以下、車両の制動制御装置を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1には、本実施形態の車両の制動制御装置である制御装置100を備える制動装置10の一例が図示されている。制動装置10を備える車両には、複数の車輪FL,FR,RL,RRと、車輪FL,FR,RL,RRに個別対応する複数のブレーキ機構12a,12b,12c,12dが設けられている。ブレーキ機構12a〜12dは、ホイールシリンダ11a,11b,11c,11dを有している。そして、ホイールシリンダ11a〜11dに制動装置10からブレーキ液が供給され、ホイールシリンダ11a〜11d内の液圧が増大されると、ブレーキ機構12a〜12dは、ホイールシリンダ11a〜11d内の液圧に応じた制動力を車輪FL,FR,RL,RRに付与するように構成されている。
なお、ブレーキ機構12a〜12dとしては、例えば、ディスクブレーキやドラムブレーキなどの摩擦式のブレーキ機構を挙げることができる。また、本明細書では、ホイールシリンダ11a〜11d内の液圧のことを、「WC圧」ともいう。
図1に示すように、制動装置10は、運転者によるブレーキペダル21の操作力に応じた液圧を発生する液圧発生装置20と、各ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧を個別に調整することのできるブレーキアクチュエータ30とを有している。なお、本明細書では、運転者がブレーキペダル21を操作することを「制動操作」といい、ブレーキペダル21の操作力を「制動操作力」ということもある。
液圧発生装置20は、マスタシリンダ22と、ブレーキペダル21に入力された制動操作力を助勢するブースタ23と、ブレーキ液が貯留される大気圧リザーバ24とを備えている。マスタシリンダ22には、制動操作力がブースタ23を通じて入力される。すると、マスタシリンダ22内では、入力された制動操作力に応じた液圧が発生する。なお、こうしたマスタシリンダ22内の液圧のことを「MC圧」ともいう。
ブレーキアクチュエータ30には、2系統の液圧回路311,312が設けられている。第1の液圧回路311には左前輪用のホイールシリンダ11aと右後輪用のホイールシリンダ11dとが接続されるとともに、第2の液圧回路312には右前輪用のホイールシリンダ11bと左後輪用のホイールシリンダ11cとが接続されている。そして、液圧発生装置20から第1及び第2の液圧回路311,312にブレーキ液が流入されると、ホイールシリンダ11a〜11d内にブレーキ液が供給される。
マスタシリンダ22と連通する液路451,452には、リニア電磁弁である差圧調整弁321,322が設けられている。第1の液圧回路311には、差圧調整弁321と左前輪用のホイールシリンダ11aとを繋ぐ第1の液路としての左前輪用の経路33aと、左前輪用の経路33aから分岐し、右後輪用のホイールシリンダ11dに接続されている第2の液路としての右後輪用の経路33dとが設けられている。すなわち、左前輪用の経路33aにおける右後輪用の経路33dとの接続点が「分岐点421」に相当し、右後輪用の経路33dは、分岐点421と右後輪用のホイールシリンダ11dとを繋いでいる。
同様に、第2の液圧回路312には、差圧調整弁322と右前輪用のホイールシリンダ11bとを繋ぐ第1の液路としての右前輪用の経路33bと、右前輪用の経路33bから分岐し、左後輪用のホイールシリンダ11cに接続されている第2の液路としての左後輪用の経路33cとが設けられている。すなわち、右前輪用の経路33bにおける左後輪用の経路33cとの接続点が「分岐点422」に相当し、左後輪用の経路33cは、分岐点422と左後輪用のホイールシリンダ11cとを繋いでいる。
そして、こうした経路33a〜33dには、ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧の増大を規制する際に作動する常開型の電磁弁である保持弁34a,34b,34c,34dと、WC圧を減少させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁35a,35b,35c,35dとが設けられている。左前輪用の保持弁34aは、左前輪用の経路33aにおいて分岐点421よりもホイールシリンダ11a側に配置されているとともに、右前輪用の保持弁34bは、右前輪用の経路33bにおいて分岐点422よりもホイールシリンダ11b側に配置されている。すなわち、前輪用の保持弁34a,34bにより、前輪用のホイールシリンダ11a,11bへのブレーキ液の流入を、開き状態であるときには許容し、閉じ状態であるときには禁止する「前輪用保持弁」の一例が構成される。また、後輪用の保持弁34c,34dにより、後輪用のホイールシリンダ11c,11dへのブレーキ液の流入を、開き状態であるときには許容し、閉じ状態であるときには禁止する「後輪用保持弁」の一例が構成される。
なお、これら保持弁34a〜34dにあっては、ソレノイドに流れる電流値を調整することにより、開度をある程度制御することもできる。すなわち、ソレノイドに流す電流値が小さいほど、保持弁34a〜34dの開度が狭くなり、対応するホイールシリンダ11a〜11d内にブレーキ液が流入しにくくなる。そして、保持弁34a〜34dが開き状態であるとは、保持弁34a〜34dの開度が最大であることを示している。
また、第1及び第2の液圧回路311,312には、ホイールシリンダ11a〜11dから減圧弁35a〜35dを通じて流出したブレーキ液を一時的に貯留するリザーバ361,362と、モータ37の回転に基づき動作する供給ポンプ381,382とが接続されている。リザーバ361,362は、吸入用流路391,392を通じて供給ポンプ381,382に接続されるとともに、マスタ側流路401,402を通じて差圧調整弁321,322よりもマスタシリンダ22側の通路に接続されている。また、供給ポンプ381,382は、供給用流路411,412にブレーキ液を吐出するようになっており、この供給用流路411,412は、前輪用の経路33a,33bにおける分岐点421,422と差圧調整弁321,322との間に接続されている。なお、図1に示す例では、前輪用の経路33a,33bにおける供給用流路411,412との接続部分は、分岐点421,422と一致している。
そして、供給ポンプ381,382は、モータ37が駆動する場合に、リザーバ361,362及びマスタシリンダ22内から吸入用流路391,392及びマスタ側流路401,402を通じてブレーキ液を汲み取り、該ブレーキ液を供給用流路411,412内に吐出する。すなわち、差圧調整弁321,322と供給ポンプ381,382とが作動することによって、マスタシリンダ22とホイールシリンダ11a〜11dとの間に差圧が発生し、同差圧に応じた制動力が車両に付与される。
また、図1に示すように、本制動装置10を備える車両には、ブレーキスイッチSW1、複数の車輪速度センサSE1,SE2,SE3,SE4、圧力センサSE5及び前後方向加速度センサSE6が設けられている。ブレーキスイッチSW1は、ブレーキペダル21が操作されているか否かを検出する。車輪速度センサSE1〜SE4は、対応する車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWを検出する。圧力センサSE5は、マスタシリンダ22内のMC圧Pmcを検出する。前後方向加速度センサSE6は車両の前後方向加速度Gxを検出する。そして、これらの検出系によって検出された情報は、制御装置100に入力される。
制御装置100は、マイクロコンピュータと、各種の弁やモータを駆動させるための駆動回路とを備えている。そして、制御装置100は、検出系から入力された情報に基づき、ブレーキアクチュエータ30、すなわちモータ37や各種の弁321,322,34a〜34d,35a〜35dを制御する。
また、図1に示すように、車両には、車両の前方に存在する衝突回避対象を認識する衝突回避対象認識装置200が設けられている。なお、衝突回避対象としては、例えば、自車両よりも前方を走行する先行車、自車両の前方に位置する壁などの非移動物、自車両の走行経路に突然進入した対象(車両、通行人など)を挙げることができる。
衝突回避対象認識装置200としては、レーザやミリ波を用いたレーダシステムや、ステレオ画像処理装置などが挙げられる。こうした衝突回避対象認識装置200には、自車両の進行方向前側を監視可能な位置に設置されるカメラ、レーダ及びセンサなどの監視部が設けられている。そして、衝突回避対象認識装置200は、監視部によって衝突回避対象が認識されると、自車両と衝突回避対象との相対距離Xr、衝突回避対象を基準とした自車両の相対速度Vr、衝突回避対象を基準とした自車両の相対減速度Grを測定し、こうした測定情報を制御装置100に送信する。なお、「相対速度Vr」は、相対距離Xrを時間微分した値に応じた値であり、「相対減速度Gr」は、相対速度Vrを時間微分した値に応じた値である。
次に、図2を参照し、前輪用のブレーキ機構12a,12bと後輪用のブレーキ機構12c,12dとの特性の違いの一例について説明する。
図2に示すように、これらブレーキ機構12a〜12dは、ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcが高いほど大きい制動力BPを車両に付与するように構成されている。しかし、ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcが同等である場合、前輪用のブレーキ機構12a,12bは、後輪用のブレーキ機構12c,12dよりも大きい制動力BPを車両に付与する。つまり、前輪用のブレーキ機構12a,12bは、後輪用のブレーキ機構12c,12dよりも効率的に制動力BPを増大させることのできるブレーキ機構であるということができる。
ところで、上記の衝突回避対象認識装置200を備える車両にあっては、自車両と衝突回避対象との相対距離Xrが短くなったときに、衝突回避対象と自車両との衝突を回避させるべく自動制動が行われることがある。また、当該車両では、自車両と衝突回避対象との相対距離Xrが所定距離未満とならないように、自車両に対する制動力を調整するような自動制動が行われることもある。
こうした自動制動は、制御装置100によってブレーキアクチュエータ30を作動させることにより実現することができる。すなわち、差圧調整弁321,322の開度を調整しつつ供給ポンプ381,382が作動されることにより、ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcが増圧され、車両に付与する制動力BPが増大される。この際、車両に要求されている要求減速度の増大速度と相関する速度で車両に付与する制動力BPが増大されるように、ブレーキアクチュエータ30の作動が制御される。
そして、自動制動の実施によって車両が停止したり、車両の減速度が要求制動力に達したりなどし、終了条件が成立すると、車両に付与する制動力BPの増大が終了される。その後、制動力BPが保持されたり、制動力BPが減少されたりするようになる。
なお、自動制動において、供給ポンプ381,382を起動させる制動初期にあっては、車両に付与する制動力BPの速やかな増大が求められている。こうした要望は、自動制動の緊急性が高いほど顕著となる。
そこで、図3に示すように、本実施形態の車両の制動制御装置である制御装置100では、供給ポンプ381,382を起動させる制動初期に、供給ポンプ381,382から吐出されたブレーキ液を、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内に優先的に供給するようにしている。これにより、後輪用のブレーキ機構12c,12dよりも効率よく制動力BPを増大させることのできる前輪用のブレーキ機構12a,12bが、後輪用のブレーキ機構12c,12dよりも先に作動することとなる。その結果、制動初期において車両に付与する制動力BPが早期に増大される。
具体的には、図3(a),(b)に示すように、供給ポンプ381,382が起動される第1のタイミングt11からは制動処理が実施される。本例では、前輪用の保持弁34a,34bが「第1の保持弁」として機能し、後輪用の保持弁34c,34dが「第2の保持弁」として機能する。また、前輪用の保持弁34a,34bに対応する前輪用のホイールシリンダ11a,11bが「第1のホイールシリンダ」に相当し、後輪用の保持弁34c,34dに対応する後輪用のホイールシリンダ11c,11dが「第2のホイールシリンダ」に相当する。
制動処理では、前輪用の保持弁34a,34bのソレノイドには保持指令電流値が入力され、後輪用の保持弁34c,34dのソレノイドには差圧指令電流値Isが入力される。保持指令電流値は、保持弁を開き状態で保持するための電流値であって、差圧指令電流値Isよりも小さい。例えば、保持指令電流値は、「0(零)」アンペアである。そのため、制動処理の実施中にあっては、前輪用の保持弁34a,34bは開き状態で保持される。一方、差圧指令電流値Isは、前輪用のホイールシリンダ11a,11bと後輪用のホイールシリンダ11c,11dとの差圧である前後輪差圧ΔPWcFを目標差圧としての目標前後輪差圧ΔPWcFRTrにするための電流値である。
ここで、図4を参照し、保持弁よりも差圧調整弁側の液圧と同保持弁よりもホイールシリンダ側の液圧との差圧と、同保持弁に流れる電流値との関係について説明する。保持弁は、自身のソレノイドに流れる電流値である入力電流値に応じた開度に調整される。すなわち、図4に示すように、保持弁は、入力電流値が大きいほど、開度が小さくなり、保持弁よりも差圧調整弁側の液圧と保持弁よりもホイールシリンダ側との差圧を大きくすることができる。
制動制御の実施中にあっては、前輪用の保持弁34a,34bが開き状態であるため、後輪用の保持弁34c,34dよりも差圧調整弁側の液圧は、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧とほぼ等しい。また、後輪用の保持弁34c,34dよりもホイールシリンダ側の液圧は、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧とほぼ等しい。つまり、後輪用の保持弁34c,34dよりも差圧調整弁側と後輪用の保持弁34c,34dよりもホイールシリンダ側との差圧は、前輪用のホイールシリンダ11a,11bと後輪用のホイールシリンダ11c,11dとの差圧である前後輪差圧ΔPWcFRと言い換えることができる。そのため、上記目標前後輪差圧ΔPWcFRTrを図4のグラフの差圧に代入し、当該差圧に対応する入力電流値が差圧指令電流値Isとされる。これにより、差圧指令電流値Isは、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrが大きいほど大きい値に設定される。
すなわち、こうした差圧指令電流値Isがソレノイドに入力されることにより後輪用の保持弁34c,34dが作動されている場合、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以下であるときには、供給ポンプ381,382から吐出されたブレーキ液が、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内にほとんど供給されない。その結果、図3(a)に破線で示すように、第1のタイミングt11から、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrに達する第2のタイミングt12までの期間では、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧されない。すなわち、本明細書では、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrが、「目標液圧」の一例に相当するということもできる。
ただし、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrに達した第2のタイミングt12以降では、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcだけではなく、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcも増圧されるようになる。すなわち、本実施形態の車両の制動制御装置にあっては、各保持弁34a〜34dに対する制御態様を変更することなく、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの増圧を開始させることが可能である。
なお、このように後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧される場合であっても、前後輪差圧ΔPWcFRは目標前後輪差圧ΔPWcFRTrとほぼ等しくされる。そして、第2のタイミングt12以降では、第2のタイミングt12以前よりも、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcの増圧速度が小さくなる。この点で、本実施形態の車両の制動制御装置では、制御装置100により、制動処理を実施する「制御部」の一例が構成される。
こうした制動処理によって後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧されている第3のタイミングt13で、制動処理が終了され、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcを増圧させる第1の増圧処理が開始される。この第1の増圧処理では、前輪用の保持弁34a,34bが開き状態で保持される一方で、後輪用の保持弁34c,34dが閉じ状態で保持される。これにより、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが保持されるため、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧の増圧速度が大きくなる。なお、後輪用の保持弁34c,34dを閉じ状態にすることは、後輪用の保持弁34c,34dのソレノイドに流す電流値を上記差圧指令電流値Isよりも大きくすることで実現することができる。
続いて、第1の増圧処理の実施中に、所定の切り替え条件が第4のタイミングt14で成立すると、第1の増圧処理が終了され、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧を増圧させる第2の増圧処理が開始される。この第2の増圧処理では、後輪用の保持弁34c,34dが開き状態で保持される一方で、前輪用の保持弁34a,34bが閉じ状態で保持される。これにより、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが保持された状態で、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧される。
その後の第2の増圧処理の実施中に、所定の切り替え条件が第5のタイミングt15で成立すると、第2の増圧処理が終了され、第1の増圧処理が開始される。すなわち、制動処理の実施終了後にあっては、第1の増圧処理と第2の増圧処理とが交互に実施される。
ここで、図5を参照し、第1の増圧処理から第2の増圧処理への切り替え条件、及び、第2の増圧処理から第1の増圧処理への切り替え条件の一例について説明する。
前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが増圧され、前輪FL,FRに付与する制動力が増大されると、車両の車体速度VSから前輪FL,FRの車輪速度VWから減じた差である前輪FL,FRのスリップ量SlpFが大きくなる。このように前輪FL,FRに付与する制動力が増大するにつれて、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが大きくなる。
図5(a),(b),(c)に示すように、第1の増圧処理が実施されていると、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが増圧される。すると、前輪FL,FRに付与する制動力が大きくなるため、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが徐々に大きくなる。そして、この増大速度DSlpFが第1の切替増大速度DSlpTh1よりも大きくなると、切り替え条件が成立したと判断される。そのため、第1の増圧処理が終了され、第2の増圧処理が開始される。
第2の増圧処理が開始されると、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが保持されるため、前輪FL,FRに付与する制動力が増大されなくなる。その結果、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが徐々に小さくなる。すなわち、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFを小さくすべく前輪FL,FRに付与する制動力を増大させない間に、後輪RL,RRに付与する制動力を増大させているということができる。そして、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが、第1の切替増大速度DSlpTh1よりも小さい第2の切替増大速度DSlpTh2未満になると、切り替え条件が成立したと判断される。そのため、第2の増圧処理が終了され、第1の増圧処理が開始される。
このように第1の増圧処理と第2の増圧処理とを交互に実施することにより、前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0にゆっくりと近づくようになる。そして、前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0以上になるなどしてアンチロックブレーキ制御の開始条件が成立すると、実施中の増圧処理が終了され、前輪FL,FRに対してアンチロックブレーキ制御が実施されるようになる。
なお、制動処理の実施中にアンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した場合には、第1の増圧処理や第2の増圧処理を実施することなく、アンチロックブレーキ制御が開始される。
次に、図6に示すフローチャートを参照し、車両に付与する制動力BPを増大させるべく自動制動を実施するに際して制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、アンチロックブレーキ制御が実施されていないこと、及び制動力BPの増大が不要と判断されていないことなどを含む自動制動許可条件が成立しているときに、予め設定された制御サイクル毎に実施される。
図6に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御装置100は、自動制動が実施されている最中であるか否かを判断するためのフラグである制動制御フラグFLGがオフであるか否かを判定する(ステップS11)。この制動制御フラグFLGがオフであるときには自動制動が未だ実施されていないと判断され、制動制御フラグFLGがオンであるときには自動制御が実施中であると判断される。制動制御フラグFLGがオフである場合(ステップS11:YES)、制御装置100は、自車両と衝突回避対象との相対距離Xr、自車両の相対速度Vr及び自車両の相対減速度Grを衝突回避対象認識装置200から取得する(ステップS12)。
続いて、制御装置100は、自動制動の実施が必要であるか否かを判定する(ステップS13)。自動制動の実施が未だ不要と判定した場合(ステップS13:NO)、制御装置100は、ブレーキアクチュエータ30を作動させることなく、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、自動制御の実施が必要と判定した場合(ステップS13:YES)、制御装置100は、ステップS12で取得した相対距離Xr、自車両の相対速度Vr及び自車両の相対減速度Grに基づき、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrを設定する(ステップS14)。このとき、自動制動の緊急度が高いと推定されるときほど、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrが大きい値に設定される。例えば、自車両に対する要求減速度の増大速度が大きいほど、自動制動の緊急度が高いと推定することができる。
そして、制御装置100は、差圧指令電流値Isを設定する(ステップS15)。すなわち、制御装置100は、図4に示すグラフの縦軸の差圧に目標前後輪差圧ΔPWcFRTrを代入し、当該差圧(=ΔPWcFRTr)に応じた入力電流値を求める。そして、制御装置100は、求めた入力電流値を差圧指令電流値Isとする。続いて、制御装置100は、上記の制動処理の実施を開始し、ブレーキアクチュエータ30を作動させる(ステップS16)。すなわち、制御装置100は、前輪用の保持弁34a,34bを開き状態とし、後輪用の保持弁34c,34dのソレノイドに対して差圧指令電流値Isを出力する。また、制御装置100は、要求されている制動力に応じた開度に差圧調整弁321,322を調整し、供給ポンプ381,382を作動させる。その後、制御装置100は、制動制御フラグFLGにオンをセットし(ステップS17)、本処理ルーチンを一旦終了する。
その一方で、ステップS11において、制動制御フラグFLGがオンである場合(NO)、制御装置100は、第1の増圧処理又は第2の増圧処理を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS18)。第1の増圧処理及び第2の増圧処理の何れか一方を実施している場合(ステップS18:YES)、制御装置100は、その処理を後述するステップS20に移行する。一方、制動処理を実施しており、第1の増圧処理及び第2の増圧処理の双方を実施していない場合(ステップS18:NO)、制御装置100は、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以上であるか否かを判定する(ステップS19)。例えば、各ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcを検出する圧力センサが車両に設けられていることがある。この場合、圧力センサによって検出された前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcと後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcとの差分を前後輪差圧ΔPWcFRとし、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以上であるか否かが判定される。なお、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以上である場合には、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcもまた増圧されていると判断することができる。
そして、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr未満である場合(ステップS19:NO)、制御装置100は、本処理ルーチンを一旦終了し、制動処理の実施を継続する。一方、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以上である場合(ステップS19:YES)、制御装置100は、その処理を次のステップS20に移行する。
ステップS20において、制御装置100は、前輪FL,FRのスリップ量SlpFを演算する。続いて、制御装置100は、演算した前輪FL,FRのスリップ量SlpFを時間微分することで、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFを求める(ステップS21)。そして、制御装置100は、ステップS20で演算した前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0よりも大きい場合には、アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立していると判断することができる。そのため、前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0よりも大きい場合(ステップS22:YES)、制御装置100は、本処理ルーチンを終了し、アンチロックブレーキ制御を開始する。
一方、前輪FL,FRのスリップ量SlpFがABS開始スリップ量SlpTh0以下である場合(ステップS22:NO)、制御装置100は、第1の増圧処理を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS23)。第1の増圧処理を実施している最中である場合(ステップS23:YES)、制御装置100は、ステップS21で演算した前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが第1の切替増大速度DSlpTh1よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。増大速度DSlpFが第1の切替増大速度DSlpTh1以下である場合(ステップS24:NO)、切り替え条件が成立していないと判断することができるため、制御装置100は、第1の増圧処理の実施を継続する(ステップS25)。すなわち、前輪用の保持弁34a,34bが開き状態で保持され、後輪用の保持弁34c,34dが閉じ状態で保持される。そして、制御装置100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが第1の切替増大速度DSlpTh1よりも大きい場合(ステップS24:YES)、切り替え条件が成立していると判断することができるため、制御装置100は、第1の増圧処理の実施を終了し、第2の増圧処理の実施を開始する(ステップS26)。すなわち、前輪用の保持弁34a,34bが閉じ状態にされ、後輪用の保持弁34c,34dが開き状態にされる。そして、制御装置100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
その一方で、ステップS23において、第1の増圧処理を実施していない場合(NO)、制御装置100は、第2の増圧処理を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS27)。第2の増圧処理を実施していない場合、上記の制動処理の終了条件が成立した直後であると判断することができる。そのため、第2の増圧処理を実施していない場合(ステップS27:NO)、制御装置100は、その処理を前述したステップS25に移行し、第1の増圧処理の実施を開始する。すなわち、前輪用の保持弁34a,34bが開き状態で保持され、後輪用の保持弁34c,34dが閉じ状態にされる。そして、制御装置100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、第2の増圧処理を実施している最中である場合(ステップS27:YES)、制御装置100は、ステップS21で演算した前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFが第2の切替増大速度DSlpTh2以上であるか否かを判定する(ステップS28)。増大速度DSlpFが第2の切替増大速度DSlpTh2以上である場合(ステップS28:YES)、切り替え条件が成立していないと判断することができるため、制御装置100は、その処理を前述したステップS26に移行し、第2の増圧処理の実施を継続する。一方、増大速度DSlpFが第2の切替増大速度DSlpTh2よりも小さい場合(ステップS28:NO)、切り替え条件が成立していると判断することができるため、制御装置100は、その処理を前述したステップS25に移行する。すなわち、制御装置100は、第2の増圧処理を実施を終了し、第1の増圧処理の実施を開始する。
以上、上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)制動処理の実施によってブレーキアクチュエータ30が作動されると、前輪用の保持弁34a,34bは開き状態にされる一方で、後輪用の保持弁34c,34dは、ソレノイドに入力される差圧指令電流値Isに応じた作動を行うこととなる。また、差圧調整弁321,322及び供給ポンプ381,382が作動される。そのため、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTr以下である状況下では、供給ポンプ381,382から吐出されたブレーキ液が前輪用のホイールシリンダ11a,11b内に優先的に流入するようになる。そのため、制動処理を実施することにより、前輪用のブレーキ機構12a,12bを後輪用のブレーキ機構12c,12dよりも先に作動させることができるため、車両に付与する制動力BPが大きくなりやすい。したがって、供給ポンプ381,382を起動させる制動初期において、車両に付与する制動力BPを早期に増大させることができる。
(2)また、制動処理の実施時にあっては、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcの液圧の増圧によって前後輪差圧ΔPWcFRが大きくなり、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrに達すると、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内にもブレーキ液が流入するようになる。これにより、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrにほぼ維持されている状態で、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcだけではなく、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcも増圧されるようになる。これにより、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcのみが増圧される状態が継続される場合と比較し、制動中における車両挙動の安定性の低下を抑制することができる。
(3)しかも、本実施形態の車両の制動制御装置にあっては、ブレーキアクチュエータ30の制御態様を変更することなく、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの増圧を開始させることができる。すなわち、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcを増圧させるか否かで制御モードを変更する必要がない分、制動初期における制御装置100の制御負荷の増大を抑制することができる。
(4)なお、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrが大きいほど、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの増圧開始が遅れることとなる。すなわち、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrが大きいほど、制動初期における制動力BPの増大速度を大きくすることはできるものの、前輪用のブレーキ機構12a,12bにかかる負荷が大きくなる。そこで、本実施形態の車両の制動制御装置にあっては、目標前後輪差圧ΔPWcFRTrは、自動制動の緊急性が低いと推定されるときほど小さくされる。このように自動制動の緊急性に応じて目標前後輪差圧ΔPWcFRTrを可変とすることにより、前輪用のブレーキ機構12a,12bにかかる負荷が過度に大きくなることが抑制される。したがって、前輪用のブレーキ機構12a,12bの構成部品の寿命の短縮化を抑えることができる。
(5)制動処理の実施によって後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧されるようになると、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcの増圧速度が小さくなる。そこで、本実施形態の車両の制動制御装置では、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcがある程度高くなると、制動処理が終了され、第1の増圧処理と第2の増圧処理とが交互に実施されるようになる。このように第1の増圧処理と第2の増圧処理とを交互に繰り返すことにより、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwc及び後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcを適切に増大させることができ、ひいては車両に付与する制動力BPをさらに大きくすることができる。
(6)ちなみに、第1の増圧処理及び第2の増圧処理は、前輪用のホイールシリンダ11a,11bと後輪用のホイールシリンダ11c,11dとの間に差圧が発生している状況下で実施される。そのため、第1の増圧処理の実施中に、後輪用の保持弁34c,34dが閉じ状態で保持されていない場合、前輪用のホイールシリンダ11a,11bから後輪用のホイールシリンダ11c,11dにブレーキ液が流出するおそれがある。一方、第2の増圧処理の実施中に、前輪用の保持弁34a,34bが閉じ状態で保持されていない場合、前輪用のホイールシリンダ11a,11bから後輪用のホイールシリンダ11c,11dにブレーキ液が流出し、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcが減圧されるおそれがある。こうした事象は、各ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcを管理する上で望ましくない。
この点、本実施形態の車両の制動制御装置にあっては、第1の増圧処理の実施時では後輪用の保持弁34c,34dが閉じ状態にされるため、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの変動を抑制しつつ、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcを増圧させることができる。同様に、第2の増圧処理の実施時にあっては、前輪用の保持弁34a,34bが閉じ状態にされるため、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcの変動を抑制しつつ、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcを増圧させることができる。したがって、第1の増圧処理と第2の増圧処理とを交互に実施することにより、各ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcを確実に増圧させることができるとともに、各ホイールシリンダ11a〜11d内のWC圧Pwcが管理しやすくなる。
(7)また、本実施形態の車両の制動制御装置にあっては、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpFに基づいて、第1の増圧処理から第2の増圧処理への切り替えタイミング、及び、第2の増圧処理から第1の増圧処理への切り替えタイミングを決定している。そのため、前輪FL,FRに対するアンチロックブレーキ制御の開始タイミングを遅らせることができる。すなわち、車両の減速度をより大きくした状態で前輪FL,FRに対するアンチロックブレーキ制御を開始させることが可能となる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・同一のWC圧Pwcであれば、後輪用のブレーキ機構12c,12dのほうが前輪用のブレーキ機構12a,12bよりも車両に大きい制動力BPを付与できることがある。こうした車両の制動処理では、後輪用の保持弁34c,34dを開き状態とし、前輪用の保持弁34a,34bのソレノイドに差圧指令電流値Isを入力させるようにしてもよい。これにより、供給ポンプ381,382の起動時の制動初期では、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcを優先的に増圧させることにより、車両に付与する制動力BPを早期に増大させることができる。
・第1の増圧処理から第2の増圧処理への切り替えタイミング、及び、第2の増圧処理から第1の増圧処理への切り替えタイミングを、前輪FL,FRのスリップ量の増大速度DSlpF以外の他の任意のパラメータに基づいて設定するようにしてもよい。
例えば、図7に示すように、前輪FL,FRと後輪RL,RRとの理想的な制動力の配分から求まる前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧の理想値PwcFT及び後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧の理想値PwcRTに基づき、第1の増圧処理及び第2の増圧処理を交互に繰り返すようにしてもよい。この場合、WC圧の理想値PwcFTと前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcとの差よりも、WC圧の理想値PwcRTと後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcとの差のほうが大きいときには、第1の増圧処理の実施期間よりも第2の増圧処理の実施期間のほうを長くするようにしてもよい。
また、例えば、時間によって、第1の増圧処理から第2の増圧処理への切り替え、及び、第2の増圧処理から第1の増圧処理への切り替えを行うようにしてもよい。
・制動処理が実施されている最中に、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが増圧されている状況下では、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrとほぼ等しくなっていると判断することができる。そのため、図6のステップS19では、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcが規定液圧以上になっているか否かを判定し、WC圧Pwcが規定液圧以上であるときには、制動処理を終了させるようにしてもよい。なお、この場合、規定液圧は、供給ポンプ381,382から後輪用のホイールシリンダ11c,11d内にブレーキ液が供給されたことにより、WC圧Pwcが増圧されていると判断できる値に設定することが好ましい。こうした制御構成を採用した場合であっても、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
・制動処理の終了タイミングは、前後輪差圧ΔPWcFRが目標前後輪差圧ΔPWcFRTrよりも大きいのであれば、任意のタイミングとしてもよい。例えば、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcを検出する圧力センサが車両に設けられているのであれば、同圧力センサによって検出されたWC圧Pwcが規定圧以上になったタイミングで、制動処理を終了し、第1の増圧処理を開始させるようにしてもよい。もちろん、圧力センサによって検出したWC圧ではなく、ブレーキアクチュエータ30の作動態様から推定される後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの推定値に基づいて制動処理の終了タイミングを決定するようにしてもよい。
・目標前後輪差圧ΔPWcFRTrは、予め決定された固定値であってもよい。この場合、前輪FL,FRと後輪RL,RRとの制動力差に起因する車両挙動の不安定度合いが許容範囲に収まる範囲の値に上記の固定値を決定することが好ましい。
・自動制動時にあっては、制動処理を継続させるようにしてもよい。この場合であっても、制動処理の実施によって、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcも増圧させることができる。また、このように第1の増圧処理及び第2の増圧処理を実施しない場合、制動処理の実施途中で、後輪用の保持弁34c,34dのソレノイドに入力する差圧指令電流値Isを変更してもよい。
・運転者による制動操作時に供給ポンプ381,382を作動させる場合であっても、上記の制動処理を実施するようにしてもよい。もちろん、制動処理の実施を途中で終了し、第1の増圧処理及び第2の増圧処理を交互に実施するようにしてもよい。この場合、第1の増圧処理の実施中に後輪用の保持弁34c,34dを閉じ状態で保持しなくても、後輪用のホイールシリンダ11c,11d内のWC圧Pwcの減圧が抑制される。そのため、後輪用の保持弁34c,34dを閉じ状態で必ずしも保持しなくてもよい。
同様に、第2の増圧処理の実施中に前輪用の保持弁34a,34bを閉じ状態で保持しなくても、前輪用のホイールシリンダ11a,11b内のWC圧Pwcの減圧が抑制される。そのため、前輪用の保持弁34a,34bを閉じ状態で必ずしも保持しなくてもよい。