本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の製造方法によりヘテロアセン誘導体を製造することで、高キャリア移動度で高耐熱性及び高溶解性な有機半導体材料の製造に繋がるヘテロアセン誘導体を、効率よく選択的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、下記に示されることを特徴とするヘテロアセン誘導体の製造方法に関するものである。
触媒としてルイス酸の存在下、下記一般式(1)で示されるヘテロアセンと、下記一般式(2)で示されるハロゲン化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応を経て、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体を選択的に製造することを特徴とする、ヘテロアセン誘導体の製造方法。
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R3は、、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。T1及びT2は、それぞれ独立して硫黄原子、酸素原子又は下記一般式(5)で示される構造を示し、環Aは、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換又は未置換の縮合環を示す。ここで、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子(塩素、臭素、又はヨウ素)を示す。nは0〜20の整数を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体は、少なくとも触媒としてルイス酸の存在下、上記一般式(1)で示されるヘテロアセンと、上記一般式(2)で示されるハロゲン化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応を経て製造するものである。
ここで、本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体において、置換基R1及びR2における炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられ、その中でも特に高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基であることがさらに好ましい。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体において、置換基R3における炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、その中でも特に高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基であることがさらに好ましい。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体において、置換基R4及びR5における炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられ、その中でも特に高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基であることがさらに好ましい。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体において、高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、nが2以上10以下であることが好ましく、nが3以上6以下であることがさらに好ましい。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体において、環Aは、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換又は未置換の縮合環であり、この中でも、高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、環数が5以下の酸素原子又は硫黄原子を含む未置換の縮合環が好ましい。
本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法は、上記一般式(3)ヘテロアセン誘導体又は上記一般式(4)のヘテロアセン誘導体のいずれか一方を選択的に製造することができることを特徴とする。
本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法では、ルイス酸の添加量をハロゲン化アシル化合物1当量に対し1当量以下とすることで、上記一般式(3)のヘテロアセン誘導体を選択的に製造することができる。該フリーデルクラフツアシル化反応は、フリーデルクラフツアシル化反応を行うことができる条件であれば特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中で行うことができる。ハロゲン化アシル化合物の使用量は、効率よく一般式(3)のヘテロアセン誘導体を採取できるため、ヘテロアセン(1)1当量に対し1〜5当量が好ましい。
一方、本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法では、ルイス酸の添加量をハロゲン化アシル化合物1当量に対し1当量より多くすることで、上記一般式(4)のヘテロアセン誘導体を選択的に製造することができる。この場合において、より選択的にヘテロアセン誘導体(4)を製造するのに好適なため、ルイス酸の添加量はハロゲン化アシル化合物1当量に対し2当量以上とすることが好ましい。該フリーデルクラフツアシル化反応は、フリーデルクラフツアシル化反応を行うことができる条件であれば特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中で行うことができる。ハロゲン化アシル化合物の使用量は、効率よくヘテロアセン誘導体(4)を採取できるため、ヘテロアセン(1)1当量に対し2〜10当量が好ましい。
該ルイス酸としては特に制限はないが、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄、臭化鉄、塩化チタン、臭化チタン等が挙げられ、その中でも特に効率よく選択的に反応が進行するため、塩化アルミニウムが好ましい。
また、一般式(2)の該ハロゲン化アシル化合物は塩化物、臭化物又はヨウ化物であれば特に制限はないが、その中でも特に効率よく選択的に反応が進行するため、塩化物(一般式(2)におけるX=Cl)が好ましい。
さらに、本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法により製造されたヘテロアセン誘導体は、カラムクロマトグラフィー等に供することにより精製することができ、その際の分離剤としては特に制限はないが、例えば、シリカゲル、アルミナ等を挙げることができ、溶媒としては特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等を挙げることができる。なお、純度を測定する際には液体クロマトグラフィーにより分析することにより測定することが可能である。
本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法に用いられるヘテロアセンは一般式(1)で示されるものであり、その中でも高いキャリア移動度を得るため、以下の構造を有するヘテロアセンが好ましい。
本発明の上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示されるヘテロアセン誘導体の具体的例示としては、以下のものを挙げることができる。
そして、その中でも特に高キャリア移動度、高溶解性及び高耐熱性を同時に満たした有機半導体材料を製造するのに好適なため、2−メチルオキサリルジチエノベンゾジチオフェン、2−(メトキシカルボニル)アセチルジチエノベンゾジチオフェン、2−(3−メトキシカルボニル)プロパノイルジチエノベンゾジチオフェン、2−(4−メトキシカルボニル)ブタノイルジチエノベンゾジチオフェン、2−(5−メトキシカルボニル)ペンタノイルジチエノベンゾジチオフェン、2−メチルオキサリルジチエノベンゾジフラン、2−(メトキシカルボニル)アセチルジチエノベンゾジフラン、2−(3−メトキシカルボニル)プロパノイルジチエノベンゾジフラン、2−(4−メトキシカルボニル)ブタノイルジチエノベンゾジフラン、2−(5−メトキシカルボニル)ペンタノイルジチエノベンゾジフラン、2−メチルオキサリルジフロベンゾジフラン、2−(メトキシカルボニル)アセチルジフロベンゾジフラン、2−(3−メトキシカルボニル)プロパノイルジフロベンゾジフラン、2−(4−メトキシカルボニル)ブタノイルジフロベンゾジフラン、2−(5−メトキシカルボニル)ペンタノイルジフロベンゾジフラン、3−メチルオキサリルジベンゾチエノベンゾジチオフェン、3−(メトキシカルボニル)アセチルジベンゾチエノベンゾジチオフェン、3−(3−メトキシカルボニル)プロパノイルジベンゾチエノベンゾジチオフェン、3−(4−メトキシカルボニル)ブタノイルジベンゾチエノベンゾジチオフェン、3−(5−メトキシカルボニル)ペンタノイルジベンゾチエノベンゾジチオフェン、ビス(メチルオキサリル)ジチエノベンゾジチオフェン、ビス[(メトキシカルボニル)アセチル]ジチエノベンゾジチオフェン、ビス[(3−メトキシカルボニル)プロパノイル]ジチエノベンゾジチオフェン、ビス[(4−メトキシカルボニル)ブタノイル]ジチエノベンゾジチオフェン、ビス[(5−メトキシカルボニル)]ペンタノイルジチエノベンゾジチオフェン、ビス(メチルオキサリル)ジチエノベンゾジフラン、ビス[(メトキシカルボニル)アセチル]ジチエノベンゾジフラン、ビス[(3−メトキシカルボニル)プロパノイル]ジチエノベンゾジフラン、ビス[(4−メトキシカルボニル)ブタノイル]ジチエノベンゾジフラン、ビス[(5−メトキシカルボニル)]ペンタノイルジチエノベンゾジフラン、ビス(メチルオキサリル)ジフロベンゾジフラン、ビス[(メトキシカルボニル)アセチル]ジフロベンゾジフラン、ビス[(3−メトキシカルボニル)プロパノイル]ジフロベンゾジフラン、ビス[(4−メトキシカルボニル)ブタノイル]ジフロベンゾジフラン、ビス[(5−メトキシカルボニル)]ペンタノイルジフロベンゾジフラン、ビス(メチルオキサリル)ジベンゾチエノベンゾジチオフェン、ビス[(メトキシカルボニル)アセチル] ジベンゾチエノベンゾジチオフェン、ビス[(3−メトキシカルボニル)プロパノイル] ジベンゾチエノベンゾジチオフェン、ビス[(4−メトキシカルボニル)ブタノイル] ジベンゾチエノベンゾジチオフェン、ビス[(5−メトキシカルボニル)]ペンタノイルジベンゾチエノベンゾジチオフェンであることが好ましい。
本発明のヘテロアセン誘導体の製造方法で用いられる一般式(1)で示されるヘテロアセンは、如何なる方法により製造されたものであってもよい。そして、一般式(1)で示させるヘテロアセンの具体的な製造方法としては、例えば、以下のものを挙げることができる(ヘテロアセンの内、ジチエノベンゾチオフェン(一般式(7))、ジチエノベンゾフラン(一般式(10))、ジフロベンゾジフラン(一般式(13))、及びジベンゾチエノベンゾジチオフェン(一般式(15))の製造方法)。
該ヘテロアセンの内、R1及びR2が水素、T1及びT2が硫黄、環Aがベンゾジチオフェンである化合物、即ちジチエノベンゾジチオフェンの製造方法としては、該ジチエノベンゾジチオフェンを製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、ジチエノベンゾジチオフェンを製造する場合、下記(A)〜(B)の工程を経る製造方法により製造することができる。
(A)工程;パラジウム触媒の存在下、3−ハロチオフェン−2−亜鉛誘導体と1,2,4,5−テトラハロベンゼンから1,4−ジ(3−ハロチエニル)−2,5−ジハロベンゼン(下記一般式(6))を製造する方法。
(B)工程;硫化アルカリ金属塩の存在下、(A)工程により得られた1,4−ジ(3−ハロチエニル)−2,5−ジハロベンゼン(6)の分子内環化によりジチエノベンゾジチオフェン(下記一般式(7))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム1に示す。
ここで、反応スキーム1における(A)工程は、パラジウム触媒の存在下、3−ブロモチオフェン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼンのクロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモチエニル)−2,5−ジフルオロベンゼン(6)を製造する工程である。
反応スキーム1における(B)工程は、硫化ナトリウムの存在下、(A)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモチエニル)−2,5−ジフルオロベンゼン(6)の分子内環化によりジチエノベンゾジチオフェン(7)を製造する工程である。
ヘテロアセンの内、R1及びR2が水素、T1及びT2が酸素、環Aがベンゾジチオフェンである化合物、即ちジチエノベンゾジフランの製造方法としては、該ジチエノベンゾジフランを製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、ジチエノベンゾジフランを製造する場合、下記(C)〜(E)の工程を経る製造方法により製造することができる。
(C)工程;パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼン(下記一般式(8))を製造する工程。
(D)工程;(C)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼン(8)と硫化ナトリウムを用いたモノ分子内環化反応によりブロモハロモノ環化物(下記一般式(9))を製造する工程。
(E)工程;(D)工程により得られたブロモハロモノ環化物(9)をn−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる二つ目の環を形成させる方法でジチエノベンゾジフラン(下記一般式(10))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム2に示す。
ここで、反応スキーム2における(C)工程は、パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンのクロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジブロモベンゼン(8)を製造する工程である。
反応スキーム2における(D)工程は、(C)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジブロモベンゼン(8)と硫化ナトリウムを用いたモノ分子内環化反応によりジブロモモノ環化物(9)を製造する工程である。
反応スキーム2における(E)工程は、(D)工程により得られたジブロモモノ環化物(9)をn−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる環化反応に供し、ジチエノベンゾジフラン(10)を製造する工程である。
ヘテロアセンの内、R1及びR2が水素、T1及びT2が酸素、環Aがベンゾジフランである化合物、即ちジフロベンゾジフランの製造方法としては、該ジフロベンゾジフランを製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、ジフロベンゾジフランを製造する場合、下記(F)〜(H)の工程を経る製造方法により製造することができる。
(F)工程;パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼン(下記一般式(11))を製造する工程。
(G)工程;三臭化ホウ素の存在下、(F)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼン(11)の脱メチル化により1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(下記一般式(12))を製造する工程。
(H)工程;パラジウム触媒の存在下、(G)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(12)の分子内環化によりジフロベンゾジフラン(下記一般式(13))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム3に示す。
ここで、反応スキーム3における(F)工程は、前述の反応スキーム2の(C)工程と同様の反応条件で実施することができ、1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼン(11)を製造する工程である。
反応スキーム3における(G)工程は、三臭化ホウ素の存在下、(F)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼン(11)の脱メチル化により1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(12)を製造する工程である。
反応スキーム3における(H)工程は、パラジウム触媒の存在下、(G)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(12)の分子内環化によりジフロベンゾジフラン(13)を製造する工程である。
なお、該環化反応は、例えば、ジャーナル オブ オルガニック ケミストリィー(米国)、2007年、72巻、5119−5128頁に記載してある方法を用いて実施することもできる。
ヘテロアセンの内、R1及びR2が水素、T1及びT2が一般式(5)で表されかつR4及びR5が水素、環Aがジチエノベンゾジチオフェンである化合物、即ちジベンゾチエノベンゾジチオフェンの製造方法としては、該ジベンゾチエノベンゾジチオフェンを製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、ジベンゾチエノベンゾジチオフェンを製造する場合、下記(I)〜(J)の工程を経る製造方法により製造することができる。
(I)工程;パラジウム触媒の存在下、2、3−ジブロモベンゾチオフェン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングにより1,4−ビス(3−ブロモベンゾチエニル)−2,5−ジハロベンゼン(下記一般式(14))を製造する工程。
(J)工程;(I)工程により得られた1,4−ビス(3−ブロモベンゾチエニル)−2,5−ジハロベンゼン(14)をsec−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる分子内環化によりジベンゾチエノベンゾジチオフェン(下記一般式(15))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム4に示す。
ここで、反応スキーム4における(I)工程は、パラジウム触媒の存在下、2、3−ジブロモベンゾチオフェン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングにより1,4−ビス(3−ブロモベンゾチエニル)−2,5−ジブロモベンゼン(下記一般式(14))を製造する工程である。
反応スキーム4における(J)工程は、(I)工程により得られた1,4−ビス(3−ブロモベンゾチエニル)−2,5−ジブロモベンゼン(14)をsec−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる分子内環化によりジベンゾチエノベンゾジチオフェン(下記一般式(15))を製造する工程である。
本発明はヘテロアセン(1)からヘテロアセン誘導体を効率的かつ選択的に製造することを特徴とするものであって、本発明の製造方法により得られるヘテロアセン誘導体を用いて有機半導体材料の製造をする場合に、高いキャリア移動度を与えると共に、溶媒への溶解性及びトランジスタ素子の耐熱性に優れる有機半導体材料が製造されることを特徴とするものである。
例えば、本発明の製造方法により得られるR1及びR2が水素原子である上記一般式(3)のヘテロアセン誘導体の製造(下記(K)工程)を経て有機半導体材料を製造する場合、下記(K)〜(N)の工程を経る製造方法により、該有機半導体材料を製造することが可能である。
(K)工程;触媒としてルイス酸の存在下、ヘテロアセン(下記一般式(16))と第1のハロゲン化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのモノアシル体(ヘテロアセン誘導体、下記一般式(17))を製造する工程。
(L)工程;触媒としてルイス酸の存在下、(K)工程により得られたヘテロアセンのモノアシル体(17)と第2のハロゲン化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのジアシル体(下記一般式(18))を製造する工程。
(M)工程;(L)工程により得られたヘテロアセンのジアシル体(18)を還元反応に供し、ヘテロアセンのモノ(ヒドロキシアルキル)体(下記一般式(19))を製造する工程。
(N)工程;塩基存在下、(M)工程により得られたヘテロアセンのモノ(ヒドロキシアルキル)体(19)と、ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物又はヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとの反応により、有機半導体材料(下記一般式(20))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム5に示す。
(ここで、R3は、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R6は、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R7は、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子等のヘテロ原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。T1及びT2は、それぞれ独立して硫黄原子、酸素原子又は上記一般式(5)で示される構造を示し、環Aは、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換又は未置換の縮合環を示す。ここで、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。Yは、ハロゲン原子(塩素、臭素、又はヨウ素)又はトリフルオロメタンスルホナートを示す。nは0〜20の整数で示される。)
ここで、反応スキーム5における(K)工程は、触媒として塩化アルミニウムの存在下、ヘテロアセン(16)と第1の塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのモノアシル体(ヘテロアセン誘導体、(17))を製造する工程である。
該第1の塩化アシル化合物としては、例えば、2−メチルオキサリルクロリド、(メトキシカルボニル)塩化アセチル、3−(メトキシカルボニル)塩化プロパノイル、4−(メトキシカルボニル)塩化ブタノイル、5−(メトキシカルボニル)塩化ペンタノイル、6−(メトキシカルボニル)塩化ヘキサノイル、7−(メトキシカルボニル)塩化ヘプタノイル、8−(メトキシカルボニル)塩化オクタノイル等を挙げることができる。該フリーデルクラフツアシル化反応は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中で行うことができる。塩化アシル化合物の使用量は、効率よくヘテロアセンのモノアシル体(17)を採取できるため、ヘテロアセン(16)1当量に対し1〜5当量が好ましい。
反応スキーム5における(L)工程は、触媒として塩化アルミニウムの存在下、(K)工程により得られたヘテロアセンのモノアシル体(17)と第2の塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのジアシル体(18)を製造する工程である。
該第2の塩化アシル化合物としては、例えば、塩化ペンタノイル、塩化ヘキサノイル、塩化ヘプタノイル、塩化オクタノイル等を挙げることができる。
反応スキーム5における(M)工程は、(L)工程により得られたヘテロアセンのジアシル体(18)を還元反応に供し、ヘテロアセンのモノ(ヒドロキシアルキル)体(19)を製造する工程である。
ヘテロアセンのジアシル体の還元反応は、例えば、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム/塩化アルミニウムを用いた反応等を挙げることができる。
反応スキーム5における(N)工程は、塩基存在下、(M)工程により得られたヘテロアセンのモノ(ヒドロキシアルキル)体(19)と、ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物又はヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとの反応により、有機半導体材料(20)を製造する工程である。
該塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、2,6−ルチジン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ノルマルブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。
該ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物としては、例えば、メトキシメチルクロリド、メトキシエチルクロリド、エトキシメチルクロリド、プロポキシメチルクロリド、メチルチオメチルクロリド、メチルチオエチルクロリド、エチルチオメチルクロリド、プロピルチオメチルクロリド、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルクロリド、ターシャリーブチルジメチルシリルクロリド、ターシャリーブチルジフェニルシリルクロリド等を挙げることができる。また、該ヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとしては、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリイソプロピルトリフルオロメタンスルホナート、ターシャリーブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、ターシャリーブチルジフェニルシリルトリフルオロメタンスルホナート等を挙げることができる。
また、例えば、本発明の製造方法により得られるR1及びR2が水素原子である上記一般式(4)のヘテロアセン誘導体の製造(下記(O)工程)を経て有機半導体材料を製造する場合、下記(O)〜(Q)の工程を経る製造方法により、該有機半導体材料を製造することが可能である。
(O)工程;触媒としてルイス酸の存在下、ヘテロアセン(下記一般式(16))とハロゲン化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのジアシル体(ヘテロアセン誘導体、下記一般式(21))を製造する工程。
(P)工程;(O)工程により得られたヘテロアセンのジアシル体(21)を還元反応に供し、ヘテロアセンのジ(ヒドロキシアルキル)体(下記一般式(22))を製造する工程。
(Q)工程;塩基存在下、(P)工程により得られたヘテロアセンのジ(ヒドロキシアルキル)体(22)と、ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物又はヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとの反応により、有機半導体材料(下記一般式(23))を製造する工程。
具体的な製造方法を以下の反応スキーム6に示す。
(ここで、R3は、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R7は、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子等のヘテロ原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。T1及びT2は、それぞれ独立して硫黄原子、酸素原子又は上記一般式(5)で示される構造を示し、環Aは、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換又は未置換の縮合環を示す。ここで、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。Yは、ハロゲン原子(塩素、臭素、又はヨウ素)又はトリフルオロメタンスルホナートを示す。nは0〜20の整数で示される。)
ここで、反応スキーム6における(O)工程は、触媒として塩化アルミニウムの存在下、ヘテロアセン(16)と塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ヘテロアセンのジアシル体(ヘテロアセン誘導体、(21))を製造する工程である。
該塩化アシル化合物としては、例えば、2−メチルオキサリルクロリド、(メトキシカルボニル)塩化アセチル、3−(メトキシカルボニル)塩化プロパノイル、4−(メトキシカルボニル)塩化ブタノイル、5−(メトキシカルボニル)塩化ペンタノイル、6−(メトキシカルボニル)塩化ヘキサノイル、7−(メトキシカルボニル)塩化ヘプタノイル、8−(メトキシカルボニル)塩化オクタノイル等を挙げることができる。該フリーデルクラフツアシル化反応は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中で行うことができる。塩化アシル化合物の使用量は、効率よくヘテロアセンのジアシル体(21)を採取できるため、ヘテロアセン(16)1当量に対し2〜10当量が好ましい。
反応スキーム6における(P)工程は、ヘテロアセンのジアシル体(21)を還元反応に供し、ヘテロアセンのジ(ヒドロキシアルキル)体(22)を製造する工程である。
ヘテロアセンのジアシル体(21)の還元反応は、例えば、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム/塩化アルミニウムを用いた反応等を挙げることができる。
反応スキーム6における(Q)工程は、塩基存在下、(P)工程により得られたヘテロアセンのジ(ヒドロキシアルキル)体(22)と、ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物又はヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとの反応により、有機半導体材料(23)を製造する工程である。
該塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、2,6−ルチジン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ノルマルブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。
該ヘテロ原子含有炭化水素ハロゲン化物としては、例えば、メトキシメチルクロリド、メトキシエチルクロリド、エトキシメチルクロリド、プロポキシメチルクロリド、メチルチオメチルクロリド、メチルチオエチルクロリド、エチルチオメチルクロリド、プロピルチオメチルクロリド、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルクロリド、ターシャリーブチルジメチルシリルクロリド、ターシャリーブチルジフェニルシリルクロリド等を挙げることができる。また、該ヘテロ原子含有炭化水素トリフルオロメタンスルホナートとしては、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリイソプロピルトリフルオロメタンスルホナート、ターシャリーブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、ターシャリーブチルジフェニルシリルトリフルオロメタンスルホナート等を挙げることができる。
本発明の製造方法により得られるヘテロアセン誘導体を用いて得られる有機半導体材料は、溶媒に容易に溶解するため、ドロップキャスト等の方法等により製膜することで、高いキャリア移動度の期待できる有機半導体層を製造することができる。該有機半導体層は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)用、圧力センサー等のトランジスタの有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができる。