JP6434244B2 - 車両の車体前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の前進走行中の衝突(前突)により跳ね上げられた何らかの物体が車体前部のフードの上面に衝突する場合に、その衝撃力を十分に緩和できるようにするための車両の車体前部構造に関するものである。
上記車両の車体前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体前部構造は、車体前部に形成され、上方に向かって開く車体開口と、この車体開口を開閉可能に閉じるフードとを備える。このフードは、上下に重ねられ、その各外縁部同士が接合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる。上記インナパネルに形成され、上記アウタパネルに接合される接合部が設けられると共に、上記インナパネルを貫通するよう形成される開口部が上記接合部よりも後側に設けられる。
そして、上記したように、アウタパネルにインナパネルの接合部が接合されることから、このフードでは上記接合部周りの剛性が向上させられる。このため、フードの開閉操作時に、このフードに与えられる外力により、このフードが容易に弾性変形することは防止され、これにより、フードの開閉の操作性が良好に維持される。
一方、上記したように、インナパネルに開口部が形成されたことから、このフードでは上記開口部周りの剛性が低く抑制される。これにより、車両の前突時に跳ね上げられた何らかの物体がフードの上面に対しその上方から衝突した場合には、その衝撃力により上記フードの上記開口部周りに応力集中が生じ易くなる。この結果、このフードの上記開口部周りを起点とし、このフードがくの字状に屈曲変形することとされ、もって、上記衝撃力が緩和されるようになっている。
特開2013−43471号公報
ところで、上記従来の技術のフードでは、上記接合部周りの剛性が向上させられるが、その一方、上記インナパネルに形成される開口部は、その全体が上記接合部よりも後側に集中配置されている。このため、上記開口部周りの剛性は上記接合部周りの大きい剛性との比較で、かなり低くなりがちである。
このため、車両の前突時には、上記フードの上面に与えられた衝撃力により直ちにフードの開口部周りに大きい値の応力が集中しがちとなり、よって、この開口部周りを起点として上記フードは直ちに、かつ、容易に屈曲変形するおそれが生じる。そして、この場合、フードは全体的には変形しないことから、このフードの塑性変形量が不足して上記衝撃力に基づくエネルギーの吸収が不十分となり、つまり、この衝撃力の緩和が不十分になるおそれがある。
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の前突時に跳ね上げられた何らかの物体から車体前部のフードの上面に与えられる衝撃力を十分に緩和できるようにし、かつ、これが簡単な構成で達成できるようにすることである。
請求項1の発明は、車体2前部に形成され、上方に向かって開く車体開口4と、この車体開口4を開閉可能に閉じるフード7とを備え、このフード7が、上下に重ねられ、その各外縁部同士が接合されるアウタ、インナパネル20,21を有して中空閉断面構造とされ、上記インナパネル21に形成され、車体2の幅方向に長く延び上記アウタパネル20に接合される接合部31を設けると共に、上記インナパネル21を貫通するよう形成される主開口部35を設けた車両の車体前部構造において、
上記主開口部35、上記接合部31の前方、もしくは後方近傍に、上記接合部31の長手方向の中央部分全体にわたり、この接合部31に沿うよう車体2の幅方向に長く延びており、
上記主開口部35よりも車体2の幅方向外側方で、上記接合部31を車体2の幅方向で挟む上記インナパネル21の左右各部分に、それぞれこのインナパネル21を貫通する副開口部36,36を形成し、
上記接合部31の前方近傍に形成した上記主開口部35の後端部と左右副開口部36,36の各前端部とのそれぞれを、もしくは上記接合部31の後方近傍に形成した上記主開口部35の前端部と左右副開口部36,36の各後端部とのそれぞれを、車体2の前後方向で互いに近傍に配置したことを特徴とする車両の車体前部構造である。
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
本発明による効果は、次の如くである。
請求項1の発明は、車体前部に形成され、上方に向かって開く車体開口と、この車体開口を開閉可能に閉じるフードとを備え、このフードが、上下に重ねられ、その各外縁部同士が接合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされ、上記インナパネルに形成され、車体の幅方向に長く延び上記アウタパネルに接合される接合部を設けると共に、上記インナパネルを貫通するよう形成される主開口部を設けた車両の車体前部構造において、
上記主開口部、上記接合部の前方、もしくは後方近傍に、上記接合部の長手方向の中央部分全体にわたり、この接合部に沿うよう車体の幅方向に長く延びており、
上記主開口部よりも車体の幅方向外側方で、上記接合部を車体の幅方向で挟む上記インナパネルの左右各部分に、それぞれこのインナパネルを貫通する副開口部を形成しており、次の効果が生じる。
即ち、上記フードのアウタパネルへのインナパネルの接合部の接合により、このフードでは上記接合部周りの剛性が向上させられる。このため、フードの開閉操作時に、このフードに与えられる外力により、このフードが容易に弾性変形することは防止される。よって、フードの開閉の操作性が良好に維持される。
上記の場合、フードでは接合部周りの剛性が向上させられるが、上記したように、この接合部の前方、もしくは後方近傍のインナパネルの部分には主開口部が形成されると共に、上記接合部を車体の幅方向で挟む上記インナパネルの左右各部分に、それぞれ副開口部が形成されることから、これら主、副開口部の形成により上記接合部周りの剛性があまりに大きくなることが抑制されると共に、上記接合部周りの剛性の向上により上記主開口部周りの剛性があまりに低下することも抑制される。
よって、車両の前突時に跳ね上げられた何らかの物体から上記フードの上面に与えられた衝撃力により、直ちに上記主開口部周りに応力集中が生じることは抑制され、フードにはその面方向の各部に応力が生じて全体的に塑性変形が生じがちとなる。この結果、上記衝撃力によるフードの塑性変形量が十分に得られることとなって、この衝撃力は十分に緩和可能とされる。
また、上記接合部の前方近傍に形成した上記主開口部の後端部と左右副開口部の各前端部とのそれぞれを、もしくは上記接合部の後方近傍に形成した上記主開口部の前端部と左右副開口部の各後端部とのそれぞれを、車体の前後方向で互いに近傍に配置している。
このため、上記フードにおいては、車体の前後方向で互いに近傍に配置された上記主、副開口部の各端部を通る直線的な仮想線上の部分で剛性が低くされることから、上記衝撃力により上記フードの各部の塑性変形が進行した後には、上記仮想線上の部分に応力集中が生じがちとなって、この部分を起点としてフードが屈曲変形し始める。よって、上記衝撃力は、より十分に緩和可能とされる。
そして、上記した衝撃力の十分な緩和は、上記接合部に対する主、副開口部の相対的な配置の工夫という簡単な構成で達成でき、これは、上記した衝撃力の緩和作用を生じる車体前部の生産性の点で極めて有益である。
車体前部の簡略斜視図である。 車体前部の平面図である。 図2のIII−III線矢視断面図である。
本発明の車両の車体前部構造に関し、車両の前突時に跳ね上げられた何らかの物体から車体前部のフードの上面に与えられる衝撃力を十分に緩和できるようにし、かつ、これが簡単な構成で達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
即ち、車両の車体前部構造は、車体前部に形成され、上方に向かって開く車体開口と、この車体開口を開閉可能に閉じるフードとを備える。このフードは、上下に重ねられ、その各外縁部同士が接合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる。上記インナパネルに形成され、上記アウタパネルに接合される接合部が設けられると共に、上記インナパネルを貫通するよう形成される主開口部が設けられる。
上記主開口部は上記接合部の前方、もしくは後方近傍に形成される。この接合部を車体の幅方向で挟む上記インナパネルの左右各部分に、それぞれこのインナパネルを貫通する副開口部が形成される。上記接合部の前方近傍に形成した上記主開口部の後端部と左右副開口部の各前端部とのそれぞれが、もしくは上記接合部の後方近傍に形成した上記主開口部の前端部と左右副開口部の各後端部とのそれぞれが、車体の前後方向で互いに近傍に配置される。
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
上記車体2前部には、車両1の走行駆動用の不図示のエンジンを収容するエンジンルーム3が形成され、このエンジンルーム3の上端部には、このエンジンルーム3を車体2前部の上方に向かって開く車体開口4が形成される。そして、この車体開口4をその上方から開閉可能に閉じるフード7が設けられる。
上記フード7の前部側が上、下方回動可能となるよう後端部側を車体2の骨格部材に枢支する左右一対のヒンジ8,8が設けられる。上記フード7の前部側の上、下方回動により上記車体開口4が開閉される。この車体開口4を閉じたフード7の前端部を車体2の骨格部材であるラジエータサポート9に係脱可能に係止するフードロック10が設けられる。
上記フード7の前端縁部の下方に配置されると共に、上記ラジエータサポート9をその前方から覆うバンパ13が設けられる。また、車体2前部には左右一対のヘッドランプ14,14が設けられる。上記バンパ13、および各ヘッドランプ14は、それぞれ車体2の骨格部材に支持される。その他、符号15は、カウルルーバである。
車体2前部は、その幅方向の中央を通る車体中心線17を基準としてほぼ左右対称形とされる。
上記フード7は、上下に重ねられる板金製のアウタ、インナパネル20,21を有している。これら両パネル20,21のそれぞれ面方向の外端縁部同士はヘミング加工により接合される。上記両パネル20,21の間には空間22が形成され、上記フード7は中空閉断面構造とされる。
上記インナパネル21の前部26は、車体2の正面視でU字形状に屈曲させられており、上記インナパネル21の左右各側部27の前端側からそれぞれ下方に向かって一体的に延出する左右側面板26a,26aと、車体2の幅方向に延び、上記左右側面板26a,26aの各下端縁部同士を一体的に結合する下面板26bとを有している。上記インナパネル21の各側部27から前部26の側面板26aへの遷移部は、それぞれ断面円弧状に屈曲した山折れ屈曲部26cとされる。これら各屈曲部26cは車体2の前後方向に延び、これら各屈曲部26c周りは大きい剛性を有している。
上記バンパ13の左右各側部と、インナパネル21の前部26の左右各側面板26a、およびインナパネル21の前端側の各側部27とで囲まれた左右各空間にそれぞれ前記ヘッドランプ14が配置される。
上記インナパネル21の後部28における面方向の中途部が上方に膨出するよう屈曲してその上面に接合部31が形成される(図1,2中、梨地模様)。この接合部31は車体2の幅方向に長く延び、かつ、上記アウタパネル20の下面近傍でこの下面に平行に延び、マスチックシーラーといわれる接着材32により上記アウタパネル20の下面に接合される。
上記接合部31の前方近傍における上記インナパネル21の部分に、このインナパネル21を貫通するよう主開口部35が形成される。この主開口部35は、上記接合部31の長手方向の中央部分全体にわたり、この接合部31に沿うよう車体2の幅方向に長く延びている。また、上記接合部31の少なくとも長手方向の中央部分を車体2の幅方向で挟む上記インナパネル21の左右各部分に、それぞれこのインナパネル21を貫通する副開口部36,36が形成される。これら左右副開口部36,36は、それぞれ上記主開口部35よりも外側方に配置される。
ここで、上記左右各屈曲部26c周りは大きい剛性を有しているが、これら各屈曲部26cの少なくとも後部は、フード7の左右各側部において、それぞれ上記主、副開口部35,36の間に挟まれている。これにより、上記各屈曲部26c周りの剛性があまりに大きくなることは抑制される。
上記主開口部35の前部開口縁部から上方に向かって一体的に延出する複数(5本)の延出片39が形成される。これら延出片39は車体2の幅方向で互いに隙間40をあけてほぼ等間隔に配置される。上記各延出片39の上端部は上記アウタパネル20の下面に接着材32により接合される。
ここで、上記主開口部35は、上記各延出片39を平坦な板金材から切り起し形成するための開口である。また、上記副開口部36は、アウタパネル20の下面に上記インナパネル21の下方から上記空間22を通しコーションラベル(銘板)を貼り付けるための作業用開口である。また、上記主、副開口部35,36は、フード7を軽量化するための開口でもある。
上記主開口部35の後端部と、左右副開口部36,36の各前端部とのそれぞれの端部は、車体2の前後方向、かつ、上下方向で互いに近傍に配置される。図例では、上記主開口部35の後端部と、左右副開口部36,36の各前端部とは車体2の前後方向、かつ、上下方向でそれぞれ同位置に配置されているが、上記近傍の範囲で互いにわずかに離反していてもよい。
なお、上記主開口部35は、上記接合部31の後方近傍に形成してもよく、この場合にも、上記主開口部35の前端部と、左右副開口部36,36の各後端部とのそれぞれの端部は、車体2の前後方向、かつ、上下方向で互いに近傍に配置される。
上記構成によれば、上記インナパネル21に形成され、上記アウタパネル20に接合される接合部31が設けられる。
このため、上記フード7のアウタパネル20へのインナパネル21、および各延出片39の接合部31の接合により、このフード7では上記接合部31、および各延出片39周りの剛性が向上させられる。このため、フード7の開閉操作時に、このフード7に与えられる外力により、このフード7が容易に弾性変形することは防止される。よって、フード7の開閉の操作性が良好に維持される。
そして、上記主開口部35を上記接合部31の前方、もしくは後方近傍に形成し、この接合部31を車体2の幅方向で挟む上記インナパネル21の左右各部分に、それぞれこのインナパネル21を貫通する副開口部36,36を形成している。
このため、前記したように、フード7では接合部31周りの剛性が向上させられるが、上記した主、副開口部35,36の形成により上記接合部31周りの剛性があまりに大きくなることが抑制されると共に、上記接合部31周りの剛性の向上により上記主開口部35周りの剛性があまりに低下することも抑制される。しかも、剛性が大きくなりがちなインナパネル21の前部26の各屈曲部26cは、それぞれ上記主、副開口部35,36の間に挟まれていて、上記各屈曲部26c周りの剛性があまりに大きくなることも抑制される。
よって、車両1の前突時に跳ね上げられた何らかの物体から上記フード7の上面に与えられた衝撃力により、直ちに上記主開口部35周りに応力集中が生じることは抑制され、フード7にはその面方向の各部に応力が生じて全体的に塑性変形が生じがちとなる。この結果、上記衝撃力によるフード7の塑性変形量が十分に得られることとなって、この衝撃力は十分に緩和可能とされる。
また、上記接合部31の前方近傍に形成した上記主開口部35の後端部と左右副開口部36,36の各前端部とのそれぞれを、もしくは上記接合部31の後方近傍に形成した上記主開口部35の前端部と左右副開口部36,36の各後端部とのそれぞれを、車体2の前後方向で互いに近傍に配置している。
このため、上記フード7においては、車体2の前後方向で互いに近傍に配置された上記主、副開口部35,36の各端部を通る直線的な仮想線42上の部分で剛性が低くされることから、上記衝撃力により上記フード7の各部の塑性変形が進行した後には、上記仮想線42上の部分に応力集中が生じがちとなって、この部分を起点としてフード7が屈曲変形し始める。よって、上記衝撃力は、より十分に緩和可能とされる。
なお、車両1の前突時に、上記フード7に対しその前方から衝撃力を与えられた場合にも、上記とほぼ同様の作用効果が生じる。
そして、上記した衝撃力の十分な緩和は、上記インナパネル21の前部26の屈曲部26c、および接合部31に対する主、副開口部35,36の相対的な配置の工夫という簡単な構成で達成でき、これは、上記した衝撃力の緩和作用を生じる車体2前部の生産性の点で極めて有益である。
なお、上記フード7のアウタ、インナパネル20,21は、いずれか一方、もしくは双方を樹脂製としてもよい。また、上記アウタパネル20に対するインナパネル21の接合部31や各延出片39の接合は溶接によるものであってもよい。また、上記左右副開口部36,36は、上記接合部31の全体を車体2の幅方向で挟むよう形成してもよい。また、上記接合部31の車体2の幅方向の中途部に前後方向に延びるようリブを形成し、上記接合部31におけるアウタパネル20への実質的な接合部分がその面方向で不連続なものであってもよい。また、上記主、副開口部35,36は、それぞれ互いに並設される複数の開口部群で構成してもよい。
1 車両
2 車体
4 車体開口
7 フード
8 ヒンジ
10 フードロック
13 バンパ
14 ヘッドランプ
17 車体中心線
20 アウタパネル
21 インナパネル
22 空間
31 接合部
32 接着材
35 主開口部
36 副開口部
39 延出片
40 隙間
42 仮想線

Claims (1)

  1. 車体前部に形成され、上方に向かって開く車体開口と、この車体開口を開閉可能に閉じるフードとを備え、このフードが、上下に重ねられ、その各外縁部同士が接合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされ、上記インナパネルに形成され、車体の幅方向に長く延び上記アウタパネルに接合される接合部を設けると共に、上記インナパネルを貫通するよう形成される主開口部を設けた車両の車体前部構造において、
    上記主開口部、上記接合部の前方、もしくは後方近傍に、上記接合部の長手方向の中央部分全体にわたり、この接合部に沿うよう車体の幅方向に長く延びており、
    上記主開口部よりも車体の幅方向外側方で、上記接合部を車体の幅方向で挟む上記インナパネルの左右各部分に、それぞれこのインナパネルを貫通する副開口部を形成し、
    上記接合部の前方近傍に形成した上記主開口部の後端部と左右副開口部の各前端部とのそれぞれを、もしくは上記接合部の後方近傍に形成した上記主開口部の前端部と左右副開口部の各後端部とのそれぞれを、車体の前後方向で互いに近傍に配置したことを特徴とする車両の車体前部構造。
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