以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態の電極積層装置を適用して製造される蓄電装置の内部構成の一例を示す断面図である。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった車載用の非水電解質二次電池として構成される。
蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3と、を備える。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の上面部には、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
電極組立体3は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12の間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成される。セパレータ13内には、例えば正極11が収容される。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。つまり、電極組立体3は、袋状のセパレータ13に正極11を収容することにより構成されるセパレータ付き正極10を有する。
本実施形態では、電極組立体3は、セパレータ付き正極10及び負極12の下端(正極端子5及び負極端子6と反対側の端部)がケース2の底面に接触するように、ケース2内に収容されている。ケース2の内面上には、絶縁部材(不図示)が配置されている。したがって、この場合には、セパレータ付き正極10及び負極12の下端は、絶縁部材を介してケース2の底面に当接する。ただし、セパレータ付き正極10及び負極12の下端とケース2の底面との間には、絶縁部材が占める空間以外に微小な隙間が形成されていてもよい。
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15とを有する。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の本体部14aの両面に、正極活物質が担持されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。本体部14aの上縁部には、正極端子5の位置に対応してタブ14bが形成されている。タブ14bには、正極活物質が担持されていない。タブ14bは、本体部14aの上縁部から上方に延び、導電部材16を介して正極端子5に接続される。
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18とを有する。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。言い換えれば、略矩形の本体部17aの両面に、負極活物質が担持されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。本体部17aの上縁部には、負極端子6の位置に対応してタブ17bが形成されている。タブ17bには、負極活物質が担持されていない。タブ17bは、本体部17aの上縁部から上方に延び、導電部材19を介して負極端子6に接続される。なお、本実施形態に係る電極積層装置100(図3参照)に用いられる袋状のセパレータ13の左右方向の幅は、負極12の幅と同寸とされている。
セパレータ13は、例えば袋状に形成され、内部に正極11のみを収容している。セパレータ13の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bは、略矩形のセパレータ13から上方に突出している。なお、セパレータ13は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。例えば、セパレータ付き正極10として、正極11の両面に2枚のシート状のセパレータが各々接合され、ユニット化された正極を用いてもよい。
続いて、蓄電装置1の製造方法について説明する。なお、本発明は、製造工程中、正極、負極とセパレータを組み合わせ、積層型の電極組立体とする積層工程に関り、他の工程については、公知の技術と代わるところは無い。従って、積層工程以外の工程については、その一例につき、概略を述べるに留める。
まず、混練工程が実施される。混練工程においては、活物質層の主成分である活物質粒子と、バインダ及び導電助剤等の粒子を、混練機内の溶媒中で混練し、各粒子の分散性がよい電極合剤を製造する。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)であるが、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミド等のイミド系樹脂並びにアルコキシシリル基含有樹脂等でもよい。溶媒は、例えばNMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒であってもよく、水であってもよい。導電助剤は例えば、アセチレンブラックやカーボンブラック、グラファイト等の炭素系材料である。次に、塗工工程が実施される。塗工工程では、ロール状に巻かれた帯状の金属箔を繰り出し、その金属箔の表面に、電極合剤を間欠的または連続的に塗布する。電極合剤が塗布された金属箔は、電極合剤の塗布の直後に乾燥炉内を通過する。これにより、電極合剤に含まれる溶媒が乾燥・除去されると共に、樹脂よりなるバインダが活物質粒子同士を結合する。これにより、活物質粒子の間に微細な間隙(空孔)を有する活物質層が形成される。
次いで、プレス工程が実施される。プレス工程では、帯状の金属箔の表面に形成された活物質層をロールにより所定の圧力でプレスする。これにより、活物質層が圧縮され、活物質の密度が適切な値に高められる。次いで、外観検査工程が実施される。外観検査工程では、活物質層の表面状態をカメラ等で確認し、良品及び不良品の判定を行う。
次いで、減圧乾燥工程が実施される。減圧乾燥工程では、活物質層が形成された帯状の金属箔を、真空乾燥炉内に収容して減圧高温化にて乾燥する。これにより、活物質層に残留するわずかな溶媒を除去する。次いで、切断工程が実施される。切断工程では、切断装置を用いて、活物質層が形成された帯状の金属箔を略矩形のシート状の形状に切断することで、上記の正極11及び負極12を形成する。切断方法としては、例えば、プレスカット等の機械的な切断手段が用いられるが、レーザーカット等の方法を用いてもよい。
なお、本実施形態では、正極11は、袋状のセパレータ13に収容された後、負極12と積層されるものとする。正極11をセパレータ13内に収容するセパレータ包み工程は、正極11と、ロール状に巻かれた帯状セパレータの対を用いる。まず、一方の帯状セパレータを繰り出し、その上に、等間隔で隙間を空けながら、正極11を載置する。このとき、正極11のタブ14bがセパレータの幅方向に突出するように正極11を配置する。次に、他方の帯状セパレータを繰り出し、正極11を挟むように、他方の帯状セパレータを一方の帯状セパレータと重ねる。その後、各正極11を囲む位置にて、一方の帯状セパレータと他方の帯状セパレータとを溶着する。溶着部は、例えば、正極11の3辺を囲み、位置決めするものであればよいが、好ましくは、4辺を囲むように溶着部を設ける。溶着後、一方及び他方の帯状セパレータを、正極11及び溶着部毎に裁断し、袋状のセパレータ13に収容されたセパレータ付き正極10を作成する。
次いで、積層工程が実施される。積層工程では、セパレータ包み工程及び打ち抜き工程で得られたセパレータ付き正極10及び負極12を順次積層する。次いで、組み立て工程が実施される。組み立て工程では、正極11と負極12とが、セパレータ13を介して積層された積層電極を一体化し、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bをそれぞれ溶接する。これにより、電極組立体3を得る。そして、正極11のタブ14b及び負極12のタブ17bに、導電部材16及び導電部材19をそれぞれ溶接する。
上記の打ち抜き工程で作製される負極12及びセパレータ付き正極10は、略等しい形状を有する。具体的には、タブを含めた場合、負極12の幅及び高さと、セパレータ付き正極10の幅及び高さは、等しい。略矩形の本体部を比較すると、セパレータ付き正極10と負極12の幅は等しく、高さに関しては、セパレータ付き正極10が負極12よりも若干大きい。また、正極活物質層15が形成された正極11の本体部14aの幅及び高さは、負極活物質層18が形成された負極12の本体部17aの幅及び高さより若干小さくなっている。
続いて、図3を用いて、本実施形態の電極積層装置100について説明する。図3は、電極積層装置100の全体構成を模式的に示す図である。図3に示すように、電極積層装置100は、上記の積層工程において使用され、セパレータ付き正極10及び負極12を交互に積層するための装置である。以下の説明では、負極12及びセパレータ付き正極10を総称して電極Eともいう。
電極積層装置100は、電極E(セパレータ付き正極10及び負極12)を搬送する搬送部20と、搬送部20により搬送された電極Eを下方に滑走させる滑走部30と、滑走部30から落下する電極Eを積層する積層部40と、を備える。
電極Eは、以下のように積層されることで、積層部40上に積層電極L(電極Eの積層体であり、積層途中の状態のものも含む。以下同じ。)を形成する。すなわち、搬送部20により速度を与えられ、送り出された電極Eは、滑走部30に乗り移り、滑走部30上で滑走しながら、その幅方向の位置をガイドされた後、積層部40に落下し、積層部40において順次積層される。これにより、積層部40において積層電極Lが形成される。このように、本実施形態では一例として、搬送部20が、積層部40の電極受け部50(詳しくは後述)に電極Eを供給する為、電極Eに速度を与え送り出す供給部として機能する。また、電極受け部50への電極Eの供給方式はこれに限られず、例えば滑走部30は省略されてもよい。すなわち、搬送部20は、搬送方向における先端部から電極Eを落下させることにより、積層部40の電極受け部50上に電極Eを供給してもよい。
なお、特許文献1の如く、搬送部20のような駆動源を備えず、滑走部30自体を、傾斜により電極Eの速度を与える供給部とすることも可能である。ただし、搬送速度の制限による生産効率への悪影響や積層速度の制御等を考慮した場合、単に傾斜によって電極Eを滑り落ちるようにする滑走部を供給部とするよりも、ベルトコンベアやローラコンベア等の駆動源を有する搬送部20のような搬送装置を備え、当該搬送装置を供給部とすることが、より好ましい。
搬送部20は、セパレータ付き正極10及び負極12を所定の間隔で交互に滑走部30に供給する。搬送部20は、本実施形態ではベルトコンベアであるが、ローラーコンベア等、他の搬送装置でもよい。搬送部20は、セパレータ付き正極10のタブ14b及び負極12のタブ17bが搬送方向における上流側に位置するようにして、セパレータ付き正極10及び負極12を搬送する。
滑走部30は、電極Eを下方に滑走させる。滑走部30は、電極Eを下方に滑走させるように水平方向に対して傾斜する底板部31と、底板部31の幅方向における両端縁部に立設された一対の側板部32と、を有する。側板部32は、底板部31の傾斜方向に延在しており、電極Eが底板部31の幅方向にずれ落ちることを防止するためのガイドとして機能する。
積層部40は、滑走部30から落下する電極Eを積層する部分である。積層部40は、滑走部30の底板部31から落下する電極Eを積層する電極受け部50と、電極受け部50を支持する支持部60と、を有する。
図4〜図6を用いて、電極受け部50の詳細な構成について説明する。図4は、電極受け部を上方から見た斜視図であり、図5は、電極受け部を下方から見た斜視図であり、図6は、電極受け部の平面図である。これらの図に示すように、電極受け部50は、電極Eが載置される底壁部51と、底壁部51に立設され、電極Eの底壁部51の面内方向における移動を規制するガイド部52と、を有する。
底壁部51は、矩形状の板状部材であり、例えばステンレス鋼等の金属により構成されている。底壁部51は、電極Eが載置される面である内面51aと、内面51aとは反対側の面である外面51bと、を有する。図5に示すように、外面51bには、電極受け部50を支持部60に対して位置決めするための複数(本実施形態では一例として2つ)のピン孔51cが設けられている。一方、支持部60には、電極受け部50の底壁部51を支持する面において、底壁部51の複数のピン孔51cに対応する複数の位置決めピン(不図示)が設けられている。支持部60に設けられた各位置決めピンが各ピン孔51cに挿し込まれることにより、電極受け部50が支持部61に対して位置決めされる。
図3に示すように、底壁部51は、水平方向に対して傾斜するように、支持部60に支持される。以下、底壁部51の面内方向のうち、底壁部51の傾斜方向を傾斜方向D1と表し、傾斜方向D1に直交する方向を幅方向D2と表す。また、底壁部51の面外方向のうち、傾斜方向D1及び幅方向D2の両方に直交する方向を高さ方向D3と表す。
ガイド部52は、底壁部51の周縁部に立設されている。ガイド部52は、幅方向D2に延在するストッパ53と、幅方向D2において互いに対向し、それぞれ傾斜方向D1に延在する一対の側壁部54と、を有する。一対の側壁部54は、ストッパ53の幅方向D2における両端部に接続されており、ストッパ53及び一対の側壁部54によって略コ字状に囲まれた収容空間Sが規定されている。ストッパ53及び側壁部54は、いずれも矩形状の板状部材であり、例えばステンレス鋼等の金属により構成されている。
ストッパ53は、底壁部51上に載置される電極Eの傾斜方向D1における移動を規制する役割を果たす。すなわち、底壁部51上に載置された電極Eは重力によって傾斜方向D1に沿って下方に移動するが、電極Eの下端(傾斜方向D1下流側の端部)がストッパ53の収容空間Sに面する内面53aに接触することにより、電極Eは停止する。このように、ストッパ53は、底壁部51上に積層される電極Eの下端の位置を内面53aに揃えるためのガイドとして機能する。
一対の側壁部54は、底壁部51上に載置される電極Eの幅方向D2における移動を規制する役割を果たす。一対の側壁部54の間隔は電極Eの幅以上であり、一対の側壁部54のストッパ53から離れる方向の端部には、ストッパ53から離れるにつれて間隔が広くなるテーパ部54tが設けられている。一対の側壁部54におけるテーパ部54t以外の部分同士の間隔は、電極Eの幅(設計値)に、電極Eの幅の製造誤差と、電極E又は積層電極Lをスムーズに出し入れできる余裕幅とを足した幅とされている。各側壁部54の外面には、図示しない搬送装置が電極受け部50を搬送する際に把持される部分となる把持部54bが設けられている。
底壁部51のガイド部52に沿った部分には、高さ方向D3における位置が内面51aよりも所定の高さだけ低くされた溝部55が設けられている。本実施形態では一例として、溝部55は、ストッパ53に沿った溝部55aと、一対の側壁部54のうちテーパ部54tを除く部分に沿った溝部55bと、を有する。
溝部55aは、ストッパ53に沿って、一方の側壁部54の内面54aから他方の側壁部54の内面54aにかけて、幅方向D2に延在している。ここで、底壁部51が水平方向に対して傾斜していることにより、滑走部30から電極受け部50へ供給された電極Eは、底壁部51の傾斜方向D1に沿って底壁部51上を滑走し、電極Eの下端とストッパ53とが接触する。この接触の衝撃によって、ストッパ53に接触した電極Eの一部(例えば金属箔に塗工された活物質等)が異物として剥離し得る。電極積層装置100では、溝部55aがストッパ53に沿って設けられているので、このようにストッパ53付近で発生する異物が溝部55aに溜まり易くなっている。これにより、電極E同士の間への異物の混入を効果的に抑制することができる。
溝部55bは、側壁部54に沿って、ストッパ53の内面53aからテーパ部54tのストッパ53側の端部にかけて、傾斜方向D1に延在している。上述した通り、底壁部51が水平方向に対して傾斜していることにより、滑走部30から供給された電極Eは、電極Eの下端とストッパ53とが接触する位置まで、底壁部51の傾斜方向D1に沿って底壁部51上を滑走する。この際、滑走中の電極Eと側壁部54との間の摩擦により、電極Eの一部が異物として剥離し得る。また、電極受け部50への電極Eの供給方式として、本実施形態(図3に示した形態)とは異なる方式を採用する場合もあり得る。例えば、電極Eの幅方向における端部を側壁部54の内面54aに一旦当ててから、底壁部51(或いは積層電極L)上に電極Eを落下させる供給方式が考えられる(後述する図13の構成参照)。この供給方式では、電極受け部50よりも上方の位置であって、上方から見て電極受け部50と重ならないように幅方向D2にずれた位置から、幅方向D2に勢いをつけて電極Eを落下させる。その結果、電極Eは、その幅方向における端部が側壁部54の内面54aに当たった後に、底壁部51(或いは積層電極L)上に落下することとなる。この場合、特に、最初に側壁部54に当てられた電極Eの幅方向における端部の一部が、接触の衝撃によって剥離し得る。電極積層装置100では、溝部55bが側壁部54に沿って設けられているので、上述のようにして側壁部54付近で発生する異物が溝部55bに溜まり易くなっている。これにより、電極E同士の間への異物の混入を効果的に抑制することができる。
図4及び図6に示すように、ストッパ53と各側壁部54とが接続される部分には、高さ方向D3から見て円柱の一部をくり抜いた形状とされたくり抜き部56が設けられている。また、図5及び図6に示すように、底壁部51には、収容空間Sとは底壁部51を挟んで反対側の空間(すなわち、底壁部51の外面51b側の空間)と溝部55とを連通する孔部57が設けられている。図5に示すように、本実施形態では一例として、孔部57の溝部55側の開口は、くり抜き部56に隣接する位置に設けられている。
図7は、積層電極が載置された電極受け部の平面図である。図7に示すように、搬送部20により交互に搬送されるセパレータ付き正極10と負極12とが、滑走部30を経由して順次落下することにより、底壁部51上には、セパレータ付き正極10と負極12とが交互に積層された積層電極Lが形成される。
より具体的には、電極受け部50には、テーパ部54tが設けられているため、電極Eは、まずテーパ部54tの幅広の部分に受け入れられる。その後、電極Eは、底壁部51上を滑走して下方に向かうにつれて、テーパ部54tによって案内される。これにより、電極受け部50において、電極Eの幅方向D2の端部の位置が揃う。更に、電極Eは、タブ14b,17bが設けられていない方の端部がストッパ53に当接して停止する。これにより、電極受け部50において、電極Eのタブ14b,17bが設けられていない方の端部の位置が揃う。この結果、電極Eの各端部の位置が揃った状態で、電極受け部50に積層電極Lが形成される。図7の例では、積層電極Lの最上層にセパレータ付き正極10が位置しており、積層電極Lの最上面としてセパレータ13が見える状態となっている。
ガイド部52の表面(本実施形態では、ストッパ53の内面53a及び側壁部54の内面54a)には、高さ方向D3に沿って延在し、溝部55に連通する微小な凹部58が複数設けられている。図8は、図7における破線Aで囲まれた部分の形状の例を示す拡大平面図である。凹部58の形状は特定の形状に限られないが、凹部58の形状としては、例えば波状(図8の(a)参照)や、矩形状(図8の(b)参照)の形状を採用することができる。
ガイド部52の表面に凹部58が設けられていることにより、底壁部51上に載置される電極E(或いは積層電極L)とガイド部52の表面との間には、高さ方向D3に沿った流路(凹部流路F1)が複数形成される。その結果、底壁部51(或いは積層電極L)上に新たに積層される電極Eから発生する異物(剥離した電極Eの一部)が、ガイド部52の表面に設けられた凹部58を介して(すなわち、凹部流路F1を通って)、溝部55に溜まり易くなっている。これにより、電極E同士の間への異物の混入を一層効果的に抑制することができる。なお、凹部58の形状、大きさ、間隔、個数等は、上記例に限定されない。また、個々の凹部58の延在方向は、高さ方向D3に対して傾斜していてもよい。また、個々の凹部58は、上記例のように直線状に延在していなくともよく、例えばジグザグ状等のカーブを有して延在していてもよい。ただし、特に、電極Eの傾斜方向D1における荷重を支えることになるストッパ53の内面53aについては、図8の(a)及び(b)の例のように複数の微小な凹部58を設けることにより、電極Eの傾斜方向D1における荷重が一点に集中して当該箇所において電極Eの端部が破損することを抑制することができる。
図9は、図7におけるIX−IX線断面図である。図10は、図7におけるX−X線断面図である。図9及び図10に示すように、底壁部51上に積層電極Lが形成された状態においては、底壁部51上に載置される電極Eと溝部55とに包囲された溝部流路F2が形成される。また、図10に示すように、本実施形態では一例として、孔部57は、底壁部51の溝部55側に形成された内側テーパ部57aと底壁部51の外面51b側に形成された外側テーパ部57bとが円筒部57cを介して接続された構成をなしている。内側テーパ部57aは、円筒部57cの内側端部(内面51a側の端部)から内面51a側に向かうにつれて幅広となるように形成されている。外側テーパ部57bは、円筒部57cの外側端部(外面51b側の端部)から外面51b側に向かうにつれて幅広となるように形成されている。
図11は、電極受け部に接続される吸引部の一例を示す図である。図11に示すように、電極積層装置100は、孔部57を介して電極受け部50に接続される吸引器(吸引部)70を備える。本実施形態では一例として、吸引器70は、図示しない吸引機構にチューブ状の吸引具71が接続され、吸引具71の先端部71aに設けられた開口部71bから外部の空気を吸引可能なように構成されている。吸引具71の先端部71aは、外側テーパ部57bに嵌合するように、外側テーパ部57bに対応する円錐台状に形成されている。すなわち、吸引具71の先端部71aと外側テーパ部57bとの間に隙間ができないように、先端部71aを外側テーパ部57bに嵌め込むことが可能となっている。
このように孔部57を介して溝部55内を吸引する吸引器70によって、溝部55内に溜まった異物を溝部流路F2に沿って吸引除去することができる。吸引器70による吸引動作は、電極Eの積層が完了した際に1回だけ行うようにしてもよいし、電極Eの積層中(積層電極Lの形成中)に連続的(或いは断続的)に行うようにしてもよい。吸引器70による吸引動作を行いつつ電極Eの積層を行う場合には、電極Eの一部が異物として電極Eから剥離した瞬間に当該異物を吸引除去することが可能となる。また、本実施形態のように、ガイド部52の表面に溝部55に連通する凹部58が設けられている場合には、凹部58内に溜まった異物や、積層電極Lの任意の高さ位置に積まれた電極Eの側部に付着したままの異物についても、溝部流路F2及び凹部流路F1に沿って吸引除去することができる。以上のように、電極積層装置100によれば、電極Eから剥離した異物を吸引器70によって効率的に吸引除去することができるので、電極E同士の間への異物の混入をより効果的に抑制することができる。
ここで、電極受け部50が供給部から供給される電極Eを受け取る位置(積層位置)と、電極受け部50に積層された積層電極Lを次工程に受け渡す位置(移載位置)とが異なっており、積層位置と移載位置との間で電極受け部50を移動させる必要がある場合がある。電極積層装置100では、吸引器70は、孔部57に対して着脱自在に設けられている。具体的には、吸引具71の先端部71aは、孔部57の外側テーパ部57bに対して着脱自在とされている。従って、積層時(電極受け部50が積層位置にあるとき)にのみ吸引具71を孔部57に取り付け、移載時(電極受け部50を移載位置に移動させる際)には、吸引具71を孔部57から取り外すといったことが可能となる。これにより、電極受け部50を移動させる際に吸引器70を併せて移動させる必要がなく、吸引器70については積層位置付近に設けておけば足りるため、装置構成の複雑化を防止することができる。
図12に示すように、電極積層装置100は、電極受け部50の上方から電極受け部50に対して空気を吹き付ける送風器(送風部)80を更に備えてもよい。図12は、送風器の配置構成を模式的に示す図である。
送風器80によって電極受け部50の上方から電極受け部50に空気を吹き付けることにより、吸引器70による吸引方向に沿った空気の流れの形成が助長される。これにより、吸引器70による異物の吸引効率の向上を図ることができる。具体的には、本実施形態のように凹部流路F1が設けられている場合には、送風器80による送風によって、電極受け部50の上方から凹部流路F1、溝部流路F2、孔部57をこの順に通る空気の流れが形成される。このような空気の流れが形成されることにより、吸引器70による異物の吸引効率の向上を図ることができる。
なお、送風器80は、上述の空気の流れをより効果的に形成するために、ストッパ53及び一対の側壁部54のそれぞれの内面53a,54aに対して空気が流れ込むように、空気を吹き付けてもよい。このために、送風器80は、例えば、ストッパ53及び一対の側壁部54のそれぞれに対応する複数の送風器から構成されてもよい。すなわち、送風器80は、ストッパ53に対応して幅方向D2に延在するように設けられた送風器と、一対の側壁部54に対応して傾斜方向D1に延在するように設けられた一対の送風器と、から構成されてもよい。
また、送風器80は、積層電極Lの最上面に対して空気を吹き付けるように構成されてもよい。この場合、送風器80による送風によって、上述の空気の流れの形成を助長するとともに、積層電極Lの最上層の電極Eの表面の異物(例えば、電極Eの端部とガイド部52との接触により剥離して電極Eの上面に飛散した電極Eの一部)を当該電極Eの側方に追いやり、ガイド部52の表面に設けられた凹部58を介して溝部55に落とすことが可能となる。これにより、電極E同士の間への異物の混入をより効果的に抑制することが期待できる。
以上述べたように、本実施形態に係る電極積層装置100では、シート状の電極Eが、供給部(本実施形態では一例として搬送部20)により速度を与えられて供給され、電極受け部50の底壁部51上に順次積み重ねられることにより、積層電極Lが形成される。この際、電極Eが底壁部51(或いは積層電極L)上において最終的に静止する位置に到達するまでの間に、電極Eの端部がガイド部52に接触することにより、ガイド部52に接触した電極Eの一部(例えば金属箔に塗工された活物質等)が異物として剥離し得る。電極積層装置100によれば、このようにして発生した異物(すなわち、剥離した電極Eの一部)をガイド部52の少なくとも一部(本実施形態では一例として、ストッパ53及び一対の側壁部54)に沿った溝部55に溜めることが可能となっているので、電極E同士の間への異物の混入を抑制することができる。また、上記電極積層装置100によれば、電極Eから剥離した異物を吸引器70によって効率的に吸引除去することができるので、電極E同士の間への異物の混入をより効果的に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、電極積層装置は、図13に示す如く、滑走部を備えず、搬送部を複数備えるものであってもよい。なお、図13においては、積層部40の構成の一部(把持部54b及びくり抜き部56)の図示を省略している。図13に示す変形例に係る電極積層装置200は、積層部40の上方において、電極受け部50の幅方向(一対の側壁部54が対向する方向)における両側に対向配置された2つの搬送部20A,20Bを備える。この変形例では、搬送部20A,20Bはベルトコンベアであり、一方の搬送部20Aはセパレータ付き正極10を積層部40に向けて搬送し、他方の搬送部20Bは、積層部40に対して搬送部20Aとは反対側から、搬送部20Aの搬送方向(図13における右方向)とは逆方向(図13における左方向)に、負極12を積層部40に向けて搬送する。2つの搬送部20A,20Bは、セパレータ付き正極10と負極12とを、交互に積層部40に供給する。搬送部20Aにより供給されるセパレータ付き正極10は、電極受け部50の一方の側壁部(図13の図示上右側の側壁部54)の内面54aに衝突し、減速した後、下方のストッパ53に向かって滑り落ちる。一方、搬送部20Bにより供給される負極12は、電極受け部50の他方の側壁部(図13の図示上左側の側壁部54)の内面54aに衝突し、減速した後、下方のストッパ53に向かって滑り落ちる。
また、例えば、ガイド部52の形状は上記実施形態に限られず、例えば高さ方向D3から見て互い位に直交する2つの板状部材によってL字状に構成されてもよい。この場合、電極受け部50は、例えば、一方の板状部材が電極Eの下端を支え、他方の板状部材が電極Eの幅方向における一方の側部を支えるように、水平方向に対して傾斜して設けられる。
また、ガイド部52は、壁面状の部材以外を用いて構成されてもよい。例えば、ガイド部52は、側壁部54の代わりに、傾斜方向D1に沿って所定間隔で配置され、それぞれ高さ方向D3に立設する複数の柱状部材を有してもよい。この場合、電極Eの幅方向における端部から剥離した異物は、複数の柱状部材の間から外に落とすことが可能となる。一方、電極Eがストッパ53に接触することにより生じた異物については、ストッパ53に沿って設けられた溝部55aに溜め、吸引器70によって吸引除去することができる。
また、本実施形態では、電極受け部50に孔部57が2つ設けられる例について説明したが、電極受け部50に孔部57を設ける位置及び個数、並びに孔部57に対応して用意される吸引具71の個数は、上記に限定されない。吸引器70によって溝部55等に溜まった異物を吸引除去するためには、収容空間Sとは反対側の空間と溝部55とを連通する孔部57は、少なくとも1つ設けられていればよい。また、孔部57は、くり抜き部56に囲まれた位置に設けられなくてもよいし、くり抜き部56は、設けられなくてもよい。
また、本実施形態では、溝部55a及び一対の溝部55bが互いに連続する1つのコ字状の溝部55が形成される例について説明したが、溝部55は、複数に分割して設けられてもよい。例えば、ストッパ53に沿った溝部55aと側壁部54に沿った溝部55bとが連続しないように互いに独立して形成されてもよい。この場合、個々の溝部55に対して少なくとも1つの孔部57を形成し、当該孔部57に吸引具71を取り付けることにより、各溝部55に溜まった異物を個別に吸引除去することができる。ただし、本実施形態のように、1つの連続する溝部55を形成した場合には、孔部57及び吸引具71がそれぞれ少なくとも1つあれば足りるので、装置構成の単純化及びコスト削減を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、電極積層装置100として、セパレータ付き正極10及び負極12を交互に積層した積層電極Lを積層するための装置について説明したが、電極積層装置100は、積層電極Lを積層する工程以外に用いられる装置として構成されてもよい。例えば、電極積層装置100は、正極11、負極12、及びセパレータ付き正極10のいずれか1種類の電極Eを一時的に蓄えるための装置として構成されてもよい。この場合、搬送部20は、正極11、負極12、及びセパレータ付き正極10のいずれか1種類の電極Eのみを搬送し、電極受け部50には、正極11、負極12、及びセパレータ付き正極10のいずれか1種類の電極Eのみが複数積層されることになる。
また、本実施形態では、電極受け部50の底壁部51及びガイド部52が、ステンレス鋼等の金属によって構成されるものとして説明したが、底壁部51及びガイド部52の素材は上記に限定されない。例えば、底壁部51における少なくとも溝部55が設けられた部分が、樹脂やセラミック等によって連続気孔体として形成されてもよい。ここで、連続気孔体とは、複数の気孔が互いに繋がっており、複数の気孔を介して微小な物や空気が通り抜け可能となっている構造である。この場合、底壁部51の外面51bから、溝部55に対応する領域全体を吸引することにより、上記連続気孔体を介して溝部55に溜まった異物を吸引除去することができる。