(第1の実施形態)
以下、車両の運転支援装置を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1には、本実施形態の車両の運転支援装置である制御装置50を備える車両が図示されている。図1に示すように、車両は、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRが駆動輪として機能する四輪駆動車である。
こうした車両は、運転者によるアクセルペダル11の操作量に応じた駆動力を出力するエンジン12を備えている。エンジン12から出力された駆動力は、トランスミッション13を通じてトランスファ14に伝達される。そして、トランスファ14によって前輪側に分配された駆動力が、前輪用デファレンシャル15を通じて前輪FL,FRに伝達され、トランスファ14よって後輪側に分配された駆動力が、後輪用デファレンシャル16を通じて後輪RL,RRに伝達される。なお、本明細書では、運転者がアクセルペダル11を操作することを、「アクセル操作」ということもある。
上記のトランスミッション13は、マニュアルトランスミッションである。このトランスミッション13には、クラッチ17を通じてエンジン12からの駆動力が伝達される。こうしたトランスミッション13では、運転者によるシフトレバー18の操作に応じて変速比が選択される。なお、クラッチ17は、クラッチペダル19の操作に応じて作動する。すなわち、クラッチペダル19の操作量が多くなるほどクラッチ17による動力伝達効率が低下され、エンジン12からの駆動力がトランスミッション13に伝達されにくくなる。
車両の制動装置20は、運転者によるブレーキペダル21の操作力に応じた液圧を発生する液圧発生装置22と、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を個別に調整することのできるブレーキアクチュエータ23とを有している。なお、本明細書では、運転者がブレーキペダル21を操作することを、「ブレーキ操作」ということもある。
また、車両には、各車輪FL,FR,RL,RRに個別対応するブレーキ機構25a,25b,25c,25dが設けられている。ブレーキ機構25a〜25dは、そのシリンダ内で発生している液圧に応じた制動力を車輪FL,FR,RL,RRに付与する。すなわち、運転者がブレーキ操作を行っている場合、液圧発生装置22で発生している液圧に応じた量のブレーキ液がブレーキ機構25a〜25dのシリンダ内に供給されることにより、シリンダ内の液圧が増圧される。また、ブレーキアクチュエータ23が作動している場合、同ブレーキアクチュエータ23によってブレーキ機構25a〜25dのシリンダ内の液圧が調整される。
また、車両には、手動操作部30が設けられている。この手動操作部30は、後述する降坂路発進制御の実施を運転者が要求する際に操作されるスイッチ(以下、「発進スイッチ」ともいう。)31と、後述する車両降坂制御の実施を運転者が要求する際に操作されるスイッチ(以下、「DACスイッチ」ともいう。)32とを有している。これら各スイッチ31,32は、運転者による操作によってオン・オフに切り替えられるスイッチである。そして、発進スイッチ31がオンである場合、降坂路発進制御の開始条件が成立すると、降坂路発進制御が実施される。また、DACスイッチ32がオンである場合、車両降坂制御の開始条件が成立すると、車両降坂制御が実施される。なお、各スイッチ31,32を個別に設けるのではなく、DACスイッチ32が、発進スイッチ31を兼ねるようにしてもよい。
また、車両には、車両の状態を運転者に報知するための報知装置35が設けられている。例えば、報知装置35は、車両降坂制御や降坂路発進制御が実施されている場合、同制御が実施中である旨を運転者に報知する。なお、報知装置35としては、点灯ランプ、スピーカやナビゲーション装置の表示画面などを挙げることができる。
こうした車両には、ブレーキスイッチSW1、アクセル開度センサSE1、シフトポジションセンサSE2、クラッチセンサSE3、車輪速度センサSE4,SE5,SE6,SE7、及び前後方向加速度センサSE8が設けられている。ブレーキスイッチSW1は、ブレーキペダル21が操作されているか否かを検出する。アクセル開度センサSE1は、アクセルペダル11の操作量であるアクセル操作量に相当するアクセル開度ACを検出する。シフトポジションセンサSE2は、シフトレバー18がニュートラル位置に位置するときにニュートラル信号SNを出力する。
クラッチセンサSE3は、クラッチペダル19の操作によって作動されるクラッチ17の状態に応じた信号であるクラッチ信号CLを出力する。例えば、クラッチ17が半係合状態になる時点のクラッチペダル19の操作量を判定操作量とした場合、クラッチセンサSE3は、運転者によるクラッチペダル19の操作量が判定操作量以上であるときにはクラッチ17による動力伝達が不能である旨のクラッチ信号CLを出力する。一方、クラッチセンサSE3は、クラッチペダル19の操作量が判定操作量未満であるときにはクラッチ17による動力伝達が可能である旨のクラッチ信号CLを出力する。
車輪速度センサSE4〜SE7は、車輪FL,FR,RL,RR毎に設けられており、対応する車輪の車輪速度VWを検出する。前後方向加速度センサSE8は、車両の前後方向の加速度である前後加速度Gxを検出する。そして、これらの検出系によって検出された情報は、制御装置50に入力される。
制御装置50は、エンジン12を制御するエンジンECU51、トランスミッション13を制御する変速機ECU52、及びブレーキアクチュエータ23を制御するブレーキECU53を備えている。これら各ECU51〜53は、各種の情報や指令を相互に送受信可能となっている。
なお、車両の運転支援装置の一例である制御装置50を構成するブレーキECU53は、降坂路での車両の走行を支援するための制御として、降坂路発進制御、及びDACなどの車両降坂制御を実施するようになっている。DACは「Downhill Assist Control」の略記である。この点で、本実施形態では、ブレーキECU53により、「制動制御部」の一例が構成されている。
降坂路発進制御は、降坂路での車両の急発進を抑制するための制御である。例えば、上記の発進スイッチ31がオンであり、運転者によるブレーキ操作によって車両に付与する制動力BPが増大されたことにより、車両が降坂路で停止したことを条件に降坂路発進制御が開始される。そして、降坂路発進制御では、ブレーキ操作が行われている場合、すなわちブレーキスイッチSW1がオンである場合、降坂路発進制御用の目標制動力である第1の目標制動力BP_T1が、勾配相当制動力BPAに固定される。この勾配相当制動力BPAは、車両の急加速を抑制するための値であり、車両の位置する降坂路の勾配が大きいほど大きい値に決定される。そのため、運転者によるブレーキ操作中にあっては、車両に付与する制動力BPが勾配相当制動力BPA以上で保持される。
そして、ブレーキ操作が解消されると、すなわちブレーキスイッチSW1がオンからオフに移行されると、第1の目標制動力BP_T1が徐々に減少される。すると、こうした第1の目標制動力BP_T1の減少に応じてブレーキアクチュエータ23が作動され、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される。これにより、車両がゆっくりと発進するようになる。
車両降坂制御は、ブレーキアクチュエータ23を作動させることにより、極低速(例えば、5km/h)に設定された目標速度VS_Tを車両の車体速度VSが超えないように車両に付与する制動力BPを調整する制御である。この場合、車両降坂制御の開始条件が成立すると、車両降坂制御用の目標制動力である第2の目標制動力BP_T2が、その時点の車体速度VS及び目標速度VS_Tに基づいて決定され、車両に付与する制動力BPが第2の目標制動力BP_T2に近づくように、ブレーキアクチュエータ23が制御される。そして、こうした車両降坂制御が実施されることにより、車両の車体速度VSが大きくなりすぎることが抑制されるため、運転者はステアリングホイールの操作に集中することが可能となる。
車両降坂制御の開始条件は、基本的に、以下に示す3つの条件を含んでいる。なお、車両の車体速度VSは、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWのうち少なくとも1つの車輪速度(例えば、最も大きい値の車輪速度)に応じて算出された値であり、車両の加速度DVSは、車両の車体速度VSを時間微分した値である。
(条件1)DACスイッチ32がオンであること。
(条件2)車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上であること。
(条件3)車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であること。
ところで、車両が降坂路を走行する場合、運転者は、発進スイッチ31及びDACスイッチ32の双方がオンとすることがある。この場合、運転者によるブレーキ操作に伴って車両が降坂路で停止されたときに降坂路発進制御が開始され、その後、ブレーキ操作が解消され、第1の目標制動力BP_T1が減少されている最中に、車両の車体速度VSが車両降坂制御の開始速度VSTh以上となることがある。しかし、降坂路発進制御の実施中にあっては、同降坂路発進制御によって車両に制動力BPが付与されているため、車両の加速度DVSが大きくなりにくい。そのため、車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上になったにも関わらず、加速度DVSが開始加速度DVSTh以上にならないために、車両降坂制御がなかなか実施されないことがある。
そして、第1の目標制動力BP_T1の更なる減少に伴って車両の加速度DVSが大きくなり、同加速度DVSが開始加速度DVSThに達した時点では、車両の車体速度VSが比較的大きくなっており、例えば車体速度VSが目標速度VS_Tを上回っていることがある。この場合、車両降坂制御が開始されると、車体速度VSを目標速度VS_T以下にするために第2の目標制動力BP_T2が急激に増大される。このように第2の目標制動力BP_T2の増大速度が大きいと、車両に付与する制動力BPが急激に増大され、結果として、車両が急減速されることがある。
そこで、本実施形態では、降坂路発進制御が実施されていない場合における車両降坂制御の開始条件は、(条件1)、(条件2)及び(条件3)の全てを含むようにした。その一方で、降坂路発進制御が実施されている場合における車両降坂制御の開始条件は、(条件1)及び(条件2)を含むものの、(条件3)を含まないようにした。これにより、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行時期に、車両降坂制御が早期に開始されるようになる。すなわち、車両に付与する制動力BPが比較的大きく、且つ車両の車体速度VSが比較的小さい段階で、車両降坂制御が開始されるようになる。その結果、第2の目標制動力BP_T2の増大速度が大きくなりにくいため、第2の目標制動力BP_T2に基づいたブレーキアクチュエータ23の制御が開始されても、車両に付与する制動力BPの急激な増大が抑制される。したがって、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間での車両の急減速の発生が抑制される。
次に、図2のフローチャートを参照し、車両降坂制御の開始条件を決定するために制御装置50のブレーキECU53が実行する処理ルーチンについて説明する。
図2に示すように、本処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、降坂路発進制御を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS11)。降坂路発進制御を実施していない場合(ステップS11:NO)、ブレーキECU53は、開始条件を第1の条件とし(ステップS12)、本処理ルーチンを終了する。この第1の条件とは、上記(条件1)、(条件2)及び(条件3)を含んでいる。一方、降坂路発進制御の実施中である場合(ステップS11:YES)、ブレーキECU53は、開始条件を第2の条件とし(ステップS13)、本処理ルーチンを終了する。この第2の条件とは、上記(条件1)及び(条件2)を含む一方で、(条件3)を含まない。
次に、図3のフローチャートを参照し、DACスイッチ32がオンであるときにブレーキECU53が実行する処理ルーチンについて説明する。
図3に示すように、本処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、降坂路発進制御を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS21)。降坂路発進制御を実施していない場合(ステップS21:NO)、ブレーキECU53は、降坂路発進制御用の目標制動力である第1の目標制動力BP_T1を「0(零)」とし(ステップS22)、その処理を後述するステップS26に移行する。このように第1の目標制動力BP_T1を「0(零)」とすることで、降坂路発進制御が実施されることがなくなる。
一方、降坂路発進制御の実施中である場合(ステップS21:YES)、ブレーキECU53は、ブレーキスイッチSW1がオフであるか否かを判定する(ステップS23)。すなわち、ステップS23では、運転者によるブレーキ操作が解消されているか否かが判定される。そして、ブレーキスイッチSW1がオンである場合(ステップS23:NO)、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1を勾配相当制動力BPAとし(ステップS24)、その処理を後述するステップS26に移行する。
一方、ブレーキスイッチSW1がオフである場合(ステップS23:YES)、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1を一定勾配で減少させる(ステップS25)。この際、第1の目標制動力BP_T1の減少勾配は、勾配の大きさや路面の摩擦係数などの降坂路の状況に応じて可変としてもよいし、降坂路の状態によらず一定としてもよい。ただし、既に第1の目標制動力BP_T1が「0(零)」である場合、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1を「0(零)」で保持する。その後、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS26に移行する。
ステップS26において、ブレーキECU53は、車両降坂制御の開始条件が成立していること、及び、車両降坂制御を実施している最中であることのうち少なくとも1つが成立しているか否かを判定する。降坂路発進制御の実施中である場合、車両降坂制御の開始条件は上記第1の条件であり、降坂路発進制御の実施中ではない場合、車両降坂制御の開始条件は上記第2の条件である。また、例えば、車両降坂制御を実施している最中であるか否かは、車両降坂制御用の目標制動力である第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」であるか否かによって判断することができる。すなわち、ブレーキECU53は、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」よりも大きい場合、車両降坂制御を実施している最中であると判断することができ、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」である場合、車両降坂制御を実施していないと判断することができる。
そして、車両降坂制御の開始条件が成立していないとともに、車両降坂制御が実施中ではない場合(ステップS26:NO)、ブレーキECU53は、第2の目標制動力BP_T2を「0(零)」とし(ステップS27)、その処理を後述するステップS29に移行する。一方、車両降坂制御の開始条件が成立していること、及び、車両降坂制御の実施中であることのうち少なくとも1つが成立している場合(ステップS26:YES)、ブレーキECU53は、第2の目標制動力BP_T2を、現時点の車体速度VS及び目標速度VS_Tに基づいて決定する(ステップS28)。その後、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS29に移行する。
ステップS29において、ブレーキECU53は、決定した第1の目標制動力BP_T1及び第2の目標制動力BP_T2のうち大きい方の値を、目標制動力BP_Tとする。そして、ブレーキECU53は、車両に付与する制動力BPを、決定した目標制動力BP_Tに近づけるべくブレーキアクチュエータ23を制御する(ステップS30)。すなわち、車両降坂制御が実施されておらず、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」である場合、ブレーキECU53は、降坂路発進制御の実施によって、車両に付与する制動力BPを、第1の目標制動力BP_T1に応じて調整する。また、降坂路発進制御が実施されておらず、第1の目標制動力BP_T1が「0(零)」である場合、ブレーキECU53は、車両降坂制御の実施によって、車両に付与する制動力BPを、第2の目標制動力BP_T2に応じて調整する。
続いて、ブレーキECU53は、降坂路発進制御及び車両降坂制御の双方が終了しているか否かを判定する(ステップS31)。例えば、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1が「0(零)」であるときに降坂路発進制御が終了していると判断することができる。また、ブレーキECU53は、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」である状態が所定時間継続したときに車両降坂制御が終了していると判断することができる。そして、降坂路発進制御及び車両降坂制御のうち少なくとも1つが実施中である場合(ステップS31:NO)、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS21に移行する。一方、降坂路発進制御及び車両降坂制御の双方が終了している場合(ステップS31:YES)、ブレーキECU53は、本処理ルーチンを終了する。
次に、図4のタイミングチャートを参照し、車両が降坂路を走行する際の作用について説明する。なお、前提として、降坂路での車両の停止中に降坂路発進制御が開始されており、運転者によるブレーキ操作によって、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1(=勾配相当制動力BPA)よりも大きくなっているものとする。また、DACスイッチ32がオンとなっているものとする。
図4(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g)に示すように、第1のタイミングt11で、運転者によってブレーキ操作量が減少され始めると、車両に付与する制動力BPが、ブレーキ操作量の減少に応じて減少される。なお、後述する第3のタイミングt13までは、ブレーキスイッチSW1がオンであり、運転者がブレーキ操作を行っていると判断することができるため、降坂路発進制御の実施によって、第1の目標制動力BP_T1が勾配相当制動力BPAに決定されている(ステップS24)。
そして、第1のタイミングt11と第3のタイミングt13との間の第2のタイミングt12で、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1(=勾配相当制動力BPA)に達する。すると、制動装置20のブレーキアクチュエータ23の作動によって、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1で保持される(ステップS30)。
その後、第3のタイミングt13で、ブレーキスイッチSW1がオンからオフに移行されると(ステップS23:YES)、ブレーキ操作が解消されたと判断することができるため、降坂路発進制御の実施によって、第1の目標制動力BP_T1が徐々に減少される(ステップS25)。すると、ブレーキアクチュエータ23の作動によって、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される(ステップS30)。これにより、車両がゆっくりと発進する。
すると、車両の車体速度VSが徐々に大きくなる。また、車両の加速度DVSもまた少しずつ大きくなる。そして、第1の目標制動力BP_T1が減少されている最中の第4のタイミングt14で、車両の車体速度VSが開始速度VSThに達し、車両降坂制御の開始条件、すなわち上記の第2の条件が成立する(ステップS26:YES)。そのため、第4のタイミングt14からは、車両降坂制御が開始され、第2の目標制動力BP_T2が、徐々に大きくされる(ステップS28)。
ただし、第4のタイミングt14から第5のタイミングt15までの期間では、第1の目標制動力BP_T1のほうが第2の目標制動力BP_T2よりも大きい。そのため、目標制動力BP_Tは第1の目標制動力BP_T1とされ(ステップ29)、この目標制動力BP_Tに基づいてブレーキアクチュエータ23が作動される(ステップS30)。具体的には、当該期間では、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される。
しかし、第5のタイミングt15以降では、第2の目標制動力BP_T2のほうが第1の目標制動力BP_T1よりも大きくなる。そのため、目標制動力BP_Tは第2の目標制動力BP_T2とされ(ステップ29)、この目標制動力BP_Tに基づいてブレーキアクチュエータ23が作動される(ステップS30)。すなわち、第5のタイミングt15が、降坂路発進制御から車両降坂制御への切り替えタイミングであるということもできる。その結果、車両に付与する制動力BPが、第2の目標制動力BP_T2の増大に応じて増大されるようになる。
ここで、降坂路発進制御の実施中であっても車両降坂制御の開始条件が、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であることを含む場合を比較例としたとする。こうした比較例にあっては、第4のタイミングt14では、車体速度VSが開始速度VSThに達しているにも拘わらず、車両の加速度DVSが開始加速度DVSThに達していないために車両降坂制御が開始されない。そして、車両に付与する制動力BPがより小さくなり、例えば制動力BPが「0(零)」になり、その後に車両の加速度DVSが開始加速度DVSThに達すると、車両降坂制御が開始されることとなる。この場合、車両降坂制御の開始時点における制動力BPが非常に小さい、又は制動力BPが「0(零)」であるため、第2の目標制動力BP_T2の増大速度が大きくなる。そして、こうした第2の目標制動力BP_T2に応じて、車両に付与する制動力BPが増大させることとなるため、車両が急減速することとなる。
この点、本実施形態では、第1の目標制動力BP_T1が減速されている最中に、すなわち車両に付与する制動力BPが比較的大きいときに、車両降坂制御が開始される。つまり、車両の車体速度VSが比較的小さいときから、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」よりも大きい値に決定されるようになる。そのため、車両降坂制御の開始初期における第2の目標制動力BP_T2の増大速度が、上記比較例の場合よりも大きくなりにくい。その結果、第2の目標制動力BP_T2が第1の目標制動力BP_T1を上回り、車両に付与する制動力BPが第2の目標制動力BP_T2に応じて調整されるようになっても、同制動力BPはゆっくりと増大されることとなる。したがって、車両降坂制御の実施に伴う車両の急減速が生じにくくなる。
なお、降坂路発進制御用の目標制動力である第1の目標制動力BP_T1は、第6のタイミングt16で「0(零)」となる。すなわち、第6のタイミングt16で、降坂路発進制御が終了される。
以上、上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、降坂路発進制御が実施されていないときには、車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上であること、及び、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であることの双方が成立していることを条件に、車両降坂制御が開始される。一方、降坂路発進制御が実施されているときには、車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上であるのであれば、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であるか否かに関係なく、車両降坂制御が開始される。そのため、降坂路発進制御が実施されているときでも車両降坂制御の開始条件に、車両の加速度DVSが開始加速度DVS以上であることが含まれている場合よりも、車両に付与する制動力BPが大きく、且つ車両の車体速度VSが小さい段階で車両降坂制御を開始させることができる。その結果、車両降坂制御の実施によって車両に付与する制動力BPが調整されるようになっても、同制動力BPの急激な増大が抑制され、車両の急減速が生じにくくなる。したがって、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行を円滑に行うことにより、制御の移行期間でのドライバビリティを向上させることができる。
(2)そして、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間では、第1の目標制動力BP_T1と第2の目標制動力BP_T2とのうち大きい方の値を目標制動力BP_Tとし、この目標制動力BP_Tに応じてブレーキアクチュエータ23が制御される。すなわち、降坂路発進制御から車両降坂制御に移行される際に、降坂路発進制御の実施によって車両に付与する制動力BPが「0(零)」になる前に、車両降坂制御を開始させることができ、制動力BPを増大させることができる。そのため、降坂路発進制御から車両降坂制御への円滑な移行を実現させることができ、ひいては降坂路発進制御から車両降坂制御への切り替わりに伴う車両の急減速を抑えることができる。
(第2の実施形態)
次に、車両の運転支援装置を具体化した第2の実施形態を図5及び図6に従って説明する。なお、第2の実施形態では、車両降坂制御が実施されているときであっても、車両降坂制御の開始条件が、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であることを含んでいる点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態では、降坂路発進制御が実施されているか否かによって、開始加速度DVSThの大きさを異ならせている。すなわち、開始加速度DVSThは、降坂路発進制御が実施されているときには、降坂路発進制御が実施されていないときよりも小さくされる。
次に、図5のフローチャートを参照し、開始加速度DVSThを決定するためにブレーキECU53が実行する処理ルーチンについて説明する。
図5に示すように、本処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、降坂路発進制御を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS31)。降坂路発進制御が実施中ではない場合(ステップS31:NO)、ブレーキECU53は、開始加速度DVSThを第1の加速度DVS1とし(ステップS32)、本処理ルーチンを終了する。なお、この第1の加速度DVS1は、上記第1の実施形態での開始加速度DVSThと等しい値である。
一方、降坂路発進制御の実施中である場合(ステップS31:YES)、ブレーキECU53は、開始加速度DVSThを、第1の加速度DVS1よりも小さい第2の加速度DVS2とし(ステップS33)、本処理ルーチンを終了する。なお、第2の加速度DVS2は、第1の加速度DVS1よりも小さい値であれば任意の値でよく、例えば「0(零)」であってもよい。したがって、本実施形態では、ブレーキECU53により、「開始加速度決定部」の一例が構成される。
次に、図6のタイミングチャートを参照し、車両が降坂路を走行する際の作用について説明する。なお、前提として、降坂路での車両の停止中に降坂路発進制御が開始されており、運転者によるブレーキ操作によって、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1(=勾配相当制動力BPA)よりも大きくなっているものとする。また、DACスイッチ32がオンとなっているものとする。
図6(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g)に示すように、降坂路発進制御によって、車両に付与する制動力BPが勾配相当制動力BPAで保持されている第1のタイミングt21で、ブレーキスイッチSW1がオンからオフになると(ステップS23:YES)、ブレーキ操作が解消されたと判断することができる。そのため、第1の目標制動力BP_T1が勾配相当制動力BPAから徐々に減少される(ステップS25)。すると、ブレーキアクチュエータ23の作動によって、車両に付与する制動力BPが、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される(ステップS30)。これにより、車両がゆっくりと発進する。
すると、車両の車体速度VSが徐々に大きくなる。また、車両の加速度DVSもまた少しずつ大きくなる。そして、第1の目標制動力BP_T1が減少されている最中の第2のタイミングt22で、車両の車体速度VSが開始速度VSThに達する。しかし、この第2のタイミングt22では、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh(=第2の加速度DVS2)未満であるため、車両降坂制御の開始条件が成立していない(ステップS26:NO)。よって、第2のタイミングt22では、車両降坂制御が開始されない。
本実施形態では、降坂路発進制御が実施されている場合、開始加速度DVSThは、第1の加速度DVS1よりも小さい第2の加速度DVS2に決定されている(ステップS33)。そのため、車両の加速度DVSが第2の加速度DVS2に達する第3のタイミングt23で、車両の加速度DVSが開始加速度DVSThに達し、車両降坂制御の開始条件が成立する(ステップS26:YES)。そのため、第3のタイミングt23からは、車両降坂制御が開始され、第2の目標制動力BP_T2が、徐々に大きくされる(ステップS28)。
ただし、第3のタイミングt23から第4のタイミングt24までの期間では、第1の目標制動力BP_T1のほうが第2の目標制動力BP_T2よりも大きい。そのため、目標制動力BP_Tは第1の目標制動力BP_T1とされ(ステップ29)、この目標制動力BP_Tに基づいてブレーキアクチュエータ23が作動される(ステップS30)。すなわち、車両に付与する制動力BPは、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される。
しかし、第4のタイミングt24以降では、第2の目標制動力BP_T2のほうが第1の目標制動力BP_T1よりも大きくなる。そのため、目標制動力BP_Tは第2の目標制動力BP_T2とされ(ステップ29)、この目標制動力BP_Tに基づいてブレーキアクチュエータ23が作動される(ステップS30)。すなわち、第4のタイミングt24が、降坂路発進制御から車両降坂制御への切り替えタイミングであるということもできる。そして、車両に付与する制動力BPは、第2の目標制動力BP_T2の増大に応じて増大されるようになる。
ここで、降坂路発進制御の実施中であっても開始加速度DVSThが第1の加速度DVS1である場合を比較例としたとする。こうした比較例にあっては、第3のタイミングt23では、車体速度VSが開始速度VSThに達しているにも拘わらず、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh(=第1の加速度DVS1)に達していないために車両降坂制御が開始されない。そして、車両に付与する制動力BPがより小さくなり、例えば制動力BPが「0(零)」になり、その後に車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh(=第1の加速度DVS1)に達すると、車両降坂制御が開始されることとなる。この場合、車両降坂制御の開始時点における制動力BPが非常に小さい、又は制動力BPが「0(零)」であるため、第2の目標制動力BP_T2の増大速度が大きくなる。そして、こうした第2の目標制動力BP_T2に応じて、車両に付与する制動力BPが増大させることとなるため、車両が急減速することとなる。
この点、本実施形態では、第1の目標制動力BP_T1が減速されている最中に、すなわち車両に付与する制動力BPが比較的大きいときに、車両降坂制御が開始される。つまり、車両の車体速度VSが比較的小さいときから、第2の目標制動力BP_T2が「0(零)」よりも大きい値に決定されるようになる。そのため、車両降坂制御の開始初期における第2の目標制動力BP_T2の増大速度が、上記比較例の場合よりも大きくなりにくい。その結果、第2の目標制動力BP_T2が第1の目標制動力BP_T1を上回り、車両に付与する制動力BPが第2の目標制動力BP_T2に応じて調整されるようになっても、同制動力BPはゆっくりと増大されることとなる。したがって、車両降坂制御の実施に伴う車両の急減速が生じにくくなる。
なお、第2の加速度DVS2が「0(零)」である場合、降坂路発進制御が実施されているときには、車両の車体速度VSが開始速度VSThに達した時点(第2のタイミングt22)から車両降坂制御が開始されることとなる。
以上、上記構成及び作用によれば、上記第1の実施形態における効果(2)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(3)本実施形態では、降坂路発進制御が実施されているか否かによらず、車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上であること、及び、車両の加速度DVSが開始加速度DVSTh以上であることの双方が成立していることを条件に、車両降坂制御が開始される。しかし、本実施形態では、降坂路発進制御が実施されている場合には、降坂路発進制御が実施されていない場合と比較し、開始加速度DVSThが小さくされる。そのため、上記比較例の場合よりも、車両に付与する制動力BPが大きく、且つ車両の車体速度VSが小さい段階で車両降坂制御を開始させることができる。その結果、車両降坂制御によって車両に付与する制動力BPが調整されるようになっても、同制動力BPの急激な増大が抑制され、車両の急減速が生じにくくなる。したがって、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行を円滑に行うことにより、制御の移行期間でのドライバビリティを向上させることができる。
(第3の実施形態)
次に、車両の運転支援装置を具体化した第3の実施形態を図7〜図9に従って説明する。なお、第3の実施形態では、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間での目標制動力BP_Tの決定方法が、第1及び第2の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1及び第2の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1及び第2の各実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態では、降坂路発進制御が実施されている最中で車両降坂制御の開始条件が成立したときには、第1の目標制動力BP_T1及び第2の目標制動力BP_T2に加え、第3の目標制動力BP_T3が設定される。この第3の目標制動力BP_T3は、制御の移行期間における目標制動力の下限値である。そして、こうした移行期間では、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち、最も大きい値を目標制動力BP_Tとし、この目標制動力BP_Tに応じてブレーキアクチュエータ23が作動されるようになっている。
次に、図7のフローチャートを参照し、第3の目標制動力BP_T3を決定するためにブレーキECU53が実行する処理ルーチンを説明する。なお、この処理ルーチンは、降坂路発進制御が実施されている状況下で車両降坂制御の開始条件が成立したタイミングで実行される。
図7に示すように、本処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、降坂路の勾配θを取得する(ステップS41)。例えば、ブレーキECU53は、前後方向加速度センサSE8によって検出された前後加速度Gxと、車両の車体速度VSを時間微分した値である車両の加速度DVSとの差分を、降坂路の勾配θとすることができる。そして、ブレーキECU53は、取得した降坂路の勾配θが大きいほど、第3の目標制動力BP_T3を大きい値に決定する(ステップS42)。したがって、本実施形態では、ブレーキECU53により、「下限値決定部」の一例が構成される。その後、ブレーキECU53は、本処理ルーチンを終了する。
次に、図8のフローチャートを参照し、DACスイッチ32がオンであるときにブレーキECU53が実行する処理ルーチンの一部について説明する。
図8に示すように、本処理ルーチンにおいて、上記のステップS27又はステップS28で第2の目標制動力BP_T2を決定したブレーキECU53は、その処理を次のステップS291に移行する。そして、ステップS291において、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち、最も大きい値を目標制動力BP_Tとする。続いて、ブレーキECU53は、ブレーキECU53は、車両に付与する制動力BPを、決定した目標制動力BP_Tに近づけるべくブレーキアクチュエータ23を制御する(ステップS30)。その後、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS31に移行する。
次に、図9のタイミングチャートを参照し、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間で車両に付与する制動力BPの推移について説明する。
図9に示すように、運転者によるブレーキ操作が解消されると、第1の目標制動力BP_T1が徐々に減少される。車両降坂制御の開始条件が未だ成立していない第1のタイミングt31以前では、第3の目標制動力BP_T3が設定されていないため、目標制動力BP_Tが第1の目標制動力BP_T1とされる。これにより、車両に付与する制動力BPは、第1の目標制動力BP_T1の減少に応じて減少される。
そして、第1のタイミングt31で車両降坂制御の開始条件が成立すると、第3の目標制動力BP_T3が、降坂路の勾配θに応じた値に決定される(ステップS42)。また、第1のタイミングt31以降では、第2の目標制動力BP_T2が徐々に増大される。
そのため、第1のタイミングt31以降では、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち、最も大きい値が目標制動力BP_Tとされる(ステップS291)。そして、この目標制動力BP_Tに基づいてブレーキアクチュエータ23が作動される(ステップS30)。
図9に示す例では、第1のタイミングt31から第2のタイミングt32までの期間では、第3の目標制動力BP_T3が最も大きい値となるため、目標制動力BP_Tが第3の目標制動力BP_T3となる(ステップS291)。これにより、当該期間では、車両に付与する制動力BPが、第3の目標制動力BP_T3で保持される(ステップS30)。その後、第2のタイミングt32以降では、第2の目標制動力BP_T2が最も大きい値となるため、目標制動力BP_Tが第2の目標制動力BP_T2となる(ステップS291)。その結果、車両に付与する制動力BPは、第2の目標制動力BP_T2の増大に応じて増大される(ステップS30)。
以上、上記構成及び作用によれば、上記各実施形態の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(4)本実施形態では、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間では、第1の目標制動力BP_T1に応じて制動力BPが減少される期間と、第2の目標制動力BP_T2に応じて制動力BPが増大される期間との間に、第3の目標制動力BP_T3で制動力BPが保持される期間を設けることができる。これにより、第3の目標制動力BP_T3で制動力BPが保持される期間が設けられない場合、すなわち目標制動力BP_Tが減少から増大に直接転じる場合と比較し、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間での制動力BPの急激な変動をさらに効果的に抑制することができる。したがって、当該移行期間での車両の急減速がさらに生じにくくなり、ドライバビリティをさらに向上させることができる。
(5)しかも、本実施形態では、車両の走行する降坂路の勾配θが大きく、降坂路発進制御の実施に伴う制動力BPの減少によって車両の車体速度VSが大きくなりやすい場合ほど、第3の目標制動力BP_T3が大きくされる。そのため、降坂路の勾配θが大きいほど、第3の目標制動力BP_T3が、第1の目標制動力BP_T1よりも早期に大きくなる。すなわち、車両の車体速度VSが開始速度VSThに達した時点では、車両に付与する制動力BPが比較的大きい。その結果、車両降坂制御の開始直後における第2の目標制動力BP_T2の増大速度が大きくなりにくい。したがって、車両降坂制御の開始に伴う車両の急減速の抑制効果をさらに高めることができる。
(6)第3の目標制動力BP_T3を大きい値で固定させる方法も挙げることができる。しかし、車両のトランスミッション13がマニュアルトランスミッションである場合、車両の車体速度VSがなかなか大きくならないためにエンジンストールが発生するおそれがある。この点、本実施形態では、降坂路の勾配θが小さく、降坂路発進制御の実施によって制動力BPが減少されても、車両の車体速度VSが大きくなりにくい場合ほど、第3の目標制動力BP_T3が小さくされる。そのため、降坂路が緩勾配であるときには、第1の目標制動力BP_T1が比較的小さくなり、車体速度VSが比較的大きくなってから制動力BPが第3の目標制動力BP_T3で保持されるようになる。したがって、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間でのエンジンストールの発生を抑制することができる。
(第4の実施形態)
次に、車両の運転支援装置を具体化した第4の実施形態を図10に従って説明する。なお、第4の実施形態では、車両の位置する降坂路の勾配に応じて、降坂路発進制御から車両降坂制御への移行期間での目標制動力BP_Tの決定方法を変更する点などが第3の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1〜第3の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1〜第3の各実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
車両の位置する降坂路が緩勾配である場合、車両に付与する制動力BPが減少されても、車両の車体速度VSが大きくなりにくい。すなわち、降坂路発進制御が実施されている最中でブレーキスイッチSW1がオンからオフになり、第1の目標制動力BP_T1が減少されても、車両の車体速度VSが大きくなりにくい。したがって、緩勾配の降坂路を車両が走行するに際し、降坂路発進制御から車両降坂制御に移行するときには、目標制動力BP_Tを第1の目標制動力BP_T1から第2の目標制動力BP_T2に直接切り替えて車両に付与する制動力BPを調整するようにしても、車両の急減速が生じにくい。
その一方で、車両の位置する降坂路が急勾配である場合、車両に付与する制動力BPが減少されると、車両の車体速度VSが大きくなりやすい。すなわち、降坂路発進制御が実施されている最中でブレーキスイッチSW1がオンからオフになり、第1の目標制動力BP_T1が減少されると、車両の車体速度VSが大きくなりやすい。したがって、急勾配の降坂路を車両が走行するに際し、降坂路発進制御から車両降坂制御に移行するときには、目標制動力BP_Tを第1の目標制動力BP_T1から第2の目標制動力BP_T2に直接切り替えると、車両の急減速が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、車両の位置する降坂路の勾配θが規定勾配θTh未満である場合、降坂路が緩勾配であると判断し、目標制動力BP_Tが、第1の目標制動力BP_T1及び第2の目標制動力BP_T2のうち大きい方の値に決定されるようにした。一方、車両の位置する降坂路の勾配θが規定勾配θTh以上である場合、降坂路が急勾配であると判断し、目標制動力BP_Tが、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち最も大きい値に決定されるようにした。
なお、本実施形態では、第3の目標制動力BP_T3は、車両の位置する降坂路の勾配θによらず所定値で固定されている。
次に、図10のフローチャートを参照し、DACスイッチ32がオンであるときにブレーキECU53が実行する処理ルーチンの一部について説明する。
図10に示すように、本処理ルーチンにおいて、上記のステップS27又はステップS28で第2の目標制動力BP_T2を決定したブレーキECU53は、その処理を次のステップS292に移行する。そして、ステップS292において、ブレーキECU53は、車両の位置する降坂路の勾配θが規定勾配θTh以上であるか否かを判定する。そして、降坂路の勾配θが規定勾配θTh未満である場合(ステップS292:NO)、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1及び第2の目標制動力BP_T2のうち最も大きい値を目標制動力BP_Tとする(ステップS293)。その後、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS30に移行する。一方、降坂路の勾配θが規定勾配θTh以上である場合(ステップS292:YES)、ブレーキECU53は、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち最も大きい値を目標制動力BP_Tとする(ステップS294)。その後、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS30に移行する。
以上、上記構成及び作用によれば、上記第3の実施形態の効果(5)及び(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(7)本実施形態では、車両の走行する降坂路が急勾配であり、車両の車体速度VSが大きくなりやすいときに限り、目標制動力BP_Tが、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち最も大きい値に決定され、同目標制動力BP_Tに応じて車両に付与する制動力BPが調整される。したがって、第1の目標制動力BP_T1に応じて制動力BPが減少される期間と、第2の目標制動力BP_T2に応じて制動力BPが増大される期間との間に、第3の目標制動力BP_T3で制動力BPが保持される期間を設けることにより、降坂路発進制御から車両降坂制御への切り替わり時点での制動力の急変の抑制効果をさらに高めることができる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、ブレーキスイッチSW1がオンからオフになり、第1の目標制動力BP_T1を減少させる際の減少速度を、所定値で固定させてもよいが、路面状況などに応じて可変させるようにしてもよい。すなわち、車両に付与する制動力BPを減少させることにより車両の車体速度VSが大きくなりやすい路面状態(路面の勾配や摩擦係数)であるときほど、第1の目標制動力の減少速度を小さくするようにしてもよい。例えば、降坂路の勾配θが大きいほど、第1の目標制動力の減少速度を小さくするようにしてもよい。
・各実施形態において、車両降坂制御の開始速度VSThを、所定値で固定させてもよいが、路面状況などに応じて可変させるようにしてもよい。すなわち、車両に付与する制動力BPを減少させることにより車両の車体速度VSが大きくなりやすい路面状態(路面の勾配や摩擦係数)であるときほど、開始速度VSThを小さくするようにしてもよい。例えば、降坂路の勾配θが大きいほど、開始速度VSThを小さくするようにしてもよい。
・第3及び第4の各実施形態において、目標制動力BP_Tを、第1の目標制動力BP_T1、第2の目標制動力BP_T2及び第3の目標制動力BP_T3のうち最も大きい値とする場合、第3の目標制動力BP_T3を、車両降坂制御の開始条件が成立した時点で車両に付与されている制動力BP、又は同時点の第1の目標制動力BP_T1としてもよい。この場合、車両降坂制御の開始条件が成立した時点から、第2の目標制動力BP_T2に基づいたブレーキアクチュエータ23の制御が開始される時点までの期間は、車両に付与する制動力BPが第3の目標制動力BP_T3で保持されることとなる。
・車両に設けられるトランスミッション13は、マニュアルトランスミッションではなく、オートマティックトランスミッションであってもよい。