JP6465635B2 - コイル巻線装置及び多層パンケーキコイルの巻線方法 - Google Patents
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Description
このような強制冷却方式の導体を用いて超伝導コイルを作る場合、ダブルパンケーキコイルを単位としてこれを1つまたは複数個組合せる構成が多く採用される。ここで、ダブルパンケーキコイルとは、パンケーキコイル(蚊取り線香型に巻かれたコイルの形からそう呼ばれる)を、最初から2枚分が一緒に作られたコイルである。このようにすると、コイルの内径側で導体を接続しないことから、特性の優れたコイルを作ることができる。
更に、核融合装置用の中心ソレノイドコイルなどのように導体接続のための余分な空間を極力少なくするため、多数のダブルパンケーキを導体接続せずに1本の導体で製作する必要があるケースがある。また、加速器用電磁石の水冷導体を用いたコイルでは、導体をパンケーキ巻きし、内周側あるいは外周側等でロー付などにより、導体を接続し、多層のパンケーキコイルを製作する。
このような多層のダブルパンケーキコイルを製作する従来の技術として、円筒状に仮り巻きされた線材を中間部から分け、この中間部から一端部側の線材を曲げ機構で線材曲率を変化させながら繰り出し、同一平面上において内周側から形を保持しつつ渦巻状に巻き付けて一層目のコイル部を成形し、この一層目のコイル部の成形が完了すると、同コイル部を反転して、この一層目のコイル部に重ねて中間部から他端側の線材を前記と同じく線材曲率を変化させながら内周側から形を保持しつつ渦巻状に巻き付けて二層目のコイル部を成形するダブルパンケーキ形コイル巻取り方法を採用することによって、円筒状に仮り巻きされているコイルから、直接、ダブルパンケーキ形状のコイルの成形が行えるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
上述のケーブルインコンジット導体の接続は、コンジット内のケーブル同士を重ね合わせて接続し、機械的に強固にクランプした上で両導体のコンジットを繋ぎ合せて、ヘリウム等を封止する構造が必要である。この超電導導体の接続を2層ごとに導体接続を行うと、超電導コイルでは接続構造のための特別なスペースが必要となり、コイルの全体のターン数を制限し、コイル性能を下げることになる。また、常電導の水冷コイルでは、中空導体を使用して製作するが、ロー付などの接続部において、ロー付欠陥、腐食などにより水漏れが発生し、装置が使えなくなるなどの品質上のリスクを含むことになる。
また、本発明に係る多層パンケーキコイルの巻線方法は、前述のコイル巻線装置を用い、層方向に隣り合う一方のコイルを外周側から内周側に向けて巻回する際には前記コイル巻線装置のコイル成形部を用いて導体を該コイル成形部の導体係止部に巻回する過程を含む第1の巻回工程を行い、層方向に隣り合う他方のコイルを内周側から外周側に向けて巻回する際には前記コイル成形部を取り外した状態で前記第1の巻回工程を経た内周側のコイル端部から前記コイル巻線装置の巻芯部に対して外周端まで順次重ねて巻回する過程を含む第2の巻回工程を行う操作を順次繰り返すことにより、前記導体から内外周部共に接続部のない2層または2層以上の多層パンケーキコイルを成形加工することを特徴とするものである。
また、本発明の多層パンケーキコイルの巻線方法によれば、構成が簡素であるため複雑な手順を経ることなく、長尺の導体から内外周とも導体の接続部のない2層以上の信頼性の高い多数層のパンケーキコイルへの成形を容易に行うことができ、製作時間も短縮できる。
図1は本発明の実施の形態1によるコイル巻線装置及び多層コイルの巻線方法に用いる巻枠を概念的に示す斜視図、図2は図1に示された巻枠の平面図である。図において、コイル巻線装置は、長尺の導体4(後述の図4に図示)をコイル状に成形する巻枠10を備え、その巻枠10は、ここでは円筒状の巻芯部1と、巻芯部1の図における下端部に配設されて、その巻芯部1を立設状態に保持するドーナツ形の板状ないしは鍔状に形成された巻枠基部2と、この巻枠基部2の上面において巻芯部1の周りを囲むように配設され、巻回時に導体4を径方向及び層方向に係止する導体係止部31が、コイルの外周側から内周側に向けて一筋の渦巻状で、かつ、周方向に沿って傾斜した階段状に形成され、さらにここでは分割面L1、L2において周方向に2つに分割可能に形成された第1のブロック3A及び第2のブロック3Bを用いて構成されたコイル成形部3を備えている。なお、導体係止部31における最内周部は、巻線時に巻芯部1の外周面が導体4を径方向に係止するように構成されている。
多層コイル5(図8、図9に図示)の1層目のコイル(パンケーキコイル)51の巻線が図4に示すように終わると、図5に示すように、層間渡り5aの成形を行い、更に導体固定部21を取り外した後、コイル成形部3から成形済みの1層分のターンを持ち上げて円盤状に揃える。次いで、分割構造の第1のブロック3A及び第2のブロック3Bを巻芯部1から図6の矢印C1、C2のように径方向外側に取り外した後、図6の矢印Dの方向に1層目のコイル51を巻枠基部2の上に降ろす。
図8は本発明の実施の形態1によるコイル巻線装置によって3層目の巻回を行う工程を説明する側面断面図、図9は図8の工程の後、コイル成形部3を構成する第1のブロック3Aを巻芯部1から径方向外側に取り外すために3層目のコイルの図における右側部分を持ち上げた状態での動作を説明する側面断面図である。
図8のように3層目の巻線が終わると、4層目に渡る層間渡り5aを図9に示すように成形し、第1のブロック3A及び第2のブロック3Bを取り外す操作を行う。このとき、図8、図9に示す状態では図面の奥側におけるターン渡り部31a(図2に図示)の外周端部側の位置に、2層目から3層目に渡る層間渡りが存在しているので、パンケーキコイル形に成形された3層目のコイル53全体を図5のように持ち上げることが出来ない。そのため、先ず、2層目から3層目に渡る層間渡りが無い、ここでは図の右側を図9のように持ち上げ(各ターンを傾けて、層間渡りの部分とは反対側を持ち上げる)、持ち上げた隙間から、第1のブロック3Aを矢印E方向に取り出す。そして、第2のブロック3Bは第1のブロック3Aを取り出した側に回しこんで、第1のブロック3Aを取り出した方向と同じ方向に取り出す。
以上の手順を順次繰り返すことにより、多数層のパンケーキコイルを内周部及び外周部共に導体接続せずに巻回して、所望の多数層のパンケーキコイルが成形される。
図10は本発明の実施の形態2によるコイル巻線装置及び多層コイルの巻線方法に用いる巻枠を概念的に示す断面図である。図において、コイル成形部3は、図2に示す分割面L1、L2と同様の周方向に分割するための分割面L1(図示されていない)、及び分割面L2に加えて、層方向に分割するための分割面L3においても分割可能な、第1のブロック3C、第2のブロック3D、第3のブロック3E、及び第4のブロック3F、の4つのブロックによって構成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図11は本発明の実施の形態3によるコイル巻線装置及び多層コイルの巻線方法に用いる巻枠を概念的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面断面図である。なお、この実施の形態3は、巻芯部1を巻枠基部2から取り外した状態で、複数のブロックからなるコイル成形部3をコイルの内周側に取り外すようにしたものである。図11において、巻枠10Aを構成する巻芯部1は、巻枠基部2に対して着脱自在に固定されている。そして、外観は実施の形態1と同様に形成されたコイル成形部3は、複数の所定の分割面L4において周方向に分割して形成されており、ここでは単独でコイルの径方向内側に取り外し可能に形成された第1ブロック3Gを構成する4つのブロック3G1〜3G4と、第1ブロック3Gの一つまたは複数を取り外すことによってコイルの径方向内側に取り外し可能な第2ブロック3Hを構成する4つのブロック3H1〜3H4によって構成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図12は本発明の実施の形態4によるコイル巻線装置及び多層コイルの巻線方法に用いる巻枠を概念的に示す平面図、図13は図12に示す実施の形態4によるコイルの変形例を概念的に示す平面図、図14は図12に示す実施の形態4によるコイルの他の変形例を概念的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は図14(a)のI−I線における断面図である。なお、この実施の形態4は、外観形状が円形以外の各種の形状で、コイル内部の層構造が実施の形態1と同様に巻回されている多層コイル巻線にも適用することが出来ることを例示するものである。
更にまた、図14に示す他の変形例は核融合装置用の磁場補正コイルとして用いられる多層コイル5Bであり、図14(b)にI−I線における断面図として示すように断面形状が湾曲したものであるが、このような形状の多層コイルに対しても本発明は適用可能であることは明らかである。
3A 第1のブロック、3B 第2のブロック、3C 第1のブロック、
3D 第2のブロック、3E 第3のブロック、3F 第4のブロック、
3G(3G1〜3G4) 第1ブロック、3H(3H1〜3H4) 第2ブロック、
3I、3J、3K、3L ブロック、31 導体係止部、31a ターン渡り部、
31b 最内周側端部、4 導体、5、5A、5B 多層コイル、5a 層間渡り、
51 1層目のコイル(パンケーキコイル)、52 2層目のコイル、
53 3層目のコイル、10、10A、10B 巻枠、
L1、L2、L3、L4、L5 分割面、O 軸心。
Claims (4)
- 導体を巻回してコイルに成形する巻枠を備えたコイル巻線装置であって、前記巻枠は、前記コイルの中心側の形状を規定する巻芯部と、この巻芯部の一端部に配設されて該巻芯部を立設状態に保持する巻枠基部と、この巻枠基部上における前記巻芯部の周りに配設され、巻回時に前記導体を係止する導体係止部が、前記コイルの外周側から内周側に向けて渦巻状で、かつ、周方向に沿って傾斜した階段状に形成されて成り、しかも、所定時に分割して、前記巻芯部から取り外し可能に形成された複数のブロックからなるコイル成形部と、を備えたものであり、前記巻芯部は前記巻枠基部に対して着脱可能に保持されて成り、前記コイル成形部は、周方向に複数に分割して形成され、前記巻芯部を前記巻枠基部から取り外した状態において、少なくとも1つは単独で前記コイルの径方向内側に取り外し可能に形成された第1ブロックと、この第1ブロックの取り外しにより前記コイルの径方向内側に取り外し可能な第2ブロックと、を用いて構成されていることを特徴とするコイル巻線装置。
- 前記導体係止部は前記巻芯部の周りを1周する都度、隣のターンに移るためのターン渡り部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイル巻線装置。
- 請求項1または請求項2に記載されたコイル巻線装置を用い、層方向に隣り合う一方のコイルを外周側から内周側に向けて巻回する際には前記コイル巻線装置のコイル成形部を用いて導体を該コイル成形部の導体係止部に巻回する過程を含む第1の巻回工程を行い、層方向に隣り合う他方のコイルを内周側から外周側に向けて巻回する際には前記コイル成形部を取り外した状態で前記第1の巻回工程を経た内周側のコイル端部から前記コイル巻線装置の巻芯部に対して外周端まで順次重ねて巻回する過程を含む第2の巻回工程を行う操作を順次繰り返すことにより、前記導体から内外周部共に接続部のない2層または2層以上の多層パンケーキコイルを成形加工することを特徴とする多層パンケーキコイルの巻線方法。
- 前記第1の巻回工程は、前記導体係止部の内周端部で層間渡りを成形加工する過程と、巻回された1層分のコイルを前記導体係止部から外した後、前記コイル成形部を構成するブロックを取り外す過程とを含み、
前記第2の巻回工程は、前記巻線装置の巻芯部に対して前記層間渡りの部分に連続させて内周側のターンを巻回した後、その内周側のターンの上に順次重ねて外周端まで巻回する過程と、必要に応じて前記コイルの外周端部で層間渡りを成形加工する過程と、を含むことを特徴とする請求項3記載の多層パンケーキコイルの巻線方法。
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