既知の表面形状データを利用して被測定物の表面形状をより精密に測定する場合に、ステージに対する被測定物の設置に誤差があると、精度の高い測定結果を得ることができなかった。
課題を解決する表面形状測定装置は、被測定物を支持するステージを備えてもよい。非接触で被測定物の表面形状を測定する測定器を備えてもよい。測定器の出力値と予め定められた被測定物の基準形状データとに基づいて被測定物の表面形状データを演算する演算部を備えてもよい。ステージにおける被測定物の目標設置位置の情報、表面形状データ、および基準形状データに基づいて、ステージにおける被測定物の実際の設置位置と目標設置位置との設置誤差を算出する算出部を備えてもよい。演算部は、設置誤差を用いて被測定物の表面形状データを更新してもよい。
算出部は、設置誤差により目標設置位置を更新し、演算部により更新された表面形状データに基づいてステージにおける被測定物の実際の設置位置と目標設置位置との設置誤差を再算出してもよい。演算部は、再算出されたステージにおける被測定物の実際の設置位置と目標設置位置との設置誤差を用いて更に被測定物の表面形状データを再更新してもよい。
測定器は、第1プローブ光を用いて被測定物の表面の測定点における傾きを測定する角度測定器を含んでもよい。演算部は、第1プローブ光の出射位置および出射位置および出射方向と目標設置位置または設置誤差により更新された更新設置位置に設置された場合の基準形状データとに基づいて被測定物の表面形状データを再更新してもよい。
測定器を支持する支持体を備えてもよい。支持体を被測定物に対して移動させる駆動部を備えてもよい。駆動部を制御する制御部を備えてもよい。測定器は、第2プローブ光を用いて測定点までの距離を測定する距離測定器を含んでもよい。制御部は、測定器から測定点までの距離が一定となるように、距離測定器の出力値を用いて駆動部により支持体を走査させてもよい。
また、課題を解決する表面形状測定プログラムは、測定器を用いて表面形状を測定する測定ステップをコンピュータに実行させてもよい。表面形状の基準形状データを取得する取得ステップをコンピュータに実行させてもよい。測定器の出力値と基準形状データとに基づいて被測定物の表面形状データを演算する演算ステップをコンピュータに実行させてもよい。被測定物を支持するステージにおける被測定物の目標設置位置の情報、表面形状データ、および基準形状データに基づいて、ステージにおける被測定物の実際の設置位置と目標設置位置との設置誤差を算出する算出ステップをコンピュータに実行させてもよい。算出ステップで算出した設置誤差を用いて被測定物の表面形状データを更新する再更新ステップをコンピュータに実行させてもよい。
設置誤差により目標設置位置を更新し、再更新ステップにより再更新された表面形状データを用いて被測定物の実際の設置位置と目標設置位置との設置誤差を再算出する算出ステップを有してもよい。再算出された設置誤差を用いて更に被測定物の表面形状データを再更新する再更新ステップを有してもよい。それらを繰り返してもよい。
測定器は、第1プローブ光を用いて被測定物の表面の測定点における傾きを測定する角度測定器を含んでもよい。更新ステップは、第1プローブ光の出射位置および出射方向と目標設置位置に設置された場合の基準形状データとに基づいて被測定物の表面形状データを更新してもよい。再更新ステップは、第1プローブ光の出射位置および出射方向と設置誤差により更新された更新設置位置に設置された場合の基準形状データとに基づいて被測定物の表面形状データを再更新してもよい。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る表面形状測定装置10の全体を示す概略図である。表面形状測定装置10は、測定対象を回転対称面に特化した、表面形状を厳密に測定する装置である。なお、本実施形態の説明において「表面形状」という場合は、表面の幾何学的形状そのものを指す場合と、その形状の凹凸量、角度、これらを含む計測結果、形状データといった形状情報を指す場合とがある。
表面形状測定装置10は、基台部としてのベース100と、ベース100に堅固に固定された第1フレーム140および第2フレーム150とを含む。表面形状測定装置10のうちセンシングに関わる各要素は、これらベース100、第1フレーム140および第2フレーム150の何れかに直接的あるいは間接的に組み付けられている。
ベース100の上面は水平面であり、水平面内の一軸をx軸、水平面内であってx軸に直交する一軸をy軸と定める。また、水平面に直交する鉛直方向にz軸を定める。また、鉛直方向上向きをz軸の正方向とする。なお、以降の各図は、上記の定義に従って図1に示すxyz座標系を基準として、いずれの方向から観察した図であるかを明示している。
ベース100の上面には、XYステージ160が積み重ねられており、XYステージ160は、ベース100の上面をxy方向に平行移動できるとともに、z軸周りに回転移動できる。なお、以降の説明においては、z軸周りの回転移動を、θz方向の回転などと称する場合がある。
XYステージ160は、被測定物200の設置台としての機能を担い、チャック161を介して被測定物200を固定する。被測定物200は、測定面201と保持部202を含み、チャック161は、保持部202を挟持する。測定対象である測定面201は、図1の姿勢においてz軸と平行な回転対称軸を有する略回転対称面である。ここで、略回転対称面とは、正確な回転対称面ではなく、その表面に微小な凹凸が非対称に存在することを意味する。このような微少な凹凸は、例えば測定面が球面レンズである場合、製造過程の研磨作業において生じる加工誤差として生成し得る。本実施形態に係る表面形状測定装置10は、全体としては回転対称面であるが、局所的に拡大して観察した場合に微小な凹凸が偏在するような測定面を測定して、そのような凹凸形状の情報を含む、より精度の高い表面形状情報を取得する装置である。
被測定物200は、測定面201の回転対称軸と、XYステージ160のθz方向の回転軸とが一致するように、XYステージ160に設置される。このように設置された被測定物200の測定面201は、回転対称軸周りに回転移動されて表面形状が測定される。
第1フレーム140は、ベース100からz軸方向へ垂直に立ち上げられた支持フレームである。第1フレーム140は、そのyz面の上方で第2支持体130を支持し、第2支持体130は、第1フレーム140に支持された面とは反対側の面で第1支持体120を支持する。第1支持体120は、第2支持体130に支持された面とは反対側の面で測定ユニット110を支持する。測定ユニット110は、XYステージ160に設置された被測定物200の上方の空間に位置する。測定ユニット110、第1支持体120および第2支持体130は、測定面201に対して相対移動するヘッドを構成する要素である。
第2支持体130は、第1フレーム140に配設された後述するアクチュエータの駆動力と相互に跨いで配設された伝達機構とにより、第1フレーム140に対してyz平面内で平行移動することができる。ここで、z軸マイナス方向は、図示するように、表面形状測定装置10の初期状態において被測定物200の測定面201に近づく方向である。第1支持体120は、第2支持体130に配設された後述するアクチュエータの駆動力と相互に跨いで配設された伝達機構とにより、第2支持体130に対してx軸周りに回転移動することができる。なお、以降の説明においては、x軸周りの回転移動を、θx方向の回転などと称する場合がある。第1フレーム140に対する第2支持体130のz方向の移動量は、後述するZセンサ155により検出される。
第1支持体120のθx方向の回転角は、第2支持体130に配設されたロータリエンコーダ131によって検出される。測定ユニット110は、距離測定器111、角度測定器112およびこれらを支持するホルダー113を含む。距離測定器111は、測定面201上の測定点までの距離を測定し、角度測定器112は、同測定点における測定面の傾きを測定する。具体的な構成については、図を用いて後に説明する。測定ユニット110は、ホルダー113が第1支持体120に固定されており、第1支持体120に対して相対的に移動することはない。
第2フレーム150は、ベース100からz軸方向へ垂直に立ち上げられた支持フレームである。第2フレーム150は、そのxz面の上方で干渉計ユニット151を固定して支持する。干渉計ユニット151は、第2支持体130のy方向の移動量とθx方向の回転角を検出するセンサユニットである。干渉計ユニット151は、具体的には、それぞれがレーザー光波干渉式測長器である、第1干渉計153と第2干渉計154を含む。第1干渉計153のレーザー投光部と第2干渉計154のレーザー投光部は、z軸方向に沿って離間して配設されている。干渉計ユニット151の具体的な構成については、図を用いて後に説明する。
第1フレーム140と第2フレーム150は、図1においてはそれぞれが独立してベース100に固定された態様を示す。第2フレーム150は、精密測定を行う干渉計ユニット151を支持しているので、移動体であるヘッドを支持して振動し得る第1フレーム140と直接的にフレーム接続されないことが好ましい。
制御ユニット180は、例えばCPUによって構成されるシステム制御部181と、ユーザからの入力を受け付け、測定した表面形状情報を呈示するユーザインタフェース182とを含む。システム制御部181は、表面形状測定装置10の全体を制御する。ユーザインタフェース182は、例えばユーザからの入力を受け付けるタッチパネルを備えた液晶ディスプレイを含む。
図2は、表面形状測定装置10のシステム構成図である。具体的には、システム制御部181が実行する制御について、主な制御対象との関係を示す図である。
システム制御部181は、図の右列に並ぶ各制御対象に制御信号を送って一連の測定シーケンスを制御する測定制御部186と、センシング結果を受け取って表面形状を同定するための各種演算を実行する演算部187とを包含する。測定制御部186と演算部187は、それぞれがCPUの仮想的な機能部であっても良いし、少なくとも一部がCPUとは独立したASICなどのハードウェア構成を有しても良い。
ユーザインタフェース182は、ユーザから測定に関する条件、被測定物200の基礎情報、測定の開始指示などの入力を受け付けて、システム制御部181へ送る。また、ユーザインタフェース182は、測定制御部186が実行する測定シーケンスの進捗状況や、演算部187が演算した表面形状情報を、システム制御部181から受け取って表示する。
制御ユニット180は、例えばフラッシュメモリによって構成される、メモリ183を備える。メモリ183は、複数の記憶媒体によって構成されても良い。メモリ183は、測定制御部186が実行する測定制御プログラム、演算部187が実行する演算プログラムを含む、システム制御部181が実行する各種プログラムを記憶している。また、メモリ183は、演算部187が実行する演算等のワークメモリとしても機能する。また、メモリ183は、ユーザインタフェース182を介してユーザによって入力されたり、ネットワークを介して外部機器から送られてきたりする、各種パラメータやデータを保管する機能も有する。
測定制御部186は、測定ユニット110を構成する距離測定器111と角度測定器112を制御する。測定制御部186は、距離測定器111に距離測定を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。同様に、角度測定器112に角度測定を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。
測定制御部186は、第1支持体120を第2支持体130に対してθx方向へ回転させるθx駆動モータ132を制御する。θx駆動モータ132は、第2支持体130に配設されている上述のアクチュエータであり、例えばブラシレスモータを用いることができる。測定制御部186は、測定ユニット110をθx方向に回転移動させたい場合に、その回転角に応じた駆動信号をθx駆動モータ132へ送信する。
測定制御部186は、第2支持体130を第1フレーム140に対してyz方向へ移動させるYZ駆動モータ141を制御する。YZ駆動モータ141は、第1フレーム140に配設されている上述のアクチュエータであり、y方向とz方向のそれぞれに対応する例えば2つのブラシレスモータを用いることができる。測定制御部186は、測定ユニット110をyz方向に平行移動させたい場合に、その移動量に応じた駆動信号をYZ駆動モータ141へ送信する。
測定制御部186は、ロータリエンコーダ131に回転角検出を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。同様に、測定制御部186は、干渉計ユニット151に距離検出を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。演算部187は、受け取った当該出力から、第1フレーム140に対する第2支持体130のy方向の移動量およびθx方向の回転角を演算する。
測定制御部186は、Zセンサ155に距離検出を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。Zセンサ155は、第1フレーム140に対する第2支持体130のz方向の移動量を検出する距離センサである。Zセンサ155は、例えばひとつのレーザー光波干渉式測長器によって構成される。
測定制御部186は、XYステージ160をベース100に対してθz方向へ回転させるθz駆動モータ101を制御する。θz駆動モータ101は、ベース100に配設されている、例えばブラシレスモータである。測定制御部186は、被測定物200の測定面201をθz方向に回転移動させたい場合に、その回転角に応じた駆動信号をθz駆動モータ101へ送信する。
測定制御部186は、XYステージ160をベース100に対してxy方向へ移動させるXY駆動モータ102を制御する。XY駆動モータ102は、ベース100に配設されている、x方向とy方向のそれぞれに対応する例えば2つのブラシレスモータである。測定制御部186は、被測定物200の測定面201をxy方向に平行移動させたい場合に、その移動量に応じた駆動信号をXY駆動モータ102へ送信する。
測定制御部186は、θzセンサ103に回転角検出を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。θzセンサ103は、ベース100に対するXYステージ160のθz方向の回転角を検出する回転角検出センサである。θzセンサ103は、例えばロータリエンコーダによって構成される。
測定制御部186は、XYセンサ104に移動量検出を開始させる制御信号を送り、その出力を受け取る。測定制御部186は、受け取った出力を演算部187へ引き渡す。XYセンサ104は、ベース100に対するXYステージ160のxy方向の移動量を検出する移動量検出センサである。XYセンサ104は、x方向とy方向のそれぞれに向けて配設された例えば2つのレーザー光波干渉式測長器によって構成される。
次に被測定物について説明する。図3(a)は、本実施形態における表面形状測定装置10が測定する測定物の例としての被測定物200を示す斜視図であり、図3(b)は、他の測定物の例としての被測定物200'を示す斜視図である。
上述のように、本実施形態における表面形状測定装置10は、略回転対称面の表面形状を厳密に測定する装置であるので、被測定物の表面の少なくとも一部は、略回転対称面である。被測定物200の測定面201は、z軸プラス方向へ突出する球面である。回転対称軸210をz軸、半径をcとした場合、測定面201はおよそ、xz平面の第1象限における(c2―x2)1/2をz軸周りに一回転して得られる形状を成す。
測定面は、xz平面の第1象限で表された関数をz軸周りに一回転して得られる形状であれば良く、被測定物200'の測定面201'のように、頂面が凹部となっているような形状であっても良い。なお、図示する被測定物200、200'は、チャック161に固定されやすいようにそれぞれ保持部202、202'を備えるが、このような保持部を備えない被測定物であっても、例えば治具を介してXYステージ160に固定されれば表面形状を測定できる。
図4は、測定する表面形状を説明する断面図および拡大図である。図4の断面図は、図3(a)に示す、回転対称軸210を含む平面Aによる被測定物200の切断面を表す。上述のように、被測定面201は、全体としては回転対称面であるが、局所的に拡大視すると微小な凹凸が存在する。本実施形態においては、xy平面への投影形状外縁がφ100mm程度(図中のr)となる測定面を想定している。このとき、後述する測定ユニットの構成および測定原理に従えば、凹凸の深さ方向に対する分解能を1nm程度にすることができる。ここで、「分解能」は、演算された生データとして測定対象物の形状を識別し得る最も細かい単位であり、測定結果として確からしさが保証される「精度」は、本実施形態においては、10nm程度となる。ただし、これらのオーダーは、装置構成、センサ精度等によって変更され得る。なお、凹凸の深さ方向とは、拡大図中に示す矢印の方向である。より具体的には、回転対称面(拡大図中の点線)に直交する方向である。
次に測定ユニット110について説明する。図5は、測定ユニット110の構成と測定原理を説明する説明図である。特に図5(a)は、距離測定器111の構成と測定原理を説明する図であり、図5(b)は、角度測定器112の構成と測定原理を説明する図である。いずれの図も、測定面201の頂点が原点座標に位置する場合に頂点を測定点とする様子を例として表す。
距離測定器111は、第1プローブ光を発生する第1光源1111、第1光源1111により発生された第1プローブ光(第1照射光PL1)を集光して測定面201上の測定点に照射する集光レンズ1112、測定点で反射された第1プローブ光(第1反射光RL1)を集光する集光レンズ1113、第1反射光RL1の位置を検出する光検出器1114などから構成される。
角度測定器112は、第2プローブ光を発生する第2光源1121、第2光源1121により発生された第2プローブ光(第2照射光PL2)を集光して測定面201上の測定点に照射する集光レンズ1122、測定点で反射された第2プローブ光(第2反射光RL2)をコリメートするコリメートレンズ1123、第2反射光RL2の位置を検出する光検出器1124などから構成される。
第1光源1111及び第2光源1121は、発振波長、光出力、ビームポインティング等を安定化させたレーザー光源であり、例えばファイバーレーザーやDFB半導体レーザーなどが用いられる。第1光源1111及び第2光源1121の出力部にはコリメータが設けられており、各光源から平行光束化された第1照射光PL1、第2照射光PL2が出力される。光検出器1114,1124はそれぞれ第1反射光RL1、第2反射光RL2の位置を検出する検出器であり、例えば、QPD(四分割光検出器)、CMOS等の撮像素子などを用いることができる。
距離測定器111では、第1光源1111から出射した第1照射光PL1が集光レンズ1112により集光されて測定点に入射する。測定点で反射した第1反射光RL1は集光レンズ1113により集光されて光検出器1114に入射する。この距離測定器111では、測定点における反射面の傾きが変化(チルト)しても光検出器1114に集光されて入射する第1反射光RL1の入射位置は変化しない。一方、測定点の位置が上下方向(z軸方向)に変化(シフト)すると光検出器1114に集光されて入射する第1反射光RL1の入射位置が変化する。そのため、光検出器1114から測定制御部186へ出力される位置検出信号により、測定ユニット110の基準位置z0から測定点までの距離dsを算出することができる。なお、基準位置z0は、例えば、第1支持体120をθx方向に回転させる回転軸のz座標としても良いし、測定面201に対向させるときの測定ユニット110の基準面におけるz座標としても良い。
角度測定器112では、第2光源1121から出射した第2照射光PL2が集光レンズ1122により集光されて測定点に入射する。測定点で反射した第2反射光RL2はコリメートレンズ1123によりコリメートされて光検出器1124に入射する。この角度測定器112では、測定点の位置が上下方向に変化(シフト)しても光検出器1124に入射する第2反射光RL2の入射位置はほとんど変化しない。一方、測定点における反射面の傾きが変化(チルト)すると光検出器1124に入射する第2反射光RL2の入射位置が変化する。そのため、光検出器1124から測定制御部186へ出力される角度検出信号により、測定点における反射面の反射角θsを算出でき、さらに反射面の傾きである傾斜角度(後述)を算出することができる。
本実施形態においては、距離測定器111と角度測定器112は、測定点における反射面の傾きが0である場合の、第1照射光PL1と第1反射光RL1の張る第1基準面と、第2照射光PL2と第2反射光RL2の張る第2基準面とが、互いに直交するように調整されてホルダー113に固定されている。図の位置においては、第1基準面はxz平面であり、第2基準面はyz平面である。また、距離測定器111と角度測定器112は、基準位置z0からの基準距離d0において、それぞれのプローブ光の反射点(測定点)が重なるように調整されてホルダー113に固定されている。なお、図5は、z0=d0=dsとして描かれている。
次に表面形状を導出する手法について説明する。図6は、表面形状の導出を説明する説明図である。測定ユニット110は、図において紙面左側から右側へ走査され、サンプリング間隔Lごとに測定を行うこととする。図は、サンプリング回数をnとすると、n=i回目の測定とn=i+1回目の測定における測定面201の表面形状を表している。
上述のように、本実施形態に係る表面形状測定装置10の凹凸の深さ方向に対する精度は10nm程度である。10nmの精度を距離測定器111のみで得ようとすれば、そのまま10nmの出力精度を有する距離計を用意する必要がある。そのような距離計は、高価であったり、巨大であったりしてあまり実用的ではない。そこで、本実施形態に係る表面形状測定装置10では、距離測定器111自体は、目標とする精度より粗い精度の性能しか有しない距離計とし、距離測定器111に加えて角度測定器112を併せて設置している。
図示するように、n=i回目の測定で角度測定器112の出力から、反射面の傾きである傾斜角度がαi(rad)と算出されたら、αiが微小角である場合には、n=i回目の測定点までの深さ方向の変位量はLαiと近似される。したがって、n=i回目の奥行き方向の座標がf(i)であると、n=i+1回目の座標f(i+1)は、f(i)+Lαiと算出される。
ここで、Lαiが10nmである場合には、L=1mmとして、αiは10μradである。つまり、角度測定器112の出力精度として10μradの能力を有していれば、サンプリング間隔を1mm程度にしても奥行き方向に対して10nmの精度で計測することができることになる。10nmの出力精度を有する距離測定器を用意するよりは、10μradの出力精度を有する角度測定器を用意して、サンプリング間隔を1mmで制御する方が、表面形状測定装置を構成しやすい。また、L=1mmのサンプリング制御は比較的容易であるので、より短いサンプリング間隔を採用すれば更に奥行き方向の精度を上げることができる。
一方で、角度測定器112が目標とする測定点と第2プローブ光の反射点とを一致させるために、距離測定器111があることが望ましい。すなわち、距離測定器111の出力を監視しながら測定ユニット110の基準位置z0と測定面201までの距離を基準距離d0に保って走査すると、距離測定器111と角度測定器112の両測定点は一致するので、測定制御部186は、角度測定器112が測定している測定点を精確に把握することができる。距離測定器111を併設しない場合には、角度測定器112による測定点座標を精確に把握するための別途の装置を用意する必要がある。
ここで、測定面201までの距離を基準距離d0に保つ場合の当該距離の誤差範囲は、角度測定器112を用いて測定しようとする奥行き方向の精度に比べて遥かに大きくて良い。すなわち、距離測定器111に必要とされる出力精度は、測定しようとする奥行き方向の精度に比べて粗くて良いと言える。例えば、測定しようとする奥行き方向の精度が10nm程度である場合には、10μm程度で良い。
次に測定時の被測定物200とヘッドの動作について説明する。図7は、被測定物200とヘッドの相対移動を説明する説明図である。ここで、ヘッドの基準位置115は、第1支持体120をθx方向に回転させる回転軸上に設定されている。
図7(a)は、回転対称面の頂点を測定可能な初期状態の様子を示す。測定制御部186は、ユーザの入力等により、被測定物200の基礎情報として回転対称面情報を取得している。ただし、当該回転対称面情報は、例えば設計データであり、加工等によって生じた微少な凹凸の情報は含まない。
測定制御部186は、取得した回転対称面情報を用いて、測定面201である回転対称面の頂点の上方d0に基準位置115が位置するように、第1支持体120、第2支持体130およびXYステージ160を移動させる。このとき、測定制御部186は、測定ユニット110が頂点の接平面に対向するように移動させる。以降の走査においても、測定制御部186は、取得した回転対称面情報から算出される測定点における接平面に、測定ユニット110が対向するように制御する。測定ユニット110が接平面に対向するとは、当該接平面が上述の第1基準面とも第2基準面とも直交することに等しい。
図7(b)は、測定点が測定面201の頂点から少し外周側に移った様子を示す。測定制御部186は、第2支持体130をy方向およびz軸方向に平行移動させると共に、第1支持体120をθx方向に回転移動させる。より具体的には、ターゲットとする測定点における接平面と測定ユニット110が対向しつつ、基準位置115との距離がd0を保つように移動させる。測定制御部186は、並行して、XYステージ160をθz方向に回転移動させる。
このとき、測定制御部186は、XYステージ160をxy方向へ平行移動させない。測定制御部186は、ユーザが被測定物200をXYステージ160に設置した後に、被測定物200を初期状態の位置へ移動させる場合にXYステージ160をxy方向の平行移動に移動させるが、測定面201を測定する測定シーケンス中には平行移動を実行しない。したがって、被測定物200を初期状態の位置へ移動させる場合にXYステージ160のxy方向への移動機能は有用であるが、当該移動機能を省くこともできる。
また、測定制御部186は、測定ユニット110を初期状態の位置へ移動させる場合にZセンサ155の出力を利用する。しかし、測定ユニット110が初期状態に到達した後の走査においては、測定制御部186は、距離測定器111の出力によりz方向の位置を把握することができるので、Zセンサ155の出力を監視しなくても良い。
図7(c)は、測定点がさらに外周側に移った様子を示す。測定制御部186は、第2支持体130をさらにy方向およびz方向に平行移動させると共に、第1支持体120をさらにθx方向に回転移動させる。測定制御部186は、XYステージ160のθz方向への回転移動を継続する。
図7(a)から図7(c)への推移からも明らかなように、測定面201に対するヘッドの走査はy軸に沿う方向のみであり、x方向への平行移動を伴っていない。また、y方向の走査も、図においてyの負の領域のみであり、正の領域では走査を行っていない。すなわち、XYステージ160をθz方向に回転移動させることにより、このような簡単な移動制御で測定面の全体を測定することができる。換言すれば、回転対称面の表面形状を測定するという特化した目的に合わせ、ヘッドが備えるべき自由度と測定物を設置するステージが備えるべき自由度を最適化している。これにより、ヘッドの駆動構成およびステージの駆動構成をそれぞれ簡易化させることができた。特にヘッドの駆動構成の簡易化は、ヘッドの軽量化に貢献し、ヘッドの移動の高速化にも寄与する。
図8は、測定面201の測定経路を説明する説明図である。図8(a)は、図7を用いて説明した制御によって描かれる測定経路をz方向から観察した様子を示す。ここで、測定経路とは、隣り合う測定点を結んだときに得られる軌跡である。
始点は、回転対称面の頂点であり、図7(a)で図示した初期状態に対応する。図からも明らかなように、測定経路は渦巻き状になる。この経路に沿って測定されると、測定制御部186は、この経路に沿った順に角度測定器112からの出力を受け取る。しかし、例えば図中のCのラインに沿った切断面における断面図を得たい場合には、Cのラインと渦巻き経路が交差する×印の測定結果を抽出して並び替えれば良い。同様にDのラインに沿った切断面に沿った断面図を得たい場合には、Dのラインと渦巻き経路が交差する□印の測定結果を抽出して並び替えれば良い。交差する点が測定点でなかった場合には、周囲の測定点の測定結果から補間して算出すれば良い。
なお、角度測定器112の出力から算出される測定点の傾斜角度は、回転対称面情報から算出される測定点における接平面と、測定点における実際の接平面との成す角として算出される。したがって、ある経路に沿った奥行き方向の深さを算出する場合には、その方向に沿った角度に変換した上で図6を用いて説明した演算を行う。なお、角度測定器112からの出力を得て表面形状を算出するまでの演算は、演算部187が実行する。
図8(b)は、他の例の測定経路をz方向から観察した様子を示す。上述の補間を行うことなく、特定の切断面における断面形状情報を得たい場合には、図示するように、頂点を中心とする放射状の軌跡を描くように測定経路を設定すると良い。複数の断面形状情報を得たい場合は、始点を頂点ではなく、測定面201の端部寄りに設定すれば、一筆書きで測定経路を設定することができる。このような測定経路を設定する場合は、測定制御部186は、ヘッドを図7で説明したyの正の領域にも移動させて走査を実行する。また、測定制御部186は、図中の円弧の経路を移動させる場合にのみ、XYステージ160のθz方向の回転移動を実行する。このとき、測定制御部186は、第1支持体120および第2支持体130の移動を行わない。
次に、第2支持体130の動作について説明する。図9は、第2支持体130の動作を説明する説明図である。上述のとおり、第2支持体130は、YZ駆動モータ141が測定制御部186からy方向への移動を指示する制御信号、z方向への移動を指示する制御信号を受けて生成する駆動力により移動する。
しかし、第2支持体130は、実際には、制御信号通りに平行移動することが困難である。例えば、図示するように、測定制御部186の制御信号に従って第2支持体130がyマイナス方向へ平行移動する場合、本来であれば点線で示すように第2支持体130の姿勢は維持されるべきであるが、実際には実線で示すように、θx方向にΔθの回転移動を伴ってしまう。このような回転成分は、第1フレーム140と第2支持体130の間に設けられる、駆動力を伝達する伝達機構や相対的な摺動を案内する案内機構の歪みなどによって生じる。本実施形態に係る表面形状測定装置10は、ナノオーダーの精密測定を行うので、このように微少な回転成分も無視し得ない。そこで、表面形状測定装置10は、この回転成分Δθを、2つのレーザー光波干渉式測長器である第1干渉計153と第2干渉計154を用いて計測する。
図10は、第2支持体130のθx方向の回転角を検出する検出手法を説明する説明図である。上述のように、第1干渉計153のレーザー投光部と第2干渉計154のレーザー投光部は、z軸方向に沿って離間して第2フレーム150に配設されている。第2支持体130の側面であるxz平面には、レーザーの反射面として鏡面121が設けられている。第1干渉計153から投光されたレーザーL1は、第1干渉計153に戻り、第2干渉計154から投光されたレーザーL2は第2干渉計154に戻る。鏡面121は、それぞれのレーザーに対応して2つの反射面としても良いが、本実施形態においては、第2支持体130のz方向への平行移動も考慮して、z方向へ伸延する1つの矩形反射面としている。このような矩形反射面は、第2支持体130のz方向への移動範囲において、常に第1干渉計153からのレーザーも第2干渉計154からのレーザーも反射する。
演算部187は、第1干渉計153と第2干渉計154の出力から得られる2つの測定距離の差、およびそれぞれの投光部のyz座標から、第2支持体130のθx方向の回転角Δθを算出する。また、そもそも第1干渉計153も第2干渉計154も、y方向の距離を測定する測長器であるので、演算部187は、第2支持体130のy方向の平行移動量も算出する。具体的には、演算部187は、第1干渉計153と第2干渉計154の出力から得られる2つの測定距離、それぞれの投光部のyz座標、および第2支持体130のθx回転中心軸yz座標から、θx回転中心軸のy方向の平行移動量を算出する。
なお、反射されたレーザーはそれぞれの干渉計に戻れば良いので、第2支持体130の側面に設けられる反射面は、鏡面121ではなく、再帰反射材が設置されても良い。また、本実施形態においては、設置のしやすさから、レーザー投光部を第2フレーム150に、鏡面121を第2支持体130に設けたが、逆であってもよい。特に、2つ以上の投光部のうちの一つを、第1支持体120のθz方向の回転軸に一致させて配置すれば、y方向の平行移動量も、θz方向の回転角も、さらに容易に精度良く検出できる。
また、本実施形態においては、2つの干渉計をz方向に沿って配設して、第2支持体130のθz方向の回転角とy方向の平行移動量を検出したが、θz方向の回転角と共に検出する対象をz方向の平行移動量とすることもできる。例えば、ベース100上にy方向に離間させた2つの投光部を設け、第2支持体130の下面(xy平面)に設けられた鏡面に反射させれば、上記と同様の手法によりこれらθz方向の回転角とz方向の平行移動量を検出することができる。
測定制御部186は、測定ユニット110をθx方向へ回転させたい場合に、回転させたい角度に応じた制御信号を、第1支持体120を回転移動させるθx駆動モータ132へ送信する。上述の通り、実際には第2支持体130もθx方向へ回転しているので、ヘッド全体としては、第1支持体120の回転角と第2支持体130の回転角の和となる。図11は、演算部187が算出するヘッドの回転角を説明する説明図である。
干渉計ユニット151により第2支持体130が第2フレーム150を基準として(すなわち第1フレーム140を基準として)θx方向にΔθ回転したことが検出され、ロータリエンコーダ131により第1支持体120が第2支持体130を基準としてθx方向にθR回転したことが検出されると、演算部187は、ベース100を基準とする座標系に対して、測定ユニット110がθx方向にθR+Δθだけ回転したと把握する。本実施形態においては、測定制御部186は、検出した回転角が目標値(θR)と異なる場合でも、目標値に収束させるフィードバック制御を行わない。多少の誤差角(Δθ)を含んだとしても、測定面201における精確な測定点が把握できていれば、その測定点における表面形状を測定して、測定面201の全体形状の把握に利用できる。もし、その目標値に対する測定点の表面形状情報が必要であれば、周囲の測定点の測定結果を用いて補間処理を行えば良い。このように、フィードバック制御を行わないことにより、測定面全体の測定が完了するまでの時間を短縮することができる。演算の詳細については後述する。
なお、本実施形態においては、ヘッドの回転角を検出する検出部の構成として、2つのレーザー光波干渉式測長器から構成される干渉計ユニット151と、ロータリエンコーダ131の組み合わせを用いたが、これに限らない。干渉計ユニット151は、ベース100を基準とする全体座標系に対して第2支持体130がθx方向にどれだけ回転したかを検出できれば良い。また、ロータリエンコーダ131でなくても、第2支持体130を基準とする局所座標系に対して第1支持体120がθx方向にどれだけ回転したかを検出できれば良い。これらの前提において公知のさまざまな検出器を採用することができる。
以上の説明においては、測定面201である回転対称面の回転対称軸210が、XYステージ160のθz方向の回転軸と厳密に一致して、被測定物200がXYステージ160に設置される場合を想定した。すなわち、被測定物200が目標位置に正しく設置されている場合を想定した。しかし、ユーザの手作業により被測定物200をXYステージ160に設置することを考えると、目標位置に正しく設置することは困難である。実際には、被測定物200は、目標位置に対して誤差をもってXYステージ160に設置される。
図12は、被測定物200の設置誤差を説明する説明図である。実線で示される被測定物200は、XYステージ160の目標位置に正しく設置されている。測定面201の回転対称軸210は、XYステージ160のθz方向の回転軸と一致している。一方で、点線で示される被測定物200"は、XYステージ160に対してずれて設置されている。図の例では、被測定物200の測定面201における頂点に対して、被測定物200"の測定面201"の頂点が、x方向にΔx、y方向にΔyずれている。なお、図においては、被測定物200を固定するチャック161を省いている。
ずれは、x方向およびy方向にのみならず、z方向、θx方向、θy方向、θz方向にも生じ得る。チャック161とXYステージ160とのずれ、チャック161と被測定物200の保持部202とのずれなどが要因となり得る。ただし、チャック161とXYステージ160を相互に精度良く構成したり、被測定物200の接地面を精度の高い平面としたりすることにより、いくつかのずれ成分を実質的に無視することもできる。いくつかのずれ成分を実質的に無視し得るのであれば、後述するフィッティング演算の負荷が軽減される。
本実施形態においては、表面形状測定装置10は、表面形状の測定結果として、設計値に対する凹凸量を呈示する。設計値は、面情報を関数あるいはプロットデータとして表現する設計データから得られる。設計データは、上述のように例えばユーザ入力により予め取得されている。そこで、本実施形態においては、目標位置に対する設置誤差を、目標位置に置かれた設計データの面情報と、実際に測定された測定結果とを比較して算出する。
図13は、設置誤差の算出を概念的に説明する説明図である。目標位置に対してずれて設置された測定面201"は、測定ユニット110の出力から一応の表面形状が算出される。図7を用いて説明したように、測定ユニット110の走査は、目標位置に置かれた設計データを基準に行われるので、測定制御部186が認識している測定点と実際の測定点がずれており、最初に算出されるこの表面形状の精度は高くない。しかし、表面に存在する凹凸は微少なこともあり、算出される表面の全体としての形状は、設計データによる面形状に非常に近いと言える。そこで、設計データの表面形状を、実測されたこの表面形状にフィッティングさせることにより設置誤差を算出する。
フィッティングは、設計データの表面形状を6自由度方向に微少量ずつ移動させたときに、実測された表面形状との一致度が最大となる移動量を算出する作業である。つまり、設置誤差は、当該移動量(Δx、Δy、Δz、Δθx、Δθy、Δθz)によって定まる。フィッティング演算は、両表面に設けられた格子点間の距離の二乗和が最小となる最小二乗法など公知の手法を利用することができる。
なお、本実施形態においては、設計データの表面形状と実測された表面形状との対比によりフィッティング演算を行うが、互いに角度の次元でフィッティング演算を行っても良い。すなわち、設計データの関数を一次微分して角度分布で表せば、測定ユニット110の出力としての実測された角度分布と直接的に対比することができる。角度分布でのフィッティング演算によれば、積分工程を含まない分、精度良く設置誤差を算出することができる。
表面形状測定装置10は、測定対象を回転対称面に特化しているが、回転対称面の中でも特に球面である場合には、曲率中心を一致させるまでの平行移動量(Δx、Δy、Δz)は算出できても、回転移動量(Δθx、Δθy、Δθz)を一意に定めることができない。この場合は、予め定めた値を与えて以後の処理をすれば良い。球面であれば、平行移動量(Δx、Δy、Δz)が把握できている限り、後述の光線追跡演算において測定点の座標を正しく算出できるからである。
次に、設置誤差を考慮してより精確な表面形状を演算するための原理を説明する。図14は、測定点近傍と角度測定器112の第2プローブ光の関係を説明する説明図である。図は、角度測定器112について、第2光源1121と光検出器1124により簡略化して表している。また、設計データによる理想の測定面を基準測定面Hdと表し、実際の測定面を実測測定面Hrと表す。また、測定面は三次元形状なので、実際には第2プローブ光の反射光は三次元のベクトルを持つなど、各現象は三次元の現象として観察されるが、ここでは説明の簡略化のため、yz方向における現象に着目して説明する。三次元の現象として再構築する場合は、xz方向における成分とxy方向における成分を加味すれば良い。
図14(a)は、目標位置に基準測定面Hdが配置され、測定ユニット110の基準位置115が基準測定面Hdに厳密に対向する様子を示す。測定ユニット110はθx方向にθRだけ回転され、第2支持体130による回転誤差は無い。この場合、第2光源1121から出射された第2プローブ光は、基準測定面Hdの測定点Riで反射される場合には、光検出器1124の中心である入射点Piに入射する。すなわち、測定点Riにおける面の傾きは0であると検出される。
しかし、測定ユニット110の回転移動には、上述のように第2支持体130による回転誤差Δθが上乗せされるので、想定した測定点からずれた点を測定することになる。図14(b)は、目標位置に基準測定面Hdが配置され、測定ユニット110が回転誤差Δθ分を含んで基準測定面Hdに向かい合う様子を示す。
上述のように、第2支持体130による微小回転角Δθは、干渉計ユニット151により精確に計測できるので、測定制御部186は、第2光源1121から出射される第2プローブ光の出射位置および出射方向を精確に把握している。そこで、演算部187は、第2プローブ光の出射位置および出射方向の情報を引き受け、光線追跡により光検出器1124の出力を予測する。具体的には、演算部187は、基準測定面Hdの測定点Rsの座標を光線追跡により算出し、基準測定面Hdの測定点Rsにおける法線方向を算出し、その法線方向を用いて第2プローブ光の反射方向を得る。そして、さらに光線追跡を行うことにより、光検出器1124の入射点Psを算出する。すなわち、ここで得られる入射点Psの予測出力値は、誤差要因としての第2支持体130の微小回転角Δθを考慮して算出された値である。
なお、本実施形態においては、第2支持体130のy方向およびz方向の平行移動は制御通りに精確に実行されることを前提としている。しかし、これらの平行移動に誤差が生じたとしても、干渉計ユニット151およびZセンサ155により誤差量を精確に計測できるので、これらを加味して上記の光線追跡演算を行うことができる。すなわち、微小回転角Δθに加えて平行移動の誤差も誤差要因として考慮した入射点Psの予測出力値を算出できる。
図14(c)は、目標位置に実測測定面Hrが配置され、測定ユニット110が回転誤差Δθ分を含んで基準測定面Hdに向かい合う様子を示す。すなわち、角度測定器112と、実測測定面Hrおよび基準測定面Hdとの相対関係は、図14(b)と同様である。図14(c)は、図14(b)のように光線追跡による予測出力値ではなく、実際の実出力値を得る場合の第2プローブ光の様子を示す。
この場合、第2光源1121から出射された第2プローブ光は、実測測定面Hrの測定点Rhに入射し、測定点Rhにおける実測測定面Hrの傾きに応じて反射されて、光検出器1124に至る。光検出器1124の入射点Phは、実測測定面Hrの傾きに対応する座標であり、光検出器1124は、入射点Phに対応する検出信号を実出力値として出力する。この場合、実出力値は、誤差要因としての第2支持体130の微小回転角Δθを含んで出力された値である。
図14(b)の光線追跡演算から、測定点Rsにおける基準測定面Hdの傾き(αdとする)が得られ、図14(c)の実出力値から、測定点Rhにおける実測測定面Hrの傾き(αrとする)が得られる。ここで、測定点Rsと測定点Rhは凹凸の深さ方向に直交する方向(基準測定面Hdの測定点Rsにおける接平面方向)のずれはほとんどなく、同一位置と近似することができる。したがって、座標Rsにおける基準測定面に対する実際の傾きを、αr−αdと評価することができる。この座標Rsをn=i番目の測定座標とすれば、図6における傾きαiはαr−αdと等しい。つまり、αr−αdを算出することにより、図6の演算が可能となる。
次に、図14(b)の状態からさらに設置誤差を含む場合について考える。ここでは簡単のためy方向にΔyの設置誤差がある場合について説明する。図14(d)は、設置誤差Δyだけずれた位置に実測測定面Hrが配置されるが、目標位置に基準測定面Hdが配置され、測定ユニット110が回転誤差Δθ分を含んで基準測定面Hdに向かい合う様子を示す。図14(d)は、図14(b)のように光線追跡による予測出力値ではなく、実際の実出力値を得る場合の第2プローブ光の様子を示す。
この場合、第2光源1121から出射された第2プローブ光は、実測測定面Hrの測定点Rrに入射し、測定点Rrにおける実測測定面Hrの傾きに応じて反射されて、光検出器1124に至る。光検出器1124の入射点Prは、実測測定面Hrの傾きに対応する座標であり、光検出器1124は、入射点Prに対応する検出信号を実出力値として出力する。この場合、実出力値は、誤差要因としての第2支持体130の微小回転角Δθと設置誤差Δyを含んで出力された値である。
測定制御部186は設置誤差を把握していないので、得られた実出力値は、設置誤差を含まない場合として図14(b)で光線追跡により算出された基準測定面Hdの座標Rsに対する実際の出力値と認識されてしまう。換言すると、演算部187は、測定点Rrの測定結果を座標Rsの測定結果と認識してしまう。すなわち、この対応関係の齟齬が、設置誤差Δyを誤差要因として実出力値に含まれると言える。
より具体的には、測定点Rrにおける実際の傾きと、座標Rsにおける基準測定面Hdの傾きの差を、座標Rsにおける傾きαiと認識していることになる。このように設置誤差を誤差要因として含む算出値から図6を用いて説明した演算を施して得られる表面形状が、図13を用いて説明した実測表面形状である。すなわち、設置誤差を誤差要因として含んで導出された最初の実測表面形状の精度は高くない場合があり得る。しかし、上述のようにこの実測表面形状は全体としては設計データによる面形状に非常に近いと言えるので、フィッティング演算により設置誤差量を算出する。
そして、設置誤差量を算出したら、目標位置からその設置誤差量だけずらした位置に基準測定面Hdを配置し直して、再び図14(b)の光線追跡演算を行う。再度の演算により得られた基準測定面Hdの新たな測定点Rsの座標は、図14(d)の測定点Rrの座標とほぼ一致する。したがって、設置誤差Δyがおよそ除去され、ほぼ同一点におけるαdとαdが得られるので、精確な傾きαiを算出することができる。このように算出されたαiを用いて再度図6を用いて説明した演算を実行すれば、より精度の高い表面形状を導出することができる。
なお、最初に導出された実測表面形状の精度があまり高くない場合には、フィッティング演算による一致度が低くなるので、精確な設置誤差量が算出できない場合がある。この場合、評価値としての一致度が予め定められた閾値を超えるまで、再演算された表面形状を再びフィッティング演算の対象としてさらに設置誤差を算出して上述の演算を繰り返しても良い。この場合、一致度が閾値を超えた時点で導出されている表面形状を最終的な表面形状として確定する。
図15は、表面形状を得るまでの手順を表すフロー図である。フローは、ユーザによって被測定物200がXYステージ160に設置され、ユーザインタフェース182を介してユーザから測定開始の指示を受けた時点から開始する。
測定制御部186は、ステップS11で、XYステージ160、第1支持体120、第2支持体130を駆動して被測定物200を初期位置に移動させる。そして、図7および図8を用いて説明したように、XYステージ160、第1支持体120、第2支持体130を駆動して測定面201に対して測定ユニット110を走査させつつ、測定ユニット110により測定点の出力を得て測手点情報を順次蓄積する。そして、測定点の終点まで到達したら、ステップS12へ移行する。
ステップS12において演算部187は、被測定物200がXYステージ160の目標位置に設置されていたと仮定して、設計データの基準測定面の設置位置を誤差量0の初期位置に設定する。ステップS13に進み、演算部187は、図14(b)の光線追跡演算と、光線追跡演算の結果を用いて実行する図14(d)の実測表面形状を取得する演算をを行う。
実測表面形状を取得できたら、ステップS14へ進み、演算部187は、図13を用いて説明した、基準測定面と実測表面形状のフィッティング演算を行う。フィッティング演算により、被測定物200のXYステージ160に対する設置誤差量が算出される。
ステップS15へ進み、演算部187は、評価基準を満たすか否かを判断する。具体的には、評価基準は、算出された設置誤差量が予め定められた基準誤差量を超えていないかであったり、フィッティング演算によって算出された基準測定面と実測表面形状の最大一致度が予め定められた閾値を超えているかであったりする。評価基準は、所望する測定精度や被測定物200の形状等に応じて基準値を変更したり、他の基準を採用したり、複数の基準を組み合わせたりしても良い。
演算部187は、ステップS15で評価基準を満たさないと判断したら、ステップS12へ戻る。ステップS12では、演算部187は、ステップS14のフィッティング演算により算出された設置誤差量分だけ基準測定面の設置位置をずらす。これにより、前回の演算時より、基準測定面が実際に計測した測定面201に近づくことが期待できる。そして、新たな基準測定面によりステップS13移行を再度実行する。
演算部187は、ステップS15で評価基準を満たすと判断したら、ステップS16へ進み、導出された実測表面形状を最終的な測定結果として確定させる。たとえば、確定した実測表面形状をグラフィック化してユーザインタフェース182に表示しても良い。ユーザへの呈示を終えたら一連の処理を終了する。
以上の実施形態においては、測定対象である測定面を回転対称面として説明したが、設置誤差量を算出する手順は、測定面が回転対称面でなくても適用できる。すなわち、設計データによる測定面情報と実測した実測面情報が得られれば、フィッティング演算を行うことができるので、角度測定器112による測定点を設置誤差が除去された座標に対応付けることができる。なお、回転対称面でない測定面を実測する場合には、XYステージ160のXY方向への移動も併用しながら対象領域を測定すれば良い。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。