JP6451331B2 - 熱伝達率の同定方法 - Google Patents
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Description
そこで、従来の圧延ラインでは、例えば特許文献1,2に記載されているように、鋼板の上面及び下面の温度を測定して、この測定温度に応じて冷却条件を調整していた。
また、熱間圧延においては、高温の鋼板と接触する圧延ロールの内部温度分布が、圧延後の鋼板の形状やロール寿命に大きく影響を与えることがある。
一般に、物体の内部温度分布を推測する場合には、物体の熱的な境界における熱伝達率または放射率を含んだ等価熱伝達率を同定し、この熱伝達率を用いて伝熱計算することになる。
例えば、物体の表面の熱伝達率を同定する場合には、物体の表面の熱伝達率を仮定して伝熱計算を行い、物体の温度測定点における実測値と計算値との差が許容誤差内となるまで計算を繰り返していた。ここで、熱伝達率を精度良く同定するためには、数多くの熱伝達率を仮定して伝熱計算を繰り返し行う必要があった。
このように、従来は、鋼板や圧延ロールの内部温度分布を考慮して、圧延条件を調整することは実質的に不可能であった。
あるいは、前記修正ベクトル算出工程では、前回までの前記修正ベクトルと共役であるような条件を加え、前記修正ベクトルを算出する構成としてもよい。
まず、図3Aに示すように、鋼板10の初期温度分布を設定する(初期温度分布設定工程S01)。本実施形態では、加熱炉(図示しない)出側での温度を一定温度として初期入力し、その後の圧延および冷却工程の伝熱計算を行い、入側放射温度計7による温度データに合うように初期温度分布を設定する。
次に、所定時間Δt経過後の温度を測定する(温度測定工程S02)。本実施形態では、中間冷却装置4を通過後の鋼板10の上面11の温度T1及び下面12の温度T2、すなわち出側放射温度計8の温度データを使用する。
次に、温度測定工程S02で測定された鋼板10の上面11の温度T1及び下面12の温度T2と、伝熱計算工程S03で算出された鋼板10の上面11の温度T1 0及び下面12の温度T2 0との温度差ベクトルdT1=T1−T1 0、dT2=T2−T2 0を算出する(温度差ベクトル算出工程S04)。
このようにして、商ベクトル(dT1 1/dh1,dT2 1/dh1)を算出する(商ベクトル算出工程S11)。
このようにして、商ベクトル(dT1 2/dh2,dT2 2/dh2)を算出する(商ベクトル算出工程S11)。
そして、温度差ベクトルのノルムが許容値以下となるまで、伝熱計算工程S03、温度差ベクトル算出工程S04、商ベクトル算出工程S11、行列作成工程S12、修正ベクトル算出工程S13を繰り返し実施する。
このようにして、鋼板10の上面11の熱伝達率h1及び下面12の熱伝達率h2を同定し、同定された熱伝達率を用いて鋼板10の板厚方向の温度分布を推定する。
また、中間冷却設備4を通過後の鋼板10の板厚方向の温度分布の1次勾配が最小となるように、中間冷却設備4における冷却条件を調整する。
これにより、圧延ライン1における鋼板10の反りの発生を防止するとともに、材質の均一化を達成している。
圧延ロール3においては、図4に示すように、圧延ロール3の周方向位置によって熱的条件が大きく異なる。すなわち、高温の鋼板10と接触する領域(ロールバイト3A)は、圧延ロール3に対する入熱領域となり、その他の領域は、水冷領域3B又は空冷領域3Cとなっている。
そこで、本実施形態では、圧延ロール3の外周面の多数の点を境界(温度測定点)とし、各境界における熱伝達率の同定を行う。
次に、ロール無回転時の温度測定点における温度Tjを測定する(温度測定工程S02)。
さらに、各境界における熱伝達率hiを仮定し、ロール1回転(所定時間Δt経過後)の各温度測定点の温度Tj 0を算出する(伝熱計算工程S03)。ここで、ロール周方向に比べロール半径方向の熱流束が著しく大きいため、ロール1回転内でのロール周方向の熱の流れは無視しても差し支えない。したがって、前記のように1周分で測定した温度はあたかも多点で同時に測定した温度として扱っても差し支えない。すなわち、所定の複数の測定点を同時に測定する代わりに、1つ以上所定の測定点の数未満の温度測定点を移動させて同時に温度を実測したものとみなすことも可能である。
この作業を全ての境界における熱伝達率を上記手順によって補正して商ベクトルdTj i/dhi(j=0,1,…,N)を作成する。
ここで収束を早める等の必要に応じて逆行列Aij −1をさらに修正してもよい。本実施形態では、修正ベクトル算出工程S13においては、逆行列Aij −1と、温度差ベクトルdTjと、の積によって得られるベクトルをrk jとし、このrk jと前回計算で得られた修正量hk-1 jとを用いて、修正量dhj=rk j−βhk-1 jと設定した。ここで、βは1より小さい値であり、kは今回の計算を意味し、k−1は前回の計算を意味する。
そして、温度差ベクトルのノルムが許容値以下となるまで、伝熱計算工程S03、温度差ベクトル算出工程S04、商ベクトル算出工程S11、行列作成工程S12、修正ベクトル算出工程S13を繰り返し実施する。
このようにして、圧延ロール3の外周面の熱伝達率hiを同定し、同定された熱伝達率hiを用いて圧延ロール3の内部温度分布を推定する。
また、修正ベクトル算出工程において、ゲインをかけることによって振動を防止してもよい。
S02 温度測定工程
S03 伝熱計算工程
S04 温度差ベクトル算出工程
S05 温度差ベクトル評価工程
S11 商ベクトル算出工程
S12 行列作成工程
S13 修正ベクトル算出工程
Claims (4)
- 2以上の熱的な境界を有する物体の前記境界における熱伝達率を同定する熱伝達率の同定方法であって、
前記熱伝達率を同定する境界の数以上の温度測定点を設け、
前記物体の初期温度分布を設定する初期温度分布設定工程と、
前記物体の所定時間経過後の前記温度測定点の温度を実測する温度測定工程と、
前記境界における熱伝達率を仮定して、前記所定時間経過後の温度分布を計算する伝熱計算工程と、
前記伝熱計算工程による計算値と前記温度測定工程による測定値との差を計算して温度差ベクトルを算出する温度差ベクトル算出工程と、
前記温度差ベクトルのノルムが所定値以下であるか否かを判断する温度差ベクトル評価工程と、
前記2以上の境界のうちの1点の熱伝達率のみを補正して伝熱計算を再度実施し、各温度測定点における熱伝達率補正前の計算値と熱伝達率補正後の計算値との差を求め、この差と熱伝達率の補正量との商ベクトルを求める商ベクトル算出工程と、
この商ベクトル算出工程を全ての境界で実施し、得られた商ベクトルを並べて行列を作成する行列作成工程と、
得られた行列の逆行列を求め、この逆行列と前記温度差ベクトルに対応したベクトルとの積によって修正ベクトルを算出する修正ベクトル算出工程と、を有し、
仮定した熱伝達率に前記修正ベクトルを加えて修正した熱伝達率を用いて前記伝熱計算工程を実施し、前記温度差ベクトルのノルムが許容値以下となるまで、前記伝熱計算工程、前記温度差ベクトル算出工程、前記温度差ベクトル評価工程、前記商ベクトル算出工程、前記行列作成工程、前記修正ベクトル算出工程を繰り返し実施することを特徴とする熱伝達率の同定方法。 - 前記修正ベクトル算出工程では、前記逆行列と前記温度差ベクトルとの積で得られるベクトルの全要素に0より大きい1以下の実数をかけて前記修正ベクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の熱伝達率の同定方法。
- 前記修正ベクトル算出工程では、前回の熱伝達率の修正ベクトルの共役ベクトルを次回の前記修正ベクトルとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱伝達率の同定方法。
- 前記温度測定工程では、一定時間内で定常状態であると仮定できる範囲内において、一つ以上所定の数未満の温度測定点を移動させることによって所定の複数の温度測定点の温度を実測したとみなすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱伝達率の同定方法。
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