JP6459427B2 - ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法、及び、接合体、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、ヒートシンク - Google Patents
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Description
風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えたパワーモジュール用基板が、従来から広く用いられている。なお、パワージュール用基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属層を形成したものも提供されている。
そして、パワーモジュール用基板の金属層側には、ヒートシンクが接合されており、半導体素子からパワーモジュール用基板側に伝達された熱を、ヒートシンクを介して外部へ放散する構成とされている。
そこで、従来、例えば特許文献2に開示されているように、回路層及び金属層の表面に無電解めっき等によってNiめっき膜を形成した上で、半導体素子やヒートシンクをはんだ接合している。
また、特許文献3には、はんだ材の代替として、酸化銀粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化銀ペーストを用いて、回路層と半導体素子、金属層とヒートシンクを接合する技術が提案されている。
また、特許文献3に記載されたように、酸化銀ペーストを用いて回路層と半導体素子、金属層とヒートシンクを接合する場合には、Alと酸化銀ペーストの焼成体との接合性が悪いために、予め回路層表面及び金属層表面にAg下地層を形成する必要があった。
ここで、固相線温度の低いアルミニウム鋳物合金からなるアルミニウム合金部材と、銅又は銅合金からなる金属部材とを、特許文献5に記載されたように、固相拡散接合した場合には、接合界面近傍にカーケンダルボイドが多数発生することが確認された。このようなカーケンダルボイドがパワーモジュール用基板とヒートシンクとの間に存在すると、熱抵抗が上昇し、放熱特性が低下してしまうといった問題があった。
この場合、加熱工程において、ヒートシンクを構成するアルミニウム合金の固相線温度未満の温度で加熱した場合であっても、ヒートシンクとアルミニウム介在層との間に確実に液相を生じさせることができ、ヒートシンクとアルミニウム介在層を確実に接合することができる。
あるいは、ヒートシンク/アルミニウム介在層接合工程と、アルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程を、同時に実施してもよい。この場合、製造工程が少なくなり、製造コストの低減を図ることが可能となる。また、絶縁層への熱負荷を抑えることができる。
また、前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層の接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされているので、添加元素が十分に拡散することで接合時に液相が形成されており、前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とが確実に接合されている。なお、上述の添加元素拡散層においては、Zn、Mg及びGeのうちの2種類以上の添加元素を添加した場合にはそのうちの1つの添加元素の濃度が0.3質量%以上となっていればよい。
さらに、前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層の接合界面においては、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされているので、前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層との接合界面において、添加元素の濃化層(Zn濃化層、Mg濃化層及びGe濃化層)に起因して電食や再溶融が発生するおそれが少ない。
また、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層の接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされているので、添加元素が十分に拡散することで接合時に液相が形成されており、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とが確実に接合されている。なお、上述の添加元素拡散層においては、Zn、Mg及びGeのうちの2種類以上の添加元素を添加した場合にはそのうちの1つの添加元素の濃度が0.3質量%以上となっていればよい。
さらに、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層との接合界面においては、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされているので、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層との接合界面において、添加元素の濃化層(Zn濃化層、Mg濃化層及びGe濃化層)に起因して電食や再溶融が発生するおそれが少ない。
また、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層との接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされているので、添加元素が十分に拡散することで接合時に液相が形成されており、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層とが確実に接合されている。なお、上述の添加元素拡散層においては、Zn、Mg及びGeのうちの2種類以上の添加元素を添加した場合にはそのうちの1つの添加元素の濃度が0.3質量%以上となっていればよい。
さらに、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層との接合界面においては、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされているので、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層との接合界面において、添加元素の濃化層(Zn濃化層、Mg濃化層及びGe濃化層)に起因して電食や再溶融が発生するおそれが少ない。
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
図1に、本発明の第一実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板30を用いたパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30の一方の面(図1において上面)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、を備えている。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板30は、パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10に接合されたヒートシンク31と、を備えている。
Al層13Aは、図4に示すように、セラミックス基板11の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板23Aが接合されることにより形成されている。本実施形態においては、Al層13Aは、純度が99質量%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)の圧延板(アルミニウム板23A)がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。接合されるアルミニウム板23Aの厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
Cu層13Bは、Al層13Aの他方の面に、銅又は銅合金からなる銅板23Bが接合されることにより形成されている。本実施形態においては、Cu層13Bは、無酸素銅の圧延板(銅板23B)が接合されることで形成されている。なお、銅層13Bの厚さは0.1mm以上6mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、1mmに設定されている。
このアルミニウム介在層18は、純度が99質量%以上の2Nアルミニウム、純度が99.9質量%以上の3Nアルミニウム又は純度が99.99質量%以上の4Nアルミニウムからなるアルミニウムからなるアルミニウム板28が接合されることで構成されている。本実施形態では、アルミニウム介在層18を構成するアルミニウム板28として純度が99質量%以上の2Nアルミニウム板を用い、厚さは0.05mm以上0.6mm以下の範囲内に設定されている。より望ましくは、0.05mm以上0.3mm以下に設定される。
ここで、金属層13(Cu層13B)とアルミニウム介在層18は、固相拡散接合されている。また、アルミニウム介在層18とヒートシンク31は、Zn,Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素(本実施形態では、Zn)を用いた過渡液相接合法によって接合されている。
ここで、図2に示すように、アルミニウム介在層18とヒートシンク31の接合界面40においては、接合界面40から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではZn濃度)が低下するように濃度勾配を有しており、添加元素であるZnの濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層43の厚さt1が50μm以上とされている。また、添加元素であるZnの濃度が66質量%以上とされたZn濃化層45の厚さt2が20μm以下とされている。このZn濃化層45の厚さt2は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは0μmであるとよい。
また、ヒートシンク31とアルミニウム介在層18との接合界面40においては、それぞれの接合面に酸化物が観察される。本実施形態においては、この酸化物はアルミナ(Al2O3)等のアルミニウム酸化物等とされている。
この金属間化合物層は、アルミニウム介在層18のAl原子と、Cu層13BのCu原子とが相互拡散することによって形成されるものである。この金属間化合物層においては、アルミニウム介在層18からCu層13Bに向かうにしたがい、漸次Al原子の濃度が低くなり、かつCu原子の濃度が高くなる濃度勾配を有している。
金属間化合物層は、CuとAlからなる金属間化合物で構成されており、本実施形態では、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされている。ここで、金属間化合物層の厚さは、1μm以上80μm以下の範囲内、好ましくは、5μm以上80μm以下の範囲内に設定されている。
また、この金属間化合物層とCu層13Bとの接合界面には、酸化物が接合界面に沿って層状に分散している。なお、本実施形態においては、この酸化物は、アルミナ(Al2O3)等のアルミニウム酸化物とされている。なお、酸化物は、金属間化合物層とCu層13Bとの界面に分断された状態で分散しており、金属間化合物層とCu層13Bとが直接接触している領域も存在している。また、酸化物がθ相、η2相もしくは、ζ2相、δ相、及びγ2相のうち少なくとも一つの相の内部に層状に分散している場合もある。
まず、図4に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、回路層12となるアルミニウム板22を、Al−Si系のろう材箔26を介して積層する。
また、セラミックス基板11の他方の面に、Al層13Aとなるアルミニウム板23A、Al−Si系のろう材箔26を介して積層する。なお、本実施形態では、Al−Si系のろう材箔26として、厚さ10μmのAl−8質量%Si合金箔を用いた。
そして、積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱して、アルミニウム板22とセラミックス基板11を接合して回路層12を形成する。また、セラミックス基板11とアルミニウム板23Aを接合してAl層13Aを形成する。
ここで、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上643℃以下、保持時間は30分以上180分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
次に、Al層13Aの他方の面側に、Cu層13Bとなる銅板23Bを積層する。
ここで、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は400℃以上548℃以下、保持時間は5分以上240分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
なお、Al層13A、銅板23Bのうち固相拡散接合されるそれぞれの接合面は、予め当該面の傷が除去されて平滑にされている。
次に、金属層13(Cu層13B)と、アルミニウム介在層18となるアルミニウム板28とを積層し、積層方向に加圧(圧力3〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱して、金属層13(Cu層13B)とアルミニウム介在層18(アルミニウム板28)を固相拡散接合する。なお、金属層13(Cu層13B)、アルミニウム板28のうち固相拡散接合されるそれぞれの接合面は、予め当該面の傷が除去されて平滑にされている。
ここで、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は400℃以上548℃以下、保持時間は0.5時間以上4時間以下の範囲内に設定されることが好ましい。
次に、アルミニウム介在層18とヒートシンク31とを接合する。まず、アルミニウム介在層18とヒートシンク31との間に、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素(本実施形態ではZn)を配設する(添加元素配設工程S51)。本実施形態では、Zn箔29(厚さ10μm:7.1mg/cm2)をアルミニウム介在層18とヒートシンク31との間に配設している。なお、アルミニウム介在層18とヒートシンク31との間に配設される添加元素量は0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素であるZn量が2mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内とされている。
なお、2種以上の添加元素を配設する場合には、添加元素の合計量が0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内とされる。
次いで、回路層12の一方の面(表面)に、はんだ材を介して半導体素子3を積層し、還元炉内においてはんだ接合する。
上記のようにして、本実施形態であるパワーモジュール1が製造される。
そこで、本実施形態においては、アルミニウム介在層18とヒートシンク31との間に配設されるZn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素量を0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内に設定している。
さらに、アルミニウム介在層18とヒートシンク31の接合界面40において、添加元素であるZnの濃度が66質量%以上とされたZn濃化層45の厚さtが20μm以下とされているので、ヒートシンク31とアルミニウム介在層18との接合界面40において、Zn濃化層45に起因して電食や再溶融が発生するおそれが少ない。
さらに、本実施形態では、アルミニウム介在層18とヒートシンク31の接合界面40に酸化物が観察されている。これは、アルミニウム介在層18とヒートシンク31の接合界面40に余剰な液相が生じておらず、アルミニウム介在層18及びヒートシンク31の接合面に形成されていた酸化皮膜が残存したものと推測される。
次に、本発明の第二実施形態であるヒートシンクについて説明する。図6に、本発明の第二実施形態に係るヒートシンク101を示す。
このヒートシンク101は、ヒートシンク本体110と、ヒートシンク本体110の一方の面(図6において上側)に積層された銅、ニッケル又は銀からなる金属部材層117と、を備えている。本実施形態では、金属部材層117は、図9に示すように、無酸素銅の圧延板からなる金属板127を接合することによって構成されている。
このアルミニウム介在層118は、純度が99質量%以上の2Nアルミニウム、純度が99.9質量%以上の3Nアルミニウム又は純度が99.99質量%以上の4Nアルミニウムからなるアルミニウム板128が接合されることで構成されている。本実施形態では、アルミニウム介在層118を構成するアルミニウム板128として純度が99質量%以上の2Nアルミニウム板を用い、厚さは0.05mm以上0.6mm以下の範囲内に設定されている。より望ましくは、0.05mm以上0.3mm以下に設定される。
ここで、金属部材層117とアルミニウム介在層118は、固相拡散接合されている。また、アルミニウム介在層118とヒートシンク本体110は、Zn,Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素(本実施形態では、Ge)を用いた過渡液相接合法によって接合されている。
ここで、図7に示すように、アルミニウム介在層118及びヒートシンク本体110の接合界面140においては、接合界面140から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではGe濃度)が低下するように濃度勾配を有しており、添加元素であるGeの濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層143の厚さt1が50μm以上とされている。また、添加元素であるGeの濃度が37質量%以上とされたGe濃化層145の厚さt2が20μm以下とされている。このGe濃化層145の厚さt2は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは0μmであるとよい。
また、ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118との接合界面においては、それぞれの接合面に酸化物が観察される。本実施形態においては、この酸化物はアルミナ(Al2O3)等のアルミニウム酸化物等とされている。
この金属間化合物層は、アルミニウム介在層118のAl原子と、金属部材層117のCu原子とが相互拡散することによって形成されるものである。この金属間化合物層においては、アルミニウム介在層118から金属部材層117に向かうにしたがい、漸次Al原子の濃度が低くなり、かつCu原子の濃度が高くなる濃度勾配を有している。
金属間化合物層は、CuとAlからなる金属間化合物で構成されており、本実施形態では、複数の金属間化合物が接合界面に沿って積層した構造とされている。ここで、金属間化合物層の厚さは、1μm以上80μm以下の範囲内、好ましくは、5μm以上80μm以下の範囲内に設定されている。
また、この金属間化合物層と金属部材層117との接合界面には、酸化物が接合界面に沿って層状に分散している。なお、本実施形態においては、この酸化物は、アルミナ(Al2O3)等のアルミニウム酸化物とされている。なお、酸化物は、金属間化合物層と金属部材層117との界面に分断された状態で分散しており、金属間化合物層と金属部材層117とが直接接触している領域も存在している。また、酸化物がθ相、η2相もしくは、ζ2相、δ相、及びγ2相のうち少なくとも一つの相の内部に層状に分散している場合もある。
まず、ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118とを接合する。ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118との間に、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素(本実施形態ではGe)を配設する(添加元素配設工程S111)。本実施形態では、Ge箔129(厚さ20μm:10.6mg/cm2)をヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118との間に配設している。なお、ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118との間に配設される添加元素量は0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素であるGe量が4mg/cm2以上27mg/cm2以下の範囲内とされている。
次に、図9に示すように、アルミニウム介在層118と金属部材層117となる金属板127とを積層し、積層方向に加圧(圧力3〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱することにより、金属板127とアルミニウム介在層118とを固相拡散接合する。なお、金属板127、アルミニウム介在層118のうち固相拡散接合されるそれぞれの接合面は、予め当該面の傷が除去されて平滑にされている。
ここで、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は400℃以上548℃以下、保持時間は30分以上240分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
このようにして、本実施形態であるヒートシンク101が製造される。
そこで、本実施形態においては、アルミニウム介在層118とヒートシンク本体110との間に配設されるZn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素量を0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内に設定している。
さらに、ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118の接合界面140において、添加元素であるGeの濃度が37質量%以上とされたGe濃化層145の厚さt2が20μm以下とされているので、ヒートシンク本体110とアルミニウム介在層118との接合界面140において、Ge濃化層145に起因して電食や再溶融が発生するおそれが少ない。
さらに、本実施形態では、アルミニウム介在層118とヒートシンク本体110の接合界面140に酸化物が観察されている。これは、アルミニウム介在層118とヒートシンク本体110の接合界面140に余剰な液相が生じておらず、アルミニウム介在層118及びヒートシンク本体110の接合面に形成されていた酸化皮膜が残存したものと推測される。
例えば、上記実施の形態では、金属部材層として銅からなるCu層とが接合される場合について説明したが、Cu層に代えて、ニッケル又はニッケル合金からなるNi層、もしくは銀又は銀合金からなるAg層が接合されても良い。
また、第一実施形態において、Cu層(金属層)形成工程S03とアルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程S04とヒートシンク/アルミニウム介在層接合工程S05を同時に行うこともできる。
これらの場合、接合温度は450℃以上520℃以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、Zn、Mg及びGeのうちの2種類以上を添加元素として用いた場合には、それぞれの添加元素の濃化層の厚さがそれぞれ20μm以下となっていればよい。例えば、添加元素としてZnとGeを用いた場合には、Zn濃度が66質量%以上であるZn濃化層の厚さが20μm以下、かつ、Ge濃度が37質量%以上であるGe濃化層の厚さが20μm以下とされていればよい。
なお、Zn、Mg及びGeのうちの2種類以上を添加元素として用いた場合には、そのうちの1種の添加元素の濃度が0.3質量%以上となった領域が前述の添加元素拡散層となる。
同様に、第二実施形態においては、図7に示すように、添加元素(Ge)が、アルミニウム介在層側及びヒートシンク本体側に同等に拡散して添加元素拡散層143が形成されているように記載されているが、これに限定されることはなく、アルミニウム介在層側とヒートシンク本体側とで添加元素(Ge)が不均一に拡散して添加元素拡散層143が形成されていてもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
表1に示すアルミニウム合金板(50mm×50mm×厚さ5mm)及び金属板(40mm×40mm)を準備した。また、純度99質量%の4Nアルミニウムからなるアルミニウム介在層(40mm×40mm×厚さ0.1mm)を準備した。
なお、比較例1−3においては、金属板とアルミニウム合金板との間にアルミニウム介在層を介在させずに、金属板とアルミニウム合金板とを直接固相拡散接合した。
ヒータチップ(13mm×10mm×0.25mm)を金属板の表面に半田付けし、アルミニウム合金板を冷却器にろう付け接合した。次に、ヒータチップを100Wの電力で加熱し、熱電対を用いてヒータチップの温度を実測した。また、冷却器を流通する冷却媒体(エチレングリコール:水=9:1)の温度を実測した。そして、ヒータチップの温度と冷却媒体の温度差を電力で割った値を熱抵抗とした。なお、アルミニウム介在層を介在させずにアルミニウム合金板と銅板とを直接拡散接合した比較例1を基準として1とし、この比較例1との比率で熱抵抗を評価した。評価結果を表1に示す。
これに対して、金属板とアルミニウム合金板との間に純度99質量%以上の2Nアルミニウムからなるアルミニウム介在層を介在させた本発明例においては、比較例に比べて熱抵抗が小さくなっていることが確認される。アルミニウム介在層を介在させることにより、カーケンダルボイドの形成が抑制されたためと推測される。
表2に示すアルミニウム合金板(50mm×50mm×厚さ5mm)及び無酸素銅からなる金属板(40mm×40mm×厚さ3mm)を準備した。また、純度99質量%の2Nアルミニウムからなるアルミニウム介在層(40mm×40mm×厚さ0.2mm)を準備した。
このようにして製造された接合体において、添加元素拡散層、Zn濃化層、Mg濃化層及びGe濃化層の厚さ、冷熱サイクル後の接合率(アルミニウム合金板とアルミニウム介在層の界面)を、以下のようにして評価した。
接合体の断面を、電子線マイクロプローブアナライザ(日本電子株式会社製JXA−8530F型)を用い、加速電圧:15kV、電流量:50nA、測定間隔:1μm/点、積算回数:10回の条件で、積層方向にライン分析を行った。ライン分析の結果から、添加元素の濃度が0.3質量%以上である部分の長さを求めた。ライン分析は5ヶ所測定し、その平均の長さを添加元素拡散層の厚さとした。評価結果を表3に示す。
接合体の断面を、電子線マイクロプローブアナライザ(日本電子株式会社製JXA−8530F型)を用い、加速電圧:15kV、電流量:50nA、測定間隔:1μm/点、積算回数:10回の条件で、積層方向にライン分析を行った。ライン分析の結果から、添加元素の濃度が一定以上(Zn:66質量%以上、Ge:37質量%以上、Mg:24質量%以上)である部分の長さを求めた。ライン分析は5ヶ所測定し、その平均の長さをZn濃化層、Mg濃化層及びGe濃化層の厚さとした。評価結果を表3に示す。
上述の接合体を用いて、下記の条件で冷熱サイクルを3000回繰り返した。
評価装置:エスペック株式会社製TSB−51
液相:フロリナート
温度条件:−40℃×5分 ←→ 175℃×5分
接合率(%)={(初期接合面積)−(剥離面積)}/(初期接合面積)×100
また、添加元素の配設量が36mg/cm2を超える比較例12−14においては、添加元素であるZn濃化層、Mg濃化層又はGe濃化層の厚さが20μm超えとなり厚くなっていることが確認される。
11 セラミックス基板
13,213 金属層
13B Cu層(金属部材)
18 アルミニウム介在層
31 ヒートシンク(アルミニウム合金部材)
45 Zn濃化層
101 ヒートシンク
110 ヒートシンク本体(アルミニウム合金部材)
117 金属部材層
118 アルミニウム介在層
145 Ge濃化層
Claims (5)
- 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁層の他方の面に形成された金属層と、この金属層の前記絶縁層とは反対側の面に配置されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記金属層と前記ヒートシンクとの間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属層のうち前記アルミニウム介在層との接合面は、銅、ニッケル、又は銀で構成され、前記ヒートシンクのうち前記アルミニウム介在層との接合面は、固相線温度が前記金属層の前記接合面を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とを接合するヒートシンク/アルミニウム介在層接合工程と、前記アルミニウム介在層と前記金属層とを固相拡散接合するアルミニウム介在層/金属層固相拡散接合工程と、を備えており、
前記ヒートシンク/アルミニウム介在層接合工程は、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層との間に、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を0.5mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内で配設する添加元素配設工程と、配設した前記添加元素を介して前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層と積層して積層方向に加圧するとともに加熱し、配設した前記添加元素を前記ヒートシンク側及び前記アルミニウム介在層側に拡散させることにより、前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、前記溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持し、前記溶融金属領域中の前記添加元素をさらに前記ヒートシンク側及び前記アルミニウム介在層側に拡散させることにより、温度を一定に保持した状態で前記溶融金属領域の凝固を進行させる凝固工程と、を有することを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記添加元素配設工程では、前記添加元素がZnの場合には、配設するZn量を2mg/cm2以上36mg/cm2以下の範囲内、前記添加元素がMgの場合には、配設するMg量を0.5mg/cm2以上9mg/cm2以下、前記添加元素がGeの場合には、配設するGe量を4mg/cm2以上27mg/cm2以下の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 銅、ニッケル、又は銀からなる金属部材と、固相線温度が前記金属部材を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金からなるアルミニウム合金部材と、が接合されてなる接合体であって、
前記アルミニウム合金部材と前記金属部材との間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材とが固相拡散接合されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、
前記アルミニウム合金部材と前記アルミニウム介在層の接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされるとともに、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされていることを特徴とする接合体。 - 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁層の他方の面に形成された金属層と、この金属層の前記絶縁層とは反対側の面に配置されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であって、
前記金属層と前記ヒートシンクとの間には、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属層のうち前記アルミニウム介在層との接合面は、銅、ニッケル、又は銀で構成され、前記ヒートシンクのうち前記アルミニウム介在層との接合面は、固相線温度が前記金属層の前記接合面を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記アルミニウム介在層と前記金属層とが固相拡散接合されており、
前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、
前記ヒートシンクと前記アルミニウム介在層の接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされるとともに、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。 - ヒートシンク本体と、金属部材層と、を備えたヒートシンクであって、
前記ヒートシンク本体と前記金属部材層との間に、純度が99質量%以上のアルミニウムからなるアルミニウム介在層が配設されており、
前記金属部材層は、銅、ニッケル、又は銀からなり、前記ヒートシンク本体は、固相線温度が前記金属部材層を構成する金属元素とアルミニウムとの共晶温度未満とされたアルミニウム合金で構成されており、
前記アルミニウム介在層と前記金属部材層とが固相拡散接合されており、
前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層とは、Zn、Mg及びGeのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を拡散させることによって接合されており、前記ヒートシンク本体と前記アルミニウム介在層との接合界面においては、前記添加元素の濃度が0.3質量%以上の添加元素拡散層の厚さが50μm以上とされるとともに、前記添加元素がZnを含む場合には、Zn濃度が66質量%以上のZn濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がMgを含む場合には、Mg濃度が37質量%以上のMg濃化層の厚さが20μm以下とされ、前記添加元素がGeを含む場合には、Ge濃度が37質量%以上のGe濃化層の厚さが20μm以下とされていることを特徴とするヒートシンク。
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