JP6456181B2 - 鋼管の継手機構及び連結方法 - Google Patents
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Description
本発明は、鋼管の継手機構及び連結方法に関する。
構造物設置用の基礎杭や土留め用矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などを構成するための鋼管の一例として鋼管杭が使用される。軟弱な地盤の下にある硬い地盤である支持層内に到達する長さの鋼管杭が必要となるが、製作や運搬等の都合から、工場製作された数メートルから数十メートル程度の鋼管杭を現場に搬入し、現場で複数の鋼管杭を上下に連結しながら所定の長さのものを形成することが行われている。
上記のような、鋼管杭を連結するための機構として、特許文献1には、機械式の継手機構が提案されている。
この継手機構は、外嵌部材の内向き周溝と内嵌部材の外向き周溝とを同じ溝幅で形成しておき、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で内向き周溝と外向き周溝とを互いに対向させて、予め内向き周溝に内蔵したキー部材を外向き周溝側に押出して、内向き周溝と外向き周溝とに亘って嵌合することによって、一対の鋼管杭同士を該鋼管杭の長手方向に相対移動することを不可能に連結する構成となっている。
しかし、内向き周溝に予めキー部材を内蔵しておき、連結時に外向き周溝に向けて押出す構成は構造が複雑になりがちで、内向き周溝にキー部材全体を内蔵可能な溝幅が必要なため前記外嵌部材の厚みがその分厚くなってしまうという問題があった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、一対の鋼管を連結する構成の簡素化と、コストの低減を図ることを目的とする。
本発明に係る継手機構の第一特徴構成は、鋼管の継手機構であって、前記鋼管の一端に設けられた第一内側継手と、他端に設けられた第二内側継手と、一対の前記鋼管を連結するために、一方の前記鋼管の前記第一内側継手と他方の前記鋼管の前記第二内側継手とを隣接させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される外側継手と、前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材とを備え、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周には外向き周溝が備えられ、前記外側継手の内周には、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた前記外向き周溝と対向する内向き周溝が備えられ、前記外側継手には、前記外側継手の外周面から、前記外向き周溝と前記内向き周溝とで構成されるキー溝に前記キー部材を挿通するための開口部が備えられている点にある。
一方の鋼管の一端に設けられた第一内側継手と他方の鋼管の他端に設けられた第二内側継手とを隣接させるとともに、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って外側継手を周設したあとに、前記外側継手に形成された開口部を介して、キー部材を、前記外側継手の外周面から、外向き周溝と内向き周溝とで形成されるキー溝に配置することができる。したがって、従来の継手機構のように、予めキー部材を内向き周溝内に内蔵しておく必要がない分、外側継手の厚みを薄くすることができ、材料コストの低減を図ることができる。また、第一内側継手と第二内側継手とを同じ形状に構成することができるため、加工コストの低減も図ることができる。
同第二特徴構成は、前記キー部材は、円環の一部を構成する複数の分割キー部材と、前記分割キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材とを備えている点にある。
開口部には、分割キー部材と同様に前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止する機能を有する閉鎖部材を配置することで、キー溝に配置された前記分割キー部材が前記開口部から外に抜け落ちることを防ぐことができる。
同第三特徴構成は、前記外側継手は、前記第一内側継手及び前記第二内側継手の周囲に並設される複数の単位部材で構成されている点にある。
外側継手を、例えば作業員が手で持ち上げることができる程度の大きさの複数の単位部材で構成することによって、クレーン等の機械による吊り上げ作業が不要となるため、鋼管の連結の作業性が向上する。
同第四特徴構成は、前記複数の単位部材は、前記開口部が備えられている開口単位部材と、前記開口部が備えられていない標準単位部材とを含んでいる点にある。
キー部材を挿通可能な開口部を備える開口単位部材を任意の箇所に配置することができる。すなわち現場の作業スペース等の事情にあわせてキー部材をキー溝に挿通する開口部を任意に設定することができる点で作業性が良い。
同第五特徴構成は、前記複数の単位部材は、前記第一内側継手と前記第二内側継手とを当接させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される基準単位部材と、前記第一内側継手と前記第二内側継手とを離間させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される延長単位部材とを含んでいる点にある。
前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される前記外側継手のうち一部を基準単位部材で構成し、他部を延長単位部材で構成することで、前記一方の鋼管の軸心と、前記他方の鋼管の軸心とを傾けることができる。
すなわち、鋼管を上下に連結しながら地中に打ち込むにあたり、先行して地中に打ち込んだ鋼管の姿勢が所定姿勢、例えば鉛直姿勢から外れているときは、軸芯どうしを相対的に傾けて、その鋼管に連結される後続の鋼管の姿勢が所定姿勢、例えば鉛直姿勢に近い姿勢になるように修正しながら、一対の鋼管を連結することができる。
同第六特徴構成は、前記第一内側継手及び前記第二内側継手は、夫々、基部と前記基部に延設された内嵌部を備え、前記基部の前記内嵌部に臨む端面には係合凹部が円環状に備えられ、前記内嵌部の外周に前記外向き周溝が円環状に備えられ、前記基準単位部材及び前記延長単位部材の上下端部には、前記基準単位部材及び前記延長単位部材を前記第一内側継手及び前記第二内側継手とに跨って周設したときに前記係合凹部に係合可能な一対の係合凸部が備えられ、前記基準単位部材及び前記延長単位部材の内周に一対の前記外向き周溝に対向する一対の前記内向き周溝が備えられ、前記基準単位部材の一対の前記内向き周溝間の距離は、前記第一内側継手と前記第二内側継手とが当接したときの、前記一対の外向き周溝間の距離と同じ距離に設定され、前記延長単位部材の一対の前記内向き周溝間の距離は、前記第一内側継手と前記第二内側継手とが離間したときの、前記一対の外向き周溝間と同じ距離に設定されている点にある。
前記基準単位部材や前記延長単位部材を前記第一内側継手及び前記第二内側継手とに跨って周設したときに、係合凸部と係合凹部とが係合することで前記基準単位部材や前記延長単位部材が外方へ脱落することが防止される。前記一方の鋼管の軸心と、前記他方の鋼管の軸心とを傾けたときであっても、キー部材をキー溝に挿通することができる。
本発明に係る連結方法の第一特徴構成は、上述した第一から第六のいずれか一つの特徴構成を備えた継手機構を用いて一対の鋼管を連結する連結方法であって、一方の鋼管の一端に設けられた第一内側継手に外側継手を周設するステップと、前記第一内側継手と他方の鋼管の他端に設けられた第二内側継手とを隣接させて、前記外側継手の内面に前記第二内側継手を挿入し、前記外側継手を前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨らせるステップと、前記外側継手に備えられた開口部を介して、前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材を、前記外側継手の外周面から、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた外向き周溝と、前記外向き周溝と対向するように前記外側継手の内周に備えられた内向き周溝とで構成されるキー溝に挿通し、前記キー溝に挿通した前記キー部材を、前記キー溝内で周方向にスライドさせ、前記キー溝のうち前記開口部に対応する箇所を除いて、前記キー溝内の所定位置に前記キー部材を配置するステップと、前記キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材によって前記開口部を閉鎖するステップと、を備えている点にある。
同第二特徴構成は、上述した第五または第六のいずれか一つの特徴構成を備えた継手機構を用いて一対の鋼管を連結する連結方法であって、一方の鋼管の一端に設けられた第一内側継手に外側継手を周設するステップと、前記第一内側継手と他方の鋼管の他端に設けられた第二内側継手とを隣接させて、前記外側継手の内面に前記第二内側継手を挿入し、前記外側継手を前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨らせるステップと、前記外側継手に備えられた開口部を介して、前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材を、前記外側継手の外周面から、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた外向き周溝と、前記外向き周溝と対向するように前記外側継手の内周に備えられた内向き周溝とで構成されるキー溝に挿通し、前記キー溝に挿通した前記キー部材を、前記キー溝内で周方向にスライドさせ、前記キー溝のうち前記開口部に対応する箇所を除いて、前記キー溝内の所定位置に前記キー部材を配置するステップと、前記キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材によって前記開口部を閉鎖するステップと、を備え、前記外側継手を周設するステップにおいて、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される前記外側継手を、前記外側継手を構成する複数の単位部材のうち、一部の単位部材を前記基準単位部材で構成し、他部の単位部材を前記延長単位部材で構成することで、前記一方の鋼管の軸心と、前記他方の鋼管の軸心とを傾けるステップを備えている点にある。
以下に本発明による鋼管の継手機構及び連結方法を図面に基づいて説明する。
図1は、鋼管の一例としての、油圧ハンマー、圧入機、回転圧入機などで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の鋼管杭1(1A,1B)と、一対の鋼管杭1A,1Bを鋼管杭1の長手方向に互いに連結するための継手機構を示している。なお、すべての鋼管杭1は同一の構成であるが、一対の鋼管杭1のうち、一方の鋼管杭1と他方の鋼管杭1を区別して説明する必要があるところについては、一方の鋼管杭1側の符号に添え字Aを付し、他方の鋼管杭1側の符号に添え字Bを付している。
図1は、鋼管の一例としての、油圧ハンマー、圧入機、回転圧入機などで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の鋼管杭1(1A,1B)と、一対の鋼管杭1A,1Bを鋼管杭1の長手方向に互いに連結するための継手機構を示している。なお、すべての鋼管杭1は同一の構成であるが、一対の鋼管杭1のうち、一方の鋼管杭1と他方の鋼管杭1を区別して説明する必要があるところについては、一方の鋼管杭1側の符号に添え字Aを付し、他方の鋼管杭1側の符号に添え字Bを付している。
鋼管杭1(1A,1B)は、管体2(2A,2B)の両端部に鋳鋼製で略円筒状の内側継手10が同芯状に溶接してある。
内側継手10は、管体2の外径よりやや大きい外径の基部11に、その基部11よりも外径が小径の内嵌部12を延設してある。本実施形態では、基部11の外径は、管体2の外径より18mm程度大きい。
内嵌部12の外周には、後述する円環状のキー部材30を係合するための一条の外向き周溝13を円環状に形成してある。基部11の内嵌部12に臨む端面には、後述する外側継手20の端部に備えられた係合凸部24を係合させるための係合凹部14を円環状に形成してある。
内嵌部12の外周には、後述する円環状のキー部材30を係合するための一条の外向き周溝13を円環状に形成してある。基部11の内嵌部12に臨む端面には、後述する外側継手20の端部に備えられた係合凸部24を係合させるための係合凹部14を円環状に形成してある。
なお、管体2の両端部に溶接される内側継手10は同一の構成であるが、鋼管杭1を地中に打ち込む際に下側に位置する内側継手10側に添え字Aを付し、上側に位置する内側継手10側に添え字Bを付している。すなわち、一対の内側継手10A,10Bの何れか一方が第一内側継手であり他方が第二内側継手である。前記第一内側継手と前記第二内側継手とを同一の構成とすることで、別の構成とする場合に比べて製造コストを低減することができる。
図1及び図2に示すように、外側継手20は、管体2の外径よりやや大きい外径と、内側継手10を嵌挿可能な大きさの内径を有する鋳鋼製の円筒状体を、周方向に8等分に分割することで形成される8個の単位部材21によって構成されている。本実施形態では、外側継手20の外径は、管体2の外径より18mm程度大きい。
なお、8等分は例示であり、分割により得られる単位部材21の数は8個より少なくても多くてもよいが、分割された各単位部材21の大きさが、作業員が手で持ち上げることができる程度の大きさであることが好ましい。また、単位部材21は、例えば鉄板を曲げ加工するなどして一つずつ製造することもできるが、上述のように、円筒状体を分割することによって製造することにより、一つずつ製造する場合に比べて製造コストを低減することができる。
8個の単位部材21によって構成される外側継手20の内周には、内側継手10A及び内側継手10Bのそれぞれに備えられた外向き周溝13(13A,13B)と同じ程度の深さで並行する二条の円環状の内向き周溝23(23A,23B)を、内側継手10(10A,10B)の内嵌部12(12A,12B)に周設させた状態で、外向き周溝13(13A,13B)に係合可能な位置に備えてある。
内側継手10に外側継手20を周設させた状態で、外向き周溝13と内向き周溝23とで構成される円環状の空間がキー部材30を嵌合するためのキー溝となる。
このキー溝に、すなわち外向き周溝13と内向き周溝23とに亘ってキー部材30を係合することにより、内側継手10Aと外側継手20、及び内側継手10Bと外側継手20とが互いに係合され一対の鋼管杭1A,1Bが鋼管杭1の長手方向に連結される。
各単位部材21には、図中の上下端部に係合凸部24A,24Bを形成してある。単位部材21を内側継手10に周設したときに、係合凸部24A,24Bが、内側継手10の係合凹部14A,14Bに係合することで単位部材21が外方へ脱落することが防止される。
8個の単位部材21のうち、4個の単位部材21には、内側継手10に外側継手20を周設させた状態で、キー部材30を外向き周溝13と内向き周溝23とで構成されるキー溝に配置するために、外向き周溝13(13A,13B)の溝の長手方向における一部を外向き周溝13(13A,13B)の全幅に亘って外方に臨ませるための2個の開口部22(22A,22B)を備えている。これらの単位部材21が開口単位部材21Aである。
開口部22(22A,22B)は、各内向き周溝23(23A,23B)の形成箇所に沿って、内向き周溝23(23A,23B)の全幅に亘って切り取った形状に構成されている。
開口部22(22A,22B)を介して、外側継手20の外周面から、外向き周溝13と内向き周溝23とで構成されるキー溝にキー部材30が挿通される。
その他の4個の単位部材21は、開口部22(22A,22B)を備えていないことを除いて、開口単位部材21Aと同一の構成である。これらの単位部材21が標準単位部材21Bである。
本実施形態では、それぞれ4個ずつの開口単位部材21A及び標準単位部材21Bが、内側継手10の周囲に交互に並設され円筒状の外側継手20を構成する。開口単位部材21Aは開口部22が形成されているため、標準単位部材21Bよりも強度が弱い。そのため、開口単位部材21Aと標準単位部材21Bとを交互に並設することで、外側継手20の全体としての強度の均質化が図られる。
図1に示すように、キー部材30は、前記キー溝内に配置される部材であって、円環状体を、周方向に16等分に分割したような複数個の円弧状の部材で構成されている。
ただし、16個の円弧状の部材のうち、12個はキー溝に配置されてキー部材30として機能する分割キー部材31であり、あとの4個はキー部材30としての機能を有するとともに開口部22を閉鎖する機能を有する閉鎖部材32である。
一条のキー溝あたりに、12個の分割キー部材31と4個の閉鎖部材32とが配置され、全体として円環状のキー部材30を構成する。
ただし、16個の円弧状の部材のうち、12個はキー溝に配置されてキー部材30として機能する分割キー部材31であり、あとの4個はキー部材30としての機能を有するとともに開口部22を閉鎖する機能を有する閉鎖部材32である。
一条のキー溝あたりに、12個の分割キー部材31と4個の閉鎖部材32とが配置され、全体として円環状のキー部材30を構成する。
分割キー部材31は、鋼管杭1の長手方向に沿った方向の寸法が開口部22の該方向の寸法より若干小さく設定され、鋼管杭1の周方向に沿った方向の寸法が開口部22の該方向の寸法より若干小さく設定され、鋼管杭1の径方向に沿った方向の寸法が、キー溝、すなわち外向き周溝13と内向き周溝23の該方向の寸法より若干小さく設定されている。
閉鎖部材32は、鋼管杭1の長手方向に沿った方向の寸法が開口部22の該方向の寸法より若干小さく設定され、鋼管杭1の周方向に沿った方向の寸法が開口部22の該方向の寸法より若干小さく設定され、鋼管杭1の径方向に沿った方向の寸法が、外向き周溝13の底面から開口部22の表面までの寸法と略同じ大きさに設定されている。
さらに、閉鎖部材32は、開口部22に挿通したあとに、ボルト33によって内側継手10に対して固定可能に構成されている。なお、閉鎖部材32は外側継手20に対して固定される構成であってもよい。
さらに、内側継手10と外側継手20の外周面の境界部には、外側継手20を介して連結された内側継手10Aと内側継手10Bの周方向の相対移動を抑止するための回転抑止キーが配設されている。
図示はしないが、前記回転抑止キーは、内側継手10の基部11の外周面に形成されたザグリ部と、前記ザグリ部に対向するように外側継手20の外周面に形成されたザグリ部とで構成される回転抑止キー溝に跨設される。なお、前記回転抑止キーや前記ザグリ部の寸法及び数は、鋼管杭1の施工方法に応じて適当に設定される。前記回転抑止キーは、内側継手10または外側継手20の一方と一体に形成してもよく、この場合は他方にのみザグリ部が形成される。
内側継手10Aと内側継手10Bの周方向の相対移動を抑止するための構成としては、前記回転抑止キーによるものに限らない。例えば、8個の単位部材21のうちの少なくとも1つの単位部材の係合凸部24と、該係合凸部24が係合する係合凹部14の、鋼管杭1の長手方向の長さを、その他の単位部材21の係合凸部24と異ならせる構成であってもよい。この場合は、単位部材21が回転抑止キーと同様の機能を果たす。
次に、図3から図12に基づいて、油圧ハンマーなどで地中に打ち込む工法において、先に打ち込まれている鋼管杭1Aに後続の鋼管杭1Bを連結する場合を例に本発明による連結方法を説明する。
この、一対の鋼管杭1A,1Bを連結する連結方法には上述の継手機構が用いられる。
まず、図3に示すように、先行して打ち込まれている一方の鋼管杭1Aの上端に設けられた内側継手10Aの係合凹部14A(14)にそれぞれの係合凸部24A(24)を係合させながら、4個の開口単位部材21Aと4個の標準単位部材21Bを交互に並設し、図4に示すように、内側継手10Aの周囲に円筒状の外側継手20を構成する。
まず、図3に示すように、先行して打ち込まれている一方の鋼管杭1Aの上端に設けられた内側継手10Aの係合凹部14A(14)にそれぞれの係合凸部24A(24)を係合させながら、4個の開口単位部材21Aと4個の標準単位部材21Bを交互に並設し、図4に示すように、内側継手10Aの周囲に円筒状の外側継手20を構成する。
次に、図5及び図6に示すように、鋼管杭1Aに対して、他方の鋼管杭1Bを吊り下ろし、外側継手20を構成する開口単位部材21A及び標準単位部材21Bの係合凸部24B(24)を、内側継手10Bの係合凹部14B(14)の係合させることで、一対の鋼管杭1A,1Bの内側継手10A,10Bが外側継手20の内部の所定位置に配置される。
次に、図7から図9に示すように、開口単位部材21Aの開口部22に分割キー部材31を挿入する。開口部22に挿入された分割キー部材31は、前記キー溝の長手方向に沿ってスライドさせる。そして、開口部22へ次の分割キー部材31を挿入する。
所定数の分割キー部材31の挿入が終わると、図10から図12に示すように、開口部22に挿入した閉鎖部材32をボルト33で固定して、開口部22を閉鎖する。
以上のようにして、一対の鋼管杭1A,1Bを、鋼管杭1の長手方向へ相対移動しないよう連結することができる。
最後に、前記回転抑止キーを内側継手10の基部11の外周面に形成されたザグリ部と、前記ザグリ部と対向するように外側継手20の外周面に形成されたザグリ部とで構成される回転抑止キー溝に跨設することで、一対の鋼管杭1A,1Bは、鋼管杭1の周方向へも相対移動しないよう連結される。
ところで、本発明による継手機構の外側継手20を複数の単位部材21で構成することで、上述のように製造コストを低減することに加えて以下の利点もある。
外側継手20を構成する単位部材21は、鋳鋼製の円筒状体を周方向に8等分に分割することで形成される。
この単位部材21は、鋼管杭1の長手方向に沿った方向の高さが、内側継手10Aと内側継手10Bとを当接させた状態で、内側継手10Aと内側継手10Bとに跨って周設される基準距離を有する円筒状体や、前記基準距離より僅かに、例えば0.5mm程度長い距離を有する円筒状体や、1.0mm程度長い距離を有する円筒状体から形成してもよい。なお、前記基準距離を有する円筒状体から形成される単位部材21が基準単位部材21Cであり、前記基準距離より長い距離を有する円筒状体から形成される単位部材21が延長単位部材21Dである。なお、基準単位部材21Cや延長単位部材21Dは、開口部22が備えられていれば開口単位部材21Aでもあり、開口部22が備えられていなければ標準単位部材21Bでもある。
この単位部材21は、鋼管杭1の長手方向に沿った方向の高さが、内側継手10Aと内側継手10Bとを当接させた状態で、内側継手10Aと内側継手10Bとに跨って周設される基準距離を有する円筒状体や、前記基準距離より僅かに、例えば0.5mm程度長い距離を有する円筒状体や、1.0mm程度長い距離を有する円筒状体から形成してもよい。なお、前記基準距離を有する円筒状体から形成される単位部材21が基準単位部材21Cであり、前記基準距離より長い距離を有する円筒状体から形成される単位部材21が延長単位部材21Dである。なお、基準単位部材21Cや延長単位部材21Dは、開口部22が備えられていれば開口単位部材21Aでもあり、開口部22が備えられていなければ標準単位部材21Bでもある。
延長単位部材21Dの上下端部には、基準単位部材21Cと同様に、単位部材21を内側継手10に周設したときに、内側継手10の係合凹部14A,14Bに係合するための係合凸部24A,24Bが形成されている。延長単位部材21Dの内周には、基準単位部材21Cと同様に、二条の円環状の内向き周溝23(23A,23B)が形成されている。
基準単位部材21Cの一対の内向き周溝23(23A,23B)間の距離は、内側継手10Aと内側継手10Bとが当接したときの、一対の外向き周溝13(13A,13B)間の距離と同じ距離に設定され、
延長単位部材21Dの一対の内向き周溝23(23A,23B)間の距離は、内側継手10Aと内側継手10Bとが離間したときの、一対の外向き周溝13(13A,13B)間と同じ距離に設定されている。
延長単位部材21Dの内向き周溝23(23A,23B)間の距離は、前記基準距離より0.5mmや1.0mmだけ広くなるように形成する。
すなわち、延長単位部材21Dは、内向き周溝23(23A,23B)間の距離が、基準単位部材21Cの内向き周溝23(23A,23B)間の距離より長く構成されている。なお、前記0.5mm及び1.0mmは例示であり、実際には鋼管杭1の直径や、寸法公差に基づいて適当な値が設定される。
延長単位部材21Dの一対の内向き周溝23(23A,23B)間の距離は、内側継手10Aと内側継手10Bとが離間したときの、一対の外向き周溝13(13A,13B)間と同じ距離に設定されている。
延長単位部材21Dの内向き周溝23(23A,23B)間の距離は、前記基準距離より0.5mmや1.0mmだけ広くなるように形成する。
すなわち、延長単位部材21Dは、内向き周溝23(23A,23B)間の距離が、基準単位部材21Cの内向き周溝23(23A,23B)間の距離より長く構成されている。なお、前記0.5mm及び1.0mmは例示であり、実際には鋼管杭1の直径や、寸法公差に基づいて適当な値が設定される。
基準単位部材21Cによって外側継手20を構成すると、連結される鋼管杭1Aの内側継手10Aと鋼管杭1Bの内側継手10Bとの対向面同士は当接する。
一方、前記基準距離より0.5mm長い距離をもった延長単位部材21Dで外側継手20を構成すると、鋼管杭1Aの内側継手10Aと鋼管杭1Bの内側継手10Bとの対向面の間に0.5mmの間隙が生じ、前記基準距離より1.0mm長い距離をもった延長単位部材21Dで外側継手20を構成すると、鋼管杭1Aの内側継手10Aと鋼管杭1Bの内側継手10Bとの対向面の間に1.0mmの間隙が生じることとなる。
一方、前記基準距離より0.5mm長い距離をもった延長単位部材21Dで外側継手20を構成すると、鋼管杭1Aの内側継手10Aと鋼管杭1Bの内側継手10Bとの対向面の間に0.5mmの間隙が生じ、前記基準距離より1.0mm長い距離をもった延長単位部材21Dで外側継手20を構成すると、鋼管杭1Aの内側継手10Aと鋼管杭1Bの内側継手10Bとの対向面の間に1.0mmの間隙が生じることとなる。
このような、鋼管杭1の長手方向の長さの異なる外側継手20群を用意しておくと、例えば、図13に示すように、先行して打ち込まれている鋼管杭1Aの姿勢が鉛直方向に沿う姿勢から外れている場合に、その鋼管杭1Aに鋼管杭1Bを連結する際に、基準単位部材21Cと延長単位部材21Dとを組み合わせて、例えば図中左側に基準単位部材21Cを配設し、図中右側に延長単位部材21Dを配設することで、後続する鋼管杭1Bの姿勢を、鉛直方向に沿った姿勢に打ち込むことができる。鋼管杭1A,1Bどうしを、鉛直な姿勢に近い姿勢となるように修正しながら連結できる。内向き周溝23(23A,23B)は、分割キー部材31に対して若干余裕を持った幅に構成されているため、鋼管杭1A,1Bどうしを傾けたときも、分割キー部材31のキー溝の長手方向に沿ったスライドは阻害されない。
上述の実施形態では、外側継手20の開口部22は、開口単位部材21Aの中央に備えられていたが、開口部22は例えば図14に示すように、隣接する2個の単位部材21に跨って形成されてもよい。また、図15に示すように、開口単位部材21Aの中で上下の位置が異なるように形成されてもよい。図15に示すように、開口部22の形成位置を左右にずらすことによって、開口部22が上下に並んで形成される場合に比べて、開口単位部材21Aの強度の低下を抑えることができる。
上述の実施形態では、外側継手20を構成する単位部材21の分割面を平面に構成したが、図16や図17に示すように、隣接する単位部材21の対向面同士に互い係合する係合部を備えてもよい。係合凸部24の係合凹部14への係合のみならず、隣接する単位部材21同士が互いに係合することで単位部材21が外方へ脱落することが防止される。
上述の実施形態では、外側継手20を、8等分に分割された単位部材21で構成したが、外側継手20は、図18に示すように鋳鋼製の円筒状体のまま構成してもよい。この場合、図19に示すように内側継手10は係合凹部14を備えなくてもよい。だだし、鋼管杭1Aと鋼管杭1Bを連結する作業において、分割キー部材31をキー溝に挿通するまでは、外側継手20を内側継手10の周囲に保持しておく機構及び作業が必要となる。
この点を解決するために、図20に示すように、少なくとも鋼管杭1Aの内側継手10Aに、外側継手20を内側継手10の周囲に保持するための係合段部15を備えてもよい。
また、図21に示すように、外側継手20の外周面は、内側継手10の基部11の外周面と面一となるように形成していなくてもよい。
本発明による鋼管の継手機構は、構造物設置用の基礎杭の他、土留め用鋼管矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの鋼管を連結するために使用するものであっても良い。
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
1 鋼管杭(鋼管)
2 管体
10 内側継手
11 基部
12 内嵌部
13 外向き周溝
14 係合凹部
20 外側継手
21 単位部材
21A 開口単位部材
21B 標準単位部材
21C 基準単位部材
21D 延長単位部材
22 開口部
23 内向き周溝
24 係合凸部
30 キー部材
31 分割キー部材
32 閉鎖部材
33 ボルト
2 管体
10 内側継手
11 基部
12 内嵌部
13 外向き周溝
14 係合凹部
20 外側継手
21 単位部材
21A 開口単位部材
21B 標準単位部材
21C 基準単位部材
21D 延長単位部材
22 開口部
23 内向き周溝
24 係合凸部
30 キー部材
31 分割キー部材
32 閉鎖部材
33 ボルト
Claims (8)
- 鋼管の継手機構であって、
前記鋼管の一端に設けられた第一内側継手と、他端に設けられた第二内側継手と、
一対の前記鋼管を連結するために、一方の前記鋼管の前記第一内側継手と他方の前記鋼管の前記第二内側継手とを隣接させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される外側継手と、
前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材とを備え、
前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周には外向き周溝が備えられ、
前記外側継手の内周には、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた前記外向き周溝と対向する内向き周溝が備えられ、
前記外側継手には、前記外側継手の外周面から、前記外向き周溝と前記内向き周溝とで構成されるキー溝に前記キー部材を挿通するための開口部が備えられていることを特徴とする継手機構。 - 前記キー部材は、円環の一部を構成する複数の分割キー部材と、前記分割キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の継手機構。
- 前記外側継手は、前記第一内側継手及び前記第二内側継手の周囲に並設される複数の単位部材で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の継手機構。
- 前記複数の単位部材は、前記開口部が備えられている開口単位部材と、前記開口部が備えられていない標準単位部材とを含んでいることを特徴とする請求項3に記載の継手機構。
- 前記複数の単位部材は、
前記第一内側継手と前記第二内側継手とを当接させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される基準単位部材と、
前記第一内側継手と前記第二内側継手とを離間させた状態で、前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される延長単位部材とを含んでいることを特徴とする請求項3または4に記載の継手機構。 - 前記第一内側継手及び前記第二内側継手は、夫々、基部と前記基部に延設された内嵌部を備え、
前記基部の前記内嵌部に臨む端面には係合凹部が円環状に備えられ、
前記内嵌部の外周に前記外向き周溝が円環状に備えられ、
前記基準単位部材及び前記延長単位部材の上下端部には、前記基準単位部材及び前記延長単位部材を前記第一内側継手及び前記第二内側継手とに跨って周設したときに前記係合凹部に係合可能な一対の係合凸部が備えられ、
前記基準単位部材及び前記延長単位部材の内周に一対の前記外向き周溝に対向する一対の前記内向き周溝が備えられ、
前記基準単位部材の一対の前記内向き周溝間の距離は、前記第一内側継手と前記第二内側継手とが当接したときの、前記一対の外向き周溝間の距離と同じ距離に設定され、
前記延長単位部材の一対の前記内向き周溝間の距離は、前記第一内側継手と前記第二内側継手とが離間したときの、前記一対の外向き周溝間と同じ距離に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の継手機構。 - 請求項1から6の何れか一項に記載の継手機構を用いて一対の鋼管を連結する連結方法であって、
一方の鋼管の一端に設けられた第一内側継手に外側継手を周設するステップと、
前記第一内側継手と他方の鋼管の他端に設けられた第二内側継手とを隣接させて、前記外側継手の内面に前記第二内側継手を挿入し、前記外側継手を前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨らせるステップと、
前記外側継手に備えられた開口部を介して、前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材を、前記外側継手の外周面から、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた外向き周溝と、前記外向き周溝と対向するように前記外側継手の内周に備えられた内向き周溝とで構成されるキー溝に挿通し、前記キー溝に挿通した前記キー部材を、前記キー溝内で周方向にスライドさせ、前記キー溝のうち前記開口部に対応する箇所を除いて、前記キー溝内の所定位置に前記キー部材を配置するステップと、
前記キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材によって前記開口部を閉鎖するステップと、を備えていることを特徴とする連結方法。 - 請求項5または6に記載の継手機構を用いて一対の鋼管を連結する連結方法であって、
一方の鋼管の一端に設けられた第一内側継手に外側継手を周設するステップと、
前記第一内側継手と他方の鋼管の他端に設けられた第二内側継手とを隣接させて、前記外側継手の内面に前記第二内側継手を挿入し、前記外側継手を前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨らせるステップと、
前記外側継手に備えられた開口部を介して、前記第一内側継手と前記外側継手、及び、前記第二内側継手と前記外側継手と係合して前記一対の鋼管どうしが該鋼管の長手方向に相対移動することを防止するキー部材を、前記外側継手の外周面から、前記第一内側継手及び前記第二内側継手のそれぞれの外周に備えられた外向き周溝と、前記外向き周溝と対向するように前記外側継手の内周に備えられた内向き周溝とで構成されるキー溝に挿通し、前記キー溝に挿通した前記キー部材を、前記キー溝内で周方向にスライドさせ、前記キー溝のうち前記開口部に対応する箇所を除いて、前記キー溝内の所定位置に前記キー部材を配置するステップと、
前記キー部材の機能を有するとともに前記開口部を閉鎖する機能を有する閉鎖部材によって前記開口部を閉鎖するステップと、を備え、
前記外側継手を周設するステップにおいて、
前記第一内側継手と前記第二内側継手とに跨って周設される前記外側継手を、前記外側継手を構成する複数の単位部材のうち、一部の単位部材を前記基準単位部材で構成し、他部の単位部材を前記延長単位部材で構成することで、前記一方の鋼管の軸心と、前記他方の鋼管の軸心とを傾けるステップを備えていることを特徴とする連結方法。
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