以下、本発明について図面を用いて説明する。本発明における電子写真感光体の表面層への有機フィラーの添加は、有機フィラーの粒子径による上記表面層の表面の凹凸の形成と有機フィラーの材料が持つファンデルワールス力との点から、トナーに対する上記表面層の付着力を下げ、よって、電子写真プロセスにおいて電子写真感光体のクリーニング性を向上させるという効果を期待できる。しかし、これら有機粒子(有機フィラー)は、その表面が処理されておらず、例えば硬化性樹脂からなる電子写真感光体の表面層においては硬化に関与することができない。特にPTFE粒子のような有機粒子では、上記表面層への馴染み性が低く、ブレードとの擦過によって有機粒子が上記表面層から脱離する可能性がある。このように、表面が未処理状態の有機粒子は、上記表面層への添加によって、電子写真感光体のクリーニング性を高めることはできるが、電子写真感光体の耐摩耗性を高めることは難しい。また、カブリ耐性の低下を引き起こすこともある。本発明では、表面が金属酸化物と有機化合物とによって順に処理された有機粒子を用いることによって、有機粒子が持つクリーニング性を維持しつつ、上記表面層の耐摩耗性を高め、且つ、カブリ耐性に強い電子写真感光体を提供できる。
なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[電子写真感光体の構成]
図1は、本発明の一実施形態の電子写真感光体の模式断面図である。電子写真感光体100は、導電性支持体101と、導電性支持体101の上に順に設けられた感光層103及び表面層106とを備える。電子写真感光体100は、導電性支持体101と感光層103との間に中間層102をさらに備えることが好ましい。また、感光層103は、中間層102の上に設けられた電荷発生層104と、電荷発生層104の上に設けられた電荷輸送層105とを有することが好ましい。以下では、表面層106を示した後に、表面層106以外の電子写真感光体100の構成を示す。
<表面層の構成>
図2(a)には、表面処理された有機粒子(後述)を模式的に示し、図2(b)には、第1有機化合物の化学式を示す。
表面層106は、樹脂から構成され、直径が100nm以上1500nm以下である有機粒子201を含む。有機粒子201の表面202の少なくとも一部には、第1金属酸化物からなる無機膜203が設けられている。無機膜203は、無機膜203の表面204に結合される第1無機側反応基207aと樹脂(表面層106を構成する樹脂)に結合される第1有機側反応基207bとを含む第1有機化合物207に由来する成分により、表面層106を構成する樹脂に結合されている。
表面層106は、直径が100nm以上1500nm以下である有機粒子201を含む。これにより、電子写真感光体100のクリーニング性を高めることができる。本明細書では、「電子写真感光体のクリーニング性」とは、電子写真感光体100の表面(例えば表面層106)からのトナーの除去され易さを意味する。
有機粒子201の表面の少なくとも一部に設けられた無機膜203が、第1有機化合物207に由来する成分により、表面層106を構成する樹脂に結合されている。これにより、表面層106を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、表面層106を構成する樹脂と有機粒子201との馴染み性を高めることができる。また、表面層106を構成する樹脂として硬化性樹脂(熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂とを含む)を用いた場合には、有機粒子201が硬化反応に寄与することとなる。よって、表面層106の強度を高めることができる。したがって、表面層106とブレードとが接触しても、表面層106からの有機粒子201の離脱を防止できる。つまり、表面層106の耐摩耗性を高めることができる。
また、有機粒子201の表面の少なくとも一部に設けられた無機膜203が第1有機化合物207に由来する成分により樹脂(表面層106を構成する樹脂)に結合されているので、有機粒子201が表面層106から露出することを防止できる。これにより、有機粒子201がトナーに接触することを防止できる。よって、表面層106とトナーの穂立ちとの擦過を防止できるので、電子写真感光体100の表面電位の低下を防止できる。したがって、カブリ耐性を高めることができる。
なお、有機粒子201の表面202には、第1有機化合物207との反応点が存在しない。そのため、第1有機化合物207を有機粒子201の表面202に結合させることは難しい。しかし、本実施形態では、有機粒子201の表面202の少なくとも一部には無機膜203が設けられている。ここで、無機膜203は第1金属酸化物からなるので、無機膜203の表面204にはヒドロキシル基(−OH基)が存在することとなる。このヒドロキシル基が第1無機側反応基207aとの反応点として機能するので、無機膜203を介して第1有機化合物207を有機粒子201に結合できる。
X線光電子分光法により第1金属酸化物の材料を確認でき、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて第1有機化合物207の材料を確認できる。そのため、X線光電子分光法とガスクロマトグラフィー質量分析法とを組み合わせることにより、有機粒子201の表面の少なくとも一部に設けられた無機膜203が第1有機化合物207に由来する成分により表面層106を構成する樹脂に結合されているか否かを確認できる。
このような表面層106の厚さは、好ましくは0.2μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上6μm以下である。以下では、表面層106に含まれる材料を順に示す。
(表面層を構成する樹脂)
表面層106を構成する樹脂としては、電子写真感光体の表面層を構成する樹脂として従来公知の樹脂を使用できる。表面層106を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂であっても良く、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂との混合であっても良いが、硬化性樹脂であることが好ましい。
硬化性樹脂は、硬化性化合物の硬化(例えば熱硬化又は光硬化など)により得られる成分を含み、かかる成分からなることが好ましい。「硬化性化合物」とは、上記硬化によりポリマー化されるモノマー又はオリゴマーを意味し、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。「ラジカル重合性化合物」とは、熱照射、電磁波照射又は電子線照射などによりラジカル重合反応が起こり、その結果、ポリマー化される化合物を意味する。そのため、硬化性化合物がラジカル重合性化合物である場合には、硬化性樹脂は、繰り返し単位として硬化性化合物を含むこととなる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性反応基(上記ラジカル重合反応に寄与する官能基)として、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、アクリロイル基同士、メタクリロイル基同士、又は、アクリロイル基とメタクリロイル基とがラジカル重合されて、ポリマー化される。このようなラジカル重合性化合物としては、例えば、下記化学式(1)〜(15)で表される化合物を使用できる。なお、下記化学式(1)〜(15)において、Rは、下記化学式(16)で表されるアクリロイル基を表し、R’は下記化学式(17)で表されるメタクリロイル基を表す。赤外分光法にしたがって赤外線吸収スペクトルを測定することにより、表面層を構成する樹脂の材料を確認できる。
(有機粒子)
有機粒子201の直径は、200nm以上1500nm以下であることが好ましく、500nm以上1000nm以下であることがより好ましい。これにより、電子写真感光体100のクリーニング性をさらに高めることができる。「有機粒子201の直径」とは、有機粒子201の粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50を意味し、例えば動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて求められる。
有機粒子201の材料としては、電子写真感光体のクリーニング性を高めるために電子写真感光体の表面層に添加される有機粒子の材料として従来公知の材料を使用できる。有機粒子201は、PTFE粒子、メラミン−ホルムアルデヒド粒子、又は、スチレン−アクリル粒子であることが好ましいが、メラミン−ホルムアルデヒド粒子であることがより好ましい。有機粒子201がメラミン−ホルムアルデヒド粒子であれば、メラミン−ホルムアルデヒド粒子が有する正帯電性により電子写真感光体100のクリーニング性をさらに高めることができる。また、有機粒子201がメラミン−ホルムアルデヒド粒子であっても、カブリ耐性を高めることができる。
詳細には、従来の電子写真感光体では、表面層は、表面処理された有機粒子を含んでいない。そのため、有機粒子と表面層を構成する樹脂との親和性が低く、よって、有機粒子が電子写真感光体の表面層から露出することがある。有機粒子としてメラミン−ホルムアルデヒド粒子を用いた場合、かかる有機粒子は正帯電性を有することとなる。一方、トナーは電子写真感光体で負に帯電する。そのため、メラミン−ホルムアルデヒド粒子が表面層から露出すると、メラミン−ホルムアルデヒド粒子とトナーの穂立ちとの間に静電的相互作用が発生し、その結果、メラミン−ホルムアルデヒド粒子とトナーの穂立ちとの擦過が起こり易くなる。これにより、電子写真感光体の表面電位が低下し易くなるので、カブリ耐性が低下し易くなる。
しかし、本実施形態では、有機粒子201と表面層106を構成する樹脂とが結合されているので、表面層106からの有機粒子201の露出を防止できる。これにより、有機粒子201としてメラミン−ホルムアルデヒド粒子を用いた場合であっても、有機粒子201とトナーの穂立ちとの間に静電的相互作用が発生することを防止できるので、有機粒子201とトナーの穂立ちとの擦過を防止できる。よって、電子写真感光体100の表面電位の低下を防止できるので、カブリ耐性を高めることができる。以上より、本実施形態では、有機粒子201がメラミン−ホルムアルデヒド粒子である場合に顕著となるカブリ耐性の低下を防止できる。
「メラミン−ホルムアルデヒド粒子」とは、メラミン−ホルムアルデヒドからなる粒子を意味する。「メラミン−ホルムアルデヒド」とは、ホルムアルデヒドがメラミンに付加された後に縮合重合されて得られた化合物(例えばメラミン樹脂)を意味し、メラミン構造を有する化合物を意味する。「メラミン構造」とは、メラミンの六員環に結合するアミノ基(−NH2)に含まれる1つ以上の水素原子が他の置換基に置換されたもの、又は、上記アミノ基に含まれる1つ以上の水素原子が脱離されたものを意味する。「メラミン−ホルムアルデヒド」とは、分子の一部分にメラミン構造を有していても良いし、繰り返し単位としてメラミン構造を有していても良い。前者の場合、メラミン−ホルムアルデヒド1分子に含まれるメラミン構造の個数は特に限定されない。後者の場合、メラミン−ホルムアルデヒドにおけるメラミン構造の重合度は特に限定されない。
「スチレン−アクリル粒子」とは、スチレン−アクリルからなる粒子を意味する。「スチレン−アクリル」とは、スチレンとアクリルとのラジカル重合により得られた化合物を意味する。この化合物におけるスチレン及びアクリルの各重合度は特に限定されない。ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて有機粒子201の材料を調べることができる。
表面層106を構成する樹脂が硬化性樹脂である場合には、有機粒子201は、硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下含まれることが好ましく、10質量部以上30質量部以下含まれることがより好ましい。表面層106を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、有機粒子201は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下含まれることが好ましく、10質量部以上30質量部以下含まれることがより好ましい。これにより、電子写真感光体100のクリーニング性をさらに高めることができる。ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて有機粒子201の含有量を調べることができる。
(無機膜)
無機膜203は、有機粒子201の表面202の少なくとも一部に設けられている。「無機膜203が有機粒子201の表面202の少なくとも一部に設けられている」とは、有機粒子201の表面202における無機膜203の被覆率が50%以上であることを意味する。この被覆率が50%以上であれば、無機膜203の表面204において第1有機化合物207との反応点を確保できる。
第1金属酸化物の材料は特に限定されない。例えば、第1金属酸化物としては、比重が5.0以下である金属酸化物を使用することが好ましく、比重が2.0以下である金属酸化物を使用することがより好ましい。第1金属酸化物の比重が5.0以下であれば、無機膜203が有機粒子201の表面202の少なくとも一部に設けられて構成された有機粒子(「無機膜203で被覆された有機粒子205」と記す)の質量が大きくなり過ぎることを防止できる。これにより、表面層106を形成するときに用いる塗布液(表面層形成用液体)において、無機膜203で被覆された有機粒子205を安定な状態で存在させることができ、よって、無機膜203で被覆された有機粒子205の凝集体の形成を防止できる。したがって、電子写真感光体100のクリーニング性の悪化を引き起こす突起が表面層106の上面に形成されることを防止できる。例えば、第1金属酸化物は、SiO2又はTiO2であることが好ましい。
また、第1金属酸化物がSiO2又はTiO2であれば、無機膜203の表面204にはヒドロキシル基が存在することとなる。この点からも、第1金属酸化物は、SiO2又はTiO2であることが好ましい。X線光電子分光法により第1金属酸化物の材料を確認できる。
第1金属酸化物は、有機粒子201に対して、1質量%以上50質量%以下含まれることが好ましい。第1金属酸化物が有機粒子201に対して1質量%以上含まれていれば、無機膜203の表面204において第1有機化合物207との反応点を確保し易くなる。第1金属酸化物が有機粒子201に対して50質量%以下含まれていれば、無機膜203で被覆された有機粒子205の質量が大きくなり過ぎることを防止できる。これにより、電子写真感光体100のクリーニング性の悪化を引き起こす突起が表面層106の上面に形成されることをさらに防止できる(上述)。より好ましくは、第1金属酸化物は有機粒子201に対して5質量%以上30質量%以下含まれる。熱重量測定/示差熱分析によって重量減少量を計測することにより、第1金属酸化物の含有量(質量%)を求めることができる。
(第1有機化合物)
第1有機化合物207は、無機膜203の表面に結合される第1無機側反応基207aと、表面層106を構成する樹脂に結合される第1有機側反応基207bとを含む。第1有機化合物207の一例としては、第1無機側反応基207aと第1有機側反応基207bとを含むシランカップリング剤が挙げられる(図2(b))。ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて第1有機化合物207の材料を確認できる。
ここで、図2(a)及び図2(b)では、R2は、炭化水素基を表し、好ましくはメチル基を表す。nは、1以上の整数を表し、好ましくは3である。「AC/MAC」とはAC又はMACを意味し、「AC」とは上記化学式(16)で表されるアクリロイル基を意味し、「MAC」は上記化学式(17)で表されるメタクリロイル基を意味する。
図2(b)に示す第1有機化合物207は、第1無機側反応基207aとして3個のアルコキシ基(−OR2)を含んでいる。第1無機側反応基207aは、無機膜203の表面204に存在するヒドロキシル基と反応(例えば脱水縮合反応)可能な官能基であれば、アルコキシ基に限定されない。また、第1有機化合物207に含まれる第1無機側反応基207aの個数は3個に限定されない。
図2(b)に示す第1有機化合物207は、第1有機側反応基207bとして1個のアクリロイル基又は1個のメタクリロイル基を含んでいる。第1有機側反応基207bは、硬化性化合物に含まれるラジカル重合性反応基と反応(例えばラジカル重合反応)可能な官能基であれば、アクリロイル基又はメタクリロイル基に限定されない。また、第1有機化合物207に含まれる第1有機側反応基207bの個数は1個に限定されない。
第1無機側反応基207aと上記ヒドロキシル基との反応は脱水縮合反応であるので、この反応により、無機膜203の表面204から上記ヒドロキシル基が脱離し、アルコキシ基(第1無機側反応基207aの一例)から炭化水素基(図2(b)のR2)が脱離する(図2(a))。一方、第1有機側反応基207bと上記ラジカル重合性反応基との反応はラジカル重合反応であるので、この反応による官能基の脱離は起こらない(図2(a))。そのため、「第1有機化合物207に由来する成分」とは、第1無機側反応基207aに含まれる電子供与性を示す官能基(例えば図2(b)のR2)が第1有機化合物207から外れたものを意味する。上記脱水縮合反応の前後では、有機粒子201の材料、有機粒子201の形状(例えば有機粒子201の直径)、第1金属酸化物の組成及び無機膜203の形状は変わらない。上記ラジカル重合反応の前後においても同様である。
第1有機化合物207が第1無機側反応基207aと第1有機側反応基207bとを含むシランカップリング剤であれば、第1無機側反応基207aと上記ヒドロキシル基との反応時における立体障害を小さく抑えることができるので、その反応が起こり易くなる。また、第1有機側反応基207bと上記ラジカル重合性反応基との反応時における立体障害を小さく抑えることができるので、その反応が起こり易くなる。
第1有機化合物207は、有機粒子201に対して、1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。第1有機化合物207が有機粒子201に対して1質量%以上含まれていれば、第1有機化合物207に由来する成分により有機粒子201と表面層106を構成する樹脂とが結合し易くなる。第1有機化合物207が有機粒子201に対して20質量%以下含まれていれば、第1有機化合物207が無機膜203の表面204に結合されることなく表面層106に存在することを防止できる。より好ましくは、第1有機化合物207は有機粒子201に対して5質量%以上10質量%以下含まれる。ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて第1有機化合物207の含有量(質量%)を求めることができる。
(表面処理された有機粒子)
「表面処理された有機粒子210」とは、有機粒子201と、有機粒子201の表面202の少なくとも一部に設けられた無機膜203と、無機膜203の表面204に結合された第1有機化合物207に由来する成分とを有する構造体を意味する。第1有機化合物207として例えば図2(b)に示すシランカップリング剤を用いた場合には、「表面処理された有機粒子210」をシランカップリング剤が結合された有機粒子に換言できる。
表面層106を構成する樹脂が硬化性樹脂である場合には、表面処理された有機粒子210は、硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して5質量部以上50質量部以下含まれることが好ましい。表面処理された有機粒子210が硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して5質量部以上含まれていれば、表面層106の耐摩耗性をさらに高めることができ、カブリ耐性をさらに高めることができ、電子写真感光体100のクリーニング性をさらに高めることができる。一方、表面処理された有機粒子210が硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して50質量部以下含まれていれば、トナーに対する表面層106の付着力を低下させることができる。より好ましくは、表面処理された有機粒子210は、硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して10質量部以上30質量部以下含まれている。
表面層106を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、表面処理された有機粒子210は、熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上50質量部以下含まれることが好ましい。表面処理された有機粒子210が熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上含まれていれば、表面層106の耐摩耗性をさらに高めることができ、カブリ耐性をさらに高めることができ、電子写真感光体100のクリーニング性をさらに高めることができる。一方、表面処理された有機粒子210が熱可塑性樹脂100質量部に対して50質量部以下含まれていれば、トナーに対する表面層106の付着力を低下させることができる。より好ましくは、表面処理された有機粒子210は熱可塑性樹脂100質量部に対して10質量部以上30質量部以下含まれている。X線光電子分光法により窒素原子量を計測することにより、表面処理された有機粒子210の含有量を調べることができる。
(無機粒子)
表面層106は、第2金属酸化物からなる無機粒子をさらに含むことが好ましい。これにより、表面層106に電荷輸送性を付与できる。
無機粒子は、直径が5nm以上300nm以下であることが好ましい。無機粒子の直径が5nm以上300nm以下であれば、表面層106の導電性と表面層106の硬度とを高めることができる。無機粒子の直径は、好ましくは10nm以上150nm以下であり、より好ましくは20nm以上100nm以下である。「無機粒子の直径」とは、無機粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50を意味し、有機粒子201の直径の測定方法と同様の方法で測定される。
無機粒子を構成する第2金属酸化物の材料は、特に限定されないが、SnO2又はTiO2であることが好ましい。これにより、無機粒子の表面にはヒドロキシル基が存在することとなるので、無機粒子の表面において第2有機化合物(後述)との反応点を確保できる。X線光電子分光法により第2金属酸化物の材料を確認できる。
表面層106を構成する樹脂が硬化性樹脂である場合には、無機粒子は、硬化性樹脂(モノマー)100質量部に対して30質量部以上200質量部以下含まれることが好ましく、50質量部以上100質量部以下含まれることがより好ましい。表面層106を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、無機粒子は、熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部以上200質量部以下含まれることが好ましく、50質量部以上100質量部以下含まれることがより好ましい。これにより、さらなる電荷輸送性を表面層106に付与できる。熱重量測定/示差熱分析によって重量減少量を計測することにより、無機粒子の含有量を調べることができる。
このような無機粒子は、無機粒子の表面に結合される第2無機側反応基と表面層106を構成する樹脂に結合される第2有機側反応基とを含む第2有機化合物に由来する成分により、表面層106を構成する樹脂に結合されていることが好ましい。図3(a)には、表面処理された無機粒子(後述)を模式的に示し、図3(b)には、第2有機化合物の化学式を示す。
(第2有機化合物)
第2有機化合物307については、第1有機化合物207と同様のことが言える。具体的には、第2有機化合物307の一例としては、第2無機側反応基307aと第2有機側反応基307bとを含むシランカップリング剤が挙げられる(図3(b))。なお、第1有機化合物207と第2有機化合物307とは、同一の組成を有しても良いし、互いに異なる組成を有しても良い。ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて第2有機化合物307の材料を確認できる。
ここで、図3(a)及び図3(b)では、R3は、炭化水素基を表し、好ましくはメチル基を表す。nは、1以上の整数を表し、好ましくは3である。「AC/MAC」とはAC又はMACを意味し、「AC」とは上記化学式(16)で表されるアクリロイル基を意味し、「MAC」は上記化学式(17)で表されるメタクリロイル基を意味する。
図3(b)に示す第2有機化合物307は、第2無機側反応基307aとして3個のアルコキシ基(−OR3)を含んでいる。第2無機側反応基307aは、無機粒子303の表面304に存在するヒドロキシル基と反応(例えば脱水縮合反応)可能な官能基であれば、アルコキシ基に限定されない。また、第2有機化合物307に含まれる第2無機側反応基307aの個数は3個に限定されない。
図3(b)に示す第2有機化合物307は、第2有機側反応基307bとして1個のアクリロイル基又は1個のメタクリロイル基を含んでいる。第2有機側反応基307bは、硬化性化合物に含まれるラジカル重合性反応基と反応(例えばラジカル重合反応)可能な官能基であれば、アクリロイル基又はメタクリロイル基に限定されない。また、第2有機化合物307に含まれる第2有機側反応基307bの個数は1個に限定されない。
第2無機側反応基307aと上記ヒドロキシル基との反応は脱水縮合反応であるので、この反応により、無機粒子303の表面304から上記ヒドロキシル基が脱離し、アルコキシ基(第2無機側反応基307aの一例)から炭化水素基(図3(b)のR3)が脱離する(図3(a))。一方、第2有機側反応基307bと上記ラジカル重合性反応基との反応はラジカル重合反応であるので、この反応による官能基の脱離は起こらない(図3(a))。そのため、「第2有機化合物307に由来する成分」とは、第2無機側反応基307aに含まれる電子供与性を示す官能基(例えば図3(b)のR3)が第2有機化合物307から外れたものを意味する。なお、上記脱水縮合反応の前後では、第2金属酸化物の組成及び無機粒子303の形状(例えば無機粒子303の直径)は変わらない。上記ラジカル重合反応の前後においても同様である。
第2有機化合物307が第2無機側反応基307aと第2有機側反応基307bとを含むシランカップリング剤であれば、第2無機側反応基307aと上記ヒドロキシル基との反応時における立体障害を小さく抑えることができるので、その反応が起こり易くなる。また、第2有機側反応基307bと上記ラジカル重合性反応基との反応時における立体障害を小さく抑えることができるので、その反応が起こり易くなる。
第2有機化合物307は、無機粒子303に対して、1質量%以上10質量%以下含まれることが好ましい。第2有機化合物307が無機粒子303に対して1質量%以上含まれていれば、第2有機化合物307に由来する成分により無機粒子303と表面層106を構成する樹脂とが結合し易くなる。第2有機化合物307が無機粒子303に対して10質量%以下含まれていれば、第2有機化合物307が無機粒子303の表面304に結合されることなく表面層106に存在することを防止できる。より好ましくは、第2有機化合物307は無機粒子303に対して3質量%以上7質量%以下含まれる。ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて第2有機化合物307の含有量(質量%)を求めることができる。
(表面処理された無機粒子)
「表面処理された無機粒子310」とは、無機粒子303と、無機粒子303の表面304に結合された第2有機化合物307に由来する成分とを有する構造体を意味する。第2有機化合物307として例えば図3(b)に示すシランカップリング剤を用いた場合には、「表面処理された有機粒子310」をシランカップリング剤が結合された有機粒子に換言できる。
表面層106を構成する樹脂が硬化性樹脂である場合には、表面処理された無機粒子310は、硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して30質量部以上200質量部以下含まれることが好ましい。表面処理された無機粒子310が硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して30質量部以上含まれていれば、さらなる電荷輸送性を表面層106に付与できる。一方、表面処理された無機粒子310が硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して200質量部以下含まれていれば、カブリ耐性の低下をさらに防止できる。より好ましくは、表面処理された無機粒子310は、硬化性化合物(モノマー)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下含まれている。
表面層106を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、表面処理された無機粒子310は、熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部以上200質量部以下含まれることが好ましい。表面処理された無機粒子310が熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部以上含まれていれば、さらなる電荷輸送性を表面層106に付与できる。一方、表面処理された無機粒子310が熱可塑性樹脂100質量部に対して200質量部以下含まれていれば、カブリ耐性の低下をさらに防止できる。より好ましくは、表面処理された無機粒子310は熱可塑性樹脂100質量部に対して50質量部以上100質量部以下含まれている。熱重量測定/示差熱分析によって重量減少量を計測することにより、表面処理された無機粒子310の含有量を調べることができる。
<表面層の形成1>
(無機膜203で被覆された有機粒子205の作製)
例えば次に示す方法にしたがって表面層106を形成できる。まず、第1金属酸化物を含む溶液に有機粒子201を浸漬させる。これにより、無機膜203で被覆された有機粒子205が得られる。
(表面処理された有機粒子210の作製)
次に、無機膜203で被覆された有機粒子205と第1有機化合物207とを液相で撹拌する。これにより、無機膜203の表面204のヒドロキシル基と第1有機化合物207の第1無機側反応基207aとが脱水縮合反応を起こし、よって、表面処理された有機粒子210が得られる。
(塗膜の硬化)
続いて、表面層106を構成する樹脂と表面処理された有機粒子210とを反応させる。表面層106を構成する樹脂として硬化性樹脂を使用する場合には、まず、硬化性化合物と表面処理された有機粒子210とを少なくとも含む液体(表面層形成用液体)を調製する。次に、従来公知の方法にしたがって、表面層形成用液体を感光層103の上面に塗布した後、形成された塗膜に対して紫外線又は可視光等の電磁波、電子線、又は、熱を照射する。これにより、硬化性化合物のラジカル重合性反応基と表面処理された有機粒子210の第1有機側反応基207bとがラジカル重合反応を起こす(硬化反応)。よって、表面層106が形成される。
なお、塗膜に対して電磁波を照射する場合には、表面層形成用液体は従来公知の光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。また、塗膜に対して熱を照射する場合には、表面層形成用液体は従来公知の熱重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
一方、表面層106を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合には、熱可塑性樹脂と表面処理された有機粒子210とを少なくとも含む液体を、高温状態で感光層103の上面に塗布した後に室温程度にまで冷却させる。このようにして、表面層106が形成される。
<表面層の形成2>
有機粒子201と無機粒子303との両方を含む表面層106を形成する場合には、次に示す方法にしたがって表面層106を形成できる。
(表面処理された無機粒子310の作製)
まず、表面処理された有機粒子210の作製方法に倣って、表面処理された無機粒子310を作製する。具体的には、無機粒子303と第2有機化合物307とを液相で撹拌する。これにより、無機粒子303の表面304のヒドロキシル基と第2有機化合物307の第2無機側反応基307aとが脱水縮合反応を起こし、よって、表面処理された無機粒子310が得られる。
(塗膜の硬化)
次に、表面層106を構成する樹脂と表面処理された有機粒子210と表面処理された無機粒子310とを反応させる。表面層106を構成する樹脂として硬化性樹脂を使用する場合には、まず、硬化性化合物と表面処理された有機粒子210と表面処理された無機粒子310とを少なくとも含む液体(表面層形成用液体)を調製する。次に、従来公知の方法にしたがって、表面層形成用液体を感光層103の上面に塗布した後、形成された塗膜に対して紫外線又は可視光等の電磁波、電子線、又は、熱を照射する。これにより、硬化性化合物のラジカル重合性反応基と表面処理された有機粒子210の第1有機側反応基207bとがラジカル重合反応を起こし(硬化反応)、硬化性化合物のラジカル重合性反応基と表面処理された無機粒子310の第2有機側反応基307bとがラジカル重合反応を起こす(硬化反応)。よって、有機粒子201と無機粒子303との両方を含む表面層106が形成される。
一方、表面層106を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合には、熱可塑性樹脂と表面処理された有機粒子210と表面処理された無機粒子310とを少なくとも含む液体を、高温状態で感光層103の上面に塗布した後に室温程度にまで冷却させる。このようにして、有機粒子201と無機粒子303との両方を含む表面層106が形成される。
<導電性支持体>
導電性支持体101は、電子写真感光体の導電性支持体として従来公知の構成を有することが好ましい。例えば、導電性支持体101は、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛又はステンレスなどの金属がドラム状又はシート状に成形されたものであることが好ましい。
<中間層>
中間層102は、バリア機能と接着機能とを有することが好ましく、電子写真感光体の中間層(導電性支持体と感光層との間に設けられる層)として従来公知の構成を有することが好ましい。例えば、中間層102は、ポリアミド樹脂がアルコール溶液に溶解されてなる液体(中間層形成用液体)を用いて浸漬塗布法などにより形成されることが好ましい。このような中間層102の厚さは、0.1μm以上15μm以下であることが好ましく、0.3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
<感光層>
感光層103は、電荷発生機能と電荷輸送機能との両機能を有する単層で構成されていても良いが、電荷発生層104と電荷発生層104の上に設けられた電荷輸送層105とを有することが好ましい。感光層103が電荷発生層104と電荷輸送層105とを有することにより、電子写真感光体100の繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を防止でき、また、電子写真特性を目的に合わせて制御できる。
(電荷発生層)
電荷発生層104は、電子写真感光体の電荷発生層として従来公知の構成を有することが好ましい。例えば、電荷発生層104は、電荷発生物質とバインダー樹脂とを少なくとも含むことが好ましく、電荷発生物質がバインダー樹脂の溶液に分散されてなる分散液(電荷発生層形成用液体)を中間層102の上面に塗布して形成されることが好ましい。
電荷発生物質は、電子写真感光体の電荷発生層に含まれる電荷発生物質の材料として従来公知の材料からなることが好ましく、その一例としては、スーダンレッド又はダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノン又はアントアントロンなどのキノン顔料、又は、フタロシアニン顔料などが挙げられる。電荷発生物質としては、これらの化合物を単独又は二種類以上混合して使用できる。電荷発生物質は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上600質量部以下添加されていることが好ましく、50質量部以上500質量部以下添加されていることがより好ましい。
バインダー樹脂は、電子写真感光体の電荷発生層に含まれるバインダー樹脂の材料として従来公知の材料からなることが好ましく、その一例としては、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂又はポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。
このような電荷発生層104の厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上3μm以下であることがより好ましい。
(電荷輸送層)
電荷輸送層105は、電子写真感光体の電荷輸送層として従来公知の構成を有することが好ましい。例えば、電荷輸送層105は、電荷輸送物質とバインダー樹脂とを少なくとも含むことが好ましく、電荷輸送物質がバインダー樹脂の溶液に溶解されてなる溶液(電荷輸送層形成用液体)を電荷発生層104の上面に塗布して形成されることが好ましい。
電荷輸送物質は、電子写真感光体の電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質の材料として従来公知の材料からなることが好ましく、その一例としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、又は、ポリ−9−ビニルアントラセンなどが挙げられる。電荷輸送物質としては、これらの化合物を単独又は二種類以上混合して使用できる。電荷輸送物質は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下添加されていることが好ましく、20質量部以上100質量部以下添加されていることがより好ましい。
バインダー樹脂は、電子写真感光体の電荷輸送層に含まれるバインダー樹脂の材料として従来公知の材料からなることが好ましく、その一例としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアクリレート樹脂などが挙げられる。
このような電荷輸送層105の厚さは、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
[電子写真画像形成装置の構成、画像形成方法]
本実施形態の電子写真画像形成装置(以下では単に「画像形成装置」と記すことがある)は、電子写真感光体100と、電子写真感光体100の表面を帯電させる帯電部と、電子写真感光体100の表面に静電潜像を形成する露光部と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像部とを備える。本実施形態の画像形成装置が電子写真感光体100を備えているので、電子写真感光体100のクリーニング性を高めつつ、表面層106を耐摩耗性を高め、且つ、カブリ耐性を高めることができる。
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、電子写真感光体100と、電子写真感光体100の表面を帯電させる帯電部と、電子写真感光体100の表面に静電潜像を形成する露光部と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像部とを備える。本実施形態のプロセスカートリッジが電子写真感光体100を備えているので、電子写真感光体100のクリーニング性を高めつつ、表面層106を耐摩耗性を高め、且つ、カブリ耐性を高めることができる。以下、図4を参照しながら、具体的に説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置の構成を示す断面図である。図4に示す画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものであり、4組の画像形成部(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、給紙搬送部21と、定着部24とを備える。装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
画像形成部10Yは、イエロー色の画像を形成するものである。画像形成部10Yは、ドラム状の電子写真感光体1Yの周囲に帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Yをさらに有する。
画像形成部10Mは、マゼンタ色の画像を形成するものである。画像形成部10Mは、ドラム状の電子写真感光体1Mの周囲に帯電部2Mと露光部3Mと現像部4Mとクリーニング部6Mとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Mをさらに有する。
画像形成部10Cは、シアン色の画像を形成するものである。画像形成部10Cは、ドラム状の電子写真感光体1Cの周囲に帯電部2Cと露光部3Cと現像部4Cとクリーニング部6Cとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Cをさらに有する。
画像形成部10Bkは、黒色画像を形成するものである。画像形成部10Bkは、ドラム状の電子写真感光体1Bkの周囲に帯電部2Bkと露光部3Bkと現像部4Bkとクリーニング部6Bkとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Bkをさらに有する。
ドラム状の電子写真感光体1Y、ドラム状の電子写真感光体1M、ドラム状の電子写真感光体1C及びドラム状の電子写真感光体1Bkのうちの少なくとも1つとして電子写真感光体100を用いれば、上述の効果(電子写真感光体100のクリーニング性を高めつつ、表面層106を耐摩耗性を高め、且つ、カブリ耐性が高くなる)が得られる。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkに形成されるトナー画像の色が異なることを除いては同様に構成されている。そのため、以下では、画像形成ユニット10Yを例に挙げて説明する。
本実施形態では、画像形成ユニット10Yにおいて、少なくとも、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが一体化されている。
帯電部2Yは、電子写真感光体1Yに対して一様な電位を与えて電子写真感光体1Yの表面を帯電(例えば負に帯電)させる。帯電部2Yとしては、非接触な帯電器を用いることが好ましく、例えば、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器等のコロナ帯電器を用いることができる。
露光部3Yは、帯電部2Yにより一様な電位が与えられた電子写真感光体1Yの表面に対して、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、これにより、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する。露光部3Yとしては、電子写真感光体1Yの軸方向に発光素子がアレイ状に配列されて構成されたLEDと結像素子(商品名;セルフォック(登録商標)レンズ)とを備えたもの、又は、レーザ光学系などを用いることができる。
現像部4Yは、露光部3Yにより形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する。用いるトナーは特に限定されないが、乾式現像剤であることが好ましい。
本実施形態の画像形成装置では、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yなどがプロセスカートリッジとして一体化されて構成され、このプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。また、帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y、転写又は分離器、及び、クリーニング部6Yのうちの少なくとも1つが電子写真感光体1Yとともに一体に支持されてプロセスカートリッジが構成され、そのプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能な単一画像形成ユニットに構成され、その単一画像形成ユニットが装置本体Aのレールなどの案内手段を用いて装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと無端ベルト状の中間転写体ユニット7とを有する筐体8は、支持レール82L、82Rにより、装置本体Aから引き出し可能に構成されている。筐体8では、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、図4において感光体1Y、1M、1C、1Bkの左側方に配置されており、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状の中間転写体70と、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkと、クリーニング部6bとを有する。
以下では、図4に示す画像形成装置を用いた画像形成方法について示す。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにより形成された各色の画像は、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状の中間転写体70上に逐次転写される。これにより、合成されたカラー画像が形成される。
給紙カセット20に収容された転写材(例えば普通紙、透明シートなど)Pは、給紙搬送部21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22Dとレジストローラ23とを経て、二次転写ローラ5bに搬送される。二次転写ローラ5bでは、合成されたカラー画像が転写材Pに二次転写され、よって、カラー画像が転写材Pに一括に転写される。合成されたカラー画像が転写材Pに二次転写されると、無端ベルト状の中間転写体70はその転写材Pを曲率分離する。この転写材Pは、定着部24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26に載置される。一方、中間転写体70に付着したトナー(残留トナー)はクリーニング部6bにより除去される。
画像形成中、一次転写ローラ5Bkは、常時、電子写真感光体1Bkの表面に当接している。一方、一次転写ローラ5Y、5M、5Cは、カラー画像形成時にのみ、対応する電子写真感光体1Y、1M、1Cの表面に当接する。また、二次転写ローラ5bは、二次転写ローラ5bを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状の中間転写体70の表面に当接する。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に限定されない。
<実施例1>
次に示す方法にしたがって、電子写真感光体を作製した。まず、円筒形のアルミニウム支持体の表面に切削加工が施された導電性支持体を準備した。
(中間層の形成)
湿式サンドミル(径が0.5mmのアルミナビーズが容器に充填されている)に、ポリアミド樹脂(バインダー樹脂、ダイセル・エボニック株式会社製の品番「X1010」)1.0質量部と、二酸化チタン粒子(テイカ株式会社製の品番「SMT500SAS」)1.1質量部と、エタノール(溶媒)20質量部とを入れ、バッチ式で10時間分散させた。このようにして、中間層形成用液体を得た。
中間層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により導電性支持体の上面に形成した後、110℃で20分乾燥させた。このようにして、導電性支持体の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が2μmである中間層が形成された。
(電荷発生層の形成)
中間層の形成で用いた湿式サンドミルと同型の湿式サンドミルに、チタニルフタロシアニン顔料(電荷発生物質、特性X線(Cu−Kα線)を用いたX線回折スペクトルの測定により、少なくとも2θ=27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)20質量部と、ポリビニルブチラール樹脂(バインダー樹脂、電気化学工業株式会社製の品番「#6000−C」)10質量部と、酢酸t−ブチル(溶媒)700質量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン(溶媒)300質量部とを入れ、10時間分散させた。このようにして、電荷発生層形成用液体を得た。
電荷発生層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により中間層の上面に形成した後、乾燥させた。このようにして、中間層の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が0.3μmである電荷発生層が形成された。
(電荷輸送層の形成)
中間層などの形成で用いた湿式サンドミルと同型の湿式サンドミルに、下記化学式(18)で表される化合物(電荷輸送物質)150質量部と、ポリカーボネート樹脂(バインダー樹脂、三菱ガス化学株式会社製の品番「Z300」)300質量部と、酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製の品番「Irganox(登録商標)1010」)6質量部と、トルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒((トルエン):(テトラヒドロフラン)=1:9(体積比))2000質量部と、シリコーンオイル(添加剤、信越化学工業株式会社製の品番「KF−54」)1質量部とを入れ、電荷輸送物質とバインダー樹脂とを上記混合溶媒に溶解させた。このようにして、電荷輸送層形成用液体を得た。
電荷輸送層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により電荷発生層の上面に形成した後、110℃で60分乾燥させた。このようにして、電荷発生層の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が20μmである電荷輸送層が形成された。
(表面処理された有機粒子の調製)
ガラスビーカー(容量が2L)に、SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液15g(このケイ酸ナトリウム水溶液はSiO2を1.5g含む)と48質量%の水酸化ナトリウム水溶液2gとを入れた。ガラスビーカー内の混合溶液をイオン交換水で希釈して、ガラスビーカー内の液量を900gとした。
希釈後の混合溶液に、有機粒子(株式会社日本触媒製、商品名「エポスターS6」)10gがメタノール100gに分散されて構成された分散液を撹拌しながら滴下した。分散液の滴下に10分を要した。また、分散液の滴下終了後の溶液のpHは10であった。
得られた溶液を80℃に加熱した後、1%塩酸を添加してその溶液のpHを8に調整した。同温度で120分間撹拌した後、25℃に冷却した。濃度10質量%のクエン酸水溶液をさらに添加してその溶液のpHを3に調整した。
pHが3に調整された溶液を、濾過量と同量のイオン交換水を補水しながら、限外濾過モジュール(旭化成ケミカルズ株式会社製、品番「マイクローザSLP−1053」)に通した。得られた濾液にt−ブチルアミンを添加してその溶液のpHを8に調整した後、その溶液を再び濾過した。濾別された固形物を洗浄してケーキを得た。得られたケーキを100℃で乾燥し、SiO2膜で被覆された有機粒子を得た。
メタノール18gと水2gとを含む混合溶媒(20g)に濃塩酸を添加してその溶液のpHを2〜3に調整した。この溶液にシランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピル トリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、品番「KBM−503」))を2.5g添加した後、室温にて1時間撹拌した。この溶液に、SiO2膜で被覆された有機粒子の濃度が10質量%のメタノール分散液50gを添加した後、40℃で2時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して中和した。得られた溶液を濾過し、濾別された固形物を120℃で2時間乾燥させた。このようにして、表面処理された有機粒子が得られた。
表面処理された有機粒子2.5gとメタノール47.5gとを混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、品番「US−150A」)を用いて30分間撹拌した。このようにして、表面処理された有機粒子がメタノールに分散されて構成された分散液を得た。この分散液1mLにメタノールを添加してその分散液を10倍に希釈した。動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、品番「LB−550」)を用いて、有機粒子の直径(有機粒子のメジアン径)を確認した。
(表面層の形成)
無機粒子(材料:酸化スズ、直径:20nm)85質量部と、表面処理された有機粒子25質量部と、上記化学式2で表される化合物(硬化性化合物(単量体))100質量部と、2−ブタノール(溶媒)400質量部と、THF(tetrahydrofuran)(溶媒)40質量部とを遮光下で混合し、サンドミル(分散機)を用いて5時間にわたってこれらを分散させた。得られた分散液にIRGACURE 819(重合開始剤)10質量部を添加し、分散液を遮光下で撹拌して上記重合開始剤を分散液に溶解させた。このようにして、表面層形成用液体を得た。
円形スライドホッパー塗布装置を用いて、電荷輸送層の上面に表面層形成用液体を塗布した。形成された塗膜に対してメタルハライドランプからの光(紫外線)を1分間照射した。このようにして、電荷輸送層の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が5.0μmである表面層が形成された。
<実施例2>
SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液の量を20gに変更し(本実施例で使用するケイ酸ナトリウム水溶液はSiO2を2g含む)、有機粒子(株式会社日本触媒製、商品名「エポスターS12」)を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。この有機粒子を用いて、実施例1と同様の方法にしたがって表面層を形成した。表面処理された有機粒子の配合量は表1に示す通りであった。
<実施例3>
「SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液15g」の代わりに「濃度が25質量%のオキシ塩化チタン水溶液6g(本実施例で使用するオキシ塩化チタン水溶液はTiO2を1.5g含む)」を用い、有機粒子(株式会社日本触媒製、商品名「エポスターS」)を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。この有機粒子を用いて、実施例1と同様の方法にしたがって表面層を形成した。表面処理された有機粒子の配合量は表1に示す通りであった。
<実施例4>
SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液の量を30gに変更した(本実施例で使用するケイ酸ナトリウム水溶液はSiO2を3g含む)ことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。
得られた有機粒子を用い、「無機粒子(材料:酸化スズ、直径:20nm)85質量部」の代わりに「無機粒子(材料:酸化チタン、直径:10nm)100質量部」を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面層を形成した。表面処理された有機粒子の配合量は表1に示す通りであった。
<実施例5>
「SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液15g」の代わりに「濃度が25質量%のオキシ塩化チタン水溶液8g(本実施例で使用するオキシ塩化チタン水溶液はTiO2を2g含む)」を用い、有機粒子(日本ペイント株式会社製のスチレン−アクリル粒子)を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。この有機粒子を用いて、実施例1と同様の方法にしたがって表面層を形成した。
<実施例6>
SiO2濃度が10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液の量を5gに変更した(本実施例で使用するケイ酸ナトリウム水溶液はSiO2を0.5g含む)ことを除いては実施例2と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。
得られた有機粒子を用い、「無機粒子(材料:酸化スズ、直径:20nm)85質量部」の代わりに「無機粒子(材料:酸化チタン、直径:10nm)100質量部」を用いたことを除いては実施例2と同様の方法にしたがって、表面層を形成した。表面処理された有機粒子の配合量は表1に示す通りであった。
<実施例7>
濃度が25質量%のオキシ塩化チタン水溶液の量を4gに変更した(本実施例で使用するオキシ塩化チタン水溶液はTiO2を1g含む)ことを除いては実施例5と同様の方法にしたがって、表面処理された有機粒子を作製した。
得られた有機粒子を用い、「無機粒子(材料:酸化スズ、直径:20nm)85質量部」の代わりに「無機粒子(材料:酸化チタン、直径:10nm)100質量部」を用いたことを除いては実施例5と同様の方法にしたがって、表面層を形成した。
<比較例1>
表面処理された有機粒子の代わりに有機粒子(株式会社日本触媒製、商品名「エポスターS6」)を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面層を形成した。
<比較例2>
表面処理された有機粒子の代わりにPTFE粒子を用いたことを除いては実施例1と同様の方法にしたがって、表面層を形成した。
<比較例3>
次に示す方法にしたがって、表面が第1有機化合物で処理された有機粒子を作製した。この有機粒子を用いて、実施例1と同様の方法にしたがって表面層を形成した。
メタノール18gと水2gとを含む混合溶媒(20g)に濃塩酸を添加してその溶液のpHを2〜3に調整した。この溶液にシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−503」)を2.5g添加した後、室温にて1時間撹拌した。この溶液に、有機粒子(株式会社日本触媒製、商品名「エポスターS6」)の濃度が10質量%のメタノール分散液50gを添加した後、40℃で2時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して中和した。得られた溶液を濾過し、濾別された固形物を120℃で2時間乾燥させた。このようにして、比較例3で使用する有機粒子を得た。
<評価>
(クリーニング性の評価)
画像形成装置(コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社製、品番「bizhub C6501」)の電子写真感光体として、実施例1〜7及び比較例1〜3の電子写真感光体を搭載した。なお、画像形成装置において、露光光源としては、波長780nmの半導体レーザーを用いた。
温度23℃、湿度50%の環境下で、連続通紙試験を行った。具体的には、給紙カセットにA4用紙2000枚を「横送り」されるように配置し、そのA4用紙2000枚に対して画像比率5%の文字画像の両面印刷を連続して行った。
連続通紙試験の後、電子写真感光体の表面における2cm×4cmの領域内の付着物の個数を目視にて計測した。結果を表1に示す。
表1では、トナーのすり抜けがなく上記領域に付着物が確認されなかった場合には「A1」と記し、トナーのすり抜けがなく上記領域に10個未満の付着物が確認された場合には「B1」と記す。電子写真感光体の表面における付着物の個数が少ないほど、電子写真感光体はクリーニング性に優れていると言える。本発明者らは表1において「A1」及び「B1」である場合に電子写真感光体としての実用が可能であると判断しており、よって、実施例1〜7及び比較例1〜3のいずれにおいてもクリーニング性に優れた電子写真感光体を得ることができた。
(耐摩耗性の評価)
まず、実施例1〜7及び比較例1〜3の電子写真感光体の表面層の厚さを測定した。具体的には、厚さが均一な部分(膜厚プロファイルを作製することにより、表面層形成用液体を最初に塗布した箇所における厚さ変動部分と表面層形成用液体を最後に塗布した箇所における厚さ変動部分とを除く)において厚さの測定地点をランダムに10ヶ所選定した。渦電流方式の膜厚測定器(Helmut Fischer社製、品番「EDDY560C」)を用いて上記測定地点での厚さを計測し、計測された厚さの平均値(耐久試験前の厚さ)を算出した。
次に、上記画像形成装置の電子写真感光体として、実施例1〜7及び比較例1〜3の電子写真感光体を搭載した。なお、画像形成装置において、露光光源としては、波長780nmの半導体レーザーを用いた。
続いて、温度23℃、湿度50%の環境下で、連続通紙試験を行った。具体的には、給紙カセットにA4用紙300000枚を「横送り」されるように配置し、そのA4用紙300000枚に対して画像比率5%の文字画像の両面印刷を連続して行った。
その後、上記画像形成装置から電子写真感光体を取り出し、耐久試験前の厚さの求め方にしたがって耐久試験後の厚さを算出した。下記式を用いて膜厚減耗量を求めた。結果を表1に示す。
(膜厚減耗量)=(耐久試験前の厚さ)−(耐久試験後の厚さ)。
表1では、膜厚減耗量が1μm未満であった場合には「A2」と記し、膜厚減耗量が1μm以上3μm未満であった場合には「B2」と記し、膜厚減耗量が3μm以上4μm未満であった場合には「C2」と記し、膜厚減耗量が4μm以上であった場合には「D2」と記す。膜厚減耗量が小さいほど、電子写真感光体は耐摩耗性に優れていると言える。本発明者らは、表1において「A2」、「B2」及び「C2」である場合に電子写真感光体としての実用が可能であると判断している。
(カブリの評価)
上記画像形成装置の電子写真感光体として、実施例1〜7及び比較例1〜3の電子写真感光体を搭載した。なお、画像形成装置において、露光光源としては、波長780nmの半導体レーザーを用いた。
温度23℃、湿度50%の環境下で、電子写真感光体の表面電位と現像部の表面電位との差(以下では「表面電位差」と記す)を100Vに設定した。給紙カセットにA3用紙を「縦送り」されるように配置し、そのA3用紙に対して画像比率0%の白画像の印刷を行った。印刷後、A3用紙の黒化率(黒部の面積÷白部の面積)を求めた。その後、表面電位差を200V、300Vに変更して、上述の方法にしたがって黒化率を求めた。結果を表1に示す。
表1では、表面電位差が100Vである場合に黒化率が0.1未満であった場合には「A3」と記し、表面電位差が200Vである場合に黒化率が0.1以上0.2以下であった場合には「B3」と記し、表面電位差が300Vである場合に黒化率が0.2以上であった場合には「C3」と記す。表面電位差が大きいほど、カブリ耐性が低下し難く、表面電位差が小さいほど、カブリ耐性が低下し易い。表1におけるA3では、カブリ耐性が低下し易い環境下で白画像を印刷した場合の黒化率が0.1未満であるので、カブリ耐性に非常に優れることを意味する。一方、表1におけるC3では、カブリ耐性が低下し難い環境下で白画像を印刷した場合の黒化率が0.2以上であるので、カブリ耐性が低下していることを意味する。本発明者らは、表1において「A3」及び「B3」である場合に電子写真感光体としての実用が可能であると判断している。
<結果と考察>
表1において、「エポスターS」、「エポスターS6」及び「エポスターS12」は、何れも、メラミン−ホルムアルデヒド粒子である。
表1において、「配合量*11」には、有機粒子100質量部に対する第1金属酸化物の配合量(質量部)を記す。「添加量*12」において、実施例1〜7では、硬化性化合物100質量部に対する表面処理された有機粒子の配合量(質量部)を記し、比較例1及び2では、硬化性化合物100質量部に対する有機粒子の配合量(質量部)を記し、比較例3では、硬化性化合物100質量部に対する、表面が第1有機化合物で処理された有機粒子の配合量(質量部)を記す。
実施例1〜7及び比較例1〜3のいずれにおいても、クリーニング性は良好であった。表面層が有機粒子を含んでいるのでクリーニング性を高めることができたと考えられる。
実施例1〜7では、比較例2に比べて、表面層の耐摩耗性が向上した。その理由として次に示すことが考えられる。比較例2では、表面層は、表面処理された有機粒子を含んでいない。そのため、表面層の有機粒子は硬化性化合物(単量体)の硬化反応に寄与せず、よって、表面層の強度低下を招いた。その結果、表面層とブレードなどとの接触により表面層からの有機粒子の脱離を引き起こした。
実施例1〜7では、比較例1及び比較例3に比べて、カブリ耐性を高めることができた。その理由として次に示すことが考えられる。比較例1では、表面層は、表面処理された有機粒子を含んでいない。そのため、表面層からの有機粒子の露出を防止できず、よって、表面層から露出した有機粒子とトナーの穂立ちとの擦過を招き、その結果、電子写真感光体の表面電位の低下を引き起こした。
比較例3では、有機粒子の表面には無機膜が設けられていない。そのため、第1有機化合物との反応点を有機粒子の表面に確保することが出来ず、よって、第1有機化合物が有機粒子の表面に結合され難かった。その結果、比較例1と同様の理由から電子写真感光体の表面電位の低下を引き起こした。
以上より、クリーニング性を高めつつ、表面層の耐摩耗性を高め、且つ、カブリ耐性を高めるためには、表面層は表面処理された有機粒子を含むことが好ましいということが分かった。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。