JP6466065B2 - 正極材料、正極、およびリチウムイオン電池 - Google Patents

正極材料、正極、およびリチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極材料、正極、およびリチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池は、一般的に、携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器の電源として使用されている。また、最近では小型携帯機器以外に、電気自動車や電力貯蔵などの電源としてもリチウムイオン電池は使用され始めている。
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されている。一方、電解液を固体電解質に変えて、電池を全固体化したリチウムイオン電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている(例えば、特許文献1〜3)。
特開2012−99315号公報 特開2012−256486号公報 特開2013−33655号公報 特開2013−177288号公報
全固体リチウムイオン電池では、正極内でのリチウムイオン伝導性や電子伝導性を確保するために、正極活物質層に固体電解質材料や導電助剤が添加されている。
しかし、本発明者らの検討によれば、正極活物質層に固体電解質材料や導電助剤が添加された正極を全固体リチウムイオン電池に用いた場合、使用する正極活物質から期待される容量密度が得られないことが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い放電容量密度を有するとともにサイクル特性にも優れる全固体リチウムイオン電池を得ることができる正極材料を提供するものである。
本発明者らは、高い放電容量密度を有する正極材料を提供するために鋭意検討した。その結果、全固体リチウムイオン電池においては、正極材料に含まれる導電助剤の割合を従来の基準よりも多く設定することが重要であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、
正極活物質と、導電助剤と、固体電解質材料とを含み、
当該正極材料の全固形分100質量%に対し、
上記正極活物質の含有量をX質量%とし、上記導電助剤の含有量をY質量%とし、上記固体電解質材料の含有量をZ質量%としたとき、
上記正極活物質の含有量に対する上記導電助剤の含有量の比(Y/X)が0.50以上2.0以下であり、
上記正極活物質の含有量に対する上記固体電解質材料の含有量の比(Z/X)が0.50以上2.0以下であり、
上記正極活物質が、構成元素として、Li、Mo、およびSを含むLi−Mo−S化合物である、正極材料が提供される。
さらに、本発明によれば、
上記正極材料からなる正極活物質層を備える、正極が提供される。
さらに、本発明によれば、
上記正極と、電解質層と、負極とを備えた、リチウムイオン電池が提供される。
本発明によれば、高い放電容量密度を有するとともにサイクル特性にも優れる全固体リチウムイオン電池を得ることができる正極材料、およびこの正極材料を含む正極並びに高い放電容量密度を有するとともにサイクル特性にも優れるリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池の構造の一例を示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。なお、本実施形態では特に断りがなければ、正極活物質を含む層を正極活物質層と呼び、集電体上に正極活物質層を形成させたものを正極と呼ぶ。また、負極活物質を含む層を負極活物質層と呼び、集電体上に負極活物質層を形成させたものを負極と呼ぶ。
[正極材料(P)]
はじめに、本実施形態の正極材料(P)について説明する。
正極材料(P)は、正極活物質(A)と、導電助剤(B)と、固体電解質材料(C)とを含んでいる。
また、正極材料(P)の全固形分100質量%に対し、正極活物質(A)の含有量をX質量%とし、導電助剤(B)の含有量をY質量%としたとき、正極活物質(A)の含有量に対する導電助剤(B)の含有量の比(Y/X)が0.20以上、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましく0.80以上、そして、2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
Y/Xが上記下限値以上であると、正極活物質粒子同士あるいは正極活物質と集電体との接触抵抗が低減し、正極内の電子伝導性を向上させることができる。また、Y/Xが上記上限値以下であると、正極内の正極活物質(A)の量を増やすことができる。
以上から、Y/Xが上記範囲内であると、得られるリチウムイオン電池の正極材料(P)の単位重量当たりの放電容量密度を向上させることができる。
従来、リチウムイオン電池の放電容量密度を向上させるためには、正極中の正極活物質の量を高めることが重要と考えられていた。導電助剤はあくまでも正極内の導電パスを維持させるために添加するもので、導電助剤をある一定以上含有させても、その効果は変わらないとされていた。むしろ導電助剤の含有量を増やすと、正極材料中の正極活物質の量が減るためリチウムイオン電池の放電容量密度が低下してしまったり、また、導電助剤は一般的に微粒子のため正極材料のハンドリング性が悪化してしまったりすると考えられていた。したがって、従来は、正極材料中の導電助剤の量は、少ないほど好ましいと考えられていた。
実際、特許文献1(特開2012−99315号)の段落0036には、導電助剤粉末は、正極活物質粉末に対して、0〜10質量%が好ましいと記載されており、特許文献2(特開2012−256486号)の段落0031には、導電性粉末が10質量%以下、特に5質量%以下含まれると記載されている。
したがって、従来は、導電助剤は正極活物質に対して0〜10質量%程度添加するのが一般的であった。
しかし、本発明者らが、正極材料に含まれる導電助剤の割合を従来の基準よりも増やしてみたところ、リチウムイオン電池の正極材料の単位重量当たりの放電容量密度が向上するという、予想外の効果が得られることが明らかになった。すなわち、本発明者らは、全固体リチウムイオン電池において、その充放電容量密度を向上させるためには、電解液を用いた従来のリチウムイオン電池とは異なる観点から配合設計をおこなうことが重要であることを見出した。
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討した。その結果、Y/Xを上記範囲内とすることにより、得られるリチウムイオン電池の放電容量密度を向上させることができることを見出し、本発明に到達した。
また、正極材料(P)の全固形分100質量%に対し、固体電解質材料(C)の含有量をZ質量%としたとき、正極活物質(A)の含有量に対する固体電解質材料(C)の含有量の比(Z/X)が好ましくは0.50以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.2以上、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。
Z/Xが上記下限値以上であると、正極活物質と固体電解質材料との接触面積が増加し、正極活物質と固体電解質材料との界面の抵抗を低下させることができる。さらに固体電解質材料同士の接点が確保され、正極材料内の広範囲に渡りリチウムイオンの導伝パスが形成できるため放電容量密度を増加させることができる。また、Z/Xが上記上限値以下であると、正極内の正極活物質(A)の量を増やすことができる。
以上から、Z/Xが上記範囲内であると、得られるリチウムイオン電池の正極材料(P)の単位重量当たりの放電容量密度をより一層向上させることができる。
このような正極材料(P)は、電子伝導性とリチウムイオン伝導性のバランスが優れた構造になっていると考えられる。したがって、Y/XおよびZ/Xが上記範囲内である正極材料(P)は、より一層高い放電容量密度を実現できると考えられる。
また、正極材料(P)において、正極活物質(A)の含有量(X)が、好ましくは20質量%以上50質量%以下、より好ましくは25質量%以上40質量%以下であり、導電助剤の含有量(Y)が、好ましくは11質量%以上45質量%以下、より好ましくは15質量%以上35質量%以下であり、固体電解質材料(C)の含有量(Z)が、好ましくは25質量%以上60質量%以下、より好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
正極材料(P)の配合が上記範囲内であると、得られるリチウムイオン電池の電池特性がとくに優れている。
つぎに、本実施形態の正極材料(P)を構成する各成分について説明する。
(正極活物質(A))
正極活物質(A)としてはリチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が容易におこなえるように電子伝導度が高い材料が好ましい。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、リチウム−マンガン−ニッケル酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO)などの複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子;LiS、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS、FeS、MoS、Li−Mo−S化合物などの硫化物;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉などの硫黄を活物質とした材料;などを用いることができる。これらの正極活物質(A)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、正極活物質(A)としては、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、Li−Mo−S化合物が好ましい。
Li−Mo−S化合物は、構成元素として、Li、Mo、およびSを含んでいるものである。
本実施形態のLi−Mo−S化合物を用いると、サイクル特性により一層優れるリチウムイオン電池を得ることができる。この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
本実施形態のLi−Mo−S化合物は、通常は原料であるMoSおよびLiSを混合することにより得ることができる。ここで、原料であるMoSは、リチウムイオンのインターカレーションによる体積収縮が小さい材料である。このMoSにLiSを混合し、Sの量を高めると、MoSの結晶構造からなるドメインが微細化し、非晶質のLi−Mo−S化合物が生成することでリチウムイオンが出入りするサイトが広がるとともにリチウムイオンが出入りするサイト数が増加すると考えられる。そしてその結果として、Li−Mo−S化合物はインターカレーションによる体積収縮がより一層小さい材料となり、より一層優れたサイクル特性を実現できていると推察される。
また、本実施形態のLi−Mo−S化合物は、上記Moの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/Mo)が好ましくは2以上20以下であり、より好ましくは4以上19以下であり、さらに好ましくは5以上17以下であり、特に好ましくは6以上14以下である。また、上記Moの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/Mo)が、好ましくは3以上13以下であり、より好ましくは4以上12以下であり、さらに好ましくは5以上10以下であり、特に好ましくは6以上9以下である。
Li/MoおよびS/Moを上記範囲内とすることにより、充放電容量(mAh/g)をより一層向上させることができる。
ここで、本実施形態のLi−Mo−S化合物中のLi、Mo、およびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができる。
つづいて、本実施形態のLi−Mo−S化合物の製造方法について説明する。
本実施形態のLi−Mo−S化合物は、例えば、原料であるMoS、LiS、必要に応じてS(硫黄)を粉砕混合することにより得ることができる。以下、具体的に説明する。
はじめに、LiSに対するMoSの反応モル比(MoS/LiS)が好ましくは0.05以上1.2以下、より好ましくは0.10以上0.50以下、特に好ましくは0.12以上0.35以下となるように、MoSおよびLiSを混合する。得られるLi−Mo−S化合物中のSの量を高めたい場合は、さらにS(硫黄)を添加してもよい。
ここで、LiSに対するMoSの混合モル比が、通常はLiSに対するMoSの反応モル比となる。本実施形態の混合モル比は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができるが、通常は仕込みの重量比から算出できる。
MoSおよびLiSを粉砕混合する方法としてはMoSおよびLiSを均一に粉砕混合できる混合方法であれば特に限定されないが、例えば、非活性雰囲気下で撹拌またはメカノケミカル処理によりおこなうことができる。非活性雰囲気下でメカノケミカル処理によりおこなうことが好ましい。メカノケミカル処理を用いると、MoSとLiSとを微粒子状に粉砕しながら混合することができるため、MoSとLiSとの接触面積を大きくすることができる。これにより、MoSとLiSとの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態のLi−Mo−S化合物を得ることができる。
ここで、メカノケミカル処理による混合方法とは、混合対象に、せん断力、衝突力または遠心力のような機械的エネルギーを加えつつ混合する方法である。メカノケミカル処理による混合をおこなう装置としては、ボールミル、ビーズミル、振動ミルなどの粉砕・分散機が挙げられる。
MoSおよびLiSを粉砕混合するときの攪拌速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度などの混合条件は、混合物の処理量によって適宜決定することができる。
このような製造方法により、本実施形態のLi−Mo−S化合物を得ることができる。
また、正極活物質(A)は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
正極活物質(A)の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、より一層高密度の正極を作製することができる。
また、正極活物質(A)は特に限定されないが、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が、好ましくは0.1m/g以上4m/g以下であり、より好ましくは0.2m/g以上2m/g以下である。
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が上記上限値以下であることにより、正極活物質(A)と電解質との不可逆的な反応をより一層抑制することができる。
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積を上記下限値以上であることにより、電解質の正極活物質(A)への浸透性を向上させることができる。
(導電助剤(B))
導電助剤(B)としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の導電助剤であれば特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラックなどのカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛;カーボンナノチューブ;などの炭素材料が挙げられる。これらの導電助剤(B)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、粒子径が小さく、価格が安いカーボンブラックが好ましい。
(固体電解質材料(C))
固体電解質材料(C)としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的に全固体リチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料などを挙げることができる。これらの中でも、硫化物固体電解質材料が好ましい。これにより、正極活物質(A)との界面抵抗がより一層低下し、出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池とすることができる。
固体電解質材料(C)としては、例えば、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS−GeS材料、LiS−Al材料、LiS−SiS−LiPO材料、LiS−P−GeS材料、LiS−LiO−P−SiS材料、LiS−GeS−P−SiS材料、LiS−SnS−P−SiS材料などが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れており、製造方法が簡便である点から、LiS−P材料が好ましい。
固体電解質材料(C)の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。本実施形態の粒子状の固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
固体電解質材料(C)の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
(バインダー)
正極材料(P)は、正極活物質(A)同士および正極活物質(A)と集電体とを結着させる役割をもつバインダーを含んでもよい。
本実施形態のバインダーはリチウムイオン電池に使用可能な通常のバインダーであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。これらのバインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(増粘剤)
正極材料(P)は、塗布に適した流動性を確保する点から、増粘剤を含んでもよい。本実施形態の増粘剤としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の増粘剤であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩、ポリカルボン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーなどが挙げられる。これらの増粘剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(正極材料(P)の調製方法)
次に、正極材料(P)の調製方法について説明する。
正極材料(P)は、例えば、正極活物質(A)、導電助剤(B)、固体電解質材料(C)、必要に応じて、バインダー、増粘剤、溶剤などを混合機により混合することにより調製することができる。
混合機としては、ボールミル、プラネタリーミキサーなど公知のものが使用でき、特に限定されない。混合方法も特に限定されず、公知の方法に準じておこなうことができる。
[正極]
つぎに、本実施形態の正極について説明する。
本実施形態の正極は、正極材料(P)からなる正極活物質層を備えている。
本実施形態の正極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
[正極の製造方法]
つぎに、本実施形態の正極の製造方法について説明する。
本実施形態の正極は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、本実施形態の正極材料(P)からなる正極活物質層をアルミなどの集電体の表面に形成することにより得ることができる。
正極活物質層は、集電体の片面のみ形成しても両面に形成してもよい。正極活物質層の厚さ、長さや幅は、電池の大きさや用途に応じて、適宜決定することができる。
本実施形態の正極の製造に用いられる集電体としては特に限定されず、アルミニウム箔などリチウムイオン電池に使用可能な通常の集電体を使用することができる。
本実施形態の正極は、必要に応じてプレスをおこない、正極の密度を調整してもよい。プレスの方法としては、一般的に公知の方法を用いることができる。
[リチウムイオン電池]
つぎに、本実施形態に係るリチウムイオン電池100について説明する。図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池100は、例えば、正極110と、電解質層120と、負極130とを備えている。そして、正極110が、前述した本実施形態の正極である。
本実施形態のリチウムイオン電池100は、一般的に公知の方法に準じて製造される。例えば、本実施形態の正極110および負極130をセパレーター中心に重ねたものを、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成し非水電解液を封入することにより作製される。
(負極)
本実施形態の負極130は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。本実施形態の負極130は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層を銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケルなどの集電体の表面に形成することにより得られる。
負極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
本実施形態の負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料;リチウム金属、リチウム合金などのリチウム系金属;シリコン、スズ、アルミニウムなどの金属;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。
負極は特に限定されないが、本実施形態の負極活物質以外の成分として、例えば、バインダー、増粘剤、導電助剤、固体電解質材料などから選択される1種以上の材料を含んでもよい。これらの材料としては、とくに限定はされないが、例えば、上述した正極110に用いる材料と同様のものを挙げることができる。
(電解質層)
次に、電解質層120について説明する。電解質層120は、正極110および負極130の間に形成される層である。
電解質層120とは、セパレーターに非水電解液を含浸させたものや、固体電解質を含む固体電解質層が挙げられる。
本実施形態のセパレーターとしては正極110と負極130を電気的に絶縁させ、リチウムイオンを透過する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性膜を用いることができる。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルなどが挙げられる。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
本実施形態の非水電解液とは、電解質を溶媒に溶解させたものである。
上記電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CH SOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
上記電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されず、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどの含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホランなどのスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の固体電解質層は、正極110および負極130の間に形成される層であり、固体電解質材料を含む固体電解質により形成される層である。固体電解質層に含まれる固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上述した正極に含ませる固体電解質(C)と同様のものを用いることができる。
本実施形態の固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、所望の絶縁性が得られる割合であれば特に限定されるものではないが、例えば、10体積%以上100体積%以下の範囲内、中でも、50体積%以上100体積%以下の範囲内であることが好ましい。
また、本実施形態の固体電解質層は、バインダーを含有していてもよい。バインダーを含有することにより、可撓性を有する固体電解質層を得ることができる。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有結着材を挙げることができる。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下の範囲内、中でも、0.1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。
(全固体リチウムイオン電池)
本実施形態のリチウムイオン電池は電解質層120として、上述した固体電解質層を用いることによって全固体リチウムイオン電池とすることができる。
本実施形態の全固体リチウムイオン電池は、例えば、本実施形態の正極110、負極130、および、正極110と負極130との間に固体電解質により形成された固体電解質層を有するものである。
全固体リチウムイオン電池の正極材料として、本実施形態の正極材料(P)を用いると、放電容量密度、サイクル特性などの電池特性が良好で、かつ、高い安全性を有するリチウムイオン電池とすることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
<付記>
(付記1)
正極活物質と、導電助剤と、固体電解質材料とを含み、
当該正極材料の全固形分100質量%に対し、
前記正極活物質の含有量をX質量%とし、前記導電助剤の含有量をY質量%としたとき、
前記正極活物質の含有量に対する前記導電助剤の含有量の比(Y/X)が0.20以上2.0以下である、正極材料。
(付記2)
付記1に記載の正極材料において、
前記固体電解質材料の含有量をZ質量%としたとき、
前記正極活物質の含有量に対する前記固体電解質材料の含有量の比(Z/X)が0.50以上5.0以下である、正極材料。
(付記3)
付記2に記載の正極材料において、
前記正極活物質の含有量(X)は20質量%以上50質量%以下であり、
前記導電助剤の含有量(Y)は11質量%以上45質量%以下であり、
前記固体電解質材料の含有量(Z)は25質量%以上60質量%以下である、正極材料。
(付記4)
付記1乃至3いずれか一つに記載の正極材料において、
前記正極活物質が、構成元素として、Li、Mo、およびSを含むものである、正極材料。
(付記5)
付記4に記載の正極材料において、
前記Moの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/Mo)が2以上20以下であり、前記Moの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/Mo)が、3以上13以下である、正極材料。
(付記6)
付記1乃至5いずれか一つに記載の正極材料において、
前記固体電解質材料が硫化物系固体電解質材料である、正極材料。
(付記7)
付記1乃至6いずれか一つに記載の正極材料において、
前記導電助剤が炭素材料である、正極材料。
(付記8)
付記1乃至7いずれか一つに記載の正極材料からなる正極活物質層を備える、正極。
(付記9)
付記8に記載の正極と、電解質層と、負極とを備えた、リチウムイオン電池。
(付記10)
付記9に記載のリチウムイオン電池において、
前記電解質層が固体電解質により形成されたものである、リチウムイオン電池。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例では、「mAh/g」は正極材料1gあたりの容量密度を示す。
[1]測定方法
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
(1)粒度分布
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で用いた正極活物質の粒度分布を測定した。測定結果から、各正極活物質について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(d50、平均粒子径)をそれぞれ求めた。
(2)ICP発光分光分析
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、実施例および比較例で用いた正極活物質中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それらの値に基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
(3)充放電試験
実施例および比較例で得られた正極材料を導電性アルミ箔粘着テープ(寺岡製作所社製、φ14mm)の粘着面に付着させ、正極を得た。
つづいて、プレス治具を用いて、固体電解質材料(Li1012、100mg)を83MPaにて予備プレスを行った。その後、それを正極にのせて、さらに250MPa、10分間プレス成型をおこない、正極上に固体電解質層を形成した。
また、上記方法で得られた正極、固体電解質層、負極であるインジウム箔(φ=14mm、t=0.5mm)をこの順で積層させて全固体型リチウムイオン電池を作製した。次いで、得られた全固体型リチウムイオン電池について、電流密度65μA/cmの条件で充電終止電位3.0Vまで充電した後、電流密度65μA/cmの条件で、放電終止電位0.4Vまで放電させる条件で充放電を10回行った。
ここで、1回目の放電容量を100%としたときの10回目の放電容量を放電容量変化率[%]とした。正極材料に対する放電容量密度と放電容量変化率について得られた結果を表1および2に示す。
[2]材料
つぎに、以下の実施例、比較例において使用した材料について説明する。
(1)正極活物質(Li−Mo−S化合物)の製造
アルゴン雰囲気下で、Al製ポットに、MoS(和光純薬工業社製、970mg、6.1mmol)と、LiS(シグマアルドリッチジャパン社製、835mg、18.2mmol)と、S(シグマアルドリッチジャパン社製、194mg、6.1mmol)とを秤量して加え、さらにZrOボールを入れ、Al製ポットを密閉した。
次いで、Al製ポットを、ボールミル回転台に乗せ97rpmで、4日間処理を行い、混合物を得た。
得られたLi−Mo−S化合物は乳鉢により粉砕し、目開き43μmの篩により分級して、平均粒子径d50が5μmのLi−Mo−S化合物を得た。
Moの含有量に対するLiの含有量のモル比(Li/Mo)は6であり、Moの含有量に対するSの含有量のモル比(S/Mo)は6であった。
(2)固体電解質材料(Li1012)の製造
原料には、LiS(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P(関東化学製試薬)を使用した。LiNは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製純度99.8%、厚さ0.5mm)にステンレス製の網(150メッシュ)を圧着した。Li箔は網の開口部から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLiNに変化した。LiNは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、25μm以下の粉末を回収し固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLiS:P:LiN=71.1:23.7:5.3(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、120rpmで200時間混合粉砕した。混合粉砕後の粉末について、プレス装置を用いて、270MPa、10分間プレスし、厚さ1.3mmの板状の混合物を得た。得られた混合物はカーボンボートに入れアルゴン気流中で330℃、2時間加熱処理し、粉末同士が融着し、固く焼結したLi1012を得た。
<実施例1>
正極活物質であるLi−Mo−S化合物(LiMoS)を0.334gと、導電助剤であるアセチレンブラックを0.333gとを乳鉢を用いて15分間混合した。次いで、その混合物に固体電解質材料であるLi1012を0.334g加え、乳鉢を用いて5分間混合した。
得られた混合物をAl製ポットに加え、さらにZrOボールを入れ、Al製ポットを密閉した。Al製ポット内はアルゴン雰囲気とした。
次いで、Al製ポットを、ボールミル回転台に乗せ120rpmで、24時間処理を行い、正極材料を得た。
得られた正極材料について充放電試験をおこなった。得られた結果を表1に示す。
<実施例2〜37、比較例1〜4>
正極活物質、導電助剤、固体電解質材料の種類と配合割合を表1および表2のように変更した以外は実施例1と同様にして正極材料をそれぞれ調製し、充放電試験をそれぞれおこなった。
ただし、正極活物質としてLiCoOを使用した場合は、硫化物より電位窓が高電圧側にシフトするため充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.4Vとした。
また、正極活物質である各Li−Mo−S化合物およびLiS−P固体電解質材料は前述したLiMoSの製造およびLi1012の製造に準じてそれぞれ作製した。また、LiS−GeS−P−SiS固体電解質材料は、特許文献4(特開2013−177288号公報)の段落0092に記載の実施例2に準じて作製した。導電助剤であるケッチェンブラック、正極活物質であるLiCoOは、市販品を用いた。
得られた結果を表1および表2に示す。
実施例1〜37で得られた正極材料は、比較例1〜4で得られた正極材料に比べて、放電容量密度が高く、さらに充放電サイクル特性に優れていた。
Figure 0006466065
Figure 0006466065
100 リチウムイオン電池
110 正極
120 電解質層
130 負極

Claims (8)

  1. 正極活物質と、導電助剤と、固体電解質材料とを含み、
    当該正極材料の全固形分100質量%に対し、
    前記正極活物質の含有量をX質量%とし、前記導電助剤の含有量をY質量%とし、前記固体電解質材料の含有量をZ質量%としたとき、
    前記正極活物質の含有量に対する前記導電助剤の含有量の比(Y/X)が0.50以上2.0以下であり、
    前記正極活物質の含有量に対する前記固体電解質材料の含有量の比(Z/X)が0.50以上2.0以下であり、
    前記正極活物質が、構成元素として、Li、Mo、およびSを含むLi−Mo−S化合物である、正極材料。
  2. 請求項1に記載の正極材料において、
    前記正極活物質の含有量(X)は20質量%以上50質量%以下であり、
    前記導電助剤の含有量(Y)は11質量%以上45質量%以下であり、
    前記固体電解質材料の含有量(Z)は25質量%以上60質量%以下である、正極材料。
  3. 請求項1または2に記載の正極材料において、
    前記Moの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/Mo)が2以上20以下であり、前記Moの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/Mo)が、3以上13以下である、正極材料。
  4. 請求項1乃至いずれか一項に記載の正極材料において、
    前記固体電解質材料が硫化物系固体電解質材料である、正極材料。
  5. 請求項1乃至いずれか一項に記載の正極材料において、
    前記導電助剤が炭素材料である、正極材料。
  6. 請求項1乃至いずれか一項に記載の正極材料からなる正極活物質層を備える、正極。
  7. 請求項に記載の正極と、電解質層と、負極とを備えた、リチウムイオン電池。
  8. 請求項に記載のリチウムイオン電池において、
    前記電解質層が固体電解質により形成されたものである、リチウムイオン電池。
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