JP6468008B2 - 余熱乾燥式食器洗い乾燥機の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、光輝焼鈍ステンレス鋼の欠点としては、その表面が疎水性であるため、洗浄後の表面が水滴となり、乾燥に時間がかかることが挙げられる。乾燥時間が長くなることは、省エネルギーの観点から好ましくない。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の余熱乾燥式食器洗い乾燥機は、光輝焼鈍処理されたステンレス鋼からなる内壁を有し、その内壁の表面に、酸化ジルコニウムと縮合リン酸を含む薄膜が設けられてなる。
薄膜の厚さを0.1μm以上とすると、薄膜に充分な親水性が得られる。一方、薄膜の厚さを1μm以下とすると、薄膜が白化することがない。
上記の接触角を20度以下とすると、薄膜の表面に部分的に水滴が生じることを防止できる。
なお、食器洗い機専用洗剤は、泡立ちのない強アルカリ性の洗剤であり、例えば、アース製薬社製のフィニッシュ(登録商標)が挙げられる。本実施形態の余熱乾燥式食器洗い乾燥機において、リンス剤の使用は特に制限されない。
薄膜における酸化ジルコニウムの含有率を80質量%以上とすると、薄膜において、優れた耐アルカリ性を長期間にわたって保持することができる。しかしながら、薄膜における酸化ジルコニウムの含有率が80質量%未満では、薄膜の耐アルカリ性が不充分となり、薄膜が長期間の使用に耐えることができなくなる。
なお、薄膜における酸化ジルコニウム以外の成分は、縮合リン酸塩、および、その他の無機物である。
本実施形態の余熱乾燥式食器洗い乾燥機の製造方法は、加温された光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に、ジルコニウム化合物を含有する第1の塗布液を塗布し、続いて、縮合リン酸を含有する第2の塗布液を塗布して、第1の塗布液と第2の塗布液からなる塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)と、塗膜を熱処理して、光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に、酸化ジルコニウムと縮合リン酸を含む薄膜を形成する工程(薄膜形成工程)と、を有する。加温しない場合には、長時間をかけて小量ずつ塗布すると干渉色は発生しないが、これは製造効率上好ましくない。
第1の塗布液は、上記のジルコニウム化合物と、このジルコニウム化合物を溶解する溶媒と、を含む。
溶媒としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類等の有機溶剤が用いられる。また、第1の塗布液には、ジルコニウム化合物を溶解可能な範囲で水を添加することもできる。
また、第1の塗布液には、上記のアルコキシド以外にも、ジルコニウム酸化物のゾル分散液および水溶性塩を含んでいてもよい。
光輝焼鈍ステンレス鋼を加温する温度を25℃以上とすると、光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に第1の塗布液を塗布したときに、溶媒が流動することなく、蒸発する。一方、光輝焼鈍ステンレス鋼を加温する温度を100℃以下とすると、ジルコニウム化合物の粒子が紛体となり、第1の塗布液および第2の塗布液からなる塗膜の表面が平滑となる。
縮合リン酸は、主としてナトリウム塩として入手することができる。縮合リン酸のナトリウム塩としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、2リン酸2水素2ナトリウム等が挙げられる。これらの縮合リン酸のナトリウム塩のうち水溶性のものは、水溶液として塗布可能である。
珪酸アルカリとしては、特に限定されないが、例えば、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等が挙げられる。
珪酸アルカリに吸収された縮合リン酸からなる被膜は、食器洗い乾燥機を使用した時、食器洗い機専用洗剤に溶解するため、自動的に除去される。しかし、酸化ジルコニウムの表面に吸着した縮合リン酸は残存するため、光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に形成された薄膜の性能が劣化することはない。
第2の塗布液における縮合リン酸の含有率を0.5質量%以上とすると、酸化ジルコニウムの表面に対して縮合リン酸を充分に吸着することができるため、酸化ジルコニウムに充分に親水性を付与することができる。一方、第2の塗布液における縮合リン酸の含有率を5質量%以下とすると、酸化ジルコニウムに吸着しない縮合リン酸の量を少なくすることができるため、経済的である。
第2の塗布液における珪酸アルカリの含有率を、第2の塗布液における縮合リン酸の含有率の1%以上かつ20%以下とすると、縮合リン酸が粉末状に析出することを防止できる。
塗膜の熱処理温度を200℃以上とすると、得られる薄膜は充分な膜強度を有するものとなる。なお、熱処理温度が高過ぎると、基体である光輝焼鈍ステンレス鋼が変色するおそれがあるため、光輝焼鈍ステンレス鋼の材質に応じて、熱処理温度を調整する。熱処理時の雰囲気は、特に限定されず、通常、大気雰囲気とする。
また、得られた薄膜を水洗して、薄膜に含まれる過剰の縮合リン酸を除去することが好ましい。
上述のようにして形成された酸化ジルコニウムと縮合リン酸を含む薄膜の表面では、食器洗い機専用洗剤で洗浄し、この洗剤をすすいだ後の接触角が20度以下となる。これは、縮合リン酸により、酸化ジルコニウムに導入された水酸基(−OH)に、洗剤中の界面活性剤が一時的に吸着し、親水性が高まるためであると考えられる。また、薄膜の接触角が20度以下であれば、余熱乾燥式食器洗い乾燥機の余熱乾燥工程中に、光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に設けられた薄膜に水滴が形成することなく、水膜となるため、余熱乾燥式食器洗い乾燥機の内壁面を効率よく乾燥することができる。
予め60℃に加温した余熱乾燥式食器洗い乾燥機用ステンレス鋼板(光輝焼鈍処理SUS430、40cm×60cm、新日鉄住金社製)の表面に、スプレー法により、1分間で、ナノジルコニアジルコニアゾル(粒子径3nm、2%水分散液、住友大阪セメント社製)10gを塗布し、ナノジルコニアジルコニアゾルからなる塗膜を形成した。
次いで、上記の塗膜に、スプレー法により、1分間で、ピロリン酸ナトリウムを5質量%含むピロリン酸ナトリウム水溶液10gを塗布し、上記のステンレス鋼板の表面に、ナノジルコニアジルコニアゾルおよびピロリン酸ナトリウム水溶液からなる塗膜を形成した。
次いで、ナノジルコニアジルコニアゾルおよびピロリン酸ナトリウム水溶液からなる塗膜を、300℃にて1時間焼成し、酸化ジルコニウムとピロリン酸ナトリウムを含む薄膜を形成した。
その後、得られた薄膜を水洗して、薄膜に含まれる過剰のピロリン酸ナトリウムを除去した。
また、蛍光X線分析法により、薄膜の厚さを測定した結果、0.2μmであった。
また、蛍光X線分析法により、薄膜の組成を分析した結果、酸化ジルコニウムを98質量%、リンをP2O5換算で2質量%含有していることが確認された。
また、薄膜が形成されたステンレス鋼板を、余熱乾燥式食器洗い乾燥機の内壁面に設置し、食器洗い機専用洗剤(商品名:フィニッシュ、アース製薬社製)を用いて洗浄、すすぎ、乾燥を行った。その後、共和界面化学社製の接触角計により、薄膜の表面における水の接触角を測定したところ、10度であり、薄膜の表面に水滴が残存していなかった。
ジルコニウムのアルコキシドであるジルコニウムテトラブトキシドと、テトラメトキシシランとの混合物6重量部、アセト酢酸エチル3重量部、2−プロパノール91重量部を室温(25℃)下にて30分間混合し、ジルコニウムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物、あるいは、ジルコニウムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物およびテトラメトキシシランとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成し、これらのキレート化合物を含む塗布液を調製した。ジルコニウムテトラブトキシドとテトラメトキシシランの比率を、質量比で、ZrO2:SiO2に換算して、10:0、9:1、8:2となるように調整した。
次いで、予め60℃に加温した余熱乾燥式食器洗い乾燥機用ステンレス鋼板(光輝焼鈍処理SUS430、40cm×60cm、新日鉄住金社製)の表面に、スプレー法により、1分間で、上記の塗布液10gを塗布し、上記の塗布液からなる塗膜を形成した。
次いで、上記の塗膜に、スプレー法により、1分間で、2リン酸2水素2ナトリウムを1質量%と珪酸リチウムを0.02質量%含む混合水溶液10gを塗布し、上記のステンレス鋼板の表面に、上記の塗布液および2リン酸2水素2ナトリウム水溶液からなる塗膜を形成した。
次いで、上記の塗布液および2リン酸2水素2ナトリウム水溶液からなる塗膜を、250℃にて30分間焼成し、酸化ジルコニウムと2リン酸2水素2ナトリウムを含む薄膜を形成した。
その後、得られた薄膜には、過剰の2リン酸2水素2ナトリウムが析出しておらず、洗浄の必要がなかった。
また、蛍光X線分析法により、薄膜の厚さを測定した結果、0.2μmであった。
また、蛍光X線分析法により、薄膜の組成を分析した結果、酸化ジルコニウムを98質量%、88質量%、78質量%、リンをP2O5換算で2質量%含有していることが確認された。
また、薄膜が形成されたステンレス鋼板を、余熱乾燥式食器洗い乾燥機の内壁面に設置し、食器洗い機専用洗剤(商品名:フィニッシュ、アース製薬社製)を用いて洗浄、すすぎ、乾燥を行った。その後、共和界面化学社製の接触角計により、薄膜の表面における水の接触角を測定したところ、5度であり、薄膜の表面に水滴が残存していなかった。
また、薄膜が形成されたステンレス鋼板を、食器洗い機専用洗剤(商品名:フィニッシュ、アース製薬社製)を5質量%含む、90℃の水溶液に100日間浸漬した後、表面を観察したところ、酸化ジルコニウムを78質量%含有する薄膜のみ、わずかに塗膜の剥離が認められた。この結果から、酸化ジルコニウムの含有率は、80質量%以上が好適と考えられる。
実験例2において、予め余熱乾燥式食器洗い乾燥機用ステンレス鋼板を加熱せず、20℃にて、上記の塗布液および2リン酸2水素2ナトリウム水溶液を塗布したこと以外は実験例2と同様にして、ステンレス鋼板の表面に酸化ジルコニウムと2リン酸2水素2ナトリウムを含む薄膜を形成した。
得られた薄膜の表面を目視により観察したところ、薄膜の表面に干渉色が発生していた。
実験例2において、2リン酸2水素2ナトリウムを1質量%と珪酸リチウムを0.02質量%含む混合水溶液10gを塗布しなかったこと以外は実験例2と同様にして、ステンレス鋼板の表面に酸化ジルコニウムを含む薄膜を形成した。
得られた薄膜が形成されたステンレス鋼板を、余熱乾燥式食器洗い乾燥機の内壁面に設置し、食器洗い機専用洗剤(商品名:フィニッシュ、アース製薬社製)を用いて洗浄、すすぎ、乾燥を行った。その後、共和界面化学社製の接触角計により、薄膜の表面における水の接触角を測定したところ、25度であり、薄膜の表面に水滴が付着していることが確認された。
Claims (3)
- 25℃以上かつ100℃以下に加温された光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に、ジルコニウム化合物を含有する第1の塗布液を塗布し、続いて、縮合リン酸および珪酸アルカリを含有する第2の塗布液を塗布して、前記第1の塗布液と前記第2の塗布液からなる塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を200℃以上の熱処理温度で熱処理して、前記光輝焼鈍ステンレス鋼の表面に、前記酸化ジルコニウムと前記縮合リン酸を含む薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする余熱乾燥式食器洗い乾燥機の製造方法。 - 前記第2の塗布液における前記縮合リン酸の含有率は、0.5質量%以上かつ5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の余熱乾燥式食器洗い乾燥機の製造方法。
- 前記第2の塗布液における珪酸アルカリの含有率は、前記第2の塗布液における前記縮合リン酸の含有率の1%以上かつ20%以下であることを特徴とする請求項2に記載の余熱乾燥式食器洗い乾燥機の製造方法。
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