以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明や各図において、同一要素または同一機能を有する要素には同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
<1.第1の実施の形態>
[画像形成装置の構成例]
まず、本発明が適用される画像形成装置の概要について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明が適用される画像形成装置の一例を示す全体構成図である。図1に示す構成は本発明の定着装置が適用される画像形成装置の一例であって、画像形成装置の構成はこれに限定されない。
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、原稿搬送部10と、用紙収納部20と、画像読取部30と、画像形成部40と、中間転写ベルト50と、2次転写部70と、定着ユニット80とを有する。
原稿搬送部10は、原稿Gがセットされる原稿給紙台11と、複数のローラ12と、搬送ドラム13と、搬送ガイド14と、原稿排出ローラ15と、原稿排出トレイ16とを有している。原稿給紙台11にセットされた原稿Gは、複数のローラ12及び搬送ドラム13によって、画像読取部30の読取位置に1枚ずつ搬送される。搬送ガイド14及び原稿排出ローラ15は、複数のローラ12及び搬送ドラム13により搬送された原稿Gを原稿排出トレイ16に排出する。
画像読取部30は、原稿搬送部10により搬送された原稿G又は原稿台31に載置された原稿の画像を読み取って、画像データを生成する。具体的には、原稿Gの画像がランプLによって照射される。原稿Gからの反射光は、第1ミラーユニット32、第2ミラーユニット33、レンズユニット34の順に導かれて、撮像素子35の受光面に結像する。撮像素子35は、入射した光を光電変換して所定の画像信号を出力する。出力された画像信号は、A/D変換されることにより画像データとして作成される。
また、画像読取部30は、画像読取制御部36を有している。画像読取制御部36は、A/D変換によって作成された画像データに、シェーディング補正やディザ処理、圧縮等の処理を施して、制御部100のRAM103(図15参照)に格納する。なお、画像データは、画像読取部30から出力されるデータに限定されず、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータや他の画像形成装置などの外部装置から受信したものであってもよい。
用紙収納部20は、装置本体の下部に配置されており、用紙のサイズや種類に応じて複数設けられている。この用紙は、給紙部21により給紙されて搬送部23に送られ、搬送部23によって転写位置を有する2次転写部70に搬送される。つまり、搬送部23は、給紙部21から給紙された用紙を2次転写部70へ搬送する機能を果たし、用紙を搬送する搬送経路を形成している。また、用紙収納部20の近傍には、手差部22が設けられている。この手差部22からは、用紙収納部20に収納されていないサイズの用紙やタグを有するタグ紙、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。図1においては、給紙部21により給紙される用紙にSの符号を付している。
画像読取部30と用紙収納部20との間には、画像形成部40と、中間転写ベルト50が配置されている。画像形成部40は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー画像を形成するために、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。
第1の画像形成ユニット40Yは、イエローのトナー画像を形成し、第2の画像形成ユニット40Mは、マゼンタのトナー画像を形成する。また、第3の画像形成ユニット40Cは、シアンのトナー画像を形成し、第4の画像形成ユニット40Kは、ブラックのトナー画像を形成する。これら4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは第1の画像形成ユニット40Yについて説明する。
第1の画像形成ユニット40Yは、ドラム状の感光体41と、感光体41の周囲に配置された帯電部42と、露光部43と、現像部44と、クリーニング部45を有している。感光体41は、不図示の駆動モータによって回転する。帯電部42は、感光体41に電荷を与え感光体41の表面を一様に帯電する。露光部43は、画像読取部30により生成された画像データ又は外部装置から送信された画像データに基づいて、感光体41の表面に対して露光走査を行うことにより感光体41上に静電潜像を形成する。
現像部44は、例えばトナーとキャリアからなる2成分現像剤を用いて、感光体41に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体41の表面は、イエローのトナー画像が形成される。
なお、第2の画像形成ユニット40Mの現像部44は、感光体41にマゼンタのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット40Cの現像部44は、感光体41にシアンのトナーを付着させる。そして、第4の画像形成ユニット40Kの現像部44は、感光体41にブラックのトナーを付着させる。
感光体41上に形成されたトナー画像は、像担持体の一例である中間転写ベルト50に転写される。中間転写ベルト50は、無端状に形成されており、複数のローラに掛け渡されている。この中間転写ベルト50は、不図示の駆動モータで感光体41の回転(移動)方向とは逆方向に回転駆動する。
クリーニング部45は、トナー画像が中間転写ベルト50に転写された後に、感光体41の表面に残留しているトナーを除去する。
中間転写ベルト50における各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41と対向する位置には、1次転写部51が設けられている。この1次転写部51は、中間転写ベルト50にトナーと反対の極性の電圧を印加することで、感光体41上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト50に1次転写する。
そして、中間転写ベルト50が回転駆動することで、中間転写ベルト50の表面には、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで形成されたトナー画像が順次転写される。これにより、中間転写ベルト50上には、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー画像が重なり合いカラーのトナー画像が形成される。
また、中間転写ベルト50には、ベルトクリーニング装置53が対向している。このベルトクリーニング装置53は、用紙へのトナー画像の転写を終えた中間転写ベルト50の表面を清掃する。
中間転写ベルト50の近傍で、かつ搬送部23の用紙搬送方向(通紙方向)の下流側には、2次転写部70が配置されている。2次転写部70は、搬送されてくる用紙を中間転写ベルト50に接触させて、中間転写ベルト50の外周面上に形成されたトナー画像を用紙に2次転写する。2次転写部70は、2次転写ローラ71を有している。2次転写ローラ71は、中間転写ベルト50を挟んで対向ローラ52に圧接されている。2次転写ローラ71と中間転写ベルト50が接触する部分は、2次転写ニップ部となる。この2次転写ニップ部が、中間転写ベルト50の外周面上に形成されたトナー画像を用紙Sに転写する転写位置である。
2次転写部70における用紙の排出側には、定着ユニット80が設けられている。この定着ユニット80は、用紙を加圧及び加熱して、転写されたトナー画像を用紙Sに定着させる。定着ユニット80は、加熱部材と加圧部材を収容する。加熱部材は、回転部材である加熱ローラ82および上加圧ローラ83と、その2つのローラ(以下「ローラ対」とも称する。)に張架されて循環駆動される無端状の定着ベルト81とで構成される。定着ベルト81は、耐熱仕様である。加圧部材は、回転可能に設けられた下加圧ローラ84からなる。加熱ローラ82、上加圧ローラ83、および下加圧ローラ84は、定着ローラの一例である。下加圧ローラ84は、定着ベルト81に圧接して定着ニップ部を形成する。加熱ローラ82は、図2に示すように定着ベルト81を加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ82Aを内蔵している。さらに下加圧ローラ84も用紙Sを加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ84Aを内蔵している。
用紙Sは、2次転写部70によりトナー画像が転写された面(定着対象面)が定着ベルト81を介して上加圧ローラ83と向き合うように搬送され、定着ニップ部を通過する。このとき、定着ニップ部を通過する用紙には、上加圧ローラ83と下加圧ローラ84とによる加圧と、定着ベルト81及び下加圧ローラ84の熱による加熱(熱定着)が行われる。
定着ユニット80は、台板89の上に配置されている。揺動機構90により台板89が用紙搬送方向と直交する用紙幅方向(ベルト幅方向)に移動することで、定着ユニット80が揺動する。揺動機構90の構成については後で詳述する(図3参照)。定着ユニット80の構成は一例であって、この例に限られない。例えば、定着ベルト81が、加熱ローラ82および上加圧ローラ83の2つのローラに張架されているが、定着ベルト81が3以上のローラに張架されてもよい。
定着ユニット80の用紙搬送方向の下流側には、切換ゲート24が配置されている。切換ゲート24は、定着ユニット80を通過した用紙の搬送路を切り換える。すなわち、切換ゲート24は、片面画像形成における画像形成面を上方に向けて排紙するフェースアップ排紙を行う場合に、用紙を直進させる。これにより、用紙は、一対の排紙ローラ25によって排紙される。また、切換ゲート24は、片面画像形成における画像形成面を下方に向けて排紙するフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、用紙を下方に案内する。
フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート24によって用紙を下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転して上方に搬送する。これにより、表裏が反転されて画像形成面が下方に向いた用紙は、一対の排紙ローラ25によって排紙される。
両面画像形成を行う場合は、切換ゲート24によって用紙を下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転し、再給紙路27により再び2次転写部70の転写位置へ送られる。
一対の排紙ローラ25の下流側に、用紙を折ったり、用紙に対してステープル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
[揺動機構の概要]
次に、定着ユニット80を揺動するための揺動機構90について、図3を用いて説明する。図3の定着ユニット80、台板89および揺動機構90は、定着装置の一例である。
図3は、揺動機構90の概略を示す構成図であり、2次転写部70側から見た状態を模式的に表している。揺動機構90は、支持部92A,92Bおよび支持部92C(図4参照)を用いて定着ユニット80を支持する支持ユニット91と、支軸93aに取り付けられて該支軸93aの回転に従って回転駆動するカム93とを備える。揺動機構90は、モータ等の不図示の駆動部を備え、支軸93aはその駆動部の動力が伝達されることで回転駆動する。支持部92A〜92Cとしては、台板89との摩擦を小さくするために例えば車輪もしくはコロ等の回転体が用いられる。一般に、定着ユニットは、3点で支えられる。定着ユニット80を支持部92A〜92Cの3点で支持することにより、定着ユニット80(定着ローラ)の平行度を管理し、部品(定着ユニット80の底面、台板89、支持ユニット91等)の形状のばらつきを極力排除する。
支軸93aは、支持ユニット91の主面(上面)91aに平行であって図1に示した画像形成装置1の左右方向に延在する。カム93は、この支軸93aの両端部等、少なくとも2箇所に設けられることが望ましい。定着ユニット80の下部には、カム93を挟むようにして該カム93と摺接する2つの摺接部94A,94Bが設けられている。図3に示すカム93は円形の板カム(平面カム)であるが、ハート形など、定着ユニット80の揺動の動きに応じて種々のカム構造を採り得る。
支持ユニット91に設けられたカム93の位置(回転角度)によって支軸93aと摺接部94Aとの距離、および支軸93aと摺接部94Bとの距離が変化し、支持ユニット91に対する定着ユニット80の位置が変化する。すなわち、定着ユニット80全体が、カム93の回転駆動に応じて、搬送される用紙Sの搬送方向と直交する矢印で示すベルト幅方向に揺動する。
[定着揺動と定着ユニットの歪み]
次に、定着揺動と定着ユニット80の歪みについて、図4および図5を用いて説明する。
図4は、定着揺動と定着ユニット80の歪みとの関係を示す概略平面図であり、定着ユニット80の底面側から支持ユニット91の方向を見た場合のイメージである。図4Aは定着ユニット80が基準位置にあるときの定着ユニットと揺動機構との位置関係を示し、図4Bは定着揺動後の定着ユニットと揺動機構との位置関係を示す。
図4Aに示すように、定着ユニット80の重心が基準位置HPにあるときは、支持ユニット91の支持部92A〜92Cが定着ユニット80を安定した状態で支持している。基準位置HP(ホームポジション)上は、定着ユニット80がベルト幅方向に移動していないときの位置、即ち揺動量がゼロの位置である。安定の三角形92Tは、支持部92A〜92Cにより定着ユニット80を安定して支持できるポイントを表している。即ち、定着ユニット80が載置される台板89の下面と支持部92A〜92Cとが当接する位置が、安定の三角形92Tの3つの頂点と一致すれば、定着ユニット80の姿勢は安定する。基本的には、台板89の下面に3個の支持部92A〜92Cが当接しているときに定着ユニット80の姿勢が安定し、定着ベルト81を張架する加熱ローラ82と上加圧ローラ83との平行度が保たれる。
しかし、図4Bに示すように、定着ユニット80が画像形成装置1の正面側(手前側)へ移動した場合に、支持部92A〜92Cが安定の三角形92Tの3つの頂点から外れることで、支持部92A〜92Cは定着ユニット80の姿勢を安定した状態で支持できなくなる。支持部92A〜92Cの重心に対する定着ユニット80の重心の位置がずれることで、台板89および定着ユニット80が傾き、台板89および定着ユニット80の筐体に歪み(以下、単に「定着ユニット80の歪み」と記述する)が発生する。それにより、定着ユニット80内の加熱ローラ82と上加圧ローラ83との平行度にずれが生じる。その結果、定着ベルト81が2本のローラの一方へ片寄る「寄り」が発生する。なお、画像形成装置1の正面側とは、用紙収納部20を出し入れする際に開閉される正面扉が設置された側である。
図5は、定着揺動により歪みが生じた状態の定着ユニット80を示す概略斜視図である。
図5に示すように、定着ユニット80を画像形成装置1の正面側(手前側)へ揺動すると、定着ユニット80の底面の手前側であって、かつ一つの支持部92C(図4B)が設けられた用紙搬送方向の上流側に位置するポイント95F付近の領域が垂れるようにして、定着ユニット80が傾く。それにより、定着ユニット80の筐体がねじれるような歪みが発生する。このような歪みが発生することで、定着ユニット80内の加熱ローラ82と上加圧ローラ83の平行度がずれる。
逆に、定着ユニット80を画像形成装置1の背面側(奥側)へ揺動したときには、定着ユニット80の底面の奥側であって、かつ支持部92Cが設けられた用紙搬送方向の上流側に位置するポイント95R付近の領域が垂れるようにして、定着ユニット80が傾く。ポイント95F(95R)は、後述する補助支持部130F(130R)の上端部が台板89の下面に当接して台板89(定着ユニット80の底面)を部分的に持ち上げる位置である。
図6は、定着揺動と定着ユニット80の歪みとの関係を示す概略側面図である。図6Aは定着ユニット80が基準位置にあるときの定着ユニット80の状態を示し、図6Bは定着ユニット80を手前側に移動したときの定着ユニット80の状態を示し、さらに図6Cは定着ユニット80を奥側に移動したときの定着ユニット80の状態を示す。
定着ユニット80が基準位置HPにあるときは定着ユニット80の重心は移動せず、3点の支持部92A〜92Cが定着ユニット80(台板89)を支持するため、定着ユニット80は安定した姿勢を維持している(図6A)。
定着ユニット80を画像形成装置1の手前側へ揺動した場合には、定着ユニット80の重心が手前側に移動する。それにより、手前側の支持部92B,92Cにかかる荷重が大きくなるとともに奥側の支持部92Aにかかる荷重が小さくなる。そのため、台板89および定着ユニット80の手前側が垂れるようにして定着ユニット80が傾き、定着ユニット80の筐体に歪みが発生する(図6B)。
定着ユニット80を画像形成装置1の奥側へ揺動した場合には、定着ユニット80の重心が奥側に移動する。それにより、手前側の場合と同様に、台板89および定着ユニット80の奥側が垂れるようにして定着ユニット80が傾き、定着ユニット80の筐体に歪みが発生する(図6C)。
[定着ローラの平行度ずれと高さ調整]
次に、定着揺動により発生する定着ユニット80内の定着ローラの平行度ずれと定着ユニット80の底面の高さ調整方法について、図7〜図11を参照して説明する。ここでは、定着ユニット80を手前側に移動させた場合を例に説明する。
図7は、定着ユニットが基準位置にあるときの定着ユニット内の定着ローラの状態を示す概略側面図である。図8は、定着ユニットを手前側に移動したときの定着ユニット内の定着ローラの状態を示す概略側面図である。図9は、定着ユニットを手前側に移動した後で定着ユニットの台板(底面)の高さを調整した状態を示す概略側面図である。
図10は、定着揺動と定着ローラの平行度ずれとの関係を示す概略正面図であり、図10Aは定着ユニットが基準位置にあるときの定着ローラの状態を示し、図10Bは定着ユニットを手前側に移動したときの定着ローラの平行度ずれを示す。図11は、定着揺動と定着ローラの平行度ずれとの関係を示す概略正面図であり、図11Aは定着ユニットを手前側に移動したときの定着ローラの平行度ずれを示し、図11Bは定着ユニットの台板(底面)の高さを調整した後の定着ローラの状態を示す。
図7および図10Aに示すように、定着ユニット80が基準位置にある場合には、定着ユニット80に歪みが発生せず、定着ローラ(加熱ローラ82、上加圧ローラ83、下加圧ローラ84)の平行度が保たれている。このとき、図10Aに示すように、定着ローラの端部を軸支する、定着ユニット80の手前側パネル85および奥側パネル86に歪みは発生していない。図10Aでは、説明の都合上、手前側パネル85と奥側パネル86を僅かにずらして記載している。
図7に示すように、定着ユニット80の下側であって、支持ユニット91の手前側および奥側のそれぞれに、補助支持部130Fおよび補助支持部130Rが設けられている。補助支持部130F,130Rは、定着揺動による定着ユニット80の歪み(定着ローラの平行度ずれ)に応じて、定着ユニット80の底面に垂直な方向(上下方向)に移動し、底面と接離する。そして、定着ユニット80の底面の高さを調整する場合には、補助支持部130F,130Rの上端部が台板89に当接して該底面を部分的に持ち上げる。それにより、台板89の高さ方向の位置が部分的に変わり、台板89ひいては定着ユニット80の底面の平面度が調整される。
補助支持部130F,130Rは、定着ユニット80が揺動することによってその定着ユニット80の底面(台板89)が基準面(基準の高さ)よりも下がる領域と対応するように配置される。基準面とは、定着ユニット80が揺動しないとき即ち基準位置HP(図7)にあるときの定着ユニット80の底面(台板89)を含む平面であり、この基準面を基準の高さとする。
図4に示す3個の支持部92A〜92Cを用いた場合には、定着ユニット80は、手前側かつ一つの支持部92C(図4B)が設けられた用紙搬送方向の上流側に該当する領域が垂れやすい。同様にして、定着ユニット80は、底面の奥側かつ一つの支持部92Cが設けられた用紙搬送方向の上流側に該当する領域が垂れやすい。よって、手前側のポイント95Fの位置に補助支持部130Fを配置し、奥側のポイント95Rに対応する位置に補助支持部130Rを配置する。
さらに、補助支持部130F,130Rを定着ユニット80の揺動範囲であって基準位置から極力離れた位置に配置することで、梃子の原理を利用して効率よく定着ユニット80を持ち上げることができる。なお、本実施の形態では、補助支持部130F,130Rの上端を台板89の下面に当接させて定着ユニット80の底面の高さ調整をしているが、台板89を省略し、補助支持部130F,130Rの上端が定着ユニット80の底面に直接当接するように構成してもよい。
図8に示すように、定着ユニット80が画像形成装置1の手前側へ移動した場合には、定着ユニット80の手前側が垂れるようにして台板89および定着ユニット80が傾くことにより、定着ユニット80を支える台板89の平面度が変化する。その結果、定着ユニット80の底面が歪み、定着ユニット80の手前側パネル85と奥側パネル86にねじれが発生する。図10Bの下図に示すように、定着ユニット80を手前側(ローラ軸方向)から見ると、定着ユニット80の手前側パネル85が用紙搬送方向の上流側に傾くとともに、奥側パネル86が用紙搬送方向の下流側に傾く。そのため、手前側パネル85および奥側パネル86に軸支された定着ローラ(加熱ローラ82と上加圧ローラ83等)の平行度にずれが生じる(図10Bの上図および下図)。図10Bの下図では、定着ローラに平行度ずれが生じているために、定着ユニット80を手前側から見たときに、定着ローラを構成する各ローラの手前側と奥側の端面が一致していない。
図8および図11Aに示す定着ユニット80の歪みを補正するため、図9および図11Bの下図に示すように、補助支持部130Fを上昇させて、定着ユニット80を載置する台板89の、定着ユニット80が垂れた部分に対応する箇所(矢印部分)を押し上げる。ここで、台板89の平面変化により発生した定着ユニット80のねじれを吸収するように、台板89(定着ユニット80の底面)を持ち上げる。即ち図9および図11Bの下図に示すように、定着ユニット80を揺動による歪みの方向とは逆方向に意図的に歪ませることで、台板89および定着ユニット80の底面の高さ(平面度)を部分的に調整し、定着ローラの平行度を補正する。図11Bの下図では、台板89即ち定着ユニット80の底面の高さを部分的に調整した結果、定着ユニット80の手前側パネル85が用紙搬送方向の下流側へ傾いているが、奥側パネル86はほぼ元の状態に戻っている。最終的には定着ローラの平行度が補正されていればよく、補助支持部130Fにより台板89を持ち上げた後における手前側パネル85と奥側パネル86の位置(両パネルの傾き)はこの例に限られない。
上述したように定着揺動により、支持部92A〜92Cの台板89を支持する位置が、安定の三角形92T(図4)の頂点から外れる。定着ユニット80のベルト幅方向の位置(揺動量)により、支持部92A〜92Cの台板89に対する支持位置と安定の三角形92T(図4)の頂点とのずれ量が変わるために、台板89および定着ユニット80の歪み量も変化する。したがって、高さ調整後の台板89は、必ずしも支持部92A〜92Cと同一平面となるわけではなく、また支持部92A〜92Cの3点で支持されるとは限らない。その場合、支持部92A〜92Cのうちの2点と、補助支持部130F,130Rのいずれかを用いて、台板89を支持することになる。その際、定着揺動によって定着ユニット80のバランスが崩れるため、単純に台板89(定着ユニット80の底面)を平坦にすればよいわけではなく、後述する高さ調整テーブルに基づいて部分的に台板89の高さ方向の位置を変える必要がある。台板89を部分的に持ち上げ、定着ユニット80の筐体を積極的にねじらせることで、定着ローラの平行度を補正することができる。
図3の例では、支持部92A〜92Cが定着ユニット80を支える台板89に当接することで定着ユニット80を支持していたが、支持部92A〜92Cが定着ユニット80の底面(底板)に直接当接して定着ユニット80を支持する構成としてもよい。例えば、定着ユニット80の底板と台板89をピン又はボルトなどの固定手段によって固定し、支持部92A〜92Cの3点で定着ユニット80の底面を直接支持するとともに、台板89がカム93と連動してベルト幅方向に揺動する構成とする。定着ユニット80は台板89ごと移動する。台板89には、定着ユニット80の底面に当接する支持部92A〜92Cを案内する(及び逃がす)ための貫通孔がベルト幅方向に形成される。この場合も、定着ユニット80の底板及び台板89と支持部92A〜92Cとの相対位置が変わる。
(支持部が4個以上ある場合)
本実施の形態では、定着ユニット80を載置する台板89を3点の支持部92A〜92Cで支持する例を説明したが、この例に限定されない。例えば、台板89を4個以上の支持部で支持する場合であっても、実際に定着ユニット80の重心(平面度)の管理に寄与する支持位置は、3点に集約されることが多い。したがって、4個以上の支持部のうち定着ユニット80の重心を管理する3個の支持部と定着ユニット80の重心との位置関係が重要になる。歪みの方向(定着ユニット80の底面が垂れる領域)と対応する個所に、補助支持部130F,130Rを配置すればよい。また、仮に定着ユニット80の重心を管理する支持部が4個ある場合であっても、4個の支持部を結ぶ四角形と定着ユニット80の重心との位置関係によって歪みの方向がわかるので、この歪みの方向に対応する個所に補助支持部130F,130Rを配置すればよい。
[補助支持部の構成]
図12は、補助支持部130F,130Rの概要を示す説明図である。
図12の左図および右図に示すように、補助支持部130Fは、基本構成として、例えばカム131と、シャフト132と、台板89の下面に当接する当接部133とを備える。カム131の偏心を利用した直線運動がシャフト132を介して当接部133に伝達される。即ち、カム131が回転することで、当接部133が上下(高さ方向)に移動し、台板89における当接部133と当接する部分の高さが可変する。補助支持部130Rも同様の構成である。
図13は、補助支持部130F,130Rの詳細を示す説明図である。図13Aは補助支持部の詳細を説明する正面図であり、図13Bは補助支持部の詳細を説明する側面図である。
図13A及び図13Bに示す補助支持部130F,130Rは、図12に示す補助支持部130Fの構成に、更にベアリング等の回転体134と、当接部133Aを備える。カム131の回転軸とモータ135の駆動軸がシャフト131aにより連結されており、モータ135の回転駆動がシャフト131aを介してカム131に伝達される。カム131の上方には、カム131の外周部に回転体134が接した状態で配置されている。シャフト131aを回転軸としてカム131が回転すると、カム131の回転軸と回転体134の回転軸との距離が変化し、回転体134に上下方向(高さ方向)の力が加わる。回転体134はカム131の外周部との摩擦に応じて回転する。カム131の回転に応じて回転体134に加えられた上下方向の力は、シャフト132を介して当接部133Aに伝達される。これにより、当接部133Aが上下方向に移動し、当接部133Aの上端と当接する台板89の高さ方向の位置が可変する(図12も参照)。
当接部133Aには、例えばベアリング等の摺動抵抗低減機構が用いられる。当接部133Aに摺動抵抗低減機構が用いることで、定着ユニット80の揺動動作と定着ユニット80の底面(台板89)の高さ調整とを並行して実施する場合に、台板89と当接部133Aとの摺動抵抗を低減することができる。なお、図13の例では、カム131の外周部とシャフト132との摺動抵抗を低減するために回転体134を設けたが、摺動抵抗が所定のしきい値よりも小さい場合にはこれを削除してもよい。
なお、図12および図13では、補助支持部130F,130Rにカム機構を採用したが、例えばラック・アンド・ピニオン機構を用いてもよい。駆動モータにより、ラック・アンド・ピニオン機構のピニオンを正逆方向に回転させることで、当接部を上下方向に移動させる。
[補助支持部の動作]
補助支持部130F,130Rは、定着ユニット80の揺動動作時に台板89から離間しない場合と、離間する場合とに分けられる。
(定着揺動時に台板89から離間しない場合)
補助支持部130F,130Rは、定着ユニット80の揺動動作と連動して、その当接部の高さ方向の位置が変わることが特徴である。この場合、現状の揺動動作と同期して台板89(定着ユニット80の底面)の高さ方向の位置を変えることができるため、現状の紙間制御の時間内で、定着ローラの平行度の補正動作を完了できる。
ただし、補助支持部130F,130Rの当接部と台板89が常に接触しながら揺動する(かつ当接部の高さ方向の位置が変わる)ため、ベアリング等の摺動抵抗を低減する機構(例えば当接部133A)が必要になる。
また、定着ユニット80が基準位置HP(図4)にあるときは、3個の支持部92A〜92Cによる同一平面での適正な支持を確実に実施するため、補助支持部130F,130Rが台板89から離間する必要がある。
(定着揺動時に台板89から離間する場合)
補助支持部130F,130Rは、定着ユニット80の揺動動作の前に台板89から離間し、揺動動作の実施後、高さ調整テーブルに基づき台板89の高さを適正な位置に変えることが特徴である。この場合、揺動動作時は補助支持部130F,130Rが台板89から離間しているため、摺動抵抗は生じない。また、当接部にベアリング等の摺動抵抗低減機構も不要である。ただし、用紙間において現状の揺動動作に加えて、補助支持部130F,130Rを台板89に切離する動作が入るため、動作時間の合計が増える。
[定着揺動と補助支持部の高さとの関係]
図14は、定着揺動と補助支持部130F,130Rの高さ方向の位置との関係を示すグラフである。図14の上図は、定着揺動の動きとプリント数との関係の一例を示すグラフであり、横軸はプリント数、縦軸は定着ユニット80の変位(変位方向と変位量)を表している。また、図14の下図は、補助支持部130F,130Rの高さ方向の位置とプリント数との関係の一例を示すグラフであり、横軸はプリント数、縦軸は補助支持部130F,130R(当接部)の高さを表している。
図14に示すように、定着ユニット80がベルト幅方向における手前側に変位する場合には(上図)、手前側に設けた補助支持部130F(図9)の高さが上昇する(下図の一点鎖線)。逆に、定着ユニット80がベルト幅方向における奥側に変位する場合には(上図)、奥側に設けた補助支持部130Rの高さが上昇する(下図の実線)。
そして、定着ユニット80が基準位置HP(図3)にある又は基準位置HP付近にあってほとんど変位しない場合には、手前側の補助支持部130Fおよび奥側の補助支持部130Rはともに、台板89と接触しないよう基準面より下側の高さ(ホームポジション;HP)に制御される。定着ユニット80が基準位置HPとその付近にあるときは、定着ローラの平行度の調整が不要であり、補助支持部130F,130Rを台板89と接触させないように制御することで、揺動時における摺動抵抗の発生を防止できる。
定着ユニット80の揺動時に補助支持部が台板89から離間する構成においても、図14に示すように定着ユニット80が基準位置HP又はその付近にある場合には、実質的な歪みが発生せず支持部92A〜92Cの3点支持により定着ユニット80が安定するため、補助支持部は揺動時に限らず離間し続ける。このようにした場合、補助支持部の接離動作が簡単になり、制御部100の処理負荷が軽減される。また、定着ユニット80が基準位置HP又はその付近にあるときは、揺動動作をしない又は揺動距離が短いことから、補助支持部が離間動作を行っても生産性が下がらない。
本実施の形態では、図14に示す定着ユニット80の変位情報(変位方向と変位量)と補助支持部130F,130Rの高さ方向の位置との対応関係を、高さ調整テーブルに格納して後述するROM102等に保存しておく。そして、後述する制御部100(図15参照)は、定着ユニット80の変位情報を取得し、変位情報に対応する補助支持部130F,130Rの高さを高さ調整テーブルから読み出し、定着ローラ(加熱ローラ82と上加圧ローラ83等)の平行度の調整にフィードバックすることで、定着ローラの平行度ずれを補正する。ただし、図14に示すようなプロファイルデータを、ROM102等に保存し、定着ローラの平行度の調整に利用してもよい。
[高さ調整テーブルを生成する手順]
ここで、定着ユニット80の変位情報と補助支持部の高さ方向の位置との対応関係を格納する高さ調整テーブルを生成する手順を説明する。
まず、任意の試験装置内に、定着ユニット80、台板89および揺動機構90を設置するとともに、不図示の揺動検知センサ、歪み量検知センサ、および定着ローラ(例えば加熱ローラ82と上加圧ローラ83)の平行度を測定する平行度検知センサを配置する。揺動検知センサ、歪み量検知センサおよび平行度検知センサには、複数の光電変換素子を用紙幅方向に沿って直線状に配列したラインセンサ、又は光電変換素子をマトリクス状に配置したイメージセンサが使用される。なお、試験装置の代わり画像形成装置1を使用してもよい。
そして、まず揺動機構90により、定着ユニット80を載置する台板89を段階的にベルト幅方向へ移動し、このときの定着ユニット80のベルト幅方向における変位を揺動検知センサで測定する。また、歪み量検知センサで台板89(定着ユニット80の底面)の歪み量、即ち台板89の基準面とそれよりも低くなった部分との距離を測定する。さらに、このときの定着ローラの平行度のずれ量を測定する。これらの各センサによる測定結果を、試験装置が備えるメモリに一時的に保持する。
次に、高さ調整機構111により、台板89(定着ユニット80の底面)の歪みが生じた側に設けられている補助支持部を上昇させ、台板89を部分的に押し上げ、このときの定着ローラの平行度のずれ量を測定する。そして、定着ローラの平行度のずれ量がゼロになったときの補助支持部の高さ方向の位置情報と、対応する定着ユニット80の変位情報とを高さ情報テーブルに登録する。定着ユニット80をベルト幅方向の手前側と奥側のそれぞれへ移動させて、このようなデータの測定および高さ情報テーブルへの登録を実施する。そして、このようにして作成された高さ情報テーブルが、画像形成装置1のROM102に保存されて、定着ユニット80の高さ調整に利用される。
[画像形成装置の制御系の構成]
次に、画像形成装置1の制御系について、図15を参照して説明する。
図15は、画像形成装置1の各部のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、このブロック図では、本発明の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、画像形成装置1の制御系はこの例に限定されない。
画像形成装置1は、図15に示すように、制御部100を備えている。制御部100は、システムバス107を介して、通信部108、画像読取部30、画像処理部110、画像形成部40、給紙部21、用紙搬送機構109、及び定着ユニット80に接続されている。さらに、制御部100は、システムバス107を介して、HDD(Hard Disk Drive)104、操作表示部105、高さ調整機構111に接続されている。
制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)101と、CPU101が実行するプログラムや各種データ等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102と、CPU101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103とを有する。制御部100は、各ブロックの制御すなわち装置全体の制御を行う。なお、ROM102としては、例えば、電気的に消去可能なプログラマブルROMが用いられる。
HDD104は、画像読取部30で読み取って得た原稿画像の画像データを記憶したり、出力済みの画像データ等を記憶したりする。操作表示部105は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部105は、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部105は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付けて、入力信号を制御部100に出力する。
画像読取部30によって生成された画像データや、画像形成装置1に接続された外部装置の一例であるPC(パーソナルコンピュータ)120から送信される画像データは、画像処理部110に送られ、画像処理される。画像処理部110は、受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
画像形成部40は、画像処理部110によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて用紙S上にトナー画像を形成する。
給紙部21は、制御部100により駆動制御され、用紙収納部20に収納された用紙Sを搬送経路に送り出す。給紙部21から給紙された用紙Sは、前後の用紙Sの間隔(紙間距離)が調整され、2次転写部70を経て定着ユニット80へ搬送される。
定着ユニット80は、制御部100により駆動制御され、定着ニップ部に搬送された用紙Sを挟持搬送しながら用紙Sを加熱及び加圧し、トナー画像を用紙Sに定着させる。
揺動機構90は、制御部100により駆動制御され、定着ユニット80を支える台板89をベルト幅方向に揺動する。
高さ調整機構111は、補助支持部130F,130Rと、モータ135とから構成される。高さ調整機構111は、制御部100の制御の下に、モータ135を回転駆動させ、補助支持部130F,130Rを上方向または下方向に駆動し、台板89(定着ユニット80の底面)の高さ方向の位置を部分的に変更する。
制御部100は、定着ユニット80のベルト幅方向の変位情報(基準位置HPからの変位方向および変位量)に基づいて、補助支持部130F,130Rの高さ方向の位置(基準面からの移動方向および移動量)を調整する。制御部100は、ROM102に保存されている高さ調整テーブルから、定着ユニット80のベルト幅方向の変位情報に対応する補助支持部130F,130Rの高さ方向の位置情報を取得する。そして、制御部100は、この高さ方向の位置情報に基づく指示を含む制御信号を、高さ調整機構111に出力する。
通信部108は、例えば外部の情報処理装置であるPC120から送信されるジョブデータを、通信回線を介して受け取る。そして、受け取ったジョブデータを、システムバス107を介してCPU101に送る。
なお、本実施の形態では、外部装置としてパーソナルコンピュータを適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、外部装置としては、例えばファクシミリ装置等その他各種の装置を適用することができる。
[定着ユニットの高さ調整処理]
以下、画像形成装置1の定着ユニットの高さ調整処理について説明する。
図16は、第1の実施の形態に係る定着ユニットの高さ調整処理を示すフローチャートである。この定着ユニットの高さ調整処理は、定着揺動時に補助支持部が台板89から離間しない場合の処理例である。制御部100のCPU101は、ROM102に記録されたプログラムを実行することで、図16に示す処理を実現する。
まず、画像形成装置1の制御部100は、操作表示部105から入力される操作信号又は通信部108を介してPC120から送信されるジョブ情報に基づき、画像形成に係るジョブ開始を検知する。制御部100は、画像形成に係るジョブ開始を検知すると、給紙部21を動作させて用紙収納部20から用紙を供給して通紙を開始する。
制御部100は、ジョブ情報を基に、定着ユニット80のベルト幅方向への揺動(定着揺動)を実施するか否かを判断する(ステップS1)。ここで定着ユニット80の揺動を実施しない場合には(ステップS1のNO)、制御部100は、ステップS5の処理に移行する。
定着ユニット80の揺動を実施するかどうかは、例えば紙種、プリント条件、ユーザ設定等の条件ごとに判断される。例えば、画像形成処理の過程で紙粉の発生が多い紙種では、紙粉によりローラ表面に傷がつきやすくなるため、1ページごとに定着揺動を実施することが望ましい。また、プリント条件としては、画像形成装置1内の環境や通紙状態などが挙げられる。例えば高湿の環境下では、低湿の環境と比較して定着ベルト81に用紙端部跡が着きにくいため揺動しないと判断してもよい。また、同一サイズの用紙に対する画像形成処理が続く場合には揺動する。また、ユーザ設定では、操作表示部105から入力されるユーザの設定に従って揺動を実施する。
ステップS1の判断処理で定着ユニット80の揺動を実施すると判断した場合(ステップS1のYES)、制御部100は、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置を判断する(ステップS2)。定着ユニット80のベルト幅方向における位置の情報には、定着ユニット80の揺動方向および揺動量が含まれる。目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置は、定着ユニットの高さ調整処理のプログラムとは別に実行される定着揺動処理のプログラムにより決定される。一例として、電源オフのとき定着ユニット80は基準位置(ホームポジション)にあり、制御部100は、電源がオンした後のステッピングモータのステップ数に対応する回転角度から定着ユニット80のベルト幅方向における位置を推定する。
次に、制御部100は、ROM102に保存された高さ調整テーブルをチェックし、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置の情報を基に、高さ調整テーブルから補助支持部130F又は130Rの調整値(高さ方向の位置)を読み出す(ステップS3)。
次に、制御部100は、揺動機構90に指令を出し、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置に基づいて定着ユニット80をベルト幅方向に揺動する。また、定着ユニット80の揺動と並行して、制御部100は、高さ調整機構111に指令を出し、(ステップS4)。
これにより、台板89の定着ユニット80の底面の平面度が調整され(例えば図9および図11B)、定着ユニット80の歪みにより発生する定着ローラの平行度ずれが補正される。なお、制御部100は、定着ユニット80の変位量(揺動量)がゼロ又は所定のしき値よりも小さい場合には、補助支持部130F,130Rの当接部の高さ方向の位置を基準面よりも下方の位置(例えばホームポジション)となるように制御する。このしきい値は、定着ユニット80に歪みが生じても定着ローラの平行度が保たれるような値に設定される。このように、定着ユニット80を揺動させても定着ローラの平行度がずれるような実質的な歪みが発生しない場合には、制御部100は、補助支持部130F,130Rの駆動制御を行わない。
次に、制御部100は、ジョブを継続するか否かを判定する(ステップS5)。そして、制御部100は、ジョブを継続する場合には(ステップS5のYES)、ステップS1の判断処理へ移行し、ジョブを継続しない場合には(ステップS5のNO)、ジョブを終了し、定着ユニットの高さ調整処理を終了する。
制御部100は、図16に示す定着ユニットの高さ調整処理を、定着ユニット80に連続して搬送される用紙と用紙の間で実行する。これは、定着揺動の実施タイミングと同様であり、用紙搬送への影響(生産性低下)を防ぐためである。
以上のように構成される第1の実施の形態は、定着ユニット80のベルト幅方向の変位情報に基づいて、補助支持部130R,130Fによって台板89(定着ユニット80の底面)を部分的に押し上げ、定着ユニット80を揺動による歪みと逆方向に歪ませる。それにより、定着ユニット80内の定着ベルト81を駆動する複数のローラ(加熱ローラ82と上加圧ローラ83等)の平行度のずれが解消され、定着ベルト81の端部形状の変形や破損等を防止することができる。
また、現状の揺動動作と同期して台板89(定着ユニット80の底面)の高さ方向の位置を調整するようにした場合には、現状の紙間制御の時間内で、定着ローラの平行度の補正動作を完了できる。それゆえ、定着ローラの平行度の補正動作を行っても生産性を維持することができる。
<2.第2の実施の形態>
図17は、第2の実施の形態に係る定着ユニットの高さ調整処理を示すフローチャートである。図17に示す定着ユニットの高さ調整処理は、定着揺動時に補助支持部が台板89から離間する場合の処理例である。なお、ジョブ終了後に、カム131の回転角度がホームポジションに戻っているものとする。カム131がホームポジションに移動すると、補助支持部130F,130Rの当接部の高さ方向の位置は基準面よりも下方の位置(ホームポジション)に移動する。図17のステップS11、S13、S14、S17の処理はそれぞれ、図16のステップS1、S2、S3、S5の処理と同様であるので、説明を簡略化する。
まずジョブが開始されると、制御部100は、ジョブ情報を基に、定着ユニット80のベルト幅方向への揺動(定着揺動)を実施するか否かを判断する(ステップS11)。ここで定着ユニット80の揺動を実施しない場合には(ステップS11のNO)、制御部100は、ステップS17の処理に移行する。
ステップS11の判断処理で定着ユニット80の揺動を実施すると判断した場合(ステップS11のYES)、制御部100は、高さ調整機構111に指令を出し、定着揺動開始前に補助支持部130F,130Rを基準面よりも下方のホームポジションまで下降させて、補助支持部130F,130Rを台板89から離間する(ステップS12)。
次に、制御部100は、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置を判断する(ステップS13)。
そして、制御部100は、ROM102に保存された高さ調整テーブルをチェックし、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置の情報を基に、高さ調整テーブルから補助支持部130F又は130Rの調整値(高さ方向の位置)を読み出す(ステップS14)。
次に、制御部100は、制御部100は、揺動機構90に指令を出し、目標とする定着ユニット80のベルト幅方向における位置に基づいて定着ユニット80をベルト幅方向に揺動する(ステップS15)。
次に、制御部100は、定着揺動が完了後に高さ調整機構111に指令を出し、補助支持部130F又は130Rを上昇させて、補助支持部130F又は130Rの高さ方向の位置を調整する(ステップS16)。
これにより、台板89の定着ユニット80の底面の平面度が調整され(例えば図9および図11B)、定着ユニット80の歪みにより発生する定着ローラの平行度ずれが補正される。なお、制御部100は、定着ユニット80の変位量(揺動量)がゼロ又は所定のしきい値よりも小さい場合には、補助支持部130F,130Rの当接部の高さ方向の位置を基準面よりも下方の位置(例えばホームポジション)となるように制御する。
次に、制御部100は、ジョブを継続するか否かを判定する(ステップS17)。そして、制御部100は、ジョブを継続する場合には(ステップS17のYES)、ステップS11の判断処理へ移行し、ジョブを継続しない場合には(ステップS17のNO)、ジョブを終了す。このとき、制御部100は、補助支持部130F,130Rをホームポジションに戻した後、定着ユニットの高さ調整処理を終了する。
以上のように構成される第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態による作用、効果の加えて、次のような作用、効果がある。第2の実施の形態によれば、定着揺動時に補助支持部130F,130Rを台板89から離間させることで、台板89と補助支持部130F,130Rとの摩擦をなくすことができる。また、台板89と補助支持部130F,130Rとの摺動抵抗を低減するための機構が不要となり、構成を簡素化することができる。
<3.変形例>
図18は、揺動機構の変形例を示す概略構成図である。
図18に示す揺動機構90Aは、支持部92A〜92Cを用いて定着ユニット80を支持する支持ユニット91と、カム141と、該カム141を回転駆動するモータ145と、シャフト142と、押板143と、弾性部材144とを備える。
カム141の回転軸とモータ145の駆動軸が連結している。シャフト142は、カム141よりもベルト幅方向の手前側に、かつベルト幅方向に沿って横向きに配置されている。シャフト142の一端はカム141の外周部と摺接し、他端は押板143の一方の面に固定されている。押板143の他方の面には、弾性部材144の一端が固定されている。押板143の一部が台板89の下面に固定されている。弾性部材144の他端は、例えば画像形成装置1の手前側(正面側)の筐体に固定される。弾性部材144には、一例として弦巻ばねが用いられる。弾性部材144により、押板143が手前側から奥側へかけて付勢されている。
カム141が回転すると、カム141の回転軸141aとシャフト142の一端との距離が変化し、シャフト142にベルト幅方向の手前側へ向かう力が加わる。このベルト幅方向の手前側へ向かう力は、シャフト142を介して押板143に伝達される。これにより、押板143が手前側に移動し、それに伴い台板89および定着ユニット80が手前側に移動(揺動)する。このようなカム141と、モータ145と、シャフト142と、押板143と、弾性部材144が、揺動機構90Aの奥側にも収容されている。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明した。しかしながら、上記実施の形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
また、上述した実施の形態では、熱ローラ方式の定着ユニットの例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、複数の回転部材に懸架された定着ベルトを備える定着ユニットに適用可能であり、例えば、誘導加熱方式の定着ユニットにも適用可能である。
また、上述した実施の形態では、カムを用いて定着ユニットを揺動する揺動機構を説明したが、揺動機構の構成はこの例に限定されない。揺動機構を、例えば、ラック・アンド・ピニオン機構と、このラック・アンド・ピニオン機構のピニオンを正逆方向に回転させる駆動モータから構成してもよい。
また、上述した実施の形態では、本発明をカラー画像を形成する画像形成装置に適用した例を説明したが、モノクロ画像を形成する画像形成装置に適用してもよい。