JP6466760B2 - コンクリート壁面パネル及び堰堤 - Google Patents
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Description
下流壁部を構成するコンクリート壁面パネルは、型枠にコンクリートを打設し、コンクリートが固化した後に型枠を取り外すことにより、型枠の形状に合ったパネルが製造される。型枠を用いてコンクリート壁面パネルを製造することは、同じ種類、大きさのコンクリート壁面パネルを量産する際に好ましい方法である。
図1は、コンクリート壁面パネルの斜視図であり、図2は、枠体の斜視図である。
図1に示すように、コンクリート壁面パネル1は、枠体2と、コンクリート体3とを備えている。
図2に示すように、枠体2は、複数(4枚)の板材21〜24を連結して平面視四角形状に形成したものである。板材21〜24は、一方向に長尺な帯状の鋼材(例えば、SS400等)から形成されている。枠体2は、隣接する板材21〜24の端部同士を溶接により接合して平面視四角形状に形成している。すなわち、隣接する板材21〜24の面方向のなす角が直角となるように各板材21〜24が接合されている。
枠体2は、使用時に上側に配置される上板部21と、下側に配置される下板部22と、左側に配置される左板部23と、右側に配置される右板部24と、リブ25とを備えている。
なお、枠体2を運搬する際の吊り具の着脱のために上板部21だけに貫通孔21aが形成されているが、貫通孔を下板部22だけに形成してもよいし、上板部21と下板部22の双方に貫通孔を形成してもよい。
型枠部23aは、コンクリート体3を形成するためにコンクリートを打設する時の型枠となるものであり、その主面が打設されたコンクリートに対向する。
延出部23bは、型枠部23aの一端部に連続して形成され、枠体2の外側に向けて延びている。延出部23bは、その主面の面方向が型枠部23aの主面の面方向に対して直交している。
連結部23cは、複数のコンクリート壁面パネル1を連結して堰堤100の壁面を構築する際に、隣接する枠体2と連結する部分である。連結部23cは、延出部23bの一端部に連続して形成され、堰堤100の壁面の内側となる方向に向けて延びている。連結部23cは、その主面の面方向が型枠部23aの主面の面方向に対して平行で、かつ延出部23bの主面の面方向に対して直交している。連結部23cの主面には複数の連結孔23hが形成されており、隣接する枠体2の連結孔23h同士を重ね合わせてボルトを通し、ナットで締結することにより、隣接する枠体2と連結することができる。
型枠部24aは、コンクリート体3を形成するためにコンクリートを打設する時の型枠となるものであり、その主面が打設されたコンクリートに対向する。
延出部24bは、型枠部24aの一端部に連続して形成され、枠体2の内側に向けて延びている。延出部24bは、その主面の面方向が型枠部24aの主面の面方向に対して直交している。
連結部24cは、複数のコンクリート壁面パネル1を連結して堰堤100の壁面を構築する際に、隣接する枠体2と連結する部分である。連結部24cは、延出部24bの一端部に連続して形成され、堰堤100の壁面の内側となる方向に向けて延びている。連結部24cは、その主面の面方向が型枠部24aの主面の面方向に対して平行で、かつ延出部24bの主面の面方向に対して直交している。連結部24cの主面には複数の連結孔24hが形成されており、隣接する枠体2の連結孔24h同士を重ね合わせてボルトを通し、ナットで締結することにより、隣接する枠体2と連結することができる。
コンクリート体3は、枠体2内に打設されて形成されたものであり、堰堤100の壁面となるものである。
コンクリート体3は、上板部21、下板部22及び型枠部23a,24aの幅とほぼ同じ厚さとなるように枠体2内にコンクリートが打設されて形成されている。したがって、打設されたコンクリートの固化後は、上板部21、下板部22及び型枠部23a,24aの内側の面がコンクリート体3によって覆われた状態となる。リブ25は、コンクリート体3内に埋設された状態となる。
コンクリート体3における枠体2の上板部21の貫通孔21aとの対向部には、吊り具を着脱するためのアンカーナット31(着脱具)がその一端を露出した状態で埋設されている。
コンクリート体3の内面側(複数のコンクリート壁面パネル1を連結して堰堤100の下流壁部8を構築した時の内面側をいう。図3参照)には、隣接する枠体2同士を連結してコンクリートの壁面を構築した際に、当該壁面の補強部材4(図4参照)を連結するU字金具(連結具)32が設けられている。
コンクリート体3の内面側には、上下方向に隣接する枠体2同士を連結する連結部材5を取り付けるアンカーナット(取付具)33が設けられている。
次に、コンクリート壁面パネル1を連結して構成される壁部を有する堰堤について説明する。
図3は、河川に設けられる不透過型の砂防堰堤100の斜視図であり、一部を断面視している。堰堤100は、基礎部6と、上流壁部7と、下流壁部8と、中詰材9とを備えている。
図3に示すように、基礎部6は、コンクリートで形成されており、河川の流れる方向に直交する方向(河川の幅方向)に沿って河川の底部に設けられている。基礎部6は、2つ設けられており、上流側と下流側とに所定の間隔をあけて配置されている。
各基礎部6の上面は、それぞれ平面状に形成されており、上流側の基礎部6の上面に上流壁部7が設けられ、下流側の基礎部6の上面に下流壁部8が設けられている。
基礎部6には、略U字状に形成された係止部材61が埋設されており、係止部材61の湾曲部分が基礎部6の上面から突き出されている(図4参照)。係止部材61は、例えば、鉄筋から形成されている。
図3に示すように、上流壁部7は、上流側の基礎部6の上面に設けられており、河川の上流側に対向するように設けられている。
上流壁部7は、複数のセグメント71が連結されることにより構成されている。セグメント71は、連結した際に、隣接するセグメント71同士が同じ高さにならないように上下方向にずらして千鳥状に配置されている。
セグメント71は、鋼製のパネルから構成されており、表面が波形状に形成された矩形の鋼板と、鋼板の各縁に溶接等によって接合されたフランジとを有している。フランジには、縁の延在方向に沿って複数の孔が形成されており、隣接するセグメント71の孔同士を合わせた状態でボルトを通し、ナットで締結される。
隣接するセグメント71の間にはシール部材としての止水テープが貼り付けられていてもよい。その場合、止水テープは、隣接するセグメントのリブに跨がるように貼り付けられる。
図3に示すように、下流壁部8は、下流側の基礎部6の上面に設けられており、河川の下流側に対向するように設けられている。
下流壁部8は、複数のコンクリート壁面パネル1が連結されることにより構成されている。コンクリート壁面パネル1は、連結した際に、隣接するコンクリート壁面パネル1同士が同じ高さにならないように上下方向にずらして千鳥状に配置されている。
図4は、下流壁部8を堰堤100の内側から見た斜視図である。図5及び図6は、コンクリート壁面パネル1の接続部位の拡大図である。
図4及び図5に示すように、下流壁部8は、コンクリート壁面パネル1における左板部23及び右板部24の連結部23c,24cと、隣接するコンクリート壁面パネル1の左板部23及び右板部24の連結部23c,24cとをボルトB及びナットNで締結することによって連結されて、構成される。図5に示すように、連結部23c,24cは、2カ所の屈曲部分を有しているため、隣接するコンクリート壁面パネル1の型枠部21同士を突き合わせた際に、連結部23c,24cは、型枠部21から一方のコンクリート壁面パネル1側にずれた位置で当接する。図6に示すように、左右に隣接するコンクリート壁面パネル1の延出部23b,24bとがコンクリート壁面パネル1の厚さ方向に重なる範囲Aにおいては、ボルトBとナットNの締結位置を微調整できるので、コンクリート壁面パネル1の大きさに多少の誤差があっても問題なく連結できる。
基礎部6の近傍のコンクリート壁面パネル1には、補強部材4と支持部材10が連結されている。
補強部材4は、コンクリート壁面パネル1を補強するものであり、例えば、鉄筋から形成されている。補強部材4の一端は、一部がコンクリート壁面パネル1に埋設されたU字金具32に連結され、他端は基礎部6の上面に設けられた係止部材61に連結される。
支持部材10は、コンクリート壁面パネル1の倒壊を防止するものであり、例えば、山形鋼から形成されている。支持部材10の一端はコンクリート壁面パネル1に連結され、他端は基礎部6の上面に連結される。支持部材10のコンクリート壁面パネル1及び基礎部6への連結は、予め設けられたアンカーナット33等にボルトを螺合することにより固定する。
隣接するコンクリート壁面パネル1の間にはシール部材としての止水テープが貼り付けられていてもよい。その場合、止水テープは、隣接するコンクリート壁面パネルに跨がるように貼り付けられる。
図3に示すように、中詰材9は、上流壁部7と下流壁部8との間にある空間S内に打設されるものである。
具体的に、中詰材9は、現場の発生土にセメントと水を混合して作成したソイルセメントである。ここで用いられるソイルセメントは、スランプの有無について問われることはない。すなわち、ソイルセメントに流動性があってもなくても対応可能な堰堤であることを意味する。したがって、現場発生土の性状がどのようなものであっても、セメントと水の量を調整することで堰堤として構築することができる。
次に、堰堤100の施工方法について説明する。
堰堤100の施工位置にコンクリートを打設し、基礎部6を構築する。基礎部6上にコンクリート壁面パネル1及びセグメント71をそれぞれ組み上げていき、一回のソイルセメント打設分の高さに相当する上流壁部7及び下流壁部8を構築する。上流壁部7は、セグメント71をボルト及びナットを用いて連結することにより構築される。下流壁部8は、隣接するコンクリート壁面パネル1の連結部23c,24cを重ね合わせてボルトB及びナットNにて締結することにより連結される。ここで、図7に示すように、コンクリート壁面パネル1の連結を行う際には、既に設置された一方のコンクリート壁面パネル1Aの延出部23b,24bに、これから連結するコンクリート壁面パネル1Bを預けた状態で組み立て作業を行うことができるので、作業効率の向上に寄与する。
なお、上流壁部7及び下流壁部8の構築の際に、補強部材4及び支持部材10も、それぞれ基礎部6とコンクリート壁面パネル1及びセグメント71に連結しておく。
この作業後、または、この作業に並行して、施工現場に混合施設(混合枡)を設け、この混合施設内で現場発生土にセメント及び水を加えて混合し、中詰材9としてのソイルセメントを作成する。なお、この混合作業は、現場発生土を掘削したバックホウのバケットを利用して現場発生土とセメントと水とを混合する。
次に、作成したソイルセメントを上流壁部7と下流壁部8との間にできた空間S内に打設し、打設したソイルセメントを均して締め固める。
ソイルセメントの養生、固化後、次のソイルセメント打設分の高さに相当する上流壁部7及び下流壁部8を構築し、ソイルセメントを打設する。このとき、補強部材4も随時連結しておく。この作業を所定の高さまで繰り返した後、天端に保護コンクリート11を打設し、これをもって堰堤100が完成する。
以上のような構成を有するコンクリート壁面パネル1によれば、枠体2をコンクリート体3の製造時の型枠として用いることができるので、従来のように、別途型枠を準備する必要がなく、コンクリート壁面パネル1の製造コストを低減することができる。
コンクリート壁面パネル1の完成後は、枠体2がコンクリート体3の補強材として機能するので、コンクリート壁面パネル1の強度を向上することができる。
枠体2の内部にコンクリートを打設することから、コンクリート体3の角部等が枠体2によって保護されているため、接触による欠損を大幅に減らすことができ、コンクリート壁面パネル1及び堰堤100の品質を向上することができる。
左板部23及び右板部24は、型枠部23a,24aに対して位置の異なる連結部23c,24cを有しているので、コンクリート体3の境界面と連結部23c,24cの境界面とをずらすことができ、中詰材9の打設時にコンクリート壁面パネル1の間から中詰材9が漏れにくくなる。これにより、中詰材9に含まれる水が抜けて堰堤100が強度不足になることを防止するとともに、堰堤100の景観の悪化を防止できる。
枠体2自身が隣接するコンクリート壁面パネル1との連結部材を有しているので、別途準備すべき連結部材の部品点数を減らすことができる。
左板部23及び右板部24は、型枠部23a,24aと延出部23b,24bの主面方向が直交しているので、コンクリート壁面パネル1の連結を行う際には、既に設置された一方のコンクリート壁面パネル1の左板部23及び右板部24に、これから連結するコンクリート壁面パネル1の重量を預けた状態で組み立て作業を行うことができるので、作業効率が向上する。枠体2に多少の寸法誤差があっても、延出部23b,24bが重なり合っている範囲内で微調整することができるので、出来高管理が容易となる。
左板部23及び右板部24は、連結部23c,24cを有しているので、コンクリート体3に隣接するコンクリート体3との継ぎ目の段差を形成する必要がなくなり、コンクリート体3の強度が向上する。
左板部23及び右板部24の連結部23c,24cは、下流壁部8の内側に向けて延びているので、コンクリート壁面パネル1を連結する際の作業効率が向上する。
左板部23及び右板部24は、型枠部23a,24aと延出部23b,24bとの境界、及び延出部23b,24bと連結部23c,24cとの境界で屈曲するように形成されているので、枠体2の剛性を高めることができ、枠体2の製造時(溶接時やメッキ処理時)の変形を抑制することができる。
コンクリート体3にはアンカーナット31が設けられているので、吊り具を簡単に着脱することができる。
コンクリート体3にはアンカーナット33が設けられているので、上下方向に隣接するコンクリート壁面パネル1に跨って連結部材5を簡単に連結することができる。
コンクリート体3にはU字金具32が設けられているので、下流壁部8の補強部材4を簡単に連結することができる。
枠材2は、複数の鋼製の板材から形成されているので、アンカーナット31,33、U字金具32の設置が容易となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、上記の左板部や右板部のような構造は、上板部及び下板部に採用してもよい。もちろん、枠体を構成する全ての板材を上記の左板部や右板部のような構造としてもよい。
左板部及び右板部に延出部を形成することなく、型枠部に連結部が連続するように形成し、連結部が枠体の内側又は外側に向かって延びるような構成であってもよい。このような構成においても、左板部及び右板部の各連結部の主面の面方向を平行にしておくことで、隣接するコンクリート壁面パネル同士を連結することができる。
枠体は、平面視矩形状に限らず、三角形や六角形等の多角形状でもよい。
リブの設置位置や貫通孔の形成位置も任意であって枠体の大きさや形状に応じて自由に変更可能である。
連結部材及び補強部材を設ける位置、その数量は任意であって、コンクリート壁面パネルの形状や大きさに応じて自由に変更可能である。
コンクリート壁面パネルは、下流壁部だけでなく、上流壁部の構築に用いてもよい。
2 枠体
3 コンクリート体
4 補強部材
5 連結部材
8 下流壁部
21 上板部
21a 貫通孔
22 下板部
23 左板部
24 右板部
25 リブ
23a,24a 型枠部
23b,24b 延出部
23c,24c 連結部
31 アンカーナット(着脱具)
32 U字金具(連結具)
33 アンカーナット(取付具)
100 堰堤
Claims (9)
- 複数の板材を連結して平面視多角形状に形成された枠体と、
前記枠体内に打設されて形成されたコンクリート体と、
を備え、
前記枠体の少なくとも一辺の板材は、
コンクリート打設時の型枠となる型枠部と、
前記型枠部に連続し、前記型枠部に対してその面方向が直交して、前記枠体から露出している前記コンクリート体の面が位置する平面に対向する位置で、前記枠体の外側又は内側に向けて延びる延出部と、
前記延出部に連続し、前記型枠部に対してその面方向が平行で、かつ前記延出部に対して前記コンクリート体から離れる方向にその面方向が直交し、隣接する枠体に連結される連結部と、
を有することを特徴とするコンクリート壁面パネル。 - 前記枠体は、平面視四角形状に形成されており、
互いに対向する板材が前記型枠部及び前記連結部を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁面パネル。 - 前記互いに対向する板材の各延出部は、各型枠部から同じ方向に延びており、
前記互いに対向する板材の各連結部は、各延出部から同じ方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート壁面パネル。 - 前記枠体の少なくとも一辺の板材には表面から裏面にわたって貫通する貫通孔が形成されており、
前記コンクリート体における前記貫通孔との対向部には、吊り具を着脱する着脱具が設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネル。 - 前記コンクリート体には、隣接する枠体同士を連結してコンクリートの壁面を構築した際に、当該壁面の補強部材を連結する連結具が設けられていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネル。
- 前記コンクリート体には、隣接する枠体同士を連結する連結部材を取り付ける取付具が設けられていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネル。
- 前記枠体は、隣接する板材に架け渡されたリブを備えることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネル。
- 前記板材は、鋼材で形成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネル。
- 請求項1から8までのいずれか一項に記載のコンクリート壁面パネルを連結して構成され、河川の上流側又は下流側の少なくとも一方に対向するように設けられる壁部を備えることを特徴とする堰堤。
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