JP6488088B2 - 低電圧プラズマ生成用電極及びそれを用いたプラズマ照射方法 - Google Patents
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Description
活性プラズマ粒子(電子、イオン、ラジカル、その他化学活性種),UVなどの放電プラズマの非熱的影響は、例えば生体組織の消毒、滅菌、皮膚病治療、血液凝固など、多くの場合に有益である。活性プラズマが生体組織のより近位にあるほど、プラズマ内の電場が高いほど、非熱プラズマ治療の強度および効力はより高くなる。
大気圧中において生成されるプラズマは、通常、高電圧を用いる誘電バリア放電(Dielectric Brrier Discharge)(以下、DBDという)が多く用いられている。このDBDは、通常の温度上昇は室温より数度ほど高いだけである。DBDは、少なくとも一方が一般的には誘電体によって被覆された2つの電極間における交流電圧放電である。
DBDプラズマは、放電ギャップとして知られる、1つの電極と誘電体との間で形成されれ、電極間に強電場を生成する交流高電圧(通常5キロボルト以上)を印加することによって駆動される。
このようなDBDプラズマを用いた治療方法として、以下の特許文献がある。特許文献1には、高電圧プラズマ放電を用いて、非熱的に、ヒトまたは動物の組織を治療する方法が記載され、血液凝固の促進、滅菌、細菌及び真菌の不活性化、潰瘍及び創傷の治療、組織障害及び疾患の治療、組織再接合及び封着等への用途が記載されており、電流値の制限によりダメージを軽減する事は書かれている。すなわち、段落0029には、放電電流を例えば約50ミリアンペア未満、および選択的に1ミリアンペア未満に制限する能力によって、周囲組織または神経系への損傷のリスクが軽減されるとの記載がある。
このような高電圧によって生成されたプラズマでは、そのバルクガス温度は室温よりやや高い程度ではあるが、荷電粒子の蓄積によって、ターゲット生体(人体)の表面電位が数百ボルトに達することが明らかになっている。そしてこれは不必要な細胞膜破壊やDNA変異などを生むおそれがある。そのため、直接人体へ照射することは問題がある。
そこで、本発明では、従来よりも、大気圧で低電位でプラズマを生成することができる強誘電体樹脂フィルムを用いたプラズマ生成用電極により、細胞膜破壊を生じないようにして、人体の皮膚にやさしいプラズマ照射ができるプラズマ生成用電極及びプラズマ照射方法を提供することを目的とする。
強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとしたことを特徴とする。
(2)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)において、
前記第1電極及び第2電極からなる1組のプラズマ生成用電極を、前記ベース上に複数組配置したことを特徴とする。
(3)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)又は(2)において、
前記ベース上に複数配置したプラズマ生成用電極によって誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする。
(4)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(3)において、
前記誘起流が、微粒子を含んだものであることを特徴とする。
(5)本発明の低電圧プラズマ生成用電極は、上記(1)〜(4)において、
前記ベース上に配置したプラズマ生成用電極を渦捲き型とし、
該渦捲き型電極上に誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする。
(6)本発明の低電圧プラズマを照射する方法は、
強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとした低電圧プラズマ生成用電極を用いて、
大気圧で皮膚へ低電圧プラズマを照射することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態に係るプラズマ生成用電極について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るプラズマ生成用電極は、強誘電体の樹脂フィルムで構成されるベースと、その表側に第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層して形成したものである。
第1電極、第2電極が形成されるベースとしてのベース素材は、強誘電体でよく、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テフロン(登録商標)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)などの樹脂フィルム樹脂フィルムが可撓性があることから好適に挙げられる。また、繊維布、紙、可撓性セラミックスなども適用可能である。
ベースの厚みは特定するものではないが、プラズマ発生時の絶縁破壊に耐える程度の厚みが必要である。
本発明においては、ベース素材の誘電率εを3〜110とすることが好ましい。この理由は後述する。これによって、2キロボルト以下の低電圧でプラズマ生成をもたらすことができ、人体表面電位は電流を流す電圧に至らず、結果として電流による皮膚への刺激は抑制される。
なお、人体皮膚への刺激は、電圧の大きさよりも電流の大きさが影響すると考えられ、皮膚の表面抵抗から2キロボルトでは電流が流れない。
また、駆動電圧は2キロボルトでも非接触方式でプラズマ照射をしているため、皮膚の表面電位はその数値(2キロボルト)よりも低く、数十ボルト程度であると考えられる。
また、電極を強誘電体の樹脂フィルムとすることにより、極めて安価かつ低電圧でプラズマ生成が可能となり、ターゲット生体への電磁的悪影響が少なく、かつ安全である。
第1電極、第2電極としての平面的パターンは特に限定するものではなく、活性種の種類や寿命、生成量によって適宜決定することができる。例えば、電極の平面的パターンを円形状、矩形状とすることができる。また櫛歯状としたり、島状とすることもできる。
また、第1電極、第2電極の材質は特に限定されず、所定の導電性を有する物質であれば使用可能である。例えば、アルミ、カーボン、銅、銀、鉄、タングステン、モリブデン、マンガン、チタン、クロム、ジルコニウム、ニッケル、白金、パラジウム、あるいはこれらの合金が挙げられる。また、導電性高分子、カーボンナノチューブ等も用途により用いることができる。さらに、ITO、IZO等の透明電極も適用できる。
また、ベースである樹脂フィルム上にペーストを塗布処理することによってもパターンを形成することもできる。この場合の塗布処理としては、スクリーン印刷、カレンダーロール印刷、ディップ法、蒸着、物理的気相成長法など、任意の方法が利用可能である。
電極パターンをスクリーン印刷などの塗工法による場合には、前記した各種金属あるいは合金の粉末を、有機バインダーおよび溶剤(テルピネオール等)と混合して導体ペーストを作製し、次いでこの導体ペーストをベース上に塗工して乾燥することによって形成す
る。
第1電極及び第2電極の表面は、それぞれ誘電体からなる表保護層、裏保護層によって覆設して保護することが好ましい。この保護層としては、前記ベース素材として用いた誘電体材料が使用できる。
また、上記、ベース素材のみならず、エポキシ、アクリル、ポリアミン、アクリルシリコン、ウレタン、ラッカークリアー等の有機系材料も10μm以上の膜厚が出来れば、表保護層や裏保護層として適用させることができる。
表保護層、裏保護層は、これらの誘電体材料の粉末をペースト状にして第2電極及び第1電極を形成した樹脂フィルム上にコーティングすることによって覆設することができ、第1電極や第2電極を保護することができる。
表保護層や裏保護層は、第1電極や第2電極を保護することにより、湿気のある雰囲気でもプラズマを発生させることができる、耐湿性や耐候性に優れたプラズマ生成用電極とすることができる。
なお、表保護層や裏保護層は、プラズマ生成用電極の可撓性という観点からは、5〜100μm程度の厚みとすることが好ましい。それ以上の厚みとすることも可能であるが、印可電圧の上昇や可撓性を妨げる可能性もあり望ましくない。
また、保護層中に蛍光体素材を混合することによって、プラズマによって蛍光体素材を発光させることもできる。
本実施形態において貫通孔の有無は特定されない。また、貫通孔が無くてもよいが、好適な実施形態においては、第1電極や第2電極をベース上に形成した後に、ベースに、レーザー加工、超音波加工、切削加工、プレス打ち抜き法などによって貫通孔を形成することができる。
また、貫通孔の配置密度や配置パターンは特に限定されない。例えば、活性化ガスの寿命や被処理物の処理量を考慮して、貫通孔を装置の入り口側(上流側)のみに設けることができるし、あるいはベース表面の全面にわたって設けることもできる。
このようにベース表面に沿ってDBDを生じさせると、プラズマの発生箇所と被処理物との間隔を最短とすることが可能であるので、処理効率が一層高くなる。
また、貫通孔から一種類のガスを供給する場合には、純ガスであってよく、混合ガスであってもよい。
また、貫通孔から供給されたガスをDBDの作用によってプラズマ化することができるが、貫通孔から供給された複数種類のガスをDBDの作用下に互いに反応させ、活性種を生成させることもできる。
また、過酸化水素、過酢酸、エタノール、メタノール、水などの液体を噴霧したり、あるいは蒸発させて霧状にしたもの(本実施形態では霧状液体ということがあり、ガスと霧状液体とを総称してガスという。)を貫通孔から供給することができる。
また、電気分解によって発生したガス(酸素と水素)とを用いることもできる。
また、ガス圧力は通常は大気圧近傍とすることができ、元ガスの供給流量はマスフローメーター等で制御できる。
なお、ガスの流れの方向を制御するには以下の方法がある。すなわち、半導体スイッチングによるプラズマアクチュエータの能動制御(Active control of Plasma actuator with Semiconductor Switching)である。
代表的なプラズマアクチュエータに、図11(a)に示すような水平速度成分が大きいSDBD-PAと、図11(b)に示すような垂直速度成分が大きいPSJAの二つがある。
水平方向と垂直方向どちらの流れが支配的になるかは電極構造によって決まり、電極の構築後に2種類の流れを選択的に発生させることができる。
例えば、図1に示す3電極から成るプラズマクチュエータを半導体スイッチングで各電極を選択的に駆動させることによりプラズマアクチュエータの誘起流方向の能動制御ができる。
図示するように、左側電極または右側電極のみを駆動させるとSDBD-PAと同様の動作をし、両方の電極を駆動させるとPSJAの動作をさせることができる。
また、図11(d)に示すような電極パターンとすることにより、複数ラインの電極を駆動させ、イオン風速度の加速が可能になり、1列の電極よりも大幅に生成イオンの風速を大きくすることができる。
本発明におけるプラズマ生成用電極への印加電圧は、人体皮膚の刺激を無くするため、プラズマ生成用電極印加電圧としては低電圧である200V〜2000Vとすることが好ましい。
印加電圧が200V未満では、電極表面に、ガス条件によっては十分なDBDの生成が困難な場合があり、一方、2000Vを超えると人体の皮膚への刺激が増すので好ましくない。皮膚とは、表皮、真皮、毛髪、皮下脂肪組織、その他の付属器官(毛髪成長に係る細胞組織、色素産生細胞など)を包含する総称である。
なお、本発明のプラズマ生成用電極を美容用に適用するには、処理ごとに電極をディスポーザブルにすることが望ましく、樹脂フィルムで形成された電極であれば低コストに印刷することも可能であり、従来のプラズマ生成用電極と異なり、使い捨てで衛生面にも配慮している。
例えば、分子量500以上の薬剤(具体的にはペプチドワクチンなど)や脂溶性が低い薬剤(具体的には水溶性のビタミン類)などである。皮膚などへ直接照射した場合、プラズマの効果に加えて薬剤と組み合わせることで、様々な薬剤の経皮吸収効果が向上するものと考えられる。
図1は、実施形態に係るプラズマ生成用電極の評価試験に用いたプラズマ生成用電極の平面図である。
図2は、評価試験の結果における、誘電率を変えた場合の負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
図3は、評価試験の結果における、誘電率ε=3の場合のベースの厚さが及ぼす、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
図4は、誘電率ε=40と110の場合において、ベースの厚さを変えた場合の、負イオンと放電電圧との関係を示すグラフである。
アルミ箔は、表側と裏側とで、平面視で1mmの重なり部分を形成するように配置した。また、プラズマ生成用電極に用いたベース11は厚さが60μmのもので、誘電率εを3,40,110の3種類とした。
なお、印加電圧は正弦波27kHzとし、イオン濃度計はプラズマ生成用電極から1cmの位置に配設した。
この結果から、放電電圧を小さくするためには、素材の誘電率が大きいベースを用いればよいことが分かる。これは、誘電体での分圧が小さくなり、実効的な放電電圧が高まったためと考えられる。
以上の試験結果から、1cm3の空気中に2000×1000個の負イオンを生成するには、誘電率εを110以下の誘電材料を用いて,放電電圧を2キロボルト以下とすることにより、皮膚表面電位が放電開始電圧以下に抑制され、人体に優しい治療ができるのである。
(a)はベース材料の誘電率εが40で、厚みが30μm、60μmの場合であり、
(b)はベース材料の誘電率εが110の場合で、厚みが58μm、84μmの場合である。
図4に示すように、(a)と(b)とを比較して、印加電圧を1300V以下で、誘電率εが40でも誘電率εが110でも、ベースに用いる誘電体材料の厚みに影響されずに、2000×1000個の負イオンを生成できるということがわかる。
<実施例1>
本発明の低電圧プラズマ生成用電極を用いて、模擬皮膚から化学物質を浸透させた場合(経皮吸収)の評価を行った。
低電圧プラズマの皮膚への照射による角層バリア性の可逆的破壊により、経皮吸収が促進されると考えられ、体全体や局所的な薬効が考えられる。
例えば、急激な血中濃度の上昇が起こりにくい、薬剤効果の持続などの効果がある。
評価条件としては、電源は、27.1kHzのAC電源を用いた。
照射時間は3分であり、ガスの種類と流速はアルゴン(5.0L/分)、模擬皮膚との距離は、1mmとした。
図6に示すように、低電圧プラズマ生成用電極10において、ベース11は、直径32mmの円形状のポリイミド(PI)樹脂フィルム(厚さ25μm、誘電率:ε=3〜4)からなり、その表面上に、25μmの接着層を介して、所定パターンの第1電極12が形成されておりその上面を表保護層14が覆設されている。
第1電極12としては、厚み18.5μm、幅0.2mmの銅箔を用いた。
また、ベース11の裏面上には第1電極12に対向して第2電極13が形成されており、その表面は裏保護層15で覆設されている。
第2電極13としては、厚み18.5μm、幅1.2mmの銅箔を用いた。
第1電極12、第2電極13及びベース11を貫通するように、ガス流通用の直径2.0mmの貫通孔16を形成した。
また、電極の厚みをトータル厚み0.1mmとした。
このように、貫通孔16を配設することによって、各第1電極12においてDBD(P)によって生じたプラズマを、貫通孔16から供給されるガスによって引き出して、極めて近接させた被処理物(模擬皮膚)に照射することができるという効果を奏する。
そして、第1電極12のエッジから貫通孔16へ向かってベース表面に沿ってDBDを生じさせる。
この結果、ガスは、DBDによってプラズマ化し、次いで貫通孔16を通して模擬皮膚の方へと向かって供給される。
なお、貫通孔16は、直径32mmの円形状のポリイミド(PI)樹脂フィルムのベース11に対する開口率を18%とした。
本実施形態の低電圧プラズマ生成用電極を用いて、模擬皮膚への化学物質浸透性について試験した。なお、模擬皮膚として、ラットスキン及びピッグスキンを用いた。
ステージの上には模擬皮膚を置き、上方から大気圧プラズマを照射した。
実施例2における試験条件は、上記実施例1に示す(図5(b)に示す)ように以下のとおりである。
供給電源:AC、27.1kHz、0.6〜0.8kV
処理時間:3分
噴射ガス流速:5.0L/分
サンプルと電極との距離:1mm
噴射ガスの種類:アルゴン
電極板の外形:32mm
電極板に形成された貫通孔の径:2.0mm
口径比:18%(貫通孔の面積/電極板の面積)
電極板の厚み:0.1mm
上部電極の幅:0.2mm
下部電極の幅:1.2mm
ベース:誘電率ε3〜4のポリイミド(PI)の樹脂フィルム
なお、プラズマ生成用電極の電極パターンは、ニッカン工業(株)のフレキシブル材料プリント配線板用銅張積層板を、エッチングして作成した。
保護層:素材はポリイミド(PI)、厚さ:25μmを用い、厚み25μmの接着層を介して電極上に被覆した。
プラズマ生成用電極のトータル厚みは100μmとした。
図8は、図7の測定方法により、模擬皮膚として用いたラットスキン及びピッグスキンの経皮吸収効果へのプラズマ照射の影響を測定したグラフであり、(a)はラットスキンへのプラズマ照射の例であり、(b)はピッグスキンへのプラズマ照射の例である。
図8(a)(b)に示すように、プラズマ未照射の場合に比べ3分間のプラズマ照射を実施した場合は、経皮吸収効果が見られた。
本発明において、皮膚へのプラズマ照射が模擬皮膚への化学物質浸透性について効果をもたらす理由は、図9(a)に示すように、プラズマ生成により活性種が発生し、活性種により皮膚の角層を可逆的に破壊し、図9(b)に示すように、皮膚の角層に着目すると、プラズマ照射により脂質2重膜間が緩み、化学物質浸透経路が増える。そして、照射により形成されたすき間は可逆的なので、一定時間経過後は元に戻るものと考えられる。
図10は、ATR-FTIRによるピッグスキン角層へのマイクロプラズマ照射前後のピークを示す概略説明図である。
図10に示すように、ATR-FTIRによるピッグスキン角層へのマイクロプラズマ照射前後のピーク減少も確認された。
なお、2850cm−1はCH2≒脂質,2940cm−1はCH3≒蛋白質を示すが、これらはピッグスキン角層部ののケラチンを示しており、マイクロプラズマ照射(各照射時間3分と10分)によるケラチンの減少≒バリア機能の低下を示している。
つまり、図8(a),(b)に示すマイクロプラズマ照射による薬剤などの化学物質浸透性向上を示すものである。
次に、本発明のプラズマ生成用電極を用いたプラズマアクチュエータの例を以下に説明する。
図12に誘電体バリア放電を用いたプラズマアクチュエータ示す。誘電体を挟んで2枚の電極を設置する。下部電極を接地し、上部電極に交流高電圧を印加すると、上部電極から下部電極へ向けてプラズマが発生し、矢印のような壁面に沿った水平方向の気体流れが生じる。プラズマアクチュエータの駆動原理は、高電界により発生したプラズマ中の荷電粒子が、クーロン力により加速され、中性粒子と衝突し運動量を伝達することで、マクロな気体流れが生じるのである。
従来、5kV以上の高電圧により駆動されるmmスケールのプラズマアクチュエータがほとんどであった。そのため、低電圧、μmスケールのアクチュエータ構造による気体流れの現象は十分に検証されていない。本実施例では1.5kV以下の低電圧で駆動できるマイクロプラズマアクチュエータの特性評価を行った。さらに、プラズマ電極を独立駆動でき、マイクロプラズマにより誘起される流れの方向を入力信号により能動的に制御が可能である。その結果を以下に示す。
25μmの誘電体フィルムの両面に電極が配置されている。下側電極は接地されており、また、下側で放電が生じないよう絶縁処理が施されている。上側の電極は、4つの独立した電極から構成されている。また、水平方向にx座標を、垂直方向にy座標を設定した。
マイクロプラズマアクチュエータに正弦波高電圧(電圧1.3kV,周波数15kHz)を印加した際に、誘起される気体流れの可視化を行った結果を以下に示す。マイクロプラズマアクチュエータに印加する電圧はゼロを中心とした正弦波であるから、先に述べた逆向きの誘起流は発生せず、図12のように、上部電極から下部電極に向かっての流れが生じると考えられる。従って、HV1とHV3を駆動すれば、図19に図示するように、右向き流れが得られる。また、右向き流れを可視化した結果を図20に示す。左端のプラズマ領域に向かって広範囲から空気の吸い込みが生じ、右端のプラズマ領域から壁面近傍の狭い範囲への吹き出しが起こっている。また、その間にある個々のプラズマ領域でも空気の吸い込み、吹き出しが観測された。
電極構造の対称性から、右向き流れとは左右逆になっただけで、本質的には同様の流れが得られた。
図26に上向き流れを可視化した結果を示す。左右の両端への吸い込みが生じ、中央部から上向きの吹き出しが認められた。
中央部、高さ1mmでは0.15m/sの下向きの流れが生じた。そして、左右から外側に向かって0.3m/s前後の流れが生じ、下向きの流れよりも早い結果となった。中央部での下向き流れはプラズマアクチュエータの吸い込みによるものであり、左右から外側に向かっての流れは吐き出しによるものである。プラズマアクチュエータの吸い込みは低速広範囲であり、吐き出しは高速狭領域であることから、吸い込みにより生じる下向き流れは原理的に遅いことが確認された。
このようなパターンでは、渦捲きの中心と電極の周囲とで、上昇や下降気流を形成させることができる。
結果として、誘起流による微粒子移動効果で、プラズマアクチュエータを構成する電極表面上の任意の位置に存在する微粒子を渦捲きの中心となる部位へ移動せしめ、集約させる事が出来る。
なお、径の異なった複数の同心円や同心四角形などからなる電極においても、図33のような渦捲き型と同様の効果がある。
図34に示すように、誘電率の大きな強誘電体フィルムを基材とした場合、High-ε材料部にかかる電圧は低下し、誘電率は10以上で1/5まで低下している。
この測定結果から、プラズマ生成に必要な実行電圧が大幅に低下出来るため、プラズマ生成用電源回路の簡素化や低コスト化に寄与することが分かる。
すなわち、誘電率を10以上とすることにより単位面積当たりの静電容量を大幅に向上させることができ、20以上とすることにより電極のベース11(フィルム)の厚みの依存性がほとんど見られなくなる。
1μmのAL2O3パウダー(上)と50μmのSiO2パウダー(下)であるが、プラズマ生成時にはプラズマ生成部位(線電極近傍)のパウダー量の減少が見て取れる。
図36は、プラズマ生成時の印加電圧による微粒子制御の違いを示したものである。
対象とした微粒子は1μmのWC(タングステンカーバイド)である。
印加電圧が1kVのパルスより1.5kVのパルス電圧の方が電極上の微粒子除去が顕著に現れている。
図37は、図33に示した螺旋電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。接地電極が存在する領域での微粒子の移動が確認された。
図38は、図33に示したメアンドロス電極表面に粒径50μmのSiO2を散布後、プラズマ生成後のSiO2パウダーの分布を示したものである。図37と同じく接地電極が存在する領域での微粒子の移動が確認された。
図39は、図33に示した螺旋電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。接地電極が存在する領域でのオイルの移動が確認された。
図40は、図33に示したメアンドロス電極表面にサラダ油を塗布した後、プラズマ生成後のサラダ油の分布を示したものである。接地電極が存在する領域でのオイルの移動が確認された。
図41は、図33に示した電極変形パターン(渦巻型のプラズマ生成電極)をベース上に複数配置した電極群とすることで、電極群上の微粒子制御を効果的に行う配置図の一例を示す模式図である。
また、将来的にはペプチドなどのがんワクチンや水溶性のビタミン類へも適用が期待される。
さらに、プラズマ電極の形状によって、プラズマ生成時における誘起流や微粒子なども制御でき、産業上の利用可能性が高い。
11 ベース
12 第1電極
13 第2電極
14 表保護層
15 裏保護層
16 貫通孔
P 誘電バリア放電(Dielectric Brrier Discharge:DBD)
Claims (6)
- 強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとしたことを特徴とする低電圧プラズマ生成用電極。 - 前記第1電極及び第2電極からなる1組のプラズマ生成用電極を、前記ベース上に複数組配置したことを特徴とする請求項1に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
- 前記ベース上に複数配置したプラズマ生成用電極によって誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の低電圧プラズマ生成用電極。 - 前記誘起流が、微粒子を含んだものであることを特徴とする請求項3に記載の低電圧プラズマ生成用電極。
- 前記ベース上に配置したプラズマ生成用電極を渦捲き型とし、
該渦捲き型電極上に誘起流を形成せしめ、
該誘起流を上下左右方向へ制御可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の低電圧プラズマ生成用電極。 - 強誘電体の樹脂フィルムで構成される可撓性のベースと、
その表側に複数の第1電極、反対側の裏側に第2電極をそれぞれ積層し、
その上下面のどちらか一方、あるいは両面に可撓性保護層を有し、
前記第1電極及び第2電極間でプラズマ化したガスを皮膚に照射するためのプラズマ電極であって、
前記ベースは誘電率3〜110の可撓性の樹脂フィルムとするとともに、
前記前記プラズマ電極に印加する正弦波電圧を200V〜2000Vとした低電圧プラズマ生成用電極を用いて、
大気圧で皮膚へ低電圧プラズマを照射する方法。
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