以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して能動型防振装置10の構造について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における能動型防振装置10の軸方向断面図であり、図2は能動型防振装置10の弾性体21を拡大して図示する拡大断面図である。なお、図1では、エンジンを支持する前の状態(即ち、エンジンの重量が負荷される前の状態)を図示している。
能動型防振装置10は、自動車のエンジン(振動体、図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレーム(図示せず)へ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付具11と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付具12と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体15と、第2取付具12に取付けられて防振基体15との間に液室17を形成すると共にゴム状弾性体から構成されるダイヤフラム18と、ダイヤフラム18に連結される駆動軸42を有すると共にダイヤフラム18を挟んで液室17と反対側に配設されるアクチュエータ40と、アクチュエータ40の駆動軸42により軸方向へ加振変位されるピストン部材30と、ピストン部材30が挿通される挿通孔20を有する仕切体19とを備えている。
第1取付具11は、アルミニウム合金などの金属材料から略円柱状に形成され、その上端面には、内周面にめねじが形成された孔部が凹設されている。第2取付具12は、防振基体15が加硫成形される筒状金具13と、その筒状金具13の下方にかしめ加工により固着される底金具14とを備えている。筒状金具13は上広がりの開口を有する筒状に、底金具14は底部を有するカップ状に、それぞれ鉄鋼材料などから形成されている。底金具14の底部には、取付けボルトが突設されている。
防振基体15は、ゴム状弾性体から円錐台形状に形成され、第1取付具11の下面側と筒状金具13の上端開口部との間に加硫接着されている。防振基体15の下端部には、筒状金具13の内周面を覆うゴム膜16が連なっており、このゴム膜16に仕切体19の外周縁が密着されることで、仕切体19とゴム膜16との間にオリフィス22が形成される。
ダイヤフラム18は、ゴム状弾性体から蛇腹状に屈曲したゴム膜として形成されており、上面視円環状の取付板24に外周が加硫接着され、軸状の軸状部材44の外周面に内周が加硫接着されている。ダイヤフラム18は、取付板24が、底金具14により筒状金具13と共にかしめ加工により狭持固定されることで、第2取付具12に取着される。その結果、ダイヤフラム18の上面側と防振基体15の下面側との間に液室17が形成される。液室17には、エチレングリコール等の不凍性の液体(図示せず)が封入される。
仕切体19は、合成樹脂材料から円板状に形成される部材である。仕切体19が防振基体15とダイヤフラム18との間に配設されることで、液室17が防振基体15側の第1液室17aとダイヤフラム18側の第2液室17bとの2室に仕切られる。仕切体19は、軸心O方向に沿って貫通する挿通孔20が中央に形成されている。挿通孔20にピストン部材30が挿通され、ピストン部材30の先端側が第1液室17a及び第2液室17bを仕切る区画壁(壁面)の一部を形成する。仕切体19は、ダイヤフラム18の取付板24と防振基体15の膜部16に形成された段部との間で挟圧保持される。
仕切体19は、外周側に、径方向外向きに開かれた断面コの字状をなすオリフィス形成部23が形成され、オリフィス形成部23の内周側(軸心O側)に、ダイヤフラム18及びピストン部材30を収納するための、下方に開かれた空間が形成されている。オリフィス形成部23は、筒状金具13の内周を覆うゴム膜16に密着することで、断面略矩形状のオリフィス22を形成する。
オリフィス形成部23は、オリフィス形成部23の上側の壁部に凹欠形成される切欠き部(図示せず)と、オリフィス形成部23の胴部に開口形成される開口部(図示せず)と、オリフィス形成部23の上下の壁部および胴部を接続する縦壁(図示せず)とを備えている。オリフィス22は、縦壁により周方向に分断され、切欠き部を介して第1液室17aに連通されると共に、開口部を介して第2液室17bに連通される。即ち、本実施の形態では、切欠き部から開口部まで約半周の流路長を持つオリフィス流路として、オリフィス22が形成される。
仕切体19は、挿通孔20の周囲にゴム状の弾性体21が設けられている。図2に示すように弾性体21は、挿通孔20の内周を構成する仕切体19の縁部19aに設けられている。本実施の形態では、弾性体21は、挿通孔20の外周に位置する縁部19aの全周に亘って縁部19aを覆うゴム膜状に設けられている。弾性体21は、ピストン部材30の外周と挿通孔20の内周との間に配置される中央部21aと、縁部19aの第2液室17b側に配置される第1緩衝部21bと、縁部19aの第1液室17a側に配置される第2緩衝部21cとを備え、それらが一体に成形されると共に仕切体19の縁部19aの全周に亘って加硫接着されている。
中央部21aは、挿通孔20の内周とピストン部材30の外周との隙間を狭めるための部位である。本実施の形態では、中央部21aはピストン部材30の外周に内周が接触できる厚さ(図2左右方向寸法)に設定されている。
第1緩衝部21b及び第2緩衝部21cは、ピストン部材30が軸方向に大きく変位して、ピストン部材30に設けられた第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32(後述する)と仕切体19の縁部19aとが干渉したときの衝撃を緩衝するための部位である。本実施の形態では、第1緩衝部21b及び第2緩衝部21cは、軸心O方向から見た大きさが、第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32の径方向外方への張出長さより大きく設定されている。その結果、第1緩衝部21b及び第2緩衝部21cのゴム量を確保できるので、衝撃を緩和する効果を確保できる。
ピストン部材30は、金属材料から略円柱状に形成される部材(剛体の部材)であり、軸状部材44の先端に螺着され固定されている。ピストン部材30及び軸状部材44は、第2取付具12の軸心Oに沿って(本実施の形態では同軸に)縦姿勢に配設されている。ピストン部材30は、駆動軸42を介してアクチュエータ40の駆動力が伝達されることで、液室17内で軸心O方向に加振変位される。これにより第1液室17aの容積を変化させ、液圧制御が行われる。なお、軸状部材44は、駆動軸42の一部をなす部材であり、可動子43(後述する)と共に駆動軸42を構成する。
ピストン部材30は、径方向外方へ向けて張り出す第1ストッパ部31が、後端側(第2液室17b側に配置される部位)の外周面にフランジ状に設けられている。第1ストッパ部31は、軸心O方向から見た大きさが、挿通孔20より大きく設定されている。これにより、防振基体15へ近接する方向へのピストン部材30の変位が所定量以上に達した場合には、第1ストッパ部31が仕切体19の下面に当接することで、ピストン部材30の変位が規制される。このとき、第1ストッパ部31と仕切体19の下面との間に第1緩衝部21bが介在する。
ピストン部材30は、径方向外方へ向けて張り出す第2ストッパ部32が、先端側(第1液室17a側に配置される部位)の端面に設けられている。第2ストッパ部32は、金属製の板状の部材(剛体の部材)であり、ねじ33によりピストン部材30の先端に固定されている。第2ストッパ部32は、軸心O方向から見た大きさが、挿通孔20より大きく設定されている。これにより、アクチュエータ40へ近接する方向へのピストン部材30の変位が所定量以上に達した場合には、第2ストッパ部32が仕切体19の上面に当接することで、ピストン部材30の変位が規制される。このとき、第2ストッパ部32と仕切体19の上面との間に第2緩衝部21cが介在する。
アクチュエータ40は、鉄心可動形の電磁石式のリニアアクチュエータであり、底金具14により形成される収納空間に外部から密閉された状態で収納保持されている。アクチュエータ40は、第2取付具12に固定された固定子41と、固定子41に対して往復動可能に支持されると共にピストン部材30に連結される可動子43とを備える。可動子43は、第2取付具12の軸心Oに沿って(本実施の形態では同軸に)縦姿勢に配設された軸状の部材であり、その先端部が、ピストン部材30に取り付けられた軸状部材44に同軸に連結され、可動子43と軸状部材44とが一体となってピストン部材30を軸心O方向に沿って上下に加振変位(往復動)させる。
駆動軸42は、可動子43と軸状部材44とボルトとを備えて構成される。可動子43は、軸心Oに沿って貫通孔を有する筒状に形成される一方、軸状部材44は、基端側に開口し内周面にめねじが形成されためねじ部を備え、可動子43の基端側から挿通されたボルトの先端を軸状部材44のめねじ部に螺合することで、可動子43と軸状部材44とが一体に連結され、駆動軸42が構成される。
可動子43は、外周面に、電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の金属板を積層してなる可動子鉄心としての磁性材部45が固設される。磁性材部45は、軸心O方向に所定間隔を隔てつつ複数個(本実施の形態では2個)が設けられている。可動子43は、上下一対の弾性支持材である板バネ46を介して、固定子41に対して、軸心O方向に往復動可能に、かつ、軸心O方向位置および軸心Oの直交方向位置を位置決めした状態に支持されている。
固定子41は、可動子43の外周を同軸に取り囲む環状をなし、その中空部において可動子43を軸心O方向に往復動可能に支持しており、取付板25によって底金具14内に吊り下げ状態に保持されている。取付板25は、筒状金具13及びダイヤフラム18の取付板24と共に底金具14によりかしめ固定されている。
固定子41は、電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の環状の金属板を積層してなるヨーク47と、ヨーク47の中央部において磁性材部45を挟んで相対向するように両側より径方向内方に向かって突出する一対の磁極部48を備える。
磁性材部45に対向する固定子41の磁極部48の先端(即ち、磁極部48の内端)には、可動子43の往復動方向(軸心O方向)に沿って隣り合った状態に並設されつつ可動子43に対向する上下一対の円弧板状をなす永久磁石50,51が、それらの磁極が互いにNS交互の異極をなすように、可動子43の往復移動方向と直交する方向に磁極を並べて、かつ、互いの磁極(N極とS極)の並びが逆となる状態に配設されている。本実施の形態では、上下一対の永久磁石50,51が、磁性材部45に対応させて、軸心O方向に2組が並設されている。
固定子41の一対の磁極部48には、それぞれその周りにコイル52が、可動子43の往復動方向(軸心O方向)と直交する方向の軸心周りに巻回され、一対の永久磁石50,51を通る磁束が発生可能に構成されている。本実施の形態では、一対の永久磁石50,51が、磁性材部45を挟んで対向する固定子41の一対の磁極部48の内端部にそれぞれ設けられており、各永久磁石50,51は、可動子43の往復動方向と直交する方向で可動子43を挟んで対向すると共に、この対向する磁極が互いに異極をなすように磁極の並びを左右(図1左右)で逆にして配設されている。
アクチュエータ40のコイル52が消磁状態にあるとき、板バネ46により固定子41に対して軸心O方向へ変位可能に支持された駆動軸42は、ピストン部材30及び駆動軸42の重量と板バネ46の弾性力とが釣り合う位置に停止する。この状態からコイル52に正方向の励磁電流を流すと、コイル52に発生する起磁力の向きと上側の永久磁石50の起磁力の向きとが同一となって、起磁力が強まる。一方、下側の永久磁石51の起磁力の向きとコイル52の起磁力の向きが反対になって、両者の起磁力が相殺されて弱まる。その結果、磁性材部45に上向きの力が作用して、板バネ46を弾性変形させながら可動子43が上昇する。可動子43に結合されたピストン部材30が上方へ移動するので、第1液室17aの容積が減少する。
一方、コイル52に逆方向の励磁電流を流すと、上記とは反対に、磁性材部45に下向きの力が作用して、板バネ46を弾性変形させながら可動子43が下降する。可動子43に結合されたピストン部材30が下方へ移動するので、第1液室17aの容積が増加する。このように、コイル52の励磁電流の向きを正逆に交互に切り替えることで、駆動軸42及びピストン部材30を上下に往復動させて第1液室17aの容積を変化させることができる。
なお、アクチュエータ40のコイル52が消磁状態にあるとき、第1取付具11に荷重が入力され防振基体15が弾性変形して第1液室17aの内圧が上昇すると、ピストン部材30及び駆動軸42は、アクチュエータ40側へ押される(下降する)。第1液室17aの内圧の上昇によってピストン部材30に生じる推力(第1液室17aから押し出される力)とその推力によって生じるピストン部材30の変位量との比であるばね定数と、ピストン部材30及び駆動軸42の質量とにより、ピストン部材30及び駆動軸42の固有振動数は決定される。このばね定数は、主に板バネ46によって決定されるが、ピストン部材30を挿通孔20において仕切体19(弾性体21)と干渉させることにより調整できる。
ピストン部材30及び駆動軸42の固有振動数は、アクチュエータ40を駆動して防振機能を発揮させる振動の周波数帯域内に設定されている。本実施の形態では、固有振動数はアクチュエータ40を駆動して防振機能を発揮させる振動の周波数帯域より狭い30Hz〜100Hzの範囲内に設定されている。
以上のように構成された能動型防振装置10(図1参照)の製造方法について説明する。第1取付具11と第2取付具12(筒状金具13)とが防振基体15により連結された第1成形体と、ダイヤフラム18が加硫成形されると共に取付板24及び軸状部材44が加硫接着された第2成形体とを、ゴム加硫金型によりそれぞれ加硫成形する。また、別のゴム加硫金型により、仕切体19の挿通孔20の周囲に弾性体21を加硫成形する。弾性体21は、上下方向に2つ割りされたゴム加硫金型を仕切体19の上面および下面にそれぞれ配置することで成形できるので、金型の構造を簡素化できる。
ゴム加硫金型による加硫成形の後は、まず、仕切体19に第2成形体を組み付けて中間組立体を組み立てる。具体的には、仕切体19と第2成形体とを液体中に沈め、仕切体19の挿通孔20へピストン部材30を挿入した後、ピストン部材30を軸状部材44に固定する。次に、ピストン部材30の先端に第2ストッパ部32をねじ33で固定する。
次いで、第1成形体も液体中に沈め、第1成形体の下方開口から中間組立体を仕切体19側から筒状金具13内へ挿入し、第1組立体を液体中で組み立てる。その後、第1組立体を第1取付具11が下方となる姿勢で液体外へ取り出し、この姿勢を維持しつつ、アクチュエータ40をダイヤフラム18の下面側から重ね、軸状部材44と可動子43とをボルトにより締結固定する。そして、取付板25及びアクチュエータ40に底金具14を被せ、筒状金具13の下方開口に底金具14をかしめ加工により固着する。これにより能動型防振装置10の製造が完了する。
なお、アクチュエータ40を第2取付具12に固定するときには、取付板25に軸直角方向の位置ずれが生じないようにして、駆動軸42の軸心Oと挿通孔20との芯ずれを抑える必要がある。挿通孔20に弾性体21を設けていない場合には、駆動軸42の軸心Oと挿通孔20との芯ずれが大きいと、ピストン部材30(剛体)が挿通孔20の内周(剛体)に強く擦れ、アクチュエータ40の駆動力でピストン部材30が円滑に振動できなくなるからである。駆動軸42の軸心Oと挿通孔20との芯ずれを抑えるため、能動型防振装置10の組立作業、特にアクチュエータ40を第2取付具12に固定するときの駆動軸42の芯出し作業が煩雑である。
これに対し本実施の形態によれば、挿通孔20の内周を構成する仕切体19の縁部19aにゴム状の弾性体21が設けられる。アクチュエータ40を第2取付具12に固定するときに、駆動軸42の芯ずれが生じてピストン部材30が弾性体21の中央部21aに当たると、ピストン部材30は弾性体21(特に中央部21a)を弾性変形させる。ピストン部材30は弾性体21(中央部21a)に接触した状態だが、中央部21aが変形してピストン部材30の外周面に倣うので、アクチュエータ40の駆動力によりピストン部材30を振動させることができる。そのため、能動型防振装置10の組立作業、特にアクチュエータ40を第2取付具12に固定するときの駆動軸42の芯出し作業の精度を下げることができる。よって、能動型防振装置10の組立作業を簡素化できる。
また、弾性体21(中央部21a)は挿通孔20の内周とピストン部材30の外周との隙間を狭めるので、ピストン部材30と挿通孔20との隙間からの液漏れを抑制できる。よって、ピストン部材30の加振変位による発生力を確保できる。その結果、能動型防振装置10の減衰性能を確保できる。
次いで能動型防振装置10の動作について説明する。比較的大振幅の低周波振動が入力される場合には、能動型防振装置10を制御する制御装置(図示せず)によってアクチュエータ40の動作が停止される。この状態では、仕切体19に形成されたオリフィス22を介して第1液室17aと第2液室17bとの間を液体が流通する。能動型防振装置10はオリフィス22の液体流動効果によって振動を減衰できる。
比較的小振幅の高周波振幅が入力される場合には、制御装置(図示せず)によってアクチュエータ40のコイル52に正弦波交流電圧や矩形波交流電圧などを印加し、可動子43(即ち駆動軸42)を上下に往復動変位させる。これにより、駆動軸42に連結されたピストン部材30が入力振動に対して逆位相で加振変位する。第1液室17aの液圧を制御できるので、振動を減衰できる。
なお、ピストン部材30は金属製(剛体の部材)なので、加振変位時に受ける液圧によって弾性変形するゴム製のピストン部材と比較して、ピストン部材30の変形によるアクチュエータ40の駆動力の伝達ロスを低減して発生力を確保できる。第1液室17aの液圧制御の正確性を向上できるので、減衰性能を向上できる。
剛体のピストン部材30は、材質を金属材料や硬質の合成樹脂材料に変更することで、質量を比較的容易に調整できる(質量を変えられる)。よって、アクチュエータ40のコイル52が消磁状態にあるときに第1液室17aの内圧の上昇によってピストン部材30に生じる推力(第1液室17aから押し出される力)とその推力によって生じるピストン部材30の変位量との比であるばね定数と、ピストン部材30及び駆動軸42の質量とにより決定されるピストン部材30及び駆動軸42の固有振動数を容易に調整できる。
その結果、アクチュエータ40は、防振機能を発揮させる振動の周波数帯域内に設定された固有振動数に略等しい振動を駆動軸42に与えることができるので、アクチュエータ40の出力が小さくても共振によって強い振れを生じさせ、発生力を大きくできる。小出力のアクチュエータ40を採用しても発生力を確保できるので、アクチュエータ40を小型化(特に低背化)できる。また、ピストン部材30及び駆動軸42を振動させ易くできるので、コイル52に流す電流を小さくできる。よって、アクチュエータ40の消費電力を削減できる。
能動型防振装置10は、第1ストッパ部31と第2ストッパ部32とが仕切体19を挟みつつピストン部材30から張り出し形成されている。そのため、第1取付具11へ近接する方向へのピストン部材30の変位が所定量以上となった場合には、第1ストッパ部31が第1緩衝部21bに当接し、仕切体19により変位が規制される。また、第1取付具11から離間する方向へのピストン部材30の変位が所定量以上となった場合には、第2ストッパ部32が第2緩衝部21cに当接し、仕切体19により変位が規制される。即ち、第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32の範囲に駆動軸42の変位を規制できる。
第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32により、アクチュエータ40が制御不能となり暴走した場合にダイヤフラム18等の損傷を防止し、大振幅の振動が入力された場合にアクチュエータ40の損傷を防止できる。能動型防振装置10は、液室17を仕切るための仕切体19を利用してピストン部材30の変位を規制できるので、新たな部材の追加を抑制し、部品点数の増加や製品コストの増加を抑制できる。また、第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32が機能するときには、第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32と仕切体19との間にそれぞれ介在する第1緩衝部21b及び第2緩衝部21cにより、異音の発生を抑制できる。
なお、弾性体21は仕切体19の縁部19aにゴム膜状に設けられているので、塊状の弾性体を設ける場合と比較して、弾性体21を構成するゴム量を少なくできる。そのため、加硫成形のときの弾性体21の熱収縮量を小さくできる。その結果、弾性体21(中央部21a)の内周とピストン部材30の外周とのクリアランスの調整を容易にできる。
また、弾性体21の体積を小さくできるので、弾性体21の熱膨張による寸法変化を小さくできる。その結果、クリアランスが調整された弾性体21(中央部21a)の内周とピストン部材30の外周との隙間を確保でき、アクチュエータ40の駆動力によるピストン部材30の円滑な振動を持続できる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1ストッパ部31及び第2ストッパ部32が、それぞれ駆動軸42の軸方向への変位を規制する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、ストッパ部108が、駆動軸42の軸方向への変位を規制する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施の形態における能動型防振装置100の軸方向断面図である。なお、図3では、エンジンを支持する前の状態(即ち、エンジンの重量が負荷される前の状態)を図示している。
図3に示すように能動型防振装置100は、第1仕切体101と、第1仕切体101の下方に重ね合される第2仕切体104とを備え、第1仕切体101の中央に形成された挿通孔102にピストン部材110が挿通されると共に、ピストン部材110から張り出して形成されるストッパ部108が、第1仕切体101と第2仕切体104との間に配置される。
第1仕切体101及び第2仕切体104は、軸心O周りに対称な円板形状の合成樹脂製の部材であり、それらの外径は同一に設定されている。第1仕切体101は、円筒状の筒部103が、軸心Oに沿って下面に連設されている。筒部103の下端に第2仕切体104が重ね合され、第1仕切体101及び第2仕切体104の外周が筒状金具13の内周を覆うゴム膜16に密着することで、断面略矩形状のオリフィス105が形成される。
第1仕切体101は、中央に挿通孔102が形成されている。挿通孔102は、軸心Oに同軸の孔であり、ピストン部材110が挿通される。仕切体101は、挿通孔102の内周を構成する仕切体101の縁部にゴム膜状の弾性体21が設けられている。
第2仕切体104は、中央に組立孔106が形成されている。組立孔106は、挿通孔102と同じ大きさに設定された軸心Oに同軸の孔である。組立孔106は、軸心Oを挟んだ両側(即ち位相が180°ずれた位置)に、軸方向視が略矩形状の逃げ凹部(図示せず)が径方向外方へ向けて延設される。逃げ凹部は、中間組立体を組み立てるときに、ストッパ部108を通過させるための凹部であり、ストッパ部108より少し大きめに形成される。
ダイヤフラム107は、防振基体15との間に液室17を形成するゴム膜状の部材であり、取付板24及び軸状部材44に加硫接着されている。ダイヤフラム107は自由長を確保するため、取付板24と軸状部材44との間で断面視蛇腹状に屈曲されている。
ストッパ部108は、ゴム状弾性体からダイヤフラム107と一体に成形される軸方向視が略矩形状の部位であり、軸状部材44の外周面から軸心Oを挟んだ両側(即ち位相が180°ずれた位置)に径方向外方へ向けて張り出して形成される。ストッパ部108は、挿通孔102の内径および組立孔106の内径より、張り出し寸法が大きく設定されている。
ピストン部材110は、金属材料から略円柱状に形成される部材(剛体の部材)であり、軸状部材44の先端に螺着されると共に、ねじ111により固定されている。防振基体15へ近接する方向へのピストン部材110の変位が所定量以上に達した場合には、ストッパ部108が第1仕切体101の下面に当接することで、ピストン部材110の変位が規制される。このとき、ストッパ部108と第1仕切体101の下面との間に第1緩衝部21bが介在するので、異音の発生を抑制できる。また、アクチュエータ40へ近接する方向へのピストン部材110の変位が所定量以上に達した場合には、ストッパ部108が第2仕切体104の上面に当接することで、ピストン部材110の変位が規制される。ストッパ部108はゴム状弾性体から構成されているので、ストッパ部108が第2仕切体104に衝突するときの衝撃を緩衝し、異音の発生を抑制できる。
以上のように構成された能動型防振装置100の製造方法について説明する。第1取付具11と第2取付具12(筒状金具13)とが防振基体15により連結された第1成形体と、ダイヤフラム107が加硫成形されると共に取付板24及び軸状部材44が加硫接着された第2成形体とを、ゴム加硫金型によりそれぞれ加硫成形する。また、別のゴム加硫金型により、第1仕切体101の挿通孔102の周囲に弾性体21を加硫成形する。弾性体21は、上下方向に2つ割りされたゴム加硫金型を第1仕切体101の上面および下面にそれぞれ配置することで成形できるので、金型の構造を簡素化できる。
ゴム加硫金型による加硫成形の後は、第2成形体の軸状部材44にピストン部材110を取り付けた後、第1仕切体101及び第2仕切体104に第2成形体を組み付けて中間組立体を組み立てる。具体的には、第1仕切体101、第2仕切体104及び第2成形体を液体中に沈め、第2仕切体104の組立孔106に、逃げ凹部(図示せず)とストッパ部108との位相を一致させた状態で、ピストン部材110及びストッパ部108を挿入する。次いで、ストッパ部108を第2仕切体104に対して軸心Oを中心に90°回転させた後、ピストン部材110を第1仕切体101の挿通孔102に挿通して、第2仕切体104に第1仕切体101を重ね合わせる。これにより、ストッパ部108が、第1仕切体101と第2仕切体104との間に配置された状態となる。
次いで、第1成形体も液体中に沈め、第1成形体の下方開口から中間組立体を第1仕切体101側から筒状金具13内へ挿入し、第1組立体を液体中で組み立てる。その後、第1組立体を第1取付具11が下方となる姿勢で液体外へ取り出し、この姿勢を維持しつつ、アクチュエータ40をダイヤフラム107の下面側から重ね、軸状部材44と可動子43とをボルトにより締結固定する。そして、取付板25及びアクチュエータ40に底金具14を被せ、筒状金具13の下方開口に底金具14をかしめ加工により固着する。これにより能動型防振装置100の製造が完了する。
能動型防振装置100は、挿通孔102の内周を構成する仕切体101の縁部にゴム状の弾性体21が設けられる。アクチュエータ40を第2取付具12に固定するときに、駆動軸42の芯ずれが生じてピストン部材110が弾性体21の中央部21aに当たると、ピストン部材110は弾性体21(特に中央部21a)を弾性変形させる。ピストン部材110は弾性体21(中央部21a)に接触した状態だが、中央部21aが変形してピストン部材110の外周面に倣うので、アクチュエータ40の駆動力によりピストン部材110を振動させることができる。そのため、能動型防振装置100の組立作業、特にアクチュエータ40を第2取付具12に固定するときの駆動軸42の芯出し作業の精度を下げることができる。よって、能動型防振装置100の組立作業を簡素化できる。
また、弾性体21(中央部21a)は挿通孔102の内周とピストン部材110の外周との隙間を狭めるので、ピストン部材110と挿通孔102との隙間からの液漏れを抑制できる。よって、ピストン部材110の加振変位による発生力を確保できる。その結果、能動型防振装置100の減衰性能を確保できる。
また、第1仕切体101と第2仕切体104との間にストッパ部108が配置された状態となるので、第1仕切体101及び第2仕切体104とストッパ部108との干渉により、ピストン部材110の過大な変位を規制できる。その結果、ダイヤフラム107やアクチュエータ40の損傷を防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態では、仕切体19及び第1仕切体101によって液室17が仕切られ、第1液室17a及び第2液室17bが形成され、第1液室17aと第2液室17bとの間がオリフィス22,105によって接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、要求される防振性能に応じて、第1液室17aと第2液室17bとの間を複数のオリフィスで接続することは当然可能である。また、第1液室17a及び第2液室17bに加え、さらに1乃至複数の副液室を有する構成とすることは当然可能である。この場合には、第1液室17a、第2液室17b及び副液室の内の2つの液室間を、オリフィス22,105以外の他の1乃至複数のオリフィスによって連通させることができる。また、オリフィス22,105によって抑制される振動の周波数より高い周波数の振動を抑制する弾性膜を液室17内に設けることは当然可能である。
上記各実施の形態では、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして能動型防振装置10,100を用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ボディマウント、デフマウント等、任意の振動体の振動を抑制する防振装置に能動型防振装置10,100を適用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、防振基体15の下方にダイヤフラム18,107が配置されることで、第1液室17aの下方に第2液室17bが設けられる能動型防振装置10,100について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、防振基体15及びダイヤフラム18,107は任意の位置に配置できる。例えば、防振基体の上方にダイヤフラムを配置して、第1液室の上方に第2液室を設けることは当然可能である。この場合には、防振基体の外周に、第1液室と第2液室とを接続するオリフィスが形成される。
上記各実施の形態では、金属材料によりピストン部材30,110が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、液圧による弾性変形を実質的に生じない硬質の合成樹脂材料などによりピストン部材30,110を形成することは当然可能である。
上記各実施の形態では、アクチュエータ40に交流電流(正弦波信号や矩形波信号など)を通電してコイル52を励磁し、板バネ46で弾性支持された駆動軸42を往復動させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。コイルスプリングによって駆動軸が軸心O方向の一方へ付勢されているアクチュエータの場合には、コイルに直流電流を断続的に通電してコイルの励磁・消磁を断続的に行うと、コイルの励磁によりコイルスプリングを圧縮して駆動軸を変位させ、コイルの消磁によりコイルスプリングの復元力により駆動軸を変位させることができる。このようなアクチュエータが採用された能動型防振装置においても、本実施の形態と同様の作用・効果を実現できる。