JP6477339B2 - ジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法 - Google Patents

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本発明は、有機半導体材料等の電子材料への展開が可能な新規なジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法に関するものであり、特に溶媒への溶解性に優れることから容易に製膜用の有機半導体溶液への展開が期待される新規なジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法に関するものである。
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。そして、有機半導体デバイス性能は、この有機半導体層を構成する有機半導体材料のキャリア移動度により左右されることから、高キャリア移動度を与える有機材料の出現が所望されている。
有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法等の方法が一般的に知られている。このうち、塗布法においては、高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができるため、デバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることが期待でき、経済的に好ましいプロセスである。そして、このような塗布法に使用される有機半導体材料としては低分子系と高分子系のものがあるが、より高いキャリア移動度を得ることができることから、低分子系材料の方が好ましい。さらに、室温で1.5重量%以上の溶解度を持つことがデバイス作製のプロセス上の観点から好ましい。
高キャリア移動度と高溶解性を合わせ持つ低分子系材料としては、ジチエノベンゾジフラン誘導体(例えば、特許文献1参照。)が提案されており、特許文献1ではその製造方法も提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたジチエノベンゾジフランの製造方法は、パラジウム触媒の存在下、1,4−ジ(3−ブロモチエニル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンの分子内環化で行うものであり、多量の高価なパラジウム及びホスフィン配位子を要するものであるため、必ずしも効率のよい方法とは言えなかった。
特開2014−139146号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ジチエノベンゾジフラン誘導体の一種であって、高キャリア移動度と高溶解性を合わせ持つジアルキルジチエノベンゾジフランを、効率的に合成できる新規な製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、銅化合物を用いた環化によるジチエノベンゾジフランの合成を含むジアルキルジチエノベンゾジフランの新規な製造方法を見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、少なくとも下記(A)〜(E)の工程を経てなることを特徴とする下記一般式(1)で示されるジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法に関するものである。
Figure 0006477339
(ここで、置換基R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
(A)工程;パラジウム触媒の存在下、3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体と1,2,4,5−テトラハロベンゼンにより1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
(B)工程;三臭化ホウ素の存在下、(A)工程により得られた1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの脱メチル化により1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
(C)工程;銅化合物の存在下、(B)工程により得られた1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの分子内環化によりジチエノベンゾジフランを製造する工程。
(D)工程;触媒として塩化アルミニウムの存在下、(C)工程により得られたジチエノベンゾジフランと塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ジアシルジチエノベンゾジフランを製造する工程。
(E)工程;(D)工程により得られたジアシルジチエノベンゾジフランを還元反応に供し、ジアルキルジチエノベンゾジフランを製造する工程。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法は、少なくとも上記(A)〜(E)の工程を経ることを特徴とする。
そして、本発明において、総収率が高いことから好ましい製造方法のより具体的な製造スキームを以下に示す。
Figure 0006477339
(ここで、置換基Rは、同一又は異なって、水素、又は炭素数1〜11のアルキル基を示す。)
ここで、(A)工程は、パラジウム触媒の存在下、3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体と1,2,4,5−テトラハロベンゼンのクロスカップリングにより1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程である。
3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体の金属としては、亜鉛、ホウ素、ケイ素、マグネシウム、リチウム等が挙げられ、調製の容易さのため、亜鉛、マグネシウムが好ましい。3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体の具体例としては、3−メトキシチオフェン−2−亜鉛クロライド、3−メトキシチオフェン−2−亜鉛ブロマイド、3−メトキシチオフェン−2−(ジヒドロキシ)ホウ素、3−メトキシチオフェン−2−マグネシウムクロライド、3−メトキシチオフェン−2−マグネシウムブロマイド等が挙げられ、高収率のため、好ましくは、3−メトキシチオフェン−2−亜鉛クロライド、3−メトキシチオフェン−2−マグネシウムクロライドである。
該3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体は、例えば、3−メトキシチオフェン又は2−ブロモ−3メトキシチオフェンを用い、該3−メトキシチオフェンの2位の水素又は該2−ブロモ−3−メトキシチオフェンの2位の臭素をマグネシウムハライド又はリチウムに交換後、該マグネシウムハライド又は該リチウムを塩化亜鉛、トリメトキシホウ素の順に金属交換することで調製することができる。該金属交換反応は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はジエチルエーテル等の溶媒中、−80℃〜50℃の温度範囲内で実施することができる。ここで、該2位の水素又は該2位の臭素をマグネシウムハライド又はリチウムに交換する際に用いられる金属交換試薬としては、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムブロマイド、イソプロピルマグネシウムクロライド・塩化リチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機金属試薬;リチウムN,N−ジイソプロピルアミド、塩化マグネシウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド、塩化マグネシウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド・塩化リチウム等のメタルアミド;エチルマグネシウムクロライドと触媒量(エチルマグネシウムクロライドに対し0.1〜0.3当量)の2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの混合物;エチルマグネシウムクロライドと触媒量(エチルマグネシウムクロライドに対し0.1〜0.3当量)のジシクロヘキシルアミンとの混合物等が挙げられる。
(A)工程におけるパラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができ、これらのパラジウム触媒を用いた反応は、20℃〜80℃の範囲内で実施することができる。該パラジウム触媒の使用量は、触媒活性を維持するため、1,2,4,5−テトラハロベンゼンに対し、0.5〜10モル%であることが好ましい。
1,2,4,5−テトラハロベンゼンの具体例としては、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ジクロロ−2,5−ジヨードベンゼン等を挙げることができ、反応位置の制御の容易さのため、好ましくは1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンである。
(B)工程は、三臭化ホウ素の存在下、1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの脱メチル化により1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程である。
該脱メチル化反応は、例えば、ジクロロメタン,クロロホルム等の溶媒中、0℃〜30℃の温度範囲で行うことができる。三臭化ホウ素の使用量は、高収率のため、1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンに対し、1.0〜4.0当量であることが好ましく、1.5〜3.0当量であることがさらに好ましい。
(C)工程は、銅化合物の存在下、1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの分子内環化によりジチエノベンゾジフランを製造する工程である。
該銅化合物は、0価、1価又は2価銅のいずれであっても良いが、高収率のため、好ましくは2価銅である。具体例としては、例えば、酸化銅(II)、酸化銅(I)、塩化銅(II)、塩化銅(I),臭化銅(II)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(II)、ヨウ化銅(I)、硫酸銅(II)、硫酸銅(I)、炭酸銅(II)、炭酸銅(I)、硝酸銅(II)、硫化銅(II)、硫化銅(I)、酢酸銅(II)、酢酸銅(I)、アセチルアセトナート銅(II)等を挙げることができ、収率の点から、好ましくは酸化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II),硫化銅(II)、酢酸銅(II)であり、さらに好ましくは酸化銅(II)である。該銅化合物の使用量は、転化率向上のため、1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンに対し、0.5〜8.0当量であることが好ましく、2.0〜7.0当量であることがさらに好ましい。
該分子内環化反応には、反応促進のため、塩基を存在させることが好ましい。該塩基の具体例としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム等の水酸化物等が挙げられ、反応性が高いため、好ましくは炭酸塩であり、さらに好ましくは炭酸カリウムである。該塩基の使用量としては、1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンに対し、2.0〜15当量であることが好ましく、4.0〜12.0当量であることがさらに好ましい。
該環化反応の条件としては、反応促進のため、20℃〜120℃の溶媒中で実施することが好ましい。該溶媒としては、例えば、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
(D)工程は、触媒として塩化アルミニウムの存在下、ジチエノベンゾジフランと塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ジアシルジチエノベンゾジフランを製造する工程である。
該塩化アシル化合物としては、例えば、塩化ホルミル、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ペンタノイル、塩化ヘキサノイル、塩化ヘプタノイル、塩化オクタノイル等を挙げることができる。該フリーデルクラフツアシル化反応は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中、−20℃〜40℃の温度範囲で行うことができる。
塩化アルミニウムの使用量は、ジチエノベンゾジフランに対し、1.0〜5.0当量であることが好ましく、2.0〜4.0当量であることがさらに好ましい。
塩化アシル化合物の使用量は、ジチエノベンゾジフランに対し、1.5〜4.0当量であることが好ましく、2.2〜4.0当量であることがさらに好ましい。
(E)工程は、ジアシルジチエノベンゾジフランを還元反応に供し、ジアルキルジチエノベンゾジフランを製造する工程である。
ジアシルジチエノベンゾジフランの還元反応は、例えば、還元剤としてヒドラジンを用い、ジエチレングリコール、エチレングリコール又はトリエチレングリコール中、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム存在下、80℃〜250℃の温度範囲で行うことができる。また、例えば、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム/塩化アルミニウム又は水素化リチウムアルミニウム/塩化アルミニウムを用い、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル又はTHFの溶媒中、−10℃〜80℃の温度範囲で行うこともできる。このとき、高転化率のため、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化リチウムアルミニウムの使用量は、ジアシルジチエノベンゾジフランに対し5から40当量が好ましく、塩化アルミニウムの使用量は、ジアシルジチエノベンゾジフランに対し3から20当量が好ましい。さらに、例えば、還元剤としてトリフルオロ酢酸/トリエチルシランを用い、−10℃〜40℃の温度範囲で行うこともできる。このとき、高選択率のため、トリフルオロ酢酸の使用量は、ジアシルジチエノベンゾジフランに対し10から50当量が好ましく、トリエチルシランの使用量は、ジアシルジチエノベンゾジフランに対し1.8から6.0当量が好ましい。
さらに、製造したジアルキルジチエノベンゾジフランは、カラムクロマトグラフィー等に供することにより精製することができ、その際の分離剤としては、例えば、シリカゲル、アルミナ等を挙げることができ、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
また、製造したジアルキルジチエノベンゾジフランは、さらに再結晶により精製してもよく、再結晶の回数としては、純度向上のため、好ましくは2〜5回である。再結晶の回数を増やすことで純度を向上させることができる。再結晶に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができ、これらの任意の割合の混合物であってもよい。再結晶法としては、加熱によりジアルキルジチエノベンゾジフランの溶液を調製し、該溶液を冷却することでジアルキルジチエノベンゾジフランの結晶を析出させ単離するが、高純度のため、単離する際の最終的な冷却温度は−20℃から40℃の範囲にあることが好ましい。なお、純度を測定する際には液体クロマトグラフィーにより分析することにより測定することが可能である。
本発明の製造方法で製造することができるジアルキルジチエノベンゾジフランは上記一般式(1)で示される誘導体であり、置換基R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基を示し、合成の容易さのため、同一であることが好ましい。
置換基R及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基等が挙げられる。
そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すジアルキルジチエノベンゾジフランとなることから、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基であることがさらに好ましい。
そして、具体的なジアルキルジチエノベンゾジフランとしては、高移動度及び高溶解性のため、ジメチルジチエノベンゾジフラン、ジエチルジチエノベンゾジフラン、ジn−プロピルジチエノベンゾジフラン、ジn−ブチルジチエノベンゾジフラン、ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランが好ましい。
本発明のジアルキルジチエノベンゾジフランは、溶媒への高い溶解性を有することから、インクジェット法等の方法により容易に効率よく製膜することが可能となり、高いキャリア移動度を与える有機半導体材料として期待されるものである。
本発明の新規なジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法は、効率的な製造方法であり、かつ、安価な銅化合物による環化反応を用いており、経済的に製造できることからその効果は極めて高いものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
生成物の同定にはH−NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、H−NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−400(400MHz)を用い、マススペクトル(MS)は、(商品名)JEOL JMS−700(日本電子製)を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。
反応の進行の確認等は薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析を用いた。
ガスクロマトグラフィー分析
装置;(商品名)GC14B(島津製作所製)。
カラム;(商品名)DB−1,30m(J&Wサイエンティフィック社製)。
ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析
装置;(商品名)オートシステムXL(パーキンエルマー製)(MS部;ターボマスゴールド)。
カラム;(商品名)DB−1,30m(J&Wサイエンティフィック社製)。
ジアルキルジチエノベンゾジフランの純度測定は液体クロマトグラフィー分析を用いた。
装置;東ソー製(コントローラー;PX−8020、ポンプ;CCPM−II、デガッサー;SD−8022)。
カラム;(商品名)ODS−100V(東ソー製)、5μm(ゲルの粒子径)、4.6mm×250mm(カラム内径×カラム長さ)。
カラム温度;30℃。
溶離液;ジクロロメタン:アセトニトリル=2:8(容積比)。
流速;1.0ml/分。
検出器;UV(東ソー製、(商品名)UV−8020、波長;254nm)。
実施例1
(1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼンの合成((A)工程))
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(和光純薬工業)4.70g(33.2mmol)及びTHF(脱水グレード)12mlを添加した。0℃下で、イソプロピルマグネシウムクロライド・塩化リチウム(シグマ−アルドリッチ、1.3M)のTHF溶液33.0ml(42.9mmol)を添加し、室温で2日間攪拌した。得られた塩化マグネシウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド・塩化リチウム溶液に3−メトキシチオフェン(和光純薬工業)5.18g(45.3mmol)を滴下し、室温で8時間熟成させた。THF(脱水グレード)20ml添加し、−60℃に冷却した。ここへ、塩化亜鉛(和光純薬工業)6.13g(45.0mmol)及びTHF(脱水グレード)40mlからなる溶液をテフロンキャヌラーを用いて投入した。さらにTHF(脱水グレード)10mlを用いて洗浄投入した。徐々に室温まで昇温した後、得られた白色スラリー液(3−メトキシチエニル−2−亜鉛クロライド)に、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン(東京化成工業)7.01g(14.4mmol)、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業)248mg(0.214mmol、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンに対し1.49モル%)を添加し、得られた混合物を50℃で8時間反応を実施した。室温に冷却し、全体を減圧濃縮した。得られた残渣に水100ml及びヘキサン100mlを添加し、濾過した。濾過で得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン=2/1から0/1)、さらにトルエンから再結晶精製し、1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼンの薄黄色固体4.19gを得た(収率63%)。
H−NMR(重ベンゼン,70℃):δ=7.79(s,2H)、6.82(d,J=5.6Hz,2H)、6.48(d,J=5.6Hz,2H)、3.32(s,6H)。
MS m/z: 462(M+2,31%)、460(M,100%)、458(M−2,30%)。
(1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼンの合成((B)工程))
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼン4.54g(9.87mmol)及びジクロロメタン140ml(脱水グレード)を添加した。この混合物を−40℃に冷却し、三臭化ホウ素(シグマ−アルドリッチ、1.0M)のジクロロメタン溶液24ml(24mmol)を添加した。得られた混合物を室温で55時間攪拌後、0℃で水添加により反応を停止させた。得られたスラリー混合物を濾過し、固体を水で洗浄し、減圧乾燥後、1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼンの淡黄色固体3.84gを得た(収率90%)。
H−NMR(重ベンゼン,70℃):δ=7.55(s,2H)、6.74(d,J=5.6Hz,2H)、6.38(d,J=5.6Hz,2H)、4.15(s,2H)。
MS m/z: 434(M+2,10%)、432(M,22%)、430(M−2,8%)、432(M−2Br,100%)。
(ジチエノベンゾジフランの合成((C)工程))
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼン3.63g(8.40mmol)、酸化銅(II)(和光純薬工業)3.94g(49.5mmol)、炭酸カリウム(和光純薬工業)11.6g(83.9mmol)、及びピリジン(脱水グレード)150mlを添加した。得られた混合物を100℃で15時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン=10/1〜1/2)、ジチエノベンゾジフランの淡黄色固体1.84gを得た(収率81%)。
H−NMR(重ベンゼン,70℃):δ=7.45(s,2H)、6.82(d,J=5.2Hz,2H)、6.76(d,J=5.2Hz,2H)。
MS m/z: 270(M,100%)。
(ジヘキサノイルジチエノベンゾジフランの合成((D)工程))
100mlシュレンク反応容器にジチエノベンゾジフラン90.0mg(0.332mmol)及びジクロロメタン(脱水グレード)7mlを添加した。この混合物を−40℃に冷却し、塩化アルミニウム(和光純薬工業)115mg(0.862mmol)及び塩化ヘキサノイル(シグマ−アルドリッチ)109mg(0.809mol)を添加した。得られた混合物を徐々に昇温し、室温で10時間攪拌後、氷冷し水を添加することで反応を停止させた。得られたスラリー混合物からジクロロメタンを減圧留去後、固体を濾過し、水及びメタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥した後、ジヘキサノイルジチエノベンゾジフランの黄色固体115mgを得た(収率74%)。
H−NMR(重ベンゼン,80℃):δ=7.37(s,2H)、7.25(s,2H)、2.57(t,J=7.2Hz,4H)、1.72(m,4H)、1.27(m,8H)、0.875(t,J=7.0Hz,6H)。
(ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの合成((E)工程))
100mlシュレンク反応容器にジヘキサノイルジチエノベンゾジフラン58.3mg(0.124mmol)、THF(脱水グレード)5ml、及び塩化アルミニウム(和光純薬工業)48.6mg(0.364mmol)を添加した。0℃に冷却後、さらに水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業)27.4mg(0.724mmol)を添加した。50℃で5時間加熱した後、0℃に冷却し、注意深く水を添加することで反応を停止させた。1N塩酸で水相を酸性とした後、トルエン抽出した。分相後、有機相の水洗浄を3回繰り返した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン)、ヘキサン(和光純薬工業ピュアーグレード)から2回再結晶精製し、ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの白色結晶30.0mgを得た(収率55%)。
得られたジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの純度は液体クロマトグラフィーより99.4%であった。
H−NMR(重ベンゼン,24℃):δ=7.50(s,2H)、6.67(s,2H)、2.57(t,J=7.6Hz,4H)、1.51(m,4H)、1.22(m,12H)、0.884(t,J=7.2Hz,6H)。
MS m/z: 438(M,100%),367(M−C11,54),296(M−2C11,41)
実施例2
(ジブチリルジチエノベンゾジフランの合成((D)工程))
実施例1で用いた塩化ヘキサノイルの代わりに、塩化ブチリル(シグマ−アルドリッチ)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により((A)〜(C)工程は実施例1と同様の方法)、ジブチリルジチエノベンゾジフランの黄色固体を収率78%で得た。
(ジn−ブチルジチエノベンゾジフランの合成((E)工程))
ジヘキサノイルジチエノベンゾジフランの代わりに、ジブチリルジチエノベンゾジフランを用いた以外は、実施例1の(E)工程と同様の方法により、ジn−ブチルジチエノベンゾジフランの淡黄色結晶を収率59%で得た。
実施例3
(ジプロピオニルジチエノベンゾジフランの合成((D)工程))
実施例1で用いた塩化ヘキサノイルの代わりに、塩化プロピオニル(シグマ−アルドリッチ)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により((A)〜(C)工程は実施例1と同様の方法)、ジプロピオニルジチエノベンゾジフランの黄色固体を収率81%で得た。
(ジn−プロピルジチエノベンゾジフランの合成((E)工程))
ジヘキサノイルジチエノベンゾジフランの代わりに、ジプロピオニルジチエノベンゾジフランを用いた以外は、実施例1の(E)工程と同様の方法により、ジn−プロピルジチエノベンゾジフランの白色結晶を収率53%で得た。
比較例1
(ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの合成)
(C)工程以外は実施例1と同様の方法でジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランを合成した。
(ジチエノベンゾジフランの合成((C)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に酢酸カリウム(和光純薬工業)181mg(1.83mmol)、2−ジターシャリーブチルホスフィノ−2’−メチルビフェニル(シグマ−アルドリッチ)34.6mg(0.111mmol)、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール(和光純薬工業)161mg(0.730mmol)、実施例1で合成した1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジブロモベンゼン167mg(0.386mmol)、トルエン2ml、ジメトキシエタン1ml、及び酢酸パラジウム(和光純薬工業、有機合成用)16.2mg(0.071mmol)を添加した。100℃で3日間加熱した。得られた反応混合物を室温に冷却し、トルエンと水を添加後、分相し、有機相を2回水洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン=10/1〜1/2)、ジチエノベンゾジフランの淡黄色固体44.8mgを得た(収率43%)。
本発明の新規な方法で製造されるジアルキルジチエノベンゾジフランは、溶媒への溶解性に優れ、高キャリア移動度も期待されることから有機薄膜トランジスタに代表される半導体デバイス材料としての適用が期待できる。

Claims (3)

  1. 少なくとも下記(A)〜(E)の工程を経てなることを特徴とする下記一般式(1)で示されるジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法。
    Figure 0006477339
    (ここで、置換基R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
    (A)工程;パラジウム触媒の存在下、3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体と1,2,4,5−テトラハロベンゼンにより1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
    (B)工程;三臭化ホウ素の存在下、(A)工程により得られた1,4−ジ(3−メトキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの脱メチル化により1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
    (C)工程;銅化合物の存在下、(B)工程により得られた1,4−ジ(3−ヒドロキシチエニル)−2,5−ジハロベンゼンの分子内環化によりジチエノベンゾジフランを製造する工程。
    (D)工程;触媒として塩化アルミニウムの存在下、(C)工程により得られたジチエノベンゾジフランと塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ジアシルジチエノベンゾジフランを製造する工程。
    (E)工程;(D)工程により得られたジアシルジチエノベンゾジフランを還元反応に供し、ジアルキルジチエノベンゾジフランを製造する工程。
  2. 3−メトキシチオフェン−2−金属誘導体の金属が亜鉛又はマグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法。
  3. 1,2,4,5−テトラハロベンゼンが1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ジクロロ−2,5−ジヨードベンゼンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジアルキルジチエノベンゾジフランの製造方法。
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