JP6443194B2 - 信号識別回路、これを用いた光受信器、及び信号識別方法 - Google Patents

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Description

本発明は、信号識別回路とこれを用いた光受信器、及び信号識別方法に関する。
近年、ハイエンド・サーバやスーパーコンピュータなどにおけるCPU間での信号伝送の速度向上および大容量化に伴い、電気信号伝送の限界を打破すべく、近距離や中距離のCPU間信号伝送に高速光伝送の技術を用いる、光インターコネクトが検討されている。光インターコネクトでは、電気信号を光信号に変換する光トランシーバなどを備え、たとえばアレイ光ファイバ等の伝送路を介して、送信側および受信側の光伝送装置間で光信号によりデータを伝送する。光伝送の光送信部として、たとえば小型かつ低消費電力で直接電流変調が可能なレーザ素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)、光受信部として、たとえば光信号を受光して電気信号に変換するPD(Photo Diode:フォトダイオード)などが用いられる。信号速度としては、CPU間の広帯域信号伝送に応えるため、たとえば25Gb/sの、高速光伝送の実現が必要となる。
さらなる信号伝送速度の向上に向けて、多値変調技術が進展している。たとえば、パルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)では、信号の電圧レベルを4段階、8段階等に変調することで、一度のパルスで2ビット、3ビット等のデータを伝送することができる。受信側では、シンボル期間ごとに受信信号の振幅を検出することで復調を行う。
光伝送の場合、光ファイバ等の伝送路における損失により信号レベルが変動し、最大パワーと最小パワーの比は10〜100倍となる。受信側では、その信号レベル変動に対応する広いダイナミックレンジで光信号を識別することが求められる。
光パワーの変動を吸収する技術として、たとえば、オートゲインコントロール(AGC:Automatic Gain Control)回路によるアナログ処理と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)とデジタル信号処理回路(DSP:Digital Signal Processor)の組み合わせによるデジタル処理がある。光パワーの変動を吸収する際に高速処理と低消費電力の両立が望まれるが、AGCでは高速負帰還を用いるため、回路の高速化に限界がある。ADCとDSPによるレベル検出は消費電力が大きく、レイテンシもデジタル処理部で増大する。
特開2007−194967号公報 特開昭62−7227号公報 特開平8−237314号公報
多値変調では、信号を識別するために複数のアイパターンに対する最適な閾値を設定することが望ましい。しかし、各アイの最適な閾値は、光伝送路での損失や帯域劣化によって変化する。入力信号波形の変動にかかわらず出力を一定に保つためのAGCや、ADCとDSPの組み合わせは、上述のように処理速度や消費電力の点で限界がある。そこで、簡易な構成で多値振幅変調信号を精度良く識別する技術を提供することを課題とする。
一つの態様として、信号識別回路は、
入力信号の振幅の平均値を第1閾値として前記入力信号の電圧レベルを識別する第1識別回路と、
前記振幅の平均値に基づき、前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出する検出回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した第2閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第2識別回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した第3閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第3識別回路と、
を有する。
簡易な構成で多値変調信号を精度良く識別することができる。
入力信号の帯域変動による信号波形の変化を示す図である。 実施形態が適用される光伝送システムの概略図である。 実施形態の信号識別回路を用いた光受信器の概略構成図である。 第1閾値を用いた電圧レベル識別の概念図である。 第2閾値を用いた電圧レベル識別の概念図である。 第3閾値を用いた電圧レベル識別の概念図である。 入力信号の帯域変動に伴うアイパターンの変化を示す図である。 最上アイの振幅中心の変化に追従して変化する振幅絶対値の平均を示す図である。 4値パルス振幅変調信号の波形と、その振幅絶対値の波形を示す図である。 ピーキングが発生している場合の入力信号の帯域変動に伴うアイパターンの変化を示す図である。 ピーキングが発生している状態で最上アイの振幅中心の変化に追従する振幅絶対値の平均を示す図である。 絶対値検出回路の構成例を示す図である。 図12の絶対値検出回路の応答特性を示す図である。 帯域がSR×1.0の場合の4値パルス振幅変調信号の波形を示す図である。 図14の波形に対する理想的な振幅絶対値の波形を示す図である。 図14に波形に対して図12の絶対値検出回路から出力される振幅絶対値の波形を示す図である。 理想的な振幅絶対値の平均と、図12の絶対値検出回路により検出される振幅絶対値の平均との近似性を示す図である。
図1は、入力信号の帯域に依存する各アイパターンの変動を説明する図である。図1(A)のように入力信号の周波数帯域が広い場合は、4値パルス振幅変調(適宜「PAM4」と表記する)波形の変動が小さく、アイ開口が広い。これに対し、図1(B)のように周波数帯域が狭い場合、PAM4波形の振幅変動によりアイ開口が狭くなる。光伝送路の損失は狭帯域化に影響し、アイ開口は狭くなる。アイ開口が狭くなると、上側のアイと下側のアイにとっての最適な閾値が中央寄りになる。実施形態では、信号振幅の変動に追従して自動的に最適な閾値を設定することで、多値振幅変調信号を適切に識別する。
図2は、実施形態の信号識別回路が適用される光受信器3を含む、多値変調光伝送システム1の概略図である。光伝送システム1は、光送信器2と、光受信器3と、光伝送路4を含む。光送信器2には図示しない信号処理部からデータ1とデータ2が入力される。データ1はたとえば上位ビットのデータであり、データ2は下位ビットのデータである。光送信器2は2ビットのデータに対応する4値の振幅レベルを有する光信号を生成し、光伝送路4に送出する。光受信器3は、光伝送路4から受信した光信号の信号レベルを識別して2ビットのデータを復調する。
上述のように、光伝送路4の損失や帯域劣化によって多値変調光信号の信号の振幅が変動する。発明者は、入力信号の振幅絶対値の平均はアイ開口の振幅中心の変動に追従することを見出し、この知見に基づいて各アイに信号判別のための最適な閾値を設定する技術思想に至る。入力信号の振幅絶対値の平均に基づいて、帯域劣化等に起因する信号振幅の変動に追従した最適な閾値を設定することで、光受信器3は精度良く多値振幅変調信号を識別することができる。
図3は、実施形態の光受信器3の概略構成図である。一例として、光受信器3は、4つの振幅値(電圧レベル)で変調された多値変調光信号を受信する。光受信器3は、受光素子としてのフォトダイオード(PD)21、トランスインピーダンスアンプ(TIA)22、リニアアンプ23、直流除去回路25、及び信号識別回路10を有する。フォトダイオード21は受光した光を電流として出力する。TIA22は電流を電圧に変換する。TIA22の出力は、リニアアンプ23の正入力に接続される。
リニアアンプ23に入力される電圧には、交流成分と直流成分が混ざっている。そこで直流除去回路25により直流成分を除去する。直流除去回路25のローパスフィルタ(LPF)26は、リニアアンプ23の出力のうち遮断周波数より低い周波数成分だけを抽出する。直流(DC)フィードバックアンプ27は、抽出された低周波成分をリニアアンプ23の負入力にフィードバックする。リニアアンプ23は差動アンプであり、正入力と負入力の差分を増幅する。光伝送において、マーク率(信号内で論理「1」が占める割合)は1/2であるため、信号レベルの平均値は信号振幅の1/2となる。DCフィードバックにより、リニアアンプ23の差動出力は差動信号の平均値がゼロのレベルで安定する。このため、リニアアンプ23の差動出力は、差動信号ゼロのレベルが信号振幅の中央(アイセンター)となる。また、入力信号に含まれる直流成分は打ち消され、高周波(交流)成分だけが増幅されて出力される。リニアアンプ23の出力は差動出力であり、互いに逆相の交流信号が信号識別回路10に供給される。
信号識別回路10は、バッファアンプ11と、絶対値検出回路12、13と、閾値設定回路14、15と、識別回路16,17、18と、加算器19a〜19dを有する。バッファアンプ11は、リニアアンプ23の出力を取り込み、差分を出力する差動出力アンプである。バッファアンプ11の差動出力、すなわち入力信号の振幅の平均値は、第1閾値として識別回路16での信号識別に用いられる。第1閾値は中央のアイ開口の振幅中心に対応する閾値である。識別回路16は、クロック信号のタイミングで第1閾値を用いて入力信号の上位ビットの電圧レベルを識別する。
絶対値検出回路12は、バッファアンプ11の出力から、第1の振幅絶対値を検出しその平均を出力する。振幅絶対値は、たとえば全波整流によって得られる振幅波形であり、ゼロレベルを中心として、信号振幅の負の側を正の側に折り返したときの信号波形に対応する。後述するように、振幅絶対値の平均は、帯域劣化や光損失による入力信号の振幅変動に追従する。閾値設定回路14は、絶対値検出回路12出力(第1の振幅絶対値の平均)に基づいて信号識別のための第2閾値を設定する。たとえば絶対値検出回路12出力(第1の振幅絶対値の平均)を所定の比率α1で定倍した値を第2閾値として設定する。第2閾値は、加算器19a、19bによりバッファアンプ11の差動出力に加算されて識別回路17に入力される。差動出力が差分ゼロの理想状態である場合は、第2閾値がそのまま識別回路17で用いられる。第2閾値は最上のアイ開口の振幅中心に対応する閾値である。識別回路17は、クロック信号のタイミングで第2閾値を用いて、入力信号の下位ビットの電圧レベルを識別する。
絶対値検出回路13は、バッファアンプ11の出力から、第2の振幅絶対値を検出しその平均を出力する。閾値設定回路15は、絶対値検出回路13出力(第2の振幅絶対値の平均)に基づいて、信号識別のための第3閾値を設定する。第3閾値は、第2閾値と同様に伝送信号の変動に追従して設定され、絶対値検出回路13出力(第2の振幅絶対値の平均)を所定の比率α2で定倍して設定される。第3閾値は、加算器19c、19dによりバッファアンプ11の差動出力、すなわち信号振幅の平均値に加算されて識別回路17に入力される。所定の比率α2を負の値として設定することで、振幅の平均値から第3閾値を減算するのと同じ効果が生じる。バッファアンプ11の差動出力が差分ゼロの理想状態である場合は、第3閾値がそのまま識別回路18で用いられる。第3閾値は最下のアイ開口の振幅中心に対応する閾値である。識別回路18は、クロック信号のタイミングで第3閾値を用いて、入力信号の下位ビットの電圧レベルを識別する。
図3では、マーク率が1/2であることを前提として、バッファアンプ11の差動出力の時間平均がゼロとなる場合を例にとっている。しかし、差動アンプのオフセット等により、必ずしも差分ゼロの理想状態にならない場合もあり得るので、バッファアンプ11の後段または前段に、振幅の平均値をゼロに補正する補正回路を挿入してもよい。
図3では、2つの絶対値検出回路12、13を用いているが、単一の絶対値検出回路12(または13)を用いて、振幅絶対値の平均を閾値設定回路14と15の双方に出力してもよい。あるいは、閾値設定回路14(または15)も一つだけにして、異なる比率α1とα2を設定することで振幅絶対値の平均から第2閾値と第3閾値を生成してもよい。
図4は、識別回路16での閾値判断を示す概念図である。入力信号が第1閾値より大きい場合は、電圧レベル3または電圧レベル4にあると判断され、上位ビット1が識別される。入力信号が第1閾値より小さい場合は、電圧レベル1または電圧レベル2にあると判断され、上位ビット0が識別される。
図5は、識別回路17の閾値判断を示す概念図である。第2閾値はアイセンターから第2閾値分だけプラス側にシフトした値である。入力信号の電圧レベルが第2閾値より大きい場合は、電圧レベル4であると判断され、入力信号が第2閾値より小さい場合は、電圧レベル1,2,または3のいずれかである。
図6は、識別回路18の閾値判断を示す概念図である。第3閾値はアイセンターからマイナス側にシフトした値である。入力信号が第3閾値より小さい場合は、電圧レベル1と判断され、3閾値より大きい場合は、電圧レベル2、3、または4のいずれかである。
たとえば、2ビット論理を(00)、(01)、(11)、(10)とした場合、識別回路17と識別回路18のAND結果が下位ビットの識別値となる。すなわち、入力信号が第3閾値より大きくかつ第2閾値より小さい場合は下位ビット1が識別され、入力信号が第2閾値より大きいかまたは第3閾値より小さい場合は、下位ビット0が識別される。これにより、信号識別回路10の出力からデータ(00)、(01)、(11)、(10)のいずれかが判断される。識別回路16,17,18としてフリップ・フロップ回路を用いることができる。なお、(00)、(01)、(10)、(11)の2ビット論理を用いてもよい。
図7は、帯域の変化によるアイパターンの開口面積の変動を示す。帯域はシンボルレート(SR)と相関するので、図7では帯域の変化をシンボルレートに対する比率で示している。帯域がシンボルレート(SR)の1.0倍、0.8倍、0.6倍、0.5倍と狭くなるにつれて隣接するパルス間の干渉が大きくなり、アイ開口の面積が小さくなる。中央のアイ開口の閾値はアイパターンの中心であるゼロ電圧である。最上のアイ開口と最下のアイ開口の振幅中心は、面積が狭くなるにしたがってセンター寄りになる。
図8は、最上アイ開口の振幅中心の電圧レベル(ラインA)と、絶対値検出された電圧レベル(ラインB)を入力信号帯域の関数として示す図である。入力信号帯域は図7と同様にシンボルレートの比で表されている。ラインBの絶対値検出値は、絶対値検出回路12(または13)による振幅絶対値の平均値である。この図からわかるように、振幅絶対値はアイ開口の中心電圧、すなわち最適閾値の変化に追従して変化する。したがって、振幅絶対値を所定の比率で調整することで、そのアイ開口の最適閾値を設定することができる。この例では、振幅絶対値の平均をA/B倍することで、アイ開口の最適な閾値とすることができる。
光受信器3の運用前に、あらかじめ入力信号帯域をパラメータとして、最上のアイ開口または最下のアイ開口の振幅中心と、振幅絶対値の平均との相関を取得しておく。取得した相関係数から求めた調整用の比率A/Bを閾値設定回路14に設定することで、実際の運用中に入力信号の振幅が変動しても、その変動に追従して信号識別のための最適な閾値を自動的に設定することができる。最上のアイ開口の閾値調整のための比率と、最下のアイ開口の閾値調整のための比率を別々に計算し、設定しておくことが望ましいが、いずれかのアイ開口の相関係数を用いて、正の値の調整比率と負の値の調整比率を設定してもよい。
図9は、4値パルス変調信号(PAM4)信号の入力波形と、その絶対値を示す図である。紙面上部のPAM4波形の平均値はほぼ0Vとなる。紙面下部の絶対値波形は、PAM4波形を全波整流したものである。この絶対値波形の平均は、帯域劣化や損失の影響によるPAM4波形の振幅の変動に追従する。
図10は、図7と同様に帯域の変化によるアイパターンの開口面積の変動を示す。図7と異なる点は、ピーキングが発生している点である。ピーキングが発生すると各アイ開口の歪が大きく、最適閾値の設定がさらに困難になるが、実施形態の手法を用いることで、各アイに対して最適な閾値を設定することができる。
図11は、図10の帯域変動に応じた最上アイの振幅中心(ラインC)と振幅絶対値の平均(ラインD)を示す。振幅絶対値の平均は、図3の絶対値検出回路12、13の出力に対応する。ピーキングが発生している場合でも、振幅絶対値の平均は最上アイの振幅中心に対して非常に良く追従することがわかる。
図12は、図3の絶対値検出回路12(または13)の回路構成の一例を示す。入力IN1とIN2はバッファアンプ11からの差動出力に接続されている。絶対値検出回路12は、乗算回路121を有する。乗算回路121は、T2P・T2Nの入力と、T3P・T3NおよびT4P・T4Nの入力を乗算する機能を有し、それぞれに同等の信号を入力することで、自乗による絶対値検出を行う。
入力端子IN1に現れる信号が「H」の場合、npnトランジスタT1Pがオンして乗算回路121のトランジスタT2Pのベースに電流が印加されるとともに、トランジスタT3Pがオンする。これにより負荷抵抗RL1に電流が増大し、乗算回路121の逆相出力は「L」を出力する。
入力端子IN2に現れる信号が「H」の場合、pnpトランジスタT1Nがオンして乗算回路121のトランジスタT2Nのベースに電流が印加されるとともに、トランジスタT4Nがオンする。これにより負荷抵抗RL1に電流が増大し、乗算回路121の逆相出力は「L」を出力する。
トランジスタT3P及びT2Pの導通と、トランジスタT4N及びT2Nの導通による乗算回路121の逆相出力は、トランジスタT5Pのベースに印加され、T5Pのエミッタ側に現れる出力OUT1として取り出される。
また、入力端子IN1に現れる信号「H」により、乗算回路121のトランジスタT4Pがオンする。このとき、トランジスタT2Nは入力端子IN2からの「L」信号の入力によりオフしているので、負荷抵抗RL2に電流が減少し、乗算回路121の正相出力は「H」を出力する。同様に、入力端子IN2に現れる信号「H」により、乗算回路121のトランジスタT3Nがオンする。このとき、トランジスタT2Pは入力端子IN1からの「L」信号の入力によりオフしているので、負荷抵抗RL2に電流が減少し、乗算回路121の正相出力は「H」を出力する。
トランジスタT4P及びT2Nの導通と、トランジスタT3N及びT2Pの導通による乗算回路121の正相出力は、トランジスタT5Nのベースに印加され、T5Nのエミッタ側に現れる出力OUT2として取り出される。出力OUT2は、出力OUT1の反転波形を有する。絶対値検出回路12のアナログ出力はOUT1とOUT2の差電圧であり、それをローパスフィルタ等で平均化したものが、振幅絶対値の平均となる。
図13は、図12の絶対値検出回路12の応答特性を示す。横軸は入力差動電圧(V)を示し、縦軸は出力差動電圧(V)を示す。入力差動電圧に対する出力差動電圧(応答)はゼロ近傍でわずかに鈍るが、広いレンジにわたって良好な応答特性を有する。
図14は、帯域がSR×1.0の場合の4値パルス振幅変調(PAM4)波形を示す。
図15は、図14の入力PAM4波形に基づく理想的な絶対値波形である。図14の振幅の平均値(ゼロ中心)で折り返すと、図14の波形になる。
図16は、図12の絶対値検出回路12のシミュレーション結果を示す。図15の理想的な波形と比較して、低い差動電圧レベルでの高周波成分が多少鈍っているものの、良好な絶対値波形を示す。このわずかな波形の鈍りは図13のゼロV近傍での応答波形の鈍りに対応する。
図17は、図16の実施形態で検出される絶対値を、図15の理想的な絶対値と比較して示す図である。図17から、図12の絶対値検出回路12による検出結果は、入力信号の帯域の変化に依らず理想的な絶対値とほぼ同じ傾向を示すことがわかる。そして、図8及び図11を参照して説明したように、振幅絶対値の平均は最上のアイ開口または最下のアイ開口の振幅中心の変化に追従する。したがって、振幅絶対値の平均を所定の比率で調整することで、最適な閾値を設定することができる。
実施形態では、信号振幅の変動に応じて自動的に信号識別用の閾値をフィードフォワード設定することで、多値変調信号を正確に識別することができる。高速負帰還を用いるAGCや、消費電力やレイテンシの大きいDSPとADCの組み合わせを用いずに、簡単な回路構成で多値変調信号の識別精度を向上することができる。
実施形態では、全波整流により振幅絶対値を検出したが、半波整流により振幅絶対値を検出してもよい。この場合は、交流信号の正の部分だけを整流して用いる。振幅絶対値の平均を調整して閾値を設定するための比率としては、全波整流のときはA/B倍するのに対し、半波整流のときはA/(B/2)倍、すなわち2A/B倍して閾値を設定する。
実施形態では4値振幅変調を例にとったが、本発明は8値振幅変調等の多値変調にも適用可能である。8値振幅変調の場合、閾値設定回路14で3段階の係数α1、α2、α3を設定して振幅絶対値の平均を定倍することで、ゼロ中心のプラス側の3つの閾値を設定する。同様に、閾値設定回路15で3段階の係数α4、α5、α6を設定し振幅絶対値の平均を定倍することで、ゼロ中心のマイナス側の3つの閾値を設定する。差動出力から得られる振幅の平均値はゼロ中心として設定される。信号変動に追従する閾値を用いて入力信号の電圧レベルを判断することで、帯域劣化等にかかわらず3ビットの信号を精度良く識別することができる。
以上の説明に対して以下の付記を提示する。
(付記1)
入力信号の振幅の平均値を第1閾値として前記入力信号の電圧レベルを識別する第1識別回路と、
前記振幅の平均値に基づき、前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出する検出回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した第2閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第2識別回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した第3閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第3識別回路と、
を有する信号識別回路。
(付記2)
前記検出回路の出力に接続され、前記振幅絶対値の平均を所定の比率で調整して前記第2閾値及び前記第3閾値を生成する閾値設定回路、
をさらに有することを特徴とする付記1に記載の信号識別回路。
(付記3)前記入力信号を受け取り、差動出力として出力する差動アンプ、
をさらに有し、前記差動出力が前記検出回路の入力に接続されることを特徴とする付記1に記載の信号識別回路。
(付記4)
前記検出回路は、
前記差動出力アンプの出力に接続される第1入力及び第2入力と、
前記振幅絶対値の平均を表わす第1出力及び第2出力と
を有するアナログ絶対値検出回路であることを特徴とする付記3に記載の信号識別回路。
(付記5)
前記検出回路は、乗算回路を有することを特徴とする付記4に記載の信号識別回路。
(付記6)
前記差動出力は、前記第1識別回路の入力に接続されることを特徴とする付記3に記載の信号識別回路。
(付記7)
前記入力信号は、直流成分が除去された交流信号であることを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の信号識別回路。
(付記8)
前記第1識別回路、前記第2識別回路、及び前記第3識別回路の識別結果により多値振幅変調信号が復調されることを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の信号識別回路。
(付記9)
光信号を電気信号に変換する光電気変換器と、
前記電気信号が入力される信号識別回路と、
を有し、
前記信号識別回路は、
入力信号の振幅の平均値を第1閾値として前記入力信号の電圧レベルを識別する第1識別回路と、
前記振幅の平均値に基づき、前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出する検出回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した第2閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第2識別回路と、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した第3閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第3識別回路と、
を有することを特徴とする光受信器。
(付記10)
入力信号の振幅の平均値を第1閾値とし、
前記振幅の平均値に基づいて前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出し、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した値を第2閾値とし、
前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した値を第3閾値とし、
前記第1閾値、前記第2閾値、及び前記第3閾値を用いて多値振幅変調信号を識別する
ことを特徴とする信号識別方法。
(付記11)
前記振幅絶対値の平均を所定の比率に調整して前記第2閾値及び前記第3閾値を生成することを特徴とする付記10に記載の信号識別方法。
(付記12)
前記多値振幅変調信号の最上または最下のアイ開口の振幅中心と、前記振幅絶対値とを帯域の関数としてあらかじめ相関係数を求め、
前記相関係数から前記所定の比率を決定する、
ことを特徴とする付記11に記載の信号識別方法。
(付記13)
光信号を受信し、
前記光信号から直流成分を除去して前記入力信号を生成する、
ことを特徴とする付記10〜12のいずれかに記載の信号識別方法。
1 光伝送システム
2 光送信器
3 光受信器
4 光伝送路
10 信号識別回路
11 バッファアンプ(差動出力アンプ)
12、13 絶対値検出回路
14、15 閾値設定回路
16 識別回路(第1識別回路)
17 識別回路(第2識別回路)
18 識別回路(第3識別回路)
19a〜19d 加算器
25 直流除去回路
26 ローパスフィルタ(LPF)
27 直流フィードバック(DCF)アンプ

Claims (8)

  1. 入力信号の振幅の平均値を第1閾値として前記入力信号の電圧レベルを識別する第1識別回路と、
    前記振幅の平均値に基づき、前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出する検出回路と、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した第2閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第2識別回路と、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した第3閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第3識別回路と、
    を有する信号識別回路。
  2. 前記検出回路の出力に接続され、前記振幅絶対値の平均を所定の比率で調整して前記第2閾値及び前記第3閾値を生成する閾値設定回路、
    をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の信号識別回路。
  3. 前記入力信号を受け取り、差動出力として出力する差動アンプ、
    をさらに有し、
    前記差動出力が前記検出回路の入力に接続されることを特徴とする請求項1に記載の信号識別回路。
  4. 前記入力信号は、直流成分が除去された交流信号であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の信号識別回路。
  5. 光信号を電気信号に変換する光電気変換器と、
    前記電気信号が入力される信号識別回路と、
    を有し、
    前記信号識別回路は、
    入力信号の振幅の平均値を第1閾値として前記入力信号の電圧レベルを識別する第1識別回路と、
    前記振幅の平均値に基づき、前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出する検出回路と、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した第2閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第2識別回路と、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した第3閾値を用いて前記入力信号の電圧レベルを識別する第3識別回路と、
    を有することを特徴とする光受信器。
  6. 入力信号の振幅の平均値を第1閾値とし、
    前記振幅の平均値に基づいて前記振幅の平均値をゼロ中心とする振幅絶対値の平均を検出し、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値に加算した値を第2閾値とし、
    前記振幅絶対値の平均を前記振幅の平均値から減算した値を第3閾値とし、
    前記第1閾値、前記第2閾値、及び前記第3閾値を用いて多値振幅変調信号を識別する
    ことを特徴とする信号識別方法。
  7. 前記振幅絶対値の平均を所定の比率に調整して前記第2閾値及び前記第3閾値を生成することを特徴とする請求項6に記載の信号識別方法。
  8. 前記多値振幅変調信号の最上または最下のアイ開口の振幅中心と、前記振幅絶対値の平均とを帯域の関数としてあらかじめ相関係数を求め、
    前記相関係数から前記所定の比率を決定する、
    ことを特徴とする請求項7に記載の信号識別方法。
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