JP6485196B2 - 厚鋼板の冷却制御方法、冷却制御装置、製造方法、および、製造装置 - Google Patents

厚鋼板の冷却制御方法、冷却制御装置、製造方法、および、製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、厚鋼板の冷却形態を制御する冷却制御方法およびこれを用いる厚鋼板の製造方法、並びに、厚鋼板の冷却形態を制御する冷却制御装置およびこれを用いる厚鋼板の製造装置に関する。
厚鋼板の冷却工程における温度制御では、冷却開始前に、水冷による鋼板温度変化を伝熱計算にて推定し、目標冷却停止温度を得るように、冷却水量や冷却装置内の鋼板搬送速度を決定する。そのため、水冷による鋼板温度変化の推定精度が冷却停止温度の制御精度を左右する。実際の冷却停止温度が目標値とかけ離れてしまうと、製品に必要な機械的特性が得られなくなるため、冷却停止温度を高精度に制御する必要がある。
伝熱計算によって、冷却工程における鋼板の温度変化を推定する際、鋼板表面と冷却水との熱流束については、外乱因子が多いため、制御精度の悪化要因となる。鋼板表面と冷却水との界面では、鋼板表面温度が高いときには、水蒸気の膜ができる膜沸騰の状態であるが、鋼板表面温度が下がってくると、遷移沸騰から核沸騰へと沸騰状態が変化する。この沸騰状態が変化するところで、熱流束の変化も大きくなるため、沸騰状態を正確に予測することが重要である。
しかしながら、沸騰状態が変化する境界温度付近では、鋼板表面のスケール厚みや表面粗さによって、例えば、膜沸騰から遷移沸騰に移る鋼板表面温度(MHF(Minumum Heat Flux)点)が変化し、水冷による鋼板温度制御の外乱要因となっている。
これまでに、鋼板の冷却制御に用いるモデルの予測誤差を学習補正する手法が開発されてきている。その代表的な手法としては、冷却前の鋼板温度と冷却後の鋼板温度の実測値がモデル計算と合致するように、モデルのオフセット誤差を導出する手法や、熱伝達モデルの適正なパラメータを導出する手法等を挙げることができる。
例えば特許文献1には、冷却工程に供する厚鋼板について、厚鋼板の温度予測モデルを用いて、冷却工程における当該厚鋼板の冷却停止温度の予測値を算出する工程と、スラブ毎に過去の実績データを蓄積したデータベースから、当該厚鋼板と製造条件が類似する厚鋼板の過去の実績データを抽出する工程と、該工程で抽出した過去の実績データから、当該厚鋼板の冷却停止温度の予測値の誤差を推定する工程と、算出した当該厚鋼板の冷却停止温度の予測値と、推定した当該厚鋼板の冷却停止温度の予測値の誤差とから、冷却停止温度の修正値を算出する工程と、冷却停止温度の修正値が目標値となるように、冷却水量および/または鋼板搬送速度を決定する工程と、を有し、決定された冷却水量および/または鋼板搬送速度で厚鋼板の冷却工程を行う、厚鋼板の冷却制御方法が開示されている。また、特許文献2には、冷却装置の入側および出側での鋼板表面温度実績値に基づいて、伝熱計算に用いる熱伝達係数を探索法にて修正する技術が開示されている。また、特許文献3には、ヘッダー部からの冷却水が厚鋼板に衝突する部位については冷却水量密度をパラメータとした冷却モデルを適用し、ヘッダー部間に対応する位置の厚鋼板の部位については厚鋼板の板幅方向に冷却水が移動する流速をパラメータとした冷却モデルを適用して熱伝達率を計算し、水冷ゾーン通過後の厚鋼板の幅方向温度分布を予測し、各ヘッダーの冷却水量分布を決定する厚鋼板の冷却制御方法が開示されている。
特開2012−81518号公報 特開2004−244721号公報 特開2011−167754号公報
特許文献1乃至特許文献3に記載の技術では、冷却前の鋼板温度や冷却後の鋼板温度を用いるにとどまり、冷却途中に測定した厚鋼板の表面温度を用いていないので、鋼板温度制御の精度を高め難い。また、特許文献1乃至特許文献3に記載の技術では、沸騰状態が変化する境界温度が最適化されていないので、冷却途中および冷却停止後における鋼板温度の制御精度が不十分になる虞があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、冷却途中および冷却停止後における温度の制御精度を高めることが可能な、厚鋼板の冷却制御方法および冷却制御装置並びに厚鋼板の製造方法および製造装置を提供することを課題とする。
冷却途中および冷却停止後における温度の制御精度を高めるため、本発明者らは、冷却前後の温度測定値だけでなく、冷却途中の温度測定値を用いることとした。そして、温度変化の履歴から、沸騰状態が変化する境界温度(CHF(Critical Heat Flux)点やMHF点。以下において同じ。)を導出し、温度予測結果と温度測定値とが一致するように、上記境界温度を修正した。このように修正した境界温度を操業条件と紐付けてデータベースに蓄積し、厚鋼板の製造条件が類似する過去のデータを用いて、冷却装置の操業条件を決定した。本発明者らは、このようにして決定された操業条件で厚鋼板を冷却することより、厚鋼板の冷却温度の制御精度を従来よりも高めることが可能になることを知見した。
本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。
本発明の第1の態様は、冷却装置の水冷ゾーンを通過させる厚鋼板の冷却を制御する方法であって、冷却装置を用いて冷却される厚鋼板の表面温度を、鋼板温度予測モデルを用いて予測する温度予測工程と、冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を測定する温度測定工程と、温度予測工程で予測された表面温度と温度測定工程で測定された表面温度とが一致するように、鋼板温度予測モデルで用いる、沸騰状態が変化する境界温度を逆算する逆算工程と、逆算工程で逆算された境界温度を、該境界温度が得られた厚鋼板の製造条件のデータとともに、操業実績データベースに蓄積するデータ蓄積工程と、これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する過去の製造条件のデータを、沸騰状態が変化する境界温度とともに、操業実績データベースから抽出する抽出工程と、抽出工程で抽出されたデータおよび沸騰状態が変化する境界温度を用いて、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度を算出する沸騰変化温度算出工程と、沸騰変化温度算出工程で算出された境界温度、および、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータを、鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する冷却停止温度推定工程と、冷却停止温度推定工程で推定された冷却停止温度が、冷却停止時における厚鋼板の目標温度に一致するように、冷却装置の操業条件を決定する決定工程と、を有する、厚鋼板の冷却制御方法である。
ここに、本発明において、「厚鋼板の製造条件」には、冷却装置で冷却される厚鋼板の情報(例えば、板厚、板幅、板長、および、化学成分値等。)、冷却水の温度等が含まれる。また、本発明において、「これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似しているか否か」は、過去の製造実績の製造条件を表す情報ベクトルと、冷却される厚鋼板の製造条件を表す情報ベクトルとの間の距離関数を定義して、当該距離の大きさに基づいて判断することができる。
本発明の第1の態様では、冷却装置内での鋼板表面温度の変化を測定し、これを用いて、鋼板温度予測モデルのコアとなる熱伝達の変化、すなわち沸騰状態が変化する境界温度(以下において、「MHF点やCHF点」と言うことがある。)を逆算し、逆算したMHF点やCHF点を操業実績データベースに蓄積する。そして、操業実績データベースを活用した学習制御を行うことにより、これから冷却される厚鋼板のMHF点やCHF点を決定し、このMHF点やCHF点を用いて、厚鋼板を冷却停止温度の目標値に冷却するための、冷却装置の操業条件を決定する。このようにして決定された操業条件で冷却することにより、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することが可能になる。
また、上記本発明の第1の態様において、抽出工程で、複数の類似度評価基準を用いることにより、操業実績データベースから複数グループのデータが抽出され、抽出された複数グループのデータを用いて、沸騰変化温度算出工程で、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度が算出されることが好ましい。このような形態にすることにより、これから冷却される厚鋼板のMHF点やCHF点として適切な値が算出されやすくなるので、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御しやすくなる。
本発明の第2の態様は、厚鋼板を圧延する工程と、該圧延する工程の後に厚鋼板を冷却する工程と、を有し、該冷却する工程で、上記本発明の第1の態様にかかる厚鋼板の冷却制御方法が用いられることを特徴とする、厚鋼板の製造方法である。本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様にかかる厚鋼板の冷却制御方法を用いるので、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度が高精度に制御される。これにより、厚鋼板の機械的特性を安定化することが可能になるので、添加元素を削減して製造コストを削減することが可能な、厚鋼板の製造方法を提供することができる。
本発明の第3の態様は、圧延された厚鋼板を冷却する冷却装置の操業条件を制御する冷却制御装置であって、冷却装置を用いて冷却される厚鋼板の表面温度を、鋼板温度予測モデルを用いて予測する温度予測部と、冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を測定する温度計と、温度予測部で予測された表面温度と温度計を用いて測定された表面温度とが一致するように、鋼板温度予測モデルで用いる、沸騰状態が変化する境界温度を逆算する逆算部と、逆算部で逆算された境界温度を、該境界温度が得られた厚鋼板の製造条件のデータとともに蓄積する操業実績データベースと、これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する過去の製造条件のデータを、沸騰状態が変化する境界温度とともに操業実績データベースから抽出する抽出部と、抽出部で抽出されたデータおよび沸騰状態が変化する境界温度を用いて、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度を算出する沸騰変化温度算出部と、沸騰変化温度算出部で算出された境界温度、および、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータを、鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する冷却停止温度推定部と、冷却停止温度推定部で推定された冷却停止温度が、冷却停止時における厚鋼板の目標温度に一致するように、冷却装置の操業条件を決定する決定部と、を有する、厚鋼板の冷却制御装置である。
本発明の第3の態様にかかる厚鋼板の冷却制御装置は、上記本発明の第1の態様にかかる厚鋼板の冷却制御方法を実施することが可能である。それゆえ、本発明の第3の態様によれば、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することが可能な、厚鋼板の冷却制御装置を提供することができる。
また、上記本発明の第3の態様において、抽出部で、複数の類似度評価基準が用いられることにより、操業実績データベースから複数グループのデータが抽出され、抽出された複数グループのデータを用いて、沸騰変化温度算出部で、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度が算出されることが好ましい。このような形態にすることにより、これから冷却される厚鋼板のMHF点やCHF点として適切な値が算出されやすくなるので、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御しやすくなる。
本発明の第4の態様は、厚鋼板を圧延する圧延機と、該圧延機で圧延された厚鋼板を冷却する冷却装置と、該冷却装置の動作を制御する冷却制御装置と、を備え、冷却制御装置が、上記本発明の第3の態様にかかる厚鋼板の冷却制御装置である、厚鋼板の製造装置である。本発明の第4の態様には、本発明の第3の態様にかかる厚鋼板の冷却制御装置が備えられているので、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することができる。これにより、厚鋼板の機械的特性を安定化することが可能になるので、添加元素を削減して製造コストを削減することが可能な、厚鋼板の製造装置を提供することができる。
冷却途中および冷却停止後における温度の制御精度を高めることが可能な、厚鋼板の冷却制御方法および冷却制御装置並びに厚鋼板の製造方法および製造装置を提供することができる。
沸騰曲線を示す図である。 冷却装置内における温度計の配置例を説明する図である。 鋼板温度予測モデルで推定した鋼板温度および温度計による温度測定値の例を示す図である。 MHF点およびCHF点を説明する図である。図4(a)は、基準のMHF点およびCHF点を説明する図であり、図4(b)は、逆算後のMHF点およびCHF点を説明する図である。 本発明の厚鋼板の冷却制御方法を説明する図である。 水冷熱伝達モデルの概要を説明する図である。 本発明の厚鋼板の製造方法を説明する図である。 本発明の厚鋼板の冷却制御装置40および本発明の厚鋼板の製造装置100を説明する図である。 複数の回帰モデルを導出するための類似データ探索方法を説明する図である。 複数の回帰モデルによるアンサンブル学習を説明する図である。 MHF点およびCHF点を逆算せずに、基準となるMHF点およびCHF点を用いて予測した鋼板の表面温度(予測温度)の結果を示す図である。図11(a)は冷却装置内の位置における予測精度を説明する図であり、図11(b)は冷却装置の出側位置における予測精度を説明する図である。 逆算したMHF点およびCHF点を用いて予測した鋼板の表面温度(予測温度)の結果を示す図である。図12(a)は冷却装置内の位置における予測精度を説明する図であり、図12(b)は冷却装置の出側位置における予測精度を説明する図である。
厚鋼板の冷却工程における鋼板温度は、冷却水と接触する鋼板表面の熱流束や、鋼板内部における熱伝導を数式化した鋼板温度予測モデルで、伝熱計算を行うことにより、予測することができる。この鋼板温度予測モデルでは、例えば特許文献3に開示されているように、冷却水と鋼板表面との境界条件である熱流束が、冷却水の水量や鋼板表面温度に応じて変化し、さらに水温によって沸騰状態が変化する鋼板表面温度(MHF点やCHF点)が変化することを考慮して、伝熱計算を実施する。
図1に、沸騰曲線を示す。図1に示したMHF点やCHF点は、鋼板表面のスケール等に応じて変化する。そのため、MHF点やCHF点は、冷却工程の前工程である加熱工程や圧延工程での操業条件に依存して変化する。
そこで、本発明では、図2に示したように、冷却装置内で鋼板表面温度を測定可能な温度計を、冷却装置内に設置し、鋼板表面温度の履歴を測定する。そして、冷却装置内で測定した鋼板表面温度および冷却装置出側で測定した冷却停止温度の測定値と、鋼板温度予測モデルで推定した鋼板表面温度とが一致するように、MHF点やCHF点を逆算する。鋼板温度予測モデルで推定した鋼板表面温度および温度計による温度測定値の一例を図3に、基準のMHF点およびCHF点を図4(a)に、逆算後MHF点およびCHF点を図4(b)に、それぞれ示す。本発明では、逆算したMHF点およびCHF点を適応学習することにより、鋼板温度予測モデルの精度を向上し、高精度な冷却制御を可能とする。
本発明における適応学習について概説する。本発明では、MHF点やCHF点を逆算した結果と、その厚鋼板の製造条件とを紐付けて、操業実績データベースに蓄積しておく。厚鋼板を冷却する際の冷却装置の操業条件を決定する際には、これから冷却される厚鋼板と製造条件の類似した過去の製造条件のデータが操業実績データベースから抽出され、抽出されたデータを用いて、これから冷却される厚鋼板のMHF点およびCHF点が推定される。そして、推定されたMHF点およびCHF点を鋼板温度予測モデルに代入することにより、冷却停止時における鋼板温度が予測され、予測された鋼板温度が冷却停止時における鋼板温度の目標値になるように、冷却装置の操業条件が決定される。本発明では、このようにして決定された操業条件で厚鋼板を冷却している際に、冷却装置内に設置された温度計によって鋼板表面温度が測定され、さらに、冷却装置の出側に設置された温度計によって、冷却停止温度が測定される。これらの温度測定結果は、鋼板温度予測モデルで予測された鋼板表面温度と比較され、温度測定結果と鋼板表面温度の予測値とが一致するMHF点およびCHF点が逆算される。逆算されたMHF点およびCHF点は、これらが得られた厚鋼板の製造条件に紐付けされて、操業実績データベースに蓄積され、次材以降の厚鋼板を冷却する際の、冷却装置の操業条件を決定する際に、利用される。
このように、本発明では、製造条件が類似する過去のデータに基づいて推定されたMHF点およびCHF点を用いて鋼板温度の変化を予測する。これにより、鋼板温度の予測精度が向上するので、冷却装置の操業条件を適正に設定することが可能になり、目標通りの冷却停止温度を得ることが可能になる。
図面を参照しつつ、本発明について、さらに具体的に説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
1.厚鋼板の冷却制御方法
図5は、本発明の厚鋼板の冷却制御方法を説明する図である。図5に示したように、本発明の厚鋼板の冷却制御方法は、温度予測工程S11と、温度測定工程S12と、逆算工程S13と、データ蓄積工程S14と、抽出工程S15と、沸騰変化温度算出工程S16と、冷却停止温度推定工程S17と、決定工程S18と、冷却工程S19と、を有している。
1.1.温度予測工程S11
温度予測工程S11は、冷却装置を用いて冷却される厚鋼板の温度を、鋼板温度予測モデルを用いて予測する工程である。
厚鋼板の温度は、下記式(1)に示す板厚方向1次元熱伝導方程式により表すことができる。
厚鋼板の上表面および下表面における境界条件は、下記式(2)(3)により与える。
ここで、Tは温度[℃]、tは時間[s]、xは板厚方向の座標[m]、cは比熱[J/kg・s]、ρは密度[kg/m]、λは熱伝導率[W/m・℃]、qは水冷による熱流束[W/m]、qは対流による熱流束[W/m]、qは輻射による熱流束[W/m]を表し、uは上面を表す添字、dは下面を表す添字である。
水冷による熱流束q、および、対流による熱流束qは、それぞれ、熱伝達率を用いて以下のように書くことができる。
ここで、Tは厚鋼板の表面温度[℃]、Tは冷却水の温度[℃]、Tは雰囲気の温度[℃]であり、Hは水冷熱伝達率、Hは対流熱伝達率である。
また、輻射による熱流束qは、放射率εとステファン・ボルツマン定数σとを用いて以下にように書くことができる。
上記の式(1)を、各冷却ゾーンでの水冷条件を反映した境界条件の式(2)〜(6)の下で、有限差分法を用いて、オンラインで解くことにより、厚鋼板の制御点に対する温度を計算することができる。
ここで、水冷の熱伝達率Hは、例えば特許文献3に開示されている方法で算出する。
図6に示したモデルでは、上面ヘッダーおよび下面ヘッダー(以下において、「上下ヘッダー」という。)に挟まれた厚鋼板の部位の熱伝達率を計算する際に、1組の上下ノズル(上面ヘッダーに配置されたノズルおよび下面ヘッダーに配置されたノズル)の噴流方向を中心に厚鋼板上の領域を同心円状のセルに分割している。このような同心円状のセルに分割したモデルを用いるのは、ノズルから噴出された冷却水は同心円状に厚鋼板上に広がるためである。同心円状に分割したセルは、その分割幅が狭いほど精度の高い予測が可能になるが、計算負荷が大きくなるため、一定の幅を持ったセルに分割すれば良い。より具体的には、並列されるノズル間の距離を考慮して、各ノズルにおけるモデル同士が一部重複する形で形成されるように、モデルの最大半径(モデルで想定するセルの最大半径)を決定し、このモデルを5つ程度のセルに分割すれば良い。図6に示した例では、並列されるノズル間の距離が50mmであったため、最大半径25.7mmのモデルを形成した。ここで、各セルは、5.7mmの幅を持つ4つのリング状セルと、中心に半径2.9mmの1つの円状セルと、に分割した。
このようにして複数のセルに分割したら、セルごとに熱伝達率を算出する。熱伝達率を算出する際には、まず、各セルの水温を計算する。ノズル直下から離れるほど厚鋼板の温度の影響を受けて水温は上昇する。水温は、熱伝達計算で容易に求めることができる。
続いて、セルごとに核沸騰と膜沸騰との割合を求める。沸騰熱伝達現象は、膜沸騰の状態では熱伝達率が小さく、核沸騰の状態では熱伝達率が大きい。厚鋼板の温度が高いときは膜沸騰が主体であるが、低温になると核沸騰に遷移し、熱伝達率が急増する傾向がある。よって、この割合によって、熱伝達率が大きく異なる。CHF点とMHF点との関係は実験等で求めることができることが知られている。CHF点とMHF点との間の温度域は、図1に示したように、核沸騰と膜沸騰とが同時に起こる遷移沸騰域と呼ばれる。厚鋼板の表面温度が、CHF点以下であれば、核沸騰の割合が100%、MHF点以上であれば、膜沸騰の割合が100%である。したがって、厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域にあれば、その割合に応じて核沸騰割合(膜沸騰割合)を決める。
そして、この割合を用いてセルごとに熱伝達率を算出する。算出は核沸騰の場合の熱伝達率H、および、膜沸騰の場合の熱伝達率Hをそれぞれ計算し、その割合から各セルの熱伝達率Hを算出する。より具体的には、核沸騰、膜沸騰それぞれの場合の熱伝達率は下記式(7)、(8)で計算されるので、これらに沸騰状態の割合を加味し、式(9)により熱伝達率Hを算出する。
ここで、Nuは核沸騰ヌッセルト数、Nuは膜沸騰ヌッセルト数、λは水の熱伝導率[W/m・℃]、Lは代表長さ[m]、ΔTsatは過熱度[℃]、ΔTsubはサブクール度[℃]、Tは厚鋼板の表面温度[℃]、Tは噴流水温[℃]、Bは核沸騰割合(0≦B≦1)をそれぞれ表す。
最終的にセルごとに算出した熱伝達率Hについて平均値(平均熱伝達率)を計算し、これを上下ヘッダーに挟まれた厚鋼板の部位の熱伝達率とする。ここで、平均値の計算は単純平均でもよいが、より正確な予測をするためにセルの幅を考慮して積分した平均値を取ることが好ましい。
以上、1つのノズルのモデルに関して説明したが、すべてのノズルは同じように計算式により計算される。噴射される冷却水の水量密度が同じであれば、計算値を流用できるが、冷却水の水量密度が異なれば別途計算が必要になる。
一方、隣接する上下ヘッダー間に該当する厚鋼板の部位では、厚鋼板の板幅方向の位置における冷却水流速を加味して熱伝達率を計算する。例えば、厚鋼板の中央部を基準として幅方向にx軸を取ったと仮定し、板幅方向位置xにおける冷却水の流速νを下記式(10)に示すようなxの2次式で表したモデルを用いて計算すればよい。νはレイノルズ数Reのパラメータであるので、Reは下記式(11)のようになる。このReをヌッセルト数に反映させ、式(9)〜式(11)を用いて熱伝達率Hを計算することができる。
ここで、a、a、aは係数を表す。また、Lは代表長さ[m]、ρは冷却水密度[kg/m]、μは冷却水の粘性係数[m・s/kg]である。
以上の2つのモデルを用いることにより、熱伝達率を計算することができ、厚鋼板の温度を予測することができる。
1.2.温度測定工程S12
温度測定工程S12は、冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を、温度計を用いて測定する工程である。この工程で用いる温度計は、冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を測定可能であれば、その形態は特に限定されない。また、温度測定工程S12で表面温度を測定する、測定箇所は、冷却装置内の少なくとも1箇所、および、冷却装置の出側が含まれていれば良く、冷却装置の出側に加えて、冷却装置内の2箇所以上で、冷却されている厚鋼板の表面温度を測定しても良い。
1.3.逆算工程S13
逆算工程S13は、温度予測工程S11で予測した表面温度と、温度測定工程S12で測定した表面温度とが一致するように、鋼板温度予測モデルで用いる、沸騰状態が変化する境界温度(MHF点およびCHF点)を逆算する工程である。逆算工程S13を行う際には、MHF点およびCHF点として、一旦、ある特定の値(基準値)を与え、さらに厚鋼板の製造条件を鋼板温度予測モデルに代入することにより、鋼板の表面温度を算出する。その後、MHF点やCHF点を変更することにより、鋼板の表面温度を再計算し、再計算の結果が温度測定工程S2で測定された表面温度と一致するように、MHF点およびCHF点を変更する。逆算工程S13では、このようにして、温度予測工程S11で予測した表面温度と、温度測定工程S12で測定した表面温度とが一致するように、MHF点およびCHF点を逆算する。
1.4.データ蓄積工程S14
データ蓄積工程S14は、逆算工程S13で逆算したMHF点およびCHF点を、このMHF点およびCHF点が得られた厚鋼板の製造条件のデータとともに、操業実績データベースに蓄積する(MHF点およびCHF点をこれらが得られた厚鋼板の製造条件に紐付けて操業実績データベースに蓄積する)工程である。データ蓄積工程S14で操業実績データベースに蓄積されたデータは、次材以降の厚鋼板を冷却する際に、適宜利用される。
1.5.抽出工程S15
抽出工程S15は、これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する過去の製造条件のデータを、MHF点およびCHF点とともに、操業実績データベースから抽出する工程である。抽出工程S15は、これから冷却される厚鋼板のMHF点およびCHF点を決定するために、操業実績データベースから、これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する過去の製造条件のデータをMHF点およびCHF点とともに抽出する工程である。抽出工程S15において、これから冷却される厚鋼板の製造条件と、過去の製造条件とが類似しているか否かは、過去の製造条件を表す情報ベクトルと、これから冷却される厚鋼板の製造条件を表す情報ベクトルとの間の距離関数を定義して、当該距離関数の値の大きさに基づいて判断することができる。この距離関数は、例えば、下記式(12)のように表わすことができる。
ここで、d(X)はm次元空間の重み付きユークリッド距離、jは説明変数の番号、mは説明変数の総数、wは各説明変数に対する重み、Xijは操業実績データベースに蓄積されている過去の製造条件iの説明変数、Xnjはこれから冷却される厚鋼板の製造条件nの説明変数である。本発明において、説明変数として何を用いるかは特に限定されず、例えば、板厚、板幅、板長、冷却停止温度指示値、化学成分値、冷却水の温度、圧延工程での製造実績などを用いることができる。抽出工程S15において、製造条件の類似度は、1つの基準のみに基づいて判断しても良く、異なる複数の基準に基づいて判断しても良い。ここで、「異なる複数の基準に基づいて判断する」とは、例えば、冷却停止温度指示値の類似を重視したり、厚鋼板の化学成分値の類似を重視したりする等、複数の観点から設定した基準に基づいて判断することを言う。ただし、これから冷却される厚鋼板のMHF点やCHF点として適切な値を算出しやすくすることにより、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御しやすい形態にする観点からは、異なる複数の基準に基づいて、製造条件の類似度を判断することにより、製造条件が類似する過去の製造条件によって構成される類似データグループを複数個抽出することが好ましい。
1.6.沸騰変化温度算出工程S16
沸騰変化温度算出工程S16は、抽出工程で抽出したデータを用いて、これから冷却される厚鋼板の、MHF点およびCHF点を算出する工程である。MHF点およびCHF点は、例えば、下記式(13)、(14)のように表わすことができる。
ここで、αおよびβは係数であり、αおよびβは定数項である。沸騰変化温度算出工程S16では、まず、抽出工程S15で抽出したデータを用いて、例えばPLS回帰により、式(13)のαおよび式(14)のβを決定する。次いで、式(13)および式(14)のXnjに、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータを代入することにより、これから冷却される厚鋼板のMHF点およびCHF点を算出することができる。
1.7.冷却停止温度推定工程S17
冷却停止温度推定工程S17は、沸騰変化温度算出工程S16で算出したMHF点およびCHF点と、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータとを、鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する工程である。
1.8.決定工程S18
決定工程S18は、冷却停止温度推定工程S17で推定した冷却停止温度が、冷却停止時における厚鋼板の目標温度に一致するように、冷却装置の操業条件を決定する工程である。決定工程S18で決定される冷却装置の操業条件としては、冷却装置から厚鋼板へ向けて噴射される冷却水の水量や、冷却装置内を搬送される厚鋼板の搬送速度等を挙げることができる。
1.9.冷却工程S19
冷却工程S19は、決定工程S18で決定した操業条件で冷却装置を操業することにより、厚鋼板を冷却する工程である。冷却工程S19では、冷却後の厚鋼板の表面温度が冷却停止温度の目標値になるように、厚鋼板が冷却される。冷却工程S19で厚鋼板を冷却している際に、厚鋼板の表面温度が測定され、この測定結果を用いて算出されたMHF点およびCHF点は、次材以降の厚鋼板を冷却する際に、適宜利用される。
以上説明したように、本発明の厚鋼板の冷却制御方法では、冷却装置で冷却されている鋼板表面温度の変化を測定し、この測定結果を用いて、鋼板温度予測モデルのコアとなるMHF点およびCHF点を逆算し、逆算したMHF点およびCHF点を厚鋼板の製造条件とともに操業実績データベースに蓄積する。そして、操業実績データベースを活用した学習制御を行うことにより、これから冷却される厚鋼板のMHF点およびCHF点を決定し、決定したMHF点およびCHF点を用いて予測された冷却停止温度が冷却停止温度の目標値になるように、冷却装置の操業条件を決定して、厚鋼板を冷却する。このようにして厚鋼板を冷却することにより、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することが可能になる。したがって、本発明によれば、冷却途中および冷却停止後における温度の制御精度を高めることが可能な、厚鋼板の冷却制御方法を提供することができる。
2.厚鋼板の製造方法
図7は、本発明の厚鋼板の製造方法を説明する図である。図7に示したように、本発明の厚鋼板の製造方法は、厚鋼板を圧延する圧延工程S21と、該圧延工程S21の後に厚鋼板を冷却する冷却工程S22と、を有し、冷却工程S22で、上記本発明の厚鋼板の冷却制御方法が用いられる。上述のように、本発明の厚鋼板の冷却制御方法によれば、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度の制御精度を高めることが可能である。このような冷却工程S22を有することにより、本発明の厚鋼板の製造方法では、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度が高精度に制御される。これにより、厚鋼板の機械的特性を安定化することが可能になるので、添加元素を削減して製造コストを削減することが可能な、厚鋼板の製造方法を提供することができる。
3.厚鋼板の冷却制御装置および厚鋼板の製造装置
図8は、本発明にかかる厚鋼板の冷却制御装置を備える、本発明にかかる厚鋼板の製造装置の形態例を説明する図である。図8に示したように、本発明の厚鋼板の製造装置100は、厚鋼板を圧延する圧延機10と、圧延機10で圧延された厚鋼板を冷却する冷却装置20と、冷却装置20によって冷却される前の厚鋼板の温度を測定する温度計35と、冷却装置20の操業条件を制御する冷却制御装置40と、を有し、冷却制御装置40は、冷却装置20を用いて冷却されている厚鋼板の温度を測定する温度計31、32、33と、冷却装置20を用いて冷却された後の厚鋼板の温度を測定する温度計34と、を有している。
冷却制御装置40は、さらに、冷却装置20を用いて冷却される厚鋼板の温度を、鋼板温度予測モデルを用いて予測する温度予測部41と、温度計31〜34と、温度予測部41で予測された表面温度と温度計31〜34を用いて測定された表面温度とが一致するように、鋼板温度予測モデルで用いるMHF点およびCHF点を逆算する逆算部42と、逆算部42で逆算されたMHF点およびCHF点を、このMHF点およびCHF点が得られた厚鋼板の製造条件のデータとともに蓄積する操業実績データベース43と、を有している。冷却制御装置40は、さらに、これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する過去の製造条件のデータを、MHF点およびCHF点とともに操業実績データベース43から抽出する抽出部44と、抽出部44で抽出されたデータとMHF点およびCHF点とを用いて、これから冷却される厚鋼板のMHF点およびCHF点を算出する沸騰変化温度算出部45と、沸騰変化温度算出部45で算出されたMHF点およびCHF点と、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータとを、鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する冷却停止温度推定部46と、冷却停止温度推定部46で推定された冷却停止温度が、冷却停止時における厚鋼板の目標温度に一致するように、冷却装置20の操業条件を決定する決定部47と、を有している。冷却装置20は、決定部47で決定された操業条件で操業される。このように構成される冷却制御装置40によれば、上記本発明の厚鋼板の冷却制御方法を実施することが可能である。したがって、このような形態にすることにより、本発明によれば、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することが可能な、厚鋼板の冷却制御装置40を提供することができる。
このように、本発明の厚鋼板の製造装置100には、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することが可能な、厚鋼板の冷却制御装置40が備えられているので、冷却途中および冷却停止後における厚鋼板の温度を高精度に制御することができる。これにより、厚鋼板の機械的特性を安定化することが可能になるので、本発明によれば、添加元素を削減して製造コストを削減することが可能な、厚鋼板の製造装置100を提供することができる。
本発明に関する上記説明では、温度予測部41、逆算部42、抽出部44、沸騰変化温度算出部45、冷却停止温度推定部46、および、決定部47を別々に示したが、本発明の厚鋼板の冷却制御装置は当該形態に限定されず、これらすべての機能を兼ね備えた1つの制御部が備えられる形態とすることも可能である。
実施例を参照しつつ、本発明についてさらに説明を続ける。
図8に示した厚鋼板の製造装置100に備えられている冷却制御装置40を用いて決定された操業条件で冷却装置20を操業することにより、厚鋼板を冷却した。
本発明とは異なる従来技術では、冷却装置20の出側に設置された温度計34による温度測定値と温度予測値とが合致するように、鋼板温度予測モデルの誤差やパラメータを推定し、次材以降の冷却制御に用いていた。これに対し、本発明では、温度計34に加え、温度計31、32、33により冷却装置20内で冷却途中の鋼板温度を測定する。これにより、冷却装置20の出側のみならず、冷却装置20による冷却途中の温度履歴も含めて、温度測定値と温度予測値とが合致するように、MHF点およびCHF点を逆算することが可能になる。
MHF点(膜沸騰と遷移沸騰との境界)およびCHF点(遷移沸騰と核沸騰との境界)の逆算方法について、以下に説明する。今回の実施例では、MHF点(T_MHF)を下記式(15)または式(16)で表わし、CHF点(T_CHF)を下記式(17)または式(18)で表わした。下記式(15)〜(18)において、Tは冷却水の温度である。
上記式(15)〜(18)にて、基準となるMHF点、CHF点を計算するパラメータをa_MHF=900、b_MHF=200、c_MHF=87.5、a_CHF=500、b_CHF=150、c_CHF=87.5と仮定して、a_MHF=α×900、b_MHF=α×200、c_MHF=α×87.5、a_CHF=β×500、b_CHF=β×150、c_CHF=β×87.5を代入することにより得られるMHF点およびCHF点と、冷却水量の実績値および鋼板搬送速度の実績値とを鋼板温度予測モデルに代入することにより、温度計31〜34の位置における鋼板温度の予測値Tcal,iを算出した。そして、温度計31〜34による温度測定値Tact,iとTcal,iとが概ね一致するように、すなわち、下記式(19)の評価関数Jを最小にするように、パラメータα、βを逆算した。ここで、基準となるMHF点、CHF点を計算するパラメータは、複数の厚鋼板を冷却した実績を用いて、導出したMHF点、CHF点と、そのときの鋼板表面温度、水温との関係を求めて、決定することが望ましい。
ここで、i=1は温度計31の位置、i=2は温度計32の位置、i=3は温度計33の位置、i=4は温度計34の位置であることを意味する。また、wTiは、各温度測定位置における誤差に関する重みである。本実施例では、冷却装置出側の重みを大きくし、wT1=0.1、wT2=0.2、wT3=0.4、wT4=1.0とした。
このようにして得られたMHF点およびCHF点の逆算値を、これらの逆算値が得られた厚鋼板の製造条件とともに操業実績データベースに保存し、次材以降の温度予測時に適宜用いた。
本実施例では、厚鋼板10000本分の製造条件を、逆算したMHF点およびCHF点に紐付けて保存している、操業実績データベースを用いた。そして、これから冷却しようとする厚鋼板の製造条件、具体的には冷却停止温度や圧延寸法、化学成分等が類似しているデータをそれぞれ100本分抽出し、抽出した100本のMHF点およびCHF点と、厚鋼板の製造条件との関係を、回帰モデルで表わした。
回帰モデルを導出するための類似データ探索方法の例を図9に示す。本実施例では、上記式(12)で表わされる評価関数d(X)の値が最小となるデータから100番目に小さい値となるデータまでを抽出して、回帰モデルを導出する。
回帰モデルで導出したMHF点およびCHF点の信頼性を確保するため、本実施例では、アンサンブル学習の考え方を適用した。
具体的には、前記類似データの探索にて、異なる7つの評価関数d(X)を用いることにより、7グループのデータを抽出して、回帰モデルを7つ求める。
そして、7つの回帰モデルのそれぞれに、これから冷却しようとする厚鋼板の製造条件を入力して、これから冷却しようとする厚鋼板のMHF点およびCHF点を7つ導出する。
ここで、本実施例では、データの類似度を説明する変数として、表1に示すもの(No.1〜16)を用いた。表1に示した重みは、上記式(12)のwに相当し、表1の重み1〜重み7が、7つの回帰モデルを作成する際に用いた重みである。
本実施例では、このようにして、7つの回帰モデルから導出したMHF点およびCHF点を加重平均することにより、これから冷却しようとする厚鋼板のMHF点およびCHF点を特定した。これから冷却しようとする厚鋼板のMHF点およびCHF点の特定方法を図10に示す。図10に示したように、抽出したグループ毎にMHF点およびCHF点を導出する。そして、得られた7つのMHF点の最大値および最小値を除く5つの平均値を求めることにより、これから冷却しようとする厚鋼板のMHF点を特定し、得られた7つのCHF点の最大値および最小値を除く5つの平均値を求めることにより、これから冷却しようとする厚鋼板のCHF点を特定した。
基準となるMHF点およびCHF点を用いて予測した鋼板の表面温度(予測温度)の結果を図11に、本発明の方法により導出したMHF点およびCHF点を用いて予測した鋼板の表面温度(予測温度)の結果を図12に、それぞれ示す。図11(a)は冷却装置内の位置における予測精度を説明する図、図11(b)は冷却装置の出側位置における予測精度を説明する図であり、図12(a)は冷却装置内の位置における予測精度を説明する図、図12(b)は冷却装置の出側位置における予測精度を説明する図である。図11および図12において、「N」は冷却した厚鋼板の本数であり、「Ave」は予測誤差の平均値であり、「σ」は標準偏差である。
図11(a)に示したように、本発明とは異なる方法で冷却装置内の鋼板の表面温度を予測すると、予測誤差の平均値は54.4℃であった。これに対し、図12(a)に示したように、本発明により冷却装置内の鋼板の表面温度を予測すると、予測誤差の平均値は31.7℃であった。両者を比較すると、本発明によれば、冷却装置内の鋼板の表面温度の予測誤差を、従来の予測誤差の60%程度に低減できている。この結果から、本発明によれば、冷却途中における温度の制御精度を高めることが可能であることが分かった。
一方、図11(b)に示したように、本発明とは異なる方法で冷却装置出側の鋼板の表面温度(冷却停止温度)を予測すると、予測誤差の平均値は13.3℃であった。これに対し、図12(b)に示したように、本発明により冷却停止温度を予測すると、予測誤差の平均値は−8.8℃であった。両者を比較すると、本発明によれば、冷却停止温度の予測誤差を、従来の予測誤差の2/3程度に低減できている。この結果から、本発明によれば、冷却停止温度の制御精度を高めることが可能であることが分かった。
10…圧延機
20…冷却装置
31、32、33、34、35…温度計
40…冷却制御装置
41…温度予測部
42…逆算部
43…操業実績データベース
44…抽出部
45…沸騰変化温度算出部
46…冷却停止温度推定部
47…決定部

Claims (6)

  1. 冷却装置の水冷ゾーンを通過させる厚鋼板の冷却を制御する方法であって、
    前記冷却装置を用いて冷却される厚鋼板の表面温度を予測する、温度予測工程と、
    前記冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を測定する、温度測定工程と、
    前記温度予測工程で予測された表面温度と、前記温度測定工程で測定された表面温度とが一致するように、前記温度予測工程で用いる鋼板温度予測モデルにおける、沸騰状態が
    変化する境界温度を逆算する、逆算工程と、
    前記逆算工程で逆算された、沸騰状態が変化する前記境界温度を、該温度が得られた前記厚鋼板の製造条件のデータとともに、操業実績データベースに蓄積する、データ蓄積工程と、
    これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する製造条件のデータを、沸騰状態が変化する境界温度とともに、前記操業実績データベースから抽出する、抽出工程と、
    前記抽出工程で抽出されたデータおよび沸騰状態が変化する境界温度を用いて、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度を算出する、沸騰変化温度算出工程と、
    前記沸騰変化温度算出工程で算出された温度、および、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータを、前記鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する、冷却停止温度推定工程と、
    前記冷却停止温度推定工程で推定された前記冷却停止温度が、厚鋼板の冷却後の目標温度に一致するように、前記冷却装置の操業条件を決定する、決定工程と、
    を有する、厚鋼板の冷却制御方法。
  2. 前記抽出工程で、複数の類似度評価基準を用いることにより、前記操業実績データベースから複数グループのデータが抽出され、
    抽出された複数グループのデータを用いて、前記沸騰変化温度算出工程で、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度が算出される、請求項1に記載の厚鋼板の冷却制御方法。
  3. 厚鋼板を圧延する工程と、
    前記圧延する工程の後に前記厚鋼板を冷却する工程と、を有し、
    前記冷却する工程で、請求項1又は2に記載の厚鋼板の冷却制御方法が用いられることを特徴とする、厚鋼板の製造方法。
  4. 圧延された厚鋼板を冷却する冷却装置の操業条件を制御する冷却制御装置であって、
    前記冷却装置を用いて冷却される厚鋼板の表面温度を予測する、温度予測部と、
    前記冷却装置を用いて冷却されている厚鋼板の表面温度を測定する、温度計と、
    前記温度予測部で予測された表面温度と、前記温度計を用いて測定された表面温度とが一致するように、前記温度予測部で用いる鋼板温度予測モデルにおける、沸騰状態が変化する境界温度を逆算する、逆算部と、
    前記逆算部で逆算された、沸騰状態が変化する前記境界温度を、該温度が得られた前記厚鋼板の製造条件のデータとともに蓄積する、操業実績データベースと、
    これから冷却される厚鋼板と製造条件が類似する製造条件のデータを、沸騰状態が変化する境界温度とともに、前記操業実績データベースから抽出する、抽出部と、
    前記抽出部で抽出されたデータおよび沸騰状態が変化する境界温度を用いて、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度を算出する、沸騰変化温度算出部と、
    前記沸騰変化温度算出部で算出された温度、および、これから冷却される厚鋼板の製造条件のデータを、鋼板温度予測モデルへと代入することにより、これから冷却される厚鋼板の冷却停止温度を推定する、冷却停止温度推定部と、
    前記冷却停止温度推定部で推定された前記冷却停止温度が、厚鋼板の冷却後の目標温度に一致するように、前記冷却装置の操業条件を決定する、決定部と、
    を有する、厚鋼板の冷却制御装置。
  5. 前記抽出部で、複数の類似度評価基準が用いられることにより、前記操業実績データベースから複数グループのデータが抽出され、
    抽出された複数グループのデータを用いて、前記沸騰変化温度算出部で、これから冷却される厚鋼板の、沸騰状態が変化する境界温度が算出される、請求項4に記載の厚鋼板の冷却制御装置。
  6. 厚鋼板を圧延する圧延機と、該圧延機で圧延された厚鋼板を冷却する冷却装置と、該冷却装置の動作を制御する冷却制御装置と、を備え、
    前記冷却制御装置が、請求項4又は5に記載の厚鋼板の冷却制御装置である、厚鋼板の製造装置。
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