JP6485263B2 - 光修復剤および用途 - Google Patents

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本発明は、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が導入された重合体を含む光修復剤に関する。
膜分離技術は、汚染した水の浄化や混合溶液からの目的物質の回収・濃縮など幅広く利用されている。従来の分離膜では、長時間の使用により膜表面への汚染物質やタンパク質等が吸着 (ファウリング)し、分離膜が有する細孔が目詰まりするために分離性能が低下するといった問題がある。
ファウリングが生じた膜の分離性能を回復させるためには、膜表面の洗浄あるいは膜の交換が必要となり、これらの作業には多大なコストと労力が費やされる。そのため、現在、分離膜の長寿命化をはかるために、ファウリング物質の吸着を抑制する性質 (アンチファウリング性)を膜表面に付与する研究が精力的に行われている(参照:特許文献1)。
これまでに、膜表面への高アンチファウリング性ポリマーの修飾やコーティング材料を用いることによりアンチファウリング性を付与させることが試みられている。このような分離膜の分離性能の低下を抑制する技術の開発は、膜の洗浄や交換の頻度を軽減させることができ、企業や家庭において大きな経済効果をもたらすことが期待できる。しかし、従来の方法では完全にファウリングを抑制することは困難であり、より容易に膜性能を回復する技術や材料の開発が望まれている。
従来の分離膜は、長時間の使用によりタンパク質や汚染物質などのファウリング物質が吸着し、膜の細孔が目詰まりすることから分離機能が著しく低下する。ファウリングが生じた分離膜の機能を回復させるためには、膜表面に吸着したファウリング物質の洗浄や新たな膜の交換を行う必要があり、洗浄や交換の頻度が高くなれば、環境負荷や経済的損失が大きくなる。近年、排除体積の大きなポリマーや両性イオンを有するポリマーで材料表面を修飾やコーティングすることにより、ファウリングの抑制が試みられている。
しかし、形成したポリマー層は長時間の使用により劣化や損傷が生じ、その部位からファウリング物質の吸着が誘発され、長期間のアンチファウリング性の保持は未だに実現していない。 表面修飾による分離膜の長寿命化は、さらに高アンチファウリング性を有する化学物質・修飾方法の開発が必要であり、その物質が高価で修飾方法が複雑になれば、広範に応用されている分離膜分野への普及が困難となる。
これまでに、様々な方法によって材料表面にアンチファウリング性を付与する報告がなされている。例えば、以下のように報告がある。
生体細胞膜を構成するリン脂質の構造を模倣して合成された2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンからなるポリマーをシリコン基板表面上に修飾することによりタンパク質の非特異的吸着を抑制できることが報告されている {参照非特許文献1: Ishihara, K., Inoue, Y. Advances in Science and Technology.,76, 1 -9 (2010)}。
非特許文献1に記載の方法では、材料表面への非特異的吸着の抑制を可能にしているが、長期使用中にファウリングが生じた際にファウリング物質の除去はできない。 加えて、本発明の光修復剤に含まれている重合体の構成は、非特許文献1に記載の重合体の構成と比較して、明らかに異なる。
また、クマリンの可逆的な光二量化反応を利用して、可逆的に物性を変化させる材料が報告されている。 例えば、ポリマー鎖中にクマリンを導入し光照射することにより、クマリンの結合・解離によりゲルからゾル、ゾルからゲルへと状態変化(ゾル-ゲル相転移)するポリマー系が報告されている{参照非特許文献2:Ajiro, H., Akashi, M. Chem. Lett.,43,1613-1615 (2014)}。
非特許文献2に記載の方法では、膜表面にコーティングする技術ではなく、またアンチファウリング性を有した物質でない。
特許文献1は、「2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びカチオン性(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物を重合して得た共重合体と、水とを含むポリアミド逆浸透膜用の表面処理剤」を開示している。
しかし、本発明の光修復剤に含まれている重合体の構成は、特許文献1に記載の重合体の構成とは比較して、明らかに異なる。
特開2014−8479号公報
Ishihara, K., Inoue, Y. Advances in Science and Technology.,76, 1 -9 (2010) Ajiro, H., Akashi, M. Chem. Lett.,43,1613-1615 (2014)
従来、分離膜表面へのファウリングを抑制する方法は、アンチファウリング性を有するポリマーの修飾やコーティングが主流であった。 しかし、膜表面に形成されたポリマー層の劣化や損傷によりアンチファウリング性が低下することが問題となっている。
これにより、ファウリングが生じた際に外部刺激により簡便に分離機能が回復するような新たなコーティング剤が求められている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が下記式(1)に導入された単量体を重合して得られた重合体、より詳しくは、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含む単量体と下記式(1)で表される単量体を重合して得た共重体を、光修復剤として用いることで、上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
上記式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
すなわち、本発明は次の<1>〜<7>である。
<1>
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が下記式(1)に導入された単量体を重合して得られた重合体を含む光修復剤。
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
<2>
前記重合体は、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含む単量体と前記式(1)で表される単量体を共重合して得た共重合体である<1>の光修復剤。
<3>
前記二量化基が、クマリン基、シンナモイル基、チミン基、ウラシル基およびアントラセン基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の置換基である<1>又は<2>に記載の光修復剤。
<4>
前記二量化基を含む単量体が7-(2-メタクリロイルオキシクマリン)であり、かつ前記式(1)で表される単量体が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである<1>〜<3>のいずれか1に記載の光修復剤。
<5>
前記二量化基の構成単位と前記式(1)で表される単量体の構成単位のモル比が、20〜90:80〜10である<1>〜<4>のいずれか1に記載の光修復剤。
<6>
前記光修復剤は、以下のいずれか1の用途である<1>〜<5>のいずれか1に記載の光修復剤。
(1)表面処理剤
(2)生体材料保護剤
(3)接着剤
<7>
<1>〜<6>のいずれか1に記載の光修復剤が塗布された表面を有する材料。
本発明の光修復剤は、表面に吸着したタンパク質等のファウリング物質を光照射により除去できる特性を有する。
スピンコート法によるフィルム形状の光修復剤の作製の説明図。 クマリンが光二量化反応を示す360 nm の波長光をP(MAC-co-MPC)フィルムに照射した結果。 クマリンが光開裂反応を示す254 nmの波長光をP(MAC-co-MPC)フィルムに照射した結果。 所定の時間、水に浸漬した後の規格化した膜厚の結果。 254 nmの波長光の照射前後の水に浸漬した際の膜厚の結果。 (a)P(MAC-co-MPC) フィルムの蛍光顕微鏡画像。(b)BSA-FITC溶液に7日浸漬した後にリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した蛍光顕微鏡画像。 (c)クマリン二量体が開裂する254 nmの波長光を5分間照射した後にリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した蛍光顕微鏡画像。
(光修復剤)
本発明の光修復剤は、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が下記式(1)に導入された単量体を重合して得られた重合体を含む。
より詳しくは、本発明の光修復剤は、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含む単量体と下記式(1)で表される単量体を重合して得た共重体を含む。
上記式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
{式(1)で表される単量体}
式(1)で表される単量体としては、例えば、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリシクロヘキシルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリフェニルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。
式(1)で表される単量体としては、中でも2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートが好ましく、さらに2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう。以下、「MPC」と称する場合がある}が入手性の点からは好ましい。
(光の照射を受けて互いに二量化する二量化基)
本発明の「光の照射を受けて互いに二量化する二量化基」は、特定の波長光により分子を基底状態から励起状態にし、その励起状態の分子が二量体を形成すれば特に限定されないが、可逆的な光二量化反応を示すことが好ましい。
例えば、クマリン基、シンナモイル基、チミン基、ウラシル基およびアントラセン基等を例示できるが、クマリン基が好ましい。
クマリンは、可逆的な光二量化反応を示すことが知られており、可視光を照射すると二量体を形成するが、二量化したクマリンに紫外光を照射すると単量体に開裂する。そこで、式(1)で表される単量体にクマリン(基)を導入することにより、光照射によってクマリンが結合・開裂してポリマー中の架橋密度が変化し、水への溶解性を制御できる。
すなわち、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基としてクマリン基が導入された重合体では、300〜400nmの可視光を照射すれば、クマリンが二量体を形成し、300nm以下の紫外光を照射すれば、クマリンが単量体を形成する。
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基としてシンナモイル基が導入された重合体では、300〜400nmを照射すれば、シンナモイルが二量体を形成し、300nm以下を照射すれば、シンナモイルが単量体を形成する。
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基としてチミン基が導入された重合体では、270〜320nmを照射すれば、チミンが二量体を形成し、270nm以下を照射すれば、チミンが単量体を形成する。
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基としてウラシル基が導入された重合体では、270〜320nmを照射すれば、ウラシルが二量体を形成し、270nm以下を照射すれば、ウラシルが単量体を形成する。
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基としてアントラセン基が導入された重合体では、300〜400nmを照射すれば、アントラセンが二量体を形成し、熱および300nm以下を照射すれば、ウラシルが単量体を形成する
(光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が式(1)に導入された単量体)
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基が式(1)に導入された単量体の好ましい例としては、クマリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに導入された単量体である。
(光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含む単量体)
本発明の「光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含む単量体」の「単量体」は、光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を含むことができる構造(特に、高分子構造)であれば特に限定されない。
例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、塩化メタクリロイル、ポリエチルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET)、ポリアミド、ポリカーボネートなどが挙げられる。この他に、アクリル酸系ポリマーを採用することもでき、(メタ)アクリル酸;アルキル(メタ)アクリレート;マレイン酸;ビニルスルホン酸;ビニルベンゼンスルホン酸;(メタ)アクリルアミド;アクリルアミドアルキルスルホン酸;(メタ)アクリロニトリル;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ置換(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシエチルメタクリレート;スチレン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾール;ジメチルアミノスチレン;N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N'−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル置換(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル;アリルアミン等を単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、本明細書において、「アクリル」または「メタクリル」を意味する場合には、「(メタ)アクリル」と表記する場合がある。
(重合体)
本発明の「重合体(又は共重合体)」は、二量化基の構成単位と前記式(1)で表される単量体の構成単位のモル比が、20〜90:80〜10であり、好ましくは35〜65:65〜35であり、より好ましくは40〜50:60〜50である。
二量化基の構成単位が20モル%以下であると二量体形成後においても水に可溶となり、90モル%以上であると二量体が解離しても水に不溶となる。
本発明の重合体(又は共重合体)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量で、好ましくは1,000〜1,000,000、好ましくは1,000〜500,000であり、特に好ましくは10,000〜100,000である。
本発明の好ましい重合体は、以下の式(2)で表される。式(2)中のm及びnは、それぞれ、20〜90及び10〜80の整数である。
本発明の重合体(又は共重合体)は、可逆的な光二量化反応に悪影響を与えるものでなければ、さらに他の単量体を組み合わせてもよい。
(重合体の製造方法)
本発明の重合体(又は共重合体)は、自体公知の高分子の製造方法を採用することができるが、例えば以下を例示することができる。
光の照射を受けて互いに二量化する二量化基を式(1)に導入して、二量化基を含む式(1)の単量体を重合する、又は、二量化基を含む式(1)のオリゴマーを重合する。
または、式(1)の単量体を重合して重合体を得た後に、二量化する二量化基を該重合体に導入しても良い。
共重合体の重合方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができ、例えば、単量体組成物を溶媒中で開始剤の存在下、重合反応させる方法を採用することができる。
前記重合反応に用いる溶媒としては、単量体組成物が溶解する溶媒であれば良く、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン又はこれら2種以上の混合液が挙げられる。
前記重合反応に用いる開始剤としては、通常の開始剤ならばいずれを用いてもよく、例えば、ラジカル重合の場合は脂肪族アゾ化合物や有機過酸化物を用いることができる。
得られた共重合体は、溶媒が水の場合は精製後、共重合体の濃度を調整することでそのまま光修復剤として用いることができる。溶媒が有機溶媒の場合は、アセトンによる再沈あるいは濾過精製することによって共重合体を単離した後、水に溶解させ、共重合体の濃度を調整することで光修復剤を得ることができる。
本発明に用いる水としては、精製水等を用いることができる。
(光修復剤)
本発明の「光修復剤」は、上記の本発明の重合体(又は共重合体)を含み、可逆的な光二量化反応を示すので、以下のような用途に使用することができるが、特に限定されない。
(1)表面処理剤。本発明の光修復剤を様々な表面(例、膜表面、船舶の船底等)に塗布することにより、ファウリング物質が吸着した表面を光照射により該物質を除去できる。
(2)生体材料保護剤。本発明の光修復剤を様々な生体材料(ステント等)に塗布することにより、血栓等が付着した生体材料を生体外からの光照射により該血栓等を除去できる。
(3)接着剤。本発明の光修復剤を様々な生体材料に塗布したのち、光照射により材料間を接着することができ、さらに接着部位への血栓等の付着を抑制できる。
加えて、本発明の光修復剤は、用途により、液相状態(例、溶液)、固相状態(例、フィルム)等のいずれでも良い。
(光修復剤が塗布された表面を有する材料)
本発明の「光修復剤が塗布された表面を有する材料」において、材料は特に限定されず、例えば、膜、船、生体材料等を例示することができる。
本発明の光修復剤が塗布された表面を有する材料は、光照射によるファウリング物質除去作用を有する。加えて、本発明の修復剤を、すでに本発明の光修復剤が塗布された表面に、追加添加することもできる。これにより、該材料は、長期間の光修復剤効果を有することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
(本発明の光修復剤の作製)
本発明の光修復剤に含まれる重合体を合成した。詳細は、以下の通りである。
(二量化基を含む単量体の合成)
下記のスキーム1に示す反応により、二量化基を含む単量体として重合性官能基を導入したクマリン誘導体の7-(2-メタクリロイルオキシ)クマリン(以後、MACと称する場合がある)を合成した。詳細は、以下の通りである。
遮光のメスフラスコに7-ヒドロキシクマリン(13 g、0.08 mmol)とトリエチルアミン(8.1 g、0.08 mmol)を加え,ジクロロメタン(200 mL)に溶解した。その後、氷浴下でジクロロメタン(150 mL)に溶解した塩化メタクリロイル(8.6 g、0.08 mol)を少しずつ滴下し、一晩撹拌した。溶媒を減圧留去した後、クロロホルムに溶解し、水で3回洗浄した後、クロロホルムを減圧留去することで薄橙色の固体を得た。 得られた固体をメタノール(MeOH)/テトラヒドロフラン(THF) {MeOH/THF = 2/1 (v/v)}により再結晶し、MACを得た。得られたMACの収率は36%であった。
(重合体の合成)
次に、下記のスキーム2に示す反応により、MACとMPCを共重合することにより、本発明の重合体であるP(MAC-co-MPC)を合成した。詳細は、以下の通りである。
MAC(1.54 g、6.7 mmol)とMPC(1.98 g、6.7 mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(11 mg、0.067 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)/メタノール混合溶液{DMF/MeOH = 1/1 (v/v)}に溶解し、アルゴン(Ar)雰囲気下で70℃、7時間撹拌した。得られた溶液は、氷冷下においてTHFに滴下することより再沈殿し、生成した沈殿を吸引ろ過により回収した後、3日間減圧乾燥し、クマリン基導入MPCポリマーであるP(MAC-co-MPC)を得た。
得られたP(MAC-co-MPC)の収率は81%であり、1H-NMR測定(AL-400、日本電子株式会社製)の結果、MACの導入率は42 mol%であった。
{フィルム形状の本発明の光修復剤の作製}
P(MAC-co-MPC)フィルムは、スピンキャストにより作製した(参照:図1)。詳細は、以下の通りである。
合成したP(MAC-co-MPC)をメタノール/クロロホルム(CHCl3)混合溶媒{MeOH/CHCl3 = 1/3 (v/v)}に5wt% となるように溶解した。次に、基板となるシリコンウェハを1 cm角に成形し、超音波を当てながらメタノール、アセトンおよび水の順で10分ずつ洗浄した。さらに、シリコンウェハ上に P(MAC-co-MPC)溶液を40μL 滴下し、スピンコーター{1H-D1、(株) ミカサ製}を用いて、回転数2000 rpmで60秒間スピンキャストした。最後に、キャストしたポリマーにクマリンが光二量化反応を示す波長360 nmの光を6時間照射することにより光架橋P(MAC-co-MPC)フィルムを作製した。
なお、光照射はウシオ電機社製 SX-UI502HQ を用いて、 以下の条件で実施した。
ランプ:超高圧UV ランプ 500 W
照射距離:57cm
フィルター:シグマ光機製 VPF-50S-10-40-36000(360 nm)
また、同様の方法で石英ガラス上にもP(MAC-co-MPC)フィルムを作製した。
{本発明の光修復剤の可逆的な光二量化反応の確認}
光修復剤が可逆的な光二量化反応を示すことを確認した。詳細は、以下の通りである。
光修復剤{P(MAC-co-MPC)フィルム}の可逆的な光二量化反応は、紫外可視分光光度計(UV-1800、(株)島津製作所)を用いて、UV-Vis測定により確認した。なお、UV-Vis 測定の際は、シリコンウェハは光を透過させないので、石英ガラス上に成膜したフィルムを用いた。
光照射機{SX-UI502HQ、(株) ウシオ電機}により所定時間360 nmと254 nmの光を実施例で作成したP(MAC-co-MPC) フィルムに照射した。なお、光照射は以下の条件で行った。
ランプ:超高圧UV ランプ 500 W
照射距離:57cm
フィルター:シグマ光機製VPF-50S-10-40-36000 (360nm)、VPF-50S-10-20-25400 (254nm)
(結果)
図2及び図3の結果から明らかなように、クマリンが光二量化反応を示す360 nm の波長光をP(MAC-co-MPC)フィルムに照射した際は、吸収が低下していることから、クマリンの二量化反応の進行が確認できた(参照:図2)。また、クマリンが光開裂反応を示す254 nmの波長光をP(MAC-co-MPC)フィルムに照射した際は、吸収が増加していることから、クマリン二量体の開裂反応の進行が確認できた(参照:図3)。
以上により、作製した P(MAC-co-MPC) フィルムは、クマリンの性質である可逆的な光二量化反応を示すことを確認した。
(本発明の光修復剤の水中での特性の確認)
本発明の光修復剤の水中での安定性及び溶解性の変化を確認した。詳細は、以下の通りである。
(本発明の光修復剤の水中での安定性の確認)
実施例1で作製したP(MAC-co-MPC)フィルムの水中での安定性を確認するために、分光エリプソメトリー(M-2000X-KMy, J. A. Woollam Co.) により膜厚変化を調べた。 膜厚変化は、水に浸漬する前のP(MAC-co-MPC) フィルムの膜厚を1とし、水に浸漬してから窒素ガスにより十分乾燥させて、エリプソメトリーにより測定した膜厚を規格化することにより示した。
(本発明の光修復剤の水中での安定性の確認結果)
所定の時間、水に浸漬した後の規格化した膜厚を図4に示す。図4の結果から明らかなように、MAC導入率42 mol%のP(MAC-co-MPC)フィルムでは、水に浸漬しても膜厚に大きな変化は見られなかったのに対して、MAC導入率30 mol%のフィルムでは、膜厚が大きく減少した。
(本発明の光修復剤の光照射による水への溶解性の変化の確認)
光架橋PMAC フィルムおよび光架橋 P(MAC-co-MPC)フィルムを水に浸漬した際の膜厚を測定し、続いてクマリン二量体が開裂する254 nmの波長光を5分間照射した後に水に浸漬した際の膜厚を測定することにより、光照射による水への溶解性の変化を調べた。なお、光照射は実施例2と同一の条件で行った。
(本発明の光修復剤の光照射による水への溶解性の変化の確認結果)
クマリン二量体が開裂する254 nmの波長光の照射前後の水に浸漬した際の膜厚を図5に示した。なお、膜厚はフィルムを水中からとりだし、窒素ガスにより十分乾燥させてからエリプソメトリーにより測定した。図5の結果から明らかなように、PMACフィルムおよびP(MAC-co-MPC)フィルムのいずれの場合もクマリンが二量体を形成した状態では、膜厚に大きな変化は認められなかった。しかし、それらのフィルムに254 nmの波長光を照射した後に水に浸漬すると、浸漬時間の増加に伴い、P(MAC-co-MPC) フィルムでは、膜厚の減少が確認できた。
以上の結果より、本発明の光修復剤であるP(MAC-co-MPC)フィルムは、クマリンの二量化状態により、水への溶解性が変化することが確認できた。その際、MAC導入量が30 mol%程度では、クマリンを二量化しても短時間で水に溶解し、一方MAC導入量が100 mol%になると、254 nmの光を照射しても、水に溶解しないことが明らかとなった。加えて、MAC導入率42 mol%付近のフィルムが360 nmの光照射によって水への溶解性が低下し、254 nmの光照射により、表面を溶解させて表面性質を回復できることを確認した。
以上により、本発明の光修復剤であるP(MAC-co-MPC)フィルムでは、クマリン基とMPCの構成単位のモル比が、40〜50:60〜50であることが好ましい。
{本発明の光修復剤のクリーニング性能の確認}
本発明の光修復剤が、光照射によるクリーニング性能を示すことを確認した。詳細は、以下の通りである。
実施例1で作製したP(MAC-co-MPC)フィルムの光照射によるクリーニング性能は、蛍光顕微鏡{DP70、(株)OLYMPUS}での観察により行った。
倍率:4倍
ISO感度:800
露光時間:826.8 ms
励起:465-490 nmのフィルターを用いた。
なお、光照射は実施例2と同一の条件で行った。
(結果)
360 nmの光照射による架橋 P(MAC-co-MPC)フィルムを、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光標識化したウシ血清アルブミン(BSA-FITC)が溶解した緩衝液に浸漬した時、さらにそれに254 nmの光を照射したときのフィルム表面の蛍光顕微鏡写真を図6に示す。
より詳しくは、図6(a)は、P(MAC-co-MPC) フィルムの蛍光顕微鏡画像であり、図6(b)は、BSA-FITC溶液に7日浸漬した後にリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した蛍光顕微鏡画像であり、図6(c)は、さらに、クマリン二量体が開裂する254 nmの波長光を5分間照射した後にリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した蛍光顕微鏡画像である。
図6の画像から明らかなように、BSA-FITC溶液に浸漬した P(MAC-co-MPC) フィルムには、タンパク質の吸着が確認でき、さらに254 nmの光照射の後に洗浄を行うことにより、吸着していたタンパク質が除去できた。
以上の結果から、本発明の光修復剤は、表面に吸着したタンパク質を光照射により除去できる特性を有する。これにより、本発明の光修復剤は、分離膜や生体材料の長寿命化に利用することができる。
表面に吸着したタンパク質等のファウリング物質を光照射により除去できる光修復剤を提供することができる。

Claims (4)

  1. クマリン基を含む単量体と下記式(1)で表される単量体を重合して得られた重合体を含む分離膜の表面処理剤
    (式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
  2. 前記クマリン基を含む単量体が7-(2-メタクリロイルオキシクマリン)であり、かつ前記式(1)で表される単量体が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである請求項に記載の分離膜の表面処理剤
  3. 前記クマリン基の構成単位と前記式(1)で表される単量体の構成単位のモル比が、20〜90:80〜10である請求項1又は2に記載の分離膜の表面処理剤
  4. 前記請求項1〜のいずれか1に記載の分離膜の表面処理剤が塗布された表面を有する材料。
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