以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図13は、本実施の形態に係る吸着搬送装置およびこのような吸着搬送装置を備えた処理システムを示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による吸着搬送装置を備えた処理システムの構成の概略を示す概略構成図であり、図2は、図1に示す処理システムにおける吸着搬送装置の構成の一例を示す構成図である。また、図3乃至図6は、それぞれ、図2に示す吸着搬送装置において多孔質板の裏面に貼られたフィルムの構成の様々な例を示す図である。また、図7は、図1に示す処理システムにおける吸着搬送装置の構成の他の例を示す構成図であり、図8は、図7に示す吸着搬送装置においてウエブと搬送部のベルトとの間に設けられた金属板の構成を示す図である。また、図9および図10は、それぞれ、変形例に係る吸着搬送装置における吸着部の様々な形状を示す図である。また、図11は、図2に示す吸着搬送装置に設けられた三方弁の構成を示す斜視図であり、図12は、図11に示す三方弁の内部構成を示す図である。また、図13は、図1に示す処理システムによるウエブの処理方法を示すフローチャートである。
本実施の形態による処理システム10は、連続的に搬送される帯状のウエブWに対して印刷、コーター処理、乾燥等の様々な加工処理を行うものである。図1に示すように、本実施の形態による処理システム10は、帯状のウエブWを巻き出す巻出ロール12と、巻出ロール12から巻き出されたウエブWの張力を調整するためのニップロール14と、巻出ロール12から巻き出されたウエブWを搬送するためのニップロール16、18と、巻出ロール12から巻き出されたウエブWに対して印刷等の加工処理を行う加工処理装置40と、加工処理装置40により加工処理が行われたウエブWを搬送するための吸着搬送装置20とを備えている。このような処理システム10の各構成部材の詳細について以下に説明する。
図1に示すように、ウエブWの搬送方向(図1において矢印で表示)における加工処理装置40の上流側には一対のニップロール14が互いに対向して接触するよう設けられている。ここで、各ニップロール14の外周面は例えばゴム等の弾性部材から構成されており、一対のニップロール14が互いに対向して接触しながら回転している状態でこれらのニップロール14の間にウエブWが送られることにより当該ウエブWは一対のニップロール14により搬送されるようになっている。また、ニップロール14の回転速度を調整することにより、巻出ロール12から巻き出されたウエブWの張力が調整されるようになっている。
また、ウエブWの搬送方向における加工処理装置40の下流側であって吸着搬送装置20の上流側には一対のニップロール16が互いに対向して接触するよう設けられている。ここで、各ニップロール16の外周面は例えばゴム等の弾性部材から構成されており、一対のニップロール16が互いに対向して接触しながら回転している状態でこれらのニップロール16の間にウエブWが送られることにより当該ウエブWは一対のニップロール16によりそれぞれ搬送されるようになっている。また、一対のニップロール16のうち一方のニップロール16(具体的には、図1における上側のニップロール16)は他方のニップロール16(具体的には、図1における下側のニップロール16)から離間するよう図1における上方に移動することができるようになっている。ここで、一方のニップロール16が他方のニップロール16から離間するよう移動すると、ウエブWはこれらのニップロール16により搬送されなくなる。本実施の形態による処理システム10では、加工処理装置40によりウエブWに対して加工処理が行われる前に巻出ロール12から巻き出されたウエブWが一対のニップロール16により搬送され、一方、加工処理装置40によりウエブWに対して加工処理が行われる最中は図1における上側のニップロール16が下側のニップロール16から離間するよう図1における上方に移動することによって一対のニップロール16によりウエブWの搬送は行われなくなる。
また、ウエブWの搬送方向における吸着搬送装置20の更に下流側には一対のニップロール18が互いに対向して接触するよう設けられている。ここで、各ニップロール18の外周面は例えばゴム等の弾性部材から構成されており、一対のニップロール18が互いに対向して接触しながら回転している状態でこれらのニップロール18の間にウエブWが送られることにより当該ウエブWは一対のニップロール18によりそれぞれ搬送されるようになっている。また、一対のニップロール18のうち一方のニップロール18(具体的には、図1における上側のニップロール18)は他方のニップロール18(具体的には、図1における下側のニップロール18)から離間するよう図1における上方に移動することができるようになっている。ここで、一方のニップロール18が他方のニップロール18から離間するよう移動すると、ウエブWはこれらのニップロール18により搬送されなくなる。本実施の形態による処理システム10では、加工処理装置40によりウエブWに対して加工処理が行われる前に巻出ロール12から巻き出されたウエブWを搬送する際に一対のニップロール18によりウエブWの搬送が行われ、一方、加工処理装置40によりウエブWに対して加工処理が行われる最中は図1における上側のニップロール18が下側のニップロール18から離間するよう図1における上方に移動することによって一対のニップロール18によりウエブWの搬送は行われなくなる。
図2に示すように、吸着搬送装置20は、帯状のウエブWを搬送するためのコンベア等からなる搬送部22と、搬送部22により搬送されるウエブWを吸着するための吸着部24とを有している。ここで、搬送部22は、複数(図2に示す例では2つ)のプーリ22aに掛け渡されたスチールベルト等の無端状の(すなわち、循環形状の)ベルト22bを有しており、図示しない駆動モータによって複数のプーリ22aのうちある一つのプーリ22aが回転駆動されることにより、ベルト22bが図2における反時計回りの方向に循環移動するようになっている。また、ベルト22bには例えば直径が0.5mmである貫通穴が均等に多数形成されている。また、吸着部24は、ウエブWに面するベルト22bの裏側に設けられており、ベルト22bに設けられた貫通穴を介してウエブWをベルト22bに吸着させるようになっている。より詳細には、吸着部24は例えば内部に空気室が設けられた箱状のものからなり、当該吸着部24の天井面(具体的には、搬送部22のベルト22bに対向する面)には例えば直径が数センチメートルである複数の貫通穴が均等に形成されている。また、吸着部24の底面には吸引ホース等の吸引管32の一端が接続されており、当該吸引管32の他端には三方弁34が接続されている。また、三方弁34には吸引ホース等の吸引管36の一端が接続されており、当該吸引管36の他端にはブロワ等の吸引機構38が接続されている。そして、吸引機構38により吸着部24から吸引管32、三方弁34および吸引管36を介して空気の吸引が行われると、ウエブWがベルト22bに吸着されるようになり、このウエブWはベルト22bに吸着された状態で当該ベルト22bにより図2における左方向に搬送されるようになる。また、三方弁34には吸引管33の一端も接続されており、当該吸引管33の他端は大気開放されている。このような三方弁34や各吸引管32、33、36の構成の詳細について図11および図12を用いて説明する。
図11に示すように、三方弁34には3つの開口部34cが設けられており、各開口部34cに吸引管32、33、36の端部がそれぞれ接続されている。また、三方弁34には軸34bを中心として回転可能な弁体34aが設けられており、弁体34aが図12における実線位置にあるときには吸引管32および吸引管36が連通し、吸引機構38により吸着部24から吸引管32、三方弁34および吸引管36を介して空気の吸引が行われるようになる。一方、弁体34aが軸34bを中心として図12における実線位置から回転して二点鎖線位置に移動すると、吸引管32および吸引管33が連通するようになる。ここで吸引管33の他端が大気開放されていることにより、吸着部24内の空気も大気開放され、よって吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着が停止するようになる。
また、本実施の形態では、図2に示すように、吸着部24におけるウエブWに面する側の表面には薄い金属板等からなる多孔質板26が設けられるようになっている。図3乃至図6に示すように、多孔質板26には直径が例えば10μmである複数の貫通穴26aが均等に形成されるようになっており、吸着部24によりウエブWの吸着が行われる際に、搬送部22のベルト22bにより搬送されるウエブWの近傍の空気が多孔質板26の各貫通穴26aを介して吸着部24に吸引されることによってウエブWがベルト22bに吸着されるようになっている。
図2に示すように、搬送部22は載置台28に載せられるようになっている。また、載置台28には、搬送部22におけるベルト22bの位置をウエブWの幅方向(すなわち、図2において紙面に直交する方向)に沿ってシフトさせるためのシフト部30が設けられている。このようなシフト部30により、搬送部22におけるベルト22bは図2において紙面に直交する方向に沿って移動可能となっている。
また、吸着搬送装置20において、ウエブWの搬送方向における搬送部22の下流側端部の近傍には、当該搬送部22により搬送された後のウエブWの異常を検知するためのウエブ検知部39が設けられている。具体的には、ウエブ検知部39は例えばレーザー変位計等から構成されており、搬送部22により搬送された後のウエブWにシワやたるみ、折れ等の異常が発生していた場合にはウエブ検知部39によってこのようなウエブWのシワやたるみ、折れ等が検知されるようになっている。
また、本実施の形態の処理システム10には、当該処理システム10の各構成部材の制御を行う制御部50が設けられており、制御部50により処理システム10の各構成部材が制御されることによって当該処理システム10においてウエブWに対して処理が行われるようになっている。また、ウエブ検知部39によるウエブWの検知情報は制御部50に送られるようになっている。
また、本実施の形態では、吸着搬送装置20において、多孔質板26の裏面にフィルムが貼られることにより(すなわち、多孔質板26と吸着部24との間にフィルムが設けられることにより)、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようになっている。具体的には、多孔質板26において均等に設けられた各貫通穴26aがフィルムによって塞がれることにより、多孔質板26におけるウエブWの吸着領域の範囲が規制されるようになっている。このような多孔質板26の裏面に貼られるフィルムの様々な例について図3乃至図6を用いて説明する。なお、図3乃至図6においてウエブWの搬送方向を矢印で示している。また、図3乃至図6における上下方向がウエブWの幅方向となる。
図3に示す例では、直角三角形の2枚のフィルム60が、ウエブWの搬送方向における多孔質板26の裏面における上流側の縁部の近傍に貼られるようになっている。ここで、多孔質板26における各フィルム60が貼られた領域以外の領域(すなわち、貫通穴26aが各フィルム60によって塞がれていない領域)がウエブWの吸着領域となるが、図3に示すように、このようなウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が尖っており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図3における左側)に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24により吸着されるようになる。このように、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。すなわち、もし仮にこのような各フィルム60が設けられておらず、ウエブWの幅方向全域を吸着部24によって一度に吸着した場合には、当該ウエブWの絵柄パターンに応じてこのウエブWにシワが生じてしまうおそれがあるが、本実施の形態では、ウエブWが吸着部24によって吸着される領域を幅方向中央位置から徐々に外側に広げることにより、ウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
なお、ウエブWにシワが発生することを抑制するために多孔質板26の裏面に貼られるフィルムは図3に示すような形状のものに限定されることはない。ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようにすることができるものであれば、多孔質板26に貼られるフィルムの形状を様々なものに変更することができる。
例えば、多孔質板26の裏面に貼られるフィルムとして、図4に示すような一対のフィルム62が用いられてもよい。図4に示すような各フィルム62が多孔質板26に貼られた場合には、当該多孔質板26における各フィルム62が貼られた領域以外の領域(すなわち、貫通穴26aが各フィルム62によって塞がれていない領域)がウエブWの吸着領域となるが、図4に示すように、このようなウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が狭くなっており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図4における左側)に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24により吸着されるようになる。このように、図4に示すような一対のフィルム62が多孔質板26の裏面に貼られた場合でも、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
また、多孔質板26の裏面に貼られるフィルムとして、図5に示すような一対のフィルム64が用いられてもよい。図5に示すような各フィルム64が多孔質板26に貼られた場合には、当該多孔質板26における各フィルム64が貼られた領域以外の領域(すなわち、貫通穴26aが各フィルム64によって塞がれていない領域)がウエブWの吸着領域となるが、図5に示すように、このようなウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が尖っており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図5における左側)に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24により吸着されるようになる。このように、図5に示すような一対のフィルム64が多孔質板26の裏面に貼られた場合でも、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
また、多孔質板26の裏面に貼られるフィルムとして、図6に示すような一対の矩形のフィルム66が用いられてもよい。図6に示すような各フィルム66が多孔質板26に貼られた場合には、当該多孔質板26における各フィルム66が貼られた領域以外の領域(すなわち、貫通穴26aが各フィルム66によって塞がれていない領域)がウエブWの吸着領域となるが、図6に示すように、このようなウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が狭くなっており、ウエブWの搬送方向における下流側ではウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図6における左側)に移動すると吸着部24により吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24により吸着されるようになる。このように、図6に示すような一対のフィルム66が多孔質板26の裏面に貼られた場合でも、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が中央位置から外側に向けて大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
また、本実施の形態では、図2に示すような構成の吸着搬送装置20が用いられる代わりに、図7に示すような構成の吸着搬送装置20aが用いられるようになっていてもよい。図7に示す吸着搬送装置20aは、吸着部24の表面に多孔質板26が設けられる代わりに金属板27がウエブWと搬送部22のベルト22bとの間に設けられる点で図2に示す吸着搬送装置20と異なっているが、他の構成については実質的に図2に示す吸着搬送装置20と略同一となっている。図7に示す吸着搬送装置20aを説明するにあたり、図2に示す吸着搬送装置20と同一の構成部材については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図7に示す吸着搬送装置20aでは、吸着部24の表面に多孔質板26が設けられる代わりに、搬送部22のベルト22bの表面に薄い金属板27が位置固定で設けられるようになっており、この金属板27はウエブWとベルト22bとの間に挟まれるようになる。ここで、多孔質板26と異なり、金属板27には貫通穴が設けられていない。このような吸着搬送装置20aでは、ウエブWとベルト22bとの間に金属板27が設けられることにより、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようになっている。このような金属板27の構成について図8を用いて説明する。なお、図8においてウエブWの搬送方向を矢印で示している。また、図8における上下方向がウエブWの幅方向となる。
図8に示す例では、直角三角形の2枚の金属板27が、ウエブWとベルト22bとの間に位置固定で設けられるようになっている。ここで、吸着部24における各金属板27が設けられた領域以外の領域(すなわち、貫通穴26aが各金属板27によって塞がれていない領域)がウエブWの吸着領域となるが、図8に示すように、このようなウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が尖っており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図8における左側)に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24により吸着されるようになる。このように、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24により吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
なお、ウエブWにシワが発生することを抑制するためにウエブWとベルト22bとの間に設けられる金属板27は図8に示すような形状のものに限定されることはない。ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようにすることができるものであれば、ウエブWとベルト22bとの間に設けられる金属板27の形状を様々なものに変更することができる。
また、本実施の形態では、吸着部24に設けられた多孔質板26に各フィルム60、62、64、66が貼られたりウエブWと搬送部22のベルト22bとの間に金属板27が設けられたりする代わりに、図9に示すような形状の吸着部24mが用いられるようになっていてもよい。なお、図9においてウエブWの搬送方向を矢印で示している。また、図9における上下方向がウエブWの幅方向となる。図9に示すような形状の吸着部24mが用いられる場合には、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようになる。具体的には、図9に示すような形状の吸着部24mが用いられる場合には、ウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が尖っており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図9における左側)に移動するにつれて吸着部24mにより吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24mにより吸着されるようになる。このように、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24mにより吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
なお、ウエブWにシワが発生することを抑制するような吸着部24mは図9に示すような形状のものに限定されることはない。ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようにすることができるものであれば、吸着部24mの形状を様々なものに変更することができる。
また、本実施の形態における更に別の吸着部の構成として、図10に示すような複数の空気室24aに分割された吸着部24nが用いられるようになっていてもよい。なお、図10においてウエブWの搬送方向を矢印で示している。また、図10における上下方向がウエブWの幅方向となる。このような吸着部24nでは、各空気室24aについてウエブWの吸着を行うか否かを空気室24a毎に設定することができるようになっている。ここで、図10に示すように、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるよう、各空気室24aについてウエブWの吸着を行うか否かを設定した場合には(具体的には、図10において「○」印のついた空気室24aについてはウエブWの吸着を行うようにし、「×」印のついた空気室24aについてはウエブWの吸着を行わないようにした場合には)、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が広がるようになる。具体的には、図10に示すように吸着部24nの各空気室24aについてウエブWの吸着を行うか否かを設定した場合には、ウエブWの吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が狭くなり、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従ってウエブWの幅方向における吸着領域が徐々に広がるようになる。このことにより、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWは、下流側(すなわち、図10における左側)に移動するにつれて吸着部24nにより吸着される領域が幅方向中央位置から外側に向けて徐々に大きくなり、最終的にはウエブWの幅方向全域が吸着部24nにより吸着されるようになる。このように、搬送部22により搬送されるウエブWについて、当該ウエブWが下流側に移動するにつれて吸着部24nにより吸着される領域が中央位置から外側に向けて徐々に大きくなるため、このようなウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
次に、図1等に示すような構成からなる処理システム10によるウエブWの処理方法について図13に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下に示すような処理システム10によるウエブWの処理方法は、制御部50が当該処理システム10の各構成部材を制御することによって行われるようになっている。
まず、巻出ロール12が起動され、当該巻出ロール12からウエブWが巻き出されるようになる(STEP1)。また、ニップロール搬送系の電源がオンとなり、各ニップロール14、16、18が回転駆動されるようになる(STEP2)。このことにより、巻出ロール12から巻き出されたウエブWの先端部分が各ニップロール14、16、18により搬送されるようになる(すなわち、ウエブWのいわゆるパス通しが行われる)。巻出ロール12から巻き出されたウエブWの先端部分が各ニップロール14、16、18により搬送されると、ニップロール搬送系が一旦停止される(STEP3)。その後、加工処理装置40が起動されるとともにコンベア搬送系の電源がオンとなり、吸着搬送装置20によってウエブWの搬送が行われるようになる(STEP4)。このことにより、ウエブWに対して印刷等の加工処理を行うことができるようになる。なお、吸着搬送装置20によってウエブWの搬送が行われる最中は図1における上側のニップロール16、18がそれぞれ下側のニップロール16、18から離間するよう移動することにより各ニップロール16、18によりウエブWの搬送は行われなくなる。ここで、上側のニップロール16、18がそれぞれ下側のニップロール16、18から離間するよう図1における上方に移動することにより、これらの上側のニップロール16、18がウエブWから離間するようになり、加工処理装置40によってウエブWの表面に施された加工処理の内容がニップロール16、18によって汚損されてしまうことを防止することができるようになる。また、吸着搬送装置20によってウエブWの搬送が行われる最中に、一対のニップロール14によって巻出ロール12から巻き出されたウエブWの張力が調整されるようになる。
吸着搬送装置20によってウエブWの搬送が行われるとともに加工処理装置40によってウエブWに対して加工処理が行われる際に、吸着搬送装置20のウエブ検知部39によってウエブWに異常が発生しているか否かの検知が行われる(STEP5)。ここで、搬送部22により搬送された後のウエブWにシワやたるみ、折れ等の異常が発生していた場合にウエブ検知部39によってこのようなウエブWのシワやたるみ、折れ等が検知されると(STEP5の「YES」)、制御部50において異常原因が判断され(STEP6)、異常解消のための処理が行われる(STEP7)。具体的には、吸着部24によって搬送部22のベルト22bに吸着されながら当該ベルト22bにより搬送された後のウエブWにシワやたるみ、折れ等が発生していることがウエブ検知部39により検知されると、三方弁34において弁体34aが図12における実線位置から二点鎖線位置に切り替えられることにより、吸引管32および吸引管33が連通するようになる。上述したように、吸引管33の他端が大気開放されていることにより、吸着部24内の空気も大気開放され、よって当該吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着が停止するようになる。このことにより、ウエブWに生じていたシワやたるみ、折れ等の異常が解消される。その後、三方弁34において弁体34aが図12における二点鎖線位置から実線位置にすぐに切り替えられることにより、吸引管32および吸引管36が連通するようになり、吸引機構38により吸着部24から再び空気が吸引されるようになる。このことにより、吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着が再び行われるようになり、よって吸着搬送装置20によるウエブWの搬送が再開されるようになる。本実施の形態では、吸着部24の空気が吸引管33により大気開放されるよう三方弁34において弁体34aが切り替えられる時間は予め設定された時間(例えば、0.12秒以下の短い時間)となっている。すなわち、三方弁34において弁体34aが図12における実線位置から二点鎖線位置に切り替えられた後、予め設定された時間が経過するとすぐに当該弁体34aが図12における二点鎖線位置から実線位置に切り替えられることにより、ウエブWに発生したシワやたるみ、折れ等の異常を確実に解消しながら、吸着搬送装置20によるウエブWの搬送が中断する時間をできるだけ短くすることができるようになる。
また、本実施の形態による吸着搬送装置20では、予め設定された所定の周期時間が経過する度に、吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を停止させ、予め設定された時間(例えば、0.12秒以下の短い時間)が経過した後に吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を再開させるようになっていてもよい。このように、吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を周期的に停止させ、吸着部24内の空気を定期的に大気開放することにより、ウエブWにシワやたるみ、折れ等の異常が発生した場合でもこのような異常を解消することができ、吸着搬送装置20によってウエブWを安定的に搬送することができるようになる。
また、本実施の形態による処理システム10の吸着搬送装置20では、ウエブWの異常を検知するためのウエブ検知部として、搬送部22により搬送されるウエブWの蛇行を検知するための図示しないEPC変位計(蛇行検知部)が設けられている。そして、EPC変位計によりウエブWの蛇行が検知されたときに、ウエブWを幅方向に移動させる余裕(いわゆるサイドレールマージン)がある場合には、シフト部30によって搬送部22におけるベルト22bの位置をウエブWの幅方向(すなわち、図2において紙面に直交する方向)に沿ってシフトさせ、このことによりウエブWを所定の位置にシフトさせることにより当該ウエブWの蛇行を解消する。ここで、シフト部30によるベルト22bのシフト動作は何回かに分けて小刻みに行われるようになっていてもよい。一方、EPC変位計によりウエブWの蛇行が検知されたときに、ウエブWを幅方向に移動させる余裕(サイドレールマージン)がない場合には、まず、三方弁34において弁体34aを図12における実線位置から二点鎖線位置に切り替えることによって吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を停止させ、次にシフト部30によって搬送部22におけるベルト22bの位置を原点位置にシフトさせる。その後、三方弁34において弁体34aを図12における二点鎖線位置から実線位置に切り替えることによって吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を再開させた後、ウエブWが所定の位置に到達するようシフト部30によって搬送部22におけるベルト22bの位置をウエブWの幅方向に沿ってシフトさせる。このことにより当該ウエブWの蛇行が解消される。
また、本実施の形態による処理システム10の吸着搬送装置20では、ウエブWと搬送部22のベルト22bとの間に異物が噛み込んでいるか否かの外観検査が行われるようになっていてもよい。このような外観検査は作業者によって目視にて行われてもよく、あるいは搬送部22のベルト22bの側方に設けられたカメラ等により行われてもよい。吸着搬送装置20においてウエブWと搬送部22のベルト22bとの間に異物が噛み込んでいることが検知されると、まず、三方弁34において弁体34aを図12における実線位置から二点鎖線位置に切り替えることによって吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を停止させ、次に搬送部22のベルト22bの駆動を停止させる。その後、搬送部22のベルト22bを掃除することによりウエブWと搬送部22のベルト22bとの間にある異物を除去する。異物が除去されると、搬送部22のベルト22bの駆動が再開されるとともに吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着が再開される。
また、本実施の形態による処理システム10の吸着搬送装置20では、レーザー変位計等からなるウエブ検知部39の数値に異常があるか否かの検査が行われるようになっていてもよい。このような検査は作業者によって目視にて行われてもよく、あるいはウエブ検知部39の数値に異常がある場合に当該ウエブ検知部39からアラームが発せられるようになっていてもよい。ウエブ検知部39の数値に異常があることが検知されると、まず、三方弁34において弁体34aを図12における実線位置から二点鎖線位置に切り替えることによって吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を停止させ、予め設定された時間(例えば、0.12秒以下の短い時間)が経過した後に吸着部24によるウエブWのベルト22bへの吸着を再開させる。その後、ウエブ検知部39においてゼロ点リセットが行われる。このようにして、ウエブ検知部39の数値に異常がある場合でも当該ウエブ検知部39の異常を解消することができるようになる。
また、本実施の形態による処理システム10では、ウエブWの異常を検知するためのウエブ検知部として、ウエブWの張力を検知するための張力計(図示せず)が設けられていてもよい。この場合には、張力計により検知されるウエブWの張力に異常があるときに、操作者が処理システム10の制御盤(図示せず)の数値を目視で確認したり、あるいは制御盤からアラームが発せられたりするようになる。そして、ウエブWの張力に異常があることが検知されると、巻出ロール12から巻き出されるウエブWの速度に対する、吸着搬送装置20において搬送部22により搬送されるウエブWの相対的な速度を調整することにより、ウエブWの張力が適正な値に戻されるようになっている。このようにして、ウエブWの張力に異常がある場合でも当該ウエブWの張力の異常を解消することができるようになる。
次に、処理システム10においてウエブWへの処理を終了させるための動作について説明する。加工処理装置40によるウエブWへの処理を終了させる場合には(STEP8の「YES」)、まず吸着搬送装置20の検知システム(具体的には、例えばウエブ検知部39)をオフとする(STEP9)。次に、吸着搬送装置20の搬送部22によるウエブWの搬送を終了する(STEP10)。また、吸着搬送装置20においてコンベアでの吸着を停止させる(STEP11)。具体的には、ブロワ等の吸引機構38を停止させることにより吸着部24がウエブWをベルト22bに吸着させないようにする。その後、巻出ロール12によるウエブWの巻き出し動作を停止させる(STEP12)。また、加工処理装置40を停止させる。最後に、処理システム10の全体の電源をオフにする(STEP13)。このようにして、処理システム10におけるウエブWへの処理が完全に終了するようになる。
以上のような構成からなる本実施の形態の吸着搬送装置20やこのような吸着搬送装置20による吸着搬送方法によれば、ウエブWを搬送するための搬送部22、およびウエブWを搬送部22に吸着させるための吸着部24がそれぞれ設けられており、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着部24による吸着領域が広がるようになっている。この場合には、吸着部24によりウエブWを搬送部22(具体的には、ベルト22b)に吸着させる際に当該ウエブWにシワ等の異常が発生することを抑制することができる。より詳細には、もし仮にウエブWの幅方向全域を吸着部24によって一度に搬送部22に吸着させると当該ウエブWの絵柄パターンに応じてこのウエブWにシワが生じてしまうおそれがあるが、本実施の形態の吸着搬送装置20や吸着搬送方法では、ウエブWが吸着部24によって吸着される領域を徐々に大きくすることにより、吸着部24によりウエブWを搬送部22(具体的には、ベルト22b)に吸着させる際に当該ウエブWにシワが発生することが抑制されるようになる。
また、本実施の形態の吸着搬送装置20においては、上述したように、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着部24による吸着領域が広がるよう吸着部24による吸着領域の範囲を規制する規制部(具体的には、フィルム60、62、64、66)が設けられている。なお、本実施の形態では、吸着部24による吸着領域の範囲を規制する規制部は図3乃至図6に示すような各種のフィルム60、62、64、66に限定されることはない。また、本実施の形態では、規制部により規制された吸着部24による吸着領域は、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における中央位置から外側に広がるようになっている。また、図3や図5に示すように、規制部により規制された吸着部24による吸着領域は、ウエブWの搬送方向における上流側端部が尖っていてもよい。
また、本実施の形態の吸着搬送装置20においては、上述したように、ウエブWと吸着部24との間には多孔質板26が設けられており、各フィルム60、62、64、66等からなる規制部は多孔質板26の裏面(すなわち、吸着部24と多孔質板26との間)に設けられている。なお、本実施の形態では、各フィルム60、62、64、66等からなる規制部は多孔質板26の裏面に設けられることに限定されることはなく、規制部が多孔質板26の表面(すなわち、多孔質板26における搬送部22のベルト22b側の面)に設けられるようになっていてもよい。
また、図7や図8に示すような変形例に係る吸着搬送装置20aにおいては、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着部24による吸着領域が広がるよう吸着部24による吸着領域の範囲を規制する金属板27が規制部として搬送部22(具体的には、ベルト22b)とウエブWとの間に設けられている。この場合でも、吸着部24によりウエブWを搬送部22(具体的には、ベルト22b)に吸着させる際に当該ウエブWにシワが発生することを抑制することができる。ここで、搬送部22(具体的には、ベルト22b)とウエブWとの間に設けられる規制部として、例えば位置固定で設けられた板状のもの(具体的には、板状の金属板27)が用いられるようになる。
また、本実施の形態では、図9に示すように、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着領域が広がるような形状の吸着部24mが用いられるようになっていてもよい。また、図10に示すように、複数の空気室24aに分割された吸着部24nが用いられ、ウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着部24nによる吸着領域が広がるよう、各空気室24aにおいて吸着を行うか否かの設定が空気室24a毎に行われるようになっていてもよい。
なお、本実施の形態による処理システムおよびこのような処理システムによるウエブWの処理方法は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、本実施の形態による処理システムとして、図14に示すようなロールtoロール方式の処理システム10aが用いられてもよい。このような処理システム10aでは、加工処理装置40により印刷等の加工処理が行われた帯状のウエブWは巻取ロール13により巻き取られるようになる。このようなロールtoロール方式の処理システム10aでも、図1等に示すような処理システム10と同様に、吸着搬送装置20においてウエブWの搬送方向における下流側に向かうに従って当該ウエブWの幅方向における吸着部24による吸着領域が広がるようになっている。このことにより、吸着部24によりウエブWを搬送部22(具体的には、ベルト22b)に吸着させる際に当該ウエブWにシワ等の異常が発生することを抑制することができる。