JP6466777B2 - 工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法、工作機械の制御方法及び制御装置 - Google Patents

工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法、工作機械の制御方法及び制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、工作機械において、幾何誤差を補正制御するために用いる幾何誤差パラメータを同定する方法及び、同定した幾何誤差パラメータを用いた工作機械の制御方法および制御装置に関するものである。
図1は、3つの並進軸および2つの回転軸を有する複合加工機の模式図である。
主軸頭2は、工具を保持して回転可能であり、刃物台4に内蔵されたB軸により刃物台4に対して1自由度の回転運動が可能であり、さらにコラム5に設けられた互いに直交するX軸、Y軸、Z軸によりベッド1に対して3自由度の並進運動が可能である。旋削主軸3は、工作物を把持して回転可能なC軸により、ベッド1に対して回転1自由度の運動が可能である。したがって、主軸頭2は旋削主軸3に対して並進3自由度および回転2自由度の運動が可能である。
各送り軸は、図示しない数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動され、工作物に対する工具の相対位置および相対姿勢を制御して工作物の加工を行うことができる。
このような複合加工機の運動精度に影響を及ぼす要因として、回転軸の中心位置の誤差(想定する位置からのズレ)や回転軸の傾き誤差(軸間の直角度、平行度)などの各軸間の幾何学的な誤差(以下「幾何誤差」という。)がある。幾何誤差が存在すると機械としての運動精度が悪化し、工作物の加工精度が悪化する。このため、調整により幾何誤差を小さくする必要があるが、ゼロにすることは困難であり、幾何誤差を補正する制御を行うことで高精度な加工を行うことができる。
この幾何誤差を補正制御する手段として、特許文献1のような方法が提案されている。この方法では、工具から工作物間の軸のつながり(以下、「軸連鎖」と呼ぶ)情報を元に、幾何誤差がない場合の軸連鎖に従って演算される指令値座標系での工具先端点位置と、幾何誤差がある場合の軸連鎖に従って演算される指令値座標系での工具先端点位置の差から補正量を算出し、該補正量を指令値に加算することで補正制御を行う。図1に示す複合加工機における、工具から工作物までの軸連鎖は、B軸−X軸−Y軸−Z軸−C軸が1つ存在する。
幾何誤差を補正制御するためには、実際の幾何誤差を計測・同定する必要がある。幾何誤差を計測・同定する手段として、特許文献2のような方法が提案されている。この方法では、図1の複合加工機における旋削主軸3に相当するテーブルに基準球を固定し、タッチプローブを用いて、回転軸を複数の角度に割り出して該基準球の中心位置を計測し、その計測結果を元に幾何誤差を同定する。
一方、図2は、複数の旋削主軸と複数の刃物台を有する複合加工機の模式図である。
主軸頭2は、工具を保持して回転可能であり、刃物台4に内蔵されたB軸により刃物台4に対して1自由度の回転運動が可能であり、さらにコラム5に設けられた互いに直交するX軸、Y軸、Z軸によりベッド1に対して3自由度の並進運動が可能である。旋削主軸3は、工作物を把持し回転可能なC軸により、ベッド1に対して回転1自由度の運動が可能である。したがって、主軸頭2は旋削主軸3に対して並進3自由度および回転2自由度の運動が可能である。
また、旋削主軸13は、工作物を把持し回転可能なC2軸により、ベッド1に対して回転1自由度の運動が可能であり、主軸頭2は旋削主軸13に対して並進3自由度および回転2自由度の運動が可能である。
さらに、刃物台14は、複数の工具を保持可能であり、互いに直交するX2軸、Z2軸によりベッド1に対して2自由度の並進運動が可能である。したがって、刃物台14は、旋削主軸3に対して並進2自由度および回転1自由度の運動が可能であり、さらにまた、旋削主軸13に対して並進2自由度および回転1自由度の運動が可能である。
各送り軸は図示しない数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動され、工作物に対する工具の相対位置および相対姿勢を制御して工作物の加工を行うことができる。例えば、旋削主軸3に把持した工作物を、刃物台4の主軸頭2に保持した工具、及び/又は刃物台14に保持した工具により加工可能である。また、旋削主軸13に把持した工作物を、刃物台4の主軸頭2に保持した工具、及び/又は刃物台14に保持した工具により加工可能である。
なお、刃物台14に保持される工具はバイト工具などの回転させない工具であり、旋削主軸3もしくは旋削主軸13で把持された工作物を回転させて旋削加工を行う。
図2の複合加工機において、旋削主軸3に把持した工作物を、刃物台4に保持した工具で加工する場合、工具から工作物までの軸連鎖は、B軸−X軸−Y軸−Z軸−C軸となる。また、旋削主軸3に把持した工作物を、刃物台14に保持した工具で加工する場合の前記軸連鎖は、X2軸−Z2軸−C軸となる。一方、旋削主軸13に把持した工作物を、刃物台4に保持した工具で加工する場合の前記軸連鎖は、B軸−X軸−Y軸−Z軸−C2軸となる。また、旋削主軸13に把持した工作物を、刃物台14に保持した工具で加工する場合の軸連鎖は、X2軸−Z2軸−C2軸となる。
このように、刃物台と旋削主軸との組合せによって形成される工作物から工具までの軸連鎖が複数存在すると、各軸連鎖において幾何誤差がそれぞれ存在し、各幾何誤差によって生じる各工具の位置誤差も異なるため、刃物台と旋削主軸の組合せに応じて各軸の補正値を変える必要がある。
特開2009−104317号公報 特開2011−38902号公報
しかし、特許文献2に開示される幾何誤差の同定方法は、1つの軸連鎖に対してのみ幾何誤差を計測・同定することができ、複数の軸連鎖に対する幾何誤差を計測・同定することは示されていない。よって、図2のように軸連鎖が複数存在する工作機械の場合、軸連鎖毎に基準球とタッチプローブを付け替えて、それぞれ計測・同定することが考えられるが、作業が煩雑になり、時間がかかるという課題がある。
また、タッチプローブを用いて機械の幾何誤差を計測する際には、タッチプローブのスタイラス球の位置を、機械の基準と一致させる、もしくは位置関係を既知にして補正するキャリブレーションが必要となる。例えば図1の機械の場合、工具を回転させるために主軸頭2に内蔵されている回転軸の中心軸を基準として、該中心軸とスタイラス球の中心が合うように調整を行い、調整し切れない場合は補正を行う。しかし、図2の機械における刃物台14には工具を回転させる軸がないため基準がなく、タッチプローブのキャリブレーションが困難であり、刃物台14に関する軸連鎖に属する幾何誤差を計測・同定することができない。このため、刃物台14での加工の際に幾何誤差の補正制御ができないという課題もある。
そこで、本発明は、幾何誤差パラメータを同定できない軸連鎖を含む複数の軸連鎖を有する工作機械であっても、全ての軸連鎖に対して計測を行う必要がなく、複数の軸連鎖に属する主要な幾何誤差パラメータを取得できる幾何誤差パラメータ同定方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、幾何誤差パラメータを同定できない軸連鎖を含む複数の軸連鎖を有する工作機械であっても、幾何誤差の補正制御を行うことができる制御方法及び制御装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在すると共に、前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを用いて前記幾何学的な誤差に対する補正制御が可能な制御装置を備えた工作機械において、前記主軸頭と前記テーブルとの何れか一方に被測定治具を、他方に位置計測センサをそれぞれ取り付けて、前記被測定治具を前記位置計測センサで計測することで、前記幾何誤差パラメータを同定する方法であって、
予め優先順位を付与した複数の前記軸連鎖のうち、優先順位の高い一の前記軸連鎖において、主軸頭回転軸を初期角度に割り出して、前記位置計測センサを用いて前記被測定治具の初期位置を計測する初期位置計測ステップと、
前記主軸頭回転軸を所定の複数の角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の位置をそれぞれ計測する相対位置計測ステップと、
前記相対位置計測ステップで計測された複数の位置計測値を円弧近似する円弧近似ステップと、
前記円弧近似ステップで近似された円弧から、計測した前記一の軸連鎖における、前記回転軸の中心位置誤差、前記回転軸の傾き誤差、前記並進軸間の直角度誤差のうちの少なくとも1つに関する前記幾何誤差パラメータを算出する幾何誤差パラメータ算出ステップと、
計測した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーする幾何誤差パラメータコピーステップと、を実行することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持して回転可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な複数の主軸頭と、を有すると共に、1つの前記主軸頭に保持された前記工具が、3軸以上の前記並進軸と2軸以上の前記回転軸とにより、前記工作物に対して並進3自由度以上及び回転2自由度以上の相対運動が可能であり、他の前記主軸頭に保持された前記工具が、1軸以上の前記並進軸と1軸以上の前記回転軸とにより、前記工作物に対して並進1自由度以上及び回転1自由度以上の相対運動が可能であり、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する一方、
前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを用いて前記幾何学的な誤差に対する補正制御が可能な制御装置を備えた工作機械において、前記主軸頭と前記テーブルとの何れか一方に被測定治具を、他方に位置計測センサをそれぞれ取り付けて、前記被測定治具を前記位置計測センサで計測することで、前記幾何誤差パラメータを同定する方法であって、
予め優先順位を付与した複数の前記軸連鎖のうち、優先順位の高い一の前記軸連鎖において、主軸頭回転軸を初期角度に割り出して、前記位置計測センサを用いて前記被測定治具の初期位置を計測する初期位置計測ステップと、
テーブル回転軸及び前記主軸頭回転軸を所定の複数の角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の位置をそれぞれ計測する相対位置計測ステップと、
前記相対位置計測ステップで計測された複数の位置計測値を円弧近似する円弧近似ステップと、
前記円弧近似ステップで近似された円弧から、計測した前記一の軸連鎖における、前記回転軸の中心位置誤差、前記回転軸の傾き誤差、前記並進軸間の直角度誤差のうちの少なくとも1つに関する前記幾何誤差パラメータを算出する幾何誤差パラメータ算出ステップと、
計測した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーする幾何誤差パラメータコピーステップと、を実行することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、前記初期位置計測ステップと前記相対位置計測ステップとの間に、
前記テーブル回転軸の角度からテーブル回転軸基準角度を算出するテーブル基準角度算出ステップと、
前記テーブル回転軸を前記テーブル回転軸基準角度に割り出し、前記主軸頭回転軸を前記初期角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の基準位置を計測する基準位置計測ステップと、をさらに実行することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
前記幾何誤差パラメータコピーステップでは、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する工作機械において、
前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータと、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値と、を用いて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を、前記軸連鎖の情報に従って、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差がない理想的な前記工具の位置とから、前記各軸間の前記幾何学的な誤差によって生じる前記工作物に対する前記工具の相対位置誤差を演算し、
前記工具の相対位置誤差を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値座標系に変換することにより、前記幾何学的な誤差に対する前記各軸の補正値を演算し、
演算した前記補正値を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値にそれぞれ加算して、前記補正後の指令値をもとに前記並進軸及び/又は前記回転軸を駆動させる制御方法であって、
前記複数の軸連鎖に予め優先順位を付与して優先順位の高い一の前記軸連鎖について前記幾何誤差パラメータを同定し、同定した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーして前記工具の相対位置誤差を演算するか、又は、当該重複している前記幾何誤差パラメータを当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにリンクさせて前記工具の相対位置誤差の演算の際に援用することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5の構成において、前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
前記幾何誤差パラメータをコピーする際には、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する工作機械に設けられ、
前記軸連鎖の優先順位に係る情報及び前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを記憶する記憶手段と、
前記並進軸及び/又は前記回転軸への指令値を生成する指令値生成手段と、
前記幾何誤差パラメータと前記指令値とを用いて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を、前記軸連鎖の情報に従って、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差がない理想的な前記工具の位置とから、前記各軸間の前記幾何学的な誤差によって生じる前記工作物に対する前記工具の相対位置誤差を演算して、前記工具の相対位置誤差を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値座標系に変換することにより、前記幾何学的な誤差に対する前記各軸の補正値を演算する補正値演算手段と、
演算した前記補正値を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値にそれぞれ加算する加算手段と、
前記補正後の指令値をもとに前記並進軸及び/又は前記回転軸を駆動させる送り軸駆動手段と、備えた制御装置であって、
優先順位の高い一の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーするか、又は、当該重複している前記幾何誤差パラメータを当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにリンクさせて援用するパラメータ複製手段を備えることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7の構成において、前記記憶手段では、前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
前記パラメータ複製手段は、前記幾何誤差パラメータをコピーする際、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする。
本発明の幾何誤差パラメータの同定方法によれば、複数の軸連鎖を有する複合加工機であっても、一つの軸連鎖において位置計測センサによる被測定治具の計測を行うだけで、他の軸連鎖に対して計測を行わなくても当該軸連鎖に属する主要な幾何誤差パラメータを取得することができる。よって、複数の計測を行わなくて済み、計測時間が短縮される。また、幾何誤差パラメータを同定できない軸連鎖に対しても一部又は全部の幾何誤差パラメータを取得できる。
本発明の工作機械の制御方法及び制御装置によれば、一の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータの設定を行うだけで、他の軸連鎖に属する幾何誤差の計測及び幾何誤差パラメータの設定を行わなくても、当該軸連鎖に属する主要な幾何誤差パラメータが設定できる。よって、幾何誤差パラメータを同定できない軸連鎖を含む複数の軸連鎖を有する場合でも幾何誤差の補正制御を行うことができ、高精度な加工が可能となる。
1つの刃物台と1つの旋削主軸とを有する複合加工機の模式図である。 2つの刃物台と2つの旋削主軸とを有する複合加工機の模式図である。 数値制御装置のブロック図である。 タッチプローブとテーブル上に設置されたターゲット球との模式図である。 幾何誤差パラメータの計測・同定方法のフローチャートである。 各軸連鎖における幾何誤差パラメータのタイプ情報を示す表である。
以下、本発明の一実施形態を、図2の複合加工機を例に説明する。但し、工作機械としては、複合加工機に限らずマシニングセンタや旋盤、研削盤などの工作機械でもよい。また、刃物台から旋削主軸までの間の軸数は5軸や3軸に限らず、2軸、4軸、6軸以上でもよい。さらにまた、回転軸により旋削主軸3および刃物台4がそれぞれ回転1自由度を持つ機構に限らず、刃物台4が回転2自由度以上を持つ機構や、旋削主軸3,13が回転2自由度以上を持つ機構でもよい。工作機械としては多関節ロボット等も含まれる。
図3は、上述した複合加工機の制御装置としての数値制御装置の一例である。
この数値制御装置は、記憶手段20と、指令値生成手段21と、補正値演算手段22と、送り軸駆動手段としてのサーボ指令値変換手段24と、パラメータ複製手段26と、加算手段27とを含んでなる。指令値生成手段21は、記憶手段20に入力された加工プログラムに従って、各駆動軸の指令値を生成する。補正値演算手段22は、指令値生成手段21で生成された指令値を基に各軸の補正値を演算する。加算手段27によって当該指令値と補正値の合計値を受けたサーボ指令値変換手段23は、各軸のサーボ指令値を演算して、各軸のサーボアンプ24a〜24hへ送る。各軸のサーボアンプ24a〜24hはそれぞれサーボモータ25a〜25hを駆動し、旋削主軸3に対する主軸頭2の相対位置および姿勢、旋削主軸13に対する主軸頭2の相対位置および姿勢、旋削主軸3に対する刃物台14の相対位置および姿勢、旋削主軸13に対する刃物台14の相対位置および姿勢を制御する。
加工プログラムでは、加工に使用する旋削主軸と刃物台を選択できる。例えば、旋削主軸3と刃物台4を選択した場合、旋削主軸3に把持した工作物を、刃物台4の主軸頭2で保持した工具で加工を行う。また、旋削主軸13と刃物台4と刃物台14を選択し、旋削主軸13に把持した工作物を、刃物台4の主軸頭2で保持した工具および刃物台14で保持した工具で同時に加工を行うこともできる。
一方、記憶手段20では、主軸頭2から旋削主軸3までの軸連鎖(B軸−X軸−Y軸−Z軸−C軸)を軸連鎖1、主軸頭2から旋削主軸13までの軸連鎖(B軸−X軸−Y軸−Z軸−C2軸)を軸連鎖2、刃物台14から旋削主軸3までの軸連鎖(X2軸−Z2軸−C軸)を軸連鎖3、刃物台14から旋削主軸13までの軸連鎖(X2軸−Z2軸−C2軸)を軸連鎖4、として記憶され、さらに、各軸連鎖に属する幾何誤差パラメータが記憶されている。
ここで、幾何誤差パラメータについて説明する。幾何誤差を隣り合う軸間の相対並進誤差3成分および相対回転誤差3成分の合計6成分(dX、dY、dZ、dA、dB、dC)で定義し、それぞれを幾何誤差パラメータとする。
軸連鎖1の幾何誤差パラメータとしては、各軸間、C軸と工作物間、B軸と工具間に前記6成分の幾何誤差がそれぞれ存在するため、合計36個の幾何誤差パラメータが存在する。ただし、36個のうち冗長な関係のものを除くと13個であり、それぞれ、dX11、dZ11、dA11、dB11、dA12、dC12、dB13、dC13、dA14、dX15、dY15、dA15、dB15である。これらは順に、B軸中心位置X方向誤差、B軸中心位置Z方向誤差、工具−B軸間直角度、B軸原点誤差、B−Z軸間直角度、B−X軸間直角度、Z−X軸間直角度、X−Y軸間直角度、Y−Z軸間直角度、C軸中心位置X方向誤差、C軸中心位置Y方向誤差、C−Y軸間直角度、C−X軸間直角度を表している。
軸連鎖2の幾何誤差パラメータは、dX21、dZ21、dA21、dB21、dA22、dC22、dB23、dC23、dA24、dX25、dY25、dA25、dB25であり、それぞれ、B軸中心位置X方向誤差、B軸中心位置Z方向誤差、工具−B軸間直角度、B軸原点誤差、B−Z軸間直角度、B−X軸間直角度、Z−X軸間直角度、X−Y軸間直角度、Y−Z軸間直角度、C2軸中心位置X方向誤差、C2軸中心位置Y方向誤差、C2−Y軸間直角度、C2−X軸間直角度である。
軸連鎖3の幾何誤差パラメータは、dA31、dB31、dB32、dX33、dY33、dA33、dB33であり、それぞれ、工具のX2軸周りの回転誤差、工具−X2軸間直角度、Z2−X2軸間直角度、C軸中心位置X方向誤差、C−Z2軸間平行度(X2軸周り)、C−X2軸間直角度である。
軸連鎖4の幾何誤差パラメータは、dA41、dB41、dB42、dX43、dY43、dA43、dB43であり、それぞれ、工具のX2軸周りの回転誤差、工具−X2軸間直角度、Z2−X2軸間直角度、C2軸中心位置X方向誤差、C2−Z2軸間平行度(X2軸周り)、C2−X2軸間直角度である。
次に、幾何誤差パラメータの計測・同定方法について説明する。
ここでは、図4に示すような位置計測センサとしてのタッチプローブ31を主軸頭2に装着させ、測定対象となる被測定治具としてのターゲット球32をテーブルである旋削主軸3もしくは旋削主軸13に磁石などで固定し、その中心位置を計測する。なお、タッチプローブ31を旋削主軸3もしくは旋削主軸13に磁石などで固定し、測定対象となるターゲット球32を備えた工具を主軸頭2に装着させてもよい。
タッチプローブ31は測定対象に接触したことを感知するセンサを有し、接触を感知した場合に赤外線や電波などで信号を発することができる。数値制御装置に接続された受信機でその信号を受信した瞬間もしくは遅れ分を考慮した時点の各軸の現在位置を測定値とする。球の中心位置を測定するためには、球の半径が既知であれば最低3点、既知でなければ最低4点を接触させて計測することで求めることができる。したがって、タッチプローブ31をターゲット球32の中心位置を計測するためのセンサとして用いている。
一方、位置計測センサの別の例としては、非接触で距離が測定できるレーザ変位計や、3つ以上の変位センサを用いて同時に球に接触させ、それぞれの計測値から球の中心位置を求める装置などでもよい。
幾何誤差の計測・同定は、図5のフローチャートにしたがって行われる。
初めに、タッチプローブ31を主軸頭2に装着させ、ターゲット球32を旋削主軸3に固定し、幾何誤差パラメータを同定する方法について説明する。
ステップS1において、計測の準備を行う。旋削主軸3上の任意の位置にターゲット球32をマグネットなどにより固定する。次に、タッチプローブ31を主軸頭2に装着させ、B軸をB軸初期角度に割り出して、タッチプローブ31をターゲット球22のZ軸方向頂点付近に位置決めさせる。ここで、B軸初期角度は0°とする。
ステップS2において、タッチプローブ31を用いてターゲット球32の初期位置の計測を行う(初期位置計測ステップ)。
ステップS3において、ターゲット球32の初期位置から、C軸基準角度の算出を行う(テーブル基準角度算出ステップ)。C軸基準角度とは、ターゲット球中心がX軸上でプラス側に位置する際のC軸角度である。ターゲット球32の初期位置計測時のC軸角度をCini、初期位置の計測値が(Xini, Yini, Zini)の場合、C軸基準角度Cdtを数1により求める。ここで、逆正接関数は、いわゆるatan2関数を用いることで、−180°〜180°の解を求める。
[数1]
Cdt=Cini+tan−1(Yini/Xini)
ステップS4において、予め設定してあるB/C軸角度指令値の組み合わせの中に、B軸がB軸初期角度、C軸がC軸基準角度である組み合わせが存在するかどうか判定する。ここでC軸角度指令値はC軸基準角度からの角度とする。例えば、計測条件1として、C軸角度指令値を0°でB軸角度指令値を−30°から120°までの範囲で15°間隔で11点を計測し、計測条件2として、B軸角度指令値を0°でC軸角度指令値を0°から315°までの範囲で45°間隔で8点計測する場合、計測条件1の回転軸指令値の組み合わせは(b,c)、計測条件2の回転軸指令値の組み合わせは(b,c)である。ここで、i=1〜11、j=1〜8である。
(b,c)、(b,c)にはB軸0°、C軸0°の組み合わせが存在するため、存在すると判定する。存在すると判断した場合はステップS5に、存在しないと判断した場合はステップS6に進む。
ステップS5において、ターゲット球32の基準位置の計測を行う。すなわち、C軸をC軸基準角度Cdt、B軸をB軸初期角度0°に割り出し、タッチプローブ31にてターゲット球32の中心位置を計測する(基準位置計測ステップ)。
ステップS6において、並進軸の指令値を算出する。ターゲット球32の基準位置計測を行っている場合(計測条件1)は、各B/C軸角度指令値と、幾何パラメータ(タッチプローブ先端からB軸中心までの距離)と、基準位置での球中心計測値と、を用いて算出する。ターゲット球32の基準位置計測を行っていない場合(計測条件2)は、各B/C軸角度指令値と、幾何パラメータと、初期位置での球中心計測値と、C軸初期角度とC軸基準角度の差分値と、から算出する。
計測条件1では指令値(XBi,YBi,ZBi)が、計測条件2では指令値(XCj,YCj,ZCj)が得られる。
ステップS7において、各回転軸の指令値に基づいて、タッチプローブ31よりターゲット球32の中心位置の計測を行う(相対位置計測ステップ)。計測条件1では計測値(XBi’,YBi’,ZBi’)が、計測条件2では計測値(XCj’,YCj’,ZCj’)が得られる。
ステップS8において、基準位置の計測が省略されているかどうか判定する。省略されている場合はステップS10に、省略されていない場合はステップS9に進む。
ステップS9において、並進軸の指令値を更新する。C軸角度指令値が0°、B軸角度指令値がB軸初期角度での球中心位置計測値を基準位置での計測値とし、各B/C軸角度指令値と、幾何誤差パラメータと、基準位置での球中心計測値と、を用いて各並進軸指令値を算出し直して更新する。
ステップS10において、各計測値を円弧近似する(円弧近似ステップ)。これは以下の通り算出される。
計測条件1における各計測値のB軸の半径方向成分ΔRBRi、B軸の軸方向成分ΔRBAi、および計測条件2における各計測値のC軸の半径方向成分ΔRCRj、C軸の軸方向成分ΔRCAj、は以下の数2により求める。
[数2]
ΔRBRi=(ZBi’−ZBi) cos(b)+(XBi’−XBi)sin(b)
ΔRBAi=YBi’−YBi
ΔRCRj=(XCj’−XCj)cos(−c)+(YCj’−YCj)sin(−c)
ΔRCAj=ZCj’−ZCj
ΔRBRiとΔRCRjは0から2次のフーリエ係数、ΔRBAiとΔRCAjは0から1次のフーリエ係数で数3のように表すことができる。すなわち、計測値の半径方向成分、軸方向成分を円弧に近似できる。
[数3]
ΔRBRi=rBa0+rBa1cos(b)+rBb1sin(b)+rBa2cos(2b)+rBb2sin(2b)
ΔRARi=xBa0+xBa1cos(b)+xBb1sin(b)
ΔRCRj=rCa0+rCa1cos(−c)+rCb1sin(−c)+rBa2cos(−2c)+rBb2sin(−2c
ΔRCAj=xCa0+xCa1cos(−c)+xCb1sin(−c)
数3を最小自乗法などで解くことで、各フーリエ係数すなわち各円弧誤差を算出する。
ステップS11において、計測値の円弧誤差から幾何誤差パラメータを算出する(幾何誤差パラメータ算出ステップ)。本例では、軸連鎖1に属する幾何誤差パラメータを算出する。
フーリエ係数と幾何誤差パラメータとの関係は数4となる。ここで、Rstはタッチプローブ先端からB軸中心までの距離、RはC軸中心からターゲット球中心までの距離、Hはターゲット球高さである。
[数4]
rBa1=−dZ11
rBb1=dX11−(dB13+dB11)Rst
rBb2=dB13 Rst/2
xBa1=(dA12+dA14)Rst
xBb1=dC12 Rst
rCa1=−dX15−dX11+(dB15+dB13+dB11)H
rCb1=−dY15−dA15 H+(dA14+dA12+dA11)Rst
rCb2=−dC13 R/2
rCa1=(dB15+dB13)R
rCb1=(dA15+dA14)R
数4を連立方程式として解くことで、幾何誤差パラメータdX11、dZ11、dA12、dC12、dB13、dC13、dX15、dY15、dA15、dB15を求める。
こうして、回転軸の中心位置誤差4つ、回転軸の傾き誤差4つ、直進軸間の直角度誤差2つの幾何誤差パラメータの全て或いは任意の一部を同定することができる。
ステップS12において、パラメータ複製手段26は、同定した幾何誤差パラメータを、他の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータにコピーする(幾何誤差パラメータコピーステップ)。以下このパラメータコピー制御について詳述する。
まず、記憶手段20では、同定された幾何誤差パラメータとともに、図6に示すような幾何誤差パラメータのタイプ情報(種類情報)も記憶されている。例えば、軸連鎖1において、行が5、列がdYはdY15を示しており、そのタイプは2となる。よって、dX11ではタイプは3、dB42のタイプは222となる。
ここで、重複の関係にある幾何誤差パラメータはタイプの値を同一とする。例えば、軸連鎖1と軸連鎖2は共にB軸、X軸、Y軸、Z軸が重複しているため、dX11とdX21、dZ11とdZ21、dA11とdA21、dB11とdB21、dA12とdA22、dC12とdC22、dB12とdB22、dC13とdC23、dA14とdA24のタイプは同じとなり、重複関係のパラメータである。
また、記憶手段20では、各軸連鎖に優先順位を持たせて記憶する。例えば、軸連鎖1(刃物台4に関する軸連鎖)は、従来の方法で幾何誤差パラメータの計測・同定が可能であるため、優先順位が高く、軸連鎖3(刃物台14に関する軸連鎖)は、幾何誤差の計測・同定ができないため、優先順位を低く設定する。
同定した幾何誤差パラメータが属する軸連鎖の優先順位に対して低い優先順位の軸連鎖があり、同一の幾何誤差タイプを持つ幾何誤差パラメータが存在する場合、優先順位の高い軸連鎖に属する該当した幾何誤差パラメータの値を、優先順位の低い幾何誤差パラメータにコピーする。
軸連鎖1は軸連鎖2に対して優先順位が高く、dX11とdX21、dZ11とdZ21、dA11とdA21、dB11とdB21、dA12とdA22、dC12とdC22、dB12とdB22、dC13とdC23のタイプは同じであるため、dX11、dZ11、dA11、dB11、dA12、dC12、dB12、dC13の値をそれぞれ、dX21、dZ21、dA21、dB21、dA22、dC22、dB22、dC23にコピーする。
また、軸連鎖1は軸連鎖3に対して優先順位が高く、dX15とdX33、dY15とdY33、dA15とdA33、dB15とdB33のタイプは同じであるため、dX15、dY15、dA15、dB15の値をそれぞれ、dX33、dY33、dA33、dB33にコピーする。
一方、軸連鎖1は軸連鎖4に対して優先順位は高いが、重複関係のパラメータがないため、コピーを行わない。
なお、タッチプローブ31を主軸頭2に装着させ、ターゲット球32を旋削主軸13に固定し、幾何誤差パラメータを同定する場合は、軸連鎖1の場合とほぼ同様に、軸連鎖2に属する幾何誤差パラメータを同定する。ただし、C軸ではなくC2軸が対象となる。また、円弧誤差パラメータと幾何誤差パラメータの関係式も異なる。
よって、算出される幾何誤差パラメータは、dX21、dZ21、dA22、dC22、dB23、dC23、dX25、dY25、dA25、dB25となる。
軸連鎖2は軸連鎖1に対して優先順位が低く、軸連鎖3に対しては優先順位が高いが重複するパラメータがないため、それらに対してはコピーを行わない。
一方、軸連鎖2は軸連鎖4に対して優先順位が高く、dX25とdX43、dY25とdY43、dA25とdA43、dB25とdB43のタイプは同じであるため、dX25、dY25、dA25、dB25の値をそれぞれ、dX43、dY43、dA43、dB43にコピーする。
こうして取得された幾何誤差パラメータに基づいて、補正値演算手段22は、各軸に対する幾何誤差の補正値を演算し、演算した補正値を指令値生成手段21からの指令置に加算手段27により加算することで、サーボ指令値変換手段23への指令値を更新する。なお、幾何誤差の補正値は、例えば先述の特許文献1に開示されるように、幾何誤差がない場合のワーク座標系での工具先端点ベクトルと、幾何誤差がある場合のワーク座標系での工具先端点ベクトルとの差分に基づいて工具先端点の誤差ベクトルを算出し、その誤差ベクトルを指令値座標系に同次座標変換することで指令値座標系の補正値ベクトルを算出する公知の技術で求めればよい。
よって、更新された指令値を元にサーボアンプ24a〜24hを介してサーボモータ25a〜25hが駆動し、工作物に対する工具の相対位置及び相対姿勢を制御して工作物の加工を実行することになる。
このように、上記形態の幾何誤差パラメータの同定方法によれば、優先順位の高い一の軸連鎖において主軸頭回転軸であるB軸を初期角度に割り出してターゲット球32の初期位置を計測する初期位置計測ステップと、旋削主軸回転軸であるC軸及びB軸を所定の複数の角度に割り出してタッチプローブ31によりターゲット球32の位置をそれぞれ計測する相対位置計測ステップと、相対位置計測ステップで計測された複数の位置計測値を円弧近似する円弧近似ステップと、円弧近似ステップで近似された円弧から、計測した一の軸連鎖における、回転軸の中心位置誤差、回転軸の傾き誤差、並進軸間の直角度誤差のうちの少なくとも1つに関する幾何誤差パラメータを算出する幾何誤差パラメータ算出ステップと、計測した一の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータと重複している幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータにコピーする幾何誤差パラメータコピーステップと、を実行することで、複数の軸連鎖を有する複合加工機であっても、一つの軸連鎖においてタッチプローブ31によるターゲット球32の中心位置計測を行うだけで、他の軸連鎖に対して計測を行わなくても当該軸連鎖に属する主要な幾何誤差パラメータを取得することができる。よって、複数の計測を行わなくて済み、計測時間が短縮される。また、幾何誤差パラメータを同定できない軸連鎖に対しても一部又は全部の幾何誤差パラメータを取得できる。
また、上記形態の複合加工機の制御方法及び制御装置によれば、複数の軸連鎖に予め優先順位を付与して優先順位の高い一の軸連鎖について幾何誤差パラメータを同定し、同定した一の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータと重複している幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する幾何誤差パラメータにコピーして工具の相対位置誤差を演算することで、刃物台4に関する軸連鎖に属する幾何誤差パラメータの設定を行うだけで、刃物台14に関する軸連鎖に属する幾何誤差の計測及び幾何誤差パラメータの設定を行わなくても、当該軸連鎖に属する主要な幾何誤差パラメータが設定できる。よって、刃物台14による加工の際にも幾何誤差に対する補正制御を行うことができ、高精度な加工が可能となる。
なお、幾何誤差パラメータをコピーするタイミングは、補正値演算手段で補正値を演算するタイミングとしてもよい。また、コピーするのではなく、幾何誤差タイプが同一の幾何誤差パラメータ同士にリンクを張り、優先度の低い軸連鎖の補正値を演算する際に、優先度の高い軸連鎖に属する幾何誤差パラメータを参照して当該幾何誤差パラメータを援用するようにしてもよい。さらに、コピーする軸連鎖の対象として、刃物台が異なる軸連鎖、旋削主軸が異なる軸連鎖と区別し、それぞれでコピーを実行するか否かを選択してもよい。
1・・ベッド、2・・主軸頭、3,13・・旋削主軸、4,14・・刃物台、、5・・コラム、20・・記憶手段、21・・指令値生成手段、22・・補正値演算手段、23・・サーボ指令値変換手段、24a〜24h・・サーボアンプ、25a〜25h・・サーボモータ、26・・パラメータ複製手段、27・・加算手段、31・・タッチプローブ、32・・ターゲット球。

Claims (8)

  1. 2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在すると共に、前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを用いて前記幾何学的な誤差に対する補正制御が可能な制御装置を備えた工作機械において、前記主軸頭と前記テーブルとの何れか一方に被測定治具を、他方に位置計測センサをそれぞれ取り付けて、前記被測定治具を前記位置計測センサで計測することで、前記幾何誤差パラメータを同定する方法であって、
    予め優先順位を付与した複数の前記軸連鎖のうち、優先順位の高い一の前記軸連鎖において、主軸頭回転軸を初期角度に割り出して、前記位置計測センサを用いて前記被測定治具の初期位置を計測する初期位置計測ステップと、
    前記主軸頭回転軸を所定の複数の角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の位置をそれぞれ計測する相対位置計測ステップと、
    前記相対位置計測ステップで計測された複数の位置計測値を円弧近似する円弧近似ステップと、
    前記円弧近似ステップで近似された円弧から、計測した前記一の軸連鎖における、前記回転軸の中心位置誤差、前記回転軸の傾き誤差、前記並進軸間の直角度誤差のうちの少なくとも1つに関する前記幾何誤差パラメータを算出する幾何誤差パラメータ算出ステップと、
    計測した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーする幾何誤差パラメータコピーステップと、
    を実行することを特徴とする工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法。
  2. 2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持して回転可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な複数の主軸頭と、を有すると共に、1つの前記主軸頭に保持された前記工具が、3軸以上の前記並進軸と2軸以上の前記回転軸とにより、前記工作物に対して並進3自由度以上及び回転2自由度以上の相対運動が可能であり、他の前記主軸頭に保持された前記工具が、1軸以上の前記並進軸と1軸以上の前記回転軸とにより、前記工作物に対して並進1自由度以上及び回転1自由度以上の相対運動が可能であり、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する一方、
    前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを用いて前記幾何学的な誤差に対する補正制御が可能な制御装置を備えた工作機械において、前記主軸頭と前記テーブルとの何れか一方に被測定治具を、他方に位置計測センサをそれぞれ取り付けて、前記被測定治具を前記位置計測センサで計測することで、前記幾何誤差パラメータを同定する方法であって、
    予め優先順位を付与した複数の前記軸連鎖のうち、優先順位の高い一の前記軸連鎖において、主軸頭回転軸を初期角度に割り出して、前記位置計測センサを用いて前記被測定治具の初期位置を計測する初期位置計測ステップと、
    テーブル回転軸及び前記主軸頭回転軸を所定の複数の角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の位置をそれぞれ計測する相対位置計測ステップと、
    前記相対位置計測ステップで計測された複数の位置計測値を円弧近似する円弧近似ステップと、
    前記円弧近似ステップで近似された円弧から、計測した前記一の軸連鎖における、前記回転軸の中心位置誤差、前記回転軸の傾き誤差、前記並進軸間の直角度誤差のうちの少なくとも1つに関する前記幾何誤差パラメータを算出する幾何誤差パラメータ算出ステップと、
    計測した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーする幾何誤差パラメータコピーステップと、
    を実行することを特徴とする工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法。
  3. 前記初期位置計測ステップと前記相対位置計測ステップとの間に、
    前記テーブル回転軸の角度からテーブル回転軸基準角度を算出するテーブル基準角度算出ステップと、
    前記テーブル回転軸を前記テーブル回転軸基準角度に割り出し、前記主軸頭回転軸を前記初期角度に割り出して、前記位置計測センサにより前記被測定治具の基準位置を計測する基準位置計測ステップと、
    をさらに実行することを特徴とする請求項2に記載の工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法。
  4. 前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
    前記幾何誤差パラメータコピーステップでは、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の工作機械における幾何誤差パラメータ同定方法。
  5. 2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する工作機械において、
    前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータと、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値と、を用いて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を、前記軸連鎖の情報に従って、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差がない理想的な前記工具の位置とから、前記各軸間の前記幾何学的な誤差によって生じる前記工作物に対する前記工具の相対位置誤差を演算し、
    前記工具の相対位置誤差を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値座標系に変換することにより、前記幾何学的な誤差に対する前記各軸の補正値を演算し、
    演算した前記補正値を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値にそれぞれ加算して、前記補正後の指令値をもとに前記並進軸及び/又は前記回転軸を駆動させる制御方法であって、
    前記複数の軸連鎖に予め優先順位を付与して優先順位の高い一の前記軸連鎖について前記幾何誤差パラメータを同定し、同定した前記一の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーして前記工具の相対位置誤差を演算するか、又は、当該重複している前記幾何誤差パラメータを当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにリンクさせて前記工具の相対位置誤差の演算の際に援用する
    ことを特徴とする工作機械の制御方法。
  6. 前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
    前記幾何誤差パラメータをコピーする際には、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする請求項5に記載の工作機械の制御方法。
  7. 2軸以上の並進軸と、1軸以上の回転軸と、工作物を保持可能な1つ以上のテーブルと、工具を保持可能な1つ以上の主軸頭と、を備えて前記テーブルと前記主軸頭との少なくとも一方を複数有し、前記テーブルと前記主軸頭との組合せによって前記工作物から前記工具までの間に形成される前記並進軸及び/又は前記回転軸の軸連鎖が複数存在する工作機械に設けられ、
    前記軸連鎖の優先順位に係る情報及び前記各軸間の幾何学的な誤差である幾何誤差パラメータを記憶する記憶手段と、
    前記並進軸及び/又は前記回転軸への指令値を生成する指令値生成手段と、
    前記幾何誤差パラメータと前記指令値とを用いて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を、前記軸連鎖の情報に従って、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差がない理想的な前記工具の位置とから、前記各軸間の前記幾何学的な誤差によって生じる前記工作物に対する前記工具の相対位置誤差を演算して、前記工具の相対位置誤差を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値座標系に変換することにより、前記幾何学的な誤差に対する前記各軸の補正値を演算する補正値演算手段と、
    演算した前記補正値を、前記並進軸及び/又は前記回転軸の指令値にそれぞれ加算する加算手段と、
    前記補正後の指令値をもとに前記並進軸及び/又は前記回転軸を駆動させる送り軸駆動手段と、備えた制御装置であって、
    優先順位の高い一の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータのうち、優先順位の低い他の前記軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータと重複している前記幾何誤差パラメータを、当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにコピーするか、又は、当該重複している前記幾何誤差パラメータを当該他の軸連鎖に属する前記幾何誤差パラメータにリンクさせて援用するパラメータ複製手段を備える
    ことを特徴とする工作機械の制御装置。
  8. 前記記憶手段では、前記幾何誤差パラメータに種類情報を付属させ、複数の前記軸連鎖の前記幾何誤差パラメータのうち、重複する幾何誤差パラメータの前記種類情報を同一として予め設定しておき、
    前記パラメータ複製手段は、前記幾何誤差パラメータをコピーする際、同一の前記種類情報を有する前記幾何誤差パラメータを、前記重複する前記幾何誤差パラメータと判断することを特徴とする請求項7に記載の工作機械の制御装置。
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