以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態の電極積層装置1について説明する。電極積層装置1は、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置の生産ラインにて用いられる装置である。蓄電装置の生産ラインは、概略として、正極製造ライン、負極製造ライン、及び、各電極製造ラインにて製造された電極(正極及び負極)を用いてケース等と共に蓄電装置を組立てる組立ライン、より構成される。電極積層装置1は、組立ライン上に配置され、正極及び負極を積層して、電極組立体の前駆体である積層体Xを得るための装置である。
電極積層装置1は、蓄電装置の正極11、セパレータ13、および負極12を積層する。蓄電装置の電極組立体は、正極11と、負極12と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成される。セパレータ13内には、正極11または負極12の内の一方の電極が収納され得る。本実施形態では、セパレータ13内には正極11が収納されている。セパレータ13内に正極11が収納された状態で、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層される。すなわち、電極積層装置1は、シート状の電極(ワーク)である負極12及びセパレータ付き正極10を交互に積層する。
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる矩形の金属箔の両面に正極活物質層が形成されてなる。正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。本実施形態の正極11は、一対の長辺と一対の短辺とを備える。長辺の一方には、正極端子との接続に用いられるタブ(突出部)11aが形成されている。
正極11のタブ11aを除いた部分は、袋状のセパレータ13内に収容されている。セパレータ13の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。正極11のタブ11aは、略矩形のセパレータ(本体部)13の長辺から外方向に突出している。このように、袋状のセパレータ13に正極11が収納されることで、セパレータ付き正極10が構成されている。なお、本実施形態に係る電極積層装置1に用いられる袋状のセパレータ13の左右方向の幅は、負極12の幅と同寸とされている。また、セパレータ13の高さは、負極12本体の高さよりも僅かに大きくされている。セパレータ13は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
一方、負極12は、例えば銅箔からなる金属箔の両面に負極活物質層が形成されてなる。負極活物質層は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。本実施形態の負極12は、一対の長辺と一対の短辺とを備える。長辺の一方には、負極端子との接続に用いられるタブ(突出部)12aが形成されている。負極12のタブ12aは、負極活物質層が形成された矩形状の本体部12bの長辺から、外方向に突出している。タブ11a及びタブ12aは、正極11(すなわちセパレータ付き正極10)と負極12とを重ねた場合に互いに重ならない位置に形成されている。
バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、又はアルコキシシリル基含有樹脂であってよい。
電極積層装置1は、異なる2種類の電極であるセパレータ付き正極10および負極12を交互に搬送する搬送部2と、搬送部2の出口部2bから排出されるセパレータ付き正極10および負極12を滑走させる速度調整部20と、速度調整部20で速度調整されたセパレータ付き正極10および負極12を滑走させる滑走部50と、滑走部50で滑走するセパレータ付き正極10および負極12を交互に受け取り、積層領域Aにおいて電極の積層体Xを形成する積層部4とを備えている。
搬送部2は、たとえばベルト2dを有するベルトコンベアである。搬送部2は、ベルト2dの搬送面2a上に負極12およびセパレータ付き正極10を交互に載せ、これらを搬送方向D1に搬送する。搬送部2における搬送方向D1は、たとえば水平方向である。なお、搬送方向D1は水平方向に限られず、水平方向に対して傾斜していてもよい。搬送部2は、タブ12a,11aが搬送方向D1の上流側に位置するように、負極12およびセパレータ付き正極10を搬送する。言い換えれば、搬送部2は、タブ12a,11aが形成されていない他方の長辺が前側となるように、負極12およびセパレータ付き正極10を搬送する。なお、搬送部2の上流側には、図示しない正極供給部および負極供給部が配置される。正極供給部によって、搬送面2a上にセパレータ付き正極10が供給され、載置される。負極供給部によって、搬送面2a上に負極12が供給され、載置される。なお、搬送部2は、負極12およびセパレータ付き正極10を同様に搬送可能であれば、ローラーコンベア等、他の搬送手段であってもよい。
搬送部2には、駆動部2cが設けられている。駆動部2cは、ローラを回転させることによりベルト2dを走行させる。駆動部2cは、制御部としての機能も有しており、ベルト2dの走行速度を変更・調整可能である。搬送面2aの先端部は、搬送された負極12およびセパレータ付き正極10を交互に排出する出口部2bとされている。搬送部2では、搬送速度が高められており、負極12およびセパレータ付き正極10の高速搬送が可能になっている。出口部2bから排出された負極12およびセパレータ付き正極10は、速度調整部20に供給される。
速度調整部20は、搬送部2の出口部2bと移動方向に連続する位置に配置されている。速度調整部20は、平面視した場合に、搬送部2の延長線上に配置されている。言い換えれば、速度調整部20は、出口部2bから搬送方向D1に延びる延長線上に連続して配置されている。出口部2bと速度調整部20との間には空間が設けられてよい。この空間の大きさは、搬送部2における搬送速度や積層体Xにおける電極の積層枚数等に基づいて設定されてよい。あるいは、出口部2bと速度調整部20との間に空間が設けられていなくともよい。
速度調整部20は、搬送部2と滑走部50との間に配置されている。速度調整部20の上流側の端部は搬送部2の出口部2bと対向し、速度調整部20の下流側の端部は滑走部50の上流側の端部と対向する。図2に示されるように、速度調整部20は、水平方向に広がる矩形状の底板部24を有している。底板部24の表面は、正極10および負極12が滑走する速度調整面24aである。速度調整面24aは、水平方向に延びる面である。この速度調整面24aは、搬送部2の搬送面2aと連続的に延びる面である。ここでの「連続的」とは、搬送面2aが延びる方向と速度調整面24aが延びる方向が略同一であり、且つ、搬送面2aの下流側の端部の高さ位置と、速度調整面24aの上流側の端部の高さ位置が略同一である状態である。高さについては、搬送面2aよりも速度調整面24aが僅かに低い位置に配置されて、段差が形成されてもよい。段差の大きさは、電極に折れや曲がりや活物質の脱落等が発生しない程度であればよく、例えば10mm以下であってよい。実施形態では、搬送面2aと速度調整面24aとの間には空間が形成されているが、電極の移動に影響を及ぼさない程度の大きさの空間であるため、搬送面2aと速度調整面24aとは「連続的」に延びているものとする。なお、搬送部2が傾斜している場合に、搬送部2の搬送面2aの傾斜角と同様の傾斜角で速度調整面24aが傾斜してよい。ただし、速度調整面24aが傾斜する場合であっても、滑走部50の傾斜角よりも小さい角度に設定される。なお、搬送面2aが水平に延び、速度調整面24aの下流側が高い位置に配置されるように速度調整面24aが傾斜していてもよい。
速度調整部20は、底板部24の左右の側部に立設された互いに平行な一対の側板部25,25を有している。直方体状の外形をなす速度調整部20は、速度調整面24aの裏側に位置する面と、出口部2bに最も近い面と、滑走部50に最も近い面とが開放されている。出口部2b側で解放された部分が、正極10及び負極12が速度調整部20へ進入可能な進入部20aを構成している。滑走部50側で解放された部分が、正極10及び負極12を速度調整部20から排出可能な出口部20bを構成している。一対の側板部25,25は、それぞれ、底板部24に直交するように配置されている。平行な一対の側板部25,25は、負極12およびセパレータ付き正極10の幅よりも僅かに大きい間隔を有しており、負極12およびセパレータ付き正極10を進入部20aから出口部20bに向けて案内する。搬送部2から排出されて積層部4に進入する負極12およびセパレータ付き正極10の移動方向は、速度調整面24aが延びる方向に略等しい。
滑走部50は、速度調整部20の出口部20bの斜め下方に配置されている。滑走部50は、平面視した場合に、速度調整部20の延長線上に配置されている。言い換えれば、滑走部50は、速度調整部20の出口部20bから搬送方向D1に延びる延長線の下方に配置されている。出口部20bと滑走部50との間には、電極の移動に影響を及ぼさない程度の空間が設けられていてもよい。滑走部50の傾斜角は、水平方向に対して45〜85°である。
積層部4は、滑走部50の出口部の斜め下方に配置されている。積層部4は、平面視した場合に、滑走部50の延長線上に配置されている。滑走部50の出口部と積層部4との間には空間が設けられている。この空間の大きさは、滑走部50における搬送速度や積層体Xにおける電極の積層枚数等に基づいて設定されている。
積層部4は、支持部9上に取り付けられている。支持部9は、積層部4を保持する保持枠9aを有しており、この保持枠9a上に、積層部4が載置され、保持されている。支持部9は、出口部2bに対する積層部4の相対位置を変更し得るように、前後方向または上下方向にスライド移動可能な構造であってもよい。ここで言う前後方向とは、搬送方向D1を水平面に投影した方向と平行な方向である。
図1に示されるように、積層部4は、水平方向に対して傾斜して設けられた矩形状の底板部6と、底板部6の下端に立設された停止板部7と、底板部6の左右の側部に立設された互いに平行な一対の側板部8,8とを有する。底板部6の表面は、積層体Xが載置される載置面6aである。直方体状の外形をなす積層部4は、載置面6aに対向する面(すなわち積層体Xが取り出される面)と、停止板部7に対向する面(すなわち出口部20bに最も近い面)とが開放されている。これらの開放された部分から、負極12およびセパレータ付き正極10が進入可能になっている。
滑走部50から排出されて積層部4に進入する負極12およびセパレータ付き正極10の移動方向は、滑走部50と積層部4との位置関係や滑走部50における移動速度によって変わるが、概ね、載置面6aの傾斜方向よりも、水平面に対する角度が多少大きい方向である。なお、負極12およびセパレータ付き正極10の移動方向が載置面6aの傾斜方向に略等しくてもよい。
底板部6の下端(移動方向の一端)に立設された停止板部7は、底板部6に直交するように設けられており、載置面6aの傾斜方向または移動方向に移動する負極12およびセパレータ付き正極10を停止させる。一対の側板部8,8は、それぞれ、底板部6および停止板部7に直交するように配置されている。これらの底板部6と停止板部7と側板部8,8との間に、積層体Xが形成される積層領域Aが設けられている。平行な一対の側板部8,8は、負極12およびセパレータ付き正極10の幅よりも僅かに大きい間隔を有しており、負極12およびセパレータ付き正極10を積層領域Aに向けて案内する。なお、負極12およびセパレータ付き正極10の案内を容易にするために、側板部8,8の上部(出口部2b側に開放された部分)は、上方ほど広い間隔のテーパ状になっている。負極12およびセパレータ付き正極10は、側板部8,8に案内され、停止板部7に当接した状態で載置面6a上に積層される。したがって、積層領域Aは、底板部6、停止板部7および側板部8,8に接する直方体状の領域である。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る電極積層装置1の制動部21について説明する。速度調整部20には、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させる制動部21が設けられている。制動部21は、速度調整面24aから離間した位置より、速度調整面24a側に気体を吹き付ける気体吹付部22を備える。気体吹付部22は、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10に対して、気体を吹き付けることによって、吹付けた気体による摩擦力を付与することができる。また気体吹付部22は、負極12およびセパレータ付き正極10に対して、非接触にて速度調整面24a側へ押圧する力を付与できる。従って、押圧された負極12およびセパレータ付き正極10は、速度調整面24a側で摩擦力を付与される。これらの摩擦力が、負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低減する制動力として機能する。
気体吹付部22は、速度調整面24aから離間した位置に、速度調整面24aと対向して配置される。気体吹付部22は、積層部4における負極12およびセパレータ付き正極10の移動経路に向けて気体を吹き付けるように構成されている。気体は、特に限定されないが、空気、窒素、その他の不活性ガス等が用いられる。気体吹付部22は、速度調整面24aから、少なくとも負極12およびセパレータ付き正極10の厚み分より大きい距離だけ離間している。本実施形態では、気体吹付部22は、速度調整面24aの移動方向における略中央位置に対向するように配置されている。ただし気体吹付部22は、速度調整面24aへ気体を吹き付けることで、負極12およびセパレータ付き正極10へ制動力を付与できる限り、どこに配置されていてもよい。例えば、気体吹付部22は、速度調整面24aの上流側の領域に対向するように配置されてよく、速度調整面24aの下流側の領域に対向するように配置されてもよい。また、気体吹付部22は、送風型のイオナイザ(静電気除去装置)であってもよい。積層時に電極間で発生する静電気をイオンにより中和することで、電極の貼り付きを防止する機能を持たせてもよい。また、静電気が中和されることで、空気中のホコリやゴミが電極表面に付着することを防止でき、電極間の積層ずれを防止できる。
気体吹付部22は、速度調整面24aに向けられた気体吹出部22aを有する。気体吹付部22は、図示しないブロワ、配管およびノズル等を有している。ノズルの先端が、気体吹出部22aに相当する。気体吹付部22から気体が吹き付けられる吹付エリア22bは、気体吹出部22aを中心とする円錐状であってもよい。また、気体吹付部22が、幅方向(図2の紙面垂直方向)に並ぶ複数の気体吹出部22a(すなわちノズル)を有することにより、吹付エリア22bは幅方向に長い三角柱状であってもよい。
吹付エリア22bの中心線は、たとえば速度調整面24aに直交している。気体吹付部22の中心線は、速度調整面24aに対して角度をなしてもよい。吹付エリア22bの中心線は、速度調整面24aの移動方向における略中央位置と交差するように設定されている。ただし吹付エリア22bの中心線は、負極12およびセパレータ付き正極10へ制動力を付与できる限り、どのような位置に設定されていてもよい。例えば、吹付エリア22bの中心線は、速度調整面24aの上流側の領域と交差するように配置されてよく、速度調整面24aの下流側の領域と交差するように配置されてもよい。気体吹付部22における吹付エリア22bの形状(すなわち吹付範囲)および吹付けの強さは、調整可能とされている。
気体吹付部22は、吹付けを制御する制御部(不図示)と接続されていている。当該制御部は、吹付ける気体の量、吹付けのタイミングを制御する。制御部は、負極12およびセパレータ付き正極10が速度調整部20を通過するタイミングで間欠的に気体の吹付けを行ってよく、通過のタイミングに関わらず運転中は常時気体を吹き付けてもよい。また、速度調整部20よりも上流側の何れかの位置(例えば、搬送部2と速度調整部20の間など)に負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を測定する測定部を設けてよい。制御部は、測定部で測定した移動速度に基づいて、制動部21の制動力を調整してもよい。
続いて、電極積層装置1における電極積層方法について説明する。搬送部2によって、負極12およびセパレータ付き正極10を順次搬送する。出口部2bから排出された負極12およびセパレータ付き正極10は、出口部2bと速度調整部20との間の空間を移動する。続いて、速度調整部20の速度調整面24aに負極12またはセパレータ付き正極10が進入する。これにより、上流側の搬送部2から移動してきた負極12およびセパレータ付き正極10を速度調整面24aに沿って滑走させて速度調整を行う速度調整工程が実行される。負極12およびセパレータ付き正極10は、搬送部2で付与された駆動力によって、速度調整面24aを滑るように移動する。
速度調整工程では、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させる制動工程が実行される。具体的には、気体吹付部22が速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10に対して気体を吹き付ける。気体を受けた負極12およびセパレータ付き正極10は、気体からの摩擦力および速度調整面24aからの摩擦力により、速度調整面24a上を滑走しつつ、移動方向の速度を低減させられる。
速度調整工程の後、負極12およびセパレータ付き正極10が滑走部50の滑走面を滑走する工程が実行される。負極12およびセパレータ付き正極10は、水平方向に対して傾斜する滑走面に沿って、重力によって移動する。滑走工程の後、積層部4にて負極12およびセパレータ付き正極10を積層する積層工程が実行される。積層工程では、速度調整部20から積層部4へ供給されたと負極12およびセパレータ付き正極10が、すでに積層された負極12およびセパレータ付き正極10の積層体X(未完成状態の積層体)の最上面に重なる位置へ供給されると共に、停止板部7に当接し、停止させられる。これによって、負極12およびセパレータ付き正極10が交互に積層される。
次に、本実施形態の電極積層装置1の作用・効果について説明する。
まず、比較例に係る電極積層装置について説明する。図3に示すように、比較例に係る電極積層装置は、本実施形態のように制動部21を有する速度調整部20が設けられていない。負極12およびセパレータ付き正極10を積層させる積層部4では、高速で搬送されてきた負極12およびセパレータ付き正極10が停止板部7と当接することで停止する。停止板部7に負極12およびセパレータ付き正極10が高速で当たると、いくつかの面で問題が生じ得る。たとえば、負極12およびセパレータ付き正極10の損傷や粉落ち等が考えられる。
これに対し、本実施形態の電極積層装置1によれば、速度調整部20には、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させる制動部21が設けられている。速度調整部20は、積層部4よりも上流側に配置されているものであるため、制動部21は、積層部4よりも上流側の位置で負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させることができる。このように、積層部4よりも上流側の位置にて負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させることで、電極が積層部4で停止する際の衝撃を低減することができる。
また、本実施形態の電極積層装置1において、制動部21は、速度調整面24aから離間した位置より、速度調整面24a側に気体を吹き付ける気体吹付部22を備える。この場合、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10は、気体吹付部22から気体を吹き付けられることで、速度調整面24a側に押圧される。これにより、負極12およびセパレータ付き正極10には、吹付けられた気体との摩擦力に加え、速度調整面24a側へ押し付けられたことによる、速度調整面24a側からの摩擦力が付与される。これらの摩擦力が、負極12およびセパレータ付き正極10に対する制動力として機能する。
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態に係る電極積層装置において、制動部121は、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10を速度調整面24a側へ吸引可能な吸引部33を備える。この電極積層装置においては、底板部24には、空気層31を形成するための空気供給孔32と、吸引部33と、が形成されている。
空気供給孔32は、底板部24を貫通する複数の微小な貫通孔によって構成される。空気供給孔32は、速度調整面24aとは反対側の端部において、図示しないブロワ、配管およびノズル等に接続されている。空気供給孔32は、速度調整面24aから空気を供給することによって、速度調整面24aと負極12およびセパレータ付き正極10との表面に、薄い空気層31を形成する。これによって、負極12およびセパレータ付き正極10は、速度調整面24aとは非接触状態で、速度調整面24aに沿って移動する。このように、空気供給孔32で空気層が形成されることにより、負極12およびセパレータ付き正極10の吸引側の面に、吸引部33の貫通孔の吸引痕が残ることを防止できる。ただし、空気供給孔32は省略されてもよい。
吸引部33は、底板部24を貫通する複数の貫通孔によって構成される。吸引部33は、速度調整面24aとは反対側の端部において、図示しないポンプ等の吸引手段と接続されている。吸引部33は、所定の圧力で速度調整面24aから空気を吸引する。吸引部33は、速度調整面24aのうち、負極12およびセパレータ付き正極10が通過する移動経路上に形成される。吸引部33の個数や配列等は特に限定されないが、例えば図5に示すような配列で構成されていてよい。
制動部121では、速度調整面24aの上流側で発生させる制動力に比して下流側で発生させる制動力の方が大きい。すなわち、速度調整面24aの上流側で発生する吸引力に比して下流側で発生する吸引力の方が大きい。図5を参照して、吸引力を調整するための構成について説明する。図5(a)に示す構成では、上流側から下流側へ向かうに従って、一つあたりの吸引部33の吸引力が大きくなっている。図5(a)に示すように、吸引部33は、上流側と下流側とで同様のパターンで形成されている。ここでは、吸引部33は、2列の配列で形成されている。吸引部33のエア圧(吸引する圧力)は、上流側に比して下流側の方が大きい。例えば、吸引部33のエア圧は、上流側から下流側の順に、0.2MPa、0.3MPa、0.4MPa、0.5MPaに設定されている。ただし、具体的なエア圧については、どのような数値に設定されてもよい。
図5(b)に示す構成では、上流側から下流側へ向かうに従って、吸引部33の数が増加する。図5(b)に示すように、吸引部33は、移動方向に沿って複数段設けられており、下流側へ向かうに従って、一段毎に吸引部33の数が一つずつ増えている。なお、一つあたりの吸引部33の吸引力は等しい。また、図5(c)に示す構成では、上流側から下流へ向かうに従って、吸引部33の径が大きくなっている。図5(c)に示すように、吸引部33は、移動方向に沿って複数段設けられており、下流側へ向かうに従って、一段毎に吸引部33の径が大きくなっている。
以上のように、制動部121は、速度調整面24aを滑走する負極12およびセパレータ付き正極10を速度調整面24a側へ吸引可能な吸引部33を備える。この場合、速度調整面24a側へ吸引された負極12およびセパレータ付き正極10が、速度調整面24a側に押圧される。これにより、負極12およびセパレータ付き正極10には、速度調整面24a側へ押し付けられることにより、速度調整面24a側からの摩擦力が付与される。この摩擦力が、負極12およびセパレータ付き正極10に対する制動力として機能する。
また、制動部121は、速度調整面24aの上流側で発生させる制動力に比して下流側で発生させる制動力の方が大きい。これにより、急激に移動速度が変化することを抑制しつつ、下流側で十分な制動力を付与することができる。
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施形態に係る電極積層装置において、制動部221は、速度調整面24aにおける下流側から上流側へ向かって進行波を発生する超音波発生部40を備える。この電極積層装置においては、超音波発生部40は、底板部24の裏面側に設けられた超音波振動子40A,40Bによって構成される。
超音波振動子40Aの先端部は、底板部24の上流側の領域に接続されている。超音波振動子40Bの先端部は、底板部24の下流側の領域に接続されている。上流側の超音波振動子40Aの位相は、下流側の超音波振動子40Bの位相よりも進んでいる。基準の振動子を下側の振動子40Bとして上側の振動子40Aに位相差を加えていくと上側に進行波が発生する。例えば、上流側の超音波振動子40Aと下流側の超音波振動子40Bとの間の位相差は、0〜90°である。これによって、速度調整面25aに発生する進行波は、下流側から上流側へ向かって進行する。すなわち、進行波は、負極12およびセパレータ付き正極10の移動方向とは反対方向へ進行する。これにより、超音波発生部40による進行波は、負極12およびセパレータ付き正極10の移動速度を低下させる制動部として機能する。また、当該構成を採用した場合、速度調整面24aに超音波振動が発生するため、放射圧が発生することで、負極12およびセパレータ付き正極10を実質的に非接触で搬送することが可能となる。
以上によって、制動部221は、速度調整面25aにおける下流側から上流側へ向かって進行波を発生する超音波発生部40を備える。これにより、負極12およびセパレータ付き正極10には、進行波の振動によって、下流側から上流側へ向かう力が付与される。このような力が、電極に対する制動力として機能する。
また、図6(b)に示すように、制動部221は、速度調整面24aの上流側で発生させる制動力に比して下流側で発生させる制動力の方を大きくしてよい。具体的には、上流側と下流側で底板部24を分割し、上流側の底板部24に超音波振動子40A,40Bを設け、下流側の底板部24に超音波振動子40C,40Dを設ける。また、下流側の超音波振動子40C,40Dが発生する進行波による制動力は、上流側の超音波振動子40A,40Bが発生する進行波による制動力よりも大きい。これにより、負極12およびセパレータ付き正極10が速度調整部20へ至った時に、急激に移動速度が変化することを抑制しつつ、下流側では十分な制動力を付与することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、図2に示す第1実施形態では、気体吹付部22が移動方向における一カ所に配置されていた。これに代えて、移動方向における複数カ所に配置してもよい。また、下流側に配置されている気体吹付部22の吹付力が、上流側に配置されている気体吹付部22の吹付力に比して大きくてよい。これによって、制動部21は、速度調整面24aの上流側で発生させる制動力に比して下流側で発生させる制動力が大きくなる。
また、上記実施形態では、電極積層装置が滑走部50を備えているが、図7に示すように滑走部50を省略してもよい。すなわち、速度調整部20の下流側には積層部54が設けられる。この場合、積層部54の傾斜した載置板26、底板29及び側壁28によって電極が位置決めされる。これにより、搬送部2で搬送されて、速度調整部20にて制動部21で制動力を付与された負極12およびセパレータ付き正極10は、速度調整部20の出口部から落下する。なお、積層部54の横側の一方に負極12用の搬送部2及び速度調整部20が設けられ、横側の他方にセパレータ付き正極10用の搬送部2及び速度調整部20が設けられている。従って、負極12およびセパレータ付き正極10は、両側の速度調整部20から交互に供給され、積層部54の載置板26で受けられると共に、底板29と接触して停止する。
また、上記実施形態では負極12とセパレータ付き正極10とを交互に積層して電極組立体の前駆体である積層体Xを得る装置について説明したが、本発明は、セパレータ付き正極10のみ、または、負極12のみの積層装置に適用されてもよい。正極製造ラインや負極製造ラインに用いられる、電極組立体ではない中間体の積層のための積層装置に本発明が適用されてもよい。すなわち、「積層部」とは、上述の実施形態に示す形態で電極を積層する機構に限定されず、バッファやマガジンなどであってもよい。
搬送部はベルトコンベアに限られない。たとえば、タイミングベルトやチェーンにより循環路上を搬送されるパレット搬送方式の搬送部でもよい。また、搬送部は、重力による滑走を利用した搬送部であってもよい。
また、上述の実施形態では、制動部として、気体吹付部、吸引部及び超音波発生部を例示したが、これらの手段の2以上を組み合わせて用いてもよい。