以下、記録装置の一実施形態として、液体の一例であるインクを吐出する記録部を備え、シート状の媒体の一例である用紙にインクを吐出して文字や図形などを含む画像を印刷(記録)するインクジェット式のプリンターについて、図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の記録装置の一例としてのプリンター11は、略直方体の筐体12内に、用紙Pを重力方向側から支持する支持台13と、用紙Pに画像を印刷する記録部14と、用紙Pが搬送される媒体搬送路20を備えている。また、複数のローラー(ローラー対)によって構成され、用紙Pを媒体搬送路20に沿って搬送する搬送部29を備えている。
プリンター11は、図1における紙面表裏方向を用紙Pの幅方向とし、この幅方向と交差する方向を搬送方向として用紙Pを支持台13上および媒体搬送路20に沿って搬送する。記録部14は、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向の略全域に渡ってインクを同時に吐出可能な液体吐出ヘッドとしてのラインヘッドを下部に備え、支持台13上を搬送される用紙Pに反重力方向側からインクを付着させて画像を印刷する。
印刷された用紙Pは、排紙ローラー対18や他の複数の搬送ローラー対19によって記録部14から媒体搬送路20に搬送され、媒体搬送路20の端部に設けられた媒体排出口26から媒体搬送路20外へ排出される。排出された用紙Pは、図1において二点鎖線で示すように、載置台60の載置面61に積層状態で載置される。
本実施形態では、媒体搬送路20は、用紙Pを記録部14から媒体排出口26まで搬送する媒体排出路25と、用紙Pを記録部14に供給する媒体供給路とを有している。媒体供給路は、第1媒体供給路21と第2媒体供給路22と第3媒体供給路23とによって構成される。
第1媒体供給路21では、筐体12の一側面に備えられたカバー12Fを開けることによって露出する挿入口12aから挿入される用紙Pが記録部14へ搬送される。すなわち、挿入口12aへ挿入された用紙Pは、ホッパー12bによって第1駆動ローラー41aに押し付けられ、第1駆動ローラー41aの回転駆動によって搬送されて第1駆動ローラー41aと第1従動ローラー41bとの間に挟まれた後、第1駆動ローラー41aの回転駆動によって記録部14へ向かって搬送される。
第2媒体供給路22では、筐体12の重力方向側となる底部に挿抜可能に備えらえた用紙カセット12cに積層可能に載置される用紙Pが記録部14へ搬送される。すなわち、用紙カセット12cに積層状態で載置された用紙Pは、最上位の用紙Pがピックアップローラー16aで送り出され、分離ローラー対16bで一枚ずつに分離された後、第2駆動ローラー42aと第2従動ローラー42bとの間に挟まれ、第2駆動ローラー42aの回転駆動によって記録部14へ向かって搬送される。
第3媒体供給路23では、用紙Pに対して両側のシート面(紙面)に印刷する両面印刷を行う場合に、記録部14によって片側のシート面が印刷済みとされた用紙Pが、再び記録部14へ搬送される。すなわち、記録部14よりも用紙Pの搬送方向下流側には、媒体排出路25の途中に設けられた分岐機構27の動作によって媒体排出路25から分岐する分岐搬送路24が設けられている。分岐搬送路24には、正転と逆転の双方の回転が可能な分岐搬送路ローラー対44が分岐機構27の下流側に設けられている。
片側のシート面が印刷された用紙Pは、両面印刷に際して記録部14側から載置台60側に向かって一旦この分岐搬送路24へ、正転する分岐搬送路ローラー対44および複数の搬送ローラー対19によって搬送された後、分岐搬送路ローラー対44の逆転によって分岐搬送路24を載置台60側から記録部14側へ逆搬送される。このとき、逆搬送される用紙Pは、第3媒体供給路23へ搬送され、複数の搬送ローラー対19によって記録部14に向かって搬送される。この第3媒体供給路23への搬送によって、用紙Pは印刷されていないシート面が記録部14と対向するように反転し、第3駆動ローラー43aと第3従動ローラー43bとの間に挟まれ、第3駆動ローラー43aの回転駆動によって記録部14へ向かって搬送される。
各媒体供給路を記録部14へ向かって搬送される用紙Pは、記録部14の搬送方向上流側に配設された整列ローラー対15まで搬送されたのち、回転が停止した整列ローラー対15にその先端が突き当たる。そして、用紙Pは、このような整列ローラー対15へ突き当たった状態によって搬送方向に対する傾きが補正(スキュー取り)される。そして傾きが補正された用紙Pは、その後の整列ローラー対15の回転駆動によって、整列状態となって記録部14側へ搬送される。
整列ローラー対15によって記録部14側に搬送された用紙Pは、記録部14に対して用紙Pの搬送方向上流側に配設された紙送りローラー対17や搬送方向下流側に配設された排紙ローラー対18および搬送ローラー対19などによって、記録部14に対向しながら搬送される。この搬送される用紙Pに、対向する記録部14から吐出データに基づいてインクが吐出されて印刷が行われる。
プリンター11には、コンピューター機能を有する制御部と、このような印刷動作を制御するプログラムを記憶する図示しない記憶部が備えられている。そして、制御部が記憶部に記憶されたプログラムに従って動作することによって、プリンター11に入力される印刷データに基づいて記録部14や搬送部29の動作を制御し、用紙Pの記録領域としての印刷領域E(図4(a)参照)に画像を印刷(記録)する。
図2(a),(b)に示すように、本実施形態のプリンター11には、この印刷動作において、記録部14が鉛直方向において移動して、支持台13の支持面13aから記録部14(液体吐出ヘッド)までの距離を調節可能な移動機構(昇降機構)が設けられている。
この移動機構として、例えば、図2(a)において二点鎖線で示すように、回動可能な偏心カム14bを設け、液体吐出ヘッドを保持する保持体14aの一部を偏心カム14bに対するカムフォロアーとしたカム機構と、偏心カム14bを回動させる図示しないモーターなどの駆動源と、を備えて構成することが可能である。
移動機構は、用紙Pに高品質の画像を印刷するため、記録部14から用紙Pへインクを吐出する際にインクの着弾位置(付着位置)のばらつきを抑制するべく、通常、記録部14の支持面13aからの距離GP、すなわち液体吐出ヘッドと支持面13aとの間の隙間が小さい状態になるように記録部14の位置を調節する。
ところで、図2(b)において破線で示すように、記録部14から吐出されたインクが用紙Pに付着することによって、用紙Pは、インクの付着した印刷領域Eにおける記録面側が膨張することがある。この膨張によって記録面側がのびて凸面となるカールが発生する。この結果、用紙P(記録面)が液体吐出ヘッドと擦れる状態となったり、あるいは、記録部14によって印刷された用紙Pが媒体搬送路20に沿って搬送される際に、媒体排出路25において円滑に搬送されずにジャム状態が発生したりする虞がある。
そこで、本実施形態のプリンター11では、用紙Pへの印刷処理に際して、実際に発生する用紙Pのカールに応じた記録部14の位置調節が行われる。あるいは、実際に発生する媒体のカール量に応じた乾燥度合で媒体の乾燥が行われる。なお、用紙Pに発生するカール量は、印刷が行われる前の用紙Pの温度および湿度に依存する。そこで、本実施形態では、紙送りローラー対17によって搬送される用紙Pの近傍の温度および湿度を検出する温湿度検出部70がプリンター11内に備えられている(図1、図2(a),(b)参照)。
図3を参照して、プリンター11の作用、すなわち印刷に際して行われる用紙Pのカールへの対応処理について説明する。なお、この処理は、プリンター11の印刷動作を制御する制御部が、所定のプログラムに従って、用紙Pにカールが発生したか否かを判定し、その判定結果に応じて記録部14の移動機構や搬送部29などの動作を適宜制御することによって行われる。
すなわち、この対応処理において、制御部は、カールの発生を判定するための判定領域を設定する判定領域設定部51と、設定された判定領域についての液量割合を算出する液量割合算出部52と、カールの発生を判定する判定部53として機能する。また、移動機構を制御して記録部14の位置を調節する記録部位置調節部54と、搬送部29を制御して用紙Pに付着したインクを乾燥させて当該用紙Pの乾燥度合を調節する乾燥度合調節部55として機能する(図1参照)。なお、液量割合とは、印刷データが有する吐出データに基づいて記録部14から吐出されるインクの、当該記録部14から吐出可能なインクの最大液量(たとえば、後述する判定領域としての分割領域を埋め尽くすのに必要な量)に対する液量割合である。
図3に示すように、この処理が開始されると、まずステップS1にて、印刷データからインクの吐出データ、記録部14に向かって搬送される用紙Pのサイズ、用紙Pの搬送方向に対する向き、および用紙Pの種類を取得する処理が行われる。ここで取得される用紙Pの搬送方向に対する向きとは、搬送方向に沿う用紙Pの長さが幅方向の長さよりも長い場合を「縦」とし、その逆の場合を「横」としたデータである。そして、制御部は、ステップS1において、用紙Pのサイズと用紙Pの搬送方向に対する向きとを合わせた用紙Pの属性データ(例えばA4横)を取得する。
次にステップS2にて、取得した用紙Pのサイズと搬送方向に対する向き、すなわち用紙Pの属性データに応じて、記憶部に記憶された設定テーブルを参照して、印刷領域における分割領域を設定する。
図4(a),(b)を参照して、ステップS2での処理について説明する。
図4(a)に示すように、制御部は記録部14へ搬送される用紙Pの印刷領域E(図中網掛けした領域部分)を9つの分割領域R1〜R9に分割する。本実施形態では、印刷領域Eは、用紙Pの外周端として有する4つの側辺PE1〜PE4のうち、搬送方向(図中白抜き矢印)と交差する幅方向の両側においてそれぞれ位置する側辺PE1および側辺PE3から内側に寸法La入った位置が印刷領域Eの幅方向の両側の領域端Eaとされている。また、搬送方向の両側においてそれぞれ位置する側辺PE2および側辺PE4から内側に寸法Lb入った位置が印刷領域Eの搬送方向の両側の領域端Ebとされている。そして、印刷領域Eは、幅方向の領域端Ea間をそれぞれ寸法Lcの幅で帯状に3等分割されるとともに、搬送向の領域端Eb間をそれぞれ寸法Ldの幅で帯状に3等分割される。
この幅方向と搬送方向の双方の分割の結果、印刷領域Eは、図4(a)に示すように、中央に位置する分割領域R5と、印刷領域Eの領域端に位置する複数の分割領域R1,R2,R3,R4,R6,R7,R8,R9の9つの矩形領域に分割される。このうち、分割領域R1,R3,R7,R9は、印刷領域Eにおいて、用紙Pの4つの側辺PE1〜PE4のうちの2つの側辺が繋がる用紙Pの角部PK1〜PK4に、それぞれ最も近い領域となる。
この4つの分割領域R1,R3,R7,R9は、当該分割領域間に位置し、印刷領域Eの隅を含まない4つの分割領域R2,R4,R6,R8とともに、印刷領域Eの縁に沿った周囲領域を形成する。そして、この周囲領域は、印刷領域Eにおいて用紙Pの各側辺PE1〜PE4から一定の距離内にある環状の帯領域を形成する。
図4(b)に示すように、本実施形態では、記憶部に記憶された設定テーブルには、分割領域R1〜R9の分割位置を示す寸法La,Lb,Lc,Ldの値が、記録部14へ搬送される用紙Pのサイズに応じて設定されている。ちなみに、図4(b)に示す設定テーブルには、各用紙サイズに対して、寸法Laと寸法Lbの値として同じ値「3mm」が設定されている。したがって、本実施形態では、記録部14に搬送される種々の用紙Pのそれぞれには、図4(a)に示すように、印刷領域Eの外周に沿って、インクが付着しない非印刷領域となる同一幅の余白領域Wが設けられる。
なお、本実施形態において、寸法Laと寸法Lbの値として「0mm」が設定されてもよい。これは、例えば、用紙Pにおいてインクが付着しない非印刷領域となる同一幅の余白領域Wが設けられない所謂縁なし印刷が行われる場合に設定される。そして、この場合は、分割領域R1,R3,R7,R9は、用紙Pの角部PK1,PK2,PK4,PK3をそれぞれ含む領域となる。
なお、本実施形態においては、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向の寸法(用紙幅)に基づいて分割領域が設定される。すなわち、用紙Pが、その用紙幅が所定の長さよりも短い場合、および、その用紙幅が所定の長さであって搬送方向の寸法の方が幅方向の寸法よりも長い用紙サイズの場合は、寸法Lcおよび寸法Ldの値は、それぞれ、各分割領域R1〜R9が印刷領域Eを9等分に分割した領域になる値に設定されている。一方、その用紙幅が所定の長さ以上であって、搬送方向の寸法(用紙長さ)よりも長い用紙サイズの場合は、分割領域R1〜R4,R6〜R9の各領域が、中央に位置する分割領域R5の大きさに比べてそれぞれが小さい領域となるように、設定テーブルにおいて寸法Lcと寸法Ldの値が設定される。
ちなみに、本実施形態では、所定の長さとして250mmが設定され、用紙Pの幅方向の寸法が250mmよりも小さい場合、および、用紙Pの幅方向の寸法が250mmであって搬送方向の寸法の方が幅方向の寸法よりも大きい用紙サイズの場合は、寸法Lcの値は、用紙幅から余白領域Wを除いた寸法の三分の一の寸法に設定されている。また、寸法Ldの値は、用紙長さから余白領域Wを除いた寸法の三分の一の寸法に設定されている。一方、用紙Pの幅方向の寸法(用紙幅)が250mm以上であって搬送方向の寸法(用紙長さ)よりも大きい用紙サイズ「A4横」と「B5横」について、寸法Lcおよび寸法Ldの値として「12mm」が設定されている。
図3に戻り、次のステップS3にて、分割領域のうち、用紙Pの角部に最も近い端部領域を含む連続領域を判定領域として設定する処理が行われる。本実施形態では、角部PK1に最も近い分割領域R1、角部PK2に最も近い分割領域R3、角部PK3に最も近い分割領域R9、および角部PK4に最も近い分割領域R7が端部領域となる。したがって、制御部は、判定領域設定部51として機能し、複数(ここでは9つ)の分割領域のうち、端部領域を含む複数の分割領域が連続する連続領域を判定領域として設定する(判定領域設定ステップ)。
次に、ステップS4にて、インクの吐出データに基づいて、判定領域に吐出されるインクの液量割合を示す印刷デューティの平均値を算出する処理が行われる。ここでは、制御部は液量割合算出部52として機能し、印刷データから取得したインクの吐出データに基づいて記録部14から判定領域とされた複数の分割領域に吐出されるインクの、当該記録部14からその複数の分割領域に吐出可能なインクの最大液量に対する液量割合の平均値を算出する(液量割合算出ステップ)。すなわち、ここで算出される液量割合の平均値とは、各分割領域の液量割合を平均した値である。なお、インクの最大液量は、ここでは用紙Pに最大ドット数で最大のドットを形成する場合に記録部14から吐出されるインクの液量である。
図5(a),(b)を参照して、ステップS3,S4での処理について説明する。
図5(a)に示すように、本実施形態では、判定領域は、端部領域である分割領域R1,R3,R7,R9と、この分割領域R1,R3,R7,R9のそれぞれに対して矩形の一辺が互いに線接触して用紙Pの各側辺PE1〜PE4に沿う方向において連続する1つの分割領域と、の2つ(複数)の分割領域で設定される。すなわち、本実施形態では、端部領域を含む2つの分割領域が連続する連続領域が判定領域とされ、図5(a)においてハッチング領域で示すように、合計8つの判定領域HR1〜HR8が設定される。一例として、判定領域HR1は、角部PK1に最も近い端部領域である分割領域R1と、この分割領域R1に対して1つの側辺PE1に沿って連続する分割領域R2と、によって設定される。また、判定領域HR5は、角部PK1に最も近い端部領域である分割領域R1と、この分割領域R1に対して1つの側辺PE4に沿って連続する分割領域R4と、によって設定される。
本実施形態では、判定領域HR1,HR2,HR3,HR4は、搬送方向と交差する幅方向の両側においてそれぞれ位置する側辺PE1および側辺PE3から一定の距離内の領域であり、カールの発生との相関が強い領域とされている。また、例えば、判定領域HR1が側辺PE1に沿って角部PK1側から当該側辺PE1の中心C1を超えて存在するように、各判定領域HR1,HR2,HR3,HR4は、側辺PE1または側辺PE3に沿って角部PK1,PK4,PK2,PK3側からそれぞれ当該側辺PE1または側辺PE3の中心を超えて存在する。
同様に、判定領域HR5,HR6,HR7,HR8は、搬送方向の両側においてそれぞれ位置する側辺PE2および側辺PE4から一定の距離内の領域である。また、例えば、判定領域HR5が側辺PE4に沿って角部PK1側から当該側辺PE4の中心C4を超えて存在するように、各判定領域HR5,HR6,HR7,HR8は、側辺PE4または側辺PE2に沿って角部PK1,PK2,PK4,PK3側からそれぞれ当該側辺PE4または側辺PE2の中心を超えて存在する。
なお、本実施形態において、8つの判定領域を設定せず、4つの角部PK1〜PK4を含む4つの判定領域HR1,HR2,HR3,HR4か、もしくは4つの角部PK1〜PK4を含む4つの判定領域HR5,HR6,HR7,HR8か、のいずれかを設定するようにしてもよい。例えば、用紙Pの材料に含まれる繊維の並び方向に応じてカールの発生が異なる場合、カールしやすい側辺に沿って分割領域が連続するように設定された判定領域とすることが好ましい。
図5(b)に示すように、本実施形態では、分割領域R1〜R9のうち、用紙Pの角部に近い領域ほどカールの発生との相関が強いことから、ステップS4での印刷デューティの平均値の算出処理に際して、実際に吐出されるインクの液量に対して、カールの発生との相関の強さに応じて重みづけを行う。すなわち、カールの発生との相関が強い用紙Pの角部PK1〜PK4に近い分割領域R1,R3,R7,R9は重みづけを「高」とし、角部PK1〜PK4から最も遠い分割領域R5は重みづけを「低」とする。そして、その他の分割領域R2,R4,R6,R8は重みづけを「中」とする。
例えば、「低」の重みづけの係数を「1」とした場合、判定領域HR1については、分割領域R1に吐出されるインクの液量に対して「高」の重みづけの係数として「1.3」を乗算し、分割領域R2に吐出されるインクの液量に対して「中」の重みづけの係数として「1.2」を乗算して、印刷デューティの平均値を算出する。ステップS4では、分割領域においてこのような重みづけの係数がそれぞれ吐出されるインクの液量に乗算され、8つの判定領域HR1〜HR8のそれぞれにおいて、印刷デューティの平均値が算出される。
図3に戻り、次のステップS5にて、印刷前の用紙の温度および湿度を検出する処理が行われる。ここでは、制御部が、プリンター11に備えらえた温湿度検出部70が検出する温度および湿度を取得することによって、紙送りローラー対17によって搬送される用紙Pの近傍の温度および湿度を、用紙Pの温度および湿度として検出する(温湿度検出ステップ)。
次に、ステップS6にて、インクの吐出データ、用紙のサイズ、搬送方向に対する向き、温度、および湿度に応じて、印刷デューティの閾値を設定する処理が行われる。本実施形態では、判定領域の大きさや形状に応じて閾値が設定され、例えば制御部が、予め実験などによって得られた数値(閾値)を、図示しない入力手段を用いてユーザーに入力させ、入力された数値を閾値テーブルとして記憶部に記憶することによって設定する。あるいは、印刷動作を制御するプログラムとともに入力される閾値テーブルを記憶部に記憶することによって閾値を設定する。
図6(a),(b)に、判定領域HR1〜HR8について設定された閾値を示す閾値テーブルの一例を示す。図6(a)は用紙幅が所定の長さ(250mm)より短い用紙サイズについて各分割領域に設定される閾値を示す閾値テーブルTAであり、図6(b)は用紙幅が所定の長さ(250mm)以上の用紙サイズについて各分割領域に設定される閾値を示す閾値テーブルTBである。すなわち、用紙幅が所定の長さ250mmより短い用紙の場合閾値テーブルTAが設定され、用紙幅が所定の長さ250mm以上の用紙の場合は閾値テーブルTBが設定される。
本実施形態では、用紙幅が所定の長さ250mmより短い用紙の場合(閾値テーブルTA)では、印刷領域Eにおいて分割領域R1〜R9のそれぞれに、用紙幅が所定の長さ250mm以上の用紙の場合(閾値テーブルTB)よりも大きな値の印刷デューティの閾値が設定される。すなわち、用紙幅が所定の長さ250mm以上の用紙の場合はカールが発生しやすいために、用紙幅が250mmより短い用紙の場合よりも印刷デューティの閾値を小さくしている。
なお、用紙Pに発生するカールは温度および湿度に依存することから、本実施形態では、温湿度検出部70によって、温度の状態が低温、室温、高温に区分けされるとともに、それぞれの温度において、湿度の状態が低湿と高湿とに区分された合計6つの状態が検出される。そして、検出された6つの状態において、それぞれ閾値が設定される。
また、用紙Pに発生するカールは、印刷される画像の解像度すなわちインクの付着によって形成される最大ドット数にも依存するため、各用紙サイズに対して、解像度が高い場合と低い場合についてそれぞれ閾値が設定される。例えば、最大ドット数が、600×1200ドットを低い解像度とし、600×2400ドットを高い解像度として、それぞれの閾値が設定される。
また、本実施形態では、各分割領域R1〜R9において、低温低湿の場合は他の場合に比較して閾値が小さく、また高温高湿の場合は一部の用紙サイズの用紙Pの閾値が他の場合に比較して大きく設定される。これは低湿に比べて高湿の方がカールは発生し難いためである。さらに、印刷される画像の解像度が低い方が、解像度が高い方の閾値よりも大きな閾値で設定される。これは、解像度の低い方がインクの付着(着弾)によって形成可能な最大ドット数が少ないので、カールは発生し難いためである。
図3に戻り、次に、ステップS7にて、印刷デューティは閾値以上か否かの判定処理が行われる。この処理は制御部によって行われ、ステップS4にて算出された判定領域HR1〜HR8のそれぞれの印刷デューティの平均値のうちの最も大きい平均値と、閾値テーブルによって設定された印刷デューティの閾値とが比較されることによって、カールの発生の有無が判定される(判定ステップ)。このステップS7での判定処理の結果、判定領域の算出された印刷ディーテュの平均値が、設定された閾値以上でなければ(ステップS7:NO)、カールの発生がないと判定され、何もせずここでの処理を終了する。
一方、ステップS7での判定処理の結果、判定領域HR1〜HR8のそれぞれの印刷デューティの平均値のうちの最も大きい平均値が、設定された印刷デューティの閾値以上であれば(ステップS8:YES)、カールの発生があると判定され、次のステップS8にて、記録部14の支持面13aからの距離を調節する処理が行われる。
図7(a),(b)を参照して、ステップS8での処理について説明する。
図7(a)において太い一点鎖線で示すように、支持台13の支持面13aに支持された用紙Pは、付着したインクに含まれる水分としてのインクの溶媒によって、印刷面側の水分含有量が非印刷面側の水分含有量よりも多くなり、上方に凸のカール状態となって支持面13a上を搬送される。この時、記録部14と用紙Pとが接触して擦れないように、記録部14の支持面13aからの距離GP、すなわち記録部14の下部と支持面13aとの間の隙間を調節する。ここでは、制御部が記録部位置調節部54として機能し、駆動源を駆動して偏心カム14b(図2(a)参照)を所定量回動させ、液体吐出ヘッドを保持する保持体14aを昇降させることによって、記録部14(液体吐出ヘッド)の支持面13aからの距離GPを、設定された値に調節する。
図7(b)に示すように、本実施形態では、距離GPは、印刷画像の解像度の高低および用紙Pの厚さに応じた値が予め設定され、距離テーブルとして記憶部に記憶されている。そして、記録部位置調節部54は、記録部14の支持面13aからの距離を、算出された印刷デューティが設定された閾値以上である場合には、閾値よりも小さい液量割合の場合よりも所定寸法長い距離に調節する。ちなみに、本実施形態では、算出された印刷デューティが設定された閾値以上である場合には、閾値よりも小さい印刷デューティの場合よりも0.7mm長い距離に調節する。
ちなみに、本実施形態では、印刷画像の解像度が低くて用紙Pが薄い場合であって算出された印刷デューティが設定された閾値より小さい場合には、距離GPは最も小さい1.3mmに調節され、その他の場合であって、算出された印刷デューティが設定された閾値より小さい場合には、距離GPは1.5mmに調節される。また、印刷画像の解像度が低くて用紙Pが薄い場合であって算出された印刷デューティが設定された閾値以上の場合には、距離GPは1.3mmに対して0.7mm大きい2mmに調節され、その他の場合であって算出された印刷デューティが設定された閾値以上の場合には、距離GPは1.5mmに対して0.7mm大きい2.2mmに調節される。
なお、本実施形態では、用紙Pの厚さは、例えば、ユーザーが用紙カセット12cに収容される用紙Pの種類を記憶部へ入力する際に設定される。あるいは、用紙Pの厚さは、印刷データに含まれて入力され、記憶部に設定される。そして、制御部が記憶部に設定された用紙Pの厚さを読み出して、ステップS8の処理を行う。
図3に戻り、次のステップS9にて、記録部14によって印刷された用紙Pの乾燥度合を調節する処理が行われる。ここでは、制御部が乾燥度合調節部55として機能し、搬送部29における搬送ローラー対19などの各ローラーの回転速度を制御し、用紙Pの搬送速度を調節することによって、記録部14から媒体排出口26までの用紙Pの搬送時間を調節する。この搬送時間の調節によって、用紙Pに付着したインクの乾燥時間が調節される。用紙Pは乾燥時間が調節されることによって付着したインクからのインクの溶媒の蒸発量が調節され、その結果、用紙Pの乾燥度合が調節される。
図8に、調節される乾燥時間の一例を示す。この乾燥時間は、本実施形態ではプログラムに付帯して入力され、記憶部に時間テーブルとして記憶される。そして、制御部が記憶部に設定された時間テーブルから対応する乾燥時間を読み出して、ステップS9の処理を行う。
図8に示すように、用紙Pの乾燥時間は印刷画像の解像度や用紙Pの厚さには依存せず設定されている。また、同じく各用紙サイズについても依存せず、用紙Pが搬送される媒体搬送路20の温度および湿度に依存する値が設定されている。すなわち、本実施形態では、温度の状態が低温、室温、高温に区分けされるとともに、それぞれの温度において、湿度の状態が低湿と高湿とに区分された合計6つの状態において、それぞれ乾燥時間が設定されている。ちなみに、本実施形態では、温度が低温であって湿度が低湿である場合に最も長い乾燥時間20秒が設定され、温度が高温であって湿度が高湿である場合に最も短い乾燥時間1秒が設定されている。また、低湿に比べて高湿の方がカールは発生し難いので、乾燥時間は短く設定されている。
なお、用紙Pは、インクが付着して浸透する紙層とインクの浸透していない紙層とのバイメタル効果でカールが発生する。したがって、カールを矯正するためにはインクを蒸発させて乾燥すればよいため、乾燥時間の長短ではなく、乾燥しやすいように搬送速度を上げて用紙Pを速い速度で送るようにして早く乾燥させることが可能である。ただし、用紙Pを速く搬送した場合は、記録部14から媒体排出口26まで用紙Pが移動する時間が短くなり、載置台60に載置されるときの用紙Pの乾燥度合が低くなってしまうことになる。ちなみに、用紙Pにおけるインクの蒸発量は、最高速で搬送されるときよりも、その2分の1の速度で搬送されるときの方が多く、さらにその4分の1の速度で搬送されるときの方がさらに多くなることが確かめられた。したがって、本実施形態では、このように搬送速度を遅くして乾燥時間を長くするようにして、媒体搬送路20を搬送される用紙Pを高い乾燥度合で乾燥するように調節する。
なお、本実施形態において、搬送部29がシート状の用紙Pを複数枚連続して搬送する場合、判定部53は、媒体搬送路20を搬送される複数枚の用紙Pのそれぞれについてカールが発生したか否かを判定する。そして、ここではその調節方法の具体的な説明は省略するが、乾燥度合調節部55は、複数枚の用紙Pのそれぞれに応じて、搬送部29により搬送される用紙Pの搬送速度を、例えば媒体排出路25において搬送ローラー対19の回転速度を調節することによって調節する。
また、搬送部29は、用紙Pを複数枚連続して搬送する場合、媒体搬送路20に沿って先に搬送する用紙Pと、後で搬送する用紙Pとが、媒体搬送路20において接触しないように用紙Pの搬送速度を調節する。例えば、媒体排出路25において印刷されて先に搬送される用紙Pの搬送速度が、乾燥度合を高くするように遅く調節された場合は、次に印刷されて搬送される用紙Pの搬送速度も遅くなるように、あるいは、搬送開始までの時間が遅くなるように調節して、用紙P同士の接触を抑制する。
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)印刷領域Eにおいて用紙Pの角部に近い端部領域を含む連続領域の液量割合(印刷デューティ)がカールの発生との相関が強いので、この連続領域を判定領域としてその印刷デューティの平均値によってカールの発生を精度よく判定することができる。この結果、精度よく判定されるカールの発生に応じて搬送される用紙Pと記録部14との擦れを適切に回避することによって、用紙Pに対して高品質の画像の記録を行うことが可能である。
(2)印刷領域Eにおいて端部領域を含む判定領域のうち印刷デューティの平均値の最も大きい領域部分がカールの発生との相関が強いので、この判定領域の印刷デューティの最も大きい平均値と閾値とを比較することによってカールの発生を精度よく判定することができる。
(3)印刷領域Eにおいて用紙Pの側辺から一定の距離内にある判定領域の印刷デューティがカールの発生との相関が強いので、この用紙Pの側辺から一定の距離内にある判定領域の印刷デューティの平均値によってカールの発生を精度よく判定することができる。
(4)用紙Pの側辺の中心を超える領域までを判定領域とすることによって、その判定領域の印刷デューティがカールの発生との相関が強くなるので、この判定領域の印刷デューティの平均値によってカールの発生を精度よく判定することができる。
(5)印刷領域Eにおいて温度および湿度とカールの発生との相関が強いので、検出した用紙Pの温度および湿度によってカールの発生を精度よく判定することができる。
(6)印刷領域Eにおいて端部領域を含む連続領域の印刷デューティがカールの発生との相関が強いので、この連続領域を判定領域としてその印刷デューティの平均値によってカールの発生を精度よく判定することができる。この結果、用紙Pに実際に発生するカールに応じて用紙Pの乾燥を適切に行うことによって、媒体搬送路20に沿って用紙Pを円滑に搬送することが可能である。
(7)ヒーターなどの加熱装置を別途設けることなく、実際に発生する用紙Pのカール量に応じた乾燥度合で用紙Pの乾燥を行うことができる。
(8)複数の用紙Pのそれぞれに発生するカールに応じて媒体搬送路20における搬送速度を調節することによって、発生した用紙Pのカールに応じた乾燥度合で用紙Pの乾燥を行うことができる。
(9)用紙Pに記録された画像等の品質の、用紙P同士の接触に伴う劣化を抑制することができる。
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、記録部14の支持面13aからの距離を調節する処理(ステップS8)と、記録部14によって印刷された用紙Pの乾燥度合を調節する処理(ステップS9)のうちの一方が行われるようにしてもよい。例えば、記録部14の支持面13aからの距離が大きく設定され、カールした用紙Pが接触する虞の無い場合、乾燥度合の調節処理のみを行うようにしてもよい。あるいは、搬送路においてカールした用紙Pがジャム状態になる虞がない場合は、記録部14の支持面13aからの距離調節のみ行うようにしてもよい。
・上記実施形態において、分割領域R1〜R9は、必ずしも印刷領域Eの領域端Ea,Ebまでの領域全体部分を分割した領域でなくてもよい。例えば、判定領域が設定される分割領域R1〜R9は、印刷領域Eの領域端Ea,Ebから内側に入った領域部分が分割された領域であってもよい。この変形例について図を参照して説明する。
図9に示すように、本変形例は、用紙Pの印刷領域Eにおいて、記録部14への搬送方向と交差する幅方向の両側の領域端Eaから、それぞれ内側に寸法Le分入った位置と、搬送方向の両端の領域端Ebから、それぞれ内側に寸法Lf分入った位置とで定まる、印刷領域Eよりも小さい内部領域が分割される。したがって、分割領域R1〜R9は、印刷領域Eにおける内部領域とされる。
本変形例のように、印刷領域Eにおいて、当該印刷領域Eの内部領域を分割して分割領域R1〜R9を形成することによって、判定領域として設定される分割領域には、印刷領域の領域端Ea,Ebが含まれないことになる。例えば、印刷領域の領域端Ea,Eb付近において付着したインクはインクが付着しない余白領域Wに拡散するために、インクの付着領域である印刷領域Eの内部におけるインクの拡散状態とは、その拡散状態が異なる場合がある。このような場合、印刷デューティの平均値とカールの発生との相関が変化することが起こり得る。そこで、この印刷領域の領域端Ea,Ebを含まない領域を分割領域(判定領域)とすることによって、判定領域における印刷デューティの平均値と、用紙Pに実際に発生するカール量とが相関する確率が高くなることが期待できる。
・上記実施形態において、印刷領域Eの分割数を多くしてもよい。また、判定領域として、用紙Pの角部に最も近い端部領域を含み、この端部領域に対して少なくとも用紙Pの1つの側辺に沿って連続する複数の連続領域が設定されてもよい。この変形例の一つとして、判定領域が2つの側辺に沿って連続する連続領域として設定される場合について図を参照して説明する。
図10(a)に示すように、本変形例では、制御部が、用紙Pの印刷領域Eにおいて、用紙の搬送方向と、この搬送方向と交差する幅方向と、の双方において、それぞれ等分に6分割して分割領域R11から分割領域R66までの合計36の分割領域を設定する。そして、図10(a)においてハッチング領域で示すように、判定領域は、用紙Pの角部に最も近い端部領域と、この端部領域に対して、その角部を挟む両側の側辺に沿って連続する分割領域が設定される。
例えば、本変形例の判定領域は、判定領域HR1に例示するように、角部PK1に最も近い端部領域である分割領域R11と、側辺PE1に沿って連続する1つの分割領域R12と、側辺PE4に沿って連続する3つの分割領域R21,R31,R41と、の合計5つの分割領域で設定されてもよい。あるいは、判定領域HR2に例示するように、角部PK2に最も近い端部領域である分割領域R16と、側辺PE1に沿って連続する2つの分割領域R15,R14と、側辺PE2に沿って連続する2つの分割領域R26,R36と、の合計5つの分割領域で設定されてもよい。あるいは、判定領域HR3に例示するように、角部PK3に最も近い端部領域である分割領域R66と、側辺PE3に沿って連続する1つの分割領域R56と、側辺PE3に沿って連続する2つの分割領域R65,R64と、さらに分割領域R56と分割領域R65の双方と連続する分割領域R55と、の合計5つの分割領域で設定されてもよい。なお、図10(a)では、角部PK4について設定される判定領域は省略されている。
図10(b)に示すように、本変形例においても、分割領域R11〜R66は印刷領域Eが等分割されてそれぞれ同じ領域面積とされている。したがって、図3に示すステップS4での印刷デューティの平均値の算出処理に際して、実際に吐出されるインクの液量を、カールの発生との相関の強さに応じて重みづけを行う。すなわち、本変形例では、カールの発生との相関が強い用紙Pの角部PK1〜PK4に最も近い端部領域となる分割領域R11,R16,R66,R61は重みづけが「高」とされ、端部領域に対して1つ隣に位置する各分割領域は重みづけが「中」とされる。そして、その他の分割領域は重みづけが「低」とされる。
・上記実施形態において、分割領域は必ずしも印刷領域Eにおいて等分割された領域でなくてもよい。例えば、領域面積の割合が、実際に吐出されるインクの液量と用紙Pのカールの発生との相関の強さに応じた重みづけと反比例の関係となるように分割されてもよい。この変形例について図を参照して説明する。なお、ここでは説明を容易にするため、図10(a)に示した分割と同様に、印刷領域Eが36分割されるものとしている。
図11に示すように、制御部が、用紙Pの印刷領域Eにおいて、搬送方向と交差する幅方向と、搬送方向との双方において、印刷領域Eのそれぞれの長さを「10」としたとき、「1:1.5:2.5:2.5:1.5:1」の比率の長さで帯状にそれぞれ6分割して、分割領域R11〜R66の合計36の分割領域を設定する。そして、図11においてハッチング領域で示すように、判定領域HR1,HR2,HR3が図10(a)と同様に連続する連続領域で設定される。こうすれば、分割領域の大きさ(領域面積)が重みづけとなるので、図3のステップS4での処理において、分割領域に対して重みづけの係数を乗算することなく、各判定領域において印刷デューティの平均値を算出することが可能であり、印刷デューティの平均値の算出処理が容易となる。
もとより、搬送方向と交差する幅方向と、搬送方向と、の双方における印刷領域Eのそれぞれの長さの分割比率は、印刷領域Eの分割数や、実際に吐出されるインクの液量と用紙Pのカールの発生との相関の強さなどに応じて設定されることが好ましい。
・上記実施形態において、判定領域は、必ずしも端部領域から用紙Pの1つの側辺に沿って連続する連続領域で設定されなくてもよい。本変形例について、図を参照して説明する。なお本変形例においても、印刷領域Eが図10(a)と同様に、36個に等分割された場合として説明する。
図12に示すように、本変形例では、判定領域は、判定領域HR1に例示するように、矩形の一辺が互いに線接触する状態の他に、領域が互いに一点で点接触する状態も、領域が連続する状態であるとする。すなわち、判定領域は、端部領域である分割領域R11と、この分割領域R11に対して点接触状態で連続する分割領域R22と、この分割領域R22に対して点接触状態で連続する分割領域R31と、この分割領域R31に対して側辺PE4に沿って線接触状態で連続する分割領域R41と、の合計4つの分割領域で設定されてもよい。
あるいは、判定領域は、判定領域HR3に例示するように、端部領域である分割領域R66と、この分割領域R66に対して点接触状態で連続する分割領域R55と、この分割領域R55に対して点接触状態で連続する2つの分割領域R46,R64と、の合計4つの分割領域で設定されてもよい。すなわち、判定領域は、印刷デューティの算出対象となる領域が、分割領域においてモザイク状に並んだ状態とされてもよい。
また、判定領域は、判定領域HR2に例示するように、端部領域である分割領域R16と、1つの側辺PE1に沿って連続する分割領域R15と、この分割領域R15に対して他の側辺PE2に沿って連続する分割領域R25と、この分割領域R25に対して側辺PE1に沿って連続する分割領域R24と、の合計4つの分割領域で設定されてもよい。すなわち、判定領域は、印刷デューティの算出対象となる領域が、分割領域において折れ曲がった状態とされてもよい。
・上記実施形態において、判定領域は、必ずしも用紙Pにおいて側辺から一定の距離内にある領域でなくてもよい。例えば、図12に示す変形例の場合の判定領域HR1,HR2,HR3のように、各判定領域は、用紙Pにおいて側辺PE1〜PE4から一定の距離内にある領域ではなく、距離が変化する領域とされてもよい。
このように判定領域が、用紙Pの側辺PE1〜PE4からの距離が変化する領域とされた場合でも、判定領域は端部領域から連続する連続領域であるので、用紙Pに発生するカールの発生との相関が維持される。換言すれば、用紙Pの側辺からの距離を一定にすることなく、カールの発生との相関が強い領域に応じて判定領域を設定することが好ましい。
・上記実施形態において、分割領域は必ずしも矩形の形状に分割されなくてもよい。本変形例について、図を参照して説明する。
図13に示すように、本変形例では、例えば、制御部は記録部14へ搬送される用紙Pの印刷領域E(図中網掛けした領域部分)を、用紙Pの各角部PK1〜PK4のそれぞれを中心とした、寸法La+寸法Lcの半径を有する円と、寸法La+寸法Lc+寸法Lcの半径を有する円と、の2つの同心円で分割するようしてもよい。この結果、印刷領域は、側辺PE1の長さが側辺PE2の長さより長い場合、図13に示すように、35個の分割領域R11〜R35に分割される。
この35個の分割領域のうち、例えば角部PK1に最も近い端部領域である分割領域R11は、その領域が角部PK1から一定の距離内となり、カールの発生に関して角部PK1とは「高」の相関を有する。また、分割領域R21,R12,R13は、角部PK1から一定の距離内であって、分割領域R11よりも角部PK1から離れた領域となり、カールの発生に関して角部PK1とは「中」の相関を有する。
他の角部PK2,PK3,PK4においても、ここでの説明は省略するが、角部PK1についてと同様に、カールの発生との相関を有する分割領域が、角部PK2,PK3,PK4から一定の距離内に設定される。したがって、本変形例では、例えば分割領域R12は、角部PK1と「中」の相関を有する一方、角部PK1と「中」の相関を有する。また、分割領域R21は、角部PK1と角部PK4との双方と「中」の相関を有する。また、分割領域R23は、各角部とカールの発生に関して「低」の相関を有する。
なお、本変形例において、分割領域は、用紙Pの角部ではなく、印刷領域Eの隅から一定の距離となるように分割されてもよい。すなわち、同心円の分割線が印刷領域Eの隅を中心とする円弧とされてもよい。要は、判定領域を構成する分割領域は、その判定領域の印刷デューティが、用紙Pに実際に発生するカール量と相関するように分割された領域であればよい。
・上記実施形態において、判定領域は、必ずしも用紙Pの全ての角部に設定されなくてもよい。例えば、用紙Pにおいて略均一にインクを付着するベタ印刷などの場合、各角部の判定領域において印刷デューティの平均値が同じになる。このような場合は、少なくとも1つの角部において判定領域が設定されればよい。
あるいは、複数の角部に判定領域が設定された場合において、必ずしも複数の判定領域の印刷デューティの平均値のうちの最も大きい平均値が、閾値を超えたか否かを判定しなくてもよい。例えば、複数の判定領域の印刷デューティの平均値について、その複数の平均値を更に平均した値が、閾値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。
・上記実施形態において、判定領域設定部51は、必ずしも、1つの側辺に沿って角部側から当該1つの側辺の中心を超えて判定領域が存在するように当該判定領域を設定しなくてもよい。例えば、判定領域HR1は、カールの発生を精度よく判定できる範囲であれば、角部PK1側から、側辺PE1の中心C1(図5(a)参照)を超えない領域で設定されてもよい。
・上記実施形態において、記録が行われる前の用紙Pの温度および湿度を検出する温湿度検出部70を備えなくてもよい。例えば、プリンター11が恒温恒湿の雰囲気中に設置されている場合など、用紙Pの温度および湿度の変化が抑制される場合は、温度および湿度を必ずしも検出する必要がない。
・上記実施形態において、例えば印刷データに複数ページ(複数枚)のデータが含まれている場合、複数ページのうち支持面13aから最も離間すべき距離に記録部14を退避(調節)して印刷データの全ページの印刷をするようにしてもよい。こうすれば、印字中に記録部14(ラインヘッド)の調節移動がなく、調節移動のための用紙Pの搬送が滞ることがないので、印刷のスループットの低下が抑制される。
あるいは、複数ページの印刷データの中で最も離間すべき1つのページの印刷が終了した後、この1つのページの次のページからは、印刷対象となるページの印刷データに応じて、段階的に記録部14の位置を支持面13aに接近させるように調節しても良い。すなわち、残りのページの中で最も離間すべきページの印刷データが終了した場合、再度記録部14の位置を支持面13aに接近させる構成である。こうすれば、記録部14の調節時の移動距離が長くならないように抑制でき、スループットの低下も抑えることができる。
・上記実施形態において、搬送部29は、用紙Pを複数(枚)連続して搬送する場合、先に搬送する用紙Pと、後で搬送する用紙Pとが、必ずしも媒体搬送路20において接触しないように用紙Pの搬送速度を調節しなくてもよい。例えば、用紙Pの中央部分の領域に印刷が行われ、用紙Pが互いに重なっても、その重なり部分において印刷部分が存在しない場合は、このように用紙Pを媒体搬送路20において接触させても差し支えない。
・上記実施形態において、乾燥度合調節部55は、必ずしも、搬送部29により搬送される用紙Pの搬送速度を調節することによって、用紙Pの乾燥度合を調節しなくてもよい。例えば、印刷された用紙Pを、一旦分岐搬送路24に搬送して分岐搬送路24内に所定の時間待機させた後、第3媒体供給路23に戻して記録部14を再び経由させ、媒体排出路25へ搬送することによって用紙Pの乾燥度合を調節するようにしてもよい。
あるいは、ここでは図示による説明を省略するが、例えば、媒体搬送路20の途中に、ヒーターなどの加熱装置を備え、加熱量を調節することによって用紙Pの乾燥度合を調節してもよい。あるいは、媒体搬送路20を搬送される用紙Pに風を当てることが可能な送風装置を備え、その当てる風の量(風量)や風の温度を調節することによって用紙Pの乾燥度合を調節してもよい。あるいは、用紙Pが搬送される媒体搬送路20の長さを調節することによって用紙Pの乾燥度合を調節してもよい。
・上記実施形態において、記録部14は、用紙Pの幅方向の略全域に渡ってインクを吐出可能な液体吐出ヘッドを備える所謂ラインヘッドの構成に限らない。例えば、記録部14は、用紙Pの搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジにインクを吐出する液体吐出ヘッドを備える所謂シリアルヘッドの構成であってもよい。
・上記実施形態において、記録部14から吐出する記録液であるインクの供給元は、例えばプリンター11の筐体12の内部に設けられるインク収容体であってもよい。あるいは、筐体12の外部に設けられる所謂外付けタイプのインク収容体であってもよい。特に外付けタイプのインク収容体の場合はインクの容量を大きくできるので、記録部14からより多くのインクの吐出を行うことが可能である。
なお、筐体12の外部に設けられたインク収容体から記録部14にインクを供給する場合には、インクを供給するためのインク供給チューブを筐体12の外部から内部へ引き回す必要がある。よって、この場合には、筐体12にインク供給チューブを挿通可能な孔や切り欠きなどを設けることが好ましい。あるいは筐体12に隙間を設け、この隙間を通してインク供給チューブを筐体12の外部から内部へ引き回しても良い。このようにすれば、インク供給チューブのインク流路を用いた記録部14に対するインクの供給を容易に行うことができる。
・上記実施形態において、記録装置としてのプリンター11は、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を含む)を噴射したり吐出したりして記録を行う流体吐出装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出して印刷を行う液状体吐出装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を吐出する粉粒体吐出装置(例えばトナージェット式印刷装置)であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体吐出装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。