以下、本発明に係る自動変速機の実施形態について、図面を用いて説明する。図1〜図11は、本発明に係る一実施形態の自動変速機を示す図である。
まず、構成を説明する。図1、図2において、車両1には自動変速機2が搭載されており、この自動変速機2は、エンジン3に固定された状態で車両1のフロアパネルの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施形態の車両1は、後輪駆動車両である。
ここで、本実施形態では、車両1の運転席に着座した運転者から見た前後方向、左右方向、および上下方向と一致するように、図中で前後、左右、上下の方向を矢印で示している。
図1、図2、図3に示すように、自動変速機2は変速機ケース2Aを備えており、この変速機ケース2Aは、エンジン3に取り付けられたフロントケース4と、フロントケース4に取付けられたリヤケース5と、リヤケース5に取付けられたエクステンションケース6とから構成される。フロントケース4にはエンジン3との間に図示しないクラッチが設けられており、クラッチによりエンジン3から自動変速機2への動力伝達が断続される。変速機ケース2Aには平行軸歯車式変速機構60が収納されている。図1、図2に示すように、フロントケース4の左側上部のエンジン3側には、スタータモータ103が設けられており、このスタータモータ103は、エンジン3の図示しないフライホイールを回転させる。
図3に示すように、フロントケース4には入力軸10が回転自在に支持されており、入力軸10の軸線方向一端部は、クラッチに接続されている。入力軸10は、軸線方向他端部10b側で出力軸11の軸線方向一端部により回転自在に支持されている。出力軸11は、入力軸10と同軸に配置されており、リヤケース5およびエクステンションケース6に回転自在に支持されている。出力軸11は本発明の回転軸を構成する。
フロントケース4およびリヤケース5にはカウンタ軸23が回転自在に設けられており、入力軸10と平行に延びている。カウンタ軸23は、図5、図8に示すように入力軸10の斜め下方に配置されている。
図3に示すように、変速機ケース2Aは、平行軸歯車式変速機構60を外周側から囲むように筒状に形成された外周壁93と、この外周壁93の内部に形成され入力軸10が貫通する第1隔壁91と、外周壁93の内部に形成され出力軸11が貫通する第2隔壁92と、を有している。
第1隔壁91は、フロントケース4のリヤケース5側の端部に形成されており、フロントケース4の内部とリヤケース5の内部とを仕切っている。第2隔壁92は、リヤケース5のエクステンションケース6側の端部に形成されており、リヤケース5の内部とエクステンションケース6の内部とを仕切っている。
図3に示すように、入力軸10には、エンジン3側から順に、1速インプットギヤ22A、リバースインプットギヤ22B、2速インプットギヤ22C、4速インプットギヤ22Dおよび3速インプットギヤ22Eが配置されている。
1速インプットギヤ22A、リバースインプットギヤ22Bおよび2速インプットギヤ22Dは、入力軸10に一体回転可能に固定されている。また、4速インプットギヤ22Dおよび3速インプットギヤ22Eは、入力軸10に空転自在に設けられている。
出力軸11の一端部には5速インプットギヤ11Fが設けられており、5速インプットギヤ11Fは、出力軸11の外周部に形成されたドグから構成される。
カウンタ軸23には、エンジン3側から順に、1速カウンタギヤ24A、リバースカウンタギヤ24B、2速カウンタギヤ24C、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eおよびカウンタドライブギヤ24Fが配置されている。
カウンタ軸23の1速カウンタギヤ24A、2速カウンタギヤ24C、3速カウンタギヤ24E、4速カウンタギヤ24Dは、入力軸10の1速インプットギヤ22A、2速インプットギヤ22C、3速インプットギヤ22Eおよび4速インプットギヤ22Dに常時噛み合っている。
1速カウンタギヤ24Aおよび2速カウンタギヤ24Cは、カウンタ軸23に空転自在に設けられている。リバースカウンタギヤは、カウンタ軸23に一体回転可能に固定されている。また、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eおよびカウンタドライブギヤ24Fは、カウンタ軸23に一体回転可能に固定されている。
カウンタドライブギヤ24Fは、カウンタドリブンギヤ25に噛み合っており、カウンタドリブンギヤ25は、出力軸11と一体回転するように出力軸11に取付けられている。カウンタドリブンギヤ25のエンジン3側には、カウンタドリブンギヤ25に隣接して、パーキングギヤ73が出力軸11に一体回転可能に取り付けられている。
入力軸10の下方、かつ、カウンタ軸23の側方には、図示しないリバースアイドラ軸が回転自在に設けられている。リバースアイドラ軸は、フロントケース4およびリヤケース5に端部をそれぞれ支持されており、入力軸10と平行に延びている。
図3に示すように、1速インプットギヤ22A、リバースインプットギヤ22B、2速インプットギヤ22C、4速インプットギヤ22D、3速インプットギヤ22Eは、入力軸変速歯車61を構成する。また、1速カウンタギヤ24A、リバースカウンタギヤ24B、2速カウンタギヤ24C、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eは、出力軸変速歯車62を構成する。
自動変速機2において、入力軸10、出力軸11、カウンタ軸23、入力軸変速歯車61、出力軸変速歯車62および5速インプットギヤ11Fは、平行軸歯車式変速機構60を構成している。平行軸歯車式変速機構60では、入力軸10と出力軸11との間の動力伝達経路が切り替えられることで、1速から5速の前進変速段または後進段の何れかが形成される。
図8に示すように、入力軸10の上方には、1速−2速シフト軸28A、3速−4速シフト軸28B、5速−リバースシフト軸28Cが、互いに平行にかつ入力軸10の軸線方向に移動自在に設けられている。
5速−リバースシフト軸28Cの他端側にはシフトフォーク30が接続されており、シフトフォーク30はスリーブ33の外周部の溝に係合している。スリーブ33は、入力軸10に一体回転自在、かつ入力軸10の軸線方向に移動自在に設けられている。スリーブ33はシフトフォーク30により入力軸10の軸線方向に移動する。
5速−リバースシフト軸28Cは、5速インプットギヤ11F側に移動することにより、スリーブ33を5速インプットギヤ11Fに噛み合わせる。スリーブ33が5速インプットギヤ11Fと噛み合うことで、入力軸10が出力軸11に直結した前進5速段が成立し、入力軸10の回転がカウンタ軸23を介さずに出力軸11に伝達される。
5速−リバースシフト軸28Cの一端側には図示しないシフトフォークが固定されており、シフトフォークは、リバースアイドラギヤ27に接続されている。
5速−リバースシフト軸28Cは、エンジン3側に移動することにより、シフトフォークおよびリバースアイドラギヤ27をエンジン3側に移動させ、リバースアイドラギヤ27をリバースインプットギヤ22Bとリバースカウンタギヤ24Bとに噛み合わせる。これにより、後進段が成立し、入力軸10の回転は、リバースアイドラギヤ27、カウンタ軸23および出力軸11に順次伝達される。このとき、カウンタ軸23および出力軸11は前進時と反対方向に回転する。
図3、図8に示すように、1速−2速シフト軸28Aは、図示しないシフトフォークおよびスリーブ29が連結されており、スリーブ29はカウンタ軸23の1速カウンタギヤ24Aと2速カウンタギヤ24Cの間に、リバースカウンタギヤ24Bと一体で設けられている。このスリーブ29はカウンタ軸23に一体回転自在かつ軸線方向に移動自在に設けられている。
1速−2速シフト軸28Aは、入力軸10の軸線方向一方側に移動することにより、スリーブ29を1速カウンタギヤ24Aに噛み合わせてカウンタ軸23を1速カウンタギヤ24Aと一体回転させる。これにより、前進1速段が成立し、入力軸10の回転がカウンタ軸23を介して出力軸11に伝達される。
1速−2速シフト軸28Aは、入力軸10の軸線方向他方側に移動することにより、スリーブ29を2速カウンタギヤ24Cに噛み合わせてカウンタ軸23を2速カウンタギヤ24Cと一体回転させる。これにより、前進2速段が成立し、入力軸10の回転がカウンタ軸23を介して出力軸11に伝達される。
また、3速−4速シフト軸28Bは、図示しないシフトフォークおよびスリーブ32が連結されており、スリーブ32は入力軸10の3速インプットギヤ22Eと2速インプットギヤ22Dの間に設けられている。このスリーブ32は入力軸10に一体回転自在かつ軸線方向に移動自在に設けられている。
3速−4速シフト軸28Bは、入力軸10の軸線方向一方側に移動することにより、スリーブ32を4速インプットギヤ22Dに噛み合わせて4速インプットギヤ22Dを入力軸10と一体回転させる。これにより、前進4速段が成立し、入力軸10の回転がカウンタ軸23を介して出力軸11に伝達される。
3速−4速シフト軸28Bは、入力軸10の軸線方向他方側に移動することにより、スリーブ32を3速インプットギヤ22Eに噛み合わせて3速インプットギヤ22Eを入力軸10と一体回転させる。これにより、前進3速段が成立し、入力軸10の回転がカウンタ軸23を介して出力軸11に伝達される。
1速−2速シフト軸28A、3速−4速シフト軸28Bおよび5−リバースシフト軸28Cには、シフトヨーク39A、39B、39Cがそれぞれ固定されている。
変速機ケース2Aの上部にはシフトアンドセレクト軸34が設けられている。シフトアンドセレクト軸34は、入力軸10の軸線と直交する軸線を有し、変速機ケース2Aに回転自在かつ、軸線方向に移動自在に設けられている。
シフトアンドセレクト軸34は、軸線方向に移動することにより、1速−2速シフト軸28Aに固定されたシフトヨーク39A、3速−4速シフト軸28Bに固定されたシフトヨーク39B、または5速−リバースシフト軸28Cに固定されたシフトヨーク39Cの何れかと接続される。
すなわち、シフトアンドセレクト軸34が軸線方向に移動すると、1速−2速シフト軸28A、3速−4速シフト軸28Bまたは5速−リバースシフト軸28Cの何れかが選択される。また、シフトアンドセレクト軸34は、軸線周りに回転することで、選択された1速−2速シフト軸28A、3速−4速シフト軸28Bまたは5速−リバースシフト軸28Cの何れかを軸線方向に移動させる。
図1、図2に示すように、変速機ケース2Aには、自動変速ユニット35が設けられており、自動変速ユニット35はシフトアンドセレクト軸34に接続されている。自動変速ユニット35は、リザーブタンク、図示しない油圧発生装置および制御装置等を備えており、リザーブタンクに貯留された作動油の油圧により、シフトアンドセレクト軸34を軸線方向に移動させるとともに軸線周りに回転させる。また、自動変速ユニット35は油圧により図示しないクラッチを接続または切断する。自動変速油ニットと35は、シフトアンドセレクト軸34およびクラッチをそれぞれ操作することにより変速段の変速を行う。
図3、図4、図5に示すように、出力軸11にはパーキングギヤ73が一体回転可能に取り付けられており、このパーキングギヤ73は、パーキングロック機構71のパーキングポール79が係合自在となっている。
図7に示すように、パーキングロック機構71は、運転席のシフトレバーの操作力により回転するマニュアルシャフト74と、このマニュアルシャフト74に固定されたマニュアルプレート75と、このマニュアルプレート75の揺動に連動して進動および退動するカム77と、このカム77の進動および退動により、出力軸11の回転を規制する位置と出力軸11の回転を許容する位置とに揺動するパーキングポール79とを有している。パーキングロック機構71は、出力軸11の回転を規制する。
図9、図11に示すように、変速機ケース2Aのリヤケース5の底部の内周面には、上方、すなわち内側に向かって突出するシャフト支持部90が形成されている。シャフト支持部90は入力軸10(図3参照)の軸線O1の方向に延びるように形成されている。シャフト支持部90のエンジン3側の端部は、シャフト支持用ボス部90aによりマニュアルシャフト74を回転自在に支持しており、シャフト支持部90のエンジン3と反対側の端部は、第2隔壁92に接続されている。
図7、図9に示すように、リヤケース5の外周壁93の左側下部には開口部94が形成されており、この開口部94の辺縁部の外面にはフランジ部95が形成されている。フランジ部95には、図6に示すようにカバー部材96が図示しないで固定されており、このカバー部材96は開口部94を閉塞している。カバー部材96はマニュアルシャフト74の軸線方向中央部を回転自在に支持している。したがって、マニュアルシャフト74は、リヤケース5のシャフト支持部90とカバー部材96とにより回転自在に支持された状態で、リヤケース5の左側面を貫通している。マニュアルシャフト74は、変速機ケース2Aの底面に沿って水平方向へ延びている。
図2に示すように、リヤケース5の外部において、マニュアルシャフト74にはレバー98が一体回転可能に固定されており、このレバー98には、パーキングケーブル99の一端部が接続されている。パーキングケーブル99の他端部は運転席のシフトレバーに接続されている。運転席のシフトレバーは、運転者に操作されることで、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジの何れかの位置に移動する。パーキングケーブル99の一端部は、シフトレバーが操作された位置に応じて、レバー98を介してマニュアルシャフト74を軸線周りに回転させる。
リヤケース5の外部において、マニュアルシャフト74にはポジションセンサ104が設けられており、このポジションセンサ104は、マニュアルシャフト74の回転位置を検出し、検出信号を図示しない制御ユニットに出力する。
図7、図8に示すように、リヤケース5の内部において、マニュアルシャフト74には平板状のマニュアルプレート75が一体回転可能に固定されている。マニュアルプレート75は、マニュアルシャフト74の軸線方向に直交する平板形状に形成されており、マニュアルシャフト74から上方に延びている。
図7に示すように、マニュアルプレート75の上端部にはパーキングロッド挿入孔75aが形成されており、このパーキングロッド挿入孔75aには、パーキングロッド76の短軸部76bが、マニュアルシャフト74と平行に挿入および抜け止めされている。短軸部76bには入力軸10と平行に延びる長軸部76aが連続しており、この長軸部76aは、マニュアルシャフト74の矢印R1方向への回転により矢印A1方向に進動し、マニュアルシャフト74の矢印R2方向への回転により矢印A2方向に退動する。
パーキングロッド76の長軸部76aの進動方向の先端部には、円錐台形状のカム77が長軸部76aに対して移動可能に装着されており、このカム77は、先端部に向かって縮径されている。長軸部76aの後端側には突起状のストッパ76cが形成されている。長軸部76aのカム77とストッパ76cとの間にはコイルスプリング78が装着されており、このコイルスプリング78は、カム77をパーキングロッド76の進動方向に弾性的に押し付けている。パーキングロッド76およびコイルスプリング78は本発明における伝達部材を構成する。
図5に示すように、パーキングギヤ73の下方にはパーキングポール79が設けられており、このパーキングポール79は、パーキングポール支持軸83により揺動可能に支持されている。パーキングポール79の揺動先端部のパーキングギヤ73に対向する側には爪部79aが形成されている。爪部79aは、パーキングポール79がパーキングギヤ73側に揺動すると、パーキングギヤ73の溝部73aに噛み合う。
図4に示すように、パーキングギヤ73の下方には円弧状のリテーナ82が設けられている。リテーナ82の第2隔壁92側には、図5に示すように、パーキングポール支持軸83、リターンスプリング支持軸84およびカムサポート支持軸85、86が第2隔壁92に対向して設けられている。
パーキングポール支持軸83はパーキングポール79を揺動可能に支持している。リターンスプリング支持軸84は、捩りばねからなるリターンスプリング87を支持している。カムサポート支持軸85、86はカムサポート部材81を支持している。
リターンスプリング87の一端部はパーキングポール79の上部に係り合って止められており、パーキングポール79を下方、すなわちパーキングギヤ73から離隔する方向に押し付けている。リターンスプリング87の他端部はカムサポート部材81に掛かり合って止められている。また、リテーナ82の第2隔壁92側には、ディテントスプリング88の基端部88bがボルト97で固定されている。ディテントスプリング88は、弾性体としての板ばねからなる。
リテーナ82は、パーキングポール79、リターンスプリング87、カムサポート部材81およびディテントスプリング88が組み付けられた状態で、ボルト97により第2隔壁92の下部および一側部に固定されている。したがって、第2隔壁92はリテーナ82を介してパーキングポール79を揺動可能に支持している。
カムサポート部材81は、パーキングロッド76の長軸部76aの先端およびカム77を下方から支持する。また、カムサポート部材81は、パーキングポール79がリターンスプリング87によりパーキングギヤ73から離隔する方向に押し付けられているときのパーキングポール79の位置を規定している。
図7に示すように、シフトレバーがPレンジに操作されると、マニュアルシャフト74およびマニュアルプレート75が矢印R1方向に回転し、パーキングロッド76が矢印A1方向に進動し、コイルスプリング78が圧縮される。このとき、コイルスプリング78の復元力は、カム77とパーキングポール79との摩擦力およびリターンスプリング87の復元力を上回る。このため、カム77は、カムサポート部材81とパーキングポール79の間に入り込み、カムサポート部材81に下方から支持されながらパーキングポール79をパーキングギヤ73側に押し上げる。
このとき、パーキングギヤ73の溝部73aがパーキングポール79の爪部79aに対向している場合、パーキングポール79の爪部79aが溝部73aに噛み合う。
一方、パーキングギヤ73の外周部73bがパーキングポール79の爪部79aに対向している場合、パーキングポール79はその爪部79aが外周部73bに圧接した状態で停止し、待機状態となる。待機状態から車両1の移動により出力軸11が僅かに回転したとき、パーキングポール79は、コイルスプリング78の復元力によりその爪部79aがパーキングギヤ73に噛み合う。
一方、シフトレバーがRレンジ、Nレンジ、Dレンジの何れかに操作されると、マニュアルシャフト74およびマニュアルプレート75が矢印R2方向に回転し、パーキングロッド76およびカム77が矢印A2方向に退動する。カム77が退動すると、パーキングポール79は、リターンスプリング87の復元により、カムサポート部材81に規定された位置に戻る。
パーキングロック機構71は、マニュアルシャフト74に固定されたディテントプレート80と、このディテントプレート80の外縁部80aに弾性的に係合してマニュアルシャフト74を回転方向に位置決めするディテントスプリング88とを有している。
リヤケース5の内部において、マニュアルシャフト74には平板状のディテントプレート80が一体回転可能に固定されている。ディテントプレート80は、マニュアルシャフト74の軸線方向に直交する平板形状に形成されており、マニュアルシャフト74から上方に延びている。
ディテントプレート80の外縁部80aには、エンジン3側からカム77側に向かって順に、4つの係合溝80p、80r、80n、80dが形成されている。ディテントプレート80の上方にはディテントスプリング88が配置されている。ディテントスプリング88は板ばねから構成されており、基端部がリテーナ82に固定されており、先端部88aをディテントプレート80の外縁部80aに押し付けている。このため、ディテントスプリング88の先端部88aは、4つの係合溝80p、80r、80n、80dの何れかに弾性的に係合する。
ディテントスプリング88は、先端部88aが係合溝80p、80r、80n、80dの何れかに弾性的に係合することで、シフトレバーが操作されていないときにマニュアルシャフト74が回転しないよう、マニュアルシャフト74の回転位置を保持している。
ディテントスプリング88は、先端部88aが係合溝80p、80r、80n、80dの何れかに弾性的に係合することで、シフトレバーが操作されるときの節度感を発生させている。
図11に示すように、第2隔壁92は、外周壁93に接続する部分において、開口部94の内周面の一部を構成している。図7から図11において、第2隔壁92のうち開口部94の内周面の一部を構成する部位には、マニュアルシャフト74側に膨出する肉厚部92aが形成されている。具体的には、第2隔壁92の肉厚部92aは、変速機ケース2Aの底部においてマニュアルシャフト74側に肉厚になっている。この肉厚部92aは、マニュアルシャフト74の軸線方向内側に延長されている。肉厚部92aには、伝達部材としてのパーキングロッド76およびコイルスプリング78が通る第1孔部92bが形成されている。第1孔部92bは本発明における伝達部材用孔部を構成する。
また、肉厚部92aには、ディテントスプリング88が通る第2孔部92cが形成されている。肉厚部92aは、変速機ケース2Aの鉛直方向においてマニュアルシャフト74の近傍から出力軸用孔部92dの外周部まで延びている。第2孔部92cは本発明におけるディテントスプリング用孔部を構成する。
図10、図11に示すように、第2隔壁92は、出力軸11が貫通する出力軸用孔部92dと、カウンタ軸23が貫通するカウンタ軸用孔部92eとを有する。また、第2隔壁92は、オイルが流通するオイル流通孔部92fを有する。
開口部94は、変速機ケース2Aの水平方向において出力軸用孔部92dに対してカウンタ軸用孔部92eの反対側に配置されている。また、開口部94は、変速機ケース2Aの鉛直方向において出力軸用孔部92dの側方から変速機ケース2Aの底部に亘って形成される。
次に、作用を説明する。上記構成の自動変速機2は、パーキングポール79がパーキングギヤ73に噛み合っているとき、パーキングポール79にはパーキングギヤ73の接線方向に荷重が作用し、パーキングポール79を支持する第2隔壁92にもパーキングギヤ73の接線方向に荷重が作用する。
本実施形態の自動変速機2によれば、第2隔壁92のうち開口部94の内周面の一部を構成する部位に、マニュアルシャフト74側に膨出する肉厚部92aを形成し、肉厚部92aをマニュアルシャフト74の軸線方向内側に延長し、肉厚部92aに、伝達部材としてのパーキングロッド76およびコイルスプリング78が通る第1孔部92bを形成した。
このように、第2隔壁92のうち開口部94の内周面の一部を構成する部位にマニュアルシャフト74側に膨出する肉厚部92aを形成したので、肉厚部92aの剛性を高くすることができる。このため、第2隔壁92の肉厚部92aがパーキングポール79からの荷重により変形することを抑制できるので、パーキングロック機構71の作動信頼性を向上させることができる。
また、変速機ケース2Aを鋳造により製造する際、第2隔壁92の肉厚部92aは、肉厚ではない部位より鋳造後の冷却速度が遅いので鋳巣等の鋳造欠陥が発生しやすいが、肉厚部92aに第1孔部92bを形成したことで、鋳造後に肉厚部92aが速やかに冷却されるので肉厚部92aに鋳巣が発生することを抑制できる。
したがって、パーキングロック機構71の作動信頼性を向上させ、かつ、変速機ケース2Aに鋳巣等の欠陥が発生することを抑制することができる。
また、本実施形態の自動変速機2は、マニュアルシャフト74に固定されるとともに外縁部80aに複数の係合溝80p、80r、80r、80dを有するディテントプレート80と、複数の係合溝80p、80r、80r、80dの何れかに先端部が係合するとともに第2隔壁92のパーキングポール79側に基端部が延びるディテントスプリング88と、を更に備える。これに加え、肉厚部92aに、ディテントスプリング88が通る第2孔部92cを形成した。
これにより、肉厚部92aは剛性が高いため、肉厚部92aに第2孔部92cを形成したことで、肉厚部92aにおける第2孔部92cの周辺の部位がパーキングポール79から作用する荷重により変形することを防止できる。
また、肉厚部92aに第2孔部92cを形成したことで、変速機ケース2Aの鋳造後に肉厚部92aがより速やかに冷却されるので、肉厚部92aに鋳巣等の鋳巣等の欠陥が発生するのを更に抑制できる。
また、本実施形態の自動変速機2によれば、出力軸11の斜め下方にカウンタ軸23が配置され、第2隔壁92は、出力軸11が貫通する出力軸用孔部92dと、カウンタ軸23が貫通するカウンタ軸用孔部92eとを有する。
また、開口部94は、変速機ケース2Aの水平方向において出力軸用孔部92dに対してカウンタ軸用孔部92eの反対側に配置され、かつ、変速機ケース2Aの鉛直方向において出力軸用孔部92dの側方から変速機ケース2Aの底部に亘って形成される。
さらに、マニュアルシャフト74は、変速機ケース2Aの底面に沿って水平方向へ延び、肉厚部92aを、変速機ケース2Aの鉛直方向においてマニュアルシャフト74の近傍から出力軸用孔部92dの外周部まで延ばした。
これにより、第2隔壁92に出力軸11が貫通する出力軸用孔部92dとカウンタ軸23が貫通するカウンタ軸用孔部92eとを形成したことで、第2隔壁92の剛性を確保し難い構造になっているにも関わらず、第2隔壁92を肉厚部92aで補強することができるので、第2隔壁92に第1孔部92bおよび第2孔部92cを形成できる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。