JP6443415B2 - ガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、複数の電極が設けられた固体電解質層と発熱体とを有するセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
酸素濃度、NOx(窒素酸化物)濃度、内燃機関の空燃比等を測定するガスセンサのセンサ素子は、複数の電極が設けられた、ジルコニア等からなる固体電解質層と、固体電解質層に積層された、アルミナ等からなる絶縁層と、絶縁層に埋設された、通電によって発熱する発熱体とを備える。固体電解質層及び複数の電極は、発熱体から絶縁層を介した熱伝導により加熱され、目標とする活性化温度になるように温度が制御される。
また、センサ素子における、固体電解質層に設けられた電極へ検出ガスとしての排ガス等を導入する部分には、検出ガスを所定の拡散速度で電極へ導入するための多孔質のアルミナ等による多孔質層が設けられている。固体電解質層、絶縁層及び多孔質層はいずれも金属酸化物から構成される。このようなセンサ素子を有するガスセンサとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
また、例えば、特許文献2においては、ジルコニア固体電解質基体の内部に、発熱体が埋設されたセラミック絶縁層が設けられた構造を有する酸素センサ素子について開示されている。この酸素センサ素子においては、ジルコニア固体電解質基体とセラミック絶縁層との間に、気孔率が3〜20%である多孔質ジルコニア固体電解質層を配置し、ジルコニア固体電解質基体とセラミック絶縁層との接合力を高める工夫をして、酸素センサ素子にクラックが生じることを防止している。
特開2009−115618号公報 特開2004−85491号公報
特許文献2の酸素センサ素子は、セラミック絶縁層がジルコニア固体電解質基体の内部に設けられたものであり、固体電解質層と絶縁層とが積層されたものではない。この酸素センサ素子においては、固体電解質層に絶縁層が積層されたものに比べて、発熱体から固体電解質基体への伝熱は抑制されると考えられる。しかし、固体電解質基体による絶縁性能は低く、発熱体に通電を行う際に発熱体から生じるリーク電流が、固体電解質基体における電極によるガス検出精度に与える影響を考慮すると、特許文献2の酸素センサ素子は絶縁性に劣るといえる。
特許文献1等に示される、固体電解質層と絶縁層とが積層されたセンサ素子によれば、センサ素子において絶縁層が占める割合が、特許文献2の酸素センサ素子に比べて高い。そのため、固体電解質層と絶縁層とが積層されたセンサ素子によれば、その絶縁性を高めることができ、発熱体からリーク電流が生じにくくすることができる。
特許文献1等のセンサ素子においては、固体電解質層及び複数の電極を迅速に加熱するために、固体電解質層及び絶縁層にヒータを積層している。しかし、固体電解質層及び絶縁層にヒータを積層する場合には、センサ素子の各部がより高温に加熱されやすく、センサ素子の各部を構成する金属酸化物の材質の違いが無視できなくなる場合がある。特に、センサ素子がヒータによって急激に加熱されるときには、センサ素子の各部を構成する金属酸化物の材質の違いにより、各部の金属酸化物の熱膨張量の差が一時的に増大し、金属酸化物同士の界面又は界面の周辺にクラックが生じることが懸念される。
本願発明者らは、絶縁層における、固体電解質層と発熱体との間に位置する部分に、金属酸化物からなる伝熱抑制層を配置するといった工夫によって、発熱体から絶縁層を介した固体電解質層への熱伝導を適切に抑制し、金属酸化物同士の界面又は界面の周辺にクラックが生じにくくできることを見出した。特許文献2においては、ジルコニア固体電解質基体とセラミック絶縁層との接合力を高めて酸素センサ素子にクラックが生じることを防止することしか記載されていない。本願発明者らは、ヒータから固体電解質への熱伝導を適切に抑制するといった全く新しい着眼によって、クラックの発生を抑制することを見出した。
引用文献2においては、ジルコニア固体電解質基体とセラミック絶縁層との間に、ジルコニア固体電解質基体よりもヤング率が低い多孔質ジルコニア固体電解質層を配置して、これらの界面に作用する、熱膨張差に起因する熱応力を緩和している。
ここで、熱伝導率は、熱伝導率=熱拡散率×比熱×密度の式で表される。気孔率が3〜20%である多孔質ジルコニア固体電解質層の密度は、ジルコニア固体電解質基体の80〜97%となる。また、気孔を有しないジルコニア固体電解質基体と、多孔質ジルコニア固体電解質層との熱拡散率及び比熱にはほとんど差がない。そのため、多孔質ジルコニア固体電解質層の熱伝導率は、ジルコニア固体電解質基体の熱伝導率に比べて80%程度低くなる。
本願発明者らは、固体電解質層と絶縁層とが積層されたタイプのセンサ素子において、クラックの発生を効果的に抑制するためには、絶縁層内に配置する伝熱抑制層の熱伝導率を、絶縁層の熱伝導率よりもどれだけ低くすればよいかを見出した。そして、この伝熱抑制層の熱伝導率を低くする割合によって、センサ素子におけるクラックの発生を効果的に抑制できることが分かった。
また、特許文献2の酸素センサ素子は、発熱体から固体電解質基体への伝熱を抑制する一定の効果はあると考えられるものの、絶縁性に劣る。そのため、絶縁性の確保と、クラックの発生の抑制とを両立させるためには、更なる工夫が必要とされる。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、絶縁性を確保するとともに、金属酸化物同士の界面又は界面の周辺にクラックが生じにくくすることができるガスセンサを提供しようとして得られたものである。
本発明の一態様は、ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
上記センサ素子は、
金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されている、ガスセンサにある。
本発明の他の態様は、ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
上記センサ素子は、
金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
上記検出ガス室は、上記固体電解質層の第1主面(201)に隣接して、上記拡散抵抗層と上記絶縁層とによって囲まれて形成されており、
上記固体電解質層の第2主面(202)には、上記絶縁層によって囲まれた、基準ガス(A)が導入される基準ガスダクト(52)が隣接して形成されており、
上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されており、
上記検出ガス室の外形を上記伝熱抑制層に、上記積層方向に向けて投影したときに、上記伝熱抑制層は、上記検出ガス室の外形を覆う位置及び大きさに形成されている、ガスセンサにある。
本発明のさらに他の態様は、ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
上記センサ素子は、
金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
上記センサ素子は、上記固体電解質層を複数備え、上記検出ガス室は、上記固体電解質層同士の間に形成されており、
上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されており、
複数の上記固体電解質層のうちの上記伝熱抑制層に最も近い特定固体電解質層の側面は、上記絶縁層内に埋設されており、
上記特定固体電解質層の外形を上記伝熱抑制層に、上記積層方向(D)に向けて投影したときに、上記伝熱抑制層は、上記特定固体電解質層の外形を覆う位置及び大きさに形成されている、ガスセンサにある。
上記ガスセンサのセンサ素子においては、絶縁層における、固体電解質層と発熱体との間に位置する部分には、発熱体から固体電解質層等への伝熱を抑制するための伝熱抑制層が配置されている。この伝熱抑制層を構成する金属酸化物の熱伝導率は、絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の大きさである。この伝熱抑制層により、次の効果が得られる。
発熱体の発熱により、発熱体から絶縁層を介して固体電解質層へ、固体電解質層と絶縁層との積層方向に向けて伝達される熱は、絶縁層を伝わりやすい一方、伝熱抑制層を伝わりにくい。そして、特に、センサ素子が発熱体によって急激に加熱されるときにおいても、発熱体から生じる熱が、固体電解質層と絶縁層との積層方向に対して直交する方向に隣接する、金属酸化物同士の界面の周辺又は金属酸化物と検出ガス室との界面の周辺を急激に加熱することが抑制される。これにより、上記直交する方向において、センサ素子を構成する各部の金属酸化物の熱膨張量の差が緩やかに生じ、金属酸化物同士の界面の周辺、又は金属酸化物と検出ガス室との界面の周辺にクラックが生じにくくすることができる。
なお、上記直交する方向に隣接する金属酸化物同士の界面には、固体電解質層と絶縁層との界面、拡散抵抗層と絶縁層との界面等がある。また、上記直交する方向に隣接する金属酸化物と検出ガス室との界面には、拡散抵抗層と検出ガス室との界面、絶縁層と検出ガス室との界面等がある。
また、上記センサ素子は、固体電解質層と絶縁層とが積層された構造を有するものである。そのため、センサ素子において絶縁層が占める割合が高く、発熱体からリーク電流が生じにくくすることができる。
それ故、上記ガスセンサによれば、絶縁性を確保するとともに、センサ素子における金属酸化物同士の界面の周辺又は金属酸化物と検出ガス室との界面の周辺にクラックが生じにくくすることができる。
伝熱抑制層を構成する金属酸化物の熱伝導率が、絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率よりも低くても、伝熱抑制層を構成する金属酸化物の熱伝導率が、絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率に比べて59%よりも大きい場合には、クラックが生じにくくする効果が十分に得られない。
なお、本発明の態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
実施形態1にかかる、センサ素子の断面を示す説明図。 実施形態1にかかる、センサ素子の各構成要素を、センサ素子を分解した状態で示す斜視図。 実施形態1にかかる、センサ素子を備えるガスセンサの断面を示す説明図。 実施形態1の比較品1にかかる、センサ素子の断面を示す説明図。 実施形態1の比較品1にかかる、図4の一部を拡大して示す説明図。 実施形態2にかかる、センサ素子の断面を示す説明図。 実施形態2にかかる、センサ素子の各構成要素を、センサ素子を分解した状態で示す斜視図。 実施形態2の比較品2にかかる、センサ素子の断面を示す説明図。 実施形態2の比較品2にかかる、図8の一部を拡大して示す説明図。 実施形態2にかかる、他のセンサ素子の断面を示す説明図。
上述したガスセンサにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
本形態のガスセンサ100は、酸素、NOx等のガス濃度を検出するセンサ素子1を備える。センサ素子1は、図1に示すように、金属酸化物からなる1つの固体電解質層2と、固体電解質層2の両主面201,202に設けられた一対の電極31,32と、固体電解質層2に積層された金属酸化物からなる絶縁層41,42,43,44,45と、絶縁層44,45に埋設された発熱体6とを備える。絶縁層43,44における、固体電解質層2と発熱体6との間に位置する部分には、絶縁層41,42,43,44,45を構成する金属酸化物の熱伝導率よりも熱伝導率が低い金属酸化物からなる伝熱抑制層7が配置されている。伝熱抑制層7を構成する金属酸化物の熱伝導率は、絶縁層41,42,43,44,45を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下である。
本形態のガスセンサ100は、車両の排気管に配置され、排気管を流れる排ガスを検出ガスGとするとともに大気を基準ガスAとし、検出ガスG中の酸素、NOx(窒素酸化物)等の濃度、内燃機関の空燃比(A/F)等を検出するために用いられる。ガスセンサ100のセンサ素子1は、固体電解質層2を構成する金属酸化物のシートと、絶縁層41,42,43,44,45を構成する金属酸化物のシートとを積層し、焼結して形成されたものである。
図3に示すように、ガスセンサ100は、センサ素子1、ハウジング70、絶縁碍子71,72、接点端子73、リード線74、カバー75、ブッシュ76、二重のカバー77A,77B等を備える。
センサ素子1は絶縁碍子71に保持されており、絶縁碍子71はハウジング70に保持されている。ガスセンサ100は、ハウジング70によって排気管に取り付けられ、センサ素子1は、排気管内に配置される。また、ハウジング70には、センサ素子1の先端部を覆う二重のカバー77A,77Bが取り付けられている。センサ素子1は、長尺形状に形成されており、検出ガスGを検出するためのガス検知部10は、センサ素子1における長尺方向Lの先端側の端部に設けられている。
一対の電極31,32は固体電解質層2の先端部に設けられており、ガス検知部10は、センサ素子1における、一対の電極31,32が位置する先端部に形成されている。また、ガス検知部10は、アルミナ(酸化アルミニウム)等の多孔質の保護層12によって覆われている。
絶縁碍子71の基端側には、接点端子73を保持する別の絶縁碍子72が配置されている。後述する、各電極31,32のリード部311,321及び発熱体6のリード部62は、センサ素子1の基端部に引き出され、接点端子73に接続されている。接点端子73に接続されたリード線74は、ハウジング70の基端側に取り付けられたカバー75内において、ブッシュ76によって保持されている。
固体電解質層2は、金属酸化物の焼結体として板状に形成されている。固体電解質層2を構成する金属酸化物は、イットリア安定化ジルコニア等のジルコニア(酸化ジルコニウム)の材料からなる。この金属酸化物は、ジルコニアを主成分とする種々の材料によって構成することができる。固体電解質層2は、その活性化温度において、酸化物イオン(酸素イオン)の伝導性を有するものである。
図1に示すように、一対の電極31,32は、固体電解質層2の第1主面201に設けられて検出ガスGに晒される測定電極31と、固体電解質層2の第2主面202に設けられて基準ガスAに晒される基準電極32とからなる。測定電極31と基準電極32とは固体電解質層2を介して互いに対向する位置に設けられている。測定電極31及び基準電極32と、これらの間に配置された固体電解質層2の一部とによって、ガス濃度を検出するための検出セル11が形成されている。
なお、第1主面201、第2主面202とは、固体電解質層2における表面のうち最も面積が大きな一対の表面のことをいう。
本形態のガスセンサ100は、酸素センサ又はA/Fセンサとして用いられる。そして、ガスセンサ100のセンサ素子1においては、測定電極31に接触する検出ガスGの酸素濃度と基準電極32に接触する基準ガスAの酸素濃度との差によって、測定電極31と基準電極32との間に流れる電流が測定され、検出ガスGの酸素濃度が求められる。
また、ガスセンサ100をNOxセンサとして用いる場合には、固体電解質層2の第1主面201には、酸素濃度を所定の濃度以下に調整するためのポンプ電極と、NOx濃度を測定するための測定電極とが設けられる。この場合、ガスセンサ100のセンサ素子1においては、検出ガスGのNOx濃度によって、測定電極と基準電極との間に流れる電流が測定され、検出ガスGのNOx濃度が求められる。
図2に示すように、測定電極31及び基準電極32は、白金と、固体電解質層2と同種の金属酸化物からなる固体電解質とを含有している。測定電極31及び基準電極32には、測定電極31及び基準電極32をガスセンサ100の外部の制御装置に接続するためのリード部311,321がそれぞれ繋がっている。各リード部311,321は、各電極31,32からセンサ素子1の基端部まで引き出されている。
図1、図2に示すように、固体電解質層2の第1主面201には、検出ガス室51を形成するための切欠き穴が設けられた第2絶縁層42と、第1絶縁層41とが順次積層されている。第2絶縁層42には、検出ガス室51へ検出ガスGを所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層40が配置されている。拡散抵抗層40は、多孔質のアルミナの材料によって構成されている。拡散抵抗層40は、検出ガス室51の両側に配置されている。検出ガス室51は、固体電解質層2の第1主面201に接する位置において、第1絶縁層41、第2絶縁層42及び拡散抵抗層40によって囲まれて形成されている。
固体電解質層2の第2主面202には、第3絶縁層43が積層されている。固体電解質層2の第2主面202に接する位置には、第3絶縁層43によって囲まれ、基準ガスAが導入される基準ガスダクト52が形成されている。基準ガスダクト52には、センサ素子1の基端部から大気が導入される。
発熱体6は、第3絶縁層43に積層された第4絶縁層44と、第4絶縁層44に積層された第5絶縁層45との間に埋設されている。発熱体6は、蛇行する導体によって形成されて通電によって発熱する発熱部61と、発熱部61を構成する導体の両端に繋がる導体であって、ガスセンサ100の外部の制御装置によって発熱部61に通電するための一対のリード部62とを有している。各リード部62の電気抵抗率、言い換えれば単位長さ当たりの電気抵抗値は、発熱部61の電気抵抗率よりも低い。そして、一対のリード部62に通電を行うときには、発熱部61が発熱し、検出セル11を加熱することができる。
発熱部61は、固体電解質層2に各電極31,32が配置された部位を、センサ素子1の積層方向Dに向けて絶縁層44,45へ投影した部位に配置されている。ここで、センサ素子1の積層方向Dとは、固体電解質層2と複数の絶縁層41,42,43,44,45とが積層された方向のことをいう。
なお、第1絶縁層41、第2絶縁層42、第3絶縁層43、第4絶縁層44及び第5絶縁層45は、センサ素子1を焼結する際に一体化される。そして、発熱体6及び伝熱抑制層7は、一体化された絶縁層43,44,45の内部に埋設される。
伝熱抑制層7は、金属酸化物の焼結体として板状に形成されている。伝熱抑制層7を構成する金属酸化物は、固体電解質層2を構成する金属酸化物と同種の金属酸化物であるイットリア安定化ジルコニア等のジルコニアの材料からなる。この金属酸化物は、ジルコニアを主成分とする種々の材料によって構成することができる。複数の絶縁層41,42,43,44,45は、アルミナの材料によって構成されている。複数の絶縁層41,42,43,44,45を構成するアルミナの材料の密度は、拡散抵抗層40を構成するアルミナの材料の密度に比べて高い。
ジルコニアの熱伝導率は、室温〜1000℃において、2〜10[W・m-1・K-1]であり、アルミナの熱伝導率は、室温〜1000℃において、7〜36[W・m-1・K-1]である。ただし、ジルコニア又はアルミナに他成分が含有される場合には、その含有量によっては、この数値に当てはまらない場合もある。熱伝導率は、熱伝導のしやすさを示す物性値であり、熱抵抗率の逆数として表される。
伝熱抑制層7を構成するジルコニアの材料の熱伝導率は、絶縁層41,42,43,44,45を構成するアルミナの材料の熱伝導率を100%とした場合に、10〜59%の大きさとすることができる。伝熱抑制層7の熱伝導率が、絶縁層41,42,43,44,45の熱伝導率の59%よりも大きい場合には、後述する拡散抵抗層40の部分にクラックKが生じにくくする効果が十分に得られない。
また、ジルコニアの線膨張係数(線膨張率)は、室温〜1000℃において、7×10-6〜2×10-5[K-1]であり、アルミナの線膨張係数(線膨張率)は、室温〜1000℃において、6×10-6〜1.5×10-5[K-1]である。ただし、ジルコニア又はアルミナに他成分が含有される場合には、その含有量によっては、この数値に当てはまらない場合もある。
固体電解質層2及び伝熱抑制層7は、ジルコニア材料以外の金属酸化物の焼結体によって構成することも可能である。固体電解質層2には、強度及び耐熱の観点から、ジルコニア材料を用いることが最適である。また、伝熱抑制層7は、絶縁層41,42,43,44,45を構成するアルミナ材料よりも熱伝導率の低い金属酸化物として、ムライト(3Al23・2SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、コージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)等とすることも可能である。ただし、伝熱抑制層7は、固体電解質層2を構成するジルコニア材料と同種のジルコニア材料から構成することにより、センサ素子1の製造を簡単にし、センサ素子1内の熱膨張のムラを少なくし、また、センサ素子1の強度の信頼性を向上させることができる。
図4に示すように、固体電解質体2と発熱部61との間に伝熱抑制層7が設けられていない場合には、発熱部61によって生じる熱は、絶縁層94を最短距離で伝わろうとする。そのため、図5に示すように、発熱部61に近い、拡散抵抗層40と検出ガス室51と固体電解質層2との第1境界部分A1は、発熱部61から遠い、拡散抵抗層40と検出ガス室51と絶縁層941との第2境界部分A2よりも強く加熱される。この場合には、検出ガス室51と接する拡散抵抗層40の部分には、発熱部61に近い位置ほど温度が高くなる、積層方向Dの温度勾配が生じる。
伝熱抑制層7は、この温度勾配が生じることを緩和するものである。すなわち、固体電解質体2と発熱体6との間に伝熱抑制層7が設けられていることにより、発熱部61から固体電解質層2へ向けた熱は、伝熱抑制層7を幅方向Wへ回り込んで伝わろうとする。この熱が伝熱抑制層7を幅方向Wに回り込む作用は、伝熱抑制層7の幅方向Wの両側面が第3絶縁層43又は第4絶縁層44の内部に埋設されていることにより、より顕著になる。
そして、伝熱抑制層7を幅方向Wへ回り込む熱は、第1境界部分A1に伝わった後に第2境界部分A2へ伝わるといった発熱部61からの最短距離による伝熱ではなく、第1境界部分A1及び第2境界部分A2へ幅方向Wの外側からほぼ同時に伝わろうとする伝熱となる。これにより、第1境界部分A1と第2境界部分A2との加熱状態ができるだけ等しくなり、検出ガス室51と接する拡散抵抗層40の部分に、積層方向Dの温度勾配が生じにくくすることができる。
本形態の伝熱抑制層7の全ての表面、すなわち両主面及び全側面(4つの側面)は、第3絶縁層43又は第4絶縁層44の内部に配置されている。これ以外にも、例えば、伝熱抑制層7の4つの側面のうちのいずれか1つ又は互いに対向する2つは、第3絶縁層43又は第4絶縁層44の外部に露出していてもよい。
図2に示すように、伝熱抑制層7は、発熱部61の外形(平面形状)を、センサ素子1の積層方向Dに向けて伝熱抑制層7に投影したときに、発熱部61の外形を覆う位置及び大きさに形成されている。より具体的には、伝熱抑制層7の幅方向Wの寸法W1は、発熱部61の幅方向Wの寸法W2よりも大きく、伝熱抑制層7の長手方向Lの寸法L1は、発熱部61の長手方向Lの寸法L2よりも大きい。なお、幅方向Wは、センサ素子1の長手方向L及び積層方向Dに直交する方向である。
この構成により、発熱部61において生じる熱が、拡散抵抗層40と検出ガス室51と固体電解質層2との第1境界部分A1へ、最短距離で伝わることを抑制する効果を高めることができる。
なお、伝熱抑制層7の厚み等が大きい場合には、伝熱抑制層7は、発熱部61の外形(平面形状)を、センサ素子1の積層方向Dに向けて伝熱抑制層7に投影したときに、必ずしも発熱部61の外形を覆う位置及び大きさに形成されていなくてもよい。この場合においても、発熱部61と伝熱抑制層7との大きさの関係は、伝熱抑制層7に、検出ガス室51の外形(平面形状)をセンサ素子1の積層方向Dに向けて投影したときに、伝熱抑制層7が検出ガス室51の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成されていることが好ましい。より具体的には、伝熱抑制層7の幅方向Wの寸法W1は、検出ガス室51の幅方向Wの寸法W3よりも大きく、伝熱抑制層7の長手方向Lの寸法L1は、検出ガス室51の長手方向Lの寸法L3よりも大きいことが好ましい。
この構成によっても、発熱部61において生じる熱が、拡散抵抗層40と検出ガス室51と固体電解質層2との第1境界部分A1へ、最短距離で伝わることを抑制する効果を高めることができる。
伝熱抑制層7の厚みtは、5〜72μmとすることができる。ジルコニアの粒子の直径は1μm程度であり、伝熱抑制層7の厚みtが5μm未満である場合には、伝熱抑制層7による十分な伝熱抑制効果が得られないおそれがある。また、伝熱抑制層7を印刷(ペーストの塗布)によって形成する場合、伝熱抑制層7を5μm未満の厚みtに形成することは困難と考えられる。一方、伝熱抑制層7の厚みtが72μm超過まで厚くなると、センサ素子1の使用時に、伝熱抑制層7の周辺にクラック等が生じることが懸念される。
図1に示すように、第3絶縁層43と第4絶縁層44とに挟まれた伝熱抑制層7は、発熱体6の発熱部61から積層方向Dにできるだけ離れた位置に配置されている。具体的には、伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1は、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2よりも狭い。伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1は、伝熱抑制層7の主面と固体電解質層2の第2主面202との間の最小間隔として表される。また、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2は、伝熱抑制層7の主面と発熱部61の表面との間の最小間隔として表される。
この構成によっても、発熱部61において生じる熱が、拡散抵抗層40と検出ガス室51と固体電解質層2との第1境界部分A1へ、最短距離で伝わることを抑制する効果を高めることができる。
センサ素子1の温度制御は、検出セル11の温度と、検出セル11のインピーダンスとの関係を用いて行われる。検出セル11の温度と、検出セル11のインピーダンスとの関係は、関係マップとして制御装置に記憶されている。制御装置には、検出セル11のインピーダンスを測定する回路が形成されている。発熱体6への印加電力は、PWM制御(パルス幅変調制御)等を利用したPID制御等によって、検出セル11のインピーダンスが目標とする値になるよう調整される。
本形態のセンサ素子1においては、第3絶縁層43と第4絶縁層44との間に、発熱体6から固体電解質層2等への伝熱を抑制するための伝熱抑制層7が埋設されていることにより、センサ素子1を構成する金属酸化物同士の界面又は界面の周辺にクラックが生じにくくする効果が得られる。
以下に、伝熱抑制層7が配置された本形態のセンサ素子1と、本形態のセンサ素子1から伝熱抑制層7が除かれた従来のセンサ素子9(図4参照)とを比較して、各センサ素子1,9におけるクラック(割れ)の生じやすさについて考察する。
図4に示すように、従来のセンサ素子9においては、発熱部61から生じた熱は、センサ素子9の積層方向Dに向けて、絶縁層94、固体電解質層2及び拡散抵抗層40へと伝達される。そして、特に、発熱部61の発熱によってセンサ素子9を急激に昇温するときには、センサ素子9においては、発熱部61に近い部分ほど高温になり、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配が生じる。このとき、検出ガス室51と接する拡散抵抗層40の部分においても、発熱部61に近い部分ほど高温になり、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配が生じる。
そして、図5に示すように、拡散抵抗層40における、発熱部61に近い部分は、検出ガス室51の側へ多く膨張し、拡散抵抗層40における、発熱部61から遠い部分は、検出ガス室51の側へほとんど膨張しない状態が形成される。ここで、同図は、図4における二点鎖線X1で囲む部分を拡大して示す。
この構成により、積層方向Dに対して直交する方向に拡散抵抗層40と検出ガス室51とが隣接する界面M1においては、大きな熱応力が作用することになる。そして、界面M1に作用する熱応力が許容値を超えるときには、特に、界面M1における、拡散抵抗層40の絶縁層941側の位置にクラックKが生じるおそれがある。
一方、図1に示すように、本形態のセンサ素子1においては、発熱体6の発熱部61の発熱により、発熱部61から絶縁層43,44を介して固体電解質層2へ、センサ素子1の積層方向Dに向けて伝達される熱は、絶縁層43,44を伝わりやすい一方、伝熱抑制層7を伝わりにくい。これにより、発熱部61から固体電解質層2及び拡散抵抗層40へは、伝熱抑制層7を介して緩やかに熱が伝わるとともに、伝熱抑制層7を回り込んで熱が伝わる。そのため、検出ガス室51と接する拡散抵抗層40の部分において生じる温度勾配が緩やかになり、発熱部61から生じる熱が固体電解質層2の周辺を急激に加熱することが抑制される。
こうして、拡散抵抗層40における、発熱部61に近い部分と発熱部61から遠い部分とに生じる熱膨張量の差が小さくなる。これにより、積層方向Dに対して直交する方向において拡散抵抗層40と検出ガス室51とが隣接する界面M1に作用する熱応力も小さくなる。そのため、この熱応力が許容値を超えにくくなり、界面M1における、拡散抵抗層40の絶縁層41側の位置にクラックKが生じにくくなる。
また、センサ素子1は、固体電解質層2と絶縁層41,42,43,44,45とが積層された構造を有するものである。そのため、センサ素子1において絶縁層41,42,43,44,45が占める割合が高く、絶縁層44,45内に埋設された発熱体6の発熱部61から、絶縁層44,45へリーク電流が生じにくくすることができる。
それ故、本形態のセンサ素子1によれば、絶縁性を確保するとともに、金属酸化物からなる拡散抵抗層40と検出ガス室51との界面M1に位置する、拡散抵抗層40にクラックKが生じにくくすることができる。
なお、図4に示す従来のセンサ素子9においては、絶縁層94と基準ガス室52との間の、積層方向Dに直交する方向に隣接する界面に位置する絶縁層94においても、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配により、クラックKが生じるおそれがある。図1に示す本形態のセンサ素子1によれば、伝熱抑制層7の配置により、絶縁層43と基準ガス室52との間の、積層方向Dに直交する方向に隣接する界面に位置する絶縁層43においても、クラックKが生じにくくすることができる。
(実施形態2)
本形態においては、図6に示すように、電極33,34が設けられた2枚の固体電解質層2A,2Bを用いたセンサ素子1について示す。
本形態のセンサ素子1においては、2枚の固体電解質層2A,2Bの間に、検出ガスGが導入される検出ガス室51が形成されている。第1固体電解質層2Aの両主面203,204には、検出ガス室51内の検出ガスGの酸素濃度を調整するための一対のポンプ電極33が、第1固体電解質層2Aを介して互いに対向する位置に設けられている。一方のポンプ電極33は、検出ガス室51内に配置されており、他方のポンプ電極33は、検出ガスGが透過可能な多孔質体からなるガス導入層40A内に埋設されている。
第2固体電解質層2Bの両主面205,206には、検出ガス室51内の検出ガスGの酸素濃度を検出するための一対の検出電極34が、第2固体電解質層2Bを介して互いに対向する位置に設けられている。一方の検出電極34は、検出ガス室51内に配置されており、他方の検出電極34は、絶縁層44A内に埋設されている。一対の検出電極34と、これらの間に配置された第2固体電解質層2Bの一部とによって、ガス濃度を検出するための検出セル11が形成されている。
図6、図7に示すように、本形態の絶縁層は、第1固体電解質層2Aに積層された第1絶縁層41A、第1固体電解質層2Aと第2固体電解質層2Bとの間に挟まれた第2絶縁層42A、第2固体電解質層2Bの全側面を囲む第3絶縁層43A、第2固体電解質層2B及び第3絶縁層43Aに積層された第4絶縁層44A、第4絶縁層44Aに順次積層された第5絶縁層45A及び第6絶縁層46Aからなる。
ガス導入層40Aは、第1絶縁層41Aに囲まれた状態で第1固体電解質層2Aに積層されている。第2絶縁層42Aの一部には、検出ガスGを所定の拡散速度で検出ガス室51に導入するための拡散抵抗層40Bが形成されている。
第1固体電解質層2Aの全側面は、第1絶縁層41A内に埋設されており、第2固体電解質層2Bの全側面は、第3絶縁層43A内に埋設されている。第2固体電解質層2Bは、伝熱抑制層7に最も近い特定固体電解質層である。
伝熱抑制層7は、第4絶縁層44Aと第5絶縁層45Aとの間に埋設されている。発熱体6は、第5絶縁層45Aと第6絶縁層46Aとの間に埋設されている。また、伝熱抑制層7を構成する金属酸化物の熱伝導率は、絶縁層41A,42A,43A,44A,45A,46Aを構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下である。
図8に示すように、固体電解質体2Bと発熱部61との間に伝熱抑制層7が設けられていない場合には、発熱部61によって生じる熱は、絶縁層94を最短距離で伝わろうとする。そのため、図9に示すように、第2固体電解質層2Bと絶縁層943との界面M2においては、発熱部61に最も近い、第2固体電解質層2Bと絶縁層94と絶縁層943との境界部分A3が強く加熱される。この場合には、界面M2には、発熱部61に近い位置ほど温度が高くなる、積層方向Dの温度勾配が生じる。
伝熱抑制層7は、この温度勾配が生じることを緩和するものである。すなわち、第2固体電解質体2Bと発熱部61との間に伝熱抑制層7が設けられていることにより、発熱部61から第2固体電解質層2Bへ向けた熱は、伝熱抑制層7を幅方向Wへ回り込んで伝わろうとする。そのため、伝熱抑制層7を幅方向Wへ回り込む熱は、界面M2における、発熱部61に近い位置から遠い位置に向けて順次伝わるといった、発熱部61からの最短距離による伝熱ではなく、界面M2の全体へ幅方向Wの外側からほぼ同時に伝わろうとする。これにより、界面M2の積層方向Dの各部の加熱状態ができるだけ等しくなり、界面M2に、積層方向Dの温度勾配が生じにくくすることができる。
図7に示すように、伝熱抑制層7は、特定固体電解質層としての第2固体電解質層2Bの外形(表面形状)を、センサ素子1の積層方向Dに向けて伝熱抑制層7に投影したときに、第2固体電解質層2Bの外形を覆う位置及び大きさに形成されている。より具体的には、伝熱抑制層7の幅方向Wの寸法W1は、第2固体電解質層2Bの幅方向Wの寸法W4よりも大きく、伝熱抑制層7の長手方向Lの寸法L1は、第2固体電解質層2Bの長手方向Lの寸法L4よりも大きい。
この構成により、発熱部61において生じる熱が、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aと第4絶縁層44Aとの境界部分へ、最短距離で伝わることを抑制する効果を高めることができる。
図6には、伝熱抑制層7の外形(寸法W1,L1)が、第2固体電解質層2Bの外形(寸法W4,L4)よりも大きく、さらに発熱体6の発熱部61の外形(寸法W2,L2)よりも大きい場合について示す。これ以外にも、伝熱抑制層7の厚み等が大きい場合には、図10に示すように、伝熱抑制層7の外形(寸法W1,L1)は、第2固体電解質層2Bの外形(寸法W4,L4)よりも大きい一方、発熱部61の外形(寸法W2,L2)よりも小さくてもよい。
第4絶縁層44Aと第5絶縁層45Aとに挟まれた伝熱抑制層7は、発熱体6の発熱部61から積層方向Dにできるだけ離れた位置に配置されている。具体的には、伝熱抑制層7と第2固体電解質層2Bとの間隔D3は、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D4よりも狭い。伝熱抑制層7と第2固体電解質層2Bとの間隔D3は、伝熱抑制層7の主面と第2固体電解質層2Bの主面206との間の最小間隔として表される。また、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D4は、伝熱抑制層7の主面と発熱部61の表面との間の最小間隔として表される。
この構成によっても、発熱部61において生じる熱が、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aと第4絶縁層44Aとの境界部分へ、最短距離で伝わることを抑制する効果を高めることができる。
以下に、伝熱抑制層7が配置された本形態のセンサ素子1と、本形態のセンサ素子1から伝熱抑制層7が除かれた従来のセンサ素子9(図8参照)とを比較して、各センサ素子1,9におけるクラック(割れ)の生じやすさについて考察する。
図8に示すように、従来のセンサ素子9においては、発熱部61から生じた熱は、センサ素子9の積層方向Dに向けて、絶縁層94及び第2固体電解質層2Bへと伝達される。そして、特に、発熱部61の発熱によってセンサ素子9を急激に昇温するときには、センサ素子9においては、発熱部61に近い部分ほど高温になり、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配が生じる。このとき、第2固体電解質層2Bと、第2固体電解質層2Bの側面に隣接する絶縁層943との界面M2においても、発熱部61に近い部分ほど高温になり、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配が生じる。
そして、図9に示すように、第2固体電解質層2Bの線膨張率が絶縁層943の線膨張率よりも大きいことにより、第2固体電解質層2Bにおける、発熱部61に近い部分は、絶縁層943の側へ多く膨張し、第2固体電解質層2Bにおける、発熱部61から遠い部分は、絶縁層943の側へほとんど膨張しない状態が形成される。ここで、同図は、図8における二点鎖線X2で囲む部分を拡大して示す。
この構成により、積層方向Dに対して直交する方向に第2固体電解質層2Bと絶縁層943とが隣接する界面M2における、発熱体6に近い側の端部においては、大きな熱応力が作用することになる。そして、界面M1に作用する熱応力が許容値を超えるときには、特に、第2固体電解質層2BにクラックKが生じるおそれがある。
一方、図6に示すように、本形態のセンサ素子1においては、発熱体6の発熱部61の発熱により、発熱部61から各絶縁層44A,45Aを介して第2固体電解質層2Bへ、センサ素子1の積層方向Dに向けて伝達される熱は、絶縁層44A,45Aを伝わりやすい一方、伝熱抑制層7を伝わりにくい。これにより、発熱部61から第2固体電解質層2Bへは、伝熱抑制層7を介して緩やかに熱が伝わるとともに、伝熱抑制層7を回り込んで熱が伝わる。そのため、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aとの界面M2において生じる温度勾配が緩やかになり、発熱部61から生じる熱が第2固体電解質層2Bの周辺を急激に加熱することが抑制される。
こうして、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aとの界面M2における、発熱部61に近い部分と発熱部61から遠い部分とに生じる熱膨張量の差が小さくなる。これにより、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aとの界面M2に作用する熱応力が小さくなる。そのため、この熱応力が許容値を超えにくくなり、第2固体電解質層2BにクラックKが生じにくくなる。
また、センサ素子1は、各固体電解質層2A,2Bと絶縁層41A,42A,43A,44A,45A,46Aとが積層された構造を有するものである。そのため、センサ素子1において絶縁層41A,42A,43A,44A,45A,46Aが占める割合が高く、絶縁層45A,46A内に埋設された発熱体6の発熱部61から、絶縁層45A,46Aへリーク電流が生じにくくすることができる。
それ故、本形態のセンサ素子1によっても、絶縁性を確保するとともに、金属酸化物同士の界面としての、第2固体電解質層2Bと第3絶縁層43Aとの界面M2において、特に第2固体電解質層2BにクラックKが生じにくくすることができる。
なお、図8に示す従来のセンサ素子9においては、拡散抵抗層40Bと検出ガス室51との間の、積層方向Dに直交する方向に隣接する界面に位置する拡散抵抗層40Bにおいても、発熱部61から遠い部分ほど低温になるといった温度勾配により、クラックKが生じるおそれがある。図6に示す本形態のセンサ素子1によれば、伝熱抑制層7の配置により、拡散抵抗層40Bと検出ガス室51との間の、積層方向Dに直交する方向に隣接する界面に位置する拡散抵抗層40Bにおいても、クラックKが生じにくくすることができる。
本形態のセンサ素子1においても、伝熱抑制層7の厚みt、寸法W1,W2,L1,L2によって表される発熱体6の発熱部61と伝熱抑制層7との大きさの関係等のその他の構成は、上記実施形態1の場合と同様である。また、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素等は、実施形態1の場合と同様である。本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
(確認試験1)
本確認試験においては、伝熱抑制層7を構成する金属酸化物の熱伝導率E1が、絶縁層41,42,43,44,45を構成する金属酸化物の熱伝導率E2よりもどれだけ低い場合に、センサ素子の早期活性時においてセンサ素子にクラックが生じにくくなるかの確認を行った。
本確認試験においては、実施形態1に示したセンサ素子1が伝熱抑制層7を有しない場合(図4のセンサ素子9)である比較品1、及び実施形態1に示したセンサ素子1であって、伝熱抑制層7の熱伝導率E1が異なる複数種類のセンサ素子1である試験品1〜4を準備した。また、絶縁層41,42,43,44,45には、熱伝導率E2が32[W・m-1・K-1]であるアルミナを用い、伝熱抑制層7には、熱伝導率E1が8[W・m-1・K-1]であるジルコニア、又はジルコニアとアルミナの混合物を用いた。
試験品1〜4においては、伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2よりも狭くし(D1<D2)、伝熱抑制層7は、検出ガス室51の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成した。
そして、本確認試験においては、発熱体6に印加する電圧を10〜27Vの範囲で変更したときに、比較品1のセンサ素子9及び試験品1〜4のセンサ素子1の各拡散抵抗層40にクラックが生じたか否かを確認した。発熱体6の発熱部61の抵抗値は2.0Ωとし、伝熱抑制層7の厚みは10μmとし、発熱体6に印加する電圧の時間は5秒間とした。また、クラックが生じた部分が染色される方法を利用してクラックの有無を確認した。
表1に、確認を行った結果を示す。同表においては、クラックが生じなかった場合を○で示し、クラックが生じた場合を×で示す。また、伝熱抑制層7の熱伝導率E1を絶縁層41,42,43,44,45の熱伝導率E2で除した値を熱伝導率比E1/E2とし、試験品1〜4の熱伝導率比E1/E2を示す。
Figure 0006443415
比較品1のセンサ素子9においては、発熱体6への印加電圧を21V以上に大きくしたときに拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。また、試験品1のセンサ素子1において、熱伝導率比E1/E2が81%である場合には、比較品1と同様に、発熱体6への印加電圧を21V以上に大きくしたときに拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。この場合には、伝熱抑制層7が設けられていても、この伝熱抑制層7の熱伝導率E1が絶縁層41,42,43,44,45の熱伝導率E2に近いために、伝熱抑制層7によって伝熱を抑制する効果が得られなかったことに起因する。
一方、試験品2,3のセンサ素子1において、熱伝導率比E1/E2が59%及び38%である場合には、発熱体6への印加電圧を25Vまで大きくしても拡散抵抗層40にクラックは生じなかった。さらに、試験品4のセンサ素子1において、熱伝導率比E1/E2が25%である場合には、発熱体6への印加電圧を27Vまで大きくしても拡散抵抗層40にクラックは生じなかった。
以上の結果より、試験品2〜4のセンサ素子1として、絶縁層41,42,43,44,45を構成する金属酸化物の熱伝導率E2に比べて、伝熱抑制層7を構成する金属酸化物の熱伝導率E1が59%以下である場合には、センサ素子1の早期活性時に、拡散抵抗層40にクラックが生じにくくなることが分かった。
(確認試験2)
本確認試験においては、実施形態1に示したセンサ素子1(試験品5〜7)と、実施形態1に示した従来のセンサ素子9(比較品2)とについて、各センサ素子1,9の早期活性時におけるクラック耐性を確認した。具体的には、発熱体6に印加する電圧を10〜27Vの範囲で変更したときに、各センサ素子1,9の拡散抵抗層40にクラックが生じたか否かを確認した。発熱体6の発熱部61の抵抗値は2.0Ωとし、伝熱抑制層7の厚みは10μmとし、発熱体6に印加する電圧の時間は5秒間とした。また、クラックが生じた部分が染色される方法を利用してクラックの有無を確認した。なお、絶縁層41,42,43,44,45にはアルミナを用い、伝熱抑制層7にはジルコニアを用いた。
また、試験品5〜7のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7を発熱部61から遠い位置に配置した場合、すなわち伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2よりも狭くした場合(D1<D2)と、発熱部61に近い位置に配置した場合、すなわち伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2よりも広くした場合(D1>D2)とについて、クラックの有無を確認した。また、試験品5〜7のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7の外形を検出ガス室51の外形よりも大きくした場合(W1>W3及びL1>L3の場合)と、伝熱抑制層7の外形を検出ガス室51の外形よりも小さくした場合(W1<W3及びL1<L3の場合)とについて、クラックの有無を確認した。
表2に、確認を行った結果を示す。同表においては、クラックが生じなかった場合を○で示し、クラックが生じた場合を×で示す。
Figure 0006443415
比較品2のセンサ素子9においては、発熱体6への印加電圧を22V以上に大きくしたときに拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。一方、間隔の関係がD1<D2の場合であって、外形の関係がW1>W3及びL1>L3の場合である、試験品5のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を27Vまで大きくしても拡散抵抗層40にクラックは生じなかった。また、間隔の関係がD1<D2の場合であって、外形の関係がW1<W3及びL1<L3の場合である、試験品6のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を23V以上に大きくしたときに拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。また、間隔の関係がD1>D2の場合であって、外形の関係がW1>W3及びL1>L3の場合である、試験品7のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を24V以上に大きくしたときに拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。
以上の結果より、試験品5〜7のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7を有することによって、伝熱抑制層7を有しない比較品2のセンサ素子9に比べて、センサ素子1の早期活性時に、拡散抵抗層40にクラックが生じにくくなることが分かった。この理由は、伝熱抑制層7によって、発熱体6の発熱部61からの拡散抵抗層40への伝熱を緩やかにすることができたためであると考える。
また、間隔の関係がD1<D2を満たし、かつ外形の関係がW1>W3及びL1>L3を満たす試験品5の場合に、拡散抵抗層40にクラックが最も生じにくくなることが分かった。この理由は、上記条件を満たす場合に、拡散抵抗層40の積層方向Dに生じる温度勾配を最も緩やかにすることができたためであると考える。
(確認試験3)
本確認試験においては、実施形態1に示したセンサ素子1について、伝熱抑制層7の適切な厚みtを確認した。具体的には、伝熱抑制層7の厚みtを2〜109μmの範囲で変更させたときに、拡散抵抗層40又は伝熱抑制層7にクラックが生じたか否かを確認した。発熱体6の発熱部61の抵抗値は2.0Ωとし、発熱体6に印加する電圧は27Vとし、電圧を印加する時間は5秒間とした。また、クラックが生じた部分が染色される方法を利用してクラックの有無を確認した。
また、伝熱抑制層7と固体電解質層2との間隔D1を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D2よりも狭くし(D1<D2)、伝熱抑制層7は、検出ガス室51の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成した。また、絶縁層41,42,43,44,45にはアルミナを用い、伝熱抑制層7にはジルコニアを用いた。
表3に、確認を行った結果を示す。同表においては、クラックが生じなかった場合を○で示し、クラックが生じた場合を×で示す。
Figure 0006443415
伝熱抑制層7の厚みが2μmである場合には、拡散抵抗層40にクラックが生じることが確認された。この理由は、伝熱抑制層7の厚みtが小さくなり過ぎ、発熱体6の発熱部61から拡散抵抗層40への伝熱を、伝熱抑制層7によって十分に抑制できなかったためであると考える。
一方、伝熱抑制層7の厚みが81μm以上になる場合には、伝熱抑制層7にクラックが生じることが確認された。この理由は、伝熱抑制層7の厚みtが大きくなり過ぎ、伝熱抑制層7に、積層方向Dに向けた温度勾配が生じて、伝熱抑制層7に加わる熱応力が増大したためであると考える。
そして、伝熱抑制層7の厚みは、4〜75μmとすることにより、センサ素子1にクラックが生じにくくできることが確認された。
(確認試験4)
本確認試験においては、実施形態2に示したセンサ素子1(試験品8〜10)と、実施形態2に示した従来のセンサ素子9(比較品3)とについて、各センサ素子1,9の早期活性時におけるクラック耐性を確認した。具体的には、発熱体6に印加する電圧を10〜27Vの範囲で変更したときに、各センサ素子1,9の第2固体電解質層2Bにクラックが生じたか否かを確認した。発熱体6の発熱部61の抵抗値は2.0Ωとし、伝熱抑制層7の厚みは10μmとし、発熱体6に印加する電圧の時間は5秒間とした。また、クラックが生じた部分が染色される方法を利用してクラックの有無を確認した。なお、絶縁層41A,42A,43A,44A,45A,46Aにはアルミナを用い、伝熱抑制層7にはジルコニアを用いた。
また、試験品8〜10のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7を発熱部61から遠い位置に配置した場合、すなわち伝熱抑制層7と第2固体電解質層2Bとの間隔D3を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D4よりも狭くした場合(D3<D4)と、発熱部61に近い位置に配置した場合、すなわち伝熱抑制層7と第2固体電解質層2Bとの間隔D3を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D4よりも広くした場合(D3>D4)とについて、クラックの有無を確認した。また、試験品8〜10のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7の外形を第2固体電解質層2Bの外形よりも大きくした場合(W1>W4及びL1>L4の場合)と、伝熱抑制層7の外形を第2固体電解質層2Bの外形よりも小さくした場合(W1<W4及びL1<L4の場合)とについて、クラックの有無を確認した。
表4に、確認を行った結果を示す。同表においては、クラックが生じなかった場合を○で示し、クラックが生じた場合を×で示す。
Figure 0006443415
比較品3のセンサ素子9においては、発熱体6への印加電圧を21V以上に大きくしたときに第2固体電解質層2Bにクラックが生じることが確認された。一方、間隔の関係がD3<D4の場合であって、外形の関係がW1>W4及びL1>L4の場合である、試験品8のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を27Vまで大きくしても第2固体電解質層2Bにクラックは生じなかった。また、間隔の関係がD3<D4の場合であって、外形の関係がW1<W4及びL1<L4の場合である、試験品9のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を24V以上に大きくしたときに第2固体電解質層2Bにクラックが生じることが確認された。また、間隔の関係がD3>D4の場合であって、外形の関係がW1>W4及びL1>L4の場合である、試験品10のセンサ素子1においては、発熱体6への印加電圧を25V以上に大きくしたときに第2固体電解質層2Bにクラックが生じることが確認された。
以上の結果より、試験品8〜10のセンサ素子1においては、伝熱抑制層7を有することによって、伝熱抑制層7を有しない比較品3のセンサ素子9に比べて、センサ素子1の早期活性時に、第2固体電解質層2Bにクラックが生じにくくなることが分かった。この理由は、発熱体6の発熱部61からの第2固体電解質層2Bへの伝熱を、伝熱抑制層7によって緩やかにすることができたためであると考える。
また、間隔の関係がD3<D4を満たし、かつ外形の関係がW1>W4及びL1>L4を満たす試験品8の場合に、第2固体電解質層2Bにクラックが最も生じにくくなることが分かった。この理由は、上記条件を満たす場合に、第2固体電解質層2Bの積層方向Dに生じる温度勾配を最も緩やかにすることができたためであると考える。
(確認試験5)
本確認試験においては、実施形態2に示したセンサ素子1について、伝熱抑制層7の適切な厚みtを確認した。具体的には、伝熱抑制層7の厚みtを3〜101μmの範囲で変更させたときに、第2固体電解質層2B又は伝熱抑制層7にクラックが生じたか否かを確認した。発熱体6の発熱部61の抵抗値は2.0Ωとし、発熱体6に印加する電圧は27Vとし、電圧を印加する時間は5秒間とした。また、クラックが生じた部分が染色される方法を利用してクラックの有無を確認した。
また、伝熱抑制層7と第2固体電解質層2Bとの間隔D3を、伝熱抑制層7と発熱部61との間隔D4よりも狭くし(D3<D4)、伝熱抑制層7は、第2固体電解質層2Bの外形の全体を覆う位置及び大きさに形成した。また、絶縁層41A,42A,43A,44A,45A,46Aにはアルミナを用い、伝熱抑制層7にはジルコニアを用いた。
表5に、確認を行った結果を示す。同表においては、クラックが生じなかった場合を○で示し、クラックが生じた場合を×で示す。
Figure 0006443415
伝熱抑制層7の厚みtが3μmである場合には、第2固体電解質層2Bにクラックが生じることが確認された。この場合には、伝熱抑制層7の厚みtが小さくなり過ぎ、発熱体6の発熱部61から第2固体電解質層2Bへの伝熱を、伝熱抑制層7によって十分に抑制できなかったためであると考える。
一方、伝熱抑制層7の厚みtが81μm以上になる場合には、伝熱抑制層7にクラックが生じることが確認された。この場合には、伝熱抑制層7の厚みtが大きくなり過ぎ、伝熱抑制層7に、積層方向Dに向けた温度勾配が生じて、伝熱抑制層7に加わる熱応力が増大したためであると考える。
そして、伝熱抑制層7の厚みは、5〜72μmとすることにより、センサ素子1にクラックが生じにくくできることが確認された。
なお、本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。
100 ガスセンサ
1 センサ素子
2,2A,2B 固体電解質層
31,32,33,34 電極
41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A 絶縁層
6 発熱体
7 伝熱抑制層

Claims (7)

  1. ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
    上記センサ素子は、
    金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
    該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
    上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
    上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
    上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
    該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
    上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
    上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されている、ガスセンサ。
  2. ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
    上記センサ素子は、
    金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
    該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
    上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
    上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
    上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
    該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
    上記検出ガス室は、上記固体電解質層の第1主面(201)に隣接して、上記拡散抵抗層と上記絶縁層とによって囲まれて形成されており、
    上記固体電解質層の第2主面(202)には、上記絶縁層によって囲まれた、基準ガス(A)が導入される基準ガスダクト(52)が隣接して形成されており、
    上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
    上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されており、
    上記検出ガス室の外形を上記伝熱抑制層に、上記積層方向に向けて投影したときに、上記伝熱抑制層は、上記検出ガス室の外形を覆う位置及び大きさに形成されている、ガスセンサ。
  3. ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
    上記センサ素子は、
    金属酸化物からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、
    該固体電解質層の両主面(201,202,203,204,205,206)に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、
    上記固体電解質層における上記主面のいずれかに隣接して形成され、上記電極のいずれかに検出ガス(G)を接触させるための検出ガス室(51)と、
    上記固体電解質層に積層され、上記検出ガス室へ上記検出ガス(G)を所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、
    上記固体電解質層に積層された金属酸化物からなる絶縁層(41,42,43,44,45,41A,42A,43A,44A,45A,46A)と、
    該絶縁層に埋設された発熱体(6)と、を備え、
    上記センサ素子は、上記固体電解質層を複数備え、上記検出ガス室は、上記固体電解質層同士の間に形成されており、
    上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成する金属酸化物の熱伝導率を100%とした場合に、59%以下の熱伝導率を有する金属酸化物からなるとともに、厚み(t)が5〜72μmである伝熱抑制層(7)が配置されており、
    上記センサ素子の長手方向(L)と、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)とに直交する方向を幅方向(W)としたとき、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側面が上記絶縁層の内部に埋設されていることにより、上記伝熱抑制層の上記幅方向の両側には、上記絶縁層が配置されており、
    複数の上記固体電解質層のうちの上記伝熱抑制層に最も近い特定固体電解質層の側面は、上記絶縁層内に埋設されており、
    上記特定固体電解質層の外形を上記伝熱抑制層に、上記積層方向(D)に向けて投影したときに、上記伝熱抑制層は、上記特定固体電解質層の外形を覆う位置及び大きさに形成されている、ガスセンサ。
  4. 上記固体電解質層及び上記伝熱抑制層は、ジルコニア材料によって構成されており、
    上記絶縁層は、アルミナ材料によって構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  5. 上記発熱体は、蛇行する導体によって形成されて通電によって発熱する発熱部(61)と、該発熱部を構成する導体の両端に繋がる導体であって、上記発熱部の電気抵抗率よりも電気抵抗率が低く、上記発熱部に通電するための一対のリード部(62)とを有し、
    上記発熱部の外形を上記伝熱抑制層に、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)に向けて投影したときに、上記伝熱抑制層は、上記発熱部の外形を覆う位置及び大きさに形成されている、請求項1又はに記載のガスセンサ。
  6. 上記伝熱抑制層は、上記絶縁層の内部に埋設されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  7. 上記伝熱抑制層と該伝熱抑制層に最も近い上記固体電解質層との間隔(D1,D3)は、上記伝熱抑制層と上記発熱体との間隔(D2,D4)よりも狭い、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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