以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態の電極積層装置を適用して製造される蓄電装置の内部構成の一例を示す断面図である。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった車載用の非水電解質二次電池として構成されている。
蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系有機溶媒系の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の上面部には、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
電極組立体3は、正極11と、負極12と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、例えば正極11が収納される。セパレータ13内に正極11が収納された状態で、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。つまり、電極組立体3は、袋状のセパレータ13に正極11を収納することにより構成されるセパレータ付き正極10を有している。
なお、スペース効率を向上してケース2内の空間に占める電極組立体3の体積の増加を図る観点から、一例として、電極組立体3を、セパレータ付き正極10及び負極12の下端(正極端子5及び負極端子6と反対側の端部)がケース2の底面に接触するように、ケース2内に収容することができる。ケース2の内面上には、絶縁部材(不図示)が配置されている。したがって、この場合には、セパレータ付き正極10及び負極12の下端は、絶縁部材を介してケース2の底面に当接する。ただし、セパレータ付き正極10及び負極12の下端とケース2の底面との間には、絶縁部材が占める空間以外に微小な隙間が形成されていてもよい。
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15とを有している。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の金属箔本体部14aの両面に、正極活物質が担持されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。金属箔本体部14aの上縁部には、正極端子5の位置に対応してタブ14bが形成されている。タブ14bには、正極活物質が担持されていない。タブ14bは、金属箔本体部14aの上縁部から上方に延び、導電部材16を介して正極端子5に接続されている。
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18とを有している。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の金属箔本体部17aの両面に、負極活物質が担持されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。金属箔本体部17aの上縁部には、負極端子6の位置に対応してタブ17bが形成されている。タブ17bには、負極活物質が担持されていない。タブ17bは、金属箔本体部17aの上縁部から上方に延び、導電部材19を介して負極端子6に接続されている。
セパレータ13は、例えば袋状に形成され、内部に正極11のみを収容している。セパレータ13の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bは、略矩形のセパレータ13から上方に突出している。なお、セパレータ13は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
続いて、蓄電装置1の製造方法について説明する。なお、本発明は、製造工程中、正極、負極とセパレータを組み合わせ、積層型の電極組立体とする積層工程に関り、他の工程については、公知の技術と代わるところは無い。従って、積層工程以外の工程については、その一例につき、概略を述べるに留める。
まず、混練工程が実施される。混練工程においては、活物質層の主成分である活物質粒子と、バインダ及び導電助剤などの粒子を、混練機内の溶媒中で混練し、各粒子の分散性がよい電極合剤を製造する。バインダは、例えばポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂であってもよく、主鎖にイミド結合を有するポリマー樹脂であってもよい。溶媒は、例えばNMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒であってもよく、水であってもよい。導電助剤は例えば、アセチレンブラックやカーボンブラック、グラファイトなどの炭素系材料である。次に、塗工工程が実施される。塗工工程では、ロール状に巻かれた帯状の金属箔を繰り出し、その金属箔の表面に、電極合剤を間欠的または連続的に塗布する。電極合剤が塗布された金属箔は、電極合剤の塗布の直後に乾燥炉内を通過する。これにより、電極合剤に含まれる溶媒が乾燥・除去されると共に、樹脂よりなるバインダが活物質粒子同士を結合する。これにより、活物質粒子の間に微細な間隙(空孔)を有する活物質層が形成される。
次いで、プレス工程が実施される。プレス工程では、帯状の金属箔の表面に形成された活物質層をロールにより所定の圧力でプレスする。これにより、活物質層が圧縮され、活物質の密度が適切な値に高められる。次いで、外観検査工程が実施される。外観検査工程では、活物質層の表面状態をカメラ等で確認し、良品及び不良品の判定を行う。
次いで、減圧乾燥工程が実施される。減圧乾燥工程では、活物質層が形成された帯状の金属箔を、真空乾燥炉内に収容して減圧高温化にて乾燥する。これにより、活物質層に残留するわずかな溶媒を除去する。次いで、打ち抜き工程が実施される。打ち抜き工程では、打ち抜き機を用いて、活物質層が形成された金属箔を所定の形状に打ち抜くことで、上記の正極11及び負極12を形成する。
なお、以降の実施形態では、正極11は、袋状のセパレータ13に収納された後、負極12と積層されるものとする。正極11をセパレータ13内に収納するセパレータ包み工程は、正極11と、ロール状に巻かれた帯状セパレータの対を用いる。まず、一方の帯状セパレータを繰り出し、その上に、等間隔で隙間を空けながら、正極11を載置する。このとき、正極11のタブ14bがセパレータの幅方向に突出するように正極11を配置する。次に、他方の帯状セパレータを繰り出し、正極11を挟むように、他方の帯状セパレータを一方の帯状セパレータと重ねる。その後、各正極11を囲む位置にて、一方の帯状セパレータと他方の帯状セパレータとを溶着する。溶着部は、例えば、正極11の3辺を囲み、位置決めするものであればよいが、好ましくは、4辺を囲むように溶着部を設ける。溶着後、一方及び他方の帯状セパレータを、正極11及び溶着部毎に裁断し、袋状のセパレータ13に収納されたセパレータ付き正極10を作成する。
次いで、積層工程が実施される。積層工程では、セパレータ包み工程及び打ち抜き工程で得られたセパレータ付き正極10及び負極12を順次積層する。次いで、組み立て工程が実施される。組み立て工程では、正極11と負極12とが、セパレータ13を介して積層された積層体を一体化し、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bをそれぞれ溶接する。これにより、電極組立体3を得る。そして、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bに、導電部材16及び導電部材19をそれぞれ溶接する。
上記の打ち抜き工程で作製される負極12及びセパレータ付き正極10は、略等しい形状及び大きさを有している。すなわち、負極12の幅及び高さと、セパレータ付き正極10の幅及び高さは、略等しい。言い換えれば、正極活物質層15が形成された正極11の金属箔本体部14aの幅及び高さは、負極活物質層18が形成された負極12の金属箔本体部17aの幅及び高さより若干小さくなっている。
続いて、図3を参照して、本実施形態の電極積層装置20について説明する。電極積層装置20は、上記の積層工程において使用される。図3に示すように、電極積層装置20は、たとえば、シート状体である負極12及びセパレータ付き正極10を交互に積層するための装置である。電極積層装置20は、第1のシート状体としての複数の負極12を順次搬送する第1の搬送部21と、第2のシート状体としての複数のセパレータ付き正極10を順次搬送する第2の搬送部22とを備える。すなわち、電極積層装置20は、第1の搬送部21と第2の搬送部22とによって、異なる2種類のシート状体を別々に搬送する。
第1の搬送部21及び第2の搬送部22は、たとえばベルトコンベアによって構成される。第1の搬送部21の搬送面21a上には、複数の負極12が、搬送方向に並べて載置される。第2の搬送部22の搬送面22a上には、複数のセパレータ付き正極10が、搬送方向に並べて載置される。この場合、負極12のタブ17b及び正極11のタブ14bが搬送方向の上流側に向くよう、負極12及びセパレータ付き正極10がそれぞれ載置される。第1の搬送部21の搬送面21a及び第2の搬送部22の搬送面22aは、水平に延在している。なお、第1の搬送部21の搬送面21a及び/又は第2の搬送部22の搬送面22aが、水平面と所定の角度をなしていてもよい。
第2の搬送部22は、第1の搬送部21の上方に設けられている。より詳細には、第1の搬送部21の搬送方向と第2の搬送部22の搬送方向とは、いずれも略水平であり、互いに平行になっている。第1の搬送部21と第2の搬送部22とは、平面視で重なるように配置されている。セパレータ付き正極10が排出される第2の搬送部22の出口部22bは、負極12が排出される第1の搬送部21の出口部21bよりも、搬送方向に突出している。
電極積層装置20は、第1の搬送部21から排出された負極12を順次滑走させて積層部31に案内するための第1の滑走部24と、第2の搬送部22から排出されたセパレータ付き正極10を順次滑走させて積層部31に案内するための第2の滑走部27とを備える。第1の搬送部21がベルトコンベアの場合、第1の滑走部24は、ローラを介してベルトを支持するフレーム部に、取り付けられる。第1の滑走部24は、その搬送方向に直交する水平な軸線を中心に回動可能になっており、所定の傾斜角度に調整されて、図示しない固定部によって固定され得る。このように、第1の滑走部24は、滑走面25aの第1の傾斜角度を調整可能に構成されている。第1の滑走部24は、第1の搬送部21の搬送方向の先端部である出口部21bから、積層部31に向けて延在している。言い換えれば、第1の滑走部24は、第1の搬送部21の出口部21bと積層部31との間に設けられている。第2の搬送部22がベルトコンベアの場合、第2の滑走部27は、ローラを介してベルトを支持するフレーム部に、取り付けられる。第2の滑走部27は、その搬送方向に直交する水平な軸線を中心に回動可能になっており、所定の傾斜角度に調整されて、図示しない固定部によって固定され得る。このように、第2の滑走部27は、滑走面28aの第2の傾斜角度を調整可能に構成されている。第2の滑走部27は、第2の搬送部22の搬送方向の先端部である出口部22bから、積層部31に向けて延在している。言い換えれば、第2の滑走部27は、第2の搬送部22の出口部22bと積層部31との間に設けられている。
第1の滑走部24は、第1の搬送部21の搬送面21aに対して第1の傾斜角度で傾斜して設けられた底板部25と、底板部25に立設されて幅方向に離間する一対の側板部26,26とを有する。ここで、幅方向とは、底板部25の傾斜方向に直交し且つ水平に延びる方向(図3の紙面に垂直な方向)である。底板部25は、負極12が載って負極12を滑走させる滑走面25aを有する。滑走面25aは、水平面に対して第1の傾斜角度で傾斜している。一対の側板部26,26は、負極12を幅方向の所定の位置に案内可能になっており、負極12の幅に応じた間隔が設けられている。側板部26,26は、負極12を容易に案内できるように、上方の受入部が広くなっており下方に向かうにつれて負極12の幅に近づくように間隔が狭くなったテーパ部を有してもよい。
第2の滑走部27は、第2の搬送部22の搬送面22aに対して第2の傾斜角度で傾斜して設けられた底板部28と、底板部28に立設されて幅方向に離間する一対の側板部29,29とを有する。ここで、幅方向とは、底板部28の傾斜方向に直交し且つ水平に延びる方向(図3の紙面に垂直な方向)である。底板部28は、セパレータ付き正極10が載ってセパレータ付き正極10を滑走させる滑走面28aを有する。滑走面28aは、水平面に対して第2の傾斜角度で傾斜している。一対の側板部29,29は、セパレータ付き正極10を幅方向の所定の位置に案内可能になっており、セパレータ付き正極10の幅に応じた間隔が設けられている。側板部29,29は、セパレータ付き正極10を容易に案内できるように、上方の受入部が広くなっており下方に向かうにつれてセパレータ付き正極10の幅に近づくように間隔が狭くなったテーパ部を有してもよい。
第1の滑走部24及び第2の滑走部27は、同一の積層部31にシート状体が良好に積層されるよう、適切な傾斜角度に取り付けられる。電極積層装置20では、第2の滑走部27の滑走面28aにおける第2の傾斜角度は、第1の滑走部24の滑走面25aにおける第1の傾斜角度よりも大きくなっている。言い換えれば、第1の滑走部24及び第2の滑走部27は、下方に向かうにつれて互いに近接するように設けられている。電極積層装置20では、たとえば負極12の摩擦係数よりもセパレータ付き正極10の摩擦係数が大きい場合に、セパレータ付き正極10をより高い位置の第2の搬送部22で搬送し、より大きい傾斜角度を有する第2の滑走部27を用いて滑走させる。セパレータ付き正極10は、表面の摩擦係数が大きいため、同じ条件で滑走した場合、負極12よりも、積層部31への接地時の速度が遅くなる。しかしながら、第2の搬送部22でセパレータ付き正極10を搬送し、滑走させることで、セパレータ付き正極10の位置エネルギーを大きくできる。セパレータ付き正極10の位置エネルギーが大きいことにより、滑走後、積層部31に接地するときの速度が上がり、負極12との接地時の速度の差が抑えられる。
前述の作用について、より詳細に説明する。積層速度を次第に上げていくと、積層部31で、積層時の姿勢不良などが生じ、最終的に積層速度が制限される。このとき、セパレータ付き正極10と負極12とで、積層部31への接地時の条件が大きく異なると、一方の電極で、早く不良が発生するおそれがあり、積層速度が低く制限される。このため、積層部31への接地時の条件の差は小さいことが好ましい。セパレータ付き正極10を第2の滑走部27に配置すると、前述の如く、接地時の速度の差が抑えられる。また、後述するように、積層状態に関係する条件として、積層部31に接地後、滑り落ちる距離についても、差が小さいことが好ましい。
なお、第1の滑走部24の滑走面25aと、第2の滑走部27の滑走面28aとのそれぞれに、摩擦係数を調整するための樹脂コーティング等を施してもよい。たとえば、下段である滑走面25aに4フッ化エチレン樹脂のコーティング等を施してもよい。第1の滑走部24と第2の滑走部27の傾斜角度、及び、これらと積層部31の位置関係については、後述する。
第2の搬送部22には、その出口部22bに対向して、第2の搬送部22の搬送経路である搬送面22aの延長上に、飛び出し防止カバー30が設けられている。飛び出し防止カバー30は、出口部22b側が凹状となるように湾曲している。飛び出し防止カバー30は、湾曲した内面にセパレータ付き正極10を当接させることにより、セパレータ付き正極10を下方に方向付け、第2の滑走部27の滑走面28a上に案内する。より詳しくは、飛び出し防止カバー30には、セパレータ付き正極10の下端部(タブ14bが設けられたのとは反対側の端部)が当接する。積層速度の向上を図るためには、第2の搬送部22の搬送速度を増大させる必要があるが、搬送速度を増大させると、セパレータ付き正極10が出口部22bから勢いよく飛び出そうとする場合がある。飛び出し防止カバー30は、そのような場合に、セパレータ付き正極10の飛び出しを防止する。
なお、第1の搬送部21の出口部21bには、飛び出し防止カバーは設けられていない。第1の搬送部21の搬送経路である搬送面21aの延長上には、上段の第2の滑走部27が設けられているため、第2の滑走部27の底板部28の裏面が、飛び出し防止カバー30と同様の機能を発揮し得る。なお、出口部21bに、飛び出し防止カバー30と同様の飛び出し防止カバーを設けてもよい。
第1の滑走部24の下端部25bの下方で且つ第2の滑走部27の下端部28bの下方には、積層部31が配置されている。積層部31は、これらの下端部25b,28bから落下する負極12及びセパレータ付き正極10を順次案内し、整列させた状態で積層領域Aに積層する。積層部31は、水平面に対して傾斜した底壁部32と、底壁部32に垂直に立設されて幅方向に離間する一対の側壁部35,35と、底壁部32に垂直に立設されて側壁部35,35の間に配置されたストッパ36とを有する。ここで、幅方向とは、底壁部32の傾斜方向に直交し且つ水平に延びる方向(図3の紙面に垂直な方向)である。底壁部32の傾斜角度は、第1の滑走部24の滑走面25aの第1の傾斜角度よりも小さい。
一対の側壁部35,35の下部と、ストッパ36とによって、負極12及びセパレータ付き正極10が積層される直方体状の積層領域Aが形成されている。ストッパ36は、幅方向に延在して、落下してくる負極12及びセパレータ付き正極10の下端部に当接して、これらを停止させる。負極12及びセパレータ付き正極10が、ストッパ36により停止されつつ載置面32aに載置され、交互に積層されることで、積層領域A内で積層体40が作製される。一対の側壁部35,35は、負極12及びセパレータ付き正極10の双方を積層領域Aに案内可能になっており、負極12及びセパレータ付き正極10の幅に応じた間隔が設けられている。側壁部35,35は、負極12及びセパレータ付き正極10を容易に案内できるように、上方の受入部が広くなっており、下方に向かうにつれて負極12及びセパレータ付き正極10の幅に近づくように間隔が狭くなったテーパ部を有してもよい。
電極積層装置20において、第1の搬送部21及び第2の搬送部22における搬送方向と、第1の滑走部24及び第2の滑走部27における傾斜方向と、積層部31における傾斜方向とは、平面視で、一直線状をなしている。言い換えれば、負極12及びセパレータ付き正極10は、幅方向に曲がることなく搬送され、滑走する。なお、第1の搬送部21及び第2の搬送部22における搬送方向と、第1の滑走部24及び第2の滑走部27における傾斜方向と、積層部31における傾斜方向とが、いずれかの接続部分で曲がっていてもよい。
図4を参照して、第1の滑走部24と第2の滑走部27の傾斜角度、及び、これらと積層部31の位置関係について説明する。図4に示すように、第1の滑走部24の滑走面25aの延長面P1と、第2の滑走部27の滑走面28aの延長面P2とは、負極12及びセパレータ付き正極10が載置される積層部31の載置面32aを基準として、様々な位置で交差し得る。たとえば、図4(a)または(c)に示すように、延長面P1と延長面P2とは、積層部31の載置面32aの表面側で交差してもよい。この交線Lの位置は、図4(c)に示すように、積層体40の積層完了時の厚みの範囲内にあることが好ましい。特には、交線Lの位置は、積層体40の積層完了時の厚みの中間部にあることが好ましい。電極積層装置20では、負極12及びセパレータ付き正極10が積層部31上に接地した後、ストッパ36の位置まで滑り落ちる。この滑り落ちる距離は、積層が進むにつれて変化する。
たとえば、図4(a)の位置関係では、交線Lの位置が、(積層完了後の)積層体40の表面側すなわち上方に存在する。このケースでは、負極12及びセパレータ付き正極10が着地後に滑り落ちる距離の差は、積層が進むにつれて小さくなる。しかしながら、積層初期には、滑り落ちる距離の差が大きい。図4(b)の位置関係では、交線Lの位置が、積層体40の裏面側、すなわち積層部31の下方に存在する。このケースでは、負極12及びセパレータ付き正極10が着地後に滑り落ちる距離の差は、積層初期に小さいが、積層が進むにつれて次第に大きくなる。図4(c)の位置関係では、交線Lの位置が積層体40の積層完了時の厚みの内側、すなわち厚みの範囲内(より詳細には積層完了体の積層方向における中間面C上)にある。このケースでは、積層初期より積層完了まで、負極12及びセパレータ付き正極10が着地後に滑り落ちる距離の差は、平均して小さく抑えられる。
滑走面25aの延長面P1と滑走面28aの延長面P2との位置関係を別の観点から説明すると、交線Lは、積層領域Aの下方側に設定されることが好ましい。言い換えれば、交線Lは、積層体40を基準として、その高さ方向(底壁部32の傾斜方向)において、半分よりも下側の位置に設定されることが好ましい。交線Lは、ストッパ36の付近に設定されてもよい。この構成により、負極12又はセパレータ付き正極10が載置面32a(又は積層体40)に着地してから滑り落ちる距離を小さくでき、その結果として、積層精度が向上する。
以上説明したように、電極積層装置20は、下段の第1の搬送部21及び第1の滑走部24と、上段の第2の搬送部22及び第2の滑走部27とを別々に備えている。電極積層装置20では、切抜き工程を経た負極12及びセパレータ付き正極10が、搬送面21a及び搬送面22aにそれぞれ等間隔に載置されて、順次搬送される。負極12は、出口部21bから排出されて、第1の滑走部24の滑走面25a上を滑走する。セパレータ付き正極10は、出口部22bから排出されて、第2の滑走部27の滑走面28a上を滑走する。負極12は第1の滑走部24の下端部25bから落下し、セパレータ付き正極10は第2の滑走部27の下端部28bから落下し、積層部31において交互に積層される。
このように、種類の異なる負極12とセパレータ付き正極10とが、それぞれ別々の搬送部によって搬送されるため、所望の積層速度を維持しつつも、各搬送部における搬送速度を低減することができる。たとえば、図5(a)に示すように、負極12とセパレータ付き正極10とを別々に供給する場合では、図5(b)に示すように混載供給とする場合に比べて、搬送速度を半分に低減できる(同じ積層速度の場合)。しかも、負極12とセパレータ付き正極10とは、それぞれ別々の滑走部上を滑走する。よって、負極12は、第1の搬送部21の出口部21bから第1の滑走部24へと、少ない衝撃でスムーズに移動することができ、セパレータ付き正極10は、第2の搬送部22の出口部22bから第2の滑走部27へと、少ない衝撃でスムーズに移動することができる。したがって、負極12やセパレータ付き正極10等のシート状体を搬送して積層する際に、シート状体の破損等を低減することができる。具体的には、負極12又はセパレータ付き正極10の破損や、活物質層15,18からの粒子の脱落(いわゆる粉落ち)等のリスクを低減できる。また、第2の搬送部22の方が高く配置されていることを利用して、摩擦係数の大きいセパレータ付き正極10に高い位置エネルギーを与えて落下させることができる。このように、各シート状体の特性に応じた積層が可能になる。
また、第1の滑走部24は、第1の傾斜角度を調整可能に構成されており、第2の滑走部27は、第2の傾斜角度を調整可能に構成されているため、負極12及びセパレータ付き正極10の摩擦係数、滑走面25a及び滑走面28aの摩擦係数、或いは、出口部21b及び出口部22bを出た時点の負極12及びセパレータ付き正極10の位置エネルギーに応じて、各傾斜角度を調整することで、より効率的な積層が可能になる。たとえば、12及びセパレータ付き正極10の速度や運動エネルギーを制御することができる。なお、第1の滑走部24の滑走面25aと第2の滑走部27の滑走面28aとを平行に設定してもよい。
また、第1の滑走部24の滑走面25aの延長面P1と、第2の滑走部27の滑走面28aの延長面P2とは、負極12及びセパレータ付き正極10が載置される積層部31の載置面32aの表面側で交差しているため、この交線Lを通る負極12及びセパレータ付き正極10の挙動を適宜調整することができる。たとえば、負極12及びセパレータ付き正極10の速度や運動エネルギーを等しくすることができる。よって、積層部31の積層領域Aにおいて負極12及びセパレータ付き正極10を適正に積層することができる。この構成は、交線Lが底壁部32の裏面側に設定された場合に比して、積層精度の面で有利な効果を奏する。
また、第2の搬送部22における搬送速度が大きい等といった理由に起因して、セパレータ付き正極10が出口部22bから飛び出そうとする場合でも、セパレータ付き正極10が飛び出し防止カバー30に当接することで、セパレータ付き正極10の飛び出しが防止される。これにより、セパレータ付き正極10が第2の滑走部27の滑走面28a上を滑走するように、セパレータ付き正極10を方向付けることができる。
図6を参照して他の実施形態について説明する。図6に示す電極積層装置20Aは、単体のセパレータ13Aを搬送して出口部41bから排出する第1の搬送部41と、負極12を搬送して出口部42bから排出する第2の搬送部42と、単体のセパレータ13Aを搬送して出口部43bから排出する第3の搬送部43と、正極11を搬送して出口部44bから排出する第4の搬送部44と、を備えている。第1の搬送部41が最も低い位置に設けられており、第2の搬送部42、第3の搬送部43、及び第4の搬送部44の順に、高い位置に設けられている。このような構成により、電極積層装置20Aでは、セパレータ付き正極10ではなく、シート状の正極11とシート状のセパレータ13Aとを別々に積層する。
第1の搬送部41の出口部41bと積層部31との間には、滑走面51aを有する第1の滑走部51が設けられている。第2の搬送部42の出口部42bと積層部31との間には、滑走面52aを有する第2の滑走部52が設けられている。第3の搬送部43の出口部43bと積層部31との間には、滑走面53aを有する第3の滑走部53が設けられている。第4の搬送部44の出口部44bと積層部31との間には、滑走面54aを有する第4の滑走部54が設けられている。滑走面51aの傾斜角度が最も小さく、滑走面52a、滑走面53a、及び滑走面54aの順に、傾斜角度が大きくなっている。このような、搬送部ごとに別個の滑走部を備えた電極積層装置20Aによっても、シート状体であるセパレータ13A、正極11及び負極12を搬送して積層する際に、所望の積層速度を維持しつつも、これらのシート状体の破損等を低減することができる。
なお、電極積層装置20Aにおいて、第1の搬送部41又は第3の搬送部43を省略すると共に、第1の滑走部51又は第3の滑走部53を省略してもよい。すなわち、袋状ではなく個片のセパレータ13Aを採用する場合には、3段構成の電極積層装置であってもよい。第1の搬送部41〜第4の搬送部44、第1の滑走部51〜第4の滑走部54を上下方向に順に並べる場合に限られず、4セットの搬送部及び滑走部を、水平方向及び上下方向に2セットずつ配列してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、第1の搬送部21及び第2の搬送部22によって搬送されるシート状体は、上記した態様に限られない。たとえば、第1の搬送部21は、第1のシート状体としてのセパレータ付き正極10を搬送してもよく、第2の搬送部22は、第2のシート状体としての負極12を搬送してもよい。個片のセパレータ13Aである場合には、正極11、負極12及びセパレータ13Aのそれぞれを、第1の搬送部21及び第2の搬送部22に適宜分配して搬送してもよい(その場合には一部の搬送部において混載搬送となる)。第1の搬送部21及び第2の搬送部22のいずれか一方を用いてセパレータ13Aを搬送し、いずれか他方を用いて正極11及び負極12を混載で搬送してもよい。
また、第1の搬送部21及び第2の搬送部22は、コンベアによって構成される場合に限られない。第1の搬送部21及び第2の搬送部22は、たとえば、チェーン式の搬送部であってもよいし、超音波式の搬送部であってもよい。空気の圧力差を利用する超音波式の搬送部を採用することで、摺動部を無くすことができる。
また、上記の実施形態では、第1の搬送部21及び第2の搬送部22を互いに平行としたが、特に平行に限定されるものではない。例えば、図7(a)および(b)に示す電極積層装置20Bのように、第1の搬送部21及び第2の搬送部22を、その前端を支点として水平方向にずらし、角度を有するように配置してもよい。搬送部と滑走部は水平面上にて直列に配置されていなくてもよい。滑走部上でシート状体の姿勢を修正できれば、積層部での積層は可能であるため、このような配置も可能である。図7(b)に示すような配置とした場合、負極12(第1のシート状体)とセパレータ付き正極10(第2のシート状体)の、前工程より搬送部21,22への供給位置を離すことができ、設備のレイアウトの自由度が増す。なお、図7(a)および(b)に示される実施形態では、滑走部27Bの側板部29B,29Bは、滑走部27B上で正極10(第2のシート状体)の姿勢を修正できるように、上方の受入部が広くなっており下方に向かうにつれて間隔が狭くなったテーパ部を有している。なお、図7(b)には図示されていないが、滑走部24Bの側板部についても、滑走部27Bの側板部29Bと同様に構成されている。滑走部24Bの側板部は、滑走部24B上で負極12(第1のシート状体)の姿勢を修正できるように、テーパ部を有している。
また、上記の実施形態では、滑走部の滑走面に樹脂コーティングを施す例を挙げたが、滑走面の摩擦係数を調整するために、他の手段を採用してもよい。たとえば、空気の力でシート状体を浮き上がらせる形式(エアホッケーと同じ原理を用いた形式)を採用してもよい。また、滑走部の滑走面をローラ式コンベアとしてもよい。この場合、ローラ間の隙間を空けると共に底部にトレイを設けることで、滑走時、仮に活物質などの粒子が剥離したとしても、剥離した粒子を、滑走部の表面より排除することが可能である。