以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態の電極積層装置を適用して製造される蓄電装置の内部構成の一例を示す断面図である。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった車載用の非水電解質二次電池として構成されている。
蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系有機溶媒系の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の上面部には、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
電極組立体3は、正極11と、負極12と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、例えば正極11が収容される。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。つまり、電極組立体3は、袋状のセパレータ13に正極11を収容することにより構成されるセパレータ付き正極10を有している。
なお、スペース効率を向上してケース2内の空間に占める電極組立体3の体積の増加を図る観点から、一例として、電極組立体3を、セパレータ付き正極10及び負極12の下端(正極端子5及び負極端子6と反対側の端部)がケース2の底面に接触するように、ケース2内に収容することができる。ケース2の内面上には、絶縁部材(不図示)が配置されている。したがって、この場合には、セパレータ付き正極10及び負極12の下端は、絶縁部材を介してケース2の底面に当接する。ただし、セパレータ付き正極10及び負極12の下端とケース2の底面との間には、絶縁部材が占める空間以外に微小な隙間が形成されていてもよい。
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15とを有している。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の金属箔本体部14aの両面に、正極活物質が担持されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。本体部14aの上縁部(一方の端部)には、正極端子5の位置に対応してタブ(突出部)14bが形成されている。タブ14bには、正極活物質が担持されていない。タブ14bは、本体部14aの上縁部から上方に延び、導電部材16を介して正極端子5に接続されている。
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18とを有している。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の金属箔本体部17aの両面に、負極活物質が担持されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。本体部17aの上縁部(一方の端部)には、負極端子6の位置に対応してタブ(突出部)17bが形成されている。タブ17bには、負極活物質が担持されていない。タブ17bは、本体部17aの上縁部から上方に延び、導電部材19を介して負極端子6に接続されている。
セパレータ13は、例えば袋状に形成され、内部に正極11のみを収容している。セパレータ13の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bは、略矩形のセパレータ13から上方に突出している。なお、セパレータ13は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
続いて、蓄電装置1の製造方法について説明する。なお、本発明は、製造工程中、正極、負極とセパレータを組み合わせ、積層型の電極組立体とする積層工程に関り、他の工程については、公知の技術と代わるところは無い。従って、積層工程以外の工程については、その一例につき、概略を述べるに留める。
まず、混練工程が実施される。混練工程においては、活物質層の主成分である活物質粒子と、バインダ及び導電助剤などの粒子を、混練機内の溶媒中で混練し、各粒子の分散性がよい電極合剤を製造する。バインダは、例えばポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂であってもよく、主鎖にイミド結合を有するポリマー樹脂であってもよい。溶媒は、例えばNMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒であってもよく、水であってもよい。導電助剤は例えば、アセチレンブラックやカーボンブラック、グラファイトなどの炭素系材料である。次に、塗工工程が実施される。塗工工程では、ロール状に巻かれた帯状の金属箔を繰り出し、その金属箔の表面に、電極合剤を間欠的または連続的に塗布する。電極合剤が塗布された金属箔は、電極合剤の塗布の直後に乾燥炉内を通過する。これにより、電極合剤に含まれる溶媒が乾燥・除去されると共に、樹脂よりなるバインダが活物質粒子同士を結合する。これにより、活物質粒子の間に微細な間隙(空孔)を有する活物質層が形成される。
次いで、プレス工程が実施される。プレス工程では、帯状の金属箔の表面に形成された活物質層をロールにより所定の圧力でプレスする。これにより、活物質層が圧縮され、活物質の密度が適切な値に高められる。次いで、外観検査工程が実施される。外観検査工程では、活物質層の表面状態をカメラ等で確認し、良品及び不良品の判定を行う。
次いで、減圧乾燥工程が実施される。減圧乾燥工程では、活物質層が形成された帯状の金属箔を、真空乾燥炉内に収容して減圧高温化にて乾燥する。これにより、活物質層に残留するわずかな溶媒を除去する。次いで、打ち抜き工程が実施される。打ち抜き工程では、打ち抜き機を用いて、活物質層が形成された金属箔を所定の形状に打ち抜くことで、上記の正極11及び負極12を形成する。
なお、以降の第1実施形態では、正極11は、袋状のセパレータ13に収容された後、負極12と積層されるものとする。正極11をセパレータ13内に収容するセパレータ包み工程は、正極11と、ロール状に巻かれた帯状セパレータの対を用いる。まず、一方の帯状セパレータを繰り出し、その上に、等間隔で隙間を空けながら、正極11を載置する。このとき、正極11のタブ14bがセパレータの幅方向に突出するように正極11を配置する。次に、他方の帯状セパレータを繰り出し、正極11を挟むように、他方の帯状セパレータを一方の帯状セパレータと重ねる。その後、各正極11を囲む位置にて、一方の帯状セパレータと他方の帯状セパレータとを溶着する。溶着部は、例えば、正極11の3辺を囲み、位置決めするものであればよいが、好ましくは、4辺を囲むように溶着部を設ける。溶着後、一方及び他方の帯状セパレータを、正極11及び溶着部毎に裁断し、袋状のセパレータ13に収容されたセパレータ付き正極10を作成する。
次いで、積層工程が実施される。積層工程では、セパレータ包み工程及び打ち抜き工程で得られたセパレータ付き正極10及び負極12を順次積層する。次いで、組み立て工程が実施される。組み立て工程では、正極11と負極12とが、セパレータ13を介して積層された積層体を一体化し、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bをそれぞれ溶接する。これにより、電極組立体3を得る。そして、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bに、導電部材16及び導電部材19をそれぞれ溶接する。
上記の打ち抜き工程で作製される負極12及びセパレータ付き正極10は、略等しい形状及び大きさを有している。すなわち、負極12の幅及び高さと、セパレータ付き正極10の幅及び高さは、略等しい。言い換えれば、正極活物質層15が形成された正極11の金属箔本体部14aの幅及び高さは、負極活物質層18が形成された負極12の金属箔本体部17aの幅及び高さより若干小さくなっている。
続いて、図3〜図7を用いて、第1実施形態の電極積層装置100について説明する。図3は、電極積層装置100の全体構成を模式的に示す図である。図4及び図5は、電極積層装置100の一部を示す斜視図及び側面図である。図6は、電極積層装置100の一部を電極の積層方向から見た図である。図7は、電極積層装置100の一部を前方から見た図である。電極積層装置100は、上記の積層工程において使用され、シート状の電極を複数積層するための装置である。図3〜図6に示すように、電極積層装置100は、主要な構成要素として、電極50(セパレータ付き正極10及び負極12)を供給する供給部20と、供給部20により供給された電極50を搬送する搬送部30と、搬送部30により搬送された電極50を下方に滑走させる滑走部40と、滑走部40から落下する電極50を積層する積層部60と、供給部20、搬送部30、及び積層部60の動作を制御する制御部90と、を備えている。
電極50(セパレータ付き正極10又は負極12)は、以下のように積層されることで、積層部60上に積層体Xを形成する。すなわち、滑走部40は、滑走部40の上端部側において、搬送部30により搬送される電極50を受け取り、電極50を下方に滑走させる。滑走部40の下端部から落下した電極50は、滑走部40の下方に配置された積層部60に落下し、積層部60において順次積層される。これにより、積層部60において積層体Xが形成される。
供給部20は、前工程(すなわち、セパレータ包み工程及び打ち抜き工程)で製造された電極50(セパレータ付き正極10及び負極12)を搬送部30に供給する。供給部20は、例えば、セパレータ付き正極10の製造ラインと搬送部30との間を接続する一のベルトコンベアと、負極12の製造ラインと搬送部30との間を接続する他のベルトコンベアと、を有する。供給部20は、このような2つのベルトコンベアにより、セパレータ付き正極10及び負極12を搬送部30上に交互に移載する。ここで、供給部20は、セパレータ付き正極10及び負極12のそれぞれのタブ14b,17bが電極50の搬送方向における上流側に位置するように、セパレータ付き正極10及び負極12を搬送部30上に移載する。
積層部60での電極50の積層が完了すると、供給部20は、電極50の供給を停止することを指示する制御信号を制御部90から受信し、搬送部30への電極50の供給を停止する。詳しくは後述するが、本実施形態では一例として、制御部90は、積層部60に積層された電極50の枚数が所定枚数に達したことを検知することで、積層部60での電極50の積層が完了したことを検知し、上述の制御信号を供給部20に送信する。なお、供給部20とセパレータ付き正極10及び負極12の各製造ラインとの間には、一定量のセパレータ付き正極10及び負極12を一時的に貯めておくためのバッファ部が設けられてもよい。
搬送部30は、供給部20により供給され、一定間隔で交互に載置されたセパレータ付き正極10及び負極12を滑走部40に供給する。搬送部30は、例えばベルトコンベアであり、当該ベルトコンベアを駆動させる駆動部31を有する。駆動部31は、例えばベルトコンベアを駆動させるモータである。駆動部31の稼働及び停止は、制御部90からの制御信号によって制御される。具体的には、積層部60での電極50の積層が完了すると、駆動部31は、搬送部30の駆動の停止を指示する制御信号を制御部90から受信し、搬送部30の駆動を停止する。
蓄電装置1がリチウムイオン二次電池の場合、搬送部30の前端部(滑走部40側の端部)には、図示しない電極払出手段(例えばピッカー等)を備えてもよい。リチウムイオン二次電池の電極組立体3の両端は負極12であるため、積層部60に最初に積層される電極50が負極12となるように調整する必要がある。従って、上述した電極払出手段は、積層部60での電極50の積層が完了すると、制御部90からの指示に基づいて、搬送部30の前端部にある電極50がセパレータ付き正極10である場合には、当該セパレータ付き正極10を除去し、供給部20に戻す。
滑走部40は、電極50を下方に滑走させる底板部41と、底板部41の傾斜方向(すなわち電極50の滑走方向)に直交する水平な幅方向における両端縁部に立設され、滑走方向に延在する一対の側板部42と、を有している。底板部41は、電極50を下方に滑走させる滑走面41aを有している。底板部41は、搬送部30により搬送され、底板部41の滑走面41aに落下した電極50を下方に滑走させるように、水平方向に対して傾斜している。側板部42は、底板部41の滑走面41aを滑走する電極50に当接して、電極50を幅方向における所定の位置に案内する。
図4及び図5に示すように、滑走部40は、例えば搬送部30の幅方向における両側を支持する一対のフレームFによって固定される。具体的には、一対の側板部42の上端部と一対のフレームFとが連結されることにより、滑走部40は、一対のフレームFに支持される。なお、図5に示すように、滑走部40は、側板部42とフレームFとの連結部を通って幅方向に延びる軸線L1を中心に回動可能であってもよい。この構成によれば、水平方向に対する底板部41の傾斜角度θ1を調節することが可能となる。
また、一対の側板部42は、一対の側板部42同士の幅が電極50の滑走方向に向かって幅狭となるように設けられている。この構成によれば、電極50が底板部41の下端部から離れて落下する際の電極50の幅方向における位置を適切に決定することが可能となる。
図4及び図6に示すように、底板部41の下端部には、底板部41の板厚方向に貫通する2つの矩形状の切欠きS1,S2が設けられている。切欠きS1,S2は、底板部41の下端部のうち切欠きS1,S2が設けられていない下端縁41bよりも上方に形成されている。切欠きS1,S2は、略同じ形状及び大きさをなしており、幅方向に離間して設けられている。切欠きS1,S2は、底板部41の傾斜方向に延びる中心線に対して、線対称をなしている。ここで、底板部41の下端部のうち切欠きS1,S2が設けられていない3つの平坦な部分は、底板部41の下端部から電極50が落下する直前まで電極50(具体的には、金属箔本体部14a,17aの上端部に相当する部分)を支持し得る部分になっている。
切欠きS1は、幅方向において、セパレータ付き正極10の矩形のタブ14bの幅方向における位置に対応する位置に設けられている。これにより、タブ14bが上流側に位置する状態で底板部41の滑走面41aを滑走するセパレータ付き正極10が底板部41の下端部から落下する際には、セパレータ付き正極10のタブ14bは、切欠きS1を通ることになる。従って、セパレータ付き正極10が底板部41の下端部から落下する際に、セパレータ付き正極10のタブ14bが底板部41の下端部に引っ掛かることを防止することができる。
ここで、切欠きS1の幅(幅方向の大きさ)が、セパレータ付き正極10のタブ14bの幅よりも大きく、切欠きS1の高さ(底板部41の傾斜方向の大きさ)が、セパレータ付き正極10のタブ14bの高さよりも高い場合には、セパレータ付き正極10が底板部41の下端部から落下する際に、セパレータ付き正極10のタブ14bが底板部41の下端部に引っ掛かることを確実に防止することができる。ただし、切欠きS1の高さは、セパレータ付き正極10のタブ14bの高さより低くてもよい。このような構成でも、セパレータ付き正極10が底板部41の下端部から落下する際において、セパレータ付き正極10のタブ14bが底板部41の下端部に引っ掛かった状態が継続する時間を短くすることができる。これにより、セパレータ付き正極10のタブ14bの変形又は損傷を抑制することができる。
切欠きS2は、幅方向において、負極12の矩形のタブ17bの幅方向における位置に対応する位置に設けられている。これにより、タブ17bが上流側に位置する状態で底板部41の滑走面41aを滑走する負極12が底板部41の下端部から落下する際には、負極12のタブ17bは、切欠きS2を通ることになる。従って、負極12が底板部41の下端部から落下する際に、負極12のタブ17bが底板部41の下端部に引っ掛かることを防止することができる。
ここで、切欠きS2の幅が、負極12のタブ17bの幅よりも大きく、切欠きS2の高さが、負極12のタブ17bの高さよりも高い場合には、負極12が底板部41の下端部から落下する際に、負極12のタブ17bが底板部41の下端部に引っ掛かることを確実に防止することができる。ただし、切欠きS2の高さは、負極12のタブ17bの高さより低くてもよい。このような構成でも、負極12が底板部41の下端部から落下する際において、負極12のタブ17bが底板部41の下端部に引っ掛かった状態が継続する時間を短くすることができる。これにより、負極12のタブ17bの変形又は損傷を抑制することができる。
上記構成により、タブの位置が異なる複数の電極50(セパレータ付き正極10及び負極12)を1つの滑走部40で下方に滑走させる場合において、各電極50のタブが滑走部40の底板部41の下端部に引っ掛かることを防止することができる。すなわち、切欠きS1,S2は、電極50のタブの逃しとして機能する。なお、底板部41の下端部において切欠きS1,S2が形成される縁部41cは、面取りされた形状(例えばR形状)とされてもよい。これにより、セパレータ付き正極10のタブ14bが切欠きS1の縁部41cに接触した際のタブ14bの変形又は損傷を軽減することができる。同様に、負極12のタブ17bが切欠きS2の縁部41cに接触した際のタブ17bの変形又は損傷を軽減することができる。
図3に示すように、滑走部40には、光学センサ43が設けられている。本実施形態では一例として、光学センサ43は、底板部41の背面に配置される。底板部41における光学センサ43が配置される部分には貫通孔が形成されている。光学センサ43は、滑走面41aを滑走する電極50によって当該貫通孔が遮られた状態を検知し、当該貫通孔が遮られた状態であることを示す検知信号を制御部90に出力する。制御部90は、この検知信号に基づいて、滑走部40を滑走して積層部60に向かった電極50の枚数をカウントする(詳しくは後述する)。
積層部60は、滑走部40から落下する電極50を積層する部分である。積層部60は、底板部41から落下する電極50を所定の位置に案内して積層する電極受け部70と、電極受け部70を移動可能に支持する支持部80と、を有する。電極受け部70は、底壁部71と、ストッパ72と、一対の側壁部73と、突出壁部74,75と、を有している。
底壁部71は、底板部41の下端部の下方に配置されて水平方向に対して傾斜している。底壁部71には、電極50が載置される。具体的には、底壁部71には、搬送部30により交互に搬送されるセパレータ付き正極10と負極12とが、滑走部40を経由して順次落下する。これにより、底壁部71上には、セパレータ付き正極10と負極12とが交互に積層された積層体Xが形成される。底壁部71には、ストッパ72が取り付けられている。なお、ストッパ72は、例えば、底壁部71の傾斜方向に移動可能なように、底壁部71に取付けられていてもよい。
ストッパ72は、底壁部71に立設されて底壁部71の傾斜方向に直交する幅方向に延在し、底壁部71に載置された電極50のタブ(タブ14b又はタブ17b)が設けられていない側の端部(他方の端部)に接触して電極50を停止させる。ストッパ72は、底壁部71上に積層される電極50の下端部の位置を揃えるためのガイドとして機能する。
一対の側壁部73は、底壁部71の幅方向における両端縁部のそれぞれに立設され、底壁部71の傾斜方向に延在すると共に、傾斜方向に直交する方向に離間する板状部材である。図6に示すように、一対の側壁部73の間隔は、電極50の幅以上であり、一対の側壁部73の上端部には、傾斜方向の下方に向かうにつれて電極50の幅に近づくように間隔が狭くなったテーパ部73aが設けられている。各側壁部73におけるテーパ部73aの下端側には、一定の間隔を有する平行部73bが連続して設けられている。このように、一対の側壁部73の上端部にはテーパ部73aが設けられているため、底板部41の下端部から落下する電極50は、まずテーパ部73aの幅広の部分に受け入れられる。そして、電極50は、滑走して下方に向かうにつれて、テーパ部73aによって案内される。これにより、電極50の幅方向(底壁部71の幅方向)の位置を揃えることが可能となる。
図5に示すように、電極50の他方の端部に接触するストッパ72の接触面72aから底板部41の下端部のうち切欠きS1,S2が設けられていない下端縁41bまでの底壁部71の傾斜方向の距離d1は、電極50の他方の端部から電極50のタブ(タブ14b又はタブ17b)の先端までの距離d2よりも小さい。この構成では、電極50が底板部41の下端部から落下する際にタブ14b及びタブ17bがそれぞれ切欠きS1,S2を通ることを利用して、滑走部40と電極受け部70とが配置されている。すなわち、ストッパ72の接触面72aから底板部41の下端部のうち切欠きS1,S2が設けられていない下端縁41bまでの底壁部71の傾斜方向の距離d1が、電極50の全長(他方の端部からタブの先端までの距離d2)よりも短くなるように、滑走部40と電極受け部70とが配置されている。これにより、底板部41の下端部から落下する電極50の他方の端部が電極受け部70の底壁部71(又は底壁部71上に載置済みの電極50)の上面に接触する位置を、なるべくストッパ72の接触面72aに近づけることができる。すなわち、電極50の他方の端部が電極受け部70の底壁部71(又は底壁部71上に載置済みの電極50)の上面に接触してから、ストッパ72の接触面72aまで滑り落ちる距離を短くすることができる。これにより、電極50を電極受け部70に積層する際に電極50が受ける衝撃を軽減することができ、積層時におけるずれの発生や電極50の損傷を抑制することができる。
また、滑走部40と電極受け部70とは、底板部41の滑走面41aを滑走する電極50が底板部41の下端部から落下して底壁部71に着地するまでの間において、電極50が滑走部40の側板部42及び電極受け部70の側壁部73の少なくとも一方に接触するように配置されていてもよい。より具体的には、電極50が底板部41の下端部から落下する際に、電極50が側板部42に接触している状態から底壁部71に接触している状態に連続的に移行可能なように、滑走部40と電極受け部70とを近づけて配置してもよい。この場合、電極50が底板部41の下端部から落下する際、電極50の上方側の一部が側板部42に接触している状態で、底板部41の下端部から下方に飛び出した電極50の下方側の一部が側壁部73(例えば上記したテーパ部73a)に接触することになる。すなわち、電極50が滑走部40及び電極受け部70のいずれにも接触せずに宙に浮いてしまう状態が発生することを抑制することができる。これにより、電極50が底板部41の下端部から落下する際に、電極50の幅方向の位置がずれてしまうことを適切に防止することができる。その結果、電極50を積層体Xが形成すべき位置に適切に案内することが可能となる。
図4及び図7に示すように、底壁部71の上端部には、底壁部71の傾斜方向の上方に突出する2つの突出壁部74,75が設けられている。また、上述した切欠きS1,S2はそれぞれ、突出壁部74,75に対応する位置に設けられている。言い換えれば、底板部41の下端部には、突出壁部74,75に対応する位置に、底板部41の板厚方向に貫通する切欠きS1,S2が設けられている。これにより、後述する仕組みにより、底壁部71上に積層された電極50の積層体Xを取り出すために電極受け部70をスライド移動させる場合において、底壁部71に設けられた突出壁部74,75は、底板部41の下端部に設けられた切欠きS1,S2を通ることが可能となる。これにより、底壁部71に積層される電極50の位置ずれや損傷等を抑制するために滑走部40と電極受け部70とをなるべく近づけつつ、滑走部40に干渉することなく、電極受け部70をスライド移動させることができる。
一方の突出壁部74は、底壁部71の傾斜方向に直交する幅方向において、セパレータ付き正極10のタブ14bに対応する位置に設けられている。他方の突出壁部75は、幅方向において、負極12のタブ17bに対応する位置に設けられている。従って、滑走部40から落下して底壁部71に積層される電極50のタブ(タブ14b及びタブ17b)に対応する位置に設けられた突出壁部74,75により、電極50のタブを支持することができる。これにより、電極50のタブが底壁部71の上端部から外にはみ出し、重力によって折れ曲がることを防止することができる。
切欠きS1,S2と突出壁部74,75との位置関係について説明すると、突出壁部74,75は、電極50の積層方向から見て、切欠きS1,S2に重なるように配置されている。これにより、セパレータ付き正極10のタブ14bが底板部41の下端部に設けられた切欠きS1を通って底壁部71に落下する際に、セパレータ付き正極10のタブ14bは、突出壁部74が設けられた位置に着地することとなる。また、負極12のタブ17bが底板部41の下端部に設けられた切欠きS2を通って底壁部71に落下する際に、負極12のタブ17bは、突出壁部75に着地することとなる。これにより、底板部41の下端部から落下したセパレータ付き正極10のタブ14b又は負極12のタブ17bを、突出壁部74,75によって適切に支持することができる。
また、図7に示すように、突出壁部74,75は、前方から見て、切欠きS1,S2内に収まるように配置されている。これにより、電極受け部70を滑走部40に対して前後方向にスライド移動させた場合に、底壁部71の上端部に設けられた突出壁部74,75は、底板部41の下端部に設けられた切欠きS1,S2を通ることができる。従って、電極受け部70に電極50を積層するための積層位置と電極受け部70に積層された電極50の積層体Xを取り出すための取出位置との間での電極受け部70の移動を、前後方向の一軸の移動操作により簡易に行うことが可能となる。
図3に示すように、積層部60は、電極受け部70を移動可能に支持する支持部80を有する。支持部80は、滑走部40における滑走方向の水平方向成分と同一方向(すなわち前後方向)に延びるレール部81と、電極受け部70を支持するとともにレール部81に沿って摺動する摺動部82と、レール部81に沿って前後方向に架け渡された歯付きベルト83と、歯付きベルト83を駆動するモータ(駆動手段)84と、を有する。
歯付きベルト83は、レール部81に接続されるとともに摺動部82に接続されている。すなわち、摺動部82は、歯付きベルト83を介してレール部81に接続されている。歯付きベルト83は、制御部90によって制御されるモータ84の動作によって、前後方向に駆動させられる。歯付きベルト83の前後方向の駆動により、摺動部82は、底板部41から落下する電極50を電極受け部70に着地させるための積層位置(第1の位置)と水平方向において積層位置よりも底板部41から離れた取出位置(第2の位置)との間で、スライド移動することが可能になっている。図3に示すように、本実施形態では一例として、積層位置は、滑走部40と電極受け部70とが上下方向において重なる(オーバーラップする)位置である。取出位置は、積層位置よりも前方であって、滑走部40と電極受け部70とが上下方向において重ならない位置である。
制御部90は、供給部20、搬送部30、及び積層部60の動作を制御する部分であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等で構成される。具体的には、制御部90は、供給部20、搬送部30の駆動部31、及びモータ84に対して動作の開始や停止等を指示する制御信号を送信することで、これらの動作を制御する。制御信号には、動作方向や速度に関する情報も含まれていてもよい。以下、積層工程における処理の流れに沿って、制御部90の制御の内容について説明する。
制御部90は、積層開始時、モータ84に歯付きベルト83を駆動させ、電極受け部70を積層位置にセットする。続いて、制御部90は、供給部20の動作を制御することにより、電極50の供給を開始させるとともに、駆動部31に搬送部30を駆動させる。これにより、電極50(セパレータ付き正極10及び負極12)は、供給部20から搬送部30に交互に移載され、搬送部30によって滑走部40に向かって搬送される。
続いて、滑走部40に設けられた光学センサ43は、滑走面41aを滑走する電極50によって当該貫通孔が遮られた状態を検知し、当該貫通孔が遮られた状態であることを示す検知信号を制御部90に出力する。制御部90は、当該検知信号に基づいて、滑走面41aを滑走した電極50の枚数(すなわち、電極受け部70に積層された電極50の枚数)を検出(カウント)する。制御部90は、電極受け部70に積層された電極50の枚数が予め定められた枚数に達したことを検知すると、供給部20及び搬送部30の駆動部31の動作を停止させる。また、制御部90は、モータ84の動作を制御することにより、歯付きベルト83を駆動させ、摺動部82及び電極受け部70を積層位置から取出位置まで前進させる。
電極受け部70上の積層体Xは、取出位置において、次工程に受け渡される。次工程への積層体Xの受け渡しは、積層体X単位で行われてもよいし、電極受け部70単位で行われてもよい。つまり、積層体Xのみが受け渡されてもよいし、摺動部82から電極受け部70を切り離すことで、電極受け部70と積層体Xとがまとめて次工程に受け渡されてもよい。蓄電装置1がリチウムイオン二次電池の場合、制御部90は、次の積層体Xを生成するために、搬送部30の前端部に設けられた電極払出手段を制御する。具体的には、制御部90は、搬送部30の前端部にある電極50がセパレータ付き正極10である場合には、当該セパレータ付き正極10を除去し、供給部20に戻すように、電極払出手段を作動させる。これにより、搬送部30の先頭の電極50を負極12に設定することができる。以上により、積層工程1回分(1個の積層体Xを次工程に受け渡す処理単位)の制御が完了する。上述の制御部90による制御は、生成する必要のある積層体Xの個数分だけ、繰り返し実行される。
以上述べたように、第1実施形態の電極積層装置100によれば、電極受け部70は、支持部80によって、底板部41から落下する電極50を電極受け部70に着地させるための積層位置と水平方向において積層位置よりも底板部41から離れた取出位置との間で、移動可能に支持される。従って、電極50を電極受け部70に積層する際には、電極受け部70を積層位置において支持し、電極受け部70に積層された電極50を取り出す際には、電極受け部70を取出位置に移動させて支持することができる。これにより、滑走部40及び電極受け部70の配置に関わらず、電極受け部70に積層された電極50(積層体X)の取り出しを容易に行うことができる。
滑走部40における滑走方向の水平方向成分と同一方向に延びるレール部81と、電極受け部70を支持するとともにレール部81に沿って摺動する摺動部82とにより、電極受け部70の移動を、滑走部40における滑走方向の水平方向成分と同一方向、すなわち電極受け部70に積層された電極50の幅方向に直交する方向に沿った摺動移動とすることができる。これにより、電極受け部70に積層された電極50(積層体Xを形成する個々の電極50)の位置が、電極受け部70の移動によってずれてしまうことを抑制することができる。また、レール部81は、滑走部40の滑走方向の水平方向成分と同一方向に延びる構造となるため、電極積層装置100全体の構成における幅方向のバラツキを抑えることができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
また、この電極積層装置100によれば、制御部90により、電極受け部70に積層された電極50の枚数が予め定めた枚数に達したときに、電極受け部70を積層位置から取出位置に自動的に移動させることが可能となる。すなわち、電極受け部70に電極50を積層する積層工程が完了すると、電極50(積層体X)を次工程に受け渡すための取出位置に、電極受け部70を自動的に移動させることが可能となるため、作業性の向上を図ることができる。
また、この電極積層装置100によれば、底板部41の下端部に底板部41の板厚方向に貫通する切欠きS1,S2が設けられているため、電極50が底板部41の下端部から落下する際に、電極50のタブ(タブ14b又はタブ17b)が切欠きS1,S2を通ることが可能となる。これにより、電極50の落下時にタブが底板部41の下端部に引っ掛かることを抑制することができる。よって、タブを有するシート状の電極50を落下させて積層する場合に、タブの変形又は損傷を抑制することができる。
図8を用いて、第2実施形態の電極積層装置について説明する。図8は、第2実施形態の電極積層装置の全体構成を模式的に示す図である。図8に示すように、第2実施形態の電極積層装置200は、滑走部40が、滑走部(第1の滑走部)40Aと滑走部(第2の滑走部)40Aよりも下方に設けられた滑走部40Bとを有している点で、第1実施形態の電極積層装置100と主に相違する。
図8に示すように、第2実施形態の電極積層装置200を含むシステムでは、搬送部30は、セパレータ付き正極10を搬送する搬送部30Aと負極12を搬送する搬送部30Bとに分かれている。滑走部40Aは、搬送部30Aにより搬送されたセパレータ付き正極10を下方に滑走させるように水平方向に対して傾斜した底板部(第1の底板部)41Aを有する。滑走部40Bは、搬送部30Bにより搬送された負極12を下方に滑走させるように水平方向に対して傾斜した底板部(第2の底板部)41Bを有する。
滑走部40Aの底板部41Aの下端部には、幅方向においてセパレータ付き正極10のタブ14bに対応する位置に、底板部41Aの板厚方向に貫通する切欠き(第1の切欠き)S1が設けられている。滑走部40Bの底板部41Bの下端部には、幅方向においてセパレータ付き正極10のタブ14b及び負極12のタブ17bに対応する位置に、底板部41Bの板厚方向に貫通する切欠き(第2の切欠き)S1,S2が設けられている。
第2実施形態の電極積層装置200では、一方の端部が上方に位置する状態で底板部41Aを滑走するセパレータ付き正極10が底板部41Aの下端部から落下する際には、セパレータ付き正極10のタブ14bは、底板部41Aの下端部に設けられた切欠きS1を通ることになる。また、一方の端部が上方に位置する状態で底板部41Bを滑走する負極12が底板部41Bの下端部から落下する際には、負極12のタブ17bは、底板部41Bに設けられた切欠きS2を通ることになる。また、底板部41Bには、セパレータ付き正極10のタブ14bに対応する切欠きS1も設けられているため、底板部41Bよりも上方に設けられた底板部41Aの下端部から落下したセパレータ付き正極10のタブ14bは、底板部41Bに設けられた切欠きS1を通ることができる。これにより、タブの位置が異なる複数の電極50のそれぞれを、上下複数段の滑走部40A,40Bで下方に滑走させる場合において、各電極50のタブが各滑走部40A,40Bの底板部41A,41Bの下端部に引っ掛かることを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、滑走部の底板部に設けられる切欠きの位置及び形状は、上記実施形態において示した切欠きS1,S2の位置及び形状に限られない。同様に、積層部の突出壁部の位置及び形状は、上記実施形態において示した突出壁部74,75の位置及び形状に限られない。
図9に切欠き及び突出壁部の変形例を示す。図9の(a)の例では、切欠きS3は、底板部41の下端部の幅方向における中央部が大きくくり抜かれることで形成される凹形状となっている。1つの切欠きS3に対応して、底壁部71の上端部の幅方向における中央部において、1つの突出壁部76が形成されている。このような構成によれば、切欠きS3及び突出壁部76をそれぞれ1つだけ設ければよいため、底板部41に切欠きS3を設ける加工及び底壁部71に突出壁部76を設ける加工を容易に行うことが可能となる。
図9の(b)の例では、切欠きS4,S5は、底板部41の下端部の幅方向における両端縁部のそれぞれに形成されている。これにより、底板部41の下端部の形状は、凸形状となっている。切欠きS4,S5に対応して、底壁部71の上端部の幅方向における両端部のそれぞれにおいて、突出壁部77,78が形成されている。このような切欠きS4,S5及び突出壁部77,78を設けることにより、電極受け部70に積層する電極50のタブの位置が幅方向における両端のそれぞれに位置する場合にも適切に対応することができる。
また、上記実施形態では、積層対象の電極50として、セパレータ付き正極10と負極12との2種類が存在する場合を例示したが、積層対象の電極50の種類はこれに限られない。例えば、積層工程において正極11と負極12との間にセパレータを挟み込むようにしてもよい。この場合、正極11、セパレータ13、負極12、セパレータ13、正極、・・・といった順序で正極11、負極12及びセパレータ13を積層すればよい。
図10に底壁部の変形例を示す。図10に示すように、電極積層装置は、上述した電極受け部70の代わりに、底壁部71に突出壁部が設けられない構成の電極受け部70Bを備えてもよい。すなわち、底壁部71の上端は平坦(一直線上)となっていてもよい。この場合、電極50のタブ14b、17bが底壁部71の上端から突出するように、底壁部71上に積層体Xが形成されてもよい。