JP6443294B2 - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

Description

本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。

従来、内燃機関の駆動軸から従動軸まで駆動力を伝達する駆動力伝達経路に設けられ、従動軸により開閉駆動される吸気バルブ等のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置が知られている。特許文献１に開示された油圧式のバルブタイミング調整装置は、クランクシャフトと連動して回転するハウジングと、ハウジング内に設けられてカムシャフトと連動して回転するベーンロータとを備える。

ハウジングは、筒状のケースと、ケースの一端面に組み合わされたスプロケットと、ケースの他端面に組み合わされたカバーとを有する。ベーンロータは、ハウジングの内部空間を周方向の一方側の第１油圧室と周方向の他方側の第２油圧室とに仕切るベーン部を形成している。バルブタイミング調整装置は、各油圧室に供給される作動油の圧力に応じてベーンロータをハウジングに対して相対回転させてバルブタイミングを調整する。

特開２００５−３４４５８６号公報

特許文献１において、ケースの一端面とスプロケットとの間には、油圧室からの油漏れを抑制するためのシール部材が設けられている。しかし、シール部材が設けられたとしても、油圧室の油圧が相当高まったときの油漏れを十分に抑制することが困難である。また、特許文献１では、油圧室の油圧が過大に上昇したとき、ハウジングが変形するおそれがある。ハウジングが変形すると、ハウジングとスプロケットとの間の隙間が大きくなり、油圧室からの油漏れが増大する可能性がある。

本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧室の油圧上昇時におけるハウジングの変形を抑制しつつ、油圧室からの油漏れを抑制することができるバルブタイミング調整装置を提供することである。

本発明によるバルブタイミング調整装置は、第１ハウジングと、第２ハウジングと、ベーンロータとを備えている。
第１ハウジングは、駆動軸および従動軸の一方と連動して回転する。第２ハウジングは、有底筒状であり、開口側端部が第１ハウジングと組み合わされた状態で当該第１ハウジングに固定されている。ベーンロータは、駆動軸および従動軸の他方と連動して回転し、第２ハウジングの内部空間を周方向一方側の第１油圧室と周方向他方側の第２油圧室とに仕切るベーン部を有し、第１油圧室および第２油圧室に供給される作動油の圧力に応じてハウジングに対して相対回転する。
さらに、第１ハウジングは、少なくとも、第２ハウジングの開口側端部のうち第１油圧室および第２油圧室に対して径方向外側に位置する部分に嵌合している嵌合部を有する。
本発明の第一の態様では、嵌合部は、第２ハウジング側へ突き出している１つまたは複数の突起である。開口側端部は、周方向において嵌合部と係合する係合部と、周方向の一部が径方向内側へ凹むように形成された１つまたは複数の凹部を有する。また、嵌合部は、凹部に嵌め込まれており、係合部は、凹部の内壁面のうち周方向の端部から構成されている。
本発明の第二の態様では、嵌合部は、第２ハウジング側へ突き出している複数の突起であり、少なくとも開口側端部のうち径方向厚みの最薄部分に嵌合しており、当該最薄部分よりも周方向長さが長い。

以上のように構成されたバルブタイミング調整装置では、第１ハウジングの嵌合部は、第２ハウジングの開口側端部の径方向外側への変形に対する強度を高めるように作用する。また、開口側端部の外壁面は、端面のみならず、径方向において嵌合部と対向する面もシール部として機能する。さらに、開口側端部は、油圧が高まるほど大きな力で嵌合部に押し付けられて、嵌合部との間のシール性を向上させる。したがって、本発明によれば、油圧室の油圧上昇時におけるハウジングの変形を抑制しつつ、油圧室からの油漏れを抑制することができる。

本発明の第１実施形態によるバルブタイミング調整装置の縦断面を示す図である。 図１のバルブタイミング調整装置のＩＩ−ＩＩ線断面を示す図である。 図１の第２ハウジングを第１ハウジング側から見た図である。 図１の第１ハウジングを第２ハウジング側から見た図である。 図２の第１ハウジングおよび第２ハウジングのＶ−Ｖ線断面を示す図である。 図１のＶＩ−ＶＩ線断面を示す図である。 図１のＶＩＩ部分を拡大して示す図である。 本発明の第２実施形態によるバルブタイミング調整装置の縦断面を示す図であって、第１実施形態における図６に相当する図である。 図８の第１ハウジングおよび第２ハウジングのＩＸ−ＩＸ線断面を示す図である。

以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
［第１実施形態］
本発明の第１実施形態によるバルブタイミング調整装置を図１に示す。バルブタイミング調整装置１０は、内燃機関のクランクシャフト９１に対してカムシャフト９２を相対回転させることにより、カムシャフト９２が開閉駆動する図示しない吸気バルブのバルブタイミングを調整するものである。バルブタイミング調整装置１０は、クランクシャフト９１からカムシャフト９２までの駆動力伝達経路に設けられている。クランクシャフト９１は、特許請求の範囲に記載の「駆動軸」に相当する。カムシャフト９２は、特許請求の範囲に記載の「従動軸」に相当する。

（基本的な構成）
先ず、バルブタイミング調整装置１０の基本的な構成について図１、図２を参照して説明する。
図１、図２に示すように、バルブタイミング調整装置１０は、第１ハウジング２０、第２ハウジング３０およびベーンロータ４０を備えている。

第１ハウジング２０は、環状であり、カムシャフト９２の端部に嵌合している。本実施形態では、第１ハウジング２０は、スプロケットであり、チェーン９３を巻き掛け可能な外歯部２１を形成している。第１ハウジング２０は、チェーン９３を介してクランクシャフト９１に連結可能であり、クランクシャフト９１に連動して回転する。

第２ハウジング３０は、有底筒状であり、開口側端部３１の端面３２が第１ハウジング２０と組み合わされた状態でボルト１５により第１ハウジング２０に固定されている。第２ハウジング３０の筒部は、径方向内側へ突き出す複数の突出部３３を形成している。各突出部３３は、周方向において互いに離間するように配置されている。

ベーンロータ４０は、第２ハウジング３０内に設けられており、ボス部４１および複数のベーン部４２を形成している。ボス部４１は、スリーブボルト５１によりカムシャフト９２に固定されている。ベーン部４２は、ボス部４１から径方向外側へ突き出しており、第２ハウジング３０の内部空間すなわち各突出部３３間の空間を進角室４３と遅角室４４とに仕切っている。遅角室４４は、特許請求の範囲に記載の「第１油圧室」に相当し、ベーン部４２に対して周方向の一方に位置している。進角室４３は、特許請求の範囲に記載の「第２油圧室」に相当し、ベーン部４２に対して周方向の他方に位置している。ベーンロータ４０は、進角室４３および遅角室４４に供給される作動油の圧力に応じて第２ハウジング３０に対して相対回転する。以下、進角室４３と遅角室４４とを特に区別しないときは、「油圧室４３、４４」と記載する。

ベーンロータ４０の中央部には油路切換弁５０が設けられている。油路切換弁５０は、スリーブボルト５１およびスプール６１などから構成されている。
スリーブボルト５１は、頭部５２とねじ部５３との間にスリーブ部５４を形成している。スリーブ部５４は、ベーンロータ４０の進角油路４５を介して進角室４３に連通している進角ポート５５と、ベーンロータ４０の遅角油路４６を介して遅角室４４に連通している遅角ポート５６と、カムシャフト９２の供給油路９４等を介してオイルポンプ９５の吐出口に連通している供給ポート５７と、カムシャフト９２のドレン油路９６およびベーンロータ４０のドレン油路４７を介して外部のドレン空間に連通しているドレンポート５８とを有する。筒状の頭部５２の内壁面とスプール６１の外壁面との間には、外部のドレン空間に連通している環状空間５９が区画形成されている。

スプール６１は、スリーブ部５４の内側で軸方向へ往復移動可能であり、軸方向位置に応じてスリーブ部５４の各ポート同士を選択的に接続する。具体的には、スプール６１は、進角ポート５５と供給ポート５７とを接続しつつ、遅角ポート５６とドレンポート５８とを接続することができる。また、スプール６１は、遅角ポート５６と供給ポート５７とを接続しつつ、進角ポート５５と環状空間５９とを接続することができる。

スリーブボルト５１の頭部５２の内側にはストッパプレート６２が固定されている。スプール６１は、スプリング６３によってストッパプレート６２側に付勢されている。スプール６１の軸方向位置は、スプリング６３による付勢力と、ストッパプレート６２に対してスプール６１とは反対側に設けられたリニアソレノイド６４による押圧力とのバランスによって決まる。

以上のように構成されたバルブタイミング調整装置１０では、クランクシャフト９１に対するカムシャフト９２の相対回転位相が目標値よりも遅角側である場合、油路切換弁５０によって進角油路４５と供給油路９４とが接続されつつ、遅角油路４６とドレン油路９６とが接続される。これにより、オイルポンプ９５から進角室４３に作動油が供給されつつ遅角室４４の作動油が排出されて、ベーンロータ４０が第２ハウジング３０に対して進角側に相対回転する。

また、クランクシャフト９１に対するカムシャフト９２の相対回転位相が目標値よりも進角側である場合、油路切換弁５０によって遅角油路４６と供給油路９４とが接続されつつ、進角油路４５と環状空間５９とが接続される。これにより、オイルポンプ９５から遅角室４４に作動油が供給されつつ進角室４３の作動油が排出されて、ベーンロータ４０が第２ハウジング３０に対して遅角側に相対回転する。
また、クランクシャフト９１に対するカムシャフト９２の相対回転位相が目標値と一致する場合、油路切換弁５０によって進角室４３および遅角室４４が閉じられる。これにより、回転位相が保持される。

（特徴的な構成）
次に、バルブタイミング調整装置１０の特徴的な構成について図１〜図７を参照して説明する。
第１ハウジング２０は、第２ハウジング３０の開口側端部３１の外側に嵌合している嵌合部７１を有する。嵌合部７１は、開口側端部３１のうち、油圧室４３、４４に対して径方向外側に位置する部分に嵌合している。嵌合部７１は、第２ハウジング３０側へ突き出し且つ周方向へ延びている突起であり、周方向において離れた箇所に複数形成されている。本実施形態では、嵌合部７１は、少なくとも、開口側端部３１のうち径方向厚みが最も薄い部分（以下、「最薄部分」と記載する）に嵌合しており、この最薄部分よりも周方向長さが長い。嵌合部７１と開口側端部３１との間の径方向隙間は、嵌合部７１と開口側端部３１との嵌め合いを阻害しない範囲で可及的に小さく設定されている。

開口側端部３１は、周方向の一部が径方向内側へ凹むように形成された凹部７２を有する。嵌合部７１は凹部７２に嵌め込まれている。開口側端部３１は、凹部７２の内壁面のうち周方向の端部から構成されている係合部７３を有する。係合部７３は、周方向において嵌合部７１と係合して、第１ハウジング２０と第２ハウジング３０との相対回転を規制する。

（効果）
以上説明したように、第１実施形態では、第１ハウジング２０は、第２ハウジング３０の開口側端部３１の外側に嵌合している嵌合部７１を有する。嵌合部７１は、開口側端部３１のうち、油圧室４３、４４に対して径方向外側に位置する部分に嵌合している。

このように構成された回転子では、嵌合部７１は、開口側端部３１の径方向外側への変形に対する強度を高めるように作用する。また、開口側端部３１の外壁面は、端面３２のみならず、径方向において嵌合部７１と対向する外壁面７４もシール部として機能する。さらに、開口側端部３１は、油圧が高まるほど大きな力で嵌合部７１に押し付けられて、嵌合部７１との間のシール性を向上させる。したがって、第１実施形態によれば、油圧室４３、４４の油圧上昇時における第２ハウジング３０の変形を抑制しつつ、油圧室４３、４４からの油漏れを抑制することができる。また、嵌合部７１を凹部７２に嵌め込むことにより第１ハウジング２０と第２ハウジング３０との同軸合わせが完了するため、組み付け性が向上する。

また、第１実施形態では、嵌合部７１は、第２ハウジング３０側へ突き出している複数の突起である。開口側端部３１は、周方向において嵌合部７１と係合する係合部７３を有する。係合部７３は、周方向において嵌合部７１と係合して、第１ハウジング２０と第２ハウジング３０との相対回転を規制する。
したがって、油圧室４３、４４の油圧が比較的に低下した状況でベーンロータ４０が第２ハウジング３０に衝突したときの第１ハウジング２０と第２ハウジング３０との周方向の位置ずれが抑制される。

また、第１実施形態では、開口側端部３１は、周方向の一部が径方向内側へ凹むように形成された凹部７２を有する。嵌合部７１は、凹部７２に嵌め込まれている。係合部７３は、凹部７２の内壁面のうち周方向の端部から構成されている。
そのため、凹部７２は、嵌合部７１の嵌合相手としての被嵌合部と、係合部７３とを両方有する。したがって、被嵌合部とは別個に係合部を新たに設ける必要がない。

［第２実施形態］
本発明の第２実施形態では、図８、図９に示すように、開口側端部８１は、径方向外側へ突き出す凸部からなる複数の係合部８２を有する。係合部８２は、周方向において最薄部分を挟んだ両側に設けられている。嵌合部８３は、２つの係合部８２の間に挿入されている。係合部８２は、周方向において嵌合部８３と係合して、第１ハウジング２０と第２ハウジング３０との相対回転を規制する。
このように嵌合部８３が凹部以外の部分に嵌合している第２実施形態であっても、第１実施形態と同様の効果を得ることができる。また、凸部により係合部８２が構成されてもよい。

［他の実施形態］
本発明の他の実施形態では、嵌合部は、突起に限らず、第１ハウジングに形成された凹部であってもよい。
本発明の他の実施形態では、嵌合部は、全周が開口側端部に嵌合していてもよい。また、第２ハウジングの突出部の数がｎ個である場合、嵌合部は、ｎ個の突起に限らず、（ｎ−１）個以下の突起であってもよいし、（ｎ＋１）個以上の突起であってもよい。要するに、各嵌合部の一部または全部が周方向につながっていてもよいし、１つの油圧室に対して複数の嵌合部が周方向に並ぶように設けられてもよい。
本発明の他の実施形態では、嵌合部は、第２ハウジングの最薄部分よりも周方向長さが短くてもよい。

本発明の他の実施形態では、第２ハウジングは、複数の部材から構成されてもよい。
本発明の他の実施形態では、クランクシャフトと連結するためのチェーンが巻き掛けられる外歯部は、第２ハウジングが有していてもよい。
本発明の他の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、内燃機関の排気バルブの開閉タイミングを調整するものであってもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。

１０・・・バルブタイミング調整装置 ２０・・・第１ハウジング
３０・・・第２ハウジング ３１・・・開口側端部
４０・・・ベーンロータ ４２・・・ベーン部
４３・・・進角室（第１油圧室） ４４・・・遅角室（第２油圧室）
７１・・・嵌合部 ９１・・・クランクシャフト（駆動軸）
９２・・・カムシャフト（従動軸）

Claims (2)

1. 内燃機関の駆動軸（９１）から従動軸（９２）まで駆動力を伝達する駆動力伝達経路に設けられ、前記従動軸により開閉駆動されるバルブのバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
   前記駆動軸および前記従動軸の一方と連動して回転する第１ハウジング（２０）と、
   有底筒状であり、開口側端部（３１）が前記第１ハウジングと組み合わされた状態で当該第１ハウジングに固定されている第２ハウジング（３０）と、
   前記駆動軸および前記従動軸の他方と連動して回転し、前記第２ハウジングの内部空間を周方向一方側の第１油圧室（４３）と周方向他方側の第２油圧室（４４）とに仕切るベーン部（４２）を有し、前記第１油圧室および前記第２油圧室に供給される作動油の圧力に応じて前記ハウジングに対して相対回転するベーンロータ（４０）とを備え、
   前記第１ハウジングは、前記開口側端部のうち前記第１油圧室および前記第２油圧室に対して径方向外側に位置する部分に少なくとも嵌合している嵌合部（７１）を有し、
   前記嵌合部は、前記第２ハウジング側へ突き出している１つまたは複数の突起であり、
   前記開口側端部は、周方向において前記嵌合部と係合する係合部（７３）と、周方向の一部が径方向内側へ凹むように形成された１つまたは複数の凹部（７２）とを有し、
   前記嵌合部は、前記凹部に嵌め込まれており、
   前記係合部は、前記凹部の内壁面のうち周方向の端部から構成されているバルブタイミング調整装置。
2. 内燃機関の駆動軸（９１）から従動軸（９２）まで駆動力を伝達する駆動力伝達経路に設けられ、前記従動軸により開閉駆動されるバルブのバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
   前記駆動軸および前記従動軸の一方と連動して回転する第１ハウジング（２０）と、
   有底筒状であり、開口側端部（３１）が前記第１ハウジングと組み合わされた状態で当該第１ハウジングに固定されている第２ハウジング（３０）と、
   前記駆動軸および前記従動軸の他方と連動して回転し、前記第２ハウジングの内部空間を周方向一方側の第１油圧室（４３）と周方向他方側の第２油圧室（４４）とに仕切るベーン部（４２）を有し、前記第１油圧室および前記第２油圧室に供給される作動油の圧力に応じて前記ハウジングに対して相対回転するベーンロータ（４０）とを備え、
   前記第１ハウジングは、前記開口側端部のうち前記第１油圧室および前記第２油圧室に対して径方向外側に位置する部分に少なくとも嵌合している嵌合部（７１）を有し、
   前記嵌合部は、前記第２ハウジング側へ突き出している複数の突起であり、少なくとも前記開口側端部のうち径方向厚みの最薄部分に嵌合しており、当該最薄部分よりも周方向長さが長いバルブタイミング調整装置。

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