JP6435185B2 - エレベータ装置およびエレベータ気圧制御方法 - Google Patents
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<エレベータ装置の概略構成>
図1は、第1実施形態のエレベータ装置1の構成を説明するための概略構成図である。この図に示すエレベータ装置1は、乗りカゴ11、送風機13、および指令生成器15を備えており、指令生成器15において生成する回転速度指令[n]が特徴的である。これらの構成は、次のようである。
乗りカゴ11は、ここでの図示を省略した建物の上下方向に延設された昇降路内につり下げられたもので、巻き上げ機の駆動によって昇降路内において昇降自在に走行する。この乗りカゴ11の側面には、水平方向にスライドするカゴドア11aが設けられている。カゴドア11aが閉じられた状態において、乗りカゴ11内は、ほぼ密閉された状態に保たれるが、この密閉状態は完全ではなく隙間を有している。したがって、乗りカゴ11は、その昇降動作にともない乗りカゴ11の内外で気圧差が発生すると、乗りカゴ11内外の空気がカゴドア11a等の隙間を通過し、乗りカゴ11内外の空気に漏れが生じる構成である。
送風機13は、乗りカゴ11と外気とに連通して設けられており、ここでの図示を省略した送風路によって乗りカゴ11と連通した状態で配置され、これにより送風機13で発生させた風量に応じてカゴ内気圧[Pc]を変化させる構成となっている。
指令生成器15は、送風機13の回転速度を制御するためのものである。この指令生成器15は、指令生成器15に対して入力される乗りカゴ11内の目標気圧[Pref]、送風機13の最大角加速度[αacc]および最大角減速度[αdec]に基づいて、乗りカゴ11の走行中における送風機13の回転速度指令[n]を生成する。
図3は、走行中に求められる乗りカゴ11内の気圧パタンの一例を示す図である。以降で指令生成器15による回転速度指令[n]の生成の詳細を説明するあたり、先ず、指令生成器15に入力される目標気圧[Pref]の経時変化として表される気圧パタン100について、先の図1と共に図3を用いて説明する。
図2は、指令生成器15において実施される回転速度指令[n]の生成の詳細を説明するためのフロー図である。以下においては、図2のフロー図に従って、図1および必要図を参照しつつ、指令生成器15における回転速度指令[n]の生成を説明する。
先ず、ステップS1においては、指令生成器15に入力された目標気圧[Pref]に基づいて、次のように乗りカゴ11内の気圧を調整するために送風機13に求められる風量[QB]を計算する。これにより、送風機の回転速度指令の理想値[n0]を生成する。
ただし、式(4)中、[A]は乗りカゴの隙間面積、ΔPは乗りカゴ11内外の気圧差、[ρ]は標準大気圧における空気密度である。
そこで次のステップS2では、上述した理想値[n0]に対して、指令生成器15に入力された送風機15における性能限界上の最大角加速度[αacc]および最大角減速度[αdec]による制限を加えた性能値[n1]を生成する。
ここで、図6に示す理想値[n0]と性能値[n1]とを比較してわかるように、回転速度の性能値[n1]は、送風機13の性能を考慮した値であるため、回転速度の理想値[n0]に対して回転速度の変化に遅れが発生する。これにより、回転速度の性能値[n1]は、カゴ内外を目標差圧[ΔPref]とするための回転速度の理想値[n0]に対して、制御誤差が加わったものとなっている。
また図7は、送風機の回転速度[N]の変化と乗りカゴの内外の気圧差[ΔP]の変化との関係を説明するための図である。図7Aは、送風機の回転速度パタンの一例を示す図である。図7Aに示す回転速度パタンは、単純な台形パタン103であり、立ち上がり部分103aにおける送風機の角加速度と、立ち下がり部分103bにおける送風機の角減速度とは、同じ大きさであることとする。図7Bは、図7Aの台形パタン103にしたがって送風機を駆動した場合の乗りカゴ内外の気圧差[ΔP]の経時変化を示している。
先ず、ステップS3では、性能値[n1]によって得られる気圧差[ΔPc1]が極大点[M1]に達する時刻[t1’]と、目標差圧[ΔPref]が頂点[S]に達する時刻[t1]との時間差[Δt1]を求める。
次いでステップS4では、ステップS2で生成した性能値[n1]を時間差[Δt1]の分だけ前倒し、さらに最大角減速度[αdec]を最大角加速度[αacc]にまで低下させた補正性能値[n2]を生成する。この補正性能値[n2]によれば、送風機の駆動開始[tp]は、乗りカゴの走行開始[t0]よりも、時間差[Δt1]だけ先行することになる。
その後ステップS5では、補正性能値[n2]に従って送風機を制御した場合の乗りカゴの内外の気圧差[ΔPc2]を、下記式(8)〜式(14)に従って算出する。
ただし、式(8)中、[P0]は走行前の初期における乗りカゴ11内の初期カゴ内気圧、[V0]は初期カゴ内空気体積、[VB]は送風機13によって乗りカゴ11内に供給した空気の供給体積、[V2]は乗りカゴ11の隙間から漏れた空気の漏れ体積である。
・・・式(10)
・・・式(11)
=CB’×αacc×[(1/2)×t12+Δt1×t1]−CB’×αdec×[(1/2)×t2−t1×t]・・・式(12)
V2=Q2ave×t・・・(14)
ただし、式(13)内の[ΔPave]は、平均的な隙間漏れ風量を与えるために着目する、乗りカゴ内差圧(例えばカゴ内目標差圧の平均値)である。
そこで次のステップS6では、気圧差[ΔPc2]=0となる時刻[tx(>0)]と、時刻[t2’]との間隔[Δt2’]が、予め設定した範囲内であるか否かを判断する。範囲内である(Yes)と判断された場合には、気圧差[ΔPc2]が、頂点[S]となる時刻[t1]に対して許容範囲で左右対称となったと判断し、次のステップS7に進む。一方、範囲内ではない(No)と判断された場合には、気圧差[ΔPc2]が、頂点[S]となる時刻[t1]に対して左右対称ではないと判断し、次のステップS8に進む。
ステップS7では、直前のステップS5において算出された気圧差[ΔPc2]となる補正性能値[n2]を、回転速度指令[n]として採用する。
一方、ステップS8では、ステップS5で算出した気圧差[ΔPc2]が極大値[M2]に達する時刻[t1”]と、目標差圧[ΔPref]が頂点[S]に達する時刻[t1]との時間差[Δt2]を求める。
次のステップS9では、補正性能値[n2]を生成するために、性能値[n1]を前倒しした時間差[Δt1]に対して、ステップS7で求めた時間差[Δt2]を加え、Δt1=Δt1+Δt2とする。さらにステップS3において、最大角加速度[αacc]にまで低下させた最大角減速度[αdec]を、さらに微少刻み[Δα]だけ小さくし、補正性能値[n2]をさらに補正する。この微小刻み[Δα]は、送風機13の角減速度の設定分解能以上の値であり、その範囲で選択された大きさに設定される。
以上説明したように、図1に示す第1実施形態のエレベータ装置1においては、指令生成器15において生成した回転速度指令[n]により、送風機13の駆動開始[tp]が、乗りカゴの走行開始[t0]に対して時間差[Δt1]だけ前倒しされる。これにより、送風機13の性能限界および乗りカゴ11の隙間を通過する空気の漏れに起因して発生する、走行中の乗りカゴ11内の気圧の制御の遅れを解消することができる。
<エレベータ装置の概略構成>
図11は、第2実施形態のエレベータ装置2の構成を説明するための概略構成図である。この図に示す第2実施形態のエレベータ装置2が、第1実施形態のエレベータ装置と異なるところは、指令生成器15’の構成、およびフィードバック制御器21を備えたところにある。以下、第1実施形態のエレベータ装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略して各構成を説明する。
指令生成器15’は、送風機13の回転速度を制御するためのものである。この指令生成器15’は、指令生成器15’に対して入力される乗りカゴ11内の目標気圧[Pref]、送風機13の最大角加速度[αacc]および最大角減速度[αdec]と共に、フィードバック制御器21からの入力に基づいて、乗りカゴ11の走行中における送風機13の回転速度指令[n]を生成する。指令生成器15’において実施される回転速度指令[n]の生成は、以降に詳細に説明する。
フィードバック制御器21は、フィードバック制御器21に対して入力された目標気圧[Pref]と、乗りカゴ11に設けられたセンサ11bにおいて測定されたカゴ内気圧[Pc]との偏差にゲイン[Kp]を掛けて操作量を求める。求めた操作量を、指令生成器15’に出力する。
指令生成器15’において実施される回転速度指令[n]の生成の詳細は、第1実施形態において図2のフローを用いて説明した手順において、ステップS7のあとに、送風機13の回転速度指令[n]に対して、フィードバック制御器21から出力された操作量を加える手順を追加する。操作量を加えた結果として[αacc][αdec]を超える場合は、[αacc][αdec]を超えないように回転速度指令を修正する。なお、[αdec]の求め方は第1実施形態と同様である。
以上説明した第2実施形態のエレベータ装置2によれば、回転速度指令[n]の生成において、フィードバック制御器21から出力された操作量が回転速度指令の理想値[n0]に対して加えられる。このようなフィードバック制御を加えたことにより、最大角加速度[αacc]および最大角減速度[αdec]よりも小さい範囲で送風機13を駆動する期間では、フィードフォワード制御の誤差や外乱影響を、フィードバック制御で補償することができる。
Claims (8)
- 昇降自在に走行する乗りカゴと、
前記乗りカゴと外気とに連通して設けられた送風機と、
予め設定された走行中における前記乗りカゴ内の気圧パタンに基づいて前記送風機の回転速度を制御すための回転速度指令を生成する指令生成器とを備え、
前記指令生成器は、前記乗りカゴの走行開始に先行して前記送風機の駆動を開始させると共に、前記送風機の最大角減速度を当該送風機の性能値よりも小さい値に設定した前記回転速度指令を生成し、
前記回転速度指令における前記最大角減速度は、当該回転速度指令における最大角加速度を超えない大きさに設定される
エレベータ装置。 - 前記回転速度指令は、前記乗りカゴのカゴドアが閉じた後で、かつ前記乗りカゴの走行開始前に前記送風機の駆動を開始させる
請求項1に記載のエレベータ装置。 - 前記送風機は、ブレーキを備えた
請求項1または2に記載のエレベータ装置。 - 前記乗りカゴ内の気圧を測定するセンサと、
前記気圧パタンに示される当該乗りカゴ内の目標気圧と前記センサで測定した前記乗りカゴ内の気圧との偏差に基づいて操作量を求めるフィードバック制御器とを有し、
前記指令生成器は、前記気圧パタンに対して前記フィードバック制御器で求めた操作量を加えて前記回転速度指令を生成する
請求項1〜3の何れか1項に記載のエレベータ装置。 - 前記気圧パタンは、前記乗りカゴの走行期間の前半と後半とで、当該乗りカゴ内の気圧が外気圧に対して陽圧と陰圧とで切り替わるパタンであり、
前記送風機は、前記乗りカゴの走行期間の前半と後半とで、前記乗りカゴに対する機能が給気用と排気用とで切り替えて用いられ、
前記回転速度指令は、前記乗りカゴの走行期間の後半においての前記最大角減速度が、前半においての前記最大角減速度よりも小さい
請求項1〜4の何れか1項に記載のエレベータ装置。 - 前記回転速度指令は、前記送風機の駆動開始と前記乗りカゴの走行開始の間隔よりも大きい間隔で、前記気圧パタンにおける陽圧と陰圧との切り替わり時点に先行させて、前記乗りカゴに対する当該送風機の機能を給気用と排気用とで切り替える
請求項5に記載のエレベータ装置。 - 前記送風機は、前記乗りカゴに対する給気用と排気用との2台で構成され、前記乗りカゴの走行期間の前半と後半とで当該2台の送風機を切り替えて用いる
請求項6に記載のエレベータ装置。 - 昇降自在に走行する乗りカゴ内の気圧を予め設定された気圧パタンに追従させるように、当該乗りカゴと外気とに連通して設けられた送風機の回転速度を制御するエレベータ気圧制御方法であって、
前記気圧パタンと前記送風機の性能値とに基づいて、前記乗りカゴの走行開始に先行して前記送風機の駆動を開始させると共に、前記送風機の最大角減速度を当該送風機の性能値よりも小さい値で調整した回転速度指令を生成し、
前記回転速度指令にしたがって前記送風機の駆動を制御し、
前記回転速度指令の生成においては、最大角加速度で前記送風機を加速運転した場合の前記乗りカゴ内のカゴ内気圧の変化速度と、最大角減速度で当該送風機を減速運転した場合の当該乗りカゴ内のカゴ内気圧の変化速度とが同等になるように、前記乗りカゴの走行開始に対する当該送風機の駆動開始の前倒しの時間差と当該最大角減速度とを設定する
エレベータ気圧制御方法。
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