以下に、本願発明を具体化した実施形態を、四条植え式の乗用型田植機(以下、単に田植機という)に適用した場合の図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
まず、図1〜図3を参照しながら、田植機の概要について説明する。実施形態の田植機は、走行部としての左右一対の前車輪3及び同じく左右一対の後車輪4で支持された走行機体1と、走行機体1の後部に昇降可能に連結した作業部としての苗植付装置2とを備えている。走行機体1には、オペレータが座乗する操縦座席5と、操縦座席5の前方に配置した操縦ハンドル6と、操縦ハンドル6の下端側を覆うフロントボンネット7とを設けている。走行機体1の左右幅中央に配置した操縦ハンドル6の下方には、左右の前車輪3を方向転換させる操舵用の操縦機構部8を配置している。走行機体1においてフロントボンネット7の左右両側方には、複数枚のマット状の予備苗を多段に載置させる左右の予備苗台9を設けている。なお、操縦座席5の後方には、田面に植付けられた苗の側方の泥土中に粒状肥料を埋める施肥装置(図示省略)を設けることが可能である。
図1〜図3に示すように、走行機体1には、機体フレーム11とエンジン12とを備えている。実施形態では、操縦座席5の下方において、機体フレーム11の前後中央部にエンジン12を防振支持させている。エンジン12は走行機体1の前後方向中心線に沿う位置におかれている。すなわち、走行機体1の左右幅中央部にエンジン12を位置させている。エンジン12の前方には、エンジン12からの動力を変速する油圧無段変速機17付きのミッションケース16を配置している。この場合、エンジン12のクランク軸13は左右方向に延びていて、クランク軸13のうちエンジン12から突出した一方の先端部には出力プーリ14を取り付けている。出力プーリ14に巻き掛けた伝動ベルト15を介して、エンジン12の動力はミッションケース16に伝達される。エンジン12の動力を前方のミッションケース16に伝達して前車輪3及び後車輪4を駆動させることによって、走行機体1が前後進走行するように構成している。実施形態では、ミッションケース16の後部左側に油圧無段変速機17を取り付けている。エンジン12の動力は、油圧無段変速機17の入力軸18に入力プーリ19経由で伝動ベルト15によって伝達される。伝動ベルト15にはテンションプーリ20が当接している。
図3〜図5等に示すように、走行機体1の機体フレーム11は、前後に延びる左右一対の横フレーム21と、左右両横フレーム21の前部を連結する左右横長の前フレーム22と、左右両横フレーム21の後端部を連結する左右横長の後フレーム23とを備えている。すなわち、左右両横フレーム21と前フレーム22と後フレーム23とが走行機体1の機体フレーム11を構成している。左右の横フレーム21の前部側には、左右外向きに突出する前後二本の枝フレーム24を溶接固定している。左右両横フレーム21の前端部には、フロントブラケット25を介して左右横長のバンパーフレーム26を連結している。
ミッションケース16前部の左右両側面には、フロントアクスルケース27を取り付けている。左右のフロントアクスルケース27に設けた前車軸28に前車輪3を舵取り可能に取り付けている。エンジン12の後方下部には、リヤアクスルケース29を配置している。リヤアクスルケース29から左右外向きに突出した後車軸30に後車輪4を取り付けている。ミッションケース16とリヤアクスルケース29とは、前後長手の筒状フレーム31で連結している。エンジン12の前部は、前防振部材32を介して筒状フレーム31に防振支持させている。エンジン12の後部は、後防振部材33を介してリヤアクスルケース29に防振支持させている。左右のフロントアクスルケース27は、それぞれ対応する左右の横フレーム21の前後中途部に連結している。リヤアクスルケース29には、縦長前傾状である左右一対の後支柱34を立設している。左右両後支柱34の上端側に後フレーム23を連結している。エンジン12から油圧無段変速機17を経てミッションケース16に伝わった動力は、左右のフロントアクスルケース27に伝達されて左右の前車輪3を駆動させると共に、ミッションケース16から後ろ向きに延びる走行ドライブ軸35を介して、リヤアクスルケース29内部に伝達されて左右の後車輪4を駆動させる。
図1及び図2に示すように、走行機体1の上面側は、オペレータが搭乗する車体カバー40によって覆われている。車体カバー40の前部上側にはフロントボンネット7を立設している。車体カバー40の前部下方(フロントボンネット7の下方)に操縦機構部8を位置させている。車体カバー40上面のうちフロントボンネット11の後方右側に、足踏み式の変速ペダル41及びブレーキペダル42を左右横並びに配置している。実施形態の田植機は、変速ペダル41の踏み込み量に応じて、エンジン回転数及び油圧無段変速機17の変速動力を調節(増減速制御)するように構成している。
フロントボンネット7の上面側には、操縦ハンドル6、主変速レバー43、速度設定操作具としての速度設定レバー44(詳細は後述する)、アクセルレバー45及び作業クラッチ操作具としての植付昇降レバー46を配置している。実施形態では、操縦ハンドル6を挟んだ左側に主変速レバー43と速度設定レバー44とを位置させ、操縦ハンドル6を挟んだ右側にアクセルレバー45と植付昇降レバー46とを位置させている。操縦ハンドル6は、操縦機構部8上面に立設したハンドルポスト37内のハンドル軸(図示省略)の上端側に固定している。なお、操縦機構部8の下面側には操舵出力軸(図示省略)を下向きに突出させ、当該操舵出力軸に左右の前車輪3を操舵する操舵杆機構38を連結している。主変速レバー43は、田植機の走行モードを前進、中立、後進及び移動の各モードに切り換え操作するものであり、アクセルレバー45はエンジン回転数を設定調節するものである。植付昇降レバー46は、苗植付装置2を昇降操作するものであるが、苗植付装置2への動力伝達を継断する植付クラッチ(図示省略)の継断操作や左右サイドマーカ64の選択操作も実行可能になっている。
フロントボンネット7上面に、移動速度等を表示する計器パネル47を設けている。フロントボンネット7の前面上部側には、走行機体1の前方を照らす前照灯48を設けている。そして、フロントボンネット7の前面上端側には、計器パネル47の前方を取り囲むフロントバイザー体49を取り付けている。車体カバー40上面のうちフロントボンネット7の後方には、機体フレーム11に連結した座席フレーム36を介して操縦座席5を支持させている。車体カバー40上面のうち操縦座席5の下方左側には、左右両前車輪3の差動駆動をオンオフするデフロックペダル50を配置している。
リヤアクスルケース29に立設した左右一対の後支柱34には、ロワーリンク52及びトップリンク53からなる昇降リンク機構51を介して、四条植え用の苗植付装置2を昇降可能に連結している。後フレーム23の左右中央部には、油圧式の植付昇降シリンダ54のシリンダ基端側を上下回動可能に取り付けている。植付昇降シリンダ54のロッド先端側はロワーリンク52に連結している。植付昇降シリンダ54の伸縮動によって昇降リンク機構51を上下回動させる結果、苗植付装置2が昇降動する。
苗植付装置2は、ミッションケース16からの変速動力が伝わる植付入力ケース55と、植付入力ケース55に連結する四条用二組(二条で一組)の植付伝動ケース56と、各植付伝動ケース56の後端側に設けた苗植機構57と、四条植え用の苗載台58と、各植付伝動ケース56の下面側に配置した田面均平用のフロート59とを備えている。苗植機構57には、一条分二本の植付爪61を有するロータリケース60を設けている。一つの植付伝動ケース56に対して二条分のロータリケース60を配置している。ロータリケース60の一回転によって、二本の植付爪61が各々一株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート59で整地された田面に植え付ける。苗植付装置2の前面側には、田面を均す(圃場面を整地する)整地ロータ62を昇降動可能に設けている。
エンジン12からミッションケース16に伝わった動力は、前車輪3及び後車輪4だけでなく、苗植付装置2の植付入力ケース55にも伝達される。ミッションケース16から苗植付装置2に向かう動力は、エンジン12の右側(リアアクスルケース29の前方右側)に設けた株間変速ケース63(図3参照)に一旦伝達され、株間変速ケース63から植付入力ケース55に伝達される。植付入力ケース55が受け取った動力によって各苗植機構57や苗載台58が駆動する。図示は省略するが、株間変速ケース63には、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構と、苗植付装置2への動力伝達を継断する植付クラッチとを内蔵している。苗植付装置2の左右両側にはサイドマーカ64を備えている。サイドマーカ64は、フロントボンネット7上の植付昇降レバー46の操作に基づき、田面に着地して次工程での基準となる軌跡を形成する作業姿勢と、田面から離間させた非作業姿勢とに姿勢変更回動するように構成している。
オペレータは、車体カバー40の操縦座席5に搭乗し、田植機を運転操作して圃場内を移動しながら、苗植付装置2を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。なお、苗植え作業中において、苗植付装置2には、予備苗台9上の苗マットをオペレータが随時補給する。
走行機体1の最前部に位置するバンパーフレーム26の左右中途部には、誘導操作具の一例である棒状の補助ハンドル130を水平回動可能に取り付けている(図1及び図2参照)。補助ハンドル130は、例えば畦越え走行や載せ降ろし走行といった急傾斜の移動に際してオペレータが地上に降りて走行機体1を誘導操作するためのものである。補助ハンドル130の先端側にはグリップ部131を設けている。補助ハンドル130は、基端側を支点とした水平回動によって、左右横向き(バンパーフレーム26に平行な方向)の収納姿勢と前向き(バンパーフレーム26と直交する方向)に突出した使用姿勢とに姿勢変更可能になっている。
補助ハンドル130のグリップ部131には、変速ペダル41に準じた機能(走行機体1の発信及び停止)を有する走行レバー(図示省略)を設けている。走行レバーは、補助走行ワイヤ(図示省略)を介して変速ペダル41に連動連結している。オペレータがグリップ部131と共に走行レバーを握れば、補助走行ワイヤの引き作用によって変速ペダル41が少しだけ踏み込んだ状態になる。このため、変速ペダル41の少しの踏み込み量に対応した微速で、走行機体1が発進し走行する。オペレータが走行レバーから手を離せば、補助走行ワイヤの引き作用が解除されて、変速ペダル41が元の姿勢に戻る。その結果、走行機体1が停止する。
次に、図4を参照しながら、田植機の動力伝達系統について説明する。ミッションケース16内には、油圧ポンプ101及び油圧モータ102からなる油圧無段変速機17、遊星歯車機構103、油圧無段変速機17及び遊星歯車機構103を経由した変速動力を複数段に変速する歯車式副変速機構104、遊星歯車機構103から歯車式副変速機構104への動力伝達を継断する主クラッチ105、並びに、歯車式副変速機構104からの変速出力を制動させるブレーキ機構106等を備えている。入力軸18からの動力で油圧ポンプ101を駆動させ、油圧ポンプ101から油圧モータ102に作動油を供給し、油圧モータ102から変速動力が出力される。油圧モータ102からの変速動力は、遊星歯車機構103及び主クラッチ105を介して歯車式副変速機構104に伝達される。そして、歯車式副変速機構104から前後車輪3,4と苗植付装置2との二方向に分岐して動力伝達される。
前後車輪3,4に向かう分岐動力の一部は、歯車式副変速機構104から差動歯車機構107及び左右の差動出力軸108を介して、フロントアクスルケース27の前車軸28に伝達され、左右前車輪3を回転駆動させる。差動歯車機構107には、自身の差動を停止させる(左右の差動出力軸108を等速で駆動させる)デフロック機構109を設けている。デフロックペダル50を踏み込み操作して、デフロック機構109のデフロック体を差動歯車機構107の差動ギヤケースに係合させることによって、左右一方の差動出力軸108に差動ギヤケースが固定されて差動ギヤケースの差動機能が停止し、左右の差動出力軸108が等速で駆動する。
前後車輪3,4に向かう分岐動力の残りは、歯車式副変速機構42からベベルギヤ機構99及び走行ドライブ軸35を介して、リヤアクスルケース29の後車軸30に伝達され、左右後車輪4を回転駆動させる。ブレーキ機構106を作動させた場合は、前後車輪3,4共にブレーキがかかる。また、田植機を旋回させる場合は、リヤアクスルケース29内にある旋回内側の摩擦クラッチ(図示省略)を切り作動させて旋回内側の後車輪4を自由回転させ、動力伝達される旋回外側の後車輪4の回転駆動によって旋回する。
苗植付装置2に向かう動力は、歯車式副変速機構42から作業動力出力機構110を介して株間変速ケース63(図3参照)に伝達され、株間変速ケース63から苗植付装置2に伝達される。なお、施肥装置を設ける場合は、株間変速ケース63から施肥装置に動力伝達される。
次に、主として図5〜図9を参照しながら、エンジン12の周辺構造について説明する。図3及び図5に示すように、機体フレーム11を構成する左右の横フレーム21は、前後中途部を境にして略前半部は水平状に延び、略後半部は後方斜め上向きに傾斜するように屈曲している。すなわち、左右の横フレーム21の略後半部は、後ろに行くに従って高さが高くなる傾斜部21aになっている。各横フレーム21の傾斜部21aの傾斜角度は、エンジン12の傾斜角度(シリンダの傾斜角度)と略同じになっている。エンジン12は、側面視で概ね各横フレーム21の傾斜部21aの下方に位置している。
前述の通り、クランク軸13のうちエンジン12から突出した一方の先端部には出力プーリ14を取り付けている一方、クランク軸13の他方の先端部にはエンジン空冷用の吸引ファン(図示省略)を取り付けている。実施形態では、クランク軸13の左先端部に出力プーリ14を取り付け、右先端部に吸引ファンを取り付けている。吸引ファンはクランク軸13と一体的に回転する。吸引ファンの周囲はファンカバー151で覆っている。ファンカバー151の中央部に冷却風取込口152を形成し、冷却風取込口152には防塵網153を張設している。吸引ファンの回転で冷却風取込口152から取り込んだ冷却風によって、エンジン12は強制的に冷却される。
エンジン12後部のうち左右一側方(吸引ファン(ファンカバー151)側)には、外気を除塵及び浄化してエンジン12の吸気系に供給するエアクリーナ154を配置している。エンジン後部のうち左右他側方(出力プーリ14側)には、エンジン12の排気音を低減して排気ガスを放出する排気マフラー155を配置している。エンジン12を挟んで左右に、エアクリーナ154と排気マフラー155とを振り分けて配置している。エアクリーナ154はエンジン12の吸気系に接続している。排気マフラー155はエンジン12の排気系に接続している。エアクリーナ154でろ過した外気がエンジン12の吸気系に供給される。エンジン12の各気筒から排気系に排出された排気ガスが排気マフラー155を経由して外部に放出される。
エアクリーナ154と吸引ファンとはエンジン12に対して同じ側(右側)にある。すなわち、吸引ファンによる冷却風経路の上流側にエアクリーナ154が位置し、下流側に排気マフラー155が位置する。従って、エアクリーナ154が排気マフラー155の排気ガスを取り込むおそれを抑制でき、エンジン12の周囲にエアクリーナ154と排気マフラー155とを効率よくコンパクトにまとめて配置できる。
エンジン12後部のうち吸引ファンのある右側に配置したエアクリーナ154は縦長箱状のクリーナ本体154aを備えている。図7に示すように、クリーナ本体154aの上端側には、クリーナ本体154aに連通する上下開口筒状の吸気筒部154bを上向きに突出するように設けている。吸気筒部154bの上向き開口が外気を取り込む吸気口154cになっている。吸気筒部154bには、外向きに広がる複数のリブ154dを固着すると共に、リブ154d群の上面側に網状板154e(メッシュ状板)を貼り付けている。また、吸気筒部154bには、網状板154eごと吸気筒部154bを上方から覆う消音器としての消音カバー体156を着脱可能に装着している。
網状板154eの網目から消音カバー体156内部を経て吸気筒部154bの吸気口154cに向かうラビリンス状(Uターン状)の経路が外気案内路157を構成している。外気は、ラビリンス状の外気案内路157を介して吸気筒部154bからクリーナ本体154aに送り込まれる。外気がラビリンス状の外気案内路157を通過することによって吸気音が減衰する。外気案内路157の存在によって、圃場を走行する後車輪4が跳ね上げた泥水や藁屑等の異物がエアクリーナ154(クリーナ本体154a)内に入り込むのを防止し、エアクリーナ154の長寿命化及びシール性向上を図っている。消音カバー体156が着脱可能なので、クリーナ本体154a等の内部の清掃といったメンテナンス作業もし易い。
図8及び図9に示すように、車体カバー40の後部下方(操縦座席5の下方)にエンジン12が位置している。操縦座席5は、平面視でエンジン12の前部側に重なる位置にある。車体カバー40のうち操縦座席5の後方にはメンテナンス穴158を形成している。メンテナンス穴158は、着脱式又は開閉式の蓋体159で塞がれている。実施形態の蓋体159は、蝶ボルトを用いた着脱式に構成している。メンテナンス穴158にはエンジン12の後部(エアクリーナ154を含む)を臨ませている。蓋体159を取り外したメンテナンス穴158からはエアクリーナ154の消音カバー体156が露出する。従って、蓋体159を取り外せば、車体カバー40上からエアクリーナ154に手が届くことになり、エアクリーナ154に対するメンテナンス作業に要する手数を少なくして、エアクリーナ154のメンテナンス作業性を向上できる。
図5、図6及び図10に示すように、エンジン12後部左側に配置した排気マフラー155は、エンジンの左側面後部を覆い隠す略箱状のマフラー本体155aを備えている。実施形態では、中間フレームとしての筒状フレーム31と左横フレーム21の傾斜部21aとの間にマフラー本体155aを位置させている。マフラー本体155aの上面側は、左横フレーム21の傾斜部21aに沿わせて後方斜め上向きに傾斜させた傾斜面155bに構成している。図6及び図8〜図10に示すように、排気マフラー155は、エンジン12と左後車輪4との間に位置している。すなわち、マフラー本体155a(排気マフラー155)の左外側には、ラグ付きの左後車輪4が位置しているため、マフラー本体155aの容量を左右方向に拡大させることはできない。この点、実施形態では、マフラー本体155aの上面側を傾斜面155bにして、マフラー本体155aを側面視で略台形形状にすることによって、排気マフラー155としての容量アップを図っている。その上、マフラー本体155aの上面側を下面側と非平行な傾斜面155bにしているため、排気音が共鳴し難くて排気マフラー155による排気音の消音効果がより高まる。
マフラー本体155aは、エンジン12の左側面後部を覆う保護カバーとしても機能している。マフラー本体155aの右側面に、エンジン12の排気マニホールドから突出した排気管159を直結している。マフラー本体155aの背面側にはテールパイプ160を後向きに突設している。エンジン12の気筒から排出された排気ガスが排気管159経由で排気マフラー155に供給され、テールパイプ160の排気口から外部に放出される。
上記の記載並びに図5〜図7から明らかなように、走行機体1の前後車軸28,30間にエンジン12を搭載し、前記エンジン12を上方から覆う車体カバー40上に操縦座席5を配置している作業車両において、前記エンジン12の左右一側方にエアクリーナ154を配置し、前記エアクリーナ154の吸気口154cを上向きに開口させているから、前記エアクリーナ154の近傍に後車輪4が位置していても、圃場を走行する前記後車輪4が跳ね上げた泥水等を前記エアクリーナ154内に取り込むおそれを抑制でき、前記エアクリーナ154の浄化性能を維持し易い。特に本願発明では、前記吸気口154cを上方から消音器156で覆い、前記吸気口154cと前記消音器156との間にラビリンス状の外気案内路157を形成しているから、吸気音の消音機能を効率よく発揮しながら、前記エアクリーナ154内への泥水等の侵入を確実に防止できる。
また、前記エアクリーナ154側である前記エンジン12の左右一側方に、エンジン空冷用の吸引ファンを設け、前記エンジン12を挟んで左右他側方に排気マフラー155を配置しているから、前記吸引ファンによる冷却風経路の上流側に前記エアクリーナ154が位置し、下流側に前記排気マフラー155が位置することになる。従って、前記エアクリーナ154が前記排気マフラー155の排気ガスを取り込むおそれを抑制でき、前記エンジン12の周囲に前記エアクリーナ154と前記排気マフラー155とを効率よくコンパクトにまとめて配置できる。
上記の記載並びに図8及び図9から明らかなように、前記車体カバー40のうち前記操縦座席5の後方に、取り外し可能な蓋体159を有するメンテナンス穴158を形成し、前記エアクリーナ154を前記メンテナンス穴158に下方から臨ませているから、前記エアクリーナ154に対するメンテナンス作業に要する手数を少なくでき、前記エアクリーナ154のメンテナンス作業性を向上できる。
上記の記載並びに図5、図6及び図10から明らかなように、走行機体1の前後車軸28,30間にエンジン12及びミッションケース16を搭載し、前記エンジン12及び前記ミッションケース16を覆う車体カバー40上に操縦座席5を配置している作業車両において、前記エンジン12を挟んで左右一側方にエアクリーナ154を配置し、左右他側方に排気マフラー155を配置し、前記走行機体1を構成する左右一対の横フレーム21の後部側を、後方に行くほど高さが高くなる傾斜部21aに構成し、前記ミッションケース16とリヤアクスルケース29とを連結する中間フレーム31と、前記横フレーム21の傾斜部21aとの間に、前記排気マフラー155を位置させ、前記排気マフラー155の上面側を前記横フレーム21の傾斜部21aに沿わせて傾斜させているから、前記エンジン12周辺にある前記エアクリーナ154等の補機との干渉を回避しつつ、前記排気マフラー155の容量アップを図れ、排気騒音を低減できる。前記排気マフラー155容積を大きくできるので、前記排気マフラー155による排気音の消音効果を向上できる。前記排気マフラー155の上面側を下面側と非平行な傾斜面155bにしているため、排気音が共鳴し難くて前記排気マフラー155による排気音の消音効果がより高まる。大型化した前記排気マフラー155によって前記エンジン側面をカバーできる。
上記の記載並びに図5、図6及び図10から明らかなように、前記エアクリーナ154側である前記エンジン12の左右一側方に、エンジン12空冷用の吸引ファンを設けているから、前記吸引ファンによる冷却風経路の上流側に前記エアクリーナ154が位置し、下流側に前記排気マフラー155が位置することになる。従って、前記エアクリーナ154が前記排気マフラー155の排気ガスを取り込むおそれを抑制でき、前記エンジン12の周囲に前記エアクリーナ154と前記排気マフラー155とを効率よくコンパクトにまとめて配置できる。大型化した前記排気マフラー155を効率よく空冷できる。前記中間フレーム31と前記横フレーム21の傾斜部21aとの間が前記冷却風通路になるため、前記横フレーム21の温度上昇を抑制して、前記エンジン12や前記排気マフラー155の排熱が前記操縦座席5側(オペレータ側)に向かうのを防止できる。
次に、図11〜図14を参照しながら、フロントボンネット7周辺の詳細構造について説明する。前述した通り、フロントボンネット7上面に、移動速度等を表示する計器パネル47を設けている。実施形態では、フロントボンネット7上面に計器カバー体161を取り付け、計器カバー体161に計器パネル47を上向きに露出するように組み付けている。操縦ハンドル6、主変速レバー43、速度設定レバー44、アクセルレバー45及び植付昇降レバー46は、計器カバー体161から上向きに突出している。
フロントボンネット7の前面上部側には、走行機体1の前方を照らす前照灯48を設けている。フロントボンネット7の前面上端側には、計器パネル47の前方を取り囲むフロントバイザー体49を取り付けている。実施形態では、計器カバー体161の前面側に左右一対の取付ボス部162を前向きに突設している。左右両方の取付ボス部162に前方からの複数のネジ163でフロントバイザー体49をねじ止めすることによって、計器カバー体161にフロントバイザー体49を着脱可能に装着している。
計器カバー体161にフロントバイザー体49を装着した状態では、左右両方の取付ボス部162の存在によって、フロントバイザー体49と計器カバー体161(フロントボンネット7といってもよい)との間には上下開口状の隙間164が形成される。また、フロントバイザー体49の下端側は前照灯48の上端側と重なっている。フロントボンネット7の前面上端部、すなわち計器カバー体161の前面部は、前向きに突出した湾曲形状(前向きに膨出した形状)に形成している。フロントバイザー体49は、計器カバー体161の前面部に沿うように前向き凸形状に湾曲している。フロントバイザー体49の左右両側の二箇所ずつを計器カバー体161にネジ163止めしている。このようにフロントバイザー体49が前向き凸の湾曲形状をしていて、フロントバイザー体49の左右両端側を計器カバー体161にネジ163止めしているので、形状的な効果によってフロントバイザー体49の高い剛性を確保でき、オペレータが乗降時にフロントバイザー体49に手をかけたりしても、簡単に変形せずしっかりと掴める。つまり、フロントバイザー体49がオペレータ乗降時のアシストグリップとして機能しても差し支えないものになる。
上記の構成において、前照灯48の照射光のうち圃場等の照射に関係の少ない上向きの照射光をフロントバイザー体49の背面下端側に当てて、照射光をフロントバイザー体49の背面側から回り込ませるか又はフロントバイザー体49の背面で反射させることによって、計器カバー体161上面ひいては計器パネル47に照射光を照射できる。このため、夜間照明用の専用灯具等を設けなくても、夕暮れ時や夜間に計器パネル47を視認し易くなる(計器パネル47の視認性を向上できる)。夕暮れ時や夜間に前照灯48を点灯させているか否かを計器パネル47上の明るさで判別でき、夕暮れ時や夜間の非点灯や消し忘れといった問題を回避できる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。