JP6447050B2 - 蓄電デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
[1−1]正極活物質
本発明の実施形態による蓄電デバイスにおける正極活物質としては、酸化状態において式(1)で示されるニトロキシルカチオン部分構造(N−オキソ−アンモニウムカチオン部分構造)をとり、還元状態において式(2)で示されるニトロキシルラジカル部分構造をとるニトロキシル化合物を用いる。このニトロキシル化合物は、これらの2つの状態間で電子の授受を行う反応式(A)で示される酸化還元反応を行うことができる。本実施形態による蓄電デバイスは、この酸化還元反応を正極の電極反応として用いる。
本実施形態による蓄電デバイスにおける負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な材料(リチウムイオンを充電時に挿入し、放電時に脱離できる材料)を用いることができる。このような負極活物質としては、金属酸化物、グラファイト等の炭素材料等を用いることができる。これらの材料の形状としては特に限定されるものではなく、例えば、薄膜状のもの、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のものが挙げられる。また、これらの負極活物質は、単独、もしくは組み合わせて使用できる。
正極および負極を形成する際に、インピーダンスを低下させる目的で、導電性付与剤を添加してもよい。導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。
正極および負極を形成する際に、結着剤を用いることもできる。結着剤を用いることにより、活物質同士、活物質と導電性付与剤との間、活物質や導電付与剤と集電体との間の結びつきを強めることができる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、部分カルボキシ化セルロース、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
正極活物質又は負極活物質を含む電極材料は、集電体上に設けることができる。集電体としては、ニッケルやアルミニウム、銅、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、シート、平板等を用いることができる。
図1に本実施形態によるラミネート型蓄電デバイスの一例の斜視図を示し、図2にその構造を説明するための断面図を示す。これらの図に示されるように、蓄電デバイス108は、正極101、この正極に対向する負極102、正極と負極との間に挟まれたセパレータ105を含む積層構造を有し、この積層構造は外装用フィルム106で覆われ、外装用フィルム106の外部へ、電極リード104が引き出されている。この蓄電デバイス内へは電解液が注入されている。以下に、蓄電デバイスの構成部材と製造方法についてさらに詳細に説明する。
正極101は、正極活物質を含み、必要に応じてさらに導電性付与剤、結着剤を含み、一方の集電体103上に形成されている。
負極102は、負極活物質を含み、必要に応じてさらに導電性付与剤、結着剤を含み、他方の集電体103上に形成されている。
正極101と負極102との間には、これらを絶縁分離する絶縁性の多孔質セパレータ105が設けられる。セパレータ105としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質樹脂フィルム、セルロース膜、不繊布等を用いることができる。
電解液は、正極と負極との間で荷電担体の輸送を行うものであり、正極101、負極102及びセパレータ105に含浸している。電解液としては、電解質塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を用いることができる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒を用いることができる。必要に応じてさらに被膜形成用添加剤を電解液に添加することができる。
外装用フィルム106としてはアルミラミネートフィルム等を用いることができる。外装用フィルム以外の外装体としては、金属ケースや樹脂ケースが挙げられる。蓄電デバイスの外形としては、円筒型、角型、コイン型、シート型が挙げられる。
負極102の表面(正極に対向する活物質層の表面)に金属リチウム107をプレスにより接着させた。このとき、金属リチウムは、負極の表面に対向する面の面積Aが負極表面の面積Bの5〜20%(A/B)の範囲にあるものが好ましく、金属リチウムフィルムとして設けることができる。金属リチウムの面積Aが大きすぎるとプレドープ処理後に金属リチウムが残存するおそれがあり、一方、面積Aが小さすぎると、負極中にリチウムイオンが十分にプレドープされず、プレドープによる電池特性の改善効果が十分に得られないおそれがある。金属リチウムの厚みは、十分なプレドープを行う観点から、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましく、金属リチウムの残留防止や電極積層体構造に悪影響を与えない観点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
蓄電デバイスの組み立て完了からできるだけ速やかに充電を行う。蓄電デバイスの組立完了から好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内、さらに好ましくは1時間以内に充電する。これは蓄電デバイスの組立完了後、早期に充電することにより負極表面にSEI(solid electrolyte interface)被膜を形成させ、負極−電解液界面での電解液の分解を抑制し、電池特性の劣化を防ぐためである。その際、充電により蓄電デバイスの電圧を3.0〜4.0Vの状態にすることが好ましく、3.4〜3.7Vの状態にすることがより好ましい。電圧が低すぎると、SEI被膜の形成が不十分になり、後の保持期間中に負極−電解液界面で電解液の分解が生じるおそれがある。また、電圧が高すぎる場合も電解液の分解が生じるおそれがある。
本実施例で用いたニトロキシル高分子であるポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシルメタクリレート(PTMA)は、特開2009−238612号公報に記載の方法に従って合成した。すなわち、下記記載に従って合成した。
グラファイト粉末(平均粒径6μm)13.5g、ポリフッ化ビニリデン1.35g、カーボンブラック0.15g、及びN−メチルピロリドン30gを混合し、ホモジェナイザーで撹拌し、均一なスラリーを調整した。
正極活物質としてPTMA2.1g、導電付与剤として炭素材料0.63g、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)0.24g及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)0.03g、並びに水15mlを混合し、ホモジェナイザーで撹拌し、均一なスラリーを調整した。
100μm厚の金属リチウムを直径φ8.5mm(金属リチウムの負極に対向する面の面積は負極表面の面積の10%に相当)で円形に切り抜き、負極の表面(グラファイト面側)にプレスにより接着させた。
実施例1と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立完了から1時間以内に、10mAで20分充電した。充電後の電圧は3.50Vであった。その後、2週間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
実施例1と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立完了から1時間以内に、10mAで30分充電した。充電後の電圧は3.55Vであった。その後、2週間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
100μm厚の金属リチウムをφ7.0mm(金属リチウムの負極に対向する面の面積は負極表面の面積の8%に相当)で円形に切り抜き、負極の表面(グラファイト面側)にプレスにより接着させた。
実施例1と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立完了後に充電は行なわずに(電圧は2.41Vであった)、2週間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
実施例1と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立から1時間以内に、10mAで30分充電した。充電後の電圧は3.55Vであった。その後、1日間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
100μm厚の金属リチウムをφ14mm(金属リチウムの負極に対向する面の面積は負極表面の面積の30%に相当)で円形に切り抜き、負極の表面(グラファイト面側)にプレスにより接着させたこと以外は実施例1と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立から1時間以内に、10mAで30分充電した。充電後の電圧は3.57Vであった。その後、1日間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
比較例3と同様にして蓄電デバイスを組み立てた。蓄電デバイスの組立から1時間以内に、10mAで30分充電した。充電後の電圧は3.51Vであった。その後、二週間保持(放置)することによりプレドープ処理を完了した。
実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3、4の蓄電デバイスを分解し、蓄電デバイス内に金属リチウムが残存しているかを確認した。表1に結果を示す。実施例1、2、3、4、比較例1では金属リチウムの残存はなかったが、比較例2、3、4では金属リチウムの残存を確認した。
実施例1、2、3、4及び比較例1の蓄電デバイスを、20℃にて、0.5mAの定電流で電圧が4Vになるまで充電した後、20℃にて、10mAで1秒間放電した。その後、20℃にて、0.5mAの定電流で電圧が4Vになるまで充電した後、20℃にて20mAで1秒間放電した。この充電・放電の繰り返しを、放電電流を30、40、・・・、1000mAと変えながら行った。放電終止電圧と測定電流を掛け合わせることで出力を求めた。各放電電流時の出力の中で最も値が大きいものを最大出力とした。
102 負極
103 集電体
104 電極リード
105 セパレータ
106 外装用フィルム
107 金属リチウム
108 ラミネート型蓄電デバイス
Claims (11)
- 酸化状態において下記式(1)で示されるニトロキシルカチオン部分構造をとり、還元状態において下記式(2)で示されるニトロキシルラジカル部分構造をとるニトロキシル化合物を含む正極と、リチウムイオンを可逆的に挿入・脱離可能な活物質材料を含む負極と、電解液を有し、前記酸化状態と前記還元状態との間で電子の授受を行う下記反応式(A)で示される反応を正極の電極反応として用いる蓄電デバイスの製造方法であって、
前記負極に金属リチウムを接着させ、該負極を用いて蓄電デバイスを組み立て、該蓄電デバイスの電圧が3.0〜4.0Vとなるように充電し、充電後に3日以上4週間以下保持することにより前記負極にリチウムイオンをプレドープする工程を有し、
前記金属リチウムの前記負極表面に対向する面の面積Aの、該負極表面の面積Bに対する比率(A/B)が5〜20%の範囲にあり、該金属リチウムの厚みが20μm〜300μmの範囲にあることを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
- 前記金属リチウムの前記負極表面に対向する面の面積Aの、該負極表面の面積Bに対する比率(A/B)は、5〜10%の範囲にある、請求項1記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記金属リチウムの厚みが20μm〜100μmの範囲にある、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記金属リチウムの厚みが20μm〜100μmの範囲にあり、前記金属リチウムの前記負極表面に対向する面の面積Aの、該負極表面の面積Bに対する比率(A/B)が、5〜10%の範囲にある、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記充電の後に1週間以上保持する、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記充電の後に1週間以上保持する、請求項2から4のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記充電の後に3週間以下保持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記充電において、蓄電デバイスの電圧が3.4〜3.7Vの範囲にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記蓄電デバイスの組み立てを完了してから12時間以内に前記の充電を行う、請求項1から8のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
- 前記ニトロキシル化合物は、酸化状態において一般式(Ia)で示される環状ニトロキシル構造を側鎖に含むポリマーである、請求項1から9のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは5〜7員環を形成する2価の基を表す。但し、Xがポリマーの側鎖の一部を構成することにより、式(Ia)で示される環状ニトロキシル構造がポリマーの一部となっている。) - 前記電解液は、リチウム塩と非プロトン性溶媒と被膜形成用添加剤を含む電解液であり、被膜形成用添加剤の含有量が0.01重量%〜10%重量%の範囲内にある、請求項1から10のいずれか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
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