JP2006239636A - ファウリング防止材及び該ファウリング防止材で表面処理された分離膜 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ファウリング防止材及び耐ファウリング性を備えた分離膜に係り、特に、浄水処理、化学工業、食品分野、医療分野等において好適に使用されるファウリング防止材及び耐ファウリング性を備えた分離膜に関する。
海水や排水等の淡水化処理や化学工業・食品・医療分野等における有用物の濃縮・回収において、分離膜を用いて所定の成分を分離する技術が広く用いられている。例えば、海水の淡水化処理では、逆浸透膜を用いて海水中に含まれる微粒子、有機物及びシリカ成分等を効率的に除去して淡水化する技術が研究・開発されている。また、他の排水処理や化学工業、食品分野等においても、同様に分離膜を用いて不要成分を除去したり、あるいは有用成分を濃縮・分離する技術が研究・開発されている。
このような分離膜を用いた膜分離技術において問題となるのがファウリング現象である。ファウリング現象とは、有機物や微生物等が分離膜の表面や内孔に吸着することにより、溶液の透過が阻害され、分離膜の分離性能が劣化する現象である。このようなファウリング現象は、付着する物質の種類によって2種類に大別される。一つは、有機物の吸着によるケミカルファウリングであり、もう一つは、微生物の吸着によるバイオファウリングである。
ケミカルファウリングは、排水等の被処理水中に含まれるフミン質や界面活性剤等の有機物が分離膜の表面に堆積したり分離膜の内部に吸着したりすることで、分離膜が目詰まりを起こし、被処理水の透過水量が減少することにより分離性能が低下する現象である。
一方、バイオファウリングは、被処理水中に含まれる微生物が前述のケミカルファウリングにより分離膜に吸着した有機物を栄養源として分離膜の表面や内部で繁殖することで、分離膜が目詰まりを起こし、被処理水の透過水量が減少することにより分離性能が低下する現象である。
一方、バイオファウリングは、被処理水中に含まれる微生物が前述のケミカルファウリングにより分離膜に吸着した有機物を栄養源として分離膜の表面や内部で繁殖することで、分離膜が目詰まりを起こし、被処理水の透過水量が減少することにより分離性能が低下する現象である。
このようなファウリング現象は、分離膜の分離性能を著しく劣化させるため、多くの研究者らがファウリング対策のために鋭意研究を行っている。ファウリング対策の代表的なものとしては、定期的に分離膜を洗浄して吸着物を除去する洗浄法や、分離膜自体をファウリング抑制物質で形成したファウリング抑制膜を使用するもの等が挙げられる。
しかしながら、洗浄法によるファウリング対策では、分離膜を定期的に洗浄する必要があるため手間がかかるといった不都合があった。また、洗浄工程で薬品を使用することによる処理水の汚染や、洗浄を繰り返すことにより分離膜自体の劣化が進行し、分離性能が低下するという不都合もあった。
また、ファウリング抑制膜を使用する対策方法にあっては、例えばセミIPN耐ファウリング性UF膜を使用する場合や、水処理用ハイフラックス酢酸セルロース中空糸(HFCA)膜を使用する方法が挙げられる。
セミIPN耐ファウリング性UF膜は、親水性架橋ポリマーと汎用リニアポリマーで構成されたセミIPN構造を有するUF多孔性膜である(例えば、非特許文献1参照)。
また、HFCA膜は、膜材質が親水性であり分離活性層付近に非常に高い空孔率を有する非対称構造を備えた中空糸膜である(例えば、非特許文献2参照)。
セミIPN耐ファウリング性UF膜は、親水性架橋ポリマーと汎用リニアポリマーで構成されたセミIPN構造を有するUF多孔性膜である(例えば、非特許文献1参照)。
また、HFCA膜は、膜材質が親水性であり分離活性層付近に非常に高い空孔率を有する非対称構造を備えた中空糸膜である(例えば、非特許文献2参照)。
セミIPN耐ファウリング性UF膜やHFCA膜を使用することにより、分離膜へのタンパク質等の吸着や微生物の付着を効果的に抑制することができる。この結果、分離性能の低下を防止することが可能となる。しかしながら、これらの分離膜の製造にはコストがかかり、また膜寿命が短いなどという不都合があった。
従って、かねてから、比較的簡単な処理で効率的にファウリングを防止可能な技術が産業化から望まれていた。
従って、かねてから、比較的簡単な処理で効率的にファウリングを防止可能な技術が産業化から望まれていた。
ところで、本発明の発明者らは、先にホスホリルコリン類似基を有する単量体を構成単位とした重合体を創出している(例えば、特許文献1)。このような重合体は、細胞膜の構成成分であるリン脂質が有するホスホリルコリン類似基を分子内に備えているため、タンパク質や血球との相互作用が極めて弱く、これらの物質の吸着や変性を抑制する性質を有する。更に、このホスホリルコリン類似基を有する単量体と共重合する他の単量体の性質により、得られる共重合体はさまざまな特性を有することが知られている。このような重合体は医療用コーティング材料や化粧品材料、あるいはコンタクトレンズの素材等として、幅広い分野において使用されている。
高田哲生他、「DIC Technical Review」、第6号、第33〜40頁、2000年
中塚修志、「MRC News」、第27号、第174〜179頁、2002年
特許第2870727号公報
しかしながら、ホスホリルコリン類似基を有する重合体でファウリング防止材として優れた性質を有するものについては、いまだに報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、浄水処理、化学工業、食品分野、医療分野等において使用される分離膜に対して、比較的簡単な処理で既存の分離膜の耐ファウリング性を向上させるファウリング防止材及び耐ファウリング性を備えた分離膜を提供することにある。
今回発明者らは、上述のホスホリルコリン類似基を有する重合体を既存の分離膜の処理剤として使用することにより、分離膜の耐ファウリング性を顕著に向上させることができるという新たな知見を得るに至った。
すなわち、上記課題を解決するために、請求項1のファウリング防止材は、下記一般式(1)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体を構成単位として少なくとも含む重合体を含有することにより解決される。
この場合、請求項2のように、前記ホスホリルコリン類似基含有単量体が、下記一般式(2)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素またはメチル基である。)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体であると好ましい。
特に請求項3のように、前記ホスホリルコリン類似基含有単量体が、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートであると好適である。
特に請求項3のように、前記ホスホリルコリン類似基含有単量体が、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートであると好適である。
また、請求項4のファウリング防止材のように、請求項1乃至4の要件に加えて、前記重合体が、下記一般式(3)
(式中、R7は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R8は水素またはメチル基である。)で示される炭化水素基含有単量体を構成単位として更に含有すると更によい。
この場合特に、請求項5のファウリング防止材のように、前記炭化水素基含有単量体が、メタクリル酸n−ブチルであると好適である。
この場合特に、請求項5のファウリング防止材のように、前記炭化水素基含有単量体が、メタクリル酸n−ブチルであると好適である。
また、上記課題は、請求項6のファウリング防止材によれば、下記一般式(4)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素またはメチル基を示し、R7は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R8は水素またはメチル基を示し、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から40/60であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体及び炭化水素基含有単量体の共重合体を含むことにより解決される。
この場合、特に請求項7のように、前記共重合体が、下記一般式(5)
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から40/60であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体であることが好ましい。
この場合、特に請求項7のように、前記共重合体が、下記一般式(5)
また、請求項8のファウリング防止材のように、請求項1乃至4の要件に加えて、前記重合体が、下記一般式(6)
(式中、R9は炭素数1〜3の2価の炭化水素基を示し、R10、R11、R12は同一あるいは異なってもよく炭素数1〜3のオキシアルキレン基であり、このうち1または2つはメチル基であってもよく、R13は水素またはメチル基である。)で示される有機ケイ素基含有単量体を構成単位として更に含有すると好適である。
この場合、特に請求項9のように、前記有機ケイ素基含有単量体が、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項4記載のファウリング防止材。
この場合、特に請求項9のように、前記有機ケイ素基含有単量体が、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項4記載のファウリング防止材。
また、上記課題は、請求項10のファウリング防止材によれば、下記一般式(7)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素またはメチル基を示し、R9は炭素数1〜3の2価の炭化水素基を示し、R10、R11、R12は同一あるいは異なってもよく炭素数1〜3のオキシアルキレン基であり、このうち1または2つはメチル基であってもよく、R13は水素またはメチル基を示し、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは50/50から99/1であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体を含んでいる。
この場合、特に請求項11のように、前記共重合体が、下記一般式(8)
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは50/50から99/1であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示されるで示されるホスホリルコリン類似基含有単量体及び有機ケイ素基含有単量体の共重合体を含むことにより解決される。
また、上記課題は、請求項12によれば、請求項1乃至11のいずれか1に記載のファウリング防止材で表面処理された分離膜により解決される。
特に請求項13の分離膜のように、前記分離膜が、ポリアミド系分離膜またはセラミックス系分離膜であると好適である。
本発明によれば、分離膜に処理することによりタンパク質等の有機物や微生物の分離膜への付着を顕著に抑制しうるファウリング防止材を提供することが可能となる。そして、本発明のファウリング防止材で既存の分離膜の表面処理を施すという比較的簡単な処理により、分離膜の耐ファウリング性を顕著に向上させることが可能となる。
また、このようなファウリング防止材で表面処理された分離膜は耐ファウリング性が向上されるため、膜分離効率の低下防止、膜寿命の向上および作業コストの削減を図ることが可能となる。
また、このようなファウリング防止材で表面処理された分離膜は耐ファウリング性が向上されるため、膜分離効率の低下防止、膜寿命の向上および作業コストの削減を図ることが可能となる。
本発明のファウリング防止材は、ホスホリルコリン類似基を有するホスホリルコリン類似基含有単量体を構成成分として重合された重合体であって、逆浸透膜や限外濾過膜等の分離膜の耐ファウリング防止材として特に好適に使用されるものである。
本発明のファウリング防止材は、下記一般式(1)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基である。)ホスホリルコリン類似基含有単量体を構成単位として少なくとも含む重合体(以下、ホスホリルコリン類似基含有重合体)を含有するものである。
本発明で用いるファウリング防止材に含まれる重合体の原料としてのホスホリルコリン類似基含有単量体は、分子内に二重結合を有し、側鎖が上記一般式(1)で示されるホスホリルコリン類似基を分子内に含有する単量体である。このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(スチリルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシカルボニル)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシカルボニル)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アクリロイルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ブテロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(クロトノイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート等が挙げられる。
このような化合物のうち、重合性に優れ、原料の入手が容易であるなどの理由から、特に(メタ)アクリロイル基を有する化号物であることが好ましい。具体的には、下記一般式(2)で示される化合物が好適である。
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基、R6は水素またはメチル基である。)
より好ましくは、入手が容易などの理由から、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(MPC)}がよい。
より好ましくは、入手が容易などの理由から、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(MPC)}がよい。
本発明のファウリング防止材は、上記一般式(1)のホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含んでいる。このホスホリルコリン類似基は、生体膜の構成成分の1つであるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と類似した構造をしているため、優れた生体適合性を示す。従って、このようなホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体で表面処理された分離膜は、生体膜表面と同様に表面にホスホリルコリン類似基が配向しており、このためタンパク質などの有機物との相互作用が極めて弱く、これらの有機物が分離膜表面や内部に吸着することを抑制すると考えられる。
また、ホスホリルコリン類似基は、リン酸基のマイナス電荷とコリン基のプラス電荷が分子内で打ち消しあうため、電気的に中性な官能基として挙動する。従って、生体内の特定のイオンなどと相互作用を起こしにくく、これらのイオンが電気的に結合することが防止されると考えられる。
更に、一般式(1)のホスホリルコリン類似基を側鎖に有する単量体は、特に重合性の点から、上記一般式(2)で示される(メタ)アクリロイル基を分子内に有するものが好ましい。このような(メタ)アクリロイル基を分子内に有する単量体は、重合体の形成が容易であり、重合開始剤の濃度等の条件により所望の重量分子量を有する重合体を比較的容易に合成することができる。
また、(メタ)アクリロイル基を有する単量体は、共重合の相手を選択することで、生成される共重合体の性質にバリエーションを持たせることが可能となっている。
本発明のファウリング防止材は、上記一般式(1)で示されるホスホリルコリン類似基を分子内に含むものであれば好適にファウリングを防止することが可能である。従って、ホスホリルコリン類似基含有重合体としては、ホスホリルコリン類似基含有単量体のみを構成単位とする重合体(ホモポリマー)であってもよい。
本発明のファウリング防止材は、上記一般式(1)で示されるホスホリルコリン類似基を分子内に含むものであれば好適にファウリングを防止することが可能である。従って、ホスホリルコリン類似基含有重合体としては、ホスホリルコリン類似基含有単量体のみを構成単位とする重合体(ホモポリマー)であってもよい。
しかしながら、2種類以上の単量体を構成単位として含む共重合(コポリマー)として、共重合する相手を適便選択することにより、更に効率よくファウリングを防止することが可能な重合体を生成することが可能となる。
このような共重合の相手となる単量体として、側鎖に疎水性基を含む単量体や、側鎖に反応性の官能基を有する単量体などが挙げられる。以下に、側鎖に疎水性基を含む単量体から合成される共重合体(以下、疎水性共重合体)と、側鎖に反応性の官能基を有する単量体から合成される共重合体(以下、反応性共重合体)について説明する。
このような共重合の相手となる単量体として、側鎖に疎水性基を含む単量体や、側鎖に反応性の官能基を有する単量体などが挙げられる。以下に、側鎖に疎水性基を含む単量体から合成される共重合体(以下、疎水性共重合体)と、側鎖に反応性の官能基を有する単量体から合成される共重合体(以下、反応性共重合体)について説明する。
(疎水性共重合体)
上記のような疎水性基を含む単量体としては、ビニル基や(メタ)アクリロイル基などの反応性の置換基と炭化水素基を分子内に含有する単量体が挙げられる。このような炭化水素基含有単量体をホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合の相手として選択すると、反応性の置換基とホスホリルコリン類似基含有単量体の反応性の置換基が反応して共重合体を形成すると共に、生成する共重合体は側鎖に疎水性の置換基を有するものとなる。
上記のような疎水性基を含む単量体としては、ビニル基や(メタ)アクリロイル基などの反応性の置換基と炭化水素基を分子内に含有する単量体が挙げられる。このような炭化水素基含有単量体をホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合の相手として選択すると、反応性の置換基とホスホリルコリン類似基含有単量体の反応性の置換基が反応して共重合体を形成すると共に、生成する共重合体は側鎖に疎水性の置換基を有するものとなる。
このような単量体としては、具体的には下記一般式(3)
(式中、R7は炭素数1〜4の2価の炭化水素基、R8は水素またはメチル基である。)で示される炭化水素基含有単量体が好ましい。
このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
より好ましくは、入手が容易である点や、ホスホリルコリン類似基単量体との重合性に優れている点などから、メタクリル酸n−ブチル(BMA)}が好ましい。
このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
より好ましくは、入手が容易である点や、ホスホリルコリン類似基単量体との重合性に優れている点などから、メタクリル酸n−ブチル(BMA)}が好ましい。
上記一般式(3)の単量体は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するため、ホスホリルコリン類似基含有単量体の(メタ)アクリロイル基と安定な共重合体を形成する。
そして、このような単量体から合成される重合体は、疎水性のアルキル基を分子内に有している。ホスホリルコリン類似基含有単量体から合成される重合体は、両親媒性のホスホリルコリン類似基を分子内に含有しているため、水などの極性溶媒への溶解度が高く溶媒に溶出しやすい性質を有している。このため、共重合の相手として疎水性基を分子内に含有する単量体を選択することで、適度な水溶性を有し溶媒に溶出しにくい重合体とすることが可能となる。
また、表面に疎水性官能基を有する分離膜などに適用した場合、疎水性相互作用により分離膜表面に強固に吸着させることが可能となる。
従って、このような共重合体を含むファウリング防止材で表面処理された分離膜は、有機物や微生物の膜表面への吸着を長期にわたって安定的に防止することが可能となる。
そして、このような単量体から合成される重合体は、疎水性のアルキル基を分子内に有している。ホスホリルコリン類似基含有単量体から合成される重合体は、両親媒性のホスホリルコリン類似基を分子内に含有しているため、水などの極性溶媒への溶解度が高く溶媒に溶出しやすい性質を有している。このため、共重合の相手として疎水性基を分子内に含有する単量体を選択することで、適度な水溶性を有し溶媒に溶出しにくい重合体とすることが可能となる。
また、表面に疎水性官能基を有する分離膜などに適用した場合、疎水性相互作用により分離膜表面に強固に吸着させることが可能となる。
従って、このような共重合体を含むファウリング防止材で表面処理された分離膜は、有機物や微生物の膜表面への吸着を長期にわたって安定的に防止することが可能となる。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と炭化水素基含有単量体との共重合体としては、具体的には、下記一般式(4)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基、R6は水素またはメチル基、R7は炭素数1〜4の2価の炭化水素基、R8は水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から40/60であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体が好ましい。
特に、ホスホリルコリン類似基含有単量体としてMPC、炭化水素基含有単量体としてBMAの組み合わせにより合成される共重合体が好ましい。具体的には、下記一般式(5)
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から40/60であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体が好適である。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と炭化水素基含有単量体との共重合体において、ホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合体中での含有割合は、モル分率(すなわち、m/m+n)で0.05〜0.4であればよく、特に0.1〜0.3の範囲が好ましい。ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.05以下ではファウリング効果が十分に発現せず好ましくない。
一方、ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.4以上では、共重合体の分離溶媒への溶解度が高くなるため好ましくない。
一方、ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.4以上では、共重合体の分離溶媒への溶解度が高くなるため好ましくない。
また、共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは、10,000〜5,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000である。重合体の重量平均分子量が10,000より少ないと、極性溶媒への溶解度が大きくなるため好ましくない。一方、重量平均分子量が5,000,000より多いと、極性溶媒への溶解性が低下しすぎることがあるため好ましくない。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と炭化水素基含有単量体の共重合体の種類としては、交互共重合体,ランダム共重合体,ブロック共重合体,ランダム共重合体など、公知の重合体のいずれであってもよい。各単量体の重合は、溶液重合,塊状重合,乳化重合,懸濁重合等の公知の方法を用いて行われる。この際、必要に応じて重合系を、窒素,二酸化炭素,ヘリウム等の不活性ガスで置換して、あるいはこの不活性ガスの雰囲気下において重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間の重合条件でラジカル重合させる方法等により調製する事ができる。
重合に際しては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(2−アミジノプロピル)二塩酸塩、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2 −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート等が挙げられる。特に、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリルが好適である。
これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても混合物で用いてもよい。また、重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いても良い。重合開始剤の使用量は、単量体組成物100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。反応温度は40〜80℃、好ましくは50〜70℃である。
ラジカル重合開始剤の種類や濃度、反応時間や反応温度などを適便選択することにより、所望の重量平均分子量を有する共重合体を得ることが可能となる。
また、重合体の精製は、再沈殿法、透析法、精密濾過法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
ラジカル重合開始剤の種類や濃度、反応時間や反応温度などを適便選択することにより、所望の重量平均分子量を有する共重合体を得ることが可能となる。
また、重合体の精製は、再沈殿法、透析法、精密濾過法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
(反応性共重合体)
また、側鎖に反応性の官能基を有する単量体としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、一般式:Y−CH2SiX3(Xはアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基、Yはビニル基,アクリロキシ基,メタクリロキシ基,エポキシ基,アミノ基などの反応性の置換基)で示される有機ケイ素化合物である。このようなシランカップリング剤をホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合の相手として選択すると、シランカップリング剤の反応性の置換基とホスホリルコリン類似基含有単量体の反応性の置換基が反応して共重合体を形成すると共に、生成する共重合体は側鎖に加水分解性の置換基を有するものとなる。
また、側鎖に反応性の官能基を有する単量体としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、一般式:Y−CH2SiX3(Xはアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基、Yはビニル基,アクリロキシ基,メタクリロキシ基,エポキシ基,アミノ基などの反応性の置換基)で示される有機ケイ素化合物である。このようなシランカップリング剤をホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合の相手として選択すると、シランカップリング剤の反応性の置換基とホスホリルコリン類似基含有単量体の反応性の置換基が反応して共重合体を形成すると共に、生成する共重合体は側鎖に加水分解性の置換基を有するものとなる。
このような単量体としては、具体的には下記一般式(6)
(式中、R9は炭素数1〜3の2価の炭化水素基、R10、R11、R12は同一あるいは異なってもよく炭素数1〜3のオキシアルキレン基であり、このうち1または2つはメチル基であってもよく、R13は水素またはメチル基である。)で示される有機ケイ素基含有単量体であることが好ましい。
上記一般式(6)の化合物としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジエトキシシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジエトキシシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジプロポキシシラン等が挙げられる。
このうち、入手が容易である点や、ホスホリルコリン類似基単量体との重合性に優れている点などから、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(3−MPTS)}が好ましい。
上記一般式(6)の化合物としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジエトキシシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジエトキシシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジプロポキシシラン等が挙げられる。
このうち、入手が容易である点や、ホスホリルコリン類似基単量体との重合性に優れている点などから、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(3−MPTS)}が好ましい。
上記一般式(6)の単量体は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するため、ホスホリルコリン類似基含有単量体の(メタ)アクリロイル基と安定な共重合体を形成する。
そして、このような単量体から合成される重合体は、加水分解性のオキシアルキレン基を分子内に有している。このオキシアルキレン基は、水中で加水分解してシラノール基(SiOH)を形成する。このシラノール基は不安定であるため、時間の経過と共に他の重合体中のシラノール基や分子内の他のシラノール基と部分的に縮合し、重合体分子間あるいは重合体分子内で安定な架橋構造を形成する。
またシラノール基は、後述する分離膜の表面に存在する水酸基(M−OH)と脱水反応を起こし、安定なシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する。
そして、このような単量体から合成される重合体は、加水分解性のオキシアルキレン基を分子内に有している。このオキシアルキレン基は、水中で加水分解してシラノール基(SiOH)を形成する。このシラノール基は不安定であるため、時間の経過と共に他の重合体中のシラノール基や分子内の他のシラノール基と部分的に縮合し、重合体分子間あるいは重合体分子内で安定な架橋構造を形成する。
またシラノール基は、後述する分離膜の表面に存在する水酸基(M−OH)と脱水反応を起こし、安定なシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と有機ケイ素基含有単量体との共重合体は、上述のような重合体分子間の安定した架橋構造を有しているため、溶媒への溶解度が小さく溶媒中へ溶出しにくくなり、長期にわたって分離膜表面を被覆する。また、このような架橋構造により、分離膜表面にホスホリルコリン類似基が密に集合した表面層を形成するため、溶媒中のタンパク質などの有機物が分離膜表面に付着しにくくなる。
更に、分離膜表面の官能基とのシロキサン結合により、共重合体は分離膜表面に強固に結合して膜表面から剥離しにくくなる。
従って、このような共重合体を含むファウリング防止材で表面処理された分離膜は、有機物や微生物の膜表面への吸着を長期にわたって安定的に防止することが可能となる。
更に、分離膜表面の官能基とのシロキサン結合により、共重合体は分離膜表面に強固に結合して膜表面から剥離しにくくなる。
従って、このような共重合体を含むファウリング防止材で表面処理された分離膜は、有機物や微生物の膜表面への吸着を長期にわたって安定的に防止することが可能となる。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と有機ケイ素基含有単量体との共重合体としては、具体的には、下記一般式(7)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基、R6は水素またはメチル基、R9は炭素数1〜3の2価の炭化水素基、R10、R11、R12は同一あるいは異なってもよく炭素数1〜3のオキシアルキレン基であり、このうち1または2つはメチル基であってもよく、R13は水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは50/50から99/1であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体が好ましい。
特に、ホスホリルコリン類似基含有単量体としてMPC、有機ケイ素基含有単量体として3−MPTSの組み合わせにより合成される共重合体が好ましい。具体的には、下記一般式(8)
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲である。)で示される共重合体(以下、PMSi)が好適である。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と有機ケイ素基含有単量体との共重合体において、ホスホリルコリン類似基含有単量体の共重合体中での含有割合は、モル分率(すなわち、m/m+n)で0.5〜0.99であればよく、特に0.8〜0.99の範囲が好ましい。ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.5以下ではシラノール基の反応密度が高くなり、分子鎖の運動が抑制されるために膜の透過抵抗となって性能を低下させる。またファウリング効果も損なわれるため好ましくない。
一方、ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.99以上では、有機ケイ素基含有単量体の重合体中での含有割合が低くなるため、シラノール基の縮合による安定な架橋構造や分離膜表面の水酸基とのシロキサン結合が形成されにくくなり好ましくない。
一方、ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.99以上では、有機ケイ素基含有単量体の重合体中での含有割合が低くなるため、シラノール基の縮合による安定な架橋構造や分離膜表面の水酸基とのシロキサン結合が形成されにくくなり好ましくない。
また、共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは、10,000〜5,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000である。重合体の重量平均分子量が10,000より少ないと、溶媒への溶解度が大きくなるため好ましくない。一方、重量平均分子量が5,000,000より多いと、溶媒への溶解性が低下しすぎることがあるため好ましくない。
ホスホリルコリン類似基含有単量体と有機ケイ素基含有単量体の共重合体の種類としては、上述の炭化水素基含有単量体とホスホリルコリン類似基含有単量体の重合の場合と同様に、交互共重合体,ランダム共重合体,ブロック共重合体,ランダム共重合体など、公知の重合体のいずれであってもよい。各単量体の重合は、溶液重合,塊状重合,乳化重合,懸濁重合等の公知の方法を用いて行われる。この際、必要に応じて重合系を、窒素,二酸化炭素,ヘリウム等の不活性ガスで置換して、あるいはこの不活性ガスの雰囲気下において重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間の重合条件でラジカル重合させる方法等により調製する事ができる。
重合に際しては、上述の炭化水素基含有単量体の場合と同様の重合開始剤を用いることが可能である。重合温度などの条件についても同様の条件に設定することが可能である。
また、得られた共重合体の精製は、再沈殿法、透析法、精密濾過法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
また、得られた共重合体の精製は、再沈殿法、透析法、精密濾過法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
上記ホスホリルコリン類似基含有重合体を溶解する溶媒としては、水、各種緩衝溶液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ニトロメタンなどが挙げられる。また、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒を使用することも可能である。混合溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシド、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、イソプロピルエーテル、四塩化炭素、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤と水との混合物等が挙げられる。
本発明のホスホリルコリン類似基含有重合体は、上述のようにタンパク質などを吸着させにくい性質を備えているため、ファウリング防止材として使用すると特に有効である。更に、本発明のファウリング防止材には、ホスホリルコリン類似基含有重合体のファウリング防止効果を妨げない範囲内で、酸、アルカリ、キレート剤、酸化剤、還元剤、海面活性座、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤、スケール防止剤などの各種成分を配合することが可能である。
本発明のファウリング防止材は、逆浸透膜(RO)、限外濾過膜(UF)、精密濾過膜(MF)、透析膜(ED)、イオン交換膜(IEM)など各種の分離膜に適用することができる。
逆浸透膜は粒径が0.5nm〜5nm程度の粒子を阻止する多孔質の分離膜であり、主として海水や排水の淡水化処理に用いられる分離膜である。逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース系、ポリアミド系などの有機材料や、セラミックスなどの無機材料が挙げられる。逆浸透膜の構造としては、複数種類の材料からなる非対称膜や複合膜などがある。
逆浸透膜は粒径が0.5nm〜5nm程度の粒子を阻止する多孔質の分離膜であり、主として海水や排水の淡水化処理に用いられる分離膜である。逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース系、ポリアミド系などの有機材料や、セラミックスなどの無機材料が挙げられる。逆浸透膜の構造としては、複数種類の材料からなる非対称膜や複合膜などがある。
限外濾過膜は粒径が2nm〜200nm程度の粒子を阻止する多孔質の分離膜で、主として各種溶液からタンパク質などを分離したり、脱塩などを行う際に使用される。限外濾過膜の材質としては、コロジオン、ゼラチン、セロファン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体や、ポリスルホン酸、ポリエーテルスルホン酸、フッ化ビニリデン、酢酸セルロースなどの有機材料や、セラミックスなどの無機材料により構成される。
精密濾過膜は粒径が50nm〜10μm程度の粒子を阻止する分離膜で、上述の限外濾過膜よりも孔径が大きいため、より分子量の大きい分子などを分離する際に使用される。精密濾過膜の材料としては、酢酸セルロースやポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機材料や、ポリカーボネートやセラミックスなどの無機材料などが使用される。
透析膜は粒径が2nm〜10nm程度の粒子を阻止する分離膜で、主として血液中の尿素やクレアチンなどの老廃物の除去や、タンパク質水溶液などの脱塩の際に使用される。透析膜の材料としては、コロジオン、セロファン、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリルなどが用いられる。
イオン交換膜は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜があり、それぞれ溶媒中の陽イオンや陰イオンを選択的に透過させる分離膜である。イオン交換膜は、電気透析により海水から食塩を製造したり、淡水を製造するなどの際に主として使用される。イオン交換膜の材質としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体などが挙げられる。
通常、これらの分離膜は平板状の平膜として製造されたのち、中空糸型、チューブ型、スパイラル型などの形態に加工されて使用される。本発明のファウリング防止材は、いずれの形態の分離膜であっても好適に適用しうるものである。
本発明のファウリング防止材が適用できる分離膜の材質としては、有機材料や無機材料を問わずに上述の各種材料で構成された分離膜に対して使用することが可能である。特に、ファウリング防止材としてシランカップリング剤を単量体の構成成分とする共重合体の場合には、上述したように共重合体が分離膜表面の水酸基などとシロキサン結合により強固に結合することから、表面に水酸基を有するセラミックスなどが分離膜の材料として好ましい。
上述の各種分離膜に対して本発明のファウリング防止材を表面処理することにより、分離膜へのタンパク質の吸着や微生物の付着を防止することが可能となる。
本発明のファウリング防止材で表面処理される分離膜としては、未使用のものであっても使用済みのものであってもよい。使用済みの分離膜に対して表面処理を行う際には、公知の手法で洗浄するなどして分離膜表面に吸着した有機物や微生物などを予め除去しておくことが好ましい。
本発明のファウリング防止材で表面処理される分離膜としては、未使用のものであっても使用済みのものであってもよい。使用済みの分離膜に対して表面処理を行う際には、公知の手法で洗浄するなどして分離膜表面に吸着した有機物や微生物などを予め除去しておくことが好ましい。
分離膜への表面処理の方法としては、ディップコーティングやスプレーコーティングなど公知のコーティング方法や、ファウリング防止材を含む溶液中に分離膜を所定時間浸漬するなどの方法を適用することができる。表面処理が行われた分離膜は、空気中で自然乾燥して保管することが可能である。
乾燥状態の分離膜に対しては、使用前に親水化処理を行うとよい。親水化処理は、純水に1〜2時間浸漬することで行われるが、界面活性剤などを含む水溶液中で行うことも可能である。また、アセトンや重量パーセント濃度が50%以下のアルコール溶液に浸漬することで行ってもよい。この場合、アルコールの濃度は徐々に高くして段階的に親水化を行うと好適である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下に説明する材料,部材,配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
本例では、ファウリング防止材として2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MPC)とメタクリル酸n−ブチル(以下、BMA)の共重合体(以下、PMB)、MPCと3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(以下、3−MPTS)との共重合体(以下、PMSi)の2種類の共重合体を含有するものを使用した。
また、分離膜として市販の有機材料膜及び無機材料膜を使用した。有機材料膜としてはポリエチレン系分離膜とポリアミド系分離膜、無機材料膜としてはセラミックス系分離膜を使用した。
本例では、ファウリング防止材として2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MPC)とメタクリル酸n−ブチル(以下、BMA)の共重合体(以下、PMB)、MPCと3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(以下、3−MPTS)との共重合体(以下、PMSi)の2種類の共重合体を含有するものを使用した。
また、分離膜として市販の有機材料膜及び無機材料膜を使用した。有機材料膜としてはポリエチレン系分離膜とポリアミド系分離膜、無機材料膜としてはセラミックス系分離膜を使用した。
(PMB30の合成)
MPCとBMAとのモル比が3:7の共重合体(以下、PMB30)を準備した。本発明で用いるPMB30は、「Polymer Journal」,第22巻,第5号,第355−360頁、(1990年)に記載の方法に従って製造した。
具体的には、MPC及びBMAを30mol:70molのモル比でテトラヒドロフラン及びエタノールの混合溶媒中に溶解し、重合開始剤としてα、α´−アゾビスイソブチロニトリルの存在下で60〜65℃、4〜20時間反応させることにより合成した。
MPCとBMAとのモル比が3:7の共重合体(以下、PMB30)を準備した。本発明で用いるPMB30は、「Polymer Journal」,第22巻,第5号,第355−360頁、(1990年)に記載の方法に従って製造した。
具体的には、MPC及びBMAを30mol:70molのモル比でテトラヒドロフラン及びエタノールの混合溶媒中に溶解し、重合開始剤としてα、α´−アゾビスイソブチロニトリルの存在下で60〜65℃、4〜20時間反応させることにより合成した。
(PMSi91の合成)
MPCと3−MPTSとのモル比が約9:1の共重合体(以下、PMSi91)を準備した。このPMSi91をエタノールに溶解して、0.1%のエタノール溶液を調製した。
なお、PMSi91の製法は、以下のとおりである。
所定量のMPC(日本油脂社製)とMPTMS(信越シリコーン社製)を各々エタノール5mlに溶解させた後、モノマー比が90/10となるように混合し、全モノマー濃度が1モル%となるようエタノールで希釈して、100mlのモノマー溶液を調製した。重合開始剤であるAIBN10mMとモノマー溶液をガラス製の反応容器に入れ、窒素置換を10分間行った後に封管した。重合反応は、60℃に設定したオイルバス中で3時間行った。常温に冷却後、開管して3000mlのビーカー中に入れたエーテルとクロロホルムの混合溶液(体積比7:3)2000mlを用いて再沈殿を行った。その後、一晩減圧乾燥を行って得られたものをもう一度エタノール50mlに溶解させて同じ条件で再沈殿を行い、次いで一晩減圧乾燥を行って目的の共重合体を得た。
MPCと3−MPTSとのモル比が約9:1の共重合体(以下、PMSi91)を準備した。このPMSi91をエタノールに溶解して、0.1%のエタノール溶液を調製した。
なお、PMSi91の製法は、以下のとおりである。
所定量のMPC(日本油脂社製)とMPTMS(信越シリコーン社製)を各々エタノール5mlに溶解させた後、モノマー比が90/10となるように混合し、全モノマー濃度が1モル%となるようエタノールで希釈して、100mlのモノマー溶液を調製した。重合開始剤であるAIBN10mMとモノマー溶液をガラス製の反応容器に入れ、窒素置換を10分間行った後に封管した。重合反応は、60℃に設定したオイルバス中で3時間行った。常温に冷却後、開管して3000mlのビーカー中に入れたエーテルとクロロホルムの混合溶液(体積比7:3)2000mlを用いて再沈殿を行った。その後、一晩減圧乾燥を行って得られたものをもう一度エタノール50mlに溶解させて同じ条件で再沈殿を行い、次いで一晩減圧乾燥を行って目的の共重合体を得た。
ファウリング防止効率を評価するため、透過流束及び阻止率を算出した。それぞれの算出方法は以下の通りである。
(透過流束)
透過流束とは、所定の条件で逆浸透分離したときの単位膜面積あたり及び単位時間あたりの膜透過水量である。すなわち、透過流束の径時変化を調べることで、分離膜の透過性能の変化を知ることができる。透過流束は下記の式から算出した。
Jv[m/s]=V[m3]/(d[m]×π×L[m]×T[s])
(式中、Jvは透過流束[m/s]、Vは透過液体積[m3]、dは中空糸膜の外径[m]、Lは膜の長さ[m]、Tはサンプリング時間[s]である。)
(透過流束)
透過流束とは、所定の条件で逆浸透分離したときの単位膜面積あたり及び単位時間あたりの膜透過水量である。すなわち、透過流束の径時変化を調べることで、分離膜の透過性能の変化を知ることができる。透過流束は下記の式から算出した。
Jv[m/s]=V[m3]/(d[m]×π×L[m]×T[s])
(式中、Jvは透過流束[m/s]、Vは透過液体積[m3]、dは中空糸膜の外径[m]、Lは膜の長さ[m]、Tはサンプリング時間[s]である。)
(阻止率)
阻止率とは、供給液中に含まれる着目成分と膜による阻止あるいは保持性能を示す指標であり、原液濃度を基準とした見かけの阻止率Rは以下の式で表される。
R[%]=1−(Cp[mol/l]/Cf[mol/l])
(式中、Rは阻止率[%]、Cfは供給液の濃度[mol/l]、Cpは透過液の濃度[mol/l]である。)
阻止率とは、供給液中に含まれる着目成分と膜による阻止あるいは保持性能を示す指標であり、原液濃度を基準とした見かけの阻止率Rは以下の式で表される。
R[%]=1−(Cp[mol/l]/Cf[mol/l])
(式中、Rは阻止率[%]、Cfは供給液の濃度[mol/l]、Cpは透過液の濃度[mol/l]である。)
<PMB30によるポリエチレン系分離膜の表面処理>
分離膜としてポリエチレン系分離膜、ファウリング防止材としてPMB30を使用して表面処理した実験を行った。
(PMB30による処理)
本実施例では、分離膜としてポリエチレン中空糸膜(以下、PE膜)(旭化成製、細孔径:0.25μm、内径/外径:0.8/1.2mm)を使用した。
上記PE膜の表面処理はディップコーティング法(石原一彦ら;Clinical Engineering,第10巻,第8号,第787〜794頁 (1999年))で行った。PMB30をPE膜表面に吸着させる際、膜が浮いてこないようにするため、洗浄した8本のPE膜の先端に針金を刺した。続いて、PMB30の0.2wt%と、特級エタノールで10倍希釈したPMB30の0.02wt%をそれぞれ20ml試験管に入れた。その後、試験管にPE膜を4本ずつ入れ、試験管の口を閉じて超音波で5分、10分、15分、20分処理を行った。所定時間毎に処理されたPE膜を取り出して、汚れないように薬包紙に包んで自然乾燥を行った。
分離膜としてポリエチレン系分離膜、ファウリング防止材としてPMB30を使用して表面処理した実験を行った。
(PMB30による処理)
本実施例では、分離膜としてポリエチレン中空糸膜(以下、PE膜)(旭化成製、細孔径:0.25μm、内径/外径:0.8/1.2mm)を使用した。
上記PE膜の表面処理はディップコーティング法(石原一彦ら;Clinical Engineering,第10巻,第8号,第787〜794頁 (1999年))で行った。PMB30をPE膜表面に吸着させる際、膜が浮いてこないようにするため、洗浄した8本のPE膜の先端に針金を刺した。続いて、PMB30の0.2wt%と、特級エタノールで10倍希釈したPMB30の0.02wt%をそれぞれ20ml試験管に入れた。その後、試験管にPE膜を4本ずつ入れ、試験管の口を閉じて超音波で5分、10分、15分、20分処理を行った。所定時間毎に処理されたPE膜を取り出して、汚れないように薬包紙に包んで自然乾燥を行った。
(親水化処理)
続いて、PMB30で処理されたPE膜に対して透過実験を行うため、親水化処理を行った。親水化処理の条件は、0.02wt%のPMB30でコーティングしたPE膜を、1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬、3)15%エタノール中で1時間浸漬、4)30%エタノール中で24時間浸漬、5)アセトン中に2時間浸漬、の5種類の条件で行った。
また、比較例として、PMB30で処理していない基材のみのPE膜を準備し、PMB30で処理されたPE膜と同様に実験を行った。
続いて、PMB30で処理されたPE膜に対して透過実験を行うため、親水化処理を行った。親水化処理の条件は、0.02wt%のPMB30でコーティングしたPE膜を、1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬、3)15%エタノール中で1時間浸漬、4)30%エタノール中で24時間浸漬、5)アセトン中に2時間浸漬、の5種類の条件で行った。
また、比較例として、PMB30で処理していない基材のみのPE膜を準備し、PMB30で処理されたPE膜と同様に実験を行った。
(透水実験)
製膜条件が透過流束に与える影響を透過性能から検討した。図1は透水実験で使用した試験装置の説明図である。この図に示すように、膜の両先端に注射針のカテーテル(テルモ製、サーフローフラッシュ、24G×3/4 SR−FS2419)を刺しこみ、プラスチック用接着剤(3M社製、Scotch3M強力接着剤、CAT.No.6225)で固定して分離膜を装置に設置した。
本試験装置で使用したポンプはMasterflex社製、MASTERFREX L/S、チューブはMasterflex社製 MASTERタイゴンチューブ、電子天秤は島津製作所製 BL−22OH、三方コックはテルモ社製 テルフュージョン三方活弁 TS−TL1K、注射針はテルモ社製サーフローフラッシュ 24G×3/4をそれぞれ使用した。
透過した供給液は純水であり、実験条件はすべてクロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。測定は時間毎の透過液量を測り、透過流束を算出した。
製膜条件が透過流束に与える影響を透過性能から検討した。図1は透水実験で使用した試験装置の説明図である。この図に示すように、膜の両先端に注射針のカテーテル(テルモ製、サーフローフラッシュ、24G×3/4 SR−FS2419)を刺しこみ、プラスチック用接着剤(3M社製、Scotch3M強力接着剤、CAT.No.6225)で固定して分離膜を装置に設置した。
本試験装置で使用したポンプはMasterflex社製、MASTERFREX L/S、チューブはMasterflex社製 MASTERタイゴンチューブ、電子天秤は島津製作所製 BL−22OH、三方コックはテルモ社製 テルフュージョン三方活弁 TS−TL1K、注射針はテルモ社製サーフローフラッシュ 24G×3/4をそれぞれ使用した。
透過した供給液は純水であり、実験条件はすべてクロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。測定は時間毎の透過液量を測り、透過流束を算出した。
(タンパク質の透過実験)
タンパク質の1種であるパパインをモデルタンパク質として、PMB処理したPE膜のタンパク質含有溶液に対するファウリング抑制効果を確認した。また、製膜条件が透過流束に与える影響についても検討した。以下に、具体的な実験方法について説明する。
パパイン(和光純薬工業製 116−00717)を純水中に100ppmとなるように溶解し、クロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。この条件のもと、所定時間毎に透過液量と透過液濃度を測定し、透過流束と阻止率と算出した。透過流束と阻止率は上述した計算式を用いて算出した。なお、透過液濃度は分光光度計を用いて、吸光波長280nmでの吸光度に基づいて算出した。
タンパク質の1種であるパパインをモデルタンパク質として、PMB処理したPE膜のタンパク質含有溶液に対するファウリング抑制効果を確認した。また、製膜条件が透過流束に与える影響についても検討した。以下に、具体的な実験方法について説明する。
パパイン(和光純薬工業製 116−00717)を純水中に100ppmとなるように溶解し、クロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。この条件のもと、所定時間毎に透過液量と透過液濃度を測定し、透過流束と阻止率と算出した。透過流束と阻止率は上述した計算式を用いて算出した。なお、透過液濃度は分光光度計を用いて、吸光波長280nmでの吸光度に基づいて算出した。
<結果>
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)親水化処理法の影響
上記5種類の親水化条件で親水化処理を行ったPE膜に対して透過実験を行った。この結果、上記5)のアセトンで親水化処理したPE膜のみに対して透過が見られた。これは、アセトンにより膜の親疎水性の変化が起こったためと考えられる。この結果から、ポリエチレン膜での親水化処理にはアセトンに浸漬することが最もよいことがわかった。
これ以降のPE膜のPMB30での親水化処理は、アセトンに2時間浸漬させて行うものとする。
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)親水化処理法の影響
上記5種類の親水化条件で親水化処理を行ったPE膜に対して透過実験を行った。この結果、上記5)のアセトンで親水化処理したPE膜のみに対して透過が見られた。これは、アセトンにより膜の親疎水性の変化が起こったためと考えられる。この結果から、ポリエチレン膜での親水化処理にはアセトンに浸漬することが最もよいことがわかった。
これ以降のPE膜のPMB30での親水化処理は、アセトンに2時間浸漬させて行うものとする。
(2)吸着時間の影響
0.2wt%PMB30溶液でそれぞれ10分、15分、20分間吸着させたPE膜を用いて透水実験を行い、各処理条件での透水性能から吸着時間の影響について検討した。図2はPE膜の透水性能に対するPMB処理時間の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、いずれの吸着時間であっても透水性能に変わりがなく、高い透水性能を有することが確認できる。
0.2wt%PMB30溶液でそれぞれ10分、15分、20分間吸着させたPE膜を用いて透水実験を行い、各処理条件での透水性能から吸着時間の影響について検討した。図2はPE膜の透水性能に対するPMB処理時間の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、いずれの吸着時間であっても透水性能に変わりがなく、高い透水性能を有することが確認できる。
(3)PMB30濃度の影響
PMB30の0.2wt%及び0.02wt%を10分、15分間吸着させたPE膜で透水実験を行った。図3はPE膜の透水性能に対するPMB濃度の影響を示すグラフである。このうち図3(a)は未処理のPE膜にPMB30を10分間吸着させた結果、図3(b)は15分間吸着させた結果である。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、10分及び15分間のどちらの処理時間においても、0.02wt%で吸着させた膜のほうが若干高い透水性能を示した。これは、濃度が低い溶液のほうがPE膜に対するPMB30の吸着量が少ないため、高い透水性能を示すと考えられる。
PMB30の0.2wt%及び0.02wt%を10分、15分間吸着させたPE膜で透水実験を行った。図3はPE膜の透水性能に対するPMB濃度の影響を示すグラフである。このうち図3(a)は未処理のPE膜にPMB30を10分間吸着させた結果、図3(b)は15分間吸着させた結果である。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、10分及び15分間のどちらの処理時間においても、0.02wt%で吸着させた膜のほうが若干高い透水性能を示した。これは、濃度が低い溶液のほうがPE膜に対するPMB30の吸着量が少ないため、高い透水性能を示すと考えられる。
(4)タンパク質の透過性能
0.02wt%PMB30で10分、15分、20分間吸着させたPE膜を用いて、パパイン水溶液の透過実験を行った。図4はPMB吸着時間の変化に対するPE膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。この結果から、最初のうちはPMB30を15分間吸着させたPE膜が最も大きいファウリング抑制効果を示した。しかしながら、いずれのPE膜も60〜80分あたりから急激な透過流束の低下がみられた。このことから、時間経過と共にファウリング抑制効果が低下しているものと考えられる。
0.02wt%PMB30で10分、15分、20分間吸着させたPE膜を用いて、パパイン水溶液の透過実験を行った。図4はPMB吸着時間の変化に対するPE膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。この結果から、最初のうちはPMB30を15分間吸着させたPE膜が最も大きいファウリング抑制効果を示した。しかしながら、いずれのPE膜も60〜80分あたりから急激な透過流束の低下がみられた。このことから、時間経過と共にファウリング抑制効果が低下しているものと考えられる。
(5)PMB濃度の影響
0.2wt%及び0.02wt%のPMB30を10分、15分間吸着させたPE膜に対して、パパイン水溶液を用いた透過実験を行った。図5はPMB濃度変化に対するPE膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このうち図5(a)は未処理のPE膜にPMB30を10分間吸着させたPE膜におけるファウリング抑制効果を示すグラフ、図3(b)は15分間吸着させたPE膜におけるファウリング抑制効果を示すグラフ。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。この結果から、0.02wt%PMB30を吸着させたPE膜の方が高い透過流束の値を得ることができた。このことから、PMB30は0.2wt%よりも0.02wt%と低濃度の方が高いファウリング防止効果を示すと考えられる。
しかしながら、いずれの濃度においても、60〜80分あたりから急激な透過流束の低下がみられた。このことから、PE膜表面のPMB30が剥離するなどの原因により、時間経過と共にファウリング抑制効果が低下しているものと考えられる。
0.2wt%及び0.02wt%のPMB30を10分、15分間吸着させたPE膜に対して、パパイン水溶液を用いた透過実験を行った。図5はPMB濃度変化に対するPE膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このうち図5(a)は未処理のPE膜にPMB30を10分間吸着させたPE膜におけるファウリング抑制効果を示すグラフ、図3(b)は15分間吸着させたPE膜におけるファウリング抑制効果を示すグラフ。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。この結果から、0.02wt%PMB30を吸着させたPE膜の方が高い透過流束の値を得ることができた。このことから、PMB30は0.2wt%よりも0.02wt%と低濃度の方が高いファウリング防止効果を示すと考えられる。
しかしながら、いずれの濃度においても、60〜80分あたりから急激な透過流束の低下がみられた。このことから、PE膜表面のPMB30が剥離するなどの原因により、時間経過と共にファウリング抑制効果が低下しているものと考えられる。
(6)膜の状態変化による影響
0.02wt%のPMB30を10分間吸着させたPE膜を上記(PMB濃度の影響)でパパイン水溶液に透過させる実験を行った後、再度アセトンで親水化処理を施し、純水及びパパイン水溶液を使用して透過実験を行った。図6はPMB処理膜の状態変化を示すグラフである。図6(a)はPMB処理膜を再度アセトンで親水化処理して純水及びパパイン水溶液を用いて透過実験を行った結果を示すグラフ、図6(b)は基材膜をアセトンに2時間浸漬したPE膜とPMB処理膜を再度アセトンで親水化処理したPE膜のそれぞれについて透過実験を行った結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。図6(a)の結果から、再度親水化処理を行っても透過流束は半分程度しか回復しないことがわかった。この結果から、PE膜の状態が変化している可能性は低いことがわかった。
また、図6(b)の結果から、基材膜をアセトンに2時間浸漬させたPE膜と、アセトンで再度親水化したPE膜とでは、同じ透過流束の挙動を示すことがわかった。
図6(a)及び(b)の結果から、PMB処理されたPE膜は、PE膜表面でパパインとPMBとの間で競争・置換吸着が起きており、時間の経過と共にPMBが膜表面から剥離していると考えられる。
0.02wt%のPMB30を10分間吸着させたPE膜を上記(PMB濃度の影響)でパパイン水溶液に透過させる実験を行った後、再度アセトンで親水化処理を施し、純水及びパパイン水溶液を使用して透過実験を行った。図6はPMB処理膜の状態変化を示すグラフである。図6(a)はPMB処理膜を再度アセトンで親水化処理して純水及びパパイン水溶液を用いて透過実験を行った結果を示すグラフ、図6(b)は基材膜をアセトンに2時間浸漬したPE膜とPMB処理膜を再度アセトンで親水化処理したPE膜のそれぞれについて透過実験を行った結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。図6(a)の結果から、再度親水化処理を行っても透過流束は半分程度しか回復しないことがわかった。この結果から、PE膜の状態が変化している可能性は低いことがわかった。
また、図6(b)の結果から、基材膜をアセトンに2時間浸漬させたPE膜と、アセトンで再度親水化したPE膜とでは、同じ透過流束の挙動を示すことがわかった。
図6(a)及び(b)の結果から、PMB処理されたPE膜は、PE膜表面でパパインとPMBとの間で競争・置換吸着が起きており、時間の経過と共にPMBが膜表面から剥離していると考えられる。
<まとめ>
以上、各種条件下でPMBを用いて表面処理したPE膜について透水実験、透過実験を行った。この結果から、吸着時間やPMB濃度は膜性能自体に影響があまりないことが確認できた。また、図4及び図5に示すように、いずれの条件で表面処理したPE膜についても、0〜60時間程度の短時間ではファウリング抑制効果を確認することができたが、60〜80分あたりから透過流束の低下が見られ、ファウリング抑制効果を確認することが困難となった。
以上、各種条件下でPMBを用いて表面処理したPE膜について透水実験、透過実験を行った。この結果から、吸着時間やPMB濃度は膜性能自体に影響があまりないことが確認できた。また、図4及び図5に示すように、いずれの条件で表面処理したPE膜についても、0〜60時間程度の短時間ではファウリング抑制効果を確認することができたが、60〜80分あたりから透過流束の低下が見られ、ファウリング抑制効果を確認することが困難となった。
<PMSiによるセラミックス系分離膜の表面処理>
分離膜としてセラミックス系分離膜、ファウリング防止材としてPMSi91を使用して表面処理した実験を行った。
(PMSi91による処理)
本実施例では、分離膜として多孔質ガラス膜(以下、SPG膜)(テクノ株式会社製、SPG、細孔径;0.05μm、内径/外径;4.1/5.1mm)を使用した。
上記SPG膜への表面処理はシランカップリング法により行った。表面処理を行う前に、SPG膜を2Nの塩酸、純水の順に洗浄し、乾燥させた。続いて、0.2wt%のPMSi91を特級エタノールで10倍希釈した(0.02wt%)。また、1級エタノールで希釈して、5.87×10−3Mの酢酸溶液を作成した。試験管に0.02wt%のPMSi91を20ml入れ、続いて3本のSPG膜と作成した酢酸溶液を2ml加えた。その後、試験管の口を閉じて、超音波で15分、60分、180分間処理を行ってSPG膜とPMSiを反応させた。それぞれの時間毎に処理されたSPG膜を取り出して、20分間エタノール雰囲気下で乾燥させた。このとき、飽和状態にするために、3Lビーカー中で乾燥を行った。恒温乾燥機(東京理化機器株式会社製、EYELA NDO−400W)内で60℃、60分間熱処理を行った。
分離膜としてセラミックス系分離膜、ファウリング防止材としてPMSi91を使用して表面処理した実験を行った。
(PMSi91による処理)
本実施例では、分離膜として多孔質ガラス膜(以下、SPG膜)(テクノ株式会社製、SPG、細孔径;0.05μm、内径/外径;4.1/5.1mm)を使用した。
上記SPG膜への表面処理はシランカップリング法により行った。表面処理を行う前に、SPG膜を2Nの塩酸、純水の順に洗浄し、乾燥させた。続いて、0.2wt%のPMSi91を特級エタノールで10倍希釈した(0.02wt%)。また、1級エタノールで希釈して、5.87×10−3Mの酢酸溶液を作成した。試験管に0.02wt%のPMSi91を20ml入れ、続いて3本のSPG膜と作成した酢酸溶液を2ml加えた。その後、試験管の口を閉じて、超音波で15分、60分、180分間処理を行ってSPG膜とPMSiを反応させた。それぞれの時間毎に処理されたSPG膜を取り出して、20分間エタノール雰囲気下で乾燥させた。このとき、飽和状態にするために、3Lビーカー中で乾燥を行った。恒温乾燥機(東京理化機器株式会社製、EYELA NDO−400W)内で60℃、60分間熱処理を行った。
(親水化処理)
続いて、PMSi91で処理されたSPG膜に対して透過実験を行うため、親水化処理を行った。親水化処理の条件は、0.02wt%のPMSi91で60分間処理したSPG膜を、1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬して行った。
また、比較例として、PMSi91で処理していない基材のみのSPG膜を準備し、純水に軽く濡らして親水化処理を行った後に、他の分離膜と同様に実験を行った。
続いて、PMSi91で処理されたSPG膜に対して透過実験を行うため、親水化処理を行った。親水化処理の条件は、0.02wt%のPMSi91で60分間処理したSPG膜を、1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬して行った。
また、比較例として、PMSi91で処理していない基材のみのSPG膜を準備し、純水に軽く濡らして親水化処理を行った後に、他の分離膜と同様に実験を行った。
(透水実験)
製膜条件が透過流束に与える影響を透過性能から検討した。試験装置は、上記PMB30の試験装置と同様に、図1に示す試験装置を用いた。また、実験条件についても同様である。
製膜条件が透過流束に与える影響を透過性能から検討した。試験装置は、上記PMB30の試験装置と同様に、図1に示す試験装置を用いた。また、実験条件についても同様である。
(タンパク質の透過実験)
上記PMB30の場合と同様に、パパインをモデルタンパク質として透過試験を行った。また、製膜条件が透過流束に与える影響についても検討した。以下に、具体的な実験方法について説明する。
前述のPMB30とPE膜での実験で使用したものと同じパパインを純水中に100ppmとなるように溶解し、得られたパパイン水溶液をPMB30の場合と同様に、クロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。
上記PMB30の場合と同様に、パパインをモデルタンパク質として透過試験を行った。また、製膜条件が透過流束に与える影響についても検討した。以下に、具体的な実験方法について説明する。
前述のPMB30とPE膜での実験で使用したものと同じパパインを純水中に100ppmとなるように溶解し、得られたパパイン水溶液をPMB30の場合と同様に、クロスフロー方式、圧力15kPa、流速16ml/min、液温25℃で行った。
<結果>
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)親水化処理条件の影響
PMSi91で60分間処理したSPG膜を1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬の2種類の方法で親水化処理を行い、親水化条件の影響を調べた。図7はSPG膜の透水性能に対するPMSi処理膜の親水化の条件の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この図からわかるように、PMSiで処理した膜は2時間親水化処理したものであっても、24時間処理したものであっても、どちらも透水性を示したが、24時間浸透させた膜のほうが若干ではあるが高い透水性能を示した。
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)親水化処理条件の影響
PMSi91で60分間処理したSPG膜を1)純水中に2時間浸漬、2)純水中に24時間浸漬の2種類の方法で親水化処理を行い、親水化条件の影響を調べた。図7はSPG膜の透水性能に対するPMSi処理膜の親水化の条件の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この図からわかるように、PMSiで処理した膜は2時間親水化処理したものであっても、24時間処理したものであっても、どちらも透水性を示したが、24時間浸透させた膜のほうが若干ではあるが高い透水性能を示した。
(2)PMSi91処理時間の影響
0.02wt%PMSi91溶液で15分、60分、180分間吸着させたSPG膜を用いて透水実験を行い、透水性能から吸着時間の影響について検討した。図8はSPG膜におけるPMSi処理膜の処理時間の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、吸着時間の長さにかかわらず透水性能にあまり変わりがなく、いずれの条件でも高い透水性能を有することが確認できた。
0.02wt%PMSi91溶液で15分、60分、180分間吸着させたSPG膜を用いて透水実験を行い、透水性能から吸着時間の影響について検討した。図8はSPG膜におけるPMSi処理膜の処理時間の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸は透水時間である。この結果から、吸着時間の長さにかかわらず透水性能にあまり変わりがなく、いずれの条件でも高い透水性能を有することが確認できた。
(3)タンパク質の透過性能
0.02wt%PMSi91で15分、60分間処理したSPG膜を用いて、それぞれパパイン水溶液の透過実験を行った。図9はタンパク質に対するPMSi処理膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このうち図9(a)は阻止率の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は阻止率R0であり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。また、図9(b)は透過流束の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。。図9(b)の結果からわかるように、PMSi未処理の基材膜が時間の経過と共に透過流束が低下しているのに対して、PMSiで処理したSPG膜ではいずれの条件で処理を行ったSPG膜であっても透過流束の低下はほとんど見られなかった。
0.02wt%PMSi91で15分、60分間処理したSPG膜を用いて、それぞれパパイン水溶液の透過実験を行った。図9はタンパク質に対するPMSi処理膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。このうち図9(a)は阻止率の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は阻止率R0であり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。また、図9(b)は透過流束の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。。図9(b)の結果からわかるように、PMSi未処理の基材膜が時間の経過と共に透過流束が低下しているのに対して、PMSiで処理したSPG膜ではいずれの条件で処理を行ったSPG膜であっても透過流束の低下はほとんど見られなかった。
このことから、SPG膜をPMSiで処理することにより、長時間にわたって高い効率でファウリングを抑制することができることが判明した。これは、PMSiで処理したSPG膜の表面には、PMSiが被覆しているおり、膜表面とパパインとが相互作用を起こしにくくなったためと考えられる。
また、ファウリング抑制効果を長時間にわたって示したのは、PMSiはシランカップリングによりSPG膜表面の水酸基と強力なシロキサン結合を形成するため、時間の経過にかかわらずPMSiがSPG膜表面から剥がれにくくなっているからと考えられる。
また、ファウリング抑制効果を長時間にわたって示したのは、PMSiはシランカップリングによりSPG膜表面の水酸基と強力なシロキサン結合を形成するため、時間の経過にかかわらずPMSiがSPG膜表面から剥がれにくくなっているからと考えられる。
また、図9(a)の結果からわかるように、処理時間が短いほど阻止率は低いことがわかった。これは、処理時間が長くなると、シランカップリングにより膜孔の表面にPMSiが多く堆積し、この結果膜の孔径が小さくなり、パパインが細孔内部に浸透しにくくなったためと考えられる。
以上の結果より、PMSiによるSPG膜へのファウリング抑制効果を確認することができた。
以上の結果より、PMSiによるSPG膜へのファウリング抑制効果を確認することができた。
(4)供給液圧力の影響の検討
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて供給液圧力を変化させ、パパインの透過実験を行った。条件は、供給液の流速;40ml/min、パパイン水溶液濃度;100ppm、SPG膜;0.02wt%、60minPMSi処理膜である。
図10はSPG膜におけるPMSi処理膜の圧力の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸は供給液の圧力である。この図から、供給液圧力が大きくなるにつれて透過流束の値は大きくなるが、いずれの圧力の場合も透過流束の低下は見られなかった。従って、供給液の圧力を変化させてもPMSi処理されたSPG膜に対してはファウリング抑制効果には影響が無いものと考えられる。
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて供給液圧力を変化させ、パパインの透過実験を行った。条件は、供給液の流速;40ml/min、パパイン水溶液濃度;100ppm、SPG膜;0.02wt%、60minPMSi処理膜である。
図10はSPG膜におけるPMSi処理膜の圧力の影響を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸は供給液の圧力である。この図から、供給液圧力が大きくなるにつれて透過流束の値は大きくなるが、いずれの圧力の場合も透過流束の低下は見られなかった。従って、供給液の圧力を変化させてもPMSi処理されたSPG膜に対してはファウリング抑制効果には影響が無いものと考えられる。
(5)供給液濃度の影響
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて、供給液中のパパイン濃度を変化させて透過実験を行った。図11はSPG膜におけるPMSi処理膜の供給液濃度の影響を示すグラフである。このうち図11(a)は阻止率の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は阻止率R0であり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。また、図11(b)は透過流束の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。図11(b)の結果から、パパインの濃度を10倍にしても透過流束はほとんど変化せず、高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。従って、PMSiで処理されたSPG膜は、供給液中のタンパク質濃度に関係なく高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて、供給液中のパパイン濃度を変化させて透過実験を行った。図11はSPG膜におけるPMSi処理膜の供給液濃度の影響を示すグラフである。このうち図11(a)は阻止率の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は阻止率R0であり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。また、図11(b)は透過流束の径時変化を示すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jwであり、横軸はパパイン水溶液の透過時間である。図11(b)の結果から、パパインの濃度を10倍にしても透過流束はほとんど変化せず、高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。従って、PMSiで処理されたSPG膜は、供給液中のタンパク質濃度に関係なく高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。
(6)PMSi処理膜の長時間性能の検討
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて、パパイン水溶液100ppmに24時間浸漬した後、透水実験を行った。図12はSPG膜におけるPMSi処理膜の長時間性能を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸は透水時間である。
この図から、パパイン水溶液に24時間という長時間浸漬した後であっても、未処理の基材と同等の径時変化をしていることがわかる。従って、PMSiで処理したSPG膜は、長時間にわたって高いファウリング抑制効果を示すことがわかる。
PMSiで60分間処理したSPG膜を用いて、パパイン水溶液100ppmに24時間浸漬した後、透水実験を行った。図12はSPG膜におけるPMSi処理膜の長時間性能を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束Jvであり、横軸は透水時間である。
この図から、パパイン水溶液に24時間という長時間浸漬した後であっても、未処理の基材と同等の径時変化をしていることがわかる。従って、PMSiで処理したSPG膜は、長時間にわたって高いファウリング抑制効果を示すことがわかる。
(7)ナノ粒子に対するPMSi処理膜のファウリング抑制効果
続いて、ポリスチレン粒子などのナノ粒子に対するPMSi処理によるファウリング防止効果について検討を行った。実験では、PMSiで15分間処理したSPG膜を用いて、圧力;30kPa、流速;20ml/min、SPG膜;0.02wt%、15minPMSi処理膜でポリスチレン粒子を含む水溶液の透過実験を行った。
図13はナノ粒子に対するPMSi処理膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。図13(a)は阻止率の径時変化を表すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jw、横軸は透水時間である。また、図13(b)は透過流束の径時変化を表すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jw、横軸は透水時間である。この図から、基材膜の透過流束が低下していくのに対し、PMSi処理膜では透過流束がほとんど低下せず、高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。
続いて、ポリスチレン粒子などのナノ粒子に対するPMSi処理によるファウリング防止効果について検討を行った。実験では、PMSiで15分間処理したSPG膜を用いて、圧力;30kPa、流速;20ml/min、SPG膜;0.02wt%、15minPMSi処理膜でポリスチレン粒子を含む水溶液の透過実験を行った。
図13はナノ粒子に対するPMSi処理膜のファウリング抑制効果を示すグラフである。図13(a)は阻止率の径時変化を表すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jw、横軸は透水時間である。また、図13(b)は透過流束の径時変化を表すグラフであり、このグラフの縦軸は透過流束Jw、横軸は透水時間である。この図から、基材膜の透過流束が低下していくのに対し、PMSi処理膜では透過流束がほとんど低下せず、高いファウリング抑制効果を示すことがわかった。
<まとめ>
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したSPG膜について透水実験、透過実験を行った。図9(b)の結果ら、PMSi処理したSPG膜は、PMSiによる処理時間の長さにかかわらず高いファウリング抑制効果を確認することができた。特に図9(a)の結果から、処理時間が短い場合では、阻止率が低く良好なファウリング抑制効果を示すことがわかった。
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したSPG膜について透水実験、透過実験を行った。図9(b)の結果ら、PMSi処理したSPG膜は、PMSiによる処理時間の長さにかかわらず高いファウリング抑制効果を確認することができた。特に図9(a)の結果から、処理時間が短い場合では、阻止率が低く良好なファウリング抑制効果を示すことがわかった。
<PMBによるポリアミド系分離膜の表面処理>
分離膜としてポリアミド系分離膜、ファウリング防止材としてPMB30を使用して表面処理した実験を行った。
(PMB30による処理)
本実施例では、分離膜として全芳香架橋族ポリアミド系低圧逆浸透膜分離膜(以下、PA膜)(日東電工社製 NTR759−HR:材質;ポリアミド系複合膜、最高使用圧;3.0MPa、使用pH領域;1−10、最高使用温度;40.0℃)を使用した。
0.2wt%のPMB溶液20mlと、0.02wt%のPMB溶液20mlをそれぞれビーカーに入れた。このビーカー中に冷蔵庫内で純水に浸漬した状態で保存してある未処理のPA膜を入れ、恒温振とう機(振とう数;60回/min、バス温度;25℃)にてPA膜表面にPMBを吸着させた。吸着時間は、15min、12h、24hであった。その後、膜を取り出して、真空乾燥機中で室温、1hで乾燥させた。実験前に純水で親水化を行ってから透水実験などに使用した。
分離膜としてポリアミド系分離膜、ファウリング防止材としてPMB30を使用して表面処理した実験を行った。
(PMB30による処理)
本実施例では、分離膜として全芳香架橋族ポリアミド系低圧逆浸透膜分離膜(以下、PA膜)(日東電工社製 NTR759−HR:材質;ポリアミド系複合膜、最高使用圧;3.0MPa、使用pH領域;1−10、最高使用温度;40.0℃)を使用した。
0.2wt%のPMB溶液20mlと、0.02wt%のPMB溶液20mlをそれぞれビーカーに入れた。このビーカー中に冷蔵庫内で純水に浸漬した状態で保存してある未処理のPA膜を入れ、恒温振とう機(振とう数;60回/min、バス温度;25℃)にてPA膜表面にPMBを吸着させた。吸着時間は、15min、12h、24hであった。その後、膜を取り出して、真空乾燥機中で室温、1hで乾燥させた。実験前に純水で親水化を行ってから透水実験などに使用した。
(透水実験)
供給液温度25℃、供給液量1cc/min、スターラーの回転数400rpm、圧力1.2MPaの条件で、PA膜に純水を透水する透水実験を行った。続いて、NaCl溶液(500ppm)を用いて透水実験を行った。それぞれの溶液での透過流束及び阻止率を算出し、膜性能の確認を行った。なお、透過流束及び阻止率の算出方法は、上述の実施例1で説明したものと同様の手法である。
供給液温度25℃、供給液量1cc/min、スターラーの回転数400rpm、圧力1.2MPaの条件で、PA膜に純水を透水する透水実験を行った。続いて、NaCl溶液(500ppm)を用いて透水実験を行った。それぞれの溶液での透過流束及び阻止率を算出し、膜性能の確認を行った。なお、透過流束及び阻止率の算出方法は、上述の実施例1で説明したものと同様の手法である。
(タンパク質の透過実験)
タンパク質の1種であるウシ血清アルブミン(1000ppm、以下、BSA)を用いて透過流束の変化を測定した。BSA溶液は、3Lメスフラスコで純水を入れながら撹拌しつつ溶解を行い、よく振って泡立たせた。これを恒温槽内(25℃)に入れて1h置くと均一なBSA溶液が得られた。
タンパク質の1種であるウシ血清アルブミン(1000ppm、以下、BSA)を用いて透過流束の変化を測定した。BSA溶液は、3Lメスフラスコで純水を入れながら撹拌しつつ溶解を行い、よく振って泡立たせた。これを恒温槽内(25℃)に入れて1h置くと均一なBSA溶液が得られた。
(SPM(液中AFM)測定)
基材膜にPMB溶液を処理した4種類の膜をSPM(液中AFM)にて表面形状の比較を行った。SPMは鋭利な探針で物体表面近傍をなぞり、その凹凸を記録してコンピュータ上で凹凸のデータを画像に再構成するものである。本実施例ではエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社に委託してSPM測定を行った。測定装置・条件は以下の通りである。
ステーション;SPI400
ユニット;SPA400
測定モード;液中DFM
測定環境;水溶液中
カンチレバー;SI−DF 3
測定を委託した試料は、
1)未処理の逆浸透膜、
2)PMB処理膜(PMBに15分間浸漬)
3)BSA中(PMBに15分間浸漬させた処理膜へのBSAの吸着後、(約400min前)透過流束が急激に低下し始めたところのAF膜)
4)BSA全(PMBに15分間浸漬させた処理膜への所定時間BSAを透過させた後の膜(約1500min後))
の4種類である。
基材膜にPMB溶液を処理した4種類の膜をSPM(液中AFM)にて表面形状の比較を行った。SPMは鋭利な探針で物体表面近傍をなぞり、その凹凸を記録してコンピュータ上で凹凸のデータを画像に再構成するものである。本実施例ではエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社に委託してSPM測定を行った。測定装置・条件は以下の通りである。
ステーション;SPI400
ユニット;SPA400
測定モード;液中DFM
測定環境;水溶液中
カンチレバー;SI−DF 3
測定を委託した試料は、
1)未処理の逆浸透膜、
2)PMB処理膜(PMBに15分間浸漬)
3)BSA中(PMBに15分間浸漬させた処理膜へのBSAの吸着後、(約400min前)透過流束が急激に低下し始めたところのAF膜)
4)BSA全(PMBに15分間浸漬させた処理膜への所定時間BSAを透過させた後の膜(約1500min後))
の4種類である。
(ゼータ電位測定試験)
膜表面のゼータ電位を測定した。ゼータ電位とは固体と液体の界面における電位差のうち界面動電現象に有効に作用する部分の電位差をいう。ゼータ電位は膜の表面の電荷を測る指標であり、ゼータ電位がゼロに近づくほど固液間の電位差が小さく、ファウリング抑制効果の高い分離膜であるといえる。
未処理膜及び各種処理膜の表面構造変化を調べるため、ゼータ電位測定を行った。測定は、電気泳動光散乱光度計 ELS−800(大塚電子)を用いて行った。
膜表面のゼータ電位を測定した。ゼータ電位とは固体と液体の界面における電位差のうち界面動電現象に有効に作用する部分の電位差をいう。ゼータ電位は膜の表面の電荷を測る指標であり、ゼータ電位がゼロに近づくほど固液間の電位差が小さく、ファウリング抑制効果の高い分離膜であるといえる。
未処理膜及び各種処理膜の表面構造変化を調べるため、ゼータ電位測定を行った。測定は、電気泳動光散乱光度計 ELS−800(大塚電子)を用いて行った。
<結果>
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)透水結果
図14は未処理膜とPMB(0.02wt%)処理膜の透過流束の径時変化を示すグラフである。このうち図14(a)は純水を用いて透水実験を行った結果、図14(b)は500ppmNaClを用いて透水実験を行った結果である。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸は透水時間である。なお、透過流束fluxは上述の透過流束Jvと同等のものである。
これらの結果から、PMBでPA膜を処理すると、未処理膜と比較して実効圧力が下がり、またPMBの吸着が不安定なために透過流束が低下したものと考えられる。
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)透水結果
図14は未処理膜とPMB(0.02wt%)処理膜の透過流束の径時変化を示すグラフである。このうち図14(a)は純水を用いて透水実験を行った結果、図14(b)は500ppmNaClを用いて透水実験を行った結果である。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸は透水時間である。なお、透過流束fluxは上述の透過流束Jvと同等のものである。
これらの結果から、PMBでPA膜を処理すると、未処理膜と比較して実効圧力が下がり、またPMBの吸着が不安定なために透過流束が低下したものと考えられる。
(2)ファウリング試験結果
BSA透過実験によりタンパク質吸着抑制効果を検討した。
図15はPA膜におけるPMBのBSA抑制能を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸はBSA水溶液の透過時間である。この結果から、未処理の基材膜よりもPMB処理膜のほうが透過流束が低下していることがわかる。これは、透過したBSAによってPMBとの間で置換が起こり、徐々にPMBが剥離しているためであると考えられる。
BSA透過実験によりタンパク質吸着抑制効果を検討した。
図15はPA膜におけるPMBのBSA抑制能を示すグラフである。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸はBSA水溶液の透過時間である。この結果から、未処理の基材膜よりもPMB処理膜のほうが透過流束が低下していることがわかる。これは、透過したBSAによってPMBとの間で置換が起こり、徐々にPMBが剥離しているためであると考えられる。
(3)SPM(液中AFM)測定結果
上述の、基材膜にPMB溶液を処理した4種類の膜をSPM(液中AFM)にて測定した結果を示す。図16はPA膜の表面形状を示すSPM像である。このうち、図16(a)は未処理のAF膜、図16(b)はPMBに15分浸漬したPMB処理膜、図16(c)はBSA中のAF膜、図16(d)はBSA全のAF膜のSPM像である。
図16(a)より、膜表面状態の観察から未処理のAF膜の緻密層には凹凸があることがわかる。また、図16(b)より、膜表面には凹凸が現れており、均一にコーティングされているとはいえない結果であった。図16(c)では均一でなかった隙間にBSAが入り込むことで表面がBSAで覆われたため、膜性能が低下して透過流束が急激に低下したものと考えられる。更に時間がたつにつれて、図16(d)に示すように、隙間に入ったBSAが肥大化して透過流束が低下していると考えられる。
上述の、基材膜にPMB溶液を処理した4種類の膜をSPM(液中AFM)にて測定した結果を示す。図16はPA膜の表面形状を示すSPM像である。このうち、図16(a)は未処理のAF膜、図16(b)はPMBに15分浸漬したPMB処理膜、図16(c)はBSA中のAF膜、図16(d)はBSA全のAF膜のSPM像である。
図16(a)より、膜表面状態の観察から未処理のAF膜の緻密層には凹凸があることがわかる。また、図16(b)より、膜表面には凹凸が現れており、均一にコーティングされているとはいえない結果であった。図16(c)では均一でなかった隙間にBSAが入り込むことで表面がBSAで覆われたため、膜性能が低下して透過流束が急激に低下したものと考えられる。更に時間がたつにつれて、図16(d)に示すように、隙間に入ったBSAが肥大化して透過流束が低下していると考えられる。
(4)ゼータ電位測定結果
続いて、膜表面のゼータ電位について測定した結果を説明する。下記表1に未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を示す。
PA膜表面は負電荷を帯びており、この膜にPMB処理を行うとゼータ電位は著しく正に変化した。しかしながら、ファウリング試験後の各膜のゼータ電位は負に増加した。PMB処理膜は電荷が負に増加したため、急激な透過流束の低下を引き起こしたものと考えられる。
続いて、膜表面のゼータ電位について測定した結果を説明する。下記表1に未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を示す。
<まとめ>
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したPA膜について透水実験、透過実験を行った。図15の結果より、PMB処理されたPA膜は、最初の間はBSAを抑制していたが、時間が経過するにつれて次第に透過流束が低下し、ファウリング防止効果が低下することがわかった。
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したPA膜について透水実験、透過実験を行った。図15の結果より、PMB処理されたPA膜は、最初の間はBSAを抑制していたが、時間が経過するにつれて次第に透過流束が低下し、ファウリング防止効果が低下することがわかった。
<PMSiによるポリアミド系分離膜の表面処理>
分離膜としてポリアミド系分離膜、ファウリング防止材としてPMSiを使用して表面処理した実験を行った。
(PMSiによる処理)
本実施例では、分離膜として実施例3と同様にPA膜を使用した。
0.2wt%のPMSi溶液3.5mlを特級エタノールで6.67倍希釈して0.03wt%のPMSi溶液を作成した。この溶液20mlをシャーレに移し、そこに乾燥状態で保管された未処理膜を浮かべ(表面にだけ処理するため)、更に反応溶液として酢酸調製溶液0.35mlを加えた。カップリング時間は、5min、15min、1hとした。次に、PA膜を空のシャーレに移し、3Lビーカー内(エタノール雰囲気)で20min自然乾燥した。その後、膜を取り出し、恒温乾燥機にて40℃、1h乾燥を行った。乾燥した膜は、実験前に純水で親水化を行ってから透水実験などに使用した。
分離膜としてポリアミド系分離膜、ファウリング防止材としてPMSiを使用して表面処理した実験を行った。
(PMSiによる処理)
本実施例では、分離膜として実施例3と同様にPA膜を使用した。
0.2wt%のPMSi溶液3.5mlを特級エタノールで6.67倍希釈して0.03wt%のPMSi溶液を作成した。この溶液20mlをシャーレに移し、そこに乾燥状態で保管された未処理膜を浮かべ(表面にだけ処理するため)、更に反応溶液として酢酸調製溶液0.35mlを加えた。カップリング時間は、5min、15min、1hとした。次に、PA膜を空のシャーレに移し、3Lビーカー内(エタノール雰囲気)で20min自然乾燥した。その後、膜を取り出し、恒温乾燥機にて40℃、1h乾燥を行った。乾燥した膜は、実験前に純水で親水化を行ってから透水実験などに使用した。
(透水実験)
実施例3と同じ条件で透水実験を行った。
(タンパク質の透過実験)
実施例3で使用したBSA溶液と同じBSA溶液を使用して透過実験を行った。
実施例3と同じ条件で透水実験を行った。
(タンパク質の透過実験)
実施例3で使用したBSA溶液と同じBSA溶液を使用して透過実験を行った。
(ゼータ電位測定試験)
実施例3で使用したものと同様の手法で未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を測定した。
実施例3で使用したものと同様の手法で未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を測定した。
<結果>
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)透水実験結果
図17は未処理膜とPMSi(0.03wt%)処理膜の透過流束の径時変化を示すグラフである。このうち図17(a)は純水を用いて透水実験を行った結果、図17(b)は500ppmNaClを用いて透水実験を行った結果である。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸は透水時間である。
これらの結果から、PMSiでPA膜を処理すると、未処理膜と比較して実効圧力が下がり、またPMSiの吸着が不安定なために透過流束が低下したものと考えられる。
以下に、各種条件下で行った実験の結果を示す。
(1)透水実験結果
図17は未処理膜とPMSi(0.03wt%)処理膜の透過流束の径時変化を示すグラフである。このうち図17(a)は純水を用いて透水実験を行った結果、図17(b)は500ppmNaClを用いて透水実験を行った結果である。このグラフの縦軸は透過流束fluxであり、横軸は透水時間である。
これらの結果から、PMSiでPA膜を処理すると、未処理膜と比較して実効圧力が下がり、またPMSiの吸着が不安定なために透過流束が低下したものと考えられる。
(2)ファウリング試験結果
BSA透過実験によりタンパク質吸着抑制効果を検討した。
図18はPA膜におけるPMSiのBSA抑制能を示すグラフである。このうち、図18(a)はBSA透過後の各膜の透過流束Jvを、純水の透過係数Jwで割ったもの、図18(b)はBSA処理を行っていない未処理膜の透過流束Jvを純水の透過流束Jw0で割ったものであり、図18(a)の比較実験である。このグラフの縦軸は透過流束Jv/Jwであり、横軸はBSA水溶液の透過時間である。
図18(a)からわかるように、PMSi未処理の基材膜と比較してPMSi処理膜では透過流束の低下がほとんど見られない。このことから、PMSi処理されたPA膜は、高いファウリング防止性能を有していることがわかる。また、浸漬時間が長い方がファウリング抑制効果が高いことがわかった。
BSA透過実験によりタンパク質吸着抑制効果を検討した。
図18はPA膜におけるPMSiのBSA抑制能を示すグラフである。このうち、図18(a)はBSA透過後の各膜の透過流束Jvを、純水の透過係数Jwで割ったもの、図18(b)はBSA処理を行っていない未処理膜の透過流束Jvを純水の透過流束Jw0で割ったものであり、図18(a)の比較実験である。このグラフの縦軸は透過流束Jv/Jwであり、横軸はBSA水溶液の透過時間である。
図18(a)からわかるように、PMSi未処理の基材膜と比較してPMSi処理膜では透過流束の低下がほとんど見られない。このことから、PMSi処理されたPA膜は、高いファウリング防止性能を有していることがわかる。また、浸漬時間が長い方がファウリング抑制効果が高いことがわかった。
(3)ゼータ電位測定結果
下記表2に未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を示す。
PA膜表面は負電荷を帯びており、この膜にPMSi処理を行うと、実施例3のPMBで処理したときと同じように、ゼータ電位は著しく正に変化した。
下記表2に未処理膜及び各種処理膜のゼータ電位を示す。
<まとめ>
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したPA膜について透水実験、透過実験を行った。図18(a)の結果から、PMSi処理したPA膜は、PMSiによる処理時間の長さにかかわらず高いファウリング抑制効果を確認することができた。また、長期間にわたって高いファウリング防止能力を維持することもわかった。
以上、各種条件下でPMSiにより表面処理したPA膜について透水実験、透過実験を行った。図18(a)の結果から、PMSi処理したPA膜は、PMSiによる処理時間の長さにかかわらず高いファウリング抑制効果を確認することができた。また、長期間にわたって高いファウリング防止能力を維持することもわかった。
Claims (13)
- 前記ホスホリルコリン類似基含有単量体が、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートであることを特徴とする請求項2記載のファウリング防止材。
- 前記炭化水素基含有単量体が、メタクリル酸n−ブチルであることを特徴とする請求項4記載のファウリング防止材。
- 下記一般式(4)
で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体及び炭化水素基含有単量体の共重合体を含有するファウリング防止材。 - 前記有機ケイ素基含有単量体が、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項4記載のファウリング防止材。
- 下記一般式(7)
で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体及び有機ケイ素基含有単量体の共重合体を含有するファウリング防止材。 - 請求項1乃至11のいずれか1に記載のファウリング防止材で表面処理された分離膜。
- 前記分離膜が、ポリアミド系分離膜またはセラミックス系分離膜であることを特徴とする請求項12記載のファウリング防止材で表面処理された分離膜。
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