する突起物が、10000nm 当たり1個以上40個以下観測される金属/樹脂複合構造体。
  2. 請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記三次元曲面を有する突起物と最近接する突起物との間隔周期が1nm以上500nm以下である金属/樹脂複合構造体。
  3. 請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との前記接合部表面が、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)により粗化処理されている金属/樹脂複合構造体。
  4. 請求項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)、アンモニウム塩(A2)およびアミン塩(A3)から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
  5. 請求項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記化合物(A)が分子内に前記酸素官能基を有するアミン(A1)を含み、
    前記分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)が、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物および下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
    Figure 0006491740
    (前記式(1)中、Rは水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基である)
    Figure 0006491740
    (前記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、または1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基であり、R〜Rの少なくとも1つが、1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基である)
  6. 請求項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記モルホリン系化合物がN−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびN−n−プロピルモルホリンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
  7. 請求項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記アルカノールアミン系化合物がトリエタノールアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
  8. 請求項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記化合物(A)が前記アンモニウム塩(A2)を含み、
    前記アンモニウム塩(A2)が、アンモニア、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
  9. 請求項乃至のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    少なくとも前記金属部材の前記接合部表面が、前記粗化処理水溶液(Z)による前記粗化処理の前に、酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液による化学的エッチング処理がなされている金属/樹脂複合構造体。
  10. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
  11. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
    少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との接合部表面に、25℃における水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上11.0以下の範囲にあり、かつ、分子内に窒素原子を有する化合物(A)(ただし、ヒドラジンを除く)を含有する粗化処理水溶液(Z)を接触させる工程と、
    前記熱可塑性樹脂部材の少なくとも一部が前記金属部材の前記接合部表面に接するように、前記熱可塑性樹脂部材を成形し、前記金属部材と前記熱可塑性樹脂部材とを接合させる工程と、
    を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  12. 請求項11に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)、アンモニウム塩(A2)およびアミン塩(A3)から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  13. 請求項11または12に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  14. 請求項11乃至13のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との前記接合部表面に酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液を接触させる工程の後に、前記粗化処理水溶液(Z)を接触させる工程をおこなう金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  15. 請求項12乃至14のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記化合物(A)が分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)を含み、
    前記分子内に酸素官能基を有するアミン(A1)が、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物および下記式(2)により示されるアルカノールアミン系化合物から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
    Figure 0006491740
    (前記式(1)中、Rは水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基である)
    Figure 0006491740
    (前記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、または1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基であり、R〜Rの少なくとも1つが、1つのヒドロキシ基を有する脂肪族飽和炭化水素基である)
  16. 請求項15に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記モルホリン系化合物がN−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびN−n−プロピルモルホリンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  17. 請求項15に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記アルカノールアミン系化合物がトリエタノールアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  18. 請求項12乃至14のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記化合物(A)がアンモニウム塩(A2)を含み、
    前記アンモニウム塩(A2)が、アンモニア、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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