以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録装置
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、同一のインクを吐出する複数のノズルが並んでノズル列が構成されており、該ノズル列が複数並んで配置された、複数種のインクを吐出する記録ヘッドと、放置状態において複数のノズル列を覆う少なくとも1つのキャップ部材とを備える。そして、少なくとも1つのノズル列が第1インクを吐出する第1ノズル列であり、当該第1インクが、顔料と、有機溶媒と、樹脂と、第1界面活性剤と、第2界面活性剤と、を含む。
以下では、記録ヘッドを有するインクジェット記録装置1について例示的に説明するが、本発明に係るインクジェット記録装置は、係る態様に限定されない。本発明のインクジェット記録装置は、例示するインクジェット記録装置1の形状や構成に限定されず、適宜の構成とすることができるが、以下、一例としてインクジェット記録装置1について説明する。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、オンキャリッジタイプのシリアルプリンター(以下、単に「プリンター」とも言う。)であり、シリアルプリンターは、プリントヘッド(記録ヘッド、以下、「ヘッド」ともいう。)が被記録媒体の搬送方向と交差する方向を往復移動しながら記録が行われるものである。このうち、オンキャリッジタイプのシリアルプリンターは、インクカートリッジ(インクタンク)をヘッドと共にキャリッジに搭載し、キャリッジはインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持するものである。なお、本発明の他の実施形態はラインプリンターであってもよい。
なお、以下の説明に用いる図面では、説明の便宜のため、各部材の縮尺を適宜変更している。
1.1.インクジェット記録装置の構成
図1は、インクジェット記録装置1の構成を示すブロック図である。図2は、インクジェット記録装置1の概略的な構成を示す斜視図である。図3は、インクジェット記録装置
1に備えられたキャップ部材及びこれに連結する吸引ポンプの構成を示す概略図である。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、被記録媒体Pに向けて、インクジェット記録用インク(インク)を吐出することで、当該被記録媒体Pに画像を形成する装置である。ここで、本実施形態のインクジェット記録装置1は、様々な色のインクを用いて画像を形成することができ、例えば、CMYKの4色のインクを用いて画像を形成したり、白色のインクを用いて被記録媒体Pに優れた隠蔽性を付与する下地を形成したりすることが挙げられる。また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、特色インク(光輝性インク等)を使用することもできる。さらに、これらのCMYK、白色、特色のインクにクリアインクを上塗りすることも挙げられ、これにより光沢感の高い画像を形成できるように構成してもよい。
インクジェット記録装置1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、キャップ昇降ユニット50、吸引ユニット60、検出器群90、及びコントローラー100を有する。外部装置であるコンピューター110から記録データを受信したインクジェット記録装置1は、コントローラー100によって各ユニット、即ち搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、キャップ昇降ユニット50、吸引ユニット60を制御する。コントローラー100は、コンピューター110から受信した記録データに基づいて、各ユニットを制御し、被記録媒体Pに画像を印刷する。インクジェット記録装置1内の状況は検出器群90によって監視されており、検出器群90は、検出結果をコントローラー100に出力する。コントローラー100は、検出器群90から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット10は、被記録媒体Pを所定の方向(以下、「搬送方向」又は「副走査方向」と言う。)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー(図示せず)と、搬送モーター(図示せず)と、搬送ローラー(図示せず)と、プラテン(図示せず)と、排紙ローラー(図示せず)と、を有する。プラテン(図示せず)は、記録中の被記録媒体Pを支持し、その上に紙送りモーター(図示せず)の駆動により被記録媒体Pが給送されるものである。
キャリッジユニット20は、ヘッド31(記録ヘッド)を、記録領域に静止させた被記録媒体Pに対して、インクを吐出しながら上記搬送方向(副走査方向)と交差する方向(以下、「移動方向」又は「主走査方向」と言う。)に移動、即ち走査させる移動機構である。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22と、インクカートリッジ24と、を有する。キャリッジ21は、その内部にヘッド31及びインクカートリッジ24を備え、タイミングベルト23を介して、キャリッジモーター22に連結されたものである。インクカートリッジ24はインクジェット記録装置1の上部に搭載され、インクカートリッジ24の下面にヘッド31が設けられる。インクカートリッジ24は、液体であるインクを貯留し、インクカートリッジ24からヘッド31に対しインクを供給するものである。そして、キャリッジ21は、搬送方向と交差したガイド軸25に支持された状態で、キャリッジモーター22によりガイド軸25に沿って往復移動する。ガイド軸25は、キャリッジ21がガイド軸25の軸線方向に往復移動可能に支持されたものである。
ヘッドユニット30は、インクを、被記録媒体Pに対して吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、インクカートリッジ24からインクの供給を受け、ノズル形成面33に形成されたノズル32から、インクを被記録媒体Pに向けて吐出するヘッド31を備える。ヘッド31は、インクを吐出するノズル32と、ヘッド31の下面に設けられ、ノズル32が形成されたノズル形成面33を有するノズルプレート34と、吐出の駆動力を付与するキャビティ(図示せず)と、インクの逆流を防止するリザーバ(図示せず)と
、吐出に適したインクの液滴Dを形成するピエゾ素子(図示せず)と、を備える。ヘッド31は、撥水性のシリコンで形成されたノズルプレート34のノズル形成面33が被記録媒体Pと対向するようにキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動している間、インクを被記録媒体Pに対して吐出するものである。これにより、移動方向に沿ったドット列が被記録媒体Pに形成される。このように、ヘッド31が、インクを被記録媒体Pに対して吐出するものであることにより、記録装置を簡略化することができる。ノズル形成面33は、ノズルプレート34のうち被記録媒体Pと対向する面に相当する。ノズルプレートの材質としては、シリコンに限定されることなく、例えば、SUS等の金属及びポリイミド等の樹脂も用いることができる。
キャップ昇降ユニット50は、コントローラー100からの制御に従ってキャップ部材41を昇降させる機構である。キャップ部材41は、上面が開放されたトレイ状の部材であり、ノズル形成面33と密着することでヘッド31のノズル32を大気から遮断可能なものである。キャップ部材41は、例えば、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂で形成された筐体に、エラストマー等の弾性部材による縁部47が作製されている。また、キャップ部材41のうち縁部47のエラストマーとしては、ブチル系、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)系、シリコン系、ウレタン系、ブタジエン系、ポリエステル系、塩化ビニル系、アクリル系、アミド系、及びスチレン系などを用いることができる。キャップ部材41は、例えば、開口部の内部にインクを吸収するインク吸収材51を備える。インク吸収材51は、インクの保持力が高いものであり、例えば、ウレタンフォーム、スポンジ、インク吸収性のある布又は紙などで形成される。これにより、ヘッドからのインクを速やかに吸収しつつ、記録ヘッドに配置されたノズルを密封することができる。
吸引ユニット60は、吸引ポンプ42と、廃液タンク43と、を少なくとも備える。吸引ポンプ42は、キャップ部材41のキャップ内と連通しており、吸引ポンプ42によりキャップ部材41の内部に負圧を発生させることができる。
吸引ユニットの構造について図3を用いてさらに詳しく説明する。キャップ部材41の底壁には、キャップ部材41内に溜まったインクを排出する排出部126が下方に向かって突設されており、その内部には排出通路126aが形成されている。排出部126には、可撓性材料等からなる排出チューブ(排出管)127の一端部が接続されており、排出チューブ127の他端部は、廃液タンク43内に挿入されている。廃液タンク43内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材129が収容されており、この廃インク吸収材129により回収されたインクが吸収されるようになっている。
キャップ部材41と廃液タンク43との間には、例えばチューブポンプ式の吸引ポンプ42が配設されている。この吸引ポンプ42の吸引力によりキャップ部材41の内部に負圧が発生する。より詳しく言えば、ヘッド31のノズル形成面33にキャップ部材41(より正確にはキャップ部材41の縁部47)が密着し、ノズル形成面33をキャップ部材41で覆い被せた状態で吸引ポンプ42を駆動して、キャップ部材41で覆われた空間を負圧状態にすることで、各ノズル32から強制的にインクをキャップ部材41に向けて排出させる。かかる吸引動作により、ノズル32内の増粘インクや気泡を強制排出させる。
本実施形態において、キャップ部材41は、ヘッド31に離間した状態でのヘッド31からのインクを受けるフラッシング動作、放置状態においてヘッド31に接触してノズル列を覆い、ノズル32を大気から遮断して保護するキャッピング動作、及び、ヘッド31に接触してノズル列を覆い状態でのヘッド31内のインクの吸引動作に使用されることができる。
図示はしないが、インクジェット記録装置1は、ノズル形成面33に付着したインクを払拭して、ノズル形成面33に付着しているインクを除去するワイピングユニットを備えていてもよい。
検出器群90には、リニア式エンコーダー(図示せず)、ロータリー式エンコーダー(図示せず)、紙検出センサー(図示せず)、及び光学センサー(図示せず)等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の移動方向の位置を検出するものである。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー(図示せず)の回転量を検出するものである。
紙検出センサー(図示せず)は、給紙中の紙(被記録媒体P)の先端の位置を検出するものである。光学センサー(図示せず)は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被記録媒体Pの有無を検出するものである。そして、光学センサー(図示せず)は、キャリッジ21によって移動しながら被記録媒体Pの端部の位置を検出し、被記録媒体Pの幅を検出することができる。また、光学センサー(図示せず)は、状況に応じて、被記録媒体Pの先端(搬送方向下流側の端部であって上端とも言う。)や後端(搬送方向上流側の端部であって下端とも言う。)も検出できる。
コントローラー100は、インクジェット記録装置1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー100は、インターフェイス部101と、CPU102と、メモリー103と、ユニット制御回路104と、を有する。インターフェイス部101は、外部装置であるコンピューター110とインクジェット記録装置1との間でデータの送受信を行う。CPU102は、インクジェット記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU102は、メモリー103に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路104を介して各ユニットを制御する。
1.2.インクジェット記録装置の動作
図1〜図3に示したインクジェット記録装置1は上記のように構成されており、以下ではこのインクジェット記録装置1の動作について説明する。
まず、搬送ユニット10により、プラテン(図示せず)上の被記録媒体Pを搬送方向に、ヘッド31のノズル32から吐出されるインクの液滴D(図3参照)が着弾可能な位置、即ち吐出されるインクが着弾(付着)する領域まで搬送する。
その後、ヘッドユニット30により、ヘッド31のノズル32からインクが被記録媒体Pに向けて吐出され、当該インクがその被記録面に着弾する。吐出の方法としては、従来公知の方式を使用でき、中でもピエゾ素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するヘッドを用いた記録方法)を用いると優れた記録を行うことができる。また、例えば、被記録媒体Pの被記録面を所定温度まで加熱することで、被記録媒体Pの被記録面に吐出されたインクに含まれる水分などが速やかに蒸発飛散して、インクに含まれる樹脂によって被膜が形成される。
一方、一定時間吐出が行われていないノズル32においては、特にノズル開口39の部分において、インクの乾燥が進んで固化しやすくなる。その結果、一定時間吐出が行われていないノズル32は目詰まりしやすくなる。ノズル32の目詰まりが生じると、吐出不良に繋がる。そこで、キャップ部材41をノズル形成面33に密着させてキャップ部材41内部のインクを除去する吸引動作又はフラッシング動作が、コントローラー100からの制御に従い行われることにより、上記のようなノズル32の目詰まりを防止することが
できる。
まず、フラッシング動作(フラッシング処理)について説明する。フラッシング動作とは、ヘッド31のノズル32からインクを吐出することにより、ノズル32の目詰まりを解消させるものである。ヘッド31をキャップ部材41の位置まで移動させ、ヘッド31からインクをキャップ部材41に向けて非記録にて吐出し、ヘッド31のノズル32を清掃するものである。ここで、本明細書における「非記録用吐出」とは、フラッシングと換言することができ、画像を形成する目的で行われる被記録媒体Pに向けた吐出でなく、目詰まりの原因となり得る過剰に乾燥したインクを除去する目的で行われるキャップ部材41に向けた吐出を意味する。
吐出が行われているノズル32において生じ得るインクの固化は、吐出によって画像を記録するとともに、常にインクの排出が行われてフレッシュなインクが供給されるため、比較的小規模であるとともに、吐出が行われないノズル32も1パス分の空走終了直後であればインクの乾燥・固化がそれほど進行していない可能性がある。そのため、全てのノズル32を対象として、一定時間ごと、好ましくは電源オン時及び1パスの記録動作ごと、より好ましくは1パスの記録動作ごとに、コントローラー100がフラッシング動作を行なうようにヘッドユニット30を制御する。すなわち、ガイド軸25に沿って、プラテン(図示せず)の外側に設けられたキャップ部材41の直上にヘッド31(キャリッジ21)を移動させる。そして、ヘッド31からインクをキャップ部材41に向けて非記録用吐出し、ノズル32を清掃する。当該非記録用吐出の量は、ノズル32付近のインクを排出可能な程度の量であればよい。
フラッシング動作の後に、早期にキャップ部材内のインクの吸引動作が行なわれることが好ましい。キャップ部材41に存在するインクを早期に吸引することにより、キャップ部材41の縁部47へインクが溢れ出ることを防止することができ、キャップ部材41の縁部47へのインクの固形分の堆積を抑制することができる。
次に、吸引動作について説明する。図2に示すように、コントローラー100が、ヘッド31を非印刷領域13に移動させ、キャップ部材41の直上に位置させる。そして、キャップ昇降ユニット50によりキャップ部材41を上昇させ、キャップ部材41の縁部47をノズル形成面33に当接(密着)させ、ノズル32がキャップ部材41の内側に封止させられる。そして、吸引ポンプ42によりキャップ部材41内部に負圧を発生させ、ノズル32内のインクを、キャップ部材41内に吸引排出させる。この吸引動作により、フラッシング動作と同様に、ノズル32の増粘したインクをノズル32外に排出したり、インク中に発生した気泡や、インク中の界面活性剤の作用により生じた泡を排除することができる。
吸引動作は、ノズル32内の増粘インクや気泡を強力に排出させることができる一方で、ワイピング動作に比べて時間を要するので、長時間に亘って記録処理が行われなかった等の記録不良が発生する虞が高い場合や、記録不良が発生してユーザーからの要求があった場合等に行われるようになっている。
次に、キャッピング動作について説明する。キャッピング動作は、インクジェット記録装置1の記録動作が停止している放置状態において、ノズル形成面33にキャップ部材41が当接し当該ノズル形成面33を大気から遮断して保護する動作である。インクジェット記録装置1が放置状態になっている間、ノズル形成面33をキャップ部材41で覆うことで、ノズル32内のインクの水分等の溶媒の蒸発が抑えられ、インクの増粘が防止される。また、ノズル形成面33への塵埃等の異物の付着も防止できる。
なお、本明細書における「放置状態」とは、コンピューター110からインクジェット記録装置1に対して出された記録指令に基づく記録動作が終了した後、次の記録動作が行われるまでの間の記録動作が行われない状態を言う。具体的には、例えば、記録動作が終了した後、インクジェット記録装置1の電源スイッチがオフされ、インクジェット記録装置1が非通電となっている状態は放置状態である。また、電源がオンされている場合であっても、記録動作が終了した後、新たな印刷指令がインクジェット記録装置1に対して行われるまでの間の記録動作が行われない状態は放置状態である。この放置状態の間に、ノズル32が長時間に亘って外気に晒されると、ノズル32内のインクの水分が蒸発し、インクが増粘しノズル32に詰まりを生じてしまう等の問題が発生する。かかる問題の発生を防止するために、インクジェット記録装置1は、キャッピング動作を行い、ノズル32内のインクの水分の蒸発を抑え、インクの増粘を防止したり、ノズル形成面33への異物の付着を防止したりことができるように構成されている。
このように、コントローラー100がノズル32の使用状態や目詰まり状態を検知して、フラッシング動作、吸引動作、及びキャッピング動作を適宜使い分けることにより、高速印刷を確保しつつ、そのヘッド31のノズル32内でインクが固化して、そのノズル32が目詰まりを起こすのを防止でき、ひいては目詰まりを起こしたヘッド31を用いて被記録媒体Pの被記録面に形成される画像の一部にドット抜けが生ずることを防止できる。
図4は、本実施形態におけるキャップ部材41とノズル32の構成の一例を示す図である。図4(a)〜(c)においては、キャップ部材41の平面図を示すとともに、キャップ部材41の直上にヘッド31を移動させた場合におけるノズル32の配置の一例を示している。
図4(a)及び(b)は、単一のキャップ部材41によりヘッド31に配置された全てのノズル32をキャッピングするように構成された例を示す。図4(a)は、4列のノズル列36をキャッピングするキャップ部材41を示し、図4(b)のキャップ部材41は6列のノズル列36をキャッピングするキャップ部材を示す。
また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、複数のキャップ部材41を備えてもよく、例えば、図4(c)に示すように、キャップ部材41a及びキャップ部材41bを備え、キャップ部材41aが、1〜4列のノズル列36を包囲するように設けられた縁部47を備え、キャップ部材41bが、5〜8列のノズル列36を包囲するように設けられた縁部47を備えてもよい。キャップ部材41a及びキャップ部材41bは、別体として各々動作されてもよいし、一体として形成されてもよい。また、単一のキャップ部材に仕切り部47aを設けて、2つのキャップ部材(キャップ部)41a,41bに分割されてもよい。なお、2つのキャップ部材41a,41bが分離して構成されていてもよい。また、3つ以上のキャップ部材に分割されていてもよい。
キャップ部材41は、複数のノズル列36を包囲するように設けられた縁部47を備える。同一のインクを吐出する複数のノズル32が並んでノズル列36が構成されている。例えば、各ノズル列36は、全てそれぞれ同一のインクを吐出する。各ノズル列36は、被記録媒体の搬送方向と平行に延在しており、搬送方向と直交する方向に複数並んで配置されている。なお、ノズル列の構成はこれに限定されず、搬送方向に斜めに配列されていてもよい。
また、図示はしないが、キャップ部材が覆うノズル列の数は、限定されず、ノズル列を1列ごとに覆うように構成してもよいし、2列以上を覆うように構成してもよい。本実施形態では、単一のキャップ部材41に収容される複数のノズル列36のうち、少なくとも1つのノズル列は、第1ノズル列36aであり、第1インク(後述)が吐出される。また
、他のノズル列36は、第1インクを吐出する第1ノズル列であってもよいし、第2インク(後述)を吐出する第2ノズル列36bであってもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置1では、1つのキャップ部材41によって覆われるノズル列36のうち、少なくとも一列は、第1インクを吐出する第1ノズル列36aである。このようにすることで、吸引動作によるクリーニングの成功率を高めることができる。このような現象が生じる理由は定かではないが、発明者は、実験的に確認しており、キャップ部材41内での物質の移動等が生じている可能性があり、その影響が現れていると考えている。
1つのキャップ部材41に複数のノズル列36が覆われる場合には、少なくとも1列が第1ノズル列36aであればよいが、該第1ノズル列36aが第2ノズル列36bと隣り合っていることがより好ましい。図4(a)及び(c)の例では、第1ノズル列36aが第2ノズル列36bと隣り合って配置されている。図4(b)の例では、第1ノズル列36aに隣り合わない第2ノズル列36bが存在している。したがって、例えば、図4(a)及び(c)の例のようにノズル列36を配置することにより、吸引動作によるクリーニングの成功率をさらに高めることができる。
また、単一のキャップ部材41によって覆われる複数のノズル列36の個数の1/3以上が、第1ノズル列36aであると、同様の観点から、吸引動作によるクリーニングの成功率をさらに高めることができるため、より好ましい。
また、複数のキャップ部材41によって、それぞれ複数のノズル列36が覆われる場合であって、ノズル列36全体のうち、複数の第1ノズル列36aが存在する場合には、当該第1ノズル列36aのうち、後述する比(P1/M1)の値が小さい順に異なるキャップ部材41に覆われるようにノズル列36を配置することが好ましい。例えば、それぞれ4列のノズル列36を覆うキャップ部材41を2つ有する場合であって、当該8列のうち4列の第1ノズル列36aが存在する場合には、最も比(P1/M1)の値が小さい第1インクを吐出する第1ノズル列36aが一方のキャップ部材41に覆われるように配置し、2番目に比(P1/M1)の値が小さい第1インクを吐出する第1ノズル列36aを他方のキャップ部材41に覆われるように配置することが好ましい。このようにすれば、吸引動作によるクリーニングの成功率をさらに高めることができるためより好ましい。
さらに、第1ノズル列36aと第2ノズル列36bとの間の距離(間隔)は、2.4mm以下であることがより好ましい。このようにすれば、吸引動作によるクリーニングの成功率をさらに高めることができる。
1.3.インクジェット記録用インク
次に、本実施形態のインクジェット記録装置で使用するインク(インクジェット記録用インク)について説明する。本実施形態のインクは、顔料と、有機溶媒と、樹脂と、第1界面活性剤と、第2界面活性剤と、水と、を含む。なお、第1インク及び第2インクは、いずれも前記インクの成分を含むが、含有される樹脂成分の総量P1と第1界面活性剤の質量M1との比(P1/M1)によって分類される。すなわち、第1インクは、比(P1/M1)が70以下であり、第2インクは比(P1/M1)が90以下である。
1.3.1.顔料
本実施形態のインクにおいて、顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、及び酸化シリカが挙げられる。
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)が挙げられる。また、カーボンブラックの市販品として、例えば、No.2
300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上全て商品名、三菱化学社(MitsubishiChemicalCorporation)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上全て商品名、デグサ社(DegussaAG)製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上全て商品名、コロンビアカーボン社(ColumbianCarbonJapanLtd)製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(以上全て商品名、キャボット社(CabotCorporation)製)が挙げられる。無機顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料が挙げられる。有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、60、65、66、C.I.バットブルー4、60が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4のうち少なくともいずれかが好ましい。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:2、48:4、57、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種以上が好ましい。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213が挙げられる。中でもC.I.ピグメントイエロー74、155、及び213からなる群から選択される一種以上が好ましい。
なお、グリーンインクやオレンジインク等、上記以外の色のインクに用いられる顔料としては、従来公知のものが挙げられる。また、顔料は所定の色相を得る等の目的で複数種が配合されてもよい。
顔料の平均粒子径は、ノズルにおける目詰まりを抑制することができ、かつ、吐出安定性が一層良好となるため、250nm以下であることが好ましい。なお、本明細書における平均粒子径は、特に明示がない限り体積基準のものである。測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装社(NikkisoCo.,Ltd.)製のマイクロトラックUPA)が挙げられる。
顔料の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、0.4〜12質量%であると好ましく、2〜5質量%であるとより好ましい。
1.3.2.有機溶剤
本実施形態のインクは、水溶性有機溶剤を含んでもよい。本実施形態のインクは、高沸点有機溶媒の一種であるグリセリン(1気圧下での沸点が290℃)を含むことが好ましい。グリセリンの含有量は、インクの総量100質量%に対して、1〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。グリセリンの有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク中の揮発成分が揮発することを防止でき、インクを保湿することによりインクの保存安定性を高めることができる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、ラクトン、グリコールエーテル類等が挙げられる。
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、記録媒体上に密着性に優れた画像を形成することができる場合がある。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量が、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下とすることができる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル面において、インクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類を含有する場合には、インクの全質量に対して、2質量%以上20質量%以下とすることができる。
ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体は、樹脂成分の良好な溶解剤として作用することができる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量が、インクの全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下とすることができる。
本発明において「ラクトン」とは、環内にエステル基(−CO−O−)を有する環状化合物の総称をいう。ラクトンとしては、上記定義に含まれるものであれば特に制限されないが、炭素数2以上9以下のラクトンであることが好ましい。このようなラクトンの具体例としては、α−エチルラクトン、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブ
チロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が挙げられるが、これらの中でもγ−ブチロラクトンが特に好ましい。ラクトンは、記録媒体が塩化ビニル樹脂等のフィルムである場合に、記録媒体の内部にインクを浸透させて、密着性を高めることができる。ラクトンの含有量としては、インクの全質量に対して、5質量%以上30質量%以下とすることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。グリコールエーテル類は、インクの記録媒体に対する濡れ性や浸透速度を制御することできる。そのため、濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。インクを水系インクとして用いる場合に、グリコールエーテル類を含有させる際には、その含有量は、インクの全質量に対して、0.05質量%以上40質量%以下とすることができる。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤の含有量は特に制限されず、必要に応じて適宜決定すればよい。
1.3.3.樹脂
本実施形態におけるインクは、樹脂を含有する。インクが樹脂を含有することにより、被記録媒体上に樹脂被膜が形成され、結果としてインクを被記録媒体上に十分定着させて、主に画像の耐擦性を良好にする効果を発揮する。
樹脂は、アニオン性、ノニオン性、又はカチオン性のいずれであってもよい。これらの中でも、ヘッドに適した材質という観点から、ノニオン性又はアニオン性が好ましい。樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、インクに含有させてもよい樹脂としては、例えば、顔料を分散させる機能を有する分散樹脂、樹脂エマルジョン、及びワックス等が挙げられる。本明細書では、これらの樹脂を総称して樹脂成分ということがある。また、樹脂成分としては、記録される画像の耐擦性等の物理的強度を向上させる種の樹脂、増粘剤としてインクの粘度調整に関与する樹脂等も挙げられる。
本実施形態のインクに含有されるより具体的な樹脂成分としては、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂や、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、例示した樹脂の中でも、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィンワックスを好ましく用いることができる。
ポリエステル系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、Eastek1100、1300、1400(以上商品名、イーストマンケミカルジャパン社製)、エリーテルKA−5034、KA−3556、KA−1449、KT−8803、KA−5071S、KZA−1449S、KT−8701、KT9204(以上商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
スチレンアクリル系樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。なお、共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。なお、スチレンアクリル系樹脂としては、市販されているものを利用してもよい。スチレンアクリル系樹脂の市販品としては、ジョンクリル62J(BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、特に限定されるものではなく、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン又はその誘導体から製造されたワックス及びそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、画像のヒビ割れの発生を低減できるという観点から、ポリエチレン系ワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィンワックスの市販品としては「ケミパールW4005」(三井化学株式会社製、ポリエチレン系ワックス、粒径200〜800nm、環球法軟化点110℃、針入度法硬度3、固形分40%)等のケミパールシリーズが挙げられる。その他、AQUACER513(ポリエチレン系ワックス、粒径100〜200nm、融点130℃、固形分30%)、AQUACER507、AQUACER515、AQUACER539、AQUACER593、AQUACER840(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等のAQUACERシリーズや、ハイテックE−7025P、ハイテックE−2213、ハイテックE−9460、ハイテックE−9015、ハイテックE−4A、ハイテックE−5403P、ハイテックE−8237(以上、東邦化学株式会社製)等のハイテックシリーズ、ノプコートPEM−17(サンノプコ社製、ポリエチレンエマルジョン、粒径40nm)等が挙げられる。これらは、常法によりポリオレフィンワックスを水中に分散させた水系エマルジョンの形態で市販されている。
また、インクに増粘性を付与できる樹脂成分としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリエーテル類、ポリビニルピロリドン類、ポリビニルホルマール類、タンパク質(例えば、ゼラチン、カゼイン、にかわ等)、多糖類(例えば、プルラン、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、タマリンドガム等)、澱粉類(例えば、澱
粉、酸化澱粉、カルボキシル澱粉、ジアルデヒド澱粉等)、セルロース又はその誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等)アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)などが挙げられる。
1.3.3.1.分散樹脂
また、インク中の顔料の分散性を向上させる樹脂成分(本明細書において、「分散樹脂」と称することがある。)としては、特に限定されないが、重量平均分子量70,000以上100,000以下樹脂を挙げることができる。このような分散樹脂を含有することで、インク中の顔料の分散安定性が良好となり、顔料が凝集することを抑制することができる。
分散樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であれば、普通紙やマット紙上において、顔料が紙面内部へ沈み込むことを抑制する効果が発現されやすい。前記上限値以下であれば、顔料の分散安定性が良好となる効果が発現されやすい。なお、重量平均分子量は、例えば、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算分子量によって求めることができる。
このような分散樹脂としては、例えばポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリル酸という記載は、アクリル酸又はメタクリル酸を示すものである。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。
上記例示した分散樹脂は、上記材料を1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
1.3.3.2.樹脂エマルジョン
本実施形態のインクは、樹脂成分として、樹脂エマルジョンを含んでもよい。樹脂エマルジョンは、樹脂被膜を形成することで、インクを被記録媒体上に十分定着させて画像の密着性、耐擦性を良好にする効果を発揮する。
また、バインダーとして機能する樹脂エマルジョンはインク中にエマルジョン状態で含有される。バインダーとして機能する樹脂をエマルジョン状態でインク中に含有させることにより、インクの粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、
かつ、インクの保存安定性及び吐出安定性に優れたものとなる。
樹脂エマルジョンとしては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、及び天然樹脂が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかがより好ましく、スチレン−アクリル酸共重合体系樹脂がさらに好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
樹脂エマルジョンは、市販品を用いてもよく、以下のように乳化重合法などを利用して作製してもよい。インク中の熱可塑性樹脂をエマルジョンの状態で得る方法としては、重合触媒及び乳化剤を存在させた水中で、上述した水溶性樹脂の単量体を乳化重合させることが挙げられる。乳化重合の際に使用される重合開始剤、乳化剤、及び分子量調整剤は従来公知の方法に準じて使用できる。
樹脂エマルジョンの分散状態における粒子の平均粒子径は、インクの保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5nm〜400nmの範囲であり、より好ましくは20nm〜300nmの範囲である。樹脂エマルジョンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
インクにおける樹脂エマルジョンの含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、0.5〜7質量%の範囲であることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、固形分濃度を低くすることができるため、吐出安定性を一層良好にすることができる。
樹脂エマルジョンとして、特に水溶性ポリウレタン樹脂が好ましい。水溶性ポリウレタン樹脂の好ましい具体例としては、NeoRezR−960(ゼネカ製)、NeoRezR−989(ゼネカ製)、NeoRezR−9320(ゼネカ製)、NeoRadNR−440(ゼネカ製)、ハイドランAP−30 (大日本インキ工業(株)製)、ハイドランAPX−601(大日本インキ工業(株)製)、ハイドランSP−510(大日本インキ工業(株) 製)、ハイドランSP−97(大日本インキ工業(株)製)、エラストロンMF−60(第一工業製薬(株)製)、エラストロンMF−9(第一工業製薬(株)製)、M−1064(第一工業製薬(株)製)、アイゼラックスS−1020(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−1040(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−1085C(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−4040N(保土ヶ谷化学(株)製)、ネオタンUE−5000(東亞合成(株)製)、RU−40シリーズ(スタール・ジャパン製)、ユーコートUWS−145 (三洋化成(株)製)、パーマリンUA−150(三洋化成(株)製)、WF−41シリーズ(スタール・ジャパン製)、WPC−101(日本ウレタン工業(株)製)が挙げられる。
1.3.4.第1界面活性剤
インクに含有される第1界面活性剤は、いわゆる消泡剤に分類される。第1界面活性剤としては、グリフィン法に基づくHLB4未満のシリコン系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、及びアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。これらの中でも、表面張力及び界面張力を適正に保持する能力に優れており、かつ、起泡を殆ど生じさせないため、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
第1界面活性剤としては、特に限定されないが、市販品を用いることができ、例えば、BYK−011、BYK−012、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−080A、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1730、BYK−1770(以上商品名、BYK社製)、サーフィノールDF37、DF110D、DF58、DF75、DF220、MD−20、エンバイロジェムAD01(以上全て商品名、日信化学工業社(NissinChemicalIndustryCo.,Ltd.)製)、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、アセチレノールE00、E00P(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
第1界面活性剤剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。第1界面活性剤の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、初期充填性が良好となり、かつ、負圧吸引時にクリーニング用キャップ内の泡が消えやすくなるため、0.01質量%以上0.4質量%以下の範囲であることが好ましい。なお、HLBは、グリフィン法によって下記式で定義される。HLBの下限は特に限定されないが、0以上が好ましい。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
1.3.5.第2界面活性剤
本実施形態のインクは、第2界面活性剤を含む。第2界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィンE1004、E1006、E1008、E1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(AirProductsJapan,Inc.)製商品名)、サーフィノール465、61(日信化学工業社(NissinChemicalIndustryCO.,Ltd.)製商品名)、アセチレノールE40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定され
ないが、具体的には、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
第2界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
第2インク(後述する比(P1/M1)の値が90以下のインク)においては、これらの第2界面活性剤のうち、グリフィン法に基づくHLB値が4以上の第2界面活性剤を含むと、消泡性(インクにおいて一旦生じた泡の崩壊しやすさ)が低下する場合がある。しかし、上述の通り、第2インクを吐出する第2ノズル列36bは、第1ノズル列36aとともに同一のキャップ部材41によって覆われるため、仮に泡が存在したとしてもクリーニングの成功率は高く維持される。
第2界面活性剤の含有量は、インクの保存安定性及び吐出安定性が一層良好なものとなるため、インクの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲であることが好ましい。
1.3.6.その他の成分
本実施形態のインクは、上記成分の他、水、pH調整剤、固体保湿剤等その他の成分を含有してもよい。特に、当該インクが水性インクである場合、水は、インクの主となる媒体であり、インクジェット記録において被記録媒体が加熱される際、蒸発飛散する成分となる。
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。水の含有量は特に制限されず、必要に応じて適宜決定すればよい。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、リン酸二水素カリウム、及びリン酸水素二ナトリウムが挙げられる。pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。pH調整剤の含有量は特に制限されず、必要に応じて適宜決定すればよい。
固体保湿剤としては、融点が20℃以上で、かつ20℃における水への溶解度が5重量%以上のものが該当する。具体的には、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール等のアルコール類、炭酸エチレン等のエステル類、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、尿素、チオ尿素、N−エチル尿素等の窒素化合物、ジヒドロキシアセトン、エリトリトール、D−アラビノース、L−アラビノース、D−キシロース、2−デオキシ−β−D−リボース、D−リキソース、L−リキソース、D−リボース、D−アラビトール、リビトール、D−アルトロース、D−アロース、D−ガラクトース、L−ガラクトース、D−キノボース、D−グルコース、D−ジギタロース、D−ジギトキソース、D−シマロース、L−ソルボース、D−タガトース、D−タロース、2−デオキシ−D−グルコース、D−フコース、L−フコース、D−フルクトース、D−マンノース
、L−ラムノース、D−イノシトール、myo−イノシトール、D−グルシトール、D−マンニトール、メチル=D−ガラクトピラノシド、メチル=D−グルコピラノシド、メチル=D−マンノピラノシド、N−アセチルキトビオース、イソマルトース、キシロビオース、ゲンチオビオース、コージビオース、コンドロシン、スクロース、セロビオース、ソホロース、α,α−トレハロース、マルトース、メリビオース、ラクトース、ラミナリビオース、ルチノース、ゲンチアノース、スタキオース、セロトリオース、プランテオース、マルトトリオース、メレジトース、ラクト−N−テトラオース、ラフィノース等の糖類を挙げることができる。
本実施形態のインクは、上記の成分に加えて、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。また、キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)、(S,S)−エチレンジアミンジコハク酸及びそれらの塩類、ジカルボキシメチルグルタミン酸及びそれらの塩類、イミノジコハク酸及びそれらの塩類(イミノジコハク酸四ナトリウム)等が挙げられる。
なお、本実施形態のインクは、インクの乾燥を抑制するためにグリセリンを含むと好ましい。インクがグリセリンのような高沸点溶媒を含有すると、インクの乾燥が抑制される。一方、グリセリンには高い吸湿性がある。そのため、ヘッド31のノズル形成面33をキャップ部材41でキャッピングした状態において、グリセリンの含有量が著しく低いインクを吐出するノズル32が存在する場合、グリセリンの含有量が高いインクを充填するノズルからグリセリンの含有量が低いインクを充填するノズルへ溶媒が移動する現象が生じ得る。この結果、インクの粘度が変動し、インクの吐出性が不安定になってしまう。そのため、好ましくは、単一のキャップ部材41によってキャッピングされる複数のノズル列36に充填されるインクの全てがグリセリンを含有し、最もグリセリンの含有量が多いインクと、最もグリセリンの含有量が少ないインクのグリセリン含有量の差が、4%以内になるようにインクの配合を調整することが好ましい。また、グリセリン含有量の差が4%を超える2つ以上のインクの組合せが存在する場合には、キャップ部材を複数に分割し、グリセリン含有量の差が4%を超える2つ以上のインクが同一のキャップ部材内に存在しないように、それぞれ別々のキャップ部材の領域のノズルに充填されるように配置することが好ましい。
1.3.7.インクの各構成の比率
上述のインクにおいて、インク中に含まれる樹脂(樹脂成分)の固形分総量(P1)と、第1界面活性剤の質量(M1)との比(P1/M1)が70以下であるインクは、第1インクとして、上述の第1ノズル列36aから吐出される。また、第1インクにおける比(P1/M1)は、30以上であると、樹脂の物性変化が少なく、保存信頼性の観点からより好ましい。一方、上述のインクにおいて、インク中に含まれる樹脂(樹脂成分)の固形分総量(P1)と、第1界面活性剤の質量(M1)との比(P1/M1)が90以下であるインクは、第2インクとして、上述の第2ノズル列36bから吐出される。また、第1インクにおいて、第2界面活性剤の質量の第1界面活性剤の質量(M1)に対する比(
M2/M1)が22以下であると、消泡効果が得られ、かつ第1界面活性剤の溶解性を良好に保つことができるためより好ましい。
1.3.8.作用効果
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置は、複数のノズル列を有しており、当該複数のノズル列を覆う少なくとも1つのキャップ部材とを備え、当該キャップ部材が、複数のノズル列を覆った状態での記録ヘッド内のインクの吸引動作を行う。そして、吸引動作において1つのキャップ部材に覆われる複数のノズル列のうち、少なくとも1つのノズル列が第1インクを吐出する第1ノズル列となるように構成されている。係る第1インクは、比(P1/M1)が70以下であるため、気泡を生じにくく、吸引動作を行う場合に、ノズル抜け等を起こしにくい。したがって、本実施形態のインクジェット記録装置は、吸引動作(クリーニング)の成功率が高く、よりインクを有効に使用することができる。
2.実施例、比較例及び参考例
以下に実施例、比較例及び参考例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
2.1.インクの調整
表1に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより、実施例、比較例及び参考例に用いる各インクを調製した。なお、表1中の数値は、質量%を示し、水(イオン交換水)はインク全量が100質量%となるように添加した。
表1に示す各材料は、以下の通りである。
(顔料)
・マゼンタ(M)顔料(C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン))
・シアン(C)顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)
・ブラック(K)顔料(カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7))
(分散樹脂)
・スチレン−アクリル酸共重合体系樹脂(商品名「ジョンクリル538J」、BASF社製、エマルジョン、Tg:66℃)
(樹脂エマルジョン)
・ウレタン樹脂(商品名「M−1064」、第一工業製薬(株)製)
(有機溶剤)
・1,2−ヘキサンジオール(標準沸点:224℃、logP値:0.50)
・グリセリン(標準沸点:290℃、logP値:−2.70)
・トリエチレングリコール
・2−ピロリドン
(界面活性剤M1)
・DF110D
(界面活性剤M2)
・BYK348(アセチレングリコール系界面活性剤)
(水)
・イオン交換水
また、表1には、樹脂固形分として、樹脂エマルジョン及び分散樹脂(顔料の供給形態である顔料分散液に含有される。)の合計量(P1)、有機溶剤の合計量、界面活性剤M1の質量に対する樹脂成分の質量(P1)の比(P1/M1)、並びに、界面活性剤M1の質量に対する界面活性剤M2の質量の比(M2/M1)を併記した。
2.2.評価試験
評価用プリンターとして、surecolorSC-T3050(セイコーエプソン社製)を用いた。表1に記載した各インクを、当該プリンターに導入した。その際、プリンターの記録ヘッドの隣り合うノズル列に、各実施例、比較例、参考例のインクの組を導入した。
また、当該プリンターの吸引キャップを改造し、ノズル列を単独で覆って吸引するキャップと、隣り合うノズル列の両者を覆って吸引するキャップを有するようにした。
そして、各例において、インクの吸引動作は、単独のノズル列を吸引する場合と、インクの組を同時に吸引する場合とで行った。すなわち、表1中、単列の誘発率とあるのは、40℃の条件下で単独のノズル列について50回吸引動作を行い、その後ノズルチェックパターンを印刷し、ノズル抜けの有無を確認した結果、ノズル抜けが生じた度合い(誘発率)として評価したものである。また、表1中、2列の誘発率とあるのは、40℃の条件下で各例のインクの組に対応するノズル列の組について50回吸引動作を行い、その後ノズルチェックパターンを印刷し、ノズル抜けの有無を確認した結果、ノズル抜けが生じた度合い(誘発率)として評価したものである。このように、チェックパターンにノズル抜け(ドット抜け)が生じなかった場合を成功とし、ノズル抜けが生じた場合を失敗として失敗誘発率として評価した。
単独列吸引及び2列吸引のそれぞれについて、係る50回の吸引動作を繰り返し、成功が35回未満となった場合をD、成功が35回以上40回未満となった場合をC、成功が40回以上45回未満となった場合をB、45回以上成功した場合をAとして、評価結果を表1に記載した。なお、この評価において、A又はBである場合には、吸引動作を50回行なった際の、吸引動作の成功率が80%以上であることとなる。
なお、各例の吸引動作は、各インクを、プリンターに導入して、印字可能な状態とした
後、各ノズル列に対して単列又は2列のキャップ部材で覆い、環境温度を25℃として、10時間放置してから実施した。
一方、保存信頼性については、表1に記載した各インクを、当該プリンターに導入して、印字可能な状態とした後、各ノズル列に対してキャップ部材で覆い、環境温度を70℃として、6日間放置し、その後、各インクを採取して、初期の粘度からの粘度変化を測定した。評価基準としては、初期の粘度から、5%以上粘度が上昇した場合をC、3%以上5%未満である場合をB、3%未満である場合をAとして表1に記載した。
2.3.評価結果
表1の実施例の評価結果をみると、単独(単列)の誘発率において良好な結果となったインクと、単独(単列)の誘発率においてやや不十分な結果となったインクとを組として、係る組において2列の誘発率を評価した結果、より単列の評価において良好な結果となった方のインクと同等の評価となっていることが分かる。すなわち、2列の誘発率は、単列の誘発率においてやや不十分な結果となったインクを含んだ場合でも、単列の誘発率において良好な結果となったインクの影響を受けて、良好な結果となることが判明した。
これに対して、2列の吸引操作において吸引されるノズル列のうち、単列の誘発率が良好なノズル列を含まない場合(比較例)では、単列の評価において良好な結果となった方のインクと同等の評価となるものの、それ以上に改善しないことが判明した。これは、比較例1−2のインクのP1/M1の値が90を越えており、M2/M1の値も22を越えているためと考えられる。
一方、参考例1−1、1−2をみると、単列の評価において良好な結果となったインクが同一のキャップ部材内に存在するにもかかわらず、2列の誘発率が不十分な結果となった。これは、第1インク及び第2インクのグリセリンの配合量の差が4質量%以上であるため、吸引動作の前に、キャップ部材で封止された状態でインク間での水の移動が生じた影響と考えられる。
さらに、参考例2−1、2−2をみると、誘発率は単列及び2列ともに良好であったが、保存信頼性が不十分であった。この結果は、参考例2−2のインクのP1/M1の値が30以下であることから、界面活性剤M1の析出が生じたことが一因となっていると考えられる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。