JP6457866B2 - 太陽電池用のコーティング膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
当該技術は、透光部材と反射防止膜との屈折率の違いを利用し、太陽光が透光性部材で反射することを抑制し、より多くの太陽光を太陽電池の光電変換領域に入力させる技術である。
一般に、太陽電池の反射防止膜は、一般的に塗膜を形成する第1の工程と、当該塗膜中に空孔を形成させる第2の工程とによって製造されている。このように、塗膜を形成した後、塗膜中に空孔を形成することにより、反射防止膜の屈折率が低下し、透光部材の屈折率との違いが生じる。
また、特許文献5〜7には、多孔起因剤を塗膜から抽出することが不要な低屈折率の多孔体を成膜する方法として、鎖状のシリカ微粒子を含有する塗布液を用いて多孔体を成膜する方法が開示されている。
さらに、特許文献8、10には、鎖状のシリカゾル及び球状微粒子を含有する塗布液を用いて得られた、耐擦傷性に優れた反射防止膜が開示されている。
さらにまた、特許文献9には、機械的強度、透明性、耐候性、耐薬品性、光学特性、防汚性、防曇性、及び帯電防止性等に優れた水性高分子分散体を用いた塗膜が開示されている。
またさらに、特許文献11には、防汚性能に優れたコーティング組成物が開示されており、特許文献12には、反射防止膜の形状の1つとして表面粗さが、それぞれ開示されている。
さらに、特許文献13には、反射防止膜の形状の1つとして、表面粗さや水接触角、膜厚に関する開示がなされている。
また、特許文献5〜7に開示されている方法で得られる多孔体は、機械的強度に乏しく、特許文献8、10に開示されている反射防止膜は、十分な耐候性が得られず、特許文献9に開示されている塗膜は、十分な反射防止特性が得られず、特許文献11に開示されているコーティング組成物は、十分な反射防止特性が得られないという問題を有している。
さらに、特許文献12、13に開示されている反射防止膜は、太陽電池用の反射防止膜として用いた場合に、砂等が吹き付けられた際に砂が残ったり、表面が削られやすくなったり、表面に付着した鳥の糞等を洗浄でふき取ることで傷が入りやすくなったりし、これらの表面の傷により、光が後方散乱を生じ、透過する光の量が減少し、太陽電池の出力が悪化するおそれがある、という問題を有している。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
シリカを含み、
表面の十点平均粗さ(RzJIS)が、10nm以上27.8nm以下であり、
空孔を有し、当該空孔の空孔率が、45%以上47%以下であり、
25℃における水に対する静的接触角が25°未満である太陽電池用コーティング膜。
〔2〕
前記空孔の形状が、不定形状である、前記〔1〕に記載の太陽電池用コーティング膜。
〔3〕
前記コーティング膜の膜厚が50〜200nmである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の
太陽電池用コーティング膜。
〔4〕
前記コーティング膜の、JIS K 5600−7−7に基づくキセノンウェザーメー
ターによる耐候性試験1000時間後の25℃における水に対する静的接触角が40°未
満である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の太陽電池用コーティング膜。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートの両方を意味する。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸の両方を意味する。
本実施形態の太陽電池用コーティング膜(以下、単に「コーティング膜」という場合もある。)は、
シリカを含み、
表面の十点平均粗さ(RzJIS)が、7nm以上80nm以下であり、
空孔を有し、当該空孔の空孔率が、30%以上60%未満であり、
25℃における水に対する静的接触角が25°未満である。
前記透明部材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスや、ポリカーボネート、アクリル、PET等の合成樹脂が挙げられる。特に、ガラスが好ましい。
透明部材において、太陽光を受ける側の表面は、鏡面でもよいし、凹凸形状が形成されていてもよい。
本実施形態のコーティング膜は、シリカを含む。
本実施形態のコーティング膜は、当該コーティング膜の全量(100質量%)に対して、シリカを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。シリカを80質量%以上含むことで、光透過性が高くなる傾向にある。
また、コーティング膜には、シリカ以外のシロキサン、シラノール;エトキシ基、メトキシ基等を有するアルコキシシラン等の珪素化合物が含まれていてもよい。さらに、これら以外の成分としてアルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン等の酸化物及び化合物が含まれていてもよい。
シリカの含有量が上記のような範囲にあるコーティング膜を得るためには、原料としてシリカを含有する材料の配合量を適宜調整したコーティング組成物によりコーティング膜を形成することが有効であり、具体的には、シリカ微粒子(A)、重合体エマルジョン粒子(B)、及び加水分解性珪素化合物(C)を適宜用いて調製したコーティング組成物によりコーティング膜を形成することが好ましい。
コーティング組成物を構成する成分については、後述する。
膜厚が50nm以上であることにより、コーティング膜の強度が十分に保たれる傾向にあり、膜厚が200nm以下であることで、反射防止性能が均一なコーティング膜が得られる傾向にある。
膜厚が上記のような範囲にあるコーティング膜を得るためには、コーティング膜を形成するためのコーティング組成物の固形分の濃度を調整すればよく、固形分濃度は0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜7質量%であり、さらに好ましくは1〜6質量%である。
また、塗装機側の塗装速度を調整することでコーティング膜の膜厚を調整することも可能である。
コーティング膜の膜厚は、断面を電子顕微鏡で測定したり、光学エリプソメーターや反射分光膜厚計により薄膜の干渉による反射光を測定して、当該測定値を用いて計算により求めることが可能である。
本実施形態の太陽電池用コーティング膜は、表面(太陽電池用コーティング膜における太陽光が当たる面)の十点平均粗さ(RzJIS)が、7nm以上80nm以下であり、9nm以上70nm以下であることが好ましく、10nm以上60nm以下であることがより好ましい。
表面の十点平均粗さが7nm以上であることにより、少ない傷があったとしても外観として目立たない傾向にある。
表面の十点平均粗さが80nm以下であることにより、砂塵が当たったり、布でこすったりした場合においても、コーティング膜の凸部が削れず、表面に傷が入らない傾向にある。
表面の十点平均粗さは、JIS B 0601で定義されている十点平均粗さである。
具体的には、表面の十点平均粗さ(RzJIS)の測定には、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、一定範囲の表面を測定し、その領域での十点平均粗さ(RzJIS)を算出することにより求められる。
また、複数個所を測定し、その平均値を求めることで、より正確な十点平均粗さ(RzJIS)を求めることができる。
コーティング膜の表面の十点平均粗さ(RzJIS)は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
さらに、重合体エマルジョン粒子(B)の平均粒子径を10nm以上150nm以下にすることにより、表面の十点平均粗さ(RzJIS)を、7nm以上80nmの適切な範囲に制御することができる。
重合体エマルジョン粒子(B)の平均粒子径は10nm以上100nm以下とすることがより好ましく、10nm以上60nm以下とすることがさらに好ましい。
シリカ微粒子(A)の質量比率を1としたときの加水分解性珪素化合物(C)の質量比率が0.5以上であると、本実施形態のコーティング膜において、実用上十分な強度や信頼性が得られる。
加水分解性珪素化合物(C)の質量比率が20以下であると、コーティング膜の表面粗さを適切な範囲とすることができ、また、水の静的接触角を低減化でき、砂塵試験や擦過試験においても、高い透過率を維持でき、耐擦傷性が高いものとなる。
シリカ微粒子(A)の質量比率を1とした場合の加水分解性珪素化合物(C)の質量比率は0.6〜7であることがより好ましく、0.6〜5であることがさらに好ましい。
本実施形態のコーティング膜は、空孔を有している。
コーティング膜における空孔の形状は、球状、略球状、多面体状、針状、板状、繊維状、不定形状等のいずれでもよく、不定形状であることが、本実施形態のコーティング膜の膜厚が不均一の場合においても、面積当たりの透光性能がムラになり難いため、好ましい。
空孔の形状は、電子顕微鏡で直接観察された空孔の写真から求めることができる。特に、断面の電子顕微鏡写真(SEM写真)における空孔の断面図から求めることが好ましい。
また、上記のように、シリカ微粒子(A)、重合体エマルジョン粒子(B)、及び加水分解性珪素化合物(C)を用いてコーティング組成物を調製する場合、シリカ微粒子(A)の平均粒子径及び量、重合体エマルジョン粒子(B)の平均粒子径及び量、加水分解性珪素化合物(C)の量を調整し、後工程として高温で熱処理することによりシリカ微粒子(A)が部分溶融したり、エマルジョン微粒子(B)が分解したりすることにより空孔が生成される。
さらに、シリカ微粒子(A)と重合体エマルジョン粒子(B)、加水分解性珪素化合物(C)の3つの成分の比率を適切に制御することにより、空孔を形成でき、その形状を制御することができる。
空孔の形状は、後述の実施例に記載する方法により観察し、測定することができる。
空孔率が30%以上であることにより、本実施形態のコーティング膜において優れた反射防止性能が得られ、空孔率が60%未満であることにより、吹き付けられた砂塵等や、付着した汚れを布でふき取った場合においても、傷及びクラックの発生が抑制される。
具体的には、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率を1とすると、((A)+(C))の合計質量比率は、0.4〜8が好ましい。
((A)+(C))の合計質量比率が0.4以上であることにより、空孔率が高くなりすぎることを防止でき、実用上十分な強度が得られる。
((A)+(C))の合計質量比率が8以下であることにより、空孔率が低くなりすぎることを防止でき、実用上十分な透過率が得られる。
重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率を1とした場合の((A)+(C))の合計質量比率は、より好ましくは、0.5〜6であり、さらに好ましくは0.5〜5である。
なお、加水分解性珪素化合物(C)の質量とは、加水分解性珪素化合物(C)が加水分解、縮合した後のSiO2換算での質量であるものとする。
本実施形態のコーティング膜においては、屈折率を測定することにより、空孔率を求めることができる。
具体的には、空孔率は、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
なお、空孔は、その全部又は一部が、空気が充填されているため、その屈折率は1に極めて近い。
好ましくは20°未満であり、より好ましくは15°未満である。
水に対する静的接触角は低い方が好ましいが、実質的に測定機の測定可能範囲もあり、測定できる静的接触角としては、3°以上である。
25℃における水に対する静的接触角が25°未満であることにより、拭きつけられた砂塵等が付着することによる透過率の低下を大幅に抑制することができる。
25℃における水に対する静的接触角を25°未満とするための方法としては、本実施形態のコーティング膜に界面活性剤を塗布したり、コーティング膜に界面活性剤を分散させる方法があるが、恒久的に水に対する静的接触角が25°未満とするためには、上述した、コーティング組成物中のシリカ微粒子(A)と加水分解性珪素化合物(C)の質量比率((A):(C))を適切に制御する方法、例えば、シリカ微粒子(A)の質量比率を1とした場合、加水分解性珪素化合物(C)の質量比率を0.5〜20とする方法や、シリカ微粒子(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率((A):(B))を、シリカ微粒子(A)の質量比率を1としたとき、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率を0.1〜30とすることが好ましい方法として挙げられる。
コーティング膜の水の静的接触角を25°未満とするためには、上述したように、界面活性剤や親水性コーティング剤等を併用することが好ましい。
シリカ微粒子(A)の質量比率を1としたとき、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率を0.1以上とすることにより、十分な空孔率を確保でき、高い透過率が得られる。
シリカ微粒子(A)の質量比率を1としたときの重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率は、空孔率と水の静的接触角のバランスの観点から、より好ましくは0.6〜15であり、さらに好ましくは0.7〜10であり、さらにより好ましくは1.1〜5である。
また、空孔率と水の静的接触角のバランスを優れたものとするためには、シリカ微粒子(A)の種類や平均粒子径や量を調整することが有効であり、シリカ微粒子(A)を用いない場合、透過率を低下させない程度で、一般的な界面活性剤や、透明な親水性塗料を塗布すればよい。
界面活性剤や親水性塗料を塗布方法としては、例えば、布で拭く方法や、スプレーやバーコーター等の一般的なコーティング方法を用いることができる。
具体的には、JIS K 5600−7−7に基づくキセノンウェザーメーターによる耐候性試験において、1,000時間後のコーティング膜の25℃における水の静的接触角が40°未満であることが好ましい。
キセノンウェザーメーターによる耐候性試験における1,000時間は、一般的に屋外の3年相当に相当する。
前記水の静的接触角が40°未満であることにより、拭きつけられた砂塵の付着を抑制でき、透過率の低下を防止することができる。前記水の静的接触角は、より好ましくは30°以下であり、さらに好ましくは25°以下であり、さらにより好ましくは25°未満である。
このような水の静的接触角を得るためには、本実施形態のコーティング膜の形成材料としてシリカ微粒子(A)を用いることが好ましい。
耐候性試験は、具体的にはJIS K 5600−7−7に記載の方法1の放射照度で実施され、測定用サンプルは定期的にぬれを与えるため、18分間、サンプルのランプ側の面にスプレーで水を噴霧し、102分間の乾燥を実施する。乾燥時間後のブラックパネルは63±2℃で槽の中の温度をコントロールする。サンプルの取り付けに関してはランプ側の面に本実施形態のコーティング膜が向くようにサンプルを設置することが必要である。
本実施形態の太陽電池用コーティング膜は、シリカ系化合物、すなわち最終的に得られるコーティング組成物においてシリカが含有され得る化合物を含有するコーティング組成物を塗付する塗布工程と、コーティング組成物を500℃以上の温度で焼結する焼結工程とにより製造することができる。
また、本実施形態のコーティング膜は、好ましくはシリカ微粒子(A)と、重合体エマルジョン粒子(B)と、を含むコーティング組成物を塗布する塗布工程と、コーティング組成物を500℃以上の温度で焼結する焼結工程とにより製造することができる。
また、前記コーティング組成物には、加水分解性珪素化合物(C)をさらに含むことがより好ましい。
本実施形態のコーティング組成物は、シリカ微粒子(A)と、重合体エマルジョン粒子(B)とを配合して混合物を得る工程により、調製することが好ましい。
また、加水分解触媒、縮合触媒としての酸を添加する場合には、配合安定性の観点から、シリカ微粒子(A)及び重合体エマルジョン粒子(B)を配合して混合物を得た後に、該混合物に酸を添加することが好ましい。
また、シリカ微粒子(A)に対して、シリカ微粒子(A)の等電点まで酸を添加して凝集させた後に、塩基で中和して安定化し、その後に重合体エマルジョン粒子(B)を加えて混合物を得てもよい。
上記酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類;酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類;硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類;酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類が挙げられる。
コーティング組成物が固形分を15質量%以下含むことで、乾燥後のコーティング膜の膜厚を所望の膜厚に制御することが容易となる傾向にあり、固形分を0.1質量%以上含むことで、所望の乾燥膜厚を得るためにコーティング組成物を厚く塗装する必要がないため、膜厚の制御が容易になる傾向にある。
コーティング組成物の粘度をこのような範囲に制御するためには、シリカ微粒子(A)の量、重合体エマルジョン粒子(B)の量を調整したり、用いる溶媒の種類を調整したり、公知の増粘剤や表面張力調整剤を用いて調整することが有効である。
コーティング組成物の粘度は、公知の粘度計を用いることにより測定する。
また、後述する焼結工程により、コーティング組成物は、重合体エマルジョン粒子(B)成分が除去されて空孔が形成される。また、シリカ微粒子(A)の粒子間の空隙としても空孔が形成される。これにより、コーティング組成物から、空孔、特に、不定形状の空孔を有するコーティング膜が得られる。
コーティング組成物は、シリカ微粒子(A)を含むことが好ましい。
また、コーティング組成物は、シリカ微粒子(A)以外に、ホウ素、リン、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン等からなるその他の微粒子が含まれていてもよく、その他の金属酸化物が含まれていてもよい。
その他の金属酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデンの酸化物が挙げられる。
ここで、球状のシリカ微粒子(a1)とは、アスペクト比(短径に対する長径の比)が3未満の粒子状態で存在しているシリカ微粒子をいう。
なお、アスペクト比は、一次粒子そのもので存在しているものについては、一次粒子のアスペクト比を、また、凝集粒子として存在しているものについては、凝集粒子のアスペクト比を指す。
ここで、球状のシリカ微粒子(a1)は一次粒子であっても、凝集粒子であってもよい。
シリカ微粒子(a1)が凝集粒子である場合には、その形状は完全な球である必要はなく、例えば、角部を有していてもよい。
また、球状のシリカ微粒子(a1)及び非球状のシリカ微粒子(a2)のアスペクト比は、透過型顕微鏡(TEM)で撮影されたシリカ微粒子の短径と長径とを測定し、当該測定値から短径に対する長径の比を算出することにより求めることができる。
なお、短径及び長径とは、各々順に、シリカ微粒子粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺及び長辺である。
平均粒子径がこのような範囲にあるシリカ微粒子(a1)を得るためには、例えば、シリカ微粒子を製造した後、ふるいで分級することが好ましい方法として挙げられる。
ここで、球状のシリカ微粒子(a1)の平均粒子径とは、当該粒子が一次粒子の形で存在している場合には一次粒子径を、凝集粒子の形で存在している場合は凝集粒子径(二次粒子径)を指し、以下の方法により求めることができる。
すなわち、球状のシリカ微粒子(a1)の粒子が100個以上200個以下を写るように調整して撮影した透過型顕微鏡(TEM)写真の中に存在している、シリカ微粒子(a1)の粒子径(二軸平均径、すなわち、短径と長径との平均値)を測定し、これらの各粒子径の平均値を求めることにより決定することができる。
具体的に球状のシリカ微粒子(a1)の平均粒子径は、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
非球状のシリカ微粒子(a2)は、アスペクト比(長径/短径)が3以上25以下であり、3以上15以下であることが好ましく、3以上10以下であることがより好ましい。
また、非球状のシリカ微粒子(a2)の長径の平均(平均長径)は、20nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上150nm以下であることがより好ましく、40nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。
非球状のシリカ微粒子(a2)のアスペクト比が3以上であり、平均長径が20nm以上であることにより、好適な空孔率及び屈折率が得られる傾向にある。
また、非球状のシリカ微粒子(a2)のアスペクト比が25以下であり、平均長径は250nm以下であることで、透明性及び反射防止性能に優れる傾向にある。
アスペクト比及び平均長径がこのような範囲にあるシリカ微粒子(a2)を得るためには、シリカ微粒子を公知のゾルゲル法で製造することが好ましい。
具体的に、非球状のシリカ微粒子(a2)の平均粒子径は、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
また、非球状のシリカ微粒子(a2)の平均長径は、非球状のシリカ微粒子(a2)の粒子が100個以上200個以下写るように調整して撮影した透過型顕微鏡(TEM)写真の中に存在している、非球状のシリカ微粒子(a2)の長径を測定し、当該測定された各長径の平均を算出することにより求めることができる。
この非球状のシリカ微粒子(a2)は、三次元的に湾曲した形状を有していてもよい。
コーティング組成物は、重合体エマルジョン粒子(B)を含む。
重合体エマルジョン粒子(B)を構成する重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリ(メタ)アクリレート−シリコーン系共重合体、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物から構成される重合体が挙げられる。
また、重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下で、加水分解性珪素化合物と、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物とを重合して得られるものであることがより好ましい。
重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径は3nm以上200nm以下であることが好ましい。
重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径が200nm以下であると、重合体エマルジョン微粒子(B)の変形を抑制でき、コーティング膜の表面粗さが荒くなりすぎることを防止でき、コーティング膜の機械強度が低下を抑制できる。
数平均粒子径が3nm以上であると、十分な空孔が得られ、高い透過率が得られる。
重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径は10nm以上150nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上60nm以下であることがさらにより好ましい。
また、重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径は、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
シリカ微粒子(A)と重合体エマルジョン粒子(B)との相互作用としては、例えば、水素結合、及び化学結合が挙げられる。
より具体的には、シリカ微粒子(A)が有する水酸基と、重合体エマルジョン粒子(B)が有する2級及び/又は3級アミド基との水素結合、及びシリカ微粒子(A)が有する水酸基と、重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物の重合生成物との縮合(化学結合)が挙げられる。
重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物としては加水分解性珪素化合物が好ましく、例えば、下記式(1)で表される化合物及びその縮合生成物、並びにシランカップリング剤が挙げられる。
SiWxRy ・・・(1)
(前記式(1)中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は一部もしくはすべてが置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
また、上記シランカップリング剤としての加水分解性珪素化合物の中で、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、上述した2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物(b2)と共重合又は連鎖移動反応して化学結合を生成することができ、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等がさらに優れる塗膜を形成できるため、好ましい。また、ビニル重合性基を有するシランカップリング剤が、コーティング膜の耐候性の観点からより好ましい。
シランカップリング剤としての加水分解性珪素化合物は、上述した各種化合物の他、ビニル重合性基又はチオール基を有するシランカップリング剤を、単独で又は上述した珪素アルコキシド、その他のシランカップリング剤、及びそれらの縮合生成物と混合又は複合化させたものも用いることができる。
重合体エマルジョン粒子(B)を得るための加水分解性珪素化合物の配合量は、得られる重合体エマルジョン粒子(B)の質量を1としたときの質量比として、0.005以上0.5以下の範囲となることが好ましい。
加水分解性珪素化合物に由来する成分の質量割合は、重合安定性の観点から、重合体エマルジョン粒子(B)全量(100質量%)に対して、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
なお、重合体エマルジョン粒子(B)の質量は、2級アミド基及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物と、後述するこれに共重合可能なその他のビニル化合物と、上述した加水分解性珪素化合物とが全て重合して得られる重合生成物の質量であるものとする。
ビニル化合物(b2)が有するアミド基は、2級アミド基及び/又は3級アミド基であるが、3級アミド基を有するビニル化合物であると、得られる重合体エマルジョン粒子(B)中のシリカ微粒子との間の水素結合性が強まる傾向にあるため、好ましい。
その3級アミドを有するビニル化合物(b2)の中でも、N,N−ジエチルアクリルアミドは、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れるとともに、加水分解性珪素化合物の重合生成物の水酸基及びシリカ微粒子の水酸基と強固な水素結合を形成することが可能となる傾向にあるため、より好ましい。
なお、加水分解性珪素化合物及び2級アミド基及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物(b2)は、水素結合及び化学結合等の各種結合によって複合化されていることが好ましいが、その結合の形態及び状態について、何らかの限定を行うものではない。さらに、重合体エマルジョン粒子(B)中の一部分のみにおいて、上記したような複合化が行われていてもよい。
これにより、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性珪素化合物の重合生成物との相溶性等)をより効果的に制御することが可能となる傾向にあり、好ましい。
水酸基含有ビニル化合物を用いると、シリカ微粒子(A)とその他のビニル化合物との水素結合力を制御することが容易となるとともに、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させることが可能となる傾向にあるため、好ましい。
アルキル部の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。
エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールが挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
これらのカルボキシル酸基含有のビニル化合物を用いることによって、重合体エマルジョン粒子(B)にカルボキシル基を導入することに起因して、当該重合体エマルジョン粒子(B)間に静電的反発力をもたせることができ、エマルジョンとしての安定性を向上させられる傾向にある。
このことにより、重合体エマルジョン粒子(B)は、例えば、攪拌時の凝集といった、外部からの分散破壊作用に対して抵抗力を有することが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、静電的反発力をさらに向上させるために、一部又は全部を、アンモニア及びトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類;NaOH、KOH等の塩基で中和してもよい。
カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量(複数のカルボキシル基含有ビニル化合物を使用する場合には、その合計量)は、耐水性の観点から、重合体エマルジョン粒子(B)を構成する全ビニル化合物全量に対して、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
水酸基含有ビニル化合物の配合量は、重合体エマルジョン粒子(B)を構成する全ビニル化合物全量100質量%に対して、0質量%以上80質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ基含有ビニル化合物、及びカルボニル基含有ビニル化合物の配合量は、重合体エマルジョン粒子(B)を構成する全ビニル化合物全量100質量%に対して、0質量%以上50質量%以下が好ましい。
乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤が挙げられる。
これらの乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤は、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性がより一層良好になるとともに、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れたコーティング膜を形成することができる傾向にあるため、好ましい。
スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル化合物の塩としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、且つスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群から選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が挙げられる。
反応性乳化剤としての、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物としては、アクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)が挙げられる。
これらの中で、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する観点から、酸性乳化剤類が好ましく、炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸がより好ましい。
このような重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が挙げられる。
より具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。
重合速度の促進、又は70℃以下での低温の重合をより望むときには、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いることが好ましい。
なお、これらの圧力と反応温度は適宜変更してもよい。
乳化重合するにあたり、重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径を成長又は制御するために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法で重合してもよい。これにより数平均粒子径がより均一な重合体エマルジョン粒子(B)を得ることができる傾向にある。当該シード(核)となる物質は、反応条件等に応じて適宜選択することができる。
さらには、コア層の柔軟性とシェル層の柔軟性が異なることが好ましく、シェル層の柔軟性がコア層の柔軟性よりも高いことがより好ましい。
シェル層の柔軟性がコア層の柔軟性より高いことにより、所望の太陽電池用コーティング膜を効率よく製造できる傾向にある。
コア層とシェル層の柔軟性を制御するためには、加水分解性珪素化合物として、加水分解性官能基を3個以上含む加水分解性珪素化合物が含まれている加水分解性珪素化合物を用い、加水分解性珪素化合物に由来する成分の質量割合を制御すればよい。当該質量割合とは、ビニル化合物に由来する成分と全加水分解性珪素化合物に由来する成分の合計量に対する質量割合である。
また、当該加水分解性珪素化合物は、加水分解性官能基を3個以上含む加水分解性珪素化合物を含むことが好ましい。
シェル層とは、最も外側の層を示し、シェル層以外の層がコア層である。
焼結によって、重合体エマルジョン粒子(B)の全て又は一部を除去され、コーティング膜に空孔が形成される。
その際に、重合体エマルジョン粒子(B)の周囲のシリカ微粒子の層の縮合が急激に進み、塗膜全体が収縮する。ここで、重合体エマルジョン粒子(B)の柔軟性の異なるコア層とシェル層が存在することで、塗膜の収縮が緩和され、空孔の崩壊を抑制しながらコーティング膜を形成すると推察される。その結果、空孔を保持しながら、当該空孔の周囲に密な空孔が効率的に形成され、不定形状の空孔が形成され、高い反射防止性能と強度とを発現する傾向にある。
なお、「周囲」とは、空孔の表面に直接接触しているか、あるいは、化学的に相互作用できる程度の距離で存在することを意味する。また、重合体エマルジョン粒子(B)がコーティング膜の収縮を緩和することにより、空孔が押しつぶされて基材と接触してしまうことを抑制するため、コーティング膜を形成する基材界面とコーティング膜中の空孔が直接接することが抑制される。
本実施形態のコーティング組成物は、重合体エマルジョン粒子(B)の重合に用いられる加水分解性珪素化合物とは区別して、加水分解性珪素化合物(C)をさらに含むことが好ましい。
加水分解性珪素化合物(C)を含むことにより、空孔に加水分解性珪素化合物(C)を浸透させることができ、これにより、空孔率を制御することができる。
加水分解性珪素化合物(C)を含む場合は、加水分解性珪素化合物(C)が有するシラノール基とシリカ微粒子(A)の表面に存在する水酸基との間の縮合反応により結合を形成したり、又は加水分解性珪素化合物(C)とシリカ微粒子(A)との間に水素結合を形成したりする。これらにより、上記コーティング組成物から得られる本実施形態のコーティング膜は、機械的強度がより増加する傾向にある。
なお、上述した重合体エマルジョン粒子(B)の重合に用いられる加水分解性珪素化合物は、重合体エマルジョン粒子(B)に一体として組み込まれている。よって、重合体エマルジョン粒子(B)と別個独立して添加される加水分解性珪素化合物(C)とは、重合体エマルジョン粒子(B)の重合に用いられる加水分解性珪素化合物とは明確に区別される。
(式(4)中、R1は水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、及びエポキシ基からなる群より選ばれるいずれかを有してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。Xは、加水分解性基を表し、nは0〜3の整数である。)
X3Si−R2 n−SiX3 ・・・(5)
(式(5)中、X3は加水分解性基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を表す。nは0又は1である。)
R3−(O−Si(OR3)2)n−OR3 ・・・(6)
(式(6)中、R3は炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは2〜8の整数である。)
また、本実施形態のコーティング膜においては、加水分解縮合物(C’)が、重合体エマルジョン粒子(B)がコーティング膜中で焼結されて生成する重合体粒子(B’)(以下、単に「重合体粒子(B’)」という。)の表面に結合し、非球状のシリカ微粒子(A)が重合体粒子(B’)の表面に直接又は球状のシリカ微粒子を介して結合し、空孔を形成される構造体を有していることが好ましい。
さらには、非球状のシリカ微粒子(A)が重合体粒子(B’)の表面に直接又は球状のシリカ微粒子を介して結合している構造体は、加水分解縮合物(C’)に被覆され、重合体粒子(B’)に固定化されたコーティング組成物を介して空孔が形成されていることがより好ましい。このような構造を有するコーティング膜は、反射防止膜として、優れた機械的強度及び耐候性を発揮する傾向にある。
塗布工程は、シリカ微粒子(A)、重合体エマルジョン粒子(B)、必要に応じて加水分解性珪素化合物(C)を含むコーティング組成物を塗布することが好ましい。
つまりは、上述のようにして調製したコーティング組成物を、目的とする所定の材料(以下、「基材」という。)上に塗布する。
コーティング組成物を基材に塗布する方法として、具体的には、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。生産性の観点からは、ロールコート、スクリーン印刷、グラビア印刷が好ましい。また、大判の基材上へ塗装する目的では、ロールコート法が好ましい。
本実施形態のコーティング膜の製造方法においては、前記塗布工程後、必要に応じてコーティング組成物を乾燥させる乾燥工程を実施してもよい。
具体的には、上記のようにコーティング組成物を基材上に塗布した後、乾燥させ、コーティング組成物に含まれ得る溶剤を脱揮する。
乾燥方法として、具体的には、自然乾燥、冷風乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。これらは1種のみを単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせ行ってもよい。
乾燥温度としては、5℃以上700℃以下が好ましく、10℃以上300℃以下がより好ましく、20℃以上200℃以下がさらに好ましく、25℃以上80℃以下がさらにより好ましい。
焼結工程においては、塗付したコーティング組成物を500℃以上の温度で焼結する。この焼結工程により、コーティング組成物に空孔形成がなされる。
焼結する温度は、500℃以上800℃以下が好ましく、600℃以上700℃以下がより好ましい。さらに、高圧水銀灯等の紫外線照射等の処理を同時又は直列に行うことで焼結してもよい。
本実施形態の太陽電池用コーティング膜は、透明性、反射防止特性、耐久性に優れているため、高い出力を有し、長期に亘り高い出力を維持する太陽電池の反射防止膜として好適に用いることができる。
後述する合成例、実施例及び比較例における、各種の物性の測定及び評価は、下記の方法で行った。
((物性1)シリカ微粒子(A)の数平均粒子径(nm))
後述する合成例により製造したシリカ微粒子(A)の数平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、商品名マイクロトラックUPA)により測定した。
((物性2)重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径(nm))
後述する合成例により製造した重合体エマルジョン粒子(B)の数平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、商品名マイクロトラックUPA)により測定した。
後述する実施例及び比較例で製造した試験板のコーティング膜に対して、反射分光膜厚計(大塚電子製 型式:FE−3000)を用い、230〜800nmの波長ごとの反射率を測定し、ガラス基材の裏側を用いてガラス基材の屈折率を測定した。
次に、コーティング膜側の230〜800nmの波長ごとのガラス基材とコーティング膜による干渉している反射光の強度を測定し、最小二乗法により測定値のフィッティングを行い、コーティング膜の屈折率及び膜厚(nm)を求めた。
さらに空気の屈折率を1、シリカの屈折率を1.46とし、下記式(7)より空孔率を求めた。
(空孔率)=(1.46−(コーティング膜の屈折率))/0.46×100 ・・・(7)
後述する実施例及び比較例で製造した試験板について、コーティング膜の十点表面粗さ(RzJIS)を、2μm×2μmの視野で、原子間力顕微鏡(AFM)で行った。
AFMはBrukr社製のDimension Iconを使用した。
観察モードはTappingモードとした。
カンチレバーは長さ125μmのSi製矩形型カンチレバーを使用した。
カンチレバーはNano World社からAR−10Tとして市販されているものであり、ばね定数は42N/m程度である。
使用するカンチレバーは新品で探針先端の汚染および摩耗がないものとした。
測定場所を変え、3回測定し、その平均値を算出した。
スガ試験機製キセノンウエザーメーター(X75)を用いて耐候性試験を実施した。
試験は1,000時間実施することとし、試験後、350℃で1時間乾燥させ、その後、25℃、50%RHの恒温恒湿室で1日放置した。
後述する実施例及び比較例で製造した試験板、及び前記(物性5)で実施した耐候性試験後の各試験板について、25℃の恒温室にて、協和界面科学製接触角計DM−500を用いて、25℃での水の静的接触角を測定した。
滴定液は蒸留水を用い、滴下量は1μLで滴下し、滴下後1分以内に画像を処理し、水の静的接触角を測定した。
((評価1)透過率(%))
後述する実施例及び比較例で製造した試験板について、AOPTEK製分光透過率計ST−100を用いて380〜1100nmの全光線透過率を測定した。
コーティング膜のない試験板(ガラス)の透過率91.7%に対し、1.5%以上透過率が高ければ、太陽電池の出力に貢献できる太陽電池用コーティング膜として判断した。
後述する実施例及び比較例で製造した試験板について、加速環境試験器(エスペック(株)製、EHS−411)を用い、25℃から温度135℃まで昇温させる温度環境とし、湿度85%の環境下で、20時間時間放置後、−40℃まで冷却し、0.5時間放置し、また25℃に降温させるサイクルを10サイクル繰り返す結露凍結試験を行った。
昇温及び降温速度は10℃/secで実施した。
HF試験後の試験板の全光線透過率を上記(評価1)に記載した方法に従い測定した。この時に全光線透過率の低下が1%未満であれば耐HF試験性が良好であると判断した。
後述する実施例及び比較例で製造した試験板について、MIL−STD−810 method510.3に準じて砂塵試験を行った。
砂塵の流れる川上に、試験板上のコーティング膜が来るように設置し、試験を行った。
30cm×30cmの面積を有し、ループするダクト内に試験板の下面中央を合わせて設置した。
粒子径が150μm以上850μm以下のものが95%以上であるシリカ粒子の砂を用い、ダクト内にブロアーと、ダクト内が湿度30%RHとなるように調湿機とを設置し、ブロアーで18m/sの風を起こし、ダクト内の砂塵濃度を0.18〜0.2g/m3とし、90分間砂塵を試験板に当て続けた。
その後、試験板を取り出し、5m/sのエアーブローをかけてから、全光線透過率を上記(評価1)に記載した方法に従い測定した。
この時に全光線透過率の低下が1%未満であれば耐砂塵試験性が良好であると判断した。
後述する実施例及び比較例で製造した試験板について、布(綿ブレード#40 4枚重ね)を試験板のコーティング膜の上において、布に1kg/cm2の荷重をかけてストローク7cmで100回擦過を行い、擦過した箇所について全光線透過率を上記(評価1)に記載した方法に従い測定した。
この時に全光線透過率の低下が1%未満であれば、耐擦過試験性が良好であると判断した。
以下、後述する実施例及び比較例において用いた重合体エマルジョン粒子(B)の合成例を記載する。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸7gを投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層の原料としてジメチルジメトキシシラン185g及びフェニルトリメトキシシラン(b1−3)117gを混合して得られた混合液(2)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。
次に、得られた混合液(3)に、シェル層の原料としてアクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン(b1−3)30g、フェニルトリメトキシシラン(b1−3)145g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)1.3gを混合して得られた混合液(4)と、ジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gを混合して得られた混合液(5)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(6)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(6)を約2時間撹拌した。その後、混合物(6)を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径87nmの重合体エマルジョン粒子(B−1)の水分散体(固形分10質量%、pH3.2)を得た。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸22gを投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層の原料としてジメチルジメトキシシラン185g及びフェニルトリメトキシシラン(b1−3)151gを混合して得られた混合液(2)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。次に、得られた混合液(3)に、シェル層の原料としてアクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン(b1−3)30g、フェニルトリメトキシシラン(b1−3)145g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)1.3gを混合して得られた混合液(4)と、ジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gを混合して得られた混合液(5)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(6)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(6)を約2時間撹拌した。その後、混合物(6)を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し、製水で濃度を調整して数平均粒子径30nmの重合体エマルジョン粒子(B−2)の水分散体(固形分10質量%、pH3.2)を得た。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸15gを投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層の原料としてジメチルジメトキシシラン185g及びフェニルトリメトキシシラン(b1−3)117gを混合して得られた混合液(2)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。
次に、得られた混合液(3)に、シェル層の原料としてアクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン(b1−3)30g、フェニルトリメトキシシラン(b1−3)105g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)1.3gを混合して得られた混合液(4)と、ジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gを混合して得られた混合液(5)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(6)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(6)を約2時間撹拌した。その後、混合物(6)を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径46nmの重合体エマルジョン粒子(B−3)の水分散体(固形分10質量%、pH3.2)を得た。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層の原料としてジメチルジメトキシシラン185g及びフェニルトリメトキシシラン(b1−3)72gを混合して得られた混合液(2)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。次に、得られた混合液(3)に、シェル層の原料としてアクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン(b1−3)30g、フェニルトリメトキシシラン(b1−3)92g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)1.3gを混合して得られた混合液(4)と、ジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gを混合して得られた混合液(5)を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(6)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(6)を約2時間撹拌した。その後、混合物(6)を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径140nmの重合体エマルジョン粒子(B−4)の水分散体(固形分10質量%、pH3.2)を得た。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水2600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸5g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの25%水溶液(エマルゲン950、花王(株)製)10部を投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層の原料としてメタクリル酸18g、メタクリル酸メチル216g、アクリル酸ブチル216g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40gを混合して得られた混合液(2)を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。
次に、得られた混合液(3)に、シェル層の原料としてアクリル酸ブチル245g、メタクリル酸メチル245g、アクリル酸10g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)6.9g、メチルトリメトキシシラン(b1−3)101g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gを混合して得られた混合液(4)とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(5)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(5)を約2時間撹拌した。その後、0.1Nのアンモニア水を徐々に加え、混合物のpHが8になるまで撹拌した。混合物(5)を100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径250nmの重合体エマルジョン粒子(B−5)の水分散体(固形分10質量%)を得た。
重合体エマルジョン粒子(B)として前記(合成例1)で合成した重合体エマルジョン
粒子(B−1)の水分散体を用いた。
球状のシリカ微粒子(A)の原料として平均粒子径5nmの水分散コロイダルシリカ(
商品名「スノーテックスOXS(表1中、「ST−OXS」と記載する)」、日産化学工
業(株)製、固形分10質量%)を用いた。
加水分解性珪素化合物(C)としてテトラエトキシシラン(信越化学工業(株)製)を
用いた。
これらを、表1に記載の固形分質量比となるよう調整して混合し、全体の固形分が2質
量%となるように20%エタノール水で調整した後、攪拌し、コーティング組成物を得た
。
基材(10cm×10cmの太陽電池用ガラス:旭硝子製 Solite 全光線透過
率91.7%)の太陽光が入光してくる面側に、上記コーティング組成物を、スピンコー
ターを用いて回転数1500rpmで10sec塗布した後、25℃で60分間乾燥し、
さらに電気炉中で600℃、3分間焼結した後に、急冷して塗膜を有する試験板(G−1
)を得た。
このときコーティング膜(F−1)中の組成比(コーティング組成物の固形分換算で計
算した各成分の質量比率と同様)は、(A)/(B')/(C')=70/100/50
となった。
なお、(A)は、シリカ微粒子(A)の質量比率であり、(B')は、上記焼結後に得
られる重合体エマルジョン粒子(B)に由来する重合体粒子(B')の質量比率であり、
(C')は、上記焼結後に得られる加水分解性珪素化合物(C)の加水分解縮合物(C'
)の質量比率である。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−1)の評価結果を表1に示す。
コーティング膜中の組成比(コーティング組成物の固形分換算で計算した各成分の質量
比率と同様)を、(A)/(B')/(C')=50/100/50とした。
その他の条件は参考例1と同様にして試験板(G−2)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−2)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例2)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−2)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−3)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−3)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例3)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−3)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−4)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−4)の評価結果を表1に示す。
球状のシリカ微粒子(A)の原料として、平均粒子径10nmの水分散コロイダルシリ
カ(商品名「スノーテックスOS(表1中、「ST−OS」と記載する。)」、日産化学
工業(株)製、固形分20質量%)を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通り
とし、その他の条件は、〔参考例1〕と同様にして試験板(G−5)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−5)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例3)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−4)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−6)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−6)の評価結果を表1に示す。
球状のシリカ微粒子(A)の原料として、平均粒子径10nmの水分散コロイダルシリ
カ(商品名「スノーテックスOS(表1中、「ST−OS」と記載する。)」、日産化学
工業(株)製、固形分20質量%)を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通り
とし、電気炉の焼結温度を450℃として、その他の条件は、〔参考例1〕と同様にして試験板(G−7)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−7)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例4)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−4)の水分散体を用いた。ただし、シリカ微粒子は用いなかった。
コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、その他の条件は、〔参考例1〕と同様にして試験板(G−8)を得た。
その後、市販の界面活性剤系親水性コーティング剤(ドリーム・ネット・インターナシ
ョナル製クリスタルバリアPRO−β)を試験板から30cm離れたところからコーティ
ング膜面にスプレーで塗布し、すぐに乾いた布で拭き取り、試験板を作製した。
空孔の形状は、長径が膜に平行で並べられた楕円形であった。
得られた試験板(G−12)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例5)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−5)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−11)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−11)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例3)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−3)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−12)を得た。
空孔は空孔の形状が長径が膜に平行で並べられた楕円形であった。
得られた試験板(G−12)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例4)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−4)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−13)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−13)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例4)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−4)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−14)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−14)の評価結果を表1に示す。
重合体エマルジョン粒子(B)として、前記(合成例3)で合成した重合体エマルジョ
ン粒子(B−3)の水分散体を用い、コーティング膜中の組成比は表1に示す通りとし、
その他の条件は〔参考例1〕と同様にして試験板(G−15)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−15)の評価結果を表1に示す。
テトラエトキシシラン6g、メチルトリエトキシシラン6g、エタノール3、水4g及
び0.3重量%の塩酸水溶液11gを混合し、60℃のウォーターバスで1時間攪拌し、
混合物(A)を得た。
次に、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド
のトリブロックポリマー(BASF製 PLURONIC P123)5gとエタノール
4gを混合後、前記混合物(A)を添加し、室温で1時間し、その後イソプロパノールを
3gを混合し、シラン化合物の水分散体を得た。
この分散体を用いて、イソプロパノールを用いて固形分を2質量%に調整し、その他の
条件は〔参考例1〕と同様にして試験版(G−16)を得た。
空孔は不定形状であった。
得られた試験板(G−16)の評価結果を表1に示す。
参考例8はシリカ微粒子(A)を用いていないが界面活性剤の親水性コーティング剤を用いたため、水の静的接触角が低くなり良い結果となった。
比較例2は、シリカ微粒子(A)に対する加水分解性珪素化合物(C)の比率を大きくしたため、十点平均粗さが小さくなり、砂塵試験後エアーブローをしても、薄く砂汚れが付着したままとなり透過率が低下した。
比較例3は、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率に対して(シリカ微粒子(A)+加水分解性珪素化合物(C))の質量比率を大きくしたため、空孔率が小さくなり、透過率が低く、反射防止性能が低い結果となり、太陽電池の出力向上を目的とするコーティング膜としては適しないことが分かった。
比較例4は、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率に対して(シリカ微粒子(A)+加水分解性珪素化合物(C))の質量比率を小さくしたため、空孔率が大きくなり、HF試験後の透過率が低下し、砂塵試験後も膜にクラックが多数発生したため透過率が低下した。また、擦過試験においてもクラックが発生し透過率が低下した。
比較例5は、シリカ微粒子(A)の重合比率に対し、重合体エマルジョン粒子(B)の質量比率を大きくしたため、25℃における水の静的接触角が大きく、砂塵試験後に薄く砂汚れが付着したままとなり透過率が低下した。
比較例6は、シラン系原料を用いて空孔膜を作製し、空孔率や表面粗さは適切であったが、水の静的接触角が高いため、HF試験後の透過率が低下し、砂塵試験後も膜にクラックが多数発生したため透過率が低下した。
Claims (4)
- シリカを含み、
表面の十点平均粗さ(RzJIS)が、10nm以上27.8nm以下であり、
空孔を有し、当該空孔の空孔率が、45%以上47%以下であり、
25℃における水に対する静的接触角が25°未満である太陽電池用コーティング膜。 - 前記空孔の形状が、不定形状である、請求項1に記載の太陽電池用コーティング膜。
- 前記コーティング膜の膜厚が50〜200nmである、請求項1又は2に記載の太陽電
池用コーティング膜。 - 前記コーティング膜の、JIS K 5600−7−7に基づくキセノンウェザーメー
ターによる耐候性試験1000時間後の25℃における水に対する静的接触角が40°未
満である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池用コーティング膜。
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