以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本実施形態における誘導結合プラズマ発光分光分析装置の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、プラズマ装置10と、光路変更部20と、分光部30と、分析部38と、ガス供給部40と、フィルタ部50と、を有する。誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、プラズマ装置10が誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)により分析対象の元素に放出光を放出させ、その放出光を分光部30に入射させて分光し、分光した放出光を検出して元素分析を行う装置である。本実施形態において、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、放射性物質を含有した溶液中の元素を分析する。より詳しくは、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、原子力燃料の再処理におけるプロセス溶液、及び廃液等の溶液中の元素を分析するものである。ただし、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、放射性物質を含有した溶液の分析に用いられることに限られず、任意の溶液中の元素を分析するものであってもよい。
図1に示すように、プラズマ装置10は、容器11と、ネブライザ12と、チャンバ13と、プラズマトーチ部14と、高周波コイル15と、トーチ収納部16と、気体吸引部18と、を有する。容器11は、分析を行う溶液Sを内部に貯留する容器である。ネブライザ12は、容器11から溶液Sを吸い上げて、溶液Sを霧状の状態にする装置である。チャンバ13は、ネブライザ12から霧状となった溶液Sが供給される容器である。
プラズマトーチ部14は、チャンバ13から霧状の溶液Sが供給される。また、プラズマトーチ部14にはアルゴンガス等のプラズマ生成ガスが供給される。高周波コイル15は、プラズマトーチ部14の周囲に配置されて高周波電流が流される高周波コイルである。プラズマトーチ部14内のプラズマ生成ガスは、高周波コイル15に流れる高周波電流により、プラズマトーチ部14の先端で誘電結合プラズマであるプラズマPを生成する。プラズマトーチ部14内の霧状の溶液S中の元素は、プラズマPにより励起されて発光し、放出光L1を発生する。
トーチ収納部16は、内部に容器11、ネブライザ12、チャンバ13、プラズマトーチ部14、及び高周波コイル15を収納し、これらを外部から隔離している。トーチ収納部16は、放出光L1を光路変更部20に出射させるための出射窓部17を有する。出射窓部17は、光路変更部20に対して閉口している。トーチ収納部16は、この出射窓部17を介して、光路変更部20に接続されている。出射窓部17は、例えばガラス等の透明部材によって形成されているが、放出光L1を透過させるものであればこれに限られない。出射窓部17は、放出光L1を光路変更部20に透過させるが、閉口しているため、トーチ収納部16と光路変更部20との間で気体が流通することを抑制する。
溶液Sは、放射性物質を含有する場合がある。このため、トーチ収納部16内の気体は、放射性を有する(溶液Sの放射性物質が混入する)放射性を有する場合がある。従って、トーチ収納部16は、放射線管理区域となる。また、トーチ収納部16は、気体吸引部18を有する。気体吸引部18は、トーチ収納部16内の気体が、外部へ流出することを抑制するために、トーチ収納部16内を負圧にするものであり、トーチ収納部16内の気体を吸引する。本実施形態において、気体吸引部18は、気体吸引用のポンプである。
光路変更部20は、出射窓部17から出射された放出光L1の光路を変更する。図1に示すように、光路変更部20は、光源側筒部21と、第1反射鏡部22と、中間筒部24と、第2反射鏡部26と、検出側筒部28と、を有する。光源側筒部21と、中間筒部24と、検出側筒部28とは、内部に放出光を導通する筒状の部材であり、光路筒部を構成する。第1反射鏡部22と第2反射鏡部26とは、光路筒部を導通した放出光を反射して、放出光の光路を変更する反射鏡部を構成する。
光源側筒部21は、筒状の部材であり、一方の端部がトーチ収納部16の出射窓部17に接続されている。光源側筒部21は、他方の端部が第1反射鏡部22に接続されている。光源側筒部21は、出射窓部17から出射した放出光L1を一方の端部から他方の端部まで導通する。
第1反射鏡部22は、反射鏡62と、反射鏡収納部63とを有する。反射鏡62は、光を反射させる反射鏡であり、光源側筒部21の軸方向(光源側筒部21の一方の端部と他方の端部とを結ぶ方向)に対して、所定の角度で鏡面が配置されている。
反射鏡収納部63は、反射鏡62を内部に収納する。反射鏡収納部63は、光源側筒部21に対して開口しており、光源側筒部21の他方の端部と接続されている。光源側筒部21を導通した放出光L1は、反射鏡62により所定の角度で反射される。すなわち、反射鏡62は、放出光L1を反射してその光路を変更する。反射鏡62に反射された放出光L1を、以下、放出光L2と記載する。
なお、反射鏡収納部63は、放射線を内部で遮蔽する遮蔽部を有する。本実施形態では、遮蔽部を形成する部材は鉛であるが、これに限られない。また、反射鏡収納部63は、全面が遮蔽部であるが、少なくとも一部が遮蔽部であればよい。反射鏡収納部63は、放出光L1の光路に対向する面が遮蔽部となっていることが好ましい。反射鏡収納部63は、例えば、光源側筒部21が接続されている箇所と対向する面である面64が遮蔽部であることが好ましい。
また、反射鏡収納部63は、筒状の部材である中間筒部24に対して開口しており、中間筒部24の一方の端部と接続されている。中間筒部24は、軸方向(中間筒部24の一方の端部と他方の端部とを結ぶ方向)が放出光L2の光路に沿うように配置される。中間筒部24は、反射鏡62が反射した放出光L2を、一方の端部から他方の端部まで導通する。
第2反射鏡部26は、反射鏡66と、反射鏡収納部67とを有する。反射鏡66は、光を反射させる反射鏡であり、中間筒部24の軸方向に対して、所定の角度で鏡面が配置されている。
反射鏡収納部67は、反射鏡66を内部に収納する。反射鏡収納部67は中間筒部24に対して開口しており、中間筒部24の他方の端部と接続されている。中間筒部24を導通した放出光L2は、反射鏡66により所定の角度で反射される。すなわち、反射鏡66は、放出光L2を反射してその光路を変更する。反射鏡66に反射された放出光L2を、以下、放出光L3と記載する。
なお、反射鏡収納部67も、反射鏡収納部63と同様に放射線を内部で遮蔽させる遮蔽部により構成される。反射鏡収納部67は、全面が遮蔽部となっているが、少なくとも一部が遮蔽部であればよい。反射鏡収納部67は、放出光L2の光路に対向する面が遮蔽部となっていることが好ましい。反射鏡収納部67は、例えば、中間筒部24が接続されている箇所と対向する面である面68が遮蔽部であることが好ましい。
また、反射鏡収納部67は、筒状の部材である検出側筒部28に対して開口しており、検出側筒部28の一方の端部と接続されている。検出側筒部28は、軸方向(検出側筒部28の一方の端部と他方の端部とを結ぶ方向)が放出光L3の光路に沿うように配置される。検出側筒部28は、反射鏡66が反射した放出光L3を、一方の端部から他方の端部まで導通する。
以上のような構成の光路変更部20には、気体吸引部29が接続されている。より詳しくは、気体吸引部29は、光源側筒部21に接続されている。気体吸引部29は、光源側筒部21に接続されて、光源側筒部21内の気体を吸引する。なお、気体吸引部29は、光路変更部20内の気体を吸引するものであれば、光源側筒部21に接続されていなくてもよく、光源側筒部21以外の光路変更部20の箇所に接続されていてもよい。気体吸引部29は、本実施形態において、気体吸引用のポンプである。
図1に示すように、分光部30は、光学部31、32、33と、光学部31、32、33を収納する分光収納部34と、光検出部36とを有する。分光部30は、分光収納部34が検出側筒部28に対して開口しており、検出側筒部28の他方の端部と接続されている。分光部30は、検出側筒部28内を導通する放出光L3を、光学部31、32、33により分光し、分光した放出光L4を、光検出部36により検出する。光検出部36の検出結果は、分析部38に出力される。分析部38は、光検出部36の検出結果に基づき、溶液S中の元素の種類及びその元素の含有量を算出する。分析部38は、分光収納部本実施形態ではコンピュータである。
図1に示すように、ガス供給部40は、ガス供給装置41と、ガス管部42とを有する。ガス供給装置41は、光路変更部20内及び分光部30内に不活性ガスを供給するための装置である。不活性ガスとは、例えばハロゲン化物などの反応性の低い気体である。本実施形態では、ガス供給装置41が供給する不活性ガスG0は、アルゴンガスであるが、不活性ガスであればアルゴンガスに限られない。ガス管部42は、ガス供給装置41に接続される樹脂製の管(チューブ)であり、ガス供給装置41から供給された不活性ガスG0を導通する。本実施形態においては、内周部が樹脂からなる。さらに詳しくは、ガス管部42の内周部は、ポリアミド系樹脂からなる。ただし、ガス管部42は、少なくとも一部が樹脂からなればよく、より具体的には、ガス供給装置41が供給する不活性ガスG0と接触する箇所の少なくとも一部が樹脂であればよい。
図1に示すように、フィルタ部50は、ガス管部42及び検出側筒部28に接続されており、ガス管部42と検出側筒部28とを接続する。フィルタ部50は、ガス管部42を導通した不活性ガスG0中の不純物を捕集し、不純物が捕集された後の不活性ガスG0である不活性ガスG1を、検出側筒部28に導出する。なお、フィルタ部50は、光路変更部20のいずれかの箇所に接続されていればよく、検出側筒部28に接続されていることに限られない。フィルタ部50の詳細構成については、後述する。
誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、以上説明した構成を有する。次に、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1中の放出光の光路について説明する。
図1に示すように、プラズマPによりプラズマトーチ部14内の溶液S中の元素から発生した放出光L1は、トーチ収納部16から、出射窓部17を介して、光源側筒部21内に出射される。光源側筒部21内に出射された放出光L1は、光源側筒部21内を導通し、第1反射鏡部22の反射鏡収納部63内に導入される。反射鏡収納部63内に導入された放出光L1は、反射鏡62により反射され、放出光L2として、中間筒部24内に導入される。中間筒部24内に導入された放出光L2は、中間筒部24内を導通して、第2反射鏡部26の反射鏡収納部67内に導入される。反射鏡収納部67内に導入された放出光L2は、反射鏡66により反射され、放出光L3として、検出側筒部28内に導入される。検出側筒部28内に導入された放出光L3は、検出側筒部28内を導通して、分光部30の分光収納部34内に導入される。分光収納部34内に導入された放出光L3は、分光収納部34内で分光され、放出光L4として光検出部36により検出される。
このように、プラズマトーチ部14内の溶液S中の元素から発生した放出光は、出射窓部17から光路変更部20に出射されて、光路変更部20により光路を変更される。光路を変更された放出光は、分光部30により分光され、光検出部36により検出される。
次に、ガス供給部40により供給される不活性ガスについて説明する。誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、ガス供給部40により、放出光L1、L2、L3が通る箇所である光路変更部20内及び分光部30内に不活性ガスを導入し、光路変更部20内及び分光部30内を不活性ガス雰囲気にする。誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、光路変更部20内及び分光部30内を不活性ガス雰囲気にすることにより、分析可能な元素の種類を増加させることができる。
図2は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置中の不活性ガスの流路を説明するための説明図である。図2に示すように、ガス供給装置41により供給された不活性ガスG0は、ガス管部42を通り、フィルタ部50に導入される。フィルタ部50に導入された不活性ガスG0は、フィルタ部50内で不純物が除去され、不活性ガスG1として、検出側筒部28に導入される。
ここで、光源側筒部21には、気体吸引部29が接続されている。気体吸引部29は、光源側筒部21側から光路変更部20内の気体を吸引する。従って、図2に示すように、検出側筒部28内に導入された不活性ガスG1は、第2反射鏡部26の反射鏡収納部67内、中間筒部24内、第1反射鏡部22の反射鏡収納部63内、及び光源側筒部21内を通り、気体吸引部29に吸引される。不活性ガスG1は、このようにして気体吸引部29に吸引される流路で流れ、光路変更部20の各部を不活性ガス雰囲気にする。なお、不活性ガスG1は、以上説明した流路に沿って光源側筒部21側に向かうが、図2の不活性ガスG2に示すように、一部は分光部30の分光収納部34内にも導入され、分光収納部34内を不活性ガス雰囲気とする。
次に、フィルタ部50の構成について説明する。図3は、本実施形態に係るフィルタ部の構成を示す模式図である。図3に示すように、フィルタ部50は、微粒子捕集部52と、フィルタ捕集部54とを有する。
微粒子捕集部52は、接続チャンバ部71と、捕集チャンバ部72とを有する。接続チャンバ部71は、ガス管部42に対して開口しており、ガス管部42と接続されて不活性ガスG0が流入される部屋である。捕集チャンバ部72は、壁面部72A、72B、72C、及び接続部72Dを有し、不活性ガスG0中の不純物を回収するための部屋である。壁面部72Aは、開口部73を有し、開口部73を介して、一部が接続チャンバ部71に接続されている。壁面部72Bは、壁面部72Aと対向する壁面である。壁面部72Cは、壁面部72Aから壁面部72Bへ延在する壁面である。接続部72Dは、壁面部72Cと対向した位置に設けられている開口部である。捕集チャンバ部72は、壁面部72A、72B、72C、及び接続部72Dにより、部屋が形成されている。
捕集チャンバ部72は、さらに内部に内壁部74、75、76、77、78を有する。内壁部74、75、76、77、78は、壁面部72Aから壁面部72Bに向かって、又は壁面部72Bから壁面部72Aに向かって延在する壁である。内壁部74、75、76、77、78は、壁面部72Cから接続部72Dへの方向である方向Xに沿って、この順で配列している。
内壁部74は、壁面部72CよりもX方向側に設けられており、壁面部72Aから壁面部72Bに向かって延在している。また、内壁部74は、壁面部72B側に開口部74Aを有する。内壁部74は、捕集チャンバ部72の内部において、入口チャンバ部82と、副チャンバ部84とを区分している。入口チャンバ部82は、開口部73を介して、接続チャンバ部71に接続されており、接続チャンバ部71から不活性ガスG0が流入される部屋である。副チャンバ部84は、内壁部74を介して、入口チャンバ部82にX方向側に隣接する部屋である。副チャンバ部84は、開口部75Aにより入口チャンバ部82に接続されている。なお、入口チャンバ部82には、紫外線を照射する紫外線発生部83が設けられている。紫外線発生部83は、本実施形態では紫外線ランプであるが、これに限られず紫外線を照射するものであればよい。
内壁部75は、内壁部74よりもX方向側に設けられており、壁面部72Bから壁面部72Aに向かって延在している。内壁部75は、壁面部72A側に開口部75Aを有する。内壁部75は、捕集チャンバ部72の内部において、副チャンバ部84と副チャンバ部86とを区分している。副チャンバ部86は、内壁部75を介して、副チャンバ部84にX方向側に隣接する部屋である。副チャンバ部86は、開口部75Aにより副チャンバ部84に接続されている。
内壁部76は、内壁部75よりもX方向側に設けられており、壁面部72Aから壁面部72Bに向かって延在している。内壁部76は、壁面部72B側に開口部76Aを有する。内壁部76は、捕集チャンバ部72の内部において、副チャンバ部86と副チャンバ部88とを区分している。副チャンバ部88は、内壁部76を介して、副チャンバ部86にX方向側に隣接する部屋である。副チャンバ部88は、開口部76Aにより副チャンバ部86に接続されている。
内壁部77は、内壁部76よりもX方向側に設けられており、壁面部72Bから壁面部72Aに向かって延在している。内壁部77は、壁面部72A側に開口部77Aを有する。内壁部77は、捕集チャンバ部72の内部において、副チャンバ部88と副チャンバ部90とを区分している。副チャンバ部90は、内壁部77を介して、副チャンバ部88にX方向側に隣接する部屋である。副チャンバ部90は、開口部77Aにより副チャンバ部88に接続されている。
内壁部78は、内壁部77よりもX方向側に設けられており、壁面部72Aから壁面部72Bに向かって延在している。内壁部78は、壁面部72B側に開口部78Aを有する。内壁部78は、捕集チャンバ部72の内部において、副チャンバ部90と出口チャンバ部92とを区分している。出口チャンバ部92は、内壁部78を介して、副チャンバ部90のX方向側に隣接する部屋である。出口チャンバ部92は、開口部78Aにより副チャンバ部90に接続されている。
以下、このような構成を有する微粒子捕集部52による不純物の捕集方法について説明する。図2に示すように、接続チャンバ部71に導入された不活性ガスG0は、開口部73を介して入口チャンバ部82に導入される。入口チャンバ部82に導入された不活性ガスG0は、開口部74A、副チャンバ部84、開口部75A、副チャンバ部86、開口部76A、副チャンバ部88、開口部77A、副チャンバ部90、開口部78A、をこの順で通り、出口チャンバ部92に導入される。ここで、開口部74A、75A、76A、77A、78Aは、開口する位置が壁面部72A側と壁面部72B側とで交互に異なっている。従って、不活性ガスG0の流路は、隣接する各副チャンバ部において変化する。
副チャンバ部内における不活性ガスG0の流路は、その副チャンバ部に接続される開口部同士を結ぶ方向である。例えば、副チャンバ部84内における不活性ガスG0の流路は、開口部75Aと開口部76Aとを結ぶ方向である。より詳しくは、不活性ガスG0は、副チャンバ部84内において壁面部72Bから壁面部72Aに向かう方向に沿って流れ、壁面部72Aにおいて開口部75A側に流路を変化させ、開口部75Aから副チャンバ部86内に流入する。副チャンバ部86内に流入した不活性ガスG0の流路は、開口部76Aと開口部77Aとを結ぶ方向である。すなわち、副チャンバ部86内に流入した不活性ガスG0は、副チャンバ部86内において壁面部72Aから壁面部72Bに向かう方向に沿って流れる。
このように、副チャンバ部84内を流れる不活性ガスG0は、壁面部72Aにおいて開口部75A側に流路を変化させるため、不活性ガスG0中の不純物は、慣性力により壁面部72Aに捕集される。すなわち、この場合、微粒子捕集部52は、副チャンバ部84が不活性ガスG0の流路を形成する流路部(直線流路部)を構成し、壁面部72Aと開口部75Aとが不活性ガスG0の流路を折曲する流路折曲部を構成する。微粒子捕集部52は、流路折曲部において慣性衝突を利用して不純物を捕集する慣性フィルタであるということができる。なお、副チャンバ部86、88、90も、同様に流路部としての機能を発揮し、壁面部72Bと開口部76A、77A、78Aも、同様に流路折曲部としての機能を発揮する。
なお、微粒子捕集部52は、不活性ガスG0の流路を形成する流路部(直線流路部)と、不活性ガスG0の流路を折曲する流路折曲部とを有し、流路折曲部において不純物を捕集するものであれば、上記構成に限られない。例えば、微粒子捕集部52は、流路部(直線流路部)を構成する管と、流路折曲部を構成し、管を折り曲げる曲げ部を有するものであってもよい。なお、ここでの直線流路部とは、直線の流路を形成するものであり、管などの直線流路部自体の形状が直線であることには限られない。
次にフィルタ捕集部54について説明する。フィルタ捕集部54は、不活性ガスG0中の不純物を吸着するフィルタである。フィルタ捕集部54は、ミスト状になった不純物や、微粒子捕集部52が捕集できない程度に小さい微粒子状の不純物を吸着する。フィルタ捕集部54は、石英繊維製のフィルタ、ガラス繊維製のフィルタ、又は活性炭であるが、これに限られず、不活性ガスG0中の不純物を吸着し、かつ、不活性ガスG0を導通させるものであればよい。なお、内壁部74、75、76、77、78も、フィルタ捕集部54と同じように不純物を吸着する部材で形成されていてもよい。
フィルタ捕集部54は、微粒子捕集部52よりも検出側筒部28側に設けられている。より詳しくは、フィルタ捕集部54は、出口チャンバ部92に接続されており、より詳しくは捕集チャンバ部72の接続部72Dに接続されている。微粒子捕集部52によって不純物が捕集された不活性ガスG0は、フィルタ捕集部54に導出され、フィルタ捕集部54によって微粒子捕集部52が捕集できなかった不純物を回収する。このように微粒子捕集部52及びフィルタ捕集部54の2重のフィルタによって不純物が捕集された不活性ガスG0は、不活性ガスG1として検出側筒部28に導出される。
不活性ガスG0は、樹脂からなるガス管部42内を通る。ここで、ガス管部42は、樹脂中の有機成分が、不活性ガスG0の流れに伴って導出される場合がある。ガス管部42の樹脂中の有機成分は、ガス管部42の剥離物等の固体である場合もあるが、気体として溶出する場合がある。ここでのガス管部42の樹脂中の有機成分は、例えば可塑剤成分であり、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等である。気体として溶出した有機成分が検出側筒部28内に導入された場合、この有機成分は、放出光L1、L2、L3中の紫外光と反応し、反射鏡62、66、又は光学部31、32、33等の光学部品に固体として付着するおそれがある。この場合、光学部品の反射率等の光学性能が低下し、分析精度が低下する。しかし、本実施形態に係る誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、反射鏡62、66、及び光学部31、32、33よりも不活性ガスG0が流れる上流部に、フィルタ部50を有する。従って、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、ガス管部42の樹脂中の有機成分が光学部品に付着することを抑制し、分析精度の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、誘導結合プラズマを発生させて分析対象の元素に放出光L1を発生させて、放出光L1を出射窓部17から出射させるプラズマ装置10と、プラズマ装置10に接続され、出射窓部17から出射された放出光L1の光路の方向を変更する光路変更部20と、光路変更部20が光路の方向を変更した放出光を分光して検出する分光部30と、光路変更部20に不活性ガスを供給するガス供給部40と、光路変更部20とガス供給部40とを接続し、不活性ガス中に含まれる不純物を捕集するフィルタ部50と、を有し、ガス供給部40は、少なくとも一部が樹脂からなるガス管部42を有する。
この誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、不活性ガスに含まれるガス管部42からの有機成分を、光路変更部20よりも不活性ガスの流れの上流にあるフィルタ部50で除去することができる。従って、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、光路変更部20に有機成分が付着して光路変更部20の光学的機能が低下することを抑制することで、分析精度の低下を抑制することができる。
光路変更部20は、放出光L1の光路を変更するため、放出光L1の光路を適切に調整することができる。従って、例えば、放出光L1が放射性を有する場合であっても、放出光L1の光路を調整することで放射線が外部に放出されることを適切に抑制することができる。
また、プラズマ装置10は、プラズマトーチ部14と、プラズマトーチ部14を内部に収納して光路変更部20に接続されるトーチ収納部16とを有する。このプラズマ装置10は、光路変更部20に接続されているため、放射線が外部に放出されることを適切に抑制することができる。
さらに、気体吸引部18は、トーチ収納部16内の気体を吸引する。従って、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、例えば放射性を有するトーチ収納部16内の気体が外部に流出することを抑制することができる。
また、光路変更部20は、放出光を導通する光路筒部と、光路筒部を導通した放出光を反射して光路の方向を変更する反射鏡部とを有する。この場合、反射鏡部には、放出光L1が収束するため、反射鏡部付近に固体状の有機成分が発生しやすくなる。しかし、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、不活性ガス中の有機成分をフィルタ部50で捕集しているため、反射鏡部への有機成分の付着を適切に抑制することができる。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、光路筒部と反射鏡部とを有するため、好適に放出光L1の光路を調整することができる。
また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、光路筒部内の気体を吸引する気体吸引部29を更に有する。気体吸引部29は、光路変更部20内の気体を吸引する。光路変更部20内に導入された不活性ガスは、気体吸引部29に吸引され、光路変更部20内を充填する。従って、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、ガス管部42からの有機成分を含む不活性ガスが、プラズマトーチ部14から光路変更部20に向かう放出光L1に照射されやすい。気体状の有機成分は、放出光L1中の紫外線等と反応し、固体状の有機成分を生成する。そのためこの場合、固体状の有機成分が光路変更部20の光学部品に付着するおそれが高くなる。しかし、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、不活性ガスが光路変更部20内を充填しても、不活性ガス中の有機成分をフィルタ部50で捕集しているため、固体状の有機成分の光路変更部20の光学部品への付着を抑制し、分析精度の低下を抑制することができる。
さらに、光路筒部は、光源側筒部21と、中間筒部24と、検出側筒部28とを有し、反射鏡部は、第1反射鏡部22と第2反射鏡部26とを有する。光源側筒部21は、出射窓部17から出射した放出光L1を導通する。第1反射鏡部22は、光源側筒部21の端部に取付けられ、光源側筒部21を導通した放出光L1を反射して光路の方向を変更する。中間筒部24は、一方の端部が第1反射鏡部22に取付けられ、第1反射鏡部22が反射した放出光L2を導通する。第2反射鏡部26は、中間筒部24の他方の端部に取付けられ、中間筒部24を導通した放出光L2を反射して光路の方向を変更する。検出側筒部28は、第2反射鏡部26に取付けられ、第2反射鏡部26が反射した放出光L3を、分光部30に向けて導通する。この場合、第1反射鏡部22と、第2反射鏡部26とには、放出光L1が収束するため、これらの付近に固体状の有機成分が発生しやすくなる。しかし、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、不活性ガス中の有機成分をフィルタ部50で捕集しているため、第1反射鏡部22及び第2反射鏡部26への有機成分の付着を適切に抑制することができる。また、光路変更部20は、光源側筒部21と、中間筒部24と、検出側筒部28と、第1反射鏡部22と、第2反射鏡部26とを有するため、好適に放出光L1の光路を調整することができる。ただし、光路変更部20は、放出光の光路の方向を変更するものであれば、このような構成に限られない。
さらに、反射鏡部は、放出光を反射する反射鏡62、66と、反射鏡62、66を内部に収納する反射鏡収納部63、67とを有し、反射鏡収納部63、67は、放出光を外部から遮蔽する遮蔽部を有する。反射鏡収納部63、67は、放出光L1が放射線を有する場合であっても、遮蔽部により放射線が外部に出射することを抑制することができる。
さらに、フィルタ部50は、検出側筒部28に接続されている。従って、誘導結合プラズマ発光分光分析装置1は、不活性ガスを光路変更部20内の全体に適切に拡散させることができる。
さらに、フィルタ部50は不活性ガスG0の直線の流路を形成する直線流路部、及び直線流路部に接続されて不活性ガスG0の流路を折曲する流路折曲部を有し、流路折曲部において不活性ガスG0の不純物を捕集する微粒子捕集部52と、微粒子捕集部52の光路変更部20側に設けられて不純物を吸着するフィルタ捕集部54と、を有する。このフィルタ部50は、微粒子捕集部52により不活性ガスG0の不純物を捕集し、かつ、微粒子捕集部52で捕集できなかった不純物を、フィルタ捕集部54により捕集する。従って、フィルタ部50は、不活性ガス中の不純物を適切に除去することができる。さらに、フィルタ部50は、不純物であるガス管部42からの有機成分が、粒子や剥離物等の固体成分であるものは微粒子捕集部52で捕集し、例えば気体成分であるものはフィルタ捕集部54により捕集することができる。従って、フィルタ部50は、不純物であるガス管部42からの有機成分を適切に除去することができる。
また、微粒子捕集部52は、紫外線を発生させる紫外線発生部83を有する。ガス管部42からの気体状の有機成分は、上述のように紫外線により反応して固体成分となる。微粒子捕集部52は、紫外線発生部83によりガス管部42からの気体状の有機成分を固体成分として、その固体成分を粒子捕集部52で捕集するため、不純物であるガス管部42からの有機成分をより適切に除去することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。