以下、本発明の空気圧縮機の実施形態の一例について説明する。本実施形態に係る空気圧縮機は、圧縮空気を生成,貯留,供給するエアコンプレッサである。より具体的には、本実施形態に係る空気圧縮機は、モータを動力源とする圧縮空気生成部を備えるレシプロ型のエアコンプレッサである。本実施形態に係るエアコンプレッサの用途は特に限定されないが、圧縮空気の圧力によって釘やネジを木材などに打ち込む空気工具(例えば、釘打機)に圧縮空気を供給する供給源としての利用に適している。以下、本実施形態に係るエアコンプレッサの詳細について図面を参照しながら説明する。
図1,図2に示されるように、エアコンプレッサ1は、互いに平行に配置された第1エアタンク10aと第2エアタンク10bとを有する。それぞれのエアタンク10a,10bは略円筒状であって、長手方向両側にはゴム製の脚部12がそれぞれ取り付けられている。具体的には、第1エアタンク10aの長手方向一端側には脚部12aが取り付けられ、長手方向他端側には脚部12bが取り付けられている。また、第2エアタンク10bの長手方向一端側には脚部12cが取り付けられ、長手方向他端側には脚部12dが取り付けられている。以下の説明では、4つの脚部12a,12b,12c,12dを“脚部12”と総称する場合がある。また、エアタンク10a,10bの配列方向を前後方向とし、第1エアタンク10aが配置されている側を前方、第2エアタンク10bが配置されている側を後方とする。また、エアタンク10a,10bの長手方向を左右方向とし、脚部12a,12cが設けられている側を右側、脚部12b,12dが設けられている側を左側とする。
上記のように、エアコンプレッサ1の底には4つの脚部12が設けられており、これら脚部12によってエアコンプレッサ1が所望の場所に置かれる。例えば、エアコンプレッサ1は、該エアコンプレッサ1が使用される現場の地面や床面等に置かれる。以下の説明では、エアコンプレッサ1が置かれる地面,床面その他の面を“設置面”と総称する場合がある。エアコンプレッサ1が設置面に置かれると、4つの脚部12のそれぞれが設置面に当接する。換言すれば、エアコンプレッサ1は4つの脚部12によって支持される。
また、エアコンプレッサ1の中央上部にはハンドル13が設けられており、使用者は、ハンドル13を握ってエアコンプレッサ1を持ち運ぶことができる。さらに、ハンドル13の左右両側には、不図示の肩ベルトを係止可能な一対の係止孔14が設けられている。使用者は、係止孔14に係止させた肩ベルトを肩に掛けてエアコンプレッサ1を持ち運ぶこともできる。もちろん、ハンドル13及び肩ベルトを併用してエアコンプレッサ1を持ち運ぶこともできる。
図3,図4に示されるように、エアタンク10a,10bの上には、モータ20と、モータ20を動力源とする圧縮空気生成部30と、が搭載されており、圧縮空気生成部30は、クランクケース40と、2つのシリンダ(第1シリンダ51a,第2シリンダ51b)と、を含む。これらモータ20や圧縮空気生成部30は本体カバー15(図1)によって覆われている。本体カバー15は、モータ20や圧縮空気生成部30を保護し、操作パネル16(図1)を有し、かつ、冷却風の導風の役割を有する。本実施形態では、本体カバー15(図1)と、冷却ファン61を保護し、かつ、冷却風の導風の役割を有するファンカバー62(図1)と、が一体成形されている。もっとも、本体カバー15とファンカバー62とは一体成形されたものに限定されず、別体であってもよい。また、モータ20,圧縮空気生成部30及び冷却ファン61等の全てをカバーで覆う必要はなく、保護する必要のある部位や導風の機能上必要な範囲のみをカバーで覆ってもよい。
図3に示されるように、モータ20は、固定子(ステータコイル)21と、固定子21の内側に組み込まれた回転子(ロータ)22と、回転子22に固定された回転軸(モータ回転軸)23と、回転子22の回転位置を検出するホール素子などを有するDCブラシレスモータであって、クランクケース40の外に配置されている。もっとも、モータ20は、クランクケース40のカバーに固定されており、クランクケース40と一体化されている。尚、本実施形態におけるモータ20はインナーロータ型の電動モータであるが、他の形式のモータ、例えば、アウターロータ型の電動モータに置き換えることもできる。
モータ回転軸23は、クランクケース40を貫通するとともに、クランクケース40に設けられている軸受によって回転自在に支持されている。具体的には、モータ回転軸23は、クランクケース40の対向する2つのカバーを貫通しており、それぞれのカバーに設けられている軸受によって回転自在に支持されている。
図4に示されるように、モータ20の背後には制御回路基板60が配置されており、制御回路基板60の背後には冷却ファン61が配置されている。制御回路基板60には、モータ20をインバータ制御するための半導体スイッチング素子などが搭載されている。冷却ファン61は、モータ回転軸23と一体に回転し、制御回路基板60その他の冷却対象物に冷却風を供給する。
図3に示されるように、第1シリンダ51aと第2シリンダ51bは、クランクケース40の左右両側に設けられている。換言すれば、第1シリンダ51aと第2シリンダ51bは、クランクケース40を挟んで対向している。第1シリンダ51aと第2シリンダ51bは、モータ回転軸23の回転方向に関して180度異なる位置に配置されており、第1シリンダ51aには第1ピストンが往復動可能に収容され、第2シリンダ51bには第2ピストンが往復動可能に収容されている。
モータ回転軸23の回転運動を第1ピストン及び第2ピストンの往復運動に変換するために、クランクケース40には第1コネクティングロッド及び第2コネクティングロッドが収容されている。第1コネクティングロッドの一端は、第1ピストンにピン結合されており、第1コネクティングロッドの他端は、モータ回転軸23に装着されている偏心カムに回転自在に結合されている。すなわち、第1コネクティングロッドは、クランクケース40と第1シリンダ51aとに跨り、モータ回転軸23と第1ピストンとを連結している。また、第2コネクティングロッドの一端は、第2ピストン52bにピン結合されており、第2コネクティングロッドの他端は、モータ回転軸23に装着されている他の偏心カムに回転自在に結合されている。すなわち、第2コネクティングロッドは、クランクケース40と第2シリンダ51bとに跨り、モータ回転軸23と第2ピストンとを連結している。そこで、以下の説明では、モータ回転軸23を“クランクシャフト23”と呼ぶ場合がある。モータ20から出力される回転駆動力は、クランクシャフト23,偏心カムおよびコネクティングロッド(第1コネクティングロッド,第2コネクティングロッド)からなる変換機構によって往復駆動力に変換されてピストン(第1ピストン,第2ピストン)に伝達される。
ここで、第1ピストンと第2ピストンは逆位相で往復駆動される。具体的には、第1ピストンが第1シリンダ51aの上室を圧縮する方向に駆動されるとき、第2ピストンは第2シリンダ51bの上室を膨張させる方向に駆動される。一方、第2ピストンが第2シリンダ51bの上室を圧縮する方向に駆動されるとき、第1ピストンは第1シリンダ51aの上室を膨張させる方向に駆動される。尚、シリンダ51a,51bの上室とは、それぞれのシリンダ51a,51b内におけるピストンよりも上方の空間である。
それぞれのシリンダ51a,51bに設けられているシリンダヘッドの内側には、バッファ室が設けられており、シリンダ51a,51bの上室とバッファ室との間にはそれぞれ逆止弁が設けられている。第1ピストンが第1シリンダ51aの上室を圧縮する方向に駆動され、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第1シリンダ51aの上室とバッファ室との間にある逆止弁が開かれる。すると、第1ピストンによって圧縮された空気は、第1シリンダ51aと第2シリンダ51bとを連通させている配管52を介して第2シリンダ51bの上室に送られる。
第2ピストンが第2シリンダ51bの上室を圧縮する方向に駆動され、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第2シリンダ51bの上室とバッファ室との間にある逆止弁が開かれる。すると、第2ピストンによって圧縮された空気は、配管53を介して第1エアタンク10aに送られ、貯留される。尚、エアタンク10a,10bは、不図示の配管を介して互いに連通している。よって、第2シリンダ51bのバッファ室から送り出された圧縮空気は、第1エアタンク10aを介して第2エアタンク10bに送られ、2つのエアタンク10a,10b内の圧力は均一に保たれる。
ここで、図3に示される第1シリンダ51aの上室には、図5に示される吸入口54を通して外気が導入される。すなわち、図3に示される第1シリンダ51aは外気を圧縮し、第2シリンダ51bは、第1シリンダ51aにおいて圧縮された外気(空気)をさらに圧縮する。換言すれば、第1シリンダ51aは1段目の低圧用シリンダであり、第2シリンダ51bは2段目の高圧用シリンダである。このように、本実施形態に係るエアコンプレッサ1は、空気を2段階で圧縮する。具体的には、第1シリンダ51aにおいて、例えば1.0[MPa]前後の圧縮空気が生成され、第2シリンダ51bにおいて、例えば4.0〜4.5[MPa]程度の圧縮空気が生成される。
図3〜図5に示されるように、第1エアタンク10aの上には、圧縮空気の取り出し口である2つの第1エアソケット71a,71bと、2つの第2エアソケット72a,72bと、が設けられている。尚、図4では、第2エアソケット72aを示すために、第2エアソケット72aの手前にある第1エアソケット71aの図示が省略されている。また、第1エアソケット71bの背後にある第2エアソケット72bは、第1エアソケット71bに隠れて見えていない。実際には、第2エアソケット72aの手前には第1エアソケット71aがあり、第1エアソケット71bの背後には第2エアソケット72bがある(図5参照)。
図1,図5に示されるように、本実施形態では、2つの第1エアソケット71a,71bは、互いに平行に、かつ、上下に並んでいる。また、2つの第2エアソケット72a,72bも、互いに平行に、かつ、上下に並んでいる。以下の説明では、2つの第1エアソケット71a,71bを“第1エアソケット71”と総称し、2つの第2エアソケット72a,72bを“第2エアソケット72”と総称する場合がある。これら第1エアソケット71,第2エアソケット72には、不図示の接続用ホースを介して空気工具やエアノズルなどが接続される。具体的には、接続用ホースの両端にはそれぞれエアプラグが装着されており、一方のエアプラグが第1エアソケット71又は第2エアソケット72に接続され、他方のエアプラグが空気工具やエアノズルなどに接続される。本実施形態に係るエアコンプレッサ1は、合計4つのエアソケット(第1エアソケット71a,71b、第2エアソケット72a,72b)を備えているので、最大4つの空気工具やエアノズルを同時に接続することができる。尚、本実施形態におけるエアソケットの個数は好適な一例であり、第1エアソケット71や第2エアソケット72に含まれるエアソケットの個数は任意に増減させることができる。例えば、第1エアソケット71及び第2エアソケット72がそれぞれ1つのエアソケットを含む実施形態がある、また、第1エアソケット71と第2エアソケット72の一方または双方が3つ以上のエアソケットを含む実施形態もある。さらには、第1エアソケット71に含まれるエアソケットの個数と第2エアソケット72に含まれるエアソケットの個数とが異なる実施形態もある。第1エアソケット71や第2エアソケット72に複数のエアソケットが含まれる場合、これら複数のエアソケットは、互いに平行に、かつ、上下に並んでおらず、左右に並列していてもよく、また、後述する対角線の方向に概ね傾斜していれば、必ずしも互いに平行でなくともよい。すなわち、後述する対角線の方向に対する角度要件を満たしさえすれば、互いに異なった方向(一方は対角線よりも前方向、他方は対角線よりも左右方向)に傾斜していてもよい。この場合、上下(あるいは左右)のエアソケットを同時に使用する際に、エアプラグを抜き差ししやすくなる効果がある。
要するに、本発明では、少なくとも第1エアソケット71または第2エアソケット72の何れか一方に、後述する対角線の方向に対する角度要件を満たした少なくとも1つのエアソケットが含まれていればよい。
図3に示されるように、第1エアソケット71と第1エアタンク10aとの間には、第1エアソケット71から出力される圧縮空気の圧力を調節する減圧弁73が設けられている。減圧弁73によって調節された圧縮空気の圧力は、該減圧弁73と第1エアソケット71との間に設けられている圧力計74によって計測され、表示される。また、第2エアソケット72と第1エアタンク10aとの間には、第2エアソケット72から出力される圧縮空気の圧力を調節する減圧弁75が設けられている。減圧弁75によって調節された圧縮空気の圧力は、該減圧弁75と第2エアソケット72との間に設けられている圧力計76によって計測され、表示される。本実施形態に係るエアコンプレッサ1は、第1エアソケット用の減圧弁73と第2エアソケット用の減圧弁75とを備えているので、第1エアソケット71から出力される圧縮空気の圧力と第2エアソケット72から出力される圧縮空気の圧力とを同じ圧力に調節することも、異なる圧力に調節することもできる。また、2つの減圧弁の種類を異ならせることで、使用空気圧力が異なる2種類の空気工具(いわゆる“常圧用”,“高圧用”)に圧縮空気を供給することもできる。
図3,図5に示されるように、第1エアタンク10aの長手方向略中央には、エアタンク10a,10b内の圧力が所定圧力よりも高くなると自動的に開く解放弁77が設けられている。図3,図4に示されるように、第2エアタンク10bの上方にはドレン装置78が設けられており、ドレン装置78が操作されると、エアタンク10a,10b内の圧縮空気および水分が排出される。
図1に示されるように、本体カバー15の上、より具体的には、本体カバー15の前面中央には、エアコンプレッサ1を制御するための操作パネル16が設けられている。この操作パネル16には、不図示の入力部が設けられており、この入力部を介してモータ20(図3)の起動指令や回転数などが入力される。図1,図2に示されるように、第1エアソケット71,減圧弁73及び圧力計74は、操作パネル16の一側(右側)に配置され、第2エアソケット72,減圧弁75及び圧力計76は、操作パネル16の他側(左側)に配置されている。
また、図6に示されるように、第1エアソケット71は、第1エアタンク10aの長手方向一端側(右側)に配置されており、第2エアソケット72は、第1エアタンク10aの長手方向他端側(左側)に配置されている。さらに、第1エアソケット71は、4つの脚部12を結ぶ直線によって規定される四角形の一方の対角線に沿って斜めに配置されている。一方、第2エアソケット72は、上記四角形の他方の対角線に沿って斜めに配置されている。図6中では、上記四角形が鎖線で示され、上記対角線が二点鎖線で示されている。
換言すれば、第1エアソケット71の中心軸(A1)及び第2エアソケット72の中心軸(A2)は、第1エアタンク10aの中心軸(B1)及び第2エアタンク10bの中心軸(B2)の双方と斜めに交差している。また、第1エアソケット71の中心軸(A1)と第2エアソケット72の中心軸(A2)とは、上記四角形の内側において互いに交差している。すなわち、第1エアソケット71の中心軸(A1)と第2エアソケット72の中心軸(A2)との交点Xは上記四角形の内側にあり、本実施形態では、上記四角形の略中央に位置している。従って、第1エアソケット71の中心軸(A1)と第2エアソケット72の中心軸(A2)との交点Xは、上記四角形の対角線の交点の近傍に位置している。図6中では、第1エアソケット71の中心軸(A1)及び第2エアソケット72の中心軸(A2)が一点鎖線で示されている。
さらに換言すれば、第1エアソケット71の中心軸(A1)は、第1エアソケット71の直下にある脚部12aを除く3つの脚部12b,12c,12dを頂点とする直角三角形の斜辺の中点又はその近傍を通過し、直角の頂点に位置する脚部12d又はその近傍に至っている。また、第2エアソケット72の中心軸(A2)は、第2エアソケット72の直下にある脚部12bを除く3つの脚部12a,12c,12dを頂点とする直角三角形の斜辺の中点又はその近傍を通過し、直角の頂点に位置する脚部12c又はその近傍に至っている。
要するに、第1エアソケット71に対するエアプラグの接続方向前方には脚部12dがあり、第2エアソケット72に対するエアプラグの接続方向前方には脚部12cがある。従って、エアプラグを第1エアソケット71に接続する際に加わる力が脚部12dによって受け止められ、エアプラグを第2エアソケット72に接続する際に加わる力が脚部12cによって受け止められるので、エアプラグを接続する際にエアコンプレッサ本体が傾いたり、回転したりし難い。
さらに、第1エアソケット71に対するエアプラグの接続方向に延びる直線(=中心軸A1)の両側には脚部12b,12cがあり、第2エアソケット72に対するエアプラグの接続方向に延びる直線(=中心軸A2)の両側には脚部12a,12dがある。従って、エアプラグを第1エアソケット71に接続する際に加わる力が3つの脚部12b,12c,12dによって規定される直角三角形を含む平面によって受け止められるので、エアコンプレッサ本体の傾きや回転が一層確実に防止される。同様に、エアプラグを第2エアソケット72に接続する際に加わる力が3つの脚部12a,12c,12dによって規定される直角三角形を含む平面によって受け止められるので、エアコンプレッサ本体の傾きや回転が一層確実に防止される。
加えて、第1エアソケット71に対するエアプラグの接続方向に延びる直線(=中心軸A1)の上にハンドル13があり、第2エアソケット72に対するエアプラグの接続方向に延びる直線(=中心軸A2)の上にハンドル13がある。また、ハンドル13は、第1エアタンク10aの中心軸(B1)と第2エアタンク10bの中心軸(B2)との間に配置され、これら中心軸(B1,B2)と平行に延びている。さらに、ハンドル13は、第1エアソケット71の中心軸(A1)と第2エアソケット72の中心軸(A2)との交点Xの近傍に配置されている。換言すれば、上記中心軸A1,A2と上記直角三角形の斜辺とが交差する領域、すなわちコンプレッサ本体の中央領域の上部にハンドル13が配置されている。従って、ハンドル13を掴んだ状態でエアプラグを第1エアソケット71又は第2エアソケット72に接続すれば、エアコンプレッサ本体の傾きや回転がより一層確実に防止される。
ハンドル13は可倒式であり、エアコンプレッサ本体に対して回動可能である。具体的には、ハンドル13は、図4に示されるように起立した状態から前後にそれぞれ90度回動可能である。
図7に示されるように、ハンドル13は、クランクケース40に回動可能に固定されている一対のアーム部13a,13bと、これらアーム部13a,13bに跨る把持部13cと、を有し、全体として略コ字形の外観を呈する。以下、ハンドル13の取付構造について詳細に説明する。
図7に示されるように、クランクケース40には一対の金属製のアングル80が固定されている。それぞれのアングル80は、対向する外側部81及び内側部82と、外側部81と内側部82とを繋ぐ底部83と、を有する。アングル80の外側部81には既述の係止孔14が形成され、底部83には固定ボルト84が挿通される第1貫通孔が形成され、内側部82には連結ボルト85が挿通される第2貫通孔が形成されている。
アングル80は、底部83に形成されている第1貫通孔に挿通された固定ボルト84によってクランクケース40の天井に固定されている。固定ボルト84とアングル80(底部83)との間には略円筒状の第1弾性体86が介在している。さらに、固定ボルト84の軸部には、固定ボルト84と第1弾性体86との間に介在し、第1弾性体86の過度の変形を防ぐ第1スリーブ87が挿通されている。第1弾性体86は、ハンドル13に振動が伝わることを防止するために設けられたゴム部材である。そこで以下の説明では、第1弾性体86を“第1防振ゴム86”と呼ぶ。第1防振ゴム86は、固定ボルト84の頭部とアングル80の底部83との間に介在するフランジ部を有し、フランジ部の下には第1貫通孔の周縁部が嵌合する環状の溝が形成されている。
ハンドル13のアーム部13a,13bは、アングル80の内側部82に形成されている第2貫通孔に挿通された連結ボルト85によってアングル80に回動可能に固定されている。すなわち、本実施形態では、連結ボルト85の中心軸がハンドル13の可倒軸である。連結ボルト85とアングル80(内側部82)との間には略円筒状の第2弾性体88が介在している。さらに、連結ボルト85の軸部には、連結ボルト85と第2弾性体88との間に介在し、第2弾性体88の過度の変形を防ぐ第2スリーブ89が挿通されている。第2弾性体88は、第1防振ゴム86と共にハンドル13に振動が伝わることを防止するために設けられたゴム部材である。そこで以下の説明では、第2弾性体88を“第2防振ゴム88”と呼ぶ。
第2防振ゴム88の外周面には、ハンドル13と係合する2つのストッパ部90(図7には一方のストッパ部90のみが図示されている。)が周方向において異なる位置にそれぞれ一体成形されている。一方、アーム部13a,13bの互いに対向する内側面には、内側に向かって突出する係合突起91がそれぞれ形成されている。ハンドル13が前方に所定角度(本実施形態では90度)回動すると、係合突起91が第2防振ゴム88に形成されている一方のストッパ部90に突き当たり、ハンドル13が後方に所定角度(本実施形態では90度)回動すると、係合突起91が第2防振ゴム88に形成されている他方のストッパ部90に突き当たる。すなわち、ハンドル13は、係合突起91が前後のストッパ部90に突き当たる位置まで回動可能である。
図8に示されるように、ハンドル13が前方に所定角度回動されると(本実施形態では90度回動されると)、ハンドル13と本体カバー15の上面とが平行又は略平行になる。このとき、ハンドル13の一部(本実施形態では、把持部13c及びアーム部13a,13bの上部)が操作パネル16の上方に突出し、操作パネル16と上下に重なる。具体的には、ハンドル13の把持部13cは、操作パネル16の上方において操作パネル16を横断する。換言すれば、ハンドル13の把持部13cが操作パネル16の上方に軒または庇のように張り出す。よって、上方や斜め上方から木材その他の物体が落下してきたとしても、該物体はハンドル13に遮られ、操作パネル16に衝突することはない。すなわち、操作パネル16がハンドル13によってガードされる。
図8,図9に示されるように、ハンドル13が前後に90度回動されたとき、ハンドル13とファンカバー62とが概ね同一の高さとなる。具体的には、ハンドル13が前後に90度回動されると、ハンドル13の把持部13c及びアーム部13a,13bの側面と、ファンカバー62の上面62bとが面一又は略面一になる。換言すれば、ハンドル13の高さがファンカバー62の上面62bの高さ以下となる。ここで、ファンカバー62の上面62bは最も高い位置にある平面である。すなわち、ハンドル13を前方又は後方に90度回動させると、ハンドル13の表面の一部(本実施形態では、ハンドル13の把持部13c及びアーム部13a,13bの側面)とファンカバー62の表面の一部(本実施形態ではファンカバー62の上面62b)とによって、工具箱やその他の物を置くことができる第1の載置面が形成される。また、ハンドル13を前方又は後方に90度回動させれば、エアコンプレッサ1を収納する際や肩ベルトを用いてエアコンプレッサ1を運搬する際などにハンドル13が邪魔になることがない。尚、ハンドル13をその高さがファンカバー62の上面62bの高さよりも低くなる位置まで回動させることができるようにすれば、ファンカバー62の上面62bのみにより、または、ハンドル13の表面の一部と本体カバー15の表面の一部とにより、第2の載置面を形成することもできる。換言すれば、ファンカバー62の表面や本体カバー15の表面に工具箱やその他の物を置く際にハンドル13が邪魔になることがない。
図8,図9に示されるように、ファンカバー62の外周面には、電源コード63を巻き付けるための巻き付け溝62aが設けられているが、前後に90度回動されたハンドル13が巻き付け溝62aに巻き付けられている電源コード63よりも上方に突出することもない。図1に示されるように、第1エアソケット71及び第2エアソケット72と巻き付け溝62aとは、ハンドル13を挟んで互いに反対側に配置されている。第1エアソケット71や第2エアソケット72に接続される接続用ホースも、巻き付け溝62aに巻き付けられる電源コード63も、長尺物である。上記配置により、第1エアソケット71や第2エアソケット72にエアプラグを抜き差しする際に電源コード63が邪魔になることがなく、巻き付け溝62aに電源コード63を巻き付ける際に接続用ホースが邪魔になることがない。
図10に示されるように、ハンドル13は、エアコンプレッサ1の重心Gの上方に位置している。本実施形態に係るエアコンプレッサ1は可搬型である。そこで、作業者がハンドル13を把持してエアコンプレッサ1を持ち運ぶ際にバランスが取れるように、ハンドル13がエアコンプレッサ1の重心Gの上方に配置されている。
エアコンプレッサ1の重心Gの位置は、エアコンプレッサ1を構成する部材のうち、重量が重い圧縮空気生成部30とモータ20とからなる圧縮機ユニットの位置に影響される。そこで、上記圧縮機ユニットをエアコンプレッサ本体の略中央に配置し、他の部材を上記圧縮機ユニットの前後や左右に配置してエアコンプレッサ1の全体の重量のバランスを取っている。
また、ハンドル13は、所定の角度範囲内において自由に回動する。よって、ハンドル13を握ってエアコンプレッサ1を運搬している際にエアコンプレッサ本体が揺れても、ハンドル13を握っている使用者の手首に負担が掛かることがない。また、第1エアソケット71や第2エアソケット72にエアプラグを接続する際、前方に傾斜させたハンドル13を一方の手で把持し、他方の手でエアプラグを接続すると、力を入れやすい。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態に係るエアコンプレッサ1は、2組のシリンダ及びピストンを備えた多段式の空気圧縮機であったが、シリンダ及びピストンは1組でも3組以上でもよい。また、上記実施形態に係るエアコンプレッサ1はレシプロ型エアコンプレッサであったが、本発明は他の形式のエアコンプレッサ、例えばロータリー型エアコンプレッサに適用することもできる。