以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<本発明の実施の形態である標的装置の構成例>
図1は、本発明の実施の形態である標的装置の構成例を示す斜視図である。
この標的装置11は、ソフトエアガンを用いた射撃の標的を表示する機構、標的装置11に対して射撃されたBB弾12を回収する回収機構、BB弾12が着弾した際の着弾点や着弾速度などを検出するための検出信号を出力する機能などを備える。
図1における一点鎖線の矢印は、射撃されたBB弾12の経路の一例を示しており、標的装置11に対してBB弾12が向かってくる側(図1の右下側)を、標的装置11の前面側とし、その反対側(図1の左上側)を標的装置11の背面側とする。
標的装置11の背面側には、標的を表す画像(以下、標的画像と称する)を表示するLCD(liquid crystal display)などから成るディスプレイ30が備わる。そして、標的装置11の奥に見える標的画像に対して射撃されたBB弾12は、ディスプレイ30の前面側に設けられた透明な標的板24に当たり、標的装置11の内部で反射したり転がったりした後、標的装置11を前面側から見て左方に配置されている回収ケース13に回収される。
図示するように、標的装置11は、筐体21、前面板22、背面板23、標的板24、捕集板25、排出口ノズル26、音響センサ27−1乃至27−4、信号処理基板28、およびディスプレイ30を備える。
筐体21は、上面板21a、右側面板21b、左側面板21c、および下面板21dを組み付けることで上下面および左右側面が構成され、前面および背面が開口した矩形の筒形状となっている。上面板21aは、筐体21の上側の面を構成する板状の部材であり、右側面板21bは、筐体21の右側の面を構成する板状の部材である。また、左側面板21cは、筐体21の左側の面を構成する板状の部材であり、下面板21dは、筐体21の下側の面を構成する板状の部材である。
前面板22は、筐体21の前方の開口部における下辺近傍を覆うように、筐体21に取り付けられる板状の部材である。
背面板23は、筐体21の後方の開口部の全面を覆うように、筐体21に取り付けられる透明な板状の部材である。
標的板24は、ディスプレイ30に表示された標的画像を透過させるとともに、その標的画像に向かってソフトエアガンにより発射されたBB弾12の衝突を受け止め得る板状の部材から成り、全体的に平坦となるように、即ち、撓みが生じないように、上下端および左右端が筐体21の内面に対して前面側から固定される。例えば、標的板24には、衝撃に対して所定の可塑性を有する材質(復元速度が緩やかな材質)の部材(具体的には、厚み2.0mmの軟質の塩化ビニル樹脂など)が用いられる。このような材質の部材を用いることで、BB弾12が標的板24に着弾したとき、ゆっくりと元の形状に復元するので、標的装置11の外部に及ぶような跳弾の発生を抑止することができる。また、上述したように、標的板24を前面側から取り付けるようにしたので、ディスプレイ30および背面板23を取り外すことなく、標的板24を容易に交換することができる。
背面板23および標的板24を透明な部材で構成することにより、ユーザは、ディスプレイ30に表示される標的画像を標的装置11の前面側から視認することができる。
捕集板25は、筐体21の内部であって、標的板24の前面側の空間であり、かつ、筐体21の前方の開口部の下端(前面板22の上端面)よりも下方の空間に配置され、全体的に、背面側に向かって下るとともに、左面側に向かって下るような傾斜を有するように固定される。
排出口ノズル26は、筐体21の左側面板21cに形成されるBB弾の排出口を覆うように、左側面板21cの外面に取り付けられ、排出口から出たBB弾12を回収ケース13に導く。
音響センサ27−1乃至27−4は、例えば、BB弾12が標的板24に着弾したときに生じる衝撃音を取得し、取得した衝撃音の振幅の変化に従った音響信号を信号処理基板28に供給する。
音響センサ27−1乃至27−4の配置については、標的板24の背面側であって、それぞれ標的板24の四隅に近い位置となるように、筐体21の内側に固定される。例えば、音響センサ27−1は、左側面板21cの内側を向く面の上端近傍に配置され、音響センサ27−2は、右側面板21bの内側を向く面の上端近傍に配置される。また、音響センサ27−3は、左側面板21cの内側を向く面の下端近傍に配置され、音響センサ27−4は、右側面板21bの内側を向く面の下端近傍に配置される。以下、音響センサ27−1乃至27−4をまとめて音響センサ27と称する。なお、本実施の形態では4個の音響センサ27−1乃至27−4を用いた構成について説明したが、音響センサ27の個数は4個に限定されるものではない。例えば、3個や6個、8個など、標的装置11のサイズまたは形状に応じて、着弾位置などを適切に測定可能な個数の音響センサ27を用いることができる。
音響センサ27が配置される空間は、標的板24により前面側が閉鎖され、筐体21により上下および左右が閉鎖され、背面板23により背面側が閉鎖されている。即ち、音響センサ27は、筐体21、背面板23、および標的板24によって外部から閉鎖されている閉空間29に配置される。
信号処理基板28は、下面板21dと捕集板25との間の空間に配置される。そして、信号処理基板28は、BB弾12が標的板24に着弾したときに音響センサ27から出力される音響信号に対して所定の信号処理を施すことにより、BB弾12が標的板24に着弾したときの着弾点や着弾弾速などを検出するための検出信号を出力する。
信号処理基板28による所定の信号処理では、音響信号を増幅して全波整流し、その振幅のピーク値を保持したピークホールド信号、および、ピークホールド信号を積分して得られる信号が基準値以上となったタイミングを示す衝撃音検出時刻信号を、検出信号として出力する。この検出信号は、後述するパーソナルコンピュータ111に供給される。
以上のように構成されている標的装置11においては、射撃されたBB弾12が標的板24に着弾し、その衝撃力に応じて標的板24の面積が着弾点を中心に極浅いすり鉢状に凹むことによってBB弾12の衝突による衝撃が吸収される。このように標的板24により着弾の衝撃が吸収されたBB弾12は、捕集板25に向かって落下し、捕集板25の傾斜に従って標的装置11内で背面側および左面側に向かって転がった後、左側面板21cの排出口から排出されて、排出口ノズル26を通過して回収ケース13に回収される。
このように、標的装置11は、標的板24がBB弾12の衝撃を吸収することができ、捕集板25に向かってBB弾12が落下するように構成されているので、筐体21の外部にまで及ぶ跳弾を生じさせることなく、確実、かつ、容易にBB弾12を回収することができる。
また、標的装置11の音響センサ27は、音響環境が定常的な閉空間29に配置されている。このため、音響センサ27は、より再現性の高い衝撃音を取得できる。換言すれば、音響センサ27は、BB弾12の着弾点および着弾速度が同一であれば、ほぼ同一の衝撃音を取得することができる。
つまり、標的装置11は、閉空間29に対して、後方の開口部が背面板23により覆われ、かつ、前方の開口部が標的板24により覆われる構成となっている。これにより標的装置11では、開口に張った膜の振動によって音を出す楽器(例えば、太鼓やティンパニなど)のように、BB弾12が標的板24に衝突する際の振動によって再現性のある衝撃音が発生する。
従って、例えば、音響センサ27では、標的板24の所定の箇所にBB弾12が着弾するとき、同一の着弾条件(着弾位置、着弾速度、および弾重量)に対して、常に同一の衝撃音が取得される。これにより、音響センサ27から出力される音響信号に基づいて、BB弾12が着弾した標的板24上の位置である着弾点や、標的板24に着弾した際のBB弾12の速度である着弾弾速や、標的板24に着弾した際のBB弾12のエネルギを高い精度で検出することができる。
さらに、音響センサ27が閉空間29に配置されることにより、例えば、ソフトエアガンからBB弾12が撃ち出されたときの発射音が音響センサ27により取得されることを回避することができる。これにより、音響センサ27から出力される音響信号から、発射音の成分を除去する処理が不要になるので、BB弾12の着弾点などをその分だけ速やかに演算できる。また、着弾点などの演算精度を高めることができる。
<標的装置11の詳細な構成>
次に、図2乃至図5を参照して、標的装置11の詳細な構成について説明する。
図2は標的装置11の正面図、図3は標的装置11の左側面図、図4は標的装置11の右側面図、そして、図5は図4におけるA−A矢視図をそれぞれ示している。
固定部材41aは、上面板21aの内面に左右方向に延在するように取り付けられ、固定部材41bは、右側面板21bの内面に標的板24に沿って延在するように取り付けられる。固定部材41cは、左側面板21cの内面に標的板24に沿って延在するように取り付けられ、固定部材41dは、下面板21dの内面に左右方向に延在するように取り付けられる。
右側面板21bには、信号処理基板28からの検出信号をPC111(図6)に出力するための信号ケーブル113(図6)が接続されるコネクタ43が配置されている。
また、標的装置11では、上面板21aの前端部分が内側に向かって傾斜面を形成するように折り曲げられることによって、上面板21aの前端に折り曲げ部42aが形成される。上面板21aの折り曲げ部42aは、例えば、標的装置11を前方から見たときに固定部材41aが隠れるように形成される。
同様に、右側面板21bの前端部分が内側に向かって傾斜面を形成するように折り曲げられることによって、前方から見て固定部材41bが隠れるように、右側面板21bの前端に折り曲げ部42bが形成される。また、左側面板21cの前端部分が内側に向かって傾斜面を形成するように折り曲げられることによって、前方から見て固定部材41cが隠れるように、左側面板21cの前端に折り曲げ部42cが形成される。
このように、標的装置11では、筐体21の前方の開口部の上側および左右側に、折り曲げ部42a乃至42cが形成されることによって、固定部材41a乃至41cに対して直接的にBB弾12が衝突することを回避することができる。また、折り曲げ部42a乃至42cは、筐体21の内側に向かって傾斜面を形成しており、折り曲げ部42a乃至42cにBB弾12が衝突した場合、筐体21の内部に向かって反射することになり、そのBB弾12を標的装置11において回収することができる。
さらに、標的装置11には、標的装置11の配置位置を高さ方向に調整可能な複数の脚部31が取り付けられており、標的装置11は、複数の脚部31により、その高さを調整したり、上方向または下方向に向けて配置したり、標的装置11を載置する台などが傾いている場合にその傾きを補償したりすることができる。
以上のように、標的装置11は、標的板24の四辺が固定部材41a乃至41dにより固定され、筐体21内の空間に標的板24が張られるように配置されることで、標的板24にBB弾12が衝突すると、標的板24が撓むような構造となっている。これにより、標的装置11では、BB弾12の運動エネルギを標的板24により有効に吸収することができる。さらに、上述したように、標的板24の前方側の下方に捕集板25を配置することで、標的装置11は、最小のスペースで確実にBB弾12を回収することができる。
<標的装置11を採用した標的システムの構成例>
次に、図6は、標的装置11を採用した標的システムの構成例を示している。なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものとする。
この標的システム101は、標的装置11、およびパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する)111により構成される。具体的には、標的装置11とPC111が信号ケーブル113および映像ケーブル114を介して接続されることにより構成される。
PC111としては、デスクトップ型、ノート型、タブレット型など様々な形状のものを採用することができる。また、PC111として、スマートフォン、眼鏡型端末などの所謂モバイル端末を採用するようにしてもよい。
標的装置11からPC111に対しては、音響センサ27から出力される音響信号に基づく検出信号が信号ケーブル113を介して供給される。反対に、標的装置11に対しては、映像ケーブル114を介してディスプレイ30に標的画像115などを表示させるための映像信号が供給される。なお、PC111自体にもモニタ部122が設けられている。
また、標的装置11には、標的装置11の下方に生じ得る空間にBB弾12が入り込まないように保護する保護板117が標的装置11の前方の脚部116に取り付けられている。
なお、図6においては、標的装置11のディスプレイ30の中央に標的画像115を表示した状態を示している。一方、PC111のモニタ部122には、標的画像を表示するターゲットパネル、各種のコマンドを入力するためのコマンドパネル、射撃結果を示すスコアボードなどから成る操作画面が表示された状態を示している。なお、ターゲットパネルには標的画像115と同一の画像をリサイズして表示できる他、標的画像115の一部分を拡大した画像の表示も可能である。図6のモニタ部122は標的画像115の中央部だけを拡大表示した状態を示している。ただし、ディスプレイ30の画面に、PC111のモニタ部122と同一の操作画面を表示させることも可能である。また、ディスプレイ30の標的画像115に加えて、その周囲に得点などを表すスコアパネルや弾速計パネルなどを表示させることもできる。この場合、ユーザは着弾と同時に、着弾点だけでなく、その結果(得点、弾速など)を確認することができる。
標的装置11から検出信号が供給されるPC111では、該標的システム用のアプリケーションプログラムを実行することにより、標的画像115を表示させたり、BB弾12が着弾する毎に着弾点を検出し、標的画像115上に検出した着弾点に応じた弾痕マークを表示させたりする。また、真の着弾点と弾痕マークとのズレを補正するための補正値を得るキャリブレーション処理を行う。さらに、BB弾12の着弾速度および着弾した際のエネルギを演算する。
またさらに、PC111は、標的画像を表示するターゲットパネル、各種のコマンドを入力するためのコマンドパネル、射撃結果を示すスコアボードなどから成る操作画面をモニタ部122に表示させる。
標的画像115上に表示される弾痕マークは、使用するBB弾12のサイズに応じてユーザが設定した直径の円形であり、その中心には着弾の順序を示す着弾番号が記されている。例えば、直径6mmのBB弾12が使用される場合、通常、直径6mmの円形の弾痕マークとして表示されるように設定する。ただし、後述するキャリブレーション処理に際しては、その作業をし易くするために、弾痕マークの直径は4mmとすることが望ましい。ただし、弾痕マークの直径を6mmのままでキャリブレーション処理を実行してもよい。その場合、弾痕マーク上にその中心点の位置を表すためのマーク(十字の印など)を追加するようにする。また、弾痕マークのサイズについては、使用するBB弾12のサイズに拘わらずユーザが任意に変更できる。また、弾痕マークの形状については、円形に限らず、他の形状としてもよい。
このように、標的システム101では、BB弾が着弾する毎に標的画像115上に着弾マークが表示されるので、ユーザは、よりリアルで臨場感のある射的を体験することができ、次弾の射撃の照準修正を速やかに行うことができる。また、標的システム101では、着弾毎にモニタ部122などに表示されている操作画面のスコアボードが更新されるので、ユーザの利便性を高めることができる。
さらに、標的システム101では、検出した着弾点に対応する弾痕マークを表示するだけでなく、標的画像115の背景を着弾点に応じた色で点滅させたり、着弾点に応じた画像(静止画像だけでなく、アニメーションなどの動画像も含む)を表示させたりすることができる。
またさらに、標的システム101では、着弾点、着弾速度、またはエネルギの少なくとも一つに応じて、任意の音声(例えば、着弾音、破壊音、悲鳴、楽曲など)を出力することができる。さらに、それらの音声は、着弾速度またはエネルギの少なくとも一方に基づく音量で出力することができる。これにより、標的システム101を用いた射撃に対する遊戯性を高めることができる。また、着弾点に応じた得点を音声により読み上げることができる。これにより、ユーザはモニタ部122等に表示されているスコアボードなどを視認しなくても、得られた得点を知ることができる。
<標的装置11の変形例>
次に、図7は、標的装置11の変形例を示している。この変形例(標的装置11A)は、ディスプレイ30を省略したものであり、ディスプレイ30の代わりに、標的装置11Aの背面外側に外部モニタ112を取り付けることができる。この場合、外部モニタ112に対しては、PC111が映像ケーブル114を介して映像信号を供給することになる。
<標的装置11Aを採用した標的システムの構成例>
次に、図8は、標的装置11Aを採用した標的システムの構成例を示している。この標的システム101Aは、標的装置11Aおよびノート型のPC111から構成される。具体的には、ノート型のPC111のキーボード部123の上方に標的装置11Aが配置されることにより、標的装置11の背面外側にPC111のモニタ部122が配置されて構成される。標的システム101Aでは、PC111のキーボード部123の前方に保護板117を配置することができるように、前方に延長した脚部118が用いられる。
標的装置11AとPC111とは、信号ケーブル(不図示)を介して接続される。
そして、標的システム101Aにおいても、図6の標的システム101と同様、PC111が標的システム用のアプリケーションプログラムを実行することにより、標的画像115などの表示、BB弾12が着弾する毎に着弾点の検出、検出した着弾点に応じた弾痕マークの表示を行う。また、真の着弾点と弾痕マークとのズレを補正して表示するための補正値を得るキャリブレーション処理を行う。さらに、BB弾12の着弾速度および着弾した際のエネルギなどを演算する。
またさらに、着弾点に基づく得点、着弾速度、エネルギなどが記載されたスコアボードの表示も行う。
なお、図8においては、モニタ部122には、標的画像115に加えて、その右側に操作や得点などの射撃結果が配置されたスコアボードが表示されている。ただし、スコアボードを非表示にして、標的画像115をモニタ部122の中心に拡大表示することもできる。この場合、操作や得点確認に困ることを回避するために、スコアボードのみを独立したサブウインドウとして、例えば、射撃を行うユーザの近くに配置したサブモニタ、タブレットPC、スマートフォンなどに表示させることができる。これにより、ユーザは、射撃位置から移動することなく、射撃結果を確認することができ、より利便性を向上させることができる。
また、PC111とワイヤレスマウスなどのリモート操作デバイスとを接続し、例えば、標的画像115がモニタ部122の半分以上を占めるように大きく表示するようにして、射撃を行う位置から標的システム101Aを操作できるようにしてもよい。
具体的には、標的画像115を左クリックする操作を行うと競技スタートとし、競技スタートした状態で標的画像115を再び左クリックすると競技停止とするような操作を採用することができる。また、標的画像115を右クリックすると標的画像115をモニタ部122に拡大表示し、画面の中心に拡大表示されている標的画像115を再び右クリックすると標的画像115を縮小してスコアボードなどを表示する状態(図7に示すような表示状態)とするような操作を採用することができる。または、競技スタートを待機している状態でBB弾12が標的板24に衝突したことが検出されると、競技スタートとするような操作を採用してもよい。
<標的装置11の他の変形例>
図示は省略するが、ディスプレイ30を省略して、標的板24を有色(白色、灰色など)の可塑性部材により構成し、標的板24に対して標的装置11の背面側または前面側からプロジェクタによって標的画像を投影するようにしてもよい。標的板24に対して標的装置11の前面側から標的画像を投影する場合、後述する付箋紙に対する穴開けは不要となる。また、標的板24に有色の可塑性部材を用いる代わりに、標的板24に白色等の布のような薄く柔軟な材料を貼り付けてもよい。また、標的板24に白色塗料などを塗布してもよい。
<標的装置11を採用した標的システムのさらに他の構成例>
図示は省略するが、標的装置11のディスプレイ30の代わりに、タブレット型のPCを配置してもよく、そのタブレット型のPCに、PC111と同様の処理を実行させればよい。この場合、PC111は不要となり、標的装置11だけで動作可能な標的システムを実現することができる。また、このように標的装置11だけで構成される標的システム(のタブレット型のPC)に対し、ユーザは、スマートフォンや眼鏡型端末、専用のリモートコントローラなどを使用し、無線LAN(Local Area Network)等を介して接続してワイヤレスで各種の操作を行うことができる。
さらに、標的装置11AにPCの機能を内蔵して、PCと接続しなくても単独で標的装置として使用可能なように構成してもよい。
なお、以下においては、標的システム101を例にして説明する。
<PC111の構成例>
次に、図9は、PC111の構成例を示している。
このPC111において、CPU(Central Processing Unit)131,ROM(Read Only Memory)132,RAM(Random Access Memory)133は、バス134により相互に接続されている。
バス134には、さらに、入出力インタフェース135が接続されている。入出力インタフェース135には、入力部136、出力部137、記憶部138、通信部139、およびドライブ140が接続されている。
入力部136は、キーボード部123、およびマウス(ワイヤレスマウスを含む)などの入力デバイスよりなる。出力部137は、映像信号に応じた画面を表示するモニタ部122、映像ケーブル114が接続される外部モニタI/F、音声信号に応じた音声を出力するスピーカなどを含む。
記憶部138は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部139は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ140は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア141に対してデータを書き込んだり、読み出したりする。
以上のように構成されるPC111では、CPU131が、例えば、記憶部138に記憶されている標的システム用のアプリケーションプログラムを、入出力インタフェース135およびバス134を介して、RAM133にロードして実行することにより、上述した標的システムとしての一連の処理が行われる。
PC111(CPU131)が実行する標的システム用のアプリケーションプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア141に記録して提供したり、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供したりすることができる。また、リムーバブルメディア141や各種の伝送媒体を利用してバージョンアップすることができる。
<標的システム用のアプリケーションプログラムによる機能ブロック>
次に、図10は、PC111(CPU131)が標的システム用のアプリケーションプログラムを実行することにより実現される機能ブロックの構成例を示している。
すなわち、PC111(CPU131)にて標的システム用のアプリケーションプログラムが実行されることにより、着弾点演算部151、キャリブレーション実行部153、着弾点グルーピング部154、表示制御部155、弾速推定部161、温度情報取得部162、および音声合成部163が実現される。
着弾点演算部151は、着弾毎に標的装置11から供給される検出信号に基づいて着弾点を演算する。音速は気温に応じて変化するので、着弾点演算部151は、温度情報取得部162から供給される温度情報に基づいて補正した音速を用いて着弾点を演算する。また、着弾点演算部151は、着弾点補正部152を内蔵しており、着弾点補正部152は、第1または第2のキャリブレーション処理(後述)が既に実行済みである場合にキャリブレーション実行部153から書き込まれる情報(移動量または配列データ(詳細後述))に基づいて補正量を演算し、演算した補正量を用いて、検出信号に基づいて演算した着弾点を補正する。演算された、または補正された着弾点(の座標)は着弾点グルーピング部154、表示制御部155、および音声合成部163に通知される。
キャリブレーション実行部153は、真の着弾点と、演算された着弾点に基づく弾痕マークの表示とのずれが無くなるように、ユーザに弾痕マークを移動させ、その移動量または移動量に基づく配列データを着弾点補正部152に上書き記録する。
着弾点グルーピング部154は、所定のタイミング(例えば、競技スタート、試射スタートなど)以降に着弾点が通知される毎、それまでに通知された中で一番離れた着弾点同士を結ぶ直線を直径とする円(グルーピングサークル)と、その中心点を求めて表示制御部155に通知する。なお、グルーピングサークルの求め方は、上述した方法に限るものではない。例えば、それまでに通知された全ての着弾点を含む円のうち、最小半径のものをグルーピングサークルとしてもよい。
表示制御部155は、PC111のモニタ部122に対して映像信号を供給する主画面表示部156と、標的装置11のディスプレイ30に対して映像信号を供給する副画面表示部157からなり、主画面表示部156と副画面表示部157が、標的表示部158、弾痕表示部159、および情報画面表示部160を共用する。
標的表示部158は、予め用意されている標的画像115を表示するための映像信号を出力する。なお、標的画像115はユーザから設定に応じて任意に拡大または縮小することができる。また、標的画像115を画面内で移動させたり、点滅させたりすることができる。さらに、着弾点に応じて標的画像115の背景色を変化させたり、標的画像115自体の形状を変化させたりしてもよい。またさらに、標的画像115として、FPS(First Person Shooter)ゲームのようなストーリ性がある動画像を表示してもよい。
ここで、予め用意されている標的画像115の例について説明する。
図11は、主に実銃の射撃競技で使われているような円形標的がディスプレイ30の中央に1個だけ表示される最も一般的な標的(以下、標準ターゲット201と称する)の表示例である。標準ターゲット201がディスプレイ30の中央に表示されて射撃が行われる場合、ユーザは標準ターゲット201の中心、すなわち、標的板24の中央付近を狙って射撃を行うことになる。
図12は、小型の円形標的が画面上に20(=5×4)個並べられた標的(以下、ブルズ20ターゲット202と称する)の表示例である。ブルズ20ターゲット202が用いられる場合、ユーザはブルズ20ターゲット202を構成する小型の円形標的それぞれの中心、すなわち、標的板24の中央付近だけでなく様々な位置を狙って射撃を行うことになる。
図10に戻る。弾痕表示部159は、着弾点演算部151から通知された着弾点に対応する標的画像上の位置に重畳表示するための弾痕マークの映像信号を生成する。情報画面表示部160は、スコアボードや各種の設定画面を表示するための映像信号を生成する。
標的表示部158、弾痕表示部159、および情報画面表示部160で生成された映像信号は、主画面表示部156および副画面表示部157で適宜合成されて標的画像115の画面や操作画面210などの映像信号が生成され、ディスプレイ30またはモニタ部122の少なくとも一方に供給される。
ここで、図13に操作画面210の表示例を示す。操作画面210は、標的画像115が表示されるターゲットパネル211、現時点の得点が表示されるスコアパネル212、各種のコマンド、設定などを入力するコマンドパネル213、および着弾毎の得点などを表示するスコアボード214から構成される。
図10に戻る。弾速推定部161は、着弾毎に標的装置11から供給される検出信号に基づいてBB弾12の着弾速度および着弾した際のエネルギを演算し、表示制御部155および音声合成部163に通知する。温度情報取得部162は、図示せぬ温度センサから温度情報を取得して着弾点演算部151に通知する。音声合成部163は、着弾点に応じた着弾音などの音声信号を合成し、合成した音声信号を着弾速度または着弾エネルギに応じた音量で後段に出力する。なお、単に着弾音を合成する代わりに、着弾点に応じて異なる音階の音声を合成出力するようにすれば、標的システム101を楽器として機能させることができ、この場合、ユーザが標的画像115の所定の位置に正確に射撃できれば任意の楽曲を演奏できるという遊戯性を持たせることができる。
<第1のキャリブレーション処理>
次に、図14は、第1のキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
この第1のキャリブレーション処理は、標的画像115として、図11に示された標準ターゲット201が用いられる場合の着弾点の補正に用いる、弾痕マークの移動量を得るためのものである。なお、得られた弾痕マークの移動量は、標準ターゲット201の他、標的板24の中央付近を狙って射撃する他の標的画像が用いられる場合の補正にも利用できる。
第1のキャリブレーション処理の実行頻度については、例えば、標的システム101の初回使用時、所定の着弾数毎(例えば、1万発毎)、または標的板24の交換時(例えば、着弾数10万発時)などに実行すればよく、必ずしも頻繁に実行する必要はない。ただし、射撃競技に使用する際には、その都度実行することにより、着弾点に応じた弾痕マークの表示位置の精度を高く維持することができる。
なお、以下に説明する各ステップの処理のうち、ユーザが実行する処理以外の処理については、主にキャリブレーション実行部153によって実行される。
ステップS1において、標的システム101は、ユーザからの所定の標的選択操作に従い、標的装置11のディスプレイ30に標準ターゲット201を表示させる。これと同時に、PC111のモニタ部122には、同様の表示(ターゲットパネル211)を含む操作画面210を表示させる。
ステップS2において、ユーザは、図15に示されるように、ディスプレイ30に表示された標準ターゲット201の映像を透過する標的板24上に、標準ターゲット201の中心部分を覆うように付箋紙231を貼付する。このとき、付箋紙231の中心が標準ターゲット201の中心とできるだけ一致するように貼付する。
ただし、ここで用いる付箋紙231については、BB弾12の着弾によりそのサイズに対応した弾痕(凹み)がつき易く、かつ、弾痕(凹み)が生じた領域に対して容易に穴が開け易い程度の強度を有するものを用いるようにする。標的装置11を販売する場合には、この条件を満たす付箋紙231を付属することが望ましい。また、付箋紙231の中心が分かりやすいように、何らかのマークを予め印刷しておいてもよい。
次にユーザは、エアガンにより付箋紙231の中心(すなわち、標準ターゲット201の中心)を狙って射撃を行う。この射撃は射撃競技などで定められている射撃距離だけ離れた位置から行う必要はなく、標的装置11の至近距離から行えばよい。この射撃により、ディスプレイ30などに表示されている標準ターゲット201上には、着弾点演算部151によって演算された、補正前の(または前回の第1のキャリブレーション処理に基づく補正値で補正された)着弾点に応じた弾痕マークが表示される。
また、この射撃により、図16に示されるように、付箋紙231の中心にはBB弾12の着弾によってBB弾12のサイズに対応した弾痕(凹み)232が生じることになる。この弾痕(凹み)232は、直径6mmのBB弾12を使用した場合、着弾エネルギが0.8ジュール程度であるならば、直径4mm程の円形となることがわかっている。
ステップS3において、ユーザは付箋紙231を標的板24から剥がすことなく、付箋紙231に生じた弾痕(凹み)232の領域に穴を開ける。具体的には、凹みの領域を爪楊枝などでつつくことにより、付箋紙231の該領域が容易に外れて、弾痕232と同じ直径4mm程の円形の穴233(図17)を開けることができる。この穴233を標的装置11の前面側から覗き、例えば図17に示されるように、穴233と弾痕マークが一致するか否かを判断すれば、ユーザは、真の着弾点である弾痕232(穴233)と、弾痕マークとにずれがあるかないかを判断することができる。
ステップS4において、標的システム101は、ユーザからの所定の操作に従い、PC111のモニタ部122に補正設定画面を表示させる。なお、補正設定画面は、標的装置11のディスプレイ30に表示されている標準ターゲット201に重畳表示するようにしてもよい。その場合、貼付されている付箋紙231の背後に隠れないよう補正設定画面を画面上で適宜移動させればよい。
ここで、補正設定画面について説明する。図18は補正設定画面の表示例を示している。この補正設定画面250には、位置補正パネル251、弾速補正パネル252、および弾速マップ修正パネル253が設けられている。さらに、補正設定画面250には、「OK」ボタン254、および「キャンセル」ボタン255が設けられている。
位置補正パネル251は、標的画像115(いまの場合、標準ターゲット201)上に表示されている弾痕マークの位置を修正するためのものであり、「右へ」ボックス、「上へ」ボックス、および「調整用弾径」ボックスからなる。「右へ」ボックスでは、弾痕マークの表示位置を左右(数値を増加させると右、減少させると左)に移動させることができる。「上へ」ボックスでは、弾痕マークの表示位置を上下(数値を増加させると上、減少させると下)に移動させることができる。「調整用弾径」ボックスでは、付箋紙231に開ける穴233のサイズと一致するように弾痕マークの直径を0.1mm単位で変更することができる。なお、弾痕マークの直径の初期値は6mmとされている。上述したように、キャリブレーション処理を実行するに際しては、「調整用弾径」ボックスにて弾痕マークの直径の初期値は4mmにしておくことが望ましい。または、弾痕マークの直径の初期値を4mmとしてもよい。また例えば、使用するBB弾12のサイズを変更した場合、「調整用弾径」ボックスにて弾痕マークの直径を変更すればよい。なお、予めBB弾12のサイズと弾痕マークのサイズの対応を記憶しておくようにし、「調整用弾径」ボックスにて、使用するBB弾12のサイズを設定するようにしてもよい。
弾速補正パネル252は、検出された着弾速度を表示するときの値を補正するためのものであり、検出された着弾速度に対する表示値を増加または減少させることができる。弾速マップ修正パネル253は、検出された着弾速度の偏りを修正するためのものである。
「OK」ボタン254は、位置補正パネル251などにおける入力を確定するためのものである。「キャンセル」ボタン255は、位置補正パネル251などにおける入力を取り消すためのものである。
次に、ユーザは、ステップS5において、標的装置11の前面側から付箋紙231に開けられた穴233を覗いてみて、穴233と弾痕マークが一致するか否かを判断する(ただし、弾痕マークの直径が初期値の6mmに設定されたままでは弾痕マークが穴233からはみ出すことになるので、ユーザは補正設定画面250にて予め弾痕マークの直径を4mmに設定しておくようにする。なお、弾痕マークの直径を初期値の6mmのままとしてもよい。その場合、弾痕マークは穴233よりも大きくなるので、弾痕マークの中心を表すマークを参考にして、弾痕マークの中心と穴233の中心が一致するかを判断すればよい)。両者が一致する場合、真の着弾点である弾痕232と、弾痕マークとにずれが無いことになるので、これ以降の処理は不要である。よって、補正設定画面250の「キャンセル」ボタン255を選択して補正設定画面250を閉じ、この段階で第1のキャリブレーション処理を中断する。
反対に、付箋紙231の穴233を覗いてみて、穴233と弾痕マークの位置が一致していない場合、処理をステップS6に進める。
ステップS6において、ユーザは、標的装置11の前面側から付箋紙231に開けられた穴233を覗いて弾痕マークの位置を確認しながら、補正設定画面250の位置補正パネル251にて「右へ」ボックスと「上へ」ボックスを操作して、弾痕マークを穴233と一致する(重なる)まで移動させる。そして、弾痕マークが穴233と一致したら(重なったら)、ステップS7において、ユーザが補正設定画面250の「OK」ボタン254を選択するようにする。これにより、位置補正パネル251を用いて設定された弾痕マークの移動量が確定されて、その移動量(mx,my)が着弾点補正部152に現在保持されている移動量(mx,my)に加算されて上書き記録される。なお、次回以上の第1のキャリブレーション処理で補正設定画面250が表示されたときには位置補正パネル251に表示されている移動量は0.0mmとなる。ただし、補正設定画面250が表示されたときには位置補正パネル251に、着弾点補正部152に現在保持されている移動量を表示するようにしてもよい。その場合、位置補正パネル251にて設定された移動量(mx,my)を着弾点補正部152に上書き記録すればよい。
着弾点補正部152に上書き記録された弾痕マーク234の移動量は、これ以降に行われる、標準ターゲット201を用いた射撃時の着弾点の補正、換言すれば、弾痕マークの表示位置の補正に利用される。詳細については以下に説明する。以上で、第1のキャリブレーション処理は終了される。
なお、上述した説明では、付箋紙231が貼られた標的装置11(のディスプレイ30)を見ながら、PC111のモニタ部にて補正設定画面250に対して操作入力するようにしたが、標的装置11のディスプレイ30に表示されている標準ターゲット201に補正設定画面250を重畳表示させて操作入力することも可能である。
<第1の弾痕マーク表示処理>
図19は、第1の弾痕マーク表示処理を説明するフローチャートである。
この第1の弾痕マーク表示処理は、第1のキャリブレーション処理が実行された後における、標準ターゲット201を用いた射撃時に適用される。
ユーザが標的装置11に向かって射撃を行ってBB弾12が標的板24に着弾すると、標的装置11からPC111に対して検出信号が供給される。PC111では、ステップS11において、着弾点演算部151が検出信号に基づいて着弾点Pの座標(xp,yp)を演算する。ステップS12において、着弾点補正部152は、演算された着弾点Pの座標(xp,yp)に、記憶している弾痕マークの補正量(mx,my)を加算することにより、着弾点Pの座標を補正し、補正済みの着弾点座標(xp+mx,yp+my)を後段に出力する。ステップS13において表示制御部155は、補正済みの着弾点座標に従い、既に表示されている標準ターゲット201上に弾痕マークを表示し、また、補正済みの着弾点座標に従って得点を表示する。以上で第1の弾痕マーク表示処理の説明を終了する。
上述した第1のキャリブレーション処理、および第1の弾痕マーク表示処理によれば、真の着弾点と、演算された着弾点のずれを補正することができる。よって、弾痕マークの表示位置のずれを補正することができる。ただし、この場合の補正は、標準ターゲット201の中心、すなわち、標的板24の中央付近に対しては効果的であるが、標的板24の中央付近以外の周辺部などに対しては必ずしも効果を得られないことがある。
そこで次に、標的板24の全領域に亘って真の着弾点と弾痕マークの表示位置のずれを効果的に補正できる第2のキャリブレーション処理について説明する。
<第2のキャリブレーション処理>
図20は、第2のキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
この第2のキャリブレーション処理は、標的板24の中心だけでなく任意の位置が照準される射撃を行う場合に適用される補正量の基となる配列データを得るためのものである。
第2のキャリブレーション処理の実行頻度については、第1のキャリブレーション処理と同様、例えば、標的システム101の初回使用時、所定の着弾数毎(例えば、1万発毎)、または標的板24の交換時(例えば、着弾数10万発時)などに実行すればよく、必ずしも頻繁に実行する必要はない。また、標準ターゲット201を狙う射撃のように、標的板24の中心付近しか狙わない射撃のみを行う場合には、第2のキャリブレーション処理は特に必要なく、上述した第1のキャリブレーション処理の実行だけでも十分である。
なお、以下に説明する各ステップの処理のうち、ユーザが実行する処理以外の処理については、主にキャリブレーション実行部153によって実行される。
ステップS21において、標的システム101は、ユーザからの所定の標的選択操作に従い、標的装置11のディスプレイ30にブルズ20ターゲット202を表示させる。これと同時に、PC111のモニタ部122には、同様の表示(ターゲットパネル211)を含む操作画面210を表示させる。
なお、以下の説明では、ブルズ20ターゲット202を構成する20個の小型の円形標的を小型標的[i,j](i=1から5の整数、j=1から4の整数)と表記する。例えば、小型標的[1,1]は左上のもの、小型標的[5,1]は右上のもの、小型標的[1,4]は左下のもの、小型標的[5,4]は右下のものをそれぞれ指す。
ステップS22において、ユーザは、ディスプレイ30に表示された20個の小型標的[i,j]のうち、キャリブレーションの対象とするものを決定し、その映像を透過する標的板24上に付箋紙(第1のキャリブレーション処理に用いた付箋紙231と同様のもの)を貼付する。このとき、20個すべての小型標的[i,j]をキャリブレーションの対象としてもよいし、真の着弾点と弾着マークがずれていると感じている位置の小型標的[i,j]だけをキャリブレーションの対象としてもよい。
さらにユーザは、エアガンにより付箋紙の中心(すなわち、各小型標的[i,j]の中心)を狙って射撃を行う。この射撃は射撃競技などで定められている所定の距離だけ離れて行う必要はなく、標的装置11の至近距離から行えばよい。この射撃により、ディスプレイ30などに表示されている、キャリブレーションの対象とされた小型標的[i,j]上には、着弾点演算部151によって演算された、補正前の(または前回の第2のキャリブレーション処理に基づく補正値で補正された)着弾点に応じた弾痕マークが表示される。
ステップS23において、ユーザは付箋紙を標的板24から剥がすことなく、付箋紙に生じた弾痕(凹み)の領域に穴を開ける。ここで、真の着弾点である弾痕232と、弾痕マークとにずれが無ければ、穴233と弾痕マークが一致することになる。
そこで、ユーザは、ステップS24において、所定の操作により、図21に示されるように、ディスプレイ30のブルズ20ターゲット202に操作画面210を重畳表示させる。次に、ユーザは、キャリブレーションの対象に決定した小型標的[i,j]毎に弾痕マークに記されている着弾番号を、操作画面210内のスコアボード214において選択する。なお、図21は、スコアボード214にて、着弾番号20が選択された状態を示しており、この選択に応じてブルズ20ターゲット202における着弾番号20の弾痕マークが他の弾痕マークと区別して視認できるように強調表示される。
着弾番号が選択された状態でユーザが「位置補正」ボタン215を操作すると、図22に示されるように、操作画面210に補正設定画面250が重畳表示され、ブルズ20ターゲット202上では選択された着弾番号の弾痕マークだけが強調表示され、他の弾痕マークの表示が一時的に消去される。これによりユーザは、現在、位置補正の対象としている弾痕マークを速やかに確認することができる。なお、図21および図22においては、ディスプレイ30に貼付されている、穴が開けられた状態の付箋紙の図示が省略されている。
次にユーザは、ステップS25において、標的装置11にて、スコアボード214で選択した着弾番号に対応する小型標的[i,j]の位置に貼付された付箋紙の穴を正面から覗き、その穴と弾痕マークが一致する(重なる)ように、ディスプレイ30に表示されている補正設定画面250の位置補正パネル251にて「右へ」ボックスと「上へ」ボックスを操作する。そして、弾痕マークが穴と一致したら(重なったら)、ステップS26において、ユーザが補正設定画面250の「OK」ボタン254を選択するようにする。これにより、スコアボード214にて選択された着弾番号の弾痕マークの移動量が確定される。そして、着弾点補正部152に記録されている各小型標的[i,j]の配列データのうち、該弾痕マークに最も近い小型標的[i,j]の配列データの対応する要素に、確定された移動量が加算されて上書き記録される。なお、配列データは、例えば以下のようなフォーマットを採用できる。
配列データ{x[i,j],y[i,j],Cx[i,j],Cy[i,j]}
ここで、(x[i,j],y[i,j])は小型標的[i,j]の中心座標、(Cx[i,j],Cy[i,j])は弾痕マークの移動量である。
例えば、左上の小型標的[1,1]の配列データは、{x[1,1],y[1,1],Cx[1,1],Cy[1,1]}とされる。
ステップS27において、ユーザがキャリブレーションの対象とした小型標的[i,j]の全てを選択したと判断するまで、ステップS24からステップS26の処理が繰り返され、全てを選択したと判断された場合、この段階で、キャリブレーションの対象とした各小型標的[i,j]にそれぞれ対応する配列データが新たに記録されたことになる。
なお、キャリブレーションの対象とされていない小型標的[i,j]についても、それに対応する配列データがキャリブレーション実行部153によって生成されて着弾点補正部152に上書き記録される。ただし、その配列データにおける弾痕マークの移動量(Cx[i,j],Cy[i,j])は、今回の第2のキャリブレーション処理が初回である場合には、その配列データにおける弾痕マークの移動量(Cx[i,j],Cy[i,j])には初期値(出荷時の設定値)が適用され、2回目以降である場合には前回の第2のキャリブレーション処理で記録された値がそのまま流用される。この後、処理はステップS28に進められる。
ステップS28において、キャリブレーション実行部153は、ブルズ20ターゲット202を構成する20個の小型標的[i,j]の周囲に、図23に破線で示す、画面上には表示されない22個のダミー標的261を想定し、各ダミー標的261にそれぞれ対応する配列データを、最も距離が近い小型標的[i,j]の配列データにおける弾痕マークの移動量(Cx[i,j],Cy[i,j])をコピーすることにより生成して着弾点補正部152に上書き記録する。
なお、ダミー標的261の配列データとして、実在する小型標的[i,j]の配列データの移動量をコピーする代わりに、ダミー標的261の配列データに最適な固定値の移動量を設定しておくようにしてもよい。
なお、以下においては、小型標的[i,j]の表記によってダミー標的261も表すことができるように、[i,j]の定義をi=0から6の整数、j=0から5の整数に拡張する。この拡張により、以降において、例えば、小型標的[0,0]は左上のダミー標的261、小型標的[6,5]は右下のダミー標的261をそれぞれ表すものとする。
以上のように、42個の小型標的[i,j]にそれぞれ対応する配列データを着弾点補正部152に上書き記録して第2のキャリブレーション処理は終了される。そして、これらの配列データは、これ以降に行われる、標的板24の任意の位置が狙われる(照準される)ブルズ20ターゲット202などの標的画像115を用いた射撃時の着弾点の補正、すなわち、弾痕マークの表示位置の補正に利用される。以上で、第2のキャリブレーション処理は終了される。
なお、上述した説明では、付箋紙231が貼られた標的装置11(のディスプレイ30)を見ながら、ディスプレイ30にてブルズ20ターゲット202に操作画面210を重畳表示し、さらに補正設定画面250も重畳表示して操作入力するようにしたが、PC111のモニタ部122に操作画面210および補正設定画面250を表示させて操作入力することも可能である。また、第2のキャリブレーション処理には、ブルズ20ターゲット202の代わりに、画面上に複数の標的が配置された他の標的画像115を用いてもよい。
<第2の弾痕マーク表示処理>
図24は、第2の弾痕マーク表示処理を説明するフローチャートである。
この第2の弾痕マーク表示処理は、第2のキャリブレーション処理後における、標的板24の中央付近だけでなく任意の位置に照準されるブルズ20ターゲット202などの標的画像115を用いた射撃時に適用される。
ユーザが標的装置11に向かって射撃を行ってBB弾12が標的板24に着弾すると、標的装置11からPC111に対して検出信号が供給される。PC111では、ステップS31において、着弾点演算部151が検出信号に基づいて着弾点Pの座標(xp、yp)を演算する。
ステップS32において、着弾点補正部152は、図25に示されるように、演算された着弾点P(x
p,y
p)を取り囲む直近の4個の小型標的[i,j],[i+1,j],[i,j+1],[i+1,j+1]を特定する。ステップS33において、着弾点補正部152は、特定した4個の小型標的[i,j],[i+1,j],[i,j+1],[i+1,j+1]にそれぞれ対応する配列データを次式(1)に適用して、弾痕マークの補正値Cx
p,Cy
pを演算する。
・・・(1)
ただし、式(1)におけるdxはx方向に隣り合う小型標的[i,j]と小型標的[i+1,j]との距離であり、dyはy方向に隣り合う小型標的[i,j]と小型標的[i,j+1]との距離である。Δxは、着弾点Pを取り囲む4個の小型標的のうち、左上の小型標的[i,j]の中心から着弾点Pまでのx方向の距離である。Δyは、着弾点Pを取り囲む4個の小型標的のうち、左上の小型標的[i,j]の中心から着弾点Pまでのy方向の距離である。
式(1)から明らかなように、演算される補正値(Cxp,Cyp)は、4個の小型標的の配列データにおける弾痕マークの移動量が、着弾点Pからの距離が近いほどより大きな重みで重み付け平均された値となる。なお、着弾点Pを取り囲む直近の4個の小型標的の配列データから補正値を演算する代わりに、着弾点Pに最も近い1個の小型標的に対応する移動量をそのまま補正値としてもよい。
ステップS34において、着弾点補正部152は、ステップS31の処理で演算された着弾点Pの座標(xp,yp)に、ステップS33で演算された補正量(Cxp,Cyp)を加算することにより、着弾点Pの座標を補正し、補正済みの着弾点座標(xp+Cxp,yp+Cyp)を後段に出力する。ステップS35において表示制御部155は、補正済みの着弾点座標に従い、既に表示されている標的画像115(ブルズ20ターゲット202など)上に弾痕マークを表示し、また、補正済みの着弾点座標に従って得点を表示する。以上で第2の弾痕マーク表示処理の説明を終了する。
上述した第2のキャリブレーション処理および第2の弾痕マーク表示処理によれば、標的板24の中心部分に限らず全範囲に亘って真の着弾点と、演算された着弾点のずれを補正することができる。よって、弾痕マークの表示位置のずれを補正することができる。
なお、予め用意されている標的画像115毎に第2のキャリブレーション処理を実行するようにし、各標的画像115を用いて射撃を行うときに、それぞれ対応する第2のキャリブレーション処理の結果を用いて第2の弾痕マーク表示処理を実行するようにすれば、より正確に、弾痕マークの表示位置のずれを補正することができる。
また、第2の弾痕マーク表示処理は、標的板24の中央部だけでなく任意の位置に照準されるブルズ20ターゲット202などの標的画像115を用いた射撃時に適用されるのみならず、標的板24の中央付近を狙って射撃が行われる標準ターゲット201などの標的画像115を用いた射撃時にも第1の弾痕マーク表示処理の代わりに実行したり、第1の弾痕マーク表示処理と重複して実行したりしてもよい。第1および第2の弾痕マーク表示処理を重複して実行する場合、第1の弾痕マーク表示処理による補正量を(Cx0,Cy0)とすると、最終的な補正済みの着弾点座標は(Cx0+xp+Cxp,Cy0+yp+Cyp)となる。
<グルーピング機能>
次に、主に着弾点グルーピング部154により実現されるグルーピング機能について説明する。
上述したように、標的装置11の標的板24にBB弾12が着弾すると標的画像115上に弾痕マークが表示され、さらに、グルーピング機能により、着弾毎に表示される弾痕マークの中で最も離れた2着弾点同士を結ぶ直線を直径とするグルーピングサークルが標的画像115上に表示される。
なお、グルーピング機能は、射撃時にリアルタイムに有効とすることができる。また、射撃結果に対しても適用することができる。
射撃時にグルーピング機能が有効とされている場合、1発目が着弾すると弾痕マークのみが表示され、2発目が着弾すると、図26に示すように、2発目の弾痕マークが表示されるとともに、1,2発目の弾痕マークを結ぶ直線を直径とするグルーピングサークル271が表示される。さらに、3発目が着弾すると、図27に示すように、3発目の弾痕マークが表示されるとともに、グルーピングサークル271に代わって、1,2,3発目の弾痕マークの中で最も離れた2着弾点同士(いまの場合、1番目と3番目の着弾点)を結ぶ直線を直径とするグルーピングサークル273が表示される。
射撃結果に対してグルーピング機能を適用した場合、着弾の時系列に従ってグルーピングサークルを表示させることができる他、標的の中心から離れている順に弾痕マークを除外してグルーピングサークルを表示させたり、ユーザが任意に選択した弾痕マークに対応するグルーピングサークルを表示させたりすることができる。
なお、グルーピングサークルの代わりに、またはグルーピングサークルに追加して、図26および図27に示すようなグルーピングサークルの中心点272,274を表示するようにしてもよい。さらに、グルーピングサークルの中心点と、標的の中心とを結ぶ直線を表示するようにしてもよい。
グルーピング機能によってグルーピングサークルやその中心点などを表示させることにより、ユーザは、自身の射撃能力、エアガンの特性、射撃環境などに起因する集弾傾向を容易に把握することができる。これにより、ユーザは、零点規正(集弾傾向に基づいてエアガンの照準器やエアガンに取り付けたスコープなどを適切に調整する処理)を容易に実行することができる。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、付箋紙231の代わりにカーボン複写紙を標的板24に貼付するようにしてもよい。この場合、カーボンによって標的板24に弾痕マークが付けられるので、カーボン複写紙に対する穴開けは不要となる。ただし、カーボン複写紙を用いた場合、標的板24にカーボンが付くことに加えて、着弾によってカーボン複写紙が不規則に千切れて細かな紙片が標的板24に付着するので、ユーザはそれらを清掃する作業を行う必要がある。これを考慮した場合、真の着弾点を保持する手段としては、本実施の形態で提案した付箋紙231を用いる方法が最適と考えられる。
なお、本発明は、標的に対して飛翔物体を当てる任意の競技や遊戯、具体的には、ダーツ、吹き矢などの標的システムに適用してもよい。この場合、弾痕マークの代わりにダーツや吹き矢の矢を標的画像上に表示すればよい。また、当然ながら、BB弾に代わるダーツや吹き矢の矢が標的板24に刺さらないようにその先端を丸める必要がある。
さらに、標的板24の強度を増せば、本発明は、トイガン(ソフトエアガン)よりも着弾時のエネルギが強い実銃(空気銃等)の標的システムにも適用することも可能である。