JP6488088B2 - 低電圧プラズマ生成用電極及びそれを用いたプラズマ照射方法 - Google Patents

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本発明は、誘電率3〜110の樹脂フィルムをベースとした低電圧プラズマ生成用電極、及びその低電圧プラズマ生成用電極を用いたプラズマ照射方法に関する。
プラズマは、空気などの殺菌用に用いられている。また、近年プラズマ医療の研究が国内外で活発になってきている。その中心にあるのはプラズマジェットで生成された活性種、荷電粒子を直接患部へ照射し、止血、腫瘍、創傷治療を行うというものである。
活性プラズマ粒子(電子、イオン、ラジカル、その他化学活性種),UVなどの放電プラズマの非熱的影響は、例えば生体組織の消毒、滅菌、皮膚病治療、血液凝固など、多くの場合に有益である。活性プラズマが生体組織のより近位にあるほど、プラズマ内の電場が高いほど、非熱プラズマ治療の強度および効力はより高くなる。
大気圧中において生成されるプラズマは、通常、高電圧を用いる誘電バリア放電(Dielectric Brrier Discharge)(以下、DBDという)が多く用いられている。このDBDは、通常の温度上昇は室温より数度ほど高いだけである。DBDは、少なくとも一方が一般的には誘電体によって被覆された2つの電極間における交流電圧放電である。
DBDプラズマは、放電ギャップとして知られる、1つの電極と誘電体との間で形成されれ、電極間に強電場を生成する交流高電圧(通常5キロボルト以上)を印加することによって駆動される。
このようなDBDプラズマを用いた治療方法として、以下の特許文献がある。特許文献1には、高電圧プラズマ放電を用いて、非熱的に、ヒトまたは動物の組織を治療する方法が記載され、血液凝固の促進、滅菌、細菌及び真菌の不活性化、潰瘍及び創傷の治療、組織障害及び疾患の治療、組織再接合及び封着等への用途が記載されており、電流値の制限によりダメージを軽減する事は書かれている。すなわち、段落0029には、放電電流を例えば約50ミリアンペア未満、および選択的に1ミリアンペア未満に制限する能力によって、周囲組織または神経系への損傷のリスクが軽減されるとの記載がある。
特表2008−539007号公報
しかし、特許文献1に記載の生体組織へガスプラズマを非熱的に印加する方法は、非熱的にプラズマを制御する方法であるが、非熱プラズマ放電は高電圧放電であり、段落0026には、2〜50kV、選択的に10〜50kVとされており、生体組織の表面付近の電場の値は最大電流の瞬間において200V/mmを超えてもよく、選択的に、生体組織の表面近辺の電場の値は最大電流の瞬間において500V/mmを超えてもよい、との記載がある(段落0029)。
このような高電圧によって生成されたプラズマでは、そのバルクガス温度は室温よりやや高い程度ではあるが、荷電粒子の蓄積によって、ターゲット生体(人体)の表面電位が数百ボルトに達することが明らかになっている。そしてこれは不必要な細胞膜破壊やDNA変異などを生むおそれがある。そのため、直接人体へ照射することは問題がある。
そこで、本発明では、従来よりも、大気圧で低電位でプラズマを生成することができる強誘電体樹脂フィルムを用いたプラズマ生成用電極により、細胞膜破壊を生じないようにして、人体の皮膚にやさしいプラズマ照射ができるプラズマ生成用電極及びプラズマ照射方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、
強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとしたことを特徴とする。
(2)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)において、
前記第1電極及び第2電極からなる1組のプラズマ生成用電極を、前記ベース上に複数組配置したことを特徴とする。
(3)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)又は(2)において、
前記ベース上に複数配置したプラズマ生成用電極によって誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする。
(4)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(3)において、
前記誘起流が、微粒子を含んだものであることを特徴とする。
(5)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)〜(4)において、
前記ベース上に配置したプラズマ生成用電極を渦捲き型とし、
該渦捲き型電極上に誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする。
(6)本発明の低電圧プラズマを照射する方法は、
強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとした低電圧プラズマ生成用電極を用いて、
大気圧で皮膚へ低電圧プラズマを照射することを特徴とする。
本発明によれば、従来よりも、低電位で大気圧プラズマを生成することができる強誘電体樹脂フィルムを用いたプラズマ生成用電極によるDBDにより、細胞膜破壊を生じないようにして、人体の皮膚にやさしいプラズマ照射ができる。
本発明の実施形態に係るプラズマ生成用電極の評価試験に用いたプラズマ生成用電極の平面図である。 評価試験の結果における、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。 誘電率ε=3の場合において、ベースの厚さを25μm、60μmの場合の、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。 評価試験の結果における、ベースの厚さが及ぼす、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。 実施例1で用いた低電圧プラズマ生成用電極を組み込んだ大気圧プラズマ照射装置の概略図であり、(a)はシステム全体図、(b)はプラズマ照射部、(c)は低電圧プラズマ生成用電極での電圧及び電流の経時変動を示すグラフである。 実施例1の評価で用いた低電圧プラズマ生成用電極の構成を示す概略図であり、(a)は平面図であり、(b)は部分拡大縦断面図である。 模擬皮膚として用いたラットスキン及びピッグスキンの経皮吸収効果へのプラズマ照射の影響を測定するための方法を示した概略図である。 実施例1の評価で用いた経皮吸収効果を示すグラフであり、(a)はラットスキンへのプラズマ照射の例であり、(b)はピッグスキンへのプラズマ照射の例である。 (a)は皮膚へのプラズマ照射が模擬皮膚への化学物質浸透性についての概略説明図であり、プラズマ生成により活性種が発生し、活性種により皮膚の角層を可逆的に破壊するという説明図である。(b)は皮膚の角層に着目して、プラズマ照射により脂質2重膜間が緩み、化学物質浸透経路が増えるという説明図である。 図10はATR-FTIRによるピッグスキン角層へのマイクロプラズマ照射前後のピークを示す概略説明図である。 ガスの流れ方向を制御するプラズマアクチュエータの概略説明図であり、(a)は水平速度成分が大きいSDBD-PA、(b)は垂直速度成分が大きいPSJAの説明図である。 実施例3のプラズマ生成用電極を用いたプラズマアクチュエータの断面構成例である。 実施例3で用いた多電極マイクロプラズマアクチュエータの平面図(a)、断面構成図(b)である。 実施例3で用いたマイクロプラズマアクチュエータの駆動回路図である。 図14の駆動回路図を用いたときのプラズマ生成用電極で生じた空気の発光写真である。 実施例3で用いたマイクロプラズマアクチュエータにより発生した空気流れの可視化、測定装置である。 マイクロプラズマアクチュエータのHV電極1つに印加した放電電圧波形とそれに対応する放電電流波形である。 図17の条件に対応する消費電力を見積もるためのリサージュ図形である。 実施例3のマイクロプラズマアクチュエータに正弦波高電圧を印加した際に、誘起される気体の流れの説明図である。 図19の気体の流れを可視化した結果を示す説明図である。 図20について高さ方向での速度ベクトルを示す説明図である。 図19と逆向きの気体の流れの説明図である。 図22の気体の流れを可視化した結果を示す説明図である。 図23について高さ方向での速度ベクトルを示す説明図である。 実施例3のマイクロプラズマアクチュエータを用いた、上向きの気体の流を発生させる説明図である。 図25の上向きの気体の流れを可視化した結果を示す説明図である。 図26について高さ方向での速度ベクトルを示す説明図である。 実施例3のマイクロプラズマアクチュエータを用いた、下向きの気体の流を発生させる説明図である。 図28の下向きの気体の流れを可視化した結果を示す説明図である。 図29について高さ方向での速度ベクトルを示す説明図である。 実施例3のマイクロプラズマアクチュエータを用いて誘起される流れの過渡特性を示すグラフである。 図31の過渡特性の測定点を示す。 実施例3の電極の変形パターンを示す概略説明図である。 実施例3で用いた電極のベース11の比誘電率εx、厚さtxを変化させたときの、材料部分の電圧と静電容量を計算した結果を示す。 プラズマ生成時の微粒子制御を示したものである。 プラズマ生成時の印加電圧による微粒子制御の違いを示したものである。 図33に示した螺旋電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。 図33に示したメアンドロス電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。 図33に示した螺旋電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。 図33に示したメアンドロス電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。 図33に示した電極変形パターン(渦巻型のプラズマ生成電極)を複数配置することで電極上の微粒子制御を効果的に行う配置図の一例を示した模式図である。
本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、プラズマ化するための原料ガスをプラズマ生成用電極間に供給し、原料ガス流中にプラズマを生成させ、生成したプラズマ化したガスを皮膚に照射するよう構成されている。これには、非常に緻密な局所的なマイクロプラズマを用いることが好ましい。それは、「ちくちくした痛み」は、高電圧から導電性のプラズマを介して皮膚表面に流れる電流によって引き起こされるからである。
以下、本発明の実施の形態に係るプラズマ生成用電極について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るプラズマ生成用電極は、強誘電体の樹脂フィルムで構成されるベースと、その表側に第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層して形成したものである。
<ベース>
第1電極、第2電極が形成されるベースとしてのベース素材は、強誘電体でよく、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テフロン(登録商標)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)などの樹脂フィルム樹脂フィルムが可撓性があることから好適に挙げられる。また、繊維布、紙、可撓性セラミックスなども適用可能である。
ベースの厚みは特定するものではないが、プラズマ発生時の絶縁破壊に耐える程度の厚みが必要である。
<誘電率>
本発明においては、ベース素材の誘電率εを3〜110とすることが好ましい。この理由は後述する。これによって、2キロボルト以下の低電圧でプラズマ生成をもたらすことができ、人体表面電位は電流を流す電圧に至らず、結果として電流による皮膚への刺激は抑制される。
なお、人体皮膚への刺激は、電圧の大きさよりも電流の大きさが影響すると考えられ、皮膚の表面抵抗から2キロボルトでは電流が流れない。
また、駆動電圧は2キロボルトでも非接触方式でプラズマ照射をしているため、皮膚の表面電位はその数値(2キロボルト)よりも低く、数十ボルト程度であると考えられる。
また、電極を強誘電体の樹脂フィルムとすることにより、極めて安価かつ低電圧でプラズマ生成が可能となり、ターゲット生体への電磁的悪影響が少なく、かつ安全である。
<第1電極、第2電極>
第1電極、第2電極としての平面的パターンは特に限定するものではなく、活性種の種類や寿命、生成量によって適宜決定することができる。例えば、電極の平面的パターンを円形状、矩形状とすることができる。また櫛歯状としたり、島状とすることもできる。
また、第1電極、第2電極の材質は特に限定されず、所定の導電性を有する物質であれば使用可能である。例えば、アルミ、カーボン、銅、銀、鉄、タングステン、モリブデン、マンガン、チタン、クロム、ジルコニウム、ニッケル、白金、パラジウム、あるいはこれらの合金が挙げられる。また、導電性高分子、カーボンナノチューブ等も用途により用いることができる。さらに、ITO、IZO等の透明電極も適用できる。
第1電極、第2電極は、ベースである樹脂フィルム等の上に積層されている金属箔を、例えば、エッチングすることによってパターンを形成することができる。
また、ベースである樹脂フィルム上にペーストを塗布処理することによってもパターンを形成することもできる。この場合の塗布処理としては、スクリーン印刷、カレンダーロール印刷、ディップ法、蒸着、物理的気相成長法など、任意の方法が利用可能である。
電極パターンをスクリーン印刷などの塗工法による場合には、前記した各種金属あるいは合金の粉末を、有機バインダーおよび溶剤(テルピネオール等)と混合して導体ペーストを作製し、次いでこの導体ペーストをベース上に塗工して乾燥することによって形成す
る。
なお、電極の平面的パターンを櫛歯状や島状とした場合には、DBDが、各櫛歯部分、島部分のエッジにおいて発生するので、各櫛歯部分、島部分のピッチを変更することによって、DBD箇所のピッチを適宜変更することができる。
<表保護層、裏保護層>
第1電極及び第2電極の表面は、それぞれ誘電体からなる表保護層、裏保護層によって覆設して保護することが好ましい。この保護層としては、前記ベース素材として用いた誘電体材料が使用できる。
また、上記、ベース素材のみならず、エポキシ、アクリル、ポリアミン、アクリルシリコン、ウレタン、ラッカークリアー等の有機系材料も10μm以上の膜厚が出来れば、表保護層や裏保護層として適用させることができる。
表保護層、裏保護層は、これらの誘電体材料の粉末をペースト状にして第2電極及び第1電極を形成した樹脂フィルム上にコーティングすることによって覆設することができ、第1電極や第2電極を保護することができる。
表保護層や裏保護層は、第1電極や第2電極を保護することにより、湿気のある雰囲気でもプラズマを発生させることができる、耐湿性や耐候性に優れたプラズマ生成用電極とすることができる。
なお、表保護層や裏保護層は、プラズマ生成用電極の可撓性という観点からは、5〜100μm程度の厚みとすることが好ましい。それ以上の厚みとすることも可能であるが、印可電圧の上昇や可撓性を妨げる可能性もあり望ましくない。
また、保護層中に蛍光体素材を混合することによって、プラズマによって蛍光体素材を発光させることもできる。
<貫通孔>
本実施形態において貫通孔の有無は特定されない。また、貫通孔が無くてもよいが、好適な実施形態においては、第1電極や第2電極をベース上に形成した後に、ベースに、レーザー加工、超音波加工、切削加工、プレス打ち抜き法などによって貫通孔を形成することができる。
また、貫通孔の配置密度や配置パターンは特に限定されない。例えば、活性化ガスの寿命や被処理物の処理量を考慮して、貫通孔を装置の入り口側(上流側)のみに設けることができるし、あるいはベース表面の全面にわたって設けることもできる。
貫通孔の配置密度(個数)や貫通孔の大きさは,被処理物(皮膚)に対する反応速度や被処理物(皮膚)の量(面積)に応じて、或いは使用状況に応じて貫通孔の密度と個数とを決定することができる。好適な実施形態においては、第1電極のエッジ部分でベース表面に沿ってDBDを生じさせる。
このようにベース表面に沿ってDBDを生じさせると、プラズマの発生箇所と被処理物との間隔を最短とすることが可能であるので、処理効率が一層高くなる。
貫通孔の平面的形状は限定されず、被処理物の材質や形態、活性種の種類に応じて変更することができる。例えば、貫通孔の平面的形態は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の多角形、細長いスリット形状などであってよい。
貫通孔から導入されるガスは、目的とする処理や反応によって適宜決定される。一種類のガスであってよく、あるいは複数種類のガスを貫通孔から供給してもよい。
また、貫通孔から一種類のガスを供給する場合には、純ガスであってよく、混合ガスであってもよい。
また、貫通孔から供給されたガスをDBDの作用によってプラズマ化することができるが、貫通孔から供給された複数種類のガスをDBDの作用下に互いに反応させ、活性種を生成させることもできる。
貫通孔から導入されるガスの種類は限定するものではなく、希ガス(ヘリウム、アルゴン、ネオンなど)、窒素ガス、酸素ガス、水素、空気(大気)、などを例示できる。
また、過酸化水素、過酢酸、エタノール、メタノール、水などの液体を噴霧したり、あるいは蒸発させて霧状にしたもの(本実施形態では霧状液体ということがあり、ガスと霧状液体とを総称してガスという。)を貫通孔から供給することができる。
また、電気分解によって発生したガス(酸素と水素)とを用いることもできる。
また、ガスや霧状液体は、通常は第1電極から第2電極方向(貫通孔を通して)へ供給するのであるが、それに限定されず、例えば、第1電極に沿って供給することもできる(貫通孔を設けていない場合など)。
また、ガス圧力は通常は大気圧近傍とすることができ、元ガスの供給流量はマスフローメーター等で制御できる。
<ガスの流れ方向の制御>
なお、ガスの流れの方向を制御するには以下の方法がある。すなわち、半導体スイッチングによるプラズマアクチュエータの能動制御(Active control of Plasma actuator with Semiconductor Switching)である。
代表的なプラズマアクチュエータに、図11(a)に示すような水平速度成分が大きいSDBD-PAと、図11(b)に示すような垂直速度成分が大きいPSJAの二つがある。
水平方向と垂直方向どちらの流れが支配的になるかは電極構造によって決まり、電極の構築後に2種類の流れを選択的に発生させることができる。
例えば、図1に示す3電極から成るプラズマクチュエータを半導体スイッチングで各電極を選択的に駆動させることによりプラズマアクチュエータの誘起流方向の能動制御ができる。
図示するように、左側電極または右側電極のみを駆動させるとSDBD-PAと同様の動作をし、両方の電極を駆動させるとPSJAの動作をさせることができる。
また、図11(d)に示すような電極パターンとすることにより、複数ラインの電極を駆動させ、イオン風速度の加速が可能になり、1列の電極よりも大幅に生成イオンの風速を大きくすることができる。
<低電圧処理>
本発明におけるプラズマ生成用電極への印加電圧は、人体皮膚の刺激を無くするため、プラズマ生成用電極印加電圧としては低電圧である200V〜2000Vとすることが好ましい。
印加電圧が200V未満では、電極表面に、ガス条件によっては十分なDBDの生成が困難な場合があり、一方、2000Vを超えると人体の皮膚への刺激が増すので好ましくない。皮膚とは、表皮、真皮、毛髪、皮下脂肪組織、その他の付属器官(毛髪成長に係る細胞組織、色素産生細胞など)を包含する総称である。
なお、本発明のプラズマ生成用電極を美容用に適用するには、処理ごとに電極をディスポーザブルにすることが望ましく、樹脂フィルムで形成された電極であれば低コストに印刷することも可能であり、従来のプラズマ生成用電極と異なり、使い捨てで衛生面にも配慮している。
また、皮膚にプラズマを照射した後の薬剤の経皮吸収効果も促進が期待される。具体的には次のものがターゲットとなるものと考えられる。
例えば、分子量500以上の薬剤(具体的にはペプチドワクチンなど)や脂溶性が低い薬剤(具体的には水溶性のビタミン類)などである。皮膚などへ直接照射した場合、プラズマの効果に加えて薬剤と組み合わせることで、様々な薬剤の経皮吸収効果が向上するものと考えられる。
次に、本発明の低電圧プラズマ生成用電極を用いて、生成される負イオン濃度を評価した結果を、図面を参照しながら以下に述べる。
図1は、実施形態に係るプラズマ生成用電極の評価試験に用いたプラズマ生成用電極の平面図である。
図2は、評価試験の結果における、誘電率を変えた場合の負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
図3は、評価試験の結果における、誘電率ε=3の場合のベースの厚さが及ぼす、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
図4は、誘電率ε=40と110の場合において、ベースの厚さを変えた場合の、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
図1に示すように、評価試験に用いたプラズマ生成用電極10は、ポリイミドフィルムをベースの表側に第1電極12、裏側に第2電極13として、幅5mmのアルミ箔を接着剤を介してそれぞれ積層した。
アルミ箔は、表側と裏側とで、平面視で1mmの重なり部分を形成するように配置した。また、プラズマ生成用電極に用いたベース11は厚さが60μmのもので、誘電率εを3,40,110の3種類とした。
なお、印加電圧は正弦波27kHzとし、イオン濃度計はプラズマ生成用電極から1cmの位置に配設した。
図2に示すように、放電電圧を次第に大きくすると、プラズマ生成用電極に生成される負イオン濃度も増加することが分かる。また、誘電率110のものと誘電率3のものとを比較すると、誘電率が大きいほうが放電電圧が小さくても同じイオン濃度を維持できることが分かる。
この結果から、放電電圧を小さくするためには、素材の誘電率が大きいベースを用いればよいことが分かる。これは、誘電体での分圧が小さくなり、実効的な放電電圧が高まったためと考えられる。
図3は、プラズマ生成用電極のベースに用いる誘電体材料の誘電率εが3として、厚みを25μm、60μmの結果を示すグラフである。図3に示すように、厚みが薄い25μmのものが低電圧での負イオンの生成量が多いことが分かる。
以上の試験結果から、1cmの空気中に2000×1000個の負イオンを生成するには、誘電率εを110以下の誘電材料を用いて,放電電圧を2キロボルト以下とすることにより、皮膚表面電位が放電開始電圧以下に抑制され、人体に優しい治療ができるのである。
図4は、プラズマ生成用電極のベースに用いる誘電体材料の厚みの影響を試験した結果を示すグラフである。
(a)はベース材料の誘電率εが40で、厚みが30μm、60μmの場合であり、
(b)はベース材料の誘電率εが110の場合で、厚みが58μm、84μmの場合である。
図4に示すように、(a)と(b)とを比較して、印加電圧を1300V以下で、誘電率εが40でも誘電率εが110でも、ベースに用いる誘電体材料の厚みに影響されずに、2000×1000個の負イオンを生成できるということがわかる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について述べる。
<実施例1>
本発明の低電圧プラズマ生成用電極を用いて、模擬皮膚から化学物質を浸透させた場合(経皮吸収)の評価を行った。
低電圧プラズマの皮膚への照射による角層バリア性の可逆的破壊により、経皮吸収が促進されると考えられ、体全体や局所的な薬効が考えられる。
例えば、急激な血中濃度の上昇が起こりにくい、薬剤効果の持続などの効果がある。
図5は、実施例1で用いた低電圧プラズマ生成用電極を組み込んだ大気圧プラズマ照射装置の概略図であり、(a)はシステム全体図、(b)はプラズマ照射部、(c)は低電圧プラズマ生成用電極での電圧及び電流の経時変動を示すグラフである。
評価条件としては、電源は、27.1kHzのAC電源を用いた。
照射時間は3分であり、ガスの種類と流速はアルゴン(5.0L/分)、模擬皮膚との距離は、1mmとした。
図6は、この評価で用いた実施例1の低電圧プラズマ生成用電極10の構成を示す概略図であり、(a)は平面図であり、(b)は部分拡大縦断面図である。
図6に示すように、低電圧プラズマ生成用電極10において、ベース11は、直径32mmの円形状のポリイミド(PI)樹脂フィルム(厚さ25μm、誘電率:ε=3〜4)からなり、その表面上に、25μmの接着層を介して、所定パターンの第1電極12が形成されておりその上面を表保護層14が覆設されている。
第1電極12としては、厚み18.5μm、幅0.2mmの銅箔を用いた。
また、ベース11の裏面上には第1電極12に対向して第2電極13が形成されており、その表面は裏保護層15で覆設されている。
第2電極13としては、厚み18.5μm、幅1.2mmの銅箔を用いた。
第1電極12、第2電極13及びベース11を貫通するように、ガス流通用の直径2.0mmの貫通孔16を形成した。
また、電極の厚みをトータル厚み0.1mmとした。
このように、貫通孔16を配設することによって、各第1電極12においてDBD(P)によって生じたプラズマを、貫通孔16から供給されるガスによって引き出して、極めて近接させた被処理物(模擬皮膚)に照射することができるという効果を奏する。
そして、第1電極12のエッジから貫通孔16へ向かってベース表面に沿ってDBDを生じさせる。
この結果、ガスは、DBDによってプラズマ化し、次いで貫通孔16を通して模擬皮膚の方へと向かって供給される。
なお、貫通孔16は、直径32mmの円形状のポリイミド(PI)樹脂フィルムのベース11に対する開口率を18%とした。
<実施例2>
本実施形態の低電圧プラズマ生成用電極を用いて、模擬皮膚への化学物質浸透性について試験した。なお、模擬皮膚として、ラットスキン及びピッグスキンを用いた。
ステージの上には模擬皮膚を置き、上方から大気圧プラズマを照射した。
実施例2における試験条件は、上記実施例1に示す(図5(b)に示す)ように以下のとおりである。
供給電源:AC、27.1kHz、0.6〜0.8kV
処理時間:3分
噴射ガス流速:5.0L/分
サンプルと電極との距離:1mm
噴射ガスの種類:アルゴン
プラズマ生成用電極は、実施例1に示す(図6に示す)電極を用いた。
電極板の外形:32mm
電極板に形成された貫通孔の径:2.0mm
口径比:18%(貫通孔の面積/電極板の面積)
電極板の厚み:0.1mm
上部電極の幅:0.2mm
下部電極の幅:1.2mm
ベース:誘電率ε3〜4のポリイミド(PI)の樹脂フィルム
なお、プラズマ生成用電極の電極パターンは、ニッカン工業(株)のフレキシブル材料プリント配線板用銅張積層板を、エッチングして作成した。
保護層:素材はポリイミド(PI)、厚さ:25μmを用い、厚み25μmの接着層を介して電極上に被覆した。
プラズマ生成用電極のトータル厚みは100μmとした。
図7は、模擬皮膚として用いたラットスキン及びピッグスキンの経皮吸収効果へのプラズマ照射の影響を測定するための方法を示した概略図である。
図8は、図7の測定方法により、模擬皮膚として用いたラットスキン及びピッグスキンの経皮吸収効果へのプラズマ照射の影響を測定したグラフであり、(a)はラットスキンへのプラズマ照射の例であり、(b)はピッグスキンへのプラズマ照射の例である。
図8(a)(b)に示すように、プラズマ未照射の場合に比べ3分間のプラズマ照射を実施した場合は、経皮吸収効果が見られた。
本発明において、皮膚へのプラズマ照射が模擬皮膚への化学物質浸透性について効果をもたらす理由は、図9(a)に示すように、プラズマ生成により活性種が発生し、活性種により皮膚の角層を可逆的に破壊し、図9(b)に示すように、皮膚の角層に着目すると、プラズマ照射により脂質2重膜間が緩み、化学物質浸透経路が増える。そして、照射により形成されたすき間は可逆的なので、一定時間経過後は元に戻るものと考えられる。

図10は、ATR-FTIRによるピッグスキン角層へのマイクロプラズマ照射前後のピークを示す概略説明図である。
図10に示すように、ATR-FTIRによるピッグスキン角層へのマイクロプラズマ照射前後のピーク減少も確認された。
なお、2850cm−1はCH≒脂質,2940cm−1はCH≒蛋白質を示すが、これらはピッグスキン角層部ののケラチンを示しており、マイクロプラズマ照射(各照射時間3分と10分)によるケラチンの減少≒バリア機能の低下を示している。
つまり、図8(a),(b)に示すマイクロプラズマ照射による薬剤などの化学物質浸透性向上を示すものである。
<実施例3>
次に、本発明のプラズマ生成用電極を用いたプラズマアクチュエータの例を以下に説明する。
図12に誘電体バリア放電を用いたプラズマアクチュエータ示す。誘電体を挟んで2枚の電極を設置する。下部電極を接地し、上部電極に交流高電圧を印加すると、上部電極から下部電極へ向けてプラズマが発生し、矢印のような壁面に沿った水平方向の気体流れが生じる。プラズマアクチュエータの駆動原理は、高電界により発生したプラズマ中の荷電粒子が、クーロン力により加速され、中性粒子と衝突し運動量を伝達することで、マクロな気体流れが生じるのである。
従来、5kV以上の高電圧により駆動されるmmスケールのプラズマアクチュエータがほとんどであった。そのため、低電圧、μmスケールのアクチュエータ構造による気体流れの現象は十分に検証されていない。本実施例では1.5kV以下の低電圧で駆動できるマイクロプラズマアクチュエータの特性評価を行った。さらに、プラズマ電極を独立駆動でき、マイクロプラズマにより誘起される流れの方向を入力信号により能動的に制御が可能である。その結果を以下に示す。
本実施例で構築した多電極マイクロプラズマアクチュエータの構造を図13に示す。
25μmの誘電体フィルムの両面に電極が配置されている。下側電極は接地されており、また、下側で放電が生じないよう絶縁処理が施されている。上側の電極は、4つの独立した電極から構成されている。また、水平方向にx座標を、垂直方向にy座標を設定した。
図14にマイクロプラズマアクチュエータを駆動させるための回路図を示す。マイコンを用いて4つの高電圧インバータへの入力制御により、4つのHV端子に対し、選択的に正弦波高電圧を発生させることができる。また、回路のHV端子(1−4)は、マイクロプラズマアクチュエータのHV電極(1−4)とそれぞれ接続した。
ここで、図14の回路を用いて、マイクロプラズマアクチュエータを駆動させたときの空気の発光写真を図15(a)−(d)に示す。図15のように、それぞれのHV電極1−4を選択的に駆動することで、プラズマ領域を制御することができる。
マイクロプラズマアクチュエータにより発生した空気流れを可視化、測定するための実験装置図を図16に示す。マイクロプラズマアクチュエータをzステージ上に設置し、周りにトレーサ粒子を分布させた。トレーサ粒子は線香の煙(サブミクロン粒子)を用いた。波長532nmのNd YVO4 レーザーを粒子に照射し、散乱光をハイスピードカメラ(Red lake, Motion Scope M3)で撮影することで、気体流れの可視化を行った。また、放電電圧は高電圧プローブ(Tektronix, P6105A)とオシロスコープ(Tektronix, TDS2024B)で観測し、放電電流は電流プローブ(Tektronix, P6021)を用いて測定した。また、多電極マイクロプラズマアクチュエータの消費電力は、直列接続した10nFキャパシタの電圧計測によるリサージュ図形で見積もった。
図16の実験装置において、マイクロプラズマアクチュエータのHV電極1つに電圧1.3kV、周波数15kHzの正弦波高電圧を印加した際の放電電圧波形とそれに対応する放電電流波形を図17に示す。また、図17の条件に対応する消費電力を見積もるため、リサージュ図形を図18に示す。面積計算により、1周期分のエネルギ消費は100μJであった。その値に周波数15kHzを乗じて消費電力1.5Wを得た。また、HV電極を2個駆動した場合、電力は倍の3Wとなった。
<気体流れの可視化>
マイクロプラズマアクチュエータに正弦波高電圧(電圧1.3kV,周波数15kHz)を印加した際に、誘起される気体流れの可視化を行った結果を以下に示す。マイクロプラズマアクチュエータに印加する電圧はゼロを中心とした正弦波であるから、先に述べた逆向きの誘起流は発生せず、図12のように、上部電極から下部電極に向かっての流れが生じると考えられる。従って、HV1とHV3を駆動すれば、図19に図示するように、右向き流れが得られる。また、右向き流れを可視化した結果を図20に示す。左端のプラズマ領域に向かって広範囲から空気の吸い込みが生じ、右端のプラズマ領域から壁面近傍の狭い範囲への吹き出しが起こっている。また、その間にある個々のプラズマ領域でも空気の吸い込み、吹き出しが観測された。
図21に右向き流れの速度ベクトル分布を示す。右端、高さ0.5mmの位置で速度が 0.6m/sであった。中央部、高さ0.5mmでの速度0.4m/sと比較して1.5倍速い結果となった。これは、プラズマ領域での吸い込み、吹き出しによる加速が繰り返されるためと考えられる。また、右端、高さ1mmでは、流速は0.3m/sに半減し、高さ2mmでは0.06m/sに減衰することが分かった。従って、気体流れが壁面近傍1mm以内に集中していることがわかった。
プラズマアクチュエータ左端での吸い込みは、高さ0.5mmの位置で、流速0.08m/sで、高さ2mmの位置で0.05m/sであった。右端の吹き出しの速度に比べて1/6程度と小さいものの、高さ方向の減衰が緩やかであり、広い範囲から空気の吸い込みを行っていることが分かる。吸い込み、右向き流れの動作では、広範囲の領域から低速流で吸い込み、壁面近傍の狭領域に高速流で吹き出すことがわかる。
次に、HV2とHV4を駆動する事で、図22に図示したように、図19とは逆向きの左向き流れが得られた。また、可視化した左向き流れを図23に示す。
図24に左向き流れの速度ベクトル分布を示す。左端、高さ0.5mmの位置で速度が0.6m/sであった。
電極構造の対称性から、右向き流れとは左右逆になっただけで、本質的には同様の流れが得られた。
HV1とHV4を駆動した場合、図25のように左右からの流れが中央で衝突し、上向き流れが生じる。
図26に上向き流れを可視化した結果を示す。左右の両端への吸い込みが生じ、中央部から上向きの吹き出しが認められた。
図27に上向き流れの速度ベクトル分布を示す。中央部、高さ1mmでは0.5m/sの上向きの流れが認められた。また、高さが2mmの位置でも、流速が0.4m/s以上あり、左・右向き流れとは異なり、壁面から離れた位置に空気を吹き出すことが観測された。そして、左右からの吸い込みは0.1m/s前後で、中央部での吹き出しに比べ1/5程度と遅いことが明らかとなった。
HV2とHV3を駆動すれば、図28のように中央から左右への流れの吹き出しが生じ、それに伴い、中央部では、下向き流れが生じる。図29に下向き流れを可視化した結果を示す。左右からプラズマアクチュエータ外側への吹き出しが生じ、中央部での下向きの吸い込みが認められた。
図30に下向き流れの速度ベクトル分布を示す。
中央部、高さ1mmでは0.15m/sの下向きの流れが生じた。そして、左右から外側に向かって0.3m/s前後の流れが生じ、下向きの流れよりも早い結果となった。中央部での下向き流れはプラズマアクチュエータの吸い込みによるものであり、左右から外側に向かっての流れは吐き出しによるものである。プラズマアクチュエータの吸い込みは低速広範囲であり、吐き出しは高速狭領域であることから、吸い込みにより生じる下向き流れは原理的に遅いことが確認された。
次に、誘起される流れの過渡特性を図31に示す。測定点は図32の通りである。駆動後60−80msで定常状態に移行することが明らかになった。プラズマアクチュエータを駆動する電気信号自体は瞬時に伝搬するが、気体には慣性力や粘性力が働くため、このような遅延が生じたのだと考えられる。
なお、実施例3の電極の変形パターンとして、図33のような、円形(a)や四角形(b)の渦捲き型のものも考えられる。それぞれのパターン図において、上が平面図、下が拡大断面図である。
このようなパターンでは、渦捲きの中心と電極の周囲とで、上昇や下降気流を形成させることができる。
結果として、誘起流による微粒子移動効果で、プラズマアクチュエータを構成する電極表面上の任意の位置に存在する微粒子を渦捲きの中心となる部位へ移動せしめ、集約させる事が出来る。
なお、径の異なった複数の同心円や同心四角形などからなる電極においても、図33のような渦捲き型と同様の効果がある。
また、実施例3で用いた電極のベース11の比誘電率εx、厚さtxを変化させたときの、材料部分の電圧と静電容量を計算した。
図34に示すように、誘電率の大きな強誘電体フィルムを基材とした場合、High-ε材料部にかかる電圧は低下し、誘電率は10以上で1/5まで低下している。
この測定結果から、プラズマ生成に必要な実行電圧が大幅に低下出来るため、プラズマ生成用電源回路の簡素化や低コスト化に寄与することが分かる。
すなわち、誘電率を10以上とすることにより単位面積当たりの静電容量を大幅に向上させることができ、20以上とすることにより電極のベース11(フィルム)の厚みの依存性がほとんど見られなくなる。
図35は、プラズマ生成時の微粒子制御を示したものである。
1μmのALパウダー(上)と50μmのSiOパウダー(下)であるが、プラズマ生成時にはプラズマ生成部位(線電極近傍)のパウダー量の減少が見て取れる。
図36は、プラズマ生成時の印加電圧による微粒子制御の違いを示したものである。
対象とした微粒子は1μmのWC(タングステンカーバイド)である。
印加電圧が1kVのパルスより1.5kVのパルス電圧の方が電極上の微粒子除去が顕著に現れている。
図37は、図33に示した螺旋電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。接地電極が存在する領域での微粒子の移動が確認された。
図38は、図33に示したメアンドロス電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。図37と同じく接地電極が存在する領域での微粒子の移動が確認された。
図39は、図33に示した螺旋電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。接地電極が存在する領域でのオイルの移動が確認された。
図40は、図33に示したメアンドロス電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。接地電極が存在する領域でのオイルの移動が確認された。
図41は、図33に示した電極変形パターン(渦巻型のプラズマ生成電極)をベース上に複数配置した電極群とすることで、電極群上の微粒子制御を効果的に行う配置図の一例を示す模式図である。
本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、従来よりも、低電位で大気圧プラズマを生成することができる強誘電体樹脂フィルムを用いたプラズマ生成用電極によるDBDにより、細胞膜破壊を生じないようにして、人体の皮膚にやさしいプラズマ照射ができる。
また、将来的にはペプチドなどのがんワクチンや水溶性のビタミン類へも適用が期待される。
さらに、プラズマ電極の形状によって、プラズマ生成時における誘起流や微粒子なども制御でき、産業上の利用可能性が高い。
10 プラズマ生成用電極
11 ベース
12 第1電極
13 第2電極
14 表保護層
15 裏保護層
16 貫通孔
P 誘電バリア放電(Dielectric Brrier Discharge:DBD)

Claims (6)

  1. 強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
    その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
    その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
    前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
    前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
    前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとしたことを特徴とする低電圧プラズマ生成用電極。
  2. 前記第1電極及び第2電極からなる1組のプラズマ生成用電極を、前記ベース上に複数組配置したことを特徴とする請求項1に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
  3. 前記ベース上に複数配置したプラズマ生成用電極によって誘起流を形成せしめ、
    該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
  4. 前記誘起流が、微粒子を含んだものであることを特徴とする請求項3に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
  5. 前記ベース上に配置したプラズマ生成用電極を渦捲き型とし、
    該渦捲き型電極上に誘起流を形成せしめ、
    該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
  6. 強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
    その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
    その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
    前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
    前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
    前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとした低電圧プラズマ生成用電極を用いて、
    大気圧で皮膚へ低電圧プラズマを照射する方法。
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