以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、記録媒体5(図2参照)に印刷を行う。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
本実施形態において用いられる記録媒体5は、例えば、記録紙や転写紙などの平面シートであってもよいし、携帯電話ケースなどの各種ケース、電子タバコなどの小型電子機器、キーホルダやフォトフレームやペンなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。記録媒体5を形成する材料は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材などであってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。プリンタ10は、ケース15と、フロントカバー23と、操作パネル25とを備えている。ケース15の前部には、開口28(図2参照)が形成されている。フロントカバー23は、ケース15の開口28を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー23は、後端を軸に回転可能なように、ケース15に支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、ケース15の内部空間と外部空間とが連通される。内部空間は、インクヘッド30(図2参照)によって印刷が行われる空間である。このように、印刷が行われる空間がケース15およびフロントカバー23によって囲まれていることによって、印刷中に後述する紫外線照射装置41、42から照射された光(ここでは紫外線)が外部に漏れることが抑制される。また、外部空間の塵および埃がケース15の内部空間に入り込み難い。
図1に示すように、フロントカバー23の前部および上部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、紫外線の透過を遮断するような処理が施されている。ユーザは、窓23Aからケース15の内部を視認することが可能である。
操作パネル25は、ケース15に設けられている。操作パネル25は、ケース15の上面右側に設けられている。操作パネル25は、ユーザが画像の印刷に関する操作を行うパネルである。図示は省略するが、操作パネル25には、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報が表示される表示画面、および、印刷や記録媒体5に関する情報を設定するための入力ボタンなどが備えられている。
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド30と、紫外線照射装置41、42と、制御装置70とを備えている。ガイドレール18は、ケース15内に配置されている。ガイドレール18は、ケース15に固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18には、キャリッジ20が摺動自在に設けられている。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21(図6参照)により、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構21は、制御装置70によって制御される。キャリッジ20が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド30および紫外線照射装置41、42は主走査方向Yに移動する。
キャリッジ20には、複数のインクヘッド30が搭載されている。インクヘッド30は、後述するテーブル35より上方に配置されている。インクヘッド30は、テーブル35に載置された記録媒体5に光硬化性を有するインク(光硬化性インク)を吐出する。インクヘッド30は、それぞれ、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、ケース15内に収容されたインクカートリッジ34と連通されている。インクカートリッジ34には、それぞれ、光硬化性インクが貯留されている。
図3に示すように、インクヘッド30は、第1インクヘッド30Aと、第2インクヘッド30Bと、第3インクヘッド30Cとを含む。第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cは、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。第1インクヘッド30Aは、副走査方向Xに並ぶ複数の第1左側ノズル31Aと、副走査方向Xに並ぶ複数の第1右側ノズル32Aと、第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aが形成されたノズル面33Aを備えている。第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aは、光硬化性インクを吐出する。第1左側ノズル31Aは、例えば、光硬化性を有するプロセスカラーインクとしてシアンインクを吐出する。第1右側ノズル32Aは、例えば、光硬化性を有するプロセスカラーインクとしてマゼンタインクを吐出する。第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aは、第1ノズルの一例である。第2インクヘッド30Bは、副走査方向Xに並ぶ複数の第2左側ノズル31Bと、副走査方向Xに並ぶ複数の第2右側ノズル32Bと、第2左側ノズル31Bおよび第2右側ノズル32Bが形成されたノズル面33Bを備えている。第2左側ノズル31Bおよび第2右側ノズル32Bは、光硬化性インクを吐出する。第2左側ノズル31Bは、例えば、光硬化性を有するプロセスカラーインクとしてイエローインクを吐出する。第2右側ノズル32Bは、例えば、光硬化性を有するプロセスカラーインクとしてブラックインクを吐出する。第2左側ノズル31Bおよび第2右側ノズル32Bは、第4ノズルの一例である。第3インクヘッド30Cは、副走査方向Xに並ぶ複数の第3左側ノズル31Cと、副走査方向Xに並ぶ複数の第3右側ノズル32Cと、第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32Cが形成されたノズル面33Cを備えている。第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32Cは、光硬化性インクを吐出する。第3左側ノズル31Cは、例えば、光硬化性を有する特色インクとしてグロスインクを吐出する。第3右側ノズル32Cは、例えば、光硬化性を有する特色インクとしてホワイトインクを吐出する。第3左側ノズル31Cは、第2ノズルの一例である。第3右側ノズル32Cは、第3ノズルの一例である。第1左側ノズル31A、第1右側ノズル32A、第2左側ノズル31B、第2右側ノズル32B、第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32C内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、第1左側ノズル31A、第1右側ノズル32A、第2左側ノズル31B、第2右側ノズル32B、第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32Cは、微小であるため、図3ではこれらを直線で表している。
光硬化性インクは、光(例えば紫外線や赤外線)が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インク(例えば紫外線硬化型インクや赤外線硬化型インク)は、顔料等の着色剤と、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、その他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、有色インクと無色インク(透明インク)を含む。光硬化性インクのうち有色インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインクである。プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。プロセスカラーインクは、第1の光硬化性インクの一例である。ホワイトインクは、第3の光硬化性インクの一例である。光硬化性インクのうち無色インクは、例えば、グロスインクである。グロスインクは、顔料等の着色剤を含まない。グロスインクは、第2の光硬化性インクの一例である。ここで、プロセスカラーインク、ホワイトインクおよびグロスインクは、それぞれ異なる透過率を有する。「透過率」は、紫外可視分光法(UV-Vis)を用いて測定される。プロセスカラーインク、ホワイトインクおよびグロスインクにおいて、グロスインクの透過率が最も高く、ホワイトインクの透過率が最も低い。また、シアンインクおよびマゼンタインクの透過率は、イエローインクおよびブラックインクの透過率よりも高い。このため、通常は、プロセスカラーインク、ホワイトインクおよびグロスインクにおいて、グロスインクが最も硬化しやすく、ホワイトインクが最も硬化しにくい。また、シアンインクおよびマゼンタインクは、イエローインクおよびブラックインクに比べて硬化しやすい。なお、グロスインクは、インク中に顔料成分が含まれていないため、光が透過しやすい。このため、インクの深部に位置する光重合性モノマーまで硬化しやすい。また、イエローインクおよびブラックインクは、マゼンタインクおよびシアンインクに比べて、顔料成分が光を吸収するため、インク中の光重合性モノマーへの光が減少する。このため、比較的硬化しにくい。さらに、ホワイトインクは、顔料成分が光を反射するため、インク中の光重合性モノマーへの光がより減少する。このため、プロセスカラーインクに比較してより硬化しにくい。本実施形態では、光硬化性インクとして、紫外線硬化型のインクを用いる場合を例に説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、紫外線照射装置41、42を備えている。紫外線照射装置41、42は、光照射装置の一例である。紫外線照射装置41、42は、記録媒体5に吐出された光硬化性インク(例えば、プロセスカラーインク、ホワイトインクおよびグロスインク。)に向けて光(典型的には紫外線)を照射する。これにより、記録媒体5上にインク層が形成される。紫外線照射装置41、42は、キャリッジ20に搭載されている。紫外線照射装置41、42は、後述するテーブル35より上方に配置されている。図3に示すように、紫外線照射装置41は、インクヘッド30の左方に配置されている。紫外線照射装置42は、インクヘッド30の右方に配置されている。紫外線照射装置41、42と、インクヘッド30とは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて紫外線照射装置41、42から照射された光は、記録媒体5において反射し得る。ここで、プリンタ10は、印刷が行われる空間がケース15およびフロントカバー23によって囲まれているため、反射した光はケース15内で拡散し、後述するキャップ91(図4参照)の多孔質体96に到達し得る。なお、図4および図5では、紫外線照射装置41、42の図示を省略している。
図2に示すように、プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、キャリッジ20より下方に配置されたテーブル35と、第1テーブル移動機構36と、第2テーブル移動機構37とを備えている。テーブル35は、載置台の一例である。テーブル35には、記録媒体5が載置される。テーブル35は、記録媒体5を支持する台である。テーブル35は、第1テーブル移動機構36によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構37によって、上下方向Zに移動可能に構成されている。
第1テーブル移動機構36は、スライドレール36a、36bと、搬送部材36cと、第1モータ39A(図6参照)とを備えている。スライドレール36a、36bは、副走査方向Xに延びている。搬送部材36cは、スライドレール36a、36bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材36cの上方には、他の部材を介してテーブル35が支持されている。第1モータ39Aは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第1モータ39Aが駆動すると、スライドレール36a、36bに沿って搬送部材36cが移動する。これにより、テーブル35が、副走査方向Xに移動する。
第2テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第2モータ39B(図6参照)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第2モータ39Bに接続されている。第2モータ39Bは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第2モータ39Bが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。即ち、テーブル35は、上下方向Zに移動する。
図4に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置90を備えている。キャッピング装置90は、キャップ91と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ93とを備えている。キャップ91は、インク受け部材の一例である。キャップ91およびキャップ移動機構92は、主走査方向Yに関してテーブル35の側方(ここでは右方)に配置されている。キャップ91およびキャップ移動機構92は、ガイドレール18の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ20(即ちインクヘッド30および紫外線照射装置41、42)が待機する位置である。
キャッピング装置90は、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cのノズル面33A~ノズル面33Cに付着したインクが硬化して、第1左側ノズル31A、第1右側ノズル32A、第2左側ノズル31B、第2右側ノズル32B、第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32Cが目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ91は、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cに着脱可能に形成されている。キャップ91は、第1インクヘッド30Aに着脱可能に形成された第1キャップ91Aと、第2インクヘッド30Bに着脱可能に形成された第2キャップ91Bと、第3インクヘッド30Cに着脱可能に形成された第3キャップ91Cとを含む。第1キャップ91A~第3キャップ91Cは、印刷待機時において、ノズル面33A~ノズル面33Cをそれぞれ覆うように下方からインクヘッド30にそれぞれ取り付けられる。「ノズル面33Aを覆う」とは、第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aの全てとノズル面33Aの全体を覆う場合と、第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aの全てとノズル面33Aの一部を覆う場合とを含む。ノズル面33Bおよびノズル面33Cについても同様である。
また、キャップ91は、後述するフラッシング動作のときに吐出された光硬化性インクを受ける部材である。キャップ91は、上方が開口している。キャップ91は、その内部に多孔質体96を備えている。多孔質体96は、光硬化性インクを吸収可能に構成されている。多孔質体96は、例えば、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。
キャップ移動機構92は、キャップ91を支持している。キャップ移動機構92は、キャップ91を第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cに対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向Zに移動させるものである。キャップ移動機構92の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ92Aが設けられている。キャップ移動機構92は、駆動モータ92Aを駆動させることによって、キャップ91を上下方向に移動させる。キャップ移動機構92は、キャップ91を上方に移動させることによって、キャップ91をキャップ位置に移動させる。ここで、キャップ位置とは、キャップ91がノズル面33A~ノズル面33Cを覆う位置である。これにより、第1キャップ91A~第3キャップ91Cは、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cにそれぞれ装着される。図5に示すように、第1キャップ91A~第3キャップ91Cが第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cにそれぞれ取り付けられたときに、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cと第1キャップ91A~第3キャップ91Cとの間に密閉空間38がそれぞれ形成される。より詳細には、密閉空間38は、第1キャップ91A~第3キャップ91Cとノズル面33A~ノズル面33Cとの間にそれぞれ形成される。キャップ移動機構92は、キャップ91を下方に移動させることによって、キャップ91を離隔位置に移動させる。ここで、離隔位置とは、第1キャップ91A~第3キャップ91Cがノズル面33A~ノズル面33Cから離隔した位置である。これにより、図4に示すように、第1キャップ91A~第3キャップ91Cは、それぞれ、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cから取り外される。
吸引ポンプ93は、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cに第1キャップ91A~第3キャップ91Cがそれぞれ装着されている状態において、密閉空間38内の流体(例えば光硬化性インク)を吸引する。これにより、密閉空間38内は、大気圧より低い圧力となる。この結果、吸引ポンプ93は、例えば、第1インクヘッド30Aの第1左側ノズル31A(図3参照)および第1右側ノズル32A(図3参照)内の光硬化性インクを吸引する。即ち、第1インクヘッド30Aの第1左側ノズル31Aおよび第1右側ノズル32Aから光硬化性インクを第1キャップ91A内に強制的に吐出させる。吸引ポンプ93の吸引口は、第1キャップ91A~第3キャップ91Cに接続されている。吸引ポンプ93の排出口は、廃液タンク95に接続されている。吸引ポンプ93に吸引された密閉空間38内の流体は、廃液タンク95に貯留される。吸引ポンプ93は、制御装置70に制御される。
また、吸引ポンプ93は、キャップ91内の流体(例えば光硬化性インク)を吸引する。例えば、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cとキャップ91とが離れた状態において、キャップ91内に光硬化性インクが存在するときに、吸引ポンプ93を駆動することによってキャップ91内の光硬化性インクを廃液タンク95へと排出することができる。
図6に示すように、制御装置70は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図2に示すように、制御装置70は、ケース15の内部に設けられている。ただし、制御装置70はケース15の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置70は、ケース15の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置70は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
図6に示すように、制御装置70は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21と、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cと、紫外線照射装置41、42と、第1テーブル移動機構36(図2参照)の第1モータ39Aと、第2テーブル移動機構37(図2参照)の第2モータ39Bと、キャッピング装置90(図4参照)の駆動モータ92Aと、吸引ポンプ93と通信可能に接続している。制御装置70は、キャリッジ移動機構21、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30C、紫外線照射装置41、42、第1モータ39A、第2モータ39B、駆動モータ92A、および、吸引ポンプ93を制御する。
制御装置70は、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cが光硬化性インクを吐出するタイミングや光硬化性インクの吐出量等を制御する。制御装置70は、キャリッジ移動機構21を制御することによって、キャリッジ20の主走査方向Yの往復移動を制御する。制御装置70は、駆動モータ92Aの駆動を制御することによって、キャップ91の上下方向Zの移動を制御する。制御装置70は、キャップ91内や密閉空間38内の流体を吸引ポンプ93によって吸引するタイミングなどを制御する。制御装置70は、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて紫外線照射装置41、42から紫外線を照射するタイミング等を制御する。
図6に示すように、制御装置70は、記憶部71と、第1フラッシング動作部72と、第2フラッシング動作部73と、第3フラッシング動作部74と、第4フラッシング動作部75と、吸引部76とを備えている。制御装置70の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置70の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
記憶部71は、使用する光硬化性インク毎に、印刷中にキャリッジ20が主走査方向Yにどれだけの回数だけ往復移動する毎にフラッシング動作を実行するかを記憶する。本実施形態では、往復移動とは、キャリッジ20が右方から左方に移動した後に、左方から右方に移動することを意味する。記憶部71は、ホワイトインクを使用する場合には、例えば、印刷中にキャリッジ20が主走査方向YにA回(Aは1~5、例えば1。)だけ往復移動する毎にフラッシング動作を実行することを記憶する。記憶部71は、プロセスカラーインク(例えばイエローインクとブラックインク)を使用する場合には、例えば、印刷中にキャリッジ20が主走査方向YにB回(Bは10~15、例えば10。)だけ往復移動する毎にフラッシング動作を実行することを記憶する。記憶部71は、プロセスカラーインク(例えばシアンインクとマゼンタインク)を使用する場合には、例えば、印刷中にキャリッジ20が主走査方向YにC回(Cは10~20、例えば20。)だけ往復移動する毎にフラッシング動作を実行することを記憶する。なお、イエローインクおよびブラックインクを使用する場合と、シアンインクおよびマゼンタインクを使用する場合とにおいて同じタイミングでフラッシング動作をするようにしてもよい(即ちB回とC回とが同じ)。記憶部71は、グロスインクを使用する場合には、例えば、印刷中にキャリッジ20が主走査方向YにD回(Dは100~500、例えば500。)だけ往復移動する毎にフラッシング動作を実行することを記憶する。グロスインク、プロセスカラーインクおよびホワイトインクのフラッシング動作において、フラッシング発数は同じであってもよいし異なっていてもよい。なお、上記回数およびフラッシング発数は、適宜設定することができる。また、記憶部71は、グロスインクを使用する場合には、フラッシング動作を実行しないことを記憶してもよい。
第1フラッシング動作部72は、キャリッジ20が主走査方向Yに第1の回数(例えば20回)だけ往復移動するごとに、第1インクヘッド30Aの第1左側ノズル31Aから多孔質体96に向けてシアンインクを吐出しかつ第1インクヘッド30Aの第1右側ノズル32Aから第1キャップ91Aの多孔質体96に向けてマゼンタインクを吐出する動作である第1フラッシング動作を実行する。第1フラッシング動作は、第1インクヘッド30Aの下方に第1キャップ91Aが位置するとき(図4参照)に行われる。これにより、第1キャップ91A内に、シアンインクおよびマゼンタインクが一時的に貯留される。なお、1つの印刷データに基づいて画像を印刷するときには、印刷が完了する前にキャリッジ20は主走査方向Yに少なくとも第1の回数だけ往復移動する。
第2フラッシング動作部73は、キャリッジ20が主走査方向Yに第2の回数(例えば500回)だけ往復移動するごとに、第3インクヘッド30Cの第3左側ノズル31Cから第3キャップ91Cの多孔質体96に向けてグロスインクを吐出する動作である第2フラッシング動作を実行する。第2の回数は、第1の回数より多い。第2の回数は、例えば、第1の回数の5倍~25倍程度。第2フラッシング動作は、第3インクヘッド30Cの下方に第3キャップ91Cが位置するとき(図4参照)に行われる。これにより、第3キャップ91C内に、グロスインクが一時的に貯留される。なお、1つの印刷データに基づいて画像を印刷するときに、キャリッジ20が主走査方向Yに第2の回数だけ往復移動する前に印刷が完了する場合には、第2フラッシング動作部73は、第2フラッシング動作を実行しない。この場合には、例えば、次の印刷データに基づいて画像を印刷する前に、第3左側ノズル31Cから強制的にインクが吐出される。また、第2フラッシング動作部73は、上記第2フラッシング動作を実行しないように構成されていてもよい。
第3フラッシング動作部74は、キャリッジ20が主走査方向Yに第3の回数(例えば1回)だけ往復移動するごとに、第3インクヘッド30Cの第3右側ノズル32Cから第3キャップ91Cの多孔質体96に向けてホワイトインクを吐出する動作である第3フラッシング動作を実行する。第3の回数は、第1の回数より少ない。第3の回数は、例えば、第1の回数の20分の1~4分の1程度。ホワイトインクは、ノズルにおいて比較的目詰まりしやすいため、1往復移動毎にフラッシングするのが好ましい。第3フラッシング動作は、第3インクヘッド30Cの下方に第3キャップ91Cが位置するとき(図4参照)に行われる。これにより、第3キャップ91C内に、ホワイトインクが一時的に貯留される。
第4フラッシング動作部75は、キャリッジ20が主走査方向Yに第4の回数(例えば10回)だけ往復移動するごとに、第2インクヘッド30Bの第2左側ノズル31Bから第2キャップ91Bの多孔質体96に向けてイエローインクを吐出しかつ第2インクヘッド30Bの第2右側ノズル32Bから多孔質体96に向けてブラックインクを吐出する動作である第4フラッシング動作を実行する。第4の回数は、第1の回数より少なくかつ第3の回数より多い。第4の回数は、例えば、第1の回数の2分の1~4分の3程度。第4フラッシング動作は、第2インクヘッド30Bの下方に第2キャップ91Bが位置するとき(図4参照)に行われる。これにより、第2キャップ91B内に、イエローインクおよびブラックインクが一時的に貯留される。
吸引部76は、第2フラッシング動作部73によって第2フラッシング動作が実行された後に第3キャップ91C内の流体を吸引するように吸引ポンプ93を制御する。吸引部76は、吸引ポンプ93を駆動して第3キャップ91C内の流体を吸引する吸引動作を実行する。ここでの吸引動作は、第1キャップ91A~第3キャップ91Cが第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cから離れた状態で行われる。なお、吸引部76は、第1フラッシング動作および第4フラッシング動作の少なくともいずれかが実行された後(例えば第4フラッシング動作が実行された後)に第1キャップ91A内の流体を吸引するように吸引ポンプ93を制御してもよい。
次に、印刷中のフラッシング動作および吸引動作の一例について説明する。例えば、1つの印刷データに基づいてキャリッジ20が主走査方向Yに500回往復移動することによって、記録媒体5に画像が形成される場合を例に説明する。印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに9回往復移動するまでは、第3フラッシング動作部74によって第3フラッシング動作のみが実行される。即ち、第3キャップ91C内の多孔質体96に向けてホワイトインクのみが吐出される。印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに10回往復移動した後には、第3フラッシング動作部74によって第3フラッシング動作が実行されると共に、第4フラッシング動作部75によって第4フラッシング動作が実行される。即ち、このときに初めて第2キャップ91B内の多孔質体96に向けてイエローインクおよびブラックインクが吐出される。そして、印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに20回往復移動した後には、第3フラッシング動作部74によって第3フラッシング動作が実行されると共に、第1フラッシング動作部72によって第1フラッシング動作が実行される。即ち、このときに初めて第1キャップ91A内の多孔質体96に向けてシアンインクおよびマゼンタインクが吐出される。この後、印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに499回往復移動した後には、第3フラッシング動作部74によって第3フラッシング動作が499回実行され、第4フラッシング動作部75によって第4フラッシング動作が49回実行され、第1フラッシング動作部72によって第1フラッシング動作が24回実行される。そして、印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに500回往復移動した後には、第3フラッシング動作部74によって第3フラッシング動作が実行され、かつ、第4フラッシング動作部75によって第4フラッシング動作が実行されると共に、第2フラッシング動作部73によって第2フラッシング動作が実行される。即ち、このときに初めて第3キャップ91C内の多孔質体96に向けてグロスインクが吐出される。第2フラッシング動作が実行されると、吸引部76は、吸引ポンプ93を駆動する。ここで、吸引ポンプ93は、第1キャップ91A~第3キャップ91Cと連通しているため、吸引ポンプ93を駆動することによって、第1キャップ91A~第3キャップ91C内の流体(即ち各光硬化性インク)は吸引ポンプ93に吸引されて廃液タンク95に排出される。このように、本実施形態のプリンタ10では、乾燥しやすい光硬化性インクのフラッシング頻度を、乾燥しにくい光硬化性インクのフラッシング頻度よりも低くしている。なお、上述した例では、印刷開始からキャリッジ20が主走査方向Yに500回往復移動した後には、第2フラッシング動作部73によって第2フラッシング動作が実行されるが、第2フラッシング動作部73は第2フラッシング動作を実行しないように構成されていてもよい。
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、透過率が相対的に高い第2の光硬化性インク(例えばグロスインク)を吐出する第2フラッシング動作の頻度は、透過率が相対的に低い第1の光硬化性インク(例えばプロセスカラーインク)を吐出する第1フラッシング動作の頻度よりも低い。これにより、硬化しやすい第2の光硬化性インクの多孔質体96における総量を低減するあるいは無くすことができる。このように、第1フラッシング動作および第2フラッシング動作を同じタイミングで実行する場合と比較して、より硬化しやすい第2の光硬化性インクの多孔質体96における量が低減されるあるいは無くなるため、記録媒体5において反射した光によって多孔質体96において硬化する光硬化性インクの量を低減することができる。この結果、多孔質体96の交換頻度(例えばキャップ91全体の交換頻度)を低減することができる。
本実施形態のプリンタ10によると、インク受け部材は、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cに着脱可能に形成され、第1インクヘッド30A~第3インクヘッド30Cに取り付けられたときにノズル面33A~33Cをそれぞれ覆いかつノズル面33A~33Cとの間に密閉空間38を形成する第1キャップ91A~第3キャップ91Cである。さらに、プリンタ10は、制御装置70に制御され、第1キャップ91A~第3キャップ91C内の流体を吸引する吸引ポンプ93を備えている。第1キャップ91A~第3キャップ91Cの多孔質体96において光硬化性インクが硬化してしまうと、吸引ポンプ93によって第1キャップ91A~第3キャップ91C内の流体を吸引する能力(即ち吸引性能)が低下してしまうが、多孔質体96において硬化する光硬化性インクの量を低減することができるため、吸引ポンプ93の吸引性能の低下を抑制することができる。
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置70は、第2フラッシング動作が実行された後に第1キャップ91A~第3キャップ91C内の流体を吸引するように吸引ポンプ93を制御する吸引部76を備えている。このように、第2フラッシング動作によってより硬化しやすい第2の光硬化性インク(例えばグロスインク)がキャップ内に吐出された後に、吸引ポンプを駆動して第2の光硬化性インクを吸引することにより、多孔質体96から第2の光硬化性インクを取り除くことができる。
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置70は、キャリッジ20が主走査方向Yに第1の回数より少ない第3の回数だけ往復移動するごとに、第3インクヘッド30Cの第3右側ノズル32Cから第3キャップ91Cの多孔質体96に向けて第3の光硬化性インク(例えばホワイトインク)を吐出する動作である第3フラッシング動作を実行する第3フラッシング動作部74を備えている。例えば、ホワイトインクを使用する第3右側ノズル32Cは、他のインクを使用する場合と比較して目詰まりが発生しやすいため、第3フラッシング動作の頻度を相対的に高くすることにより、第3右側ノズル32Cの目詰まりの発生を抑制することができる。なお、ホワイトインクは、比較的硬化しにくいインクであるため、第3キャップ91Cに比較的多量のホワイトインクが吐出されても、多孔質体96においてホワイトインクはあまり硬化しない。
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置70は、キャリッジ20が主走査方向Yに第1の回数より少なくかつ第3の回数より多い第4の回数だけ往復移動するごとに、第2インクヘッド30Bの第2左側ノズル31Bおよび第2右側ノズル32Bから第2キャップ91Bの多孔質体96に向けてイエローインクおよびブラックインクを吐出する動作である第4フラッシング動作を実行する第4フラッシング動作部75を備えている。プロセスカラーインクにおいて、イエローインクおよびブラックインクは、シアンインクおよびマゼンタインクに比較して硬化しにくいため、第2左側ノズル31Bおよび第2右側ノズル32Bにおける目詰まりの発生を抑制するために、第4フラッシング動作の頻度を第3フラッシング動作の頻度より高く設定することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
上述した実施形態では、インクヘッド30は、第1インクヘッド30Aと第2インクヘッド30Bと第3インクヘッド30Cとを含むが、インクヘッドの数は3つに限定されない。例えば、インクヘッド30は、第1インクヘッド30Aのみを備えており、第1インクヘッド30Aが第1左側ノズル31A、第1右側ノズル32A、第2左側ノズル31B、第2右側ノズル32B、第3左側ノズル31Cおよび第3右側ノズル32Cを備えていてもよい。
上述した実施形態では、第1フラッシング動作~第4フラッシング動作は、第1キャップ91A~第3キャップ91Cの多孔質体96に対して行われていたが、これに限定されない。例えば、プリンタ10は、キャッピング装置90とは別体に設けられたいわゆるフラッシング専用のフラッシングステージを備えており、インク受け部材としての該フラッシングステージに対して第1フラッシング動作~第4フラッシング動作を実行するようにしてもよい。
上述した実施形態では、インク受け部材としての第1キャップ91A~第3キャップ91Cは、テーブル35よりも右方に配置されていたが、テーブル35よりも左方に配置されていてもよい。また、インク受け部材は、テーブル35よりも右方に配置すると共にテーブル35よりも左方に配置していてもよい。例えば、テーブル35よりも左方においてフラッシング動作をする場合には、キャリッジ20が右方から左方に移動したときにフラッシング動作を実行するが、これは0.5回往復移動したことに相当する。
上述した実施形態では、イエローインクおよびブラックインクをフラッシングする頻度は、シアンインクおよびマゼンタインクをフラッシングする頻度よりも高いが、同じであってもよい。
ここで開示される技術は様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したフラットベッドタイプのプリンタ10の他、例えば、ロール状の記録媒体5を副走査方向Xに搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。