JP6434232B2 - 環状オレフィン系重合体組成物の製造方法および環状オレフィン系重合体組成物 - Google Patents

環状オレフィン系重合体組成物の製造方法および環状オレフィン系重合体組成物 Download PDF

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Description

本発明は、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法および環状オレフィン系重合体組成物に関する。
近年、光ディスク光学系用のピックアップレンズ、コリメータレンズ、あるいは小型撮像用の各種レンズ等の光学レンズは、生産性の向上や軽量化のため、従来のガラス研削レンズから、透明プラスチック射出成形レンズに置き換えることが検討されている。
さらに自動車の安全性向上を目的とするバックサイドモニターや、追突防止、自動車自動運転目的のセンサーデバイスなどの普及が期待されることから、これらのデバイスに用いられるレンズも需要の進展が期待されている。
レンズ用のオレフィン重合体材料としては、複環式環状オレフィンのメタセシス重合体の水素添加物や、環状オレフィンとオレフィンの共重合体等の環状オレフィン系重合体が高いガラス転移温度を示すことから好適に用いられている。
このような環状オレフィン系重合体には、例えば、特開2003-311773号公報(特許文献1)、特開2003-311737号公報(特許文献2)、特開2008-248171号公報(特許文献3)、特開2011−52154号公報(特許文献4)などに開示されている。
特開2003-311773号公報 特開2003-311737号公報 特開2008-248171号公報 特開2011-52154号公報
上記の各種レンズは、軽量化や安全性などの観点から、ガラスレンズからプラスチックレンズへの移行が今後期待される。一方で、当該レンズは自動車周りの高温、多湿の過酷な環境にさらされることが予想されるので、レンズの原料樹脂に高い耐熱性が求められることになる。
ここで、レンズの原料樹脂の耐熱性を向上させるためには、原料樹脂のガラス転移温度(Tg)を高めることが重要となる。
環状オレフィン系重合体等の環状炭化水素骨格を有する重合体は、環状炭化水素構造単位の含有率を高めるほどガラス転移温度が高くなる傾向にある。しかし、環状炭化水素構造単位は嵩高い骨格のため、重合体中の環状炭化水素構造単位の含有率を高めるには限界がある。すなわち、環状炭化水素構造単位の含有率を高めることにより、環状オレフィン系重合体のガラス転移温度を高める方法には限界があると考えられている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ガラス転移温度が高い環状オレフィン系重合体組成物を提供するものである。
本発明者らは、環状炭化水素構造単位の含有率を高める等重合方法を工夫することによりガラス転移温度を向上させる手法とは異なる観点から、環状オレフィン系重合体のガラス転移温度を高める手法について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、特定の条件を満たす複数の環状オレフィン系重合体を混合させることにより、混合前の複数の環状オレフィン系重合体のガラス転移温度の加成性から予想される値よりも高いガラス転移温度を示す環状オレフィン系重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下に示すとおりである。
[1]
以下の要件(1)、(2)、(3)を満たす、環状オレフィン系重合体(A)とガラス転移温度が異なる環状オレフィン系重合体(B)とを混合することを特徴とする環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
(1)上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、
上記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、
上記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下である
(2)上記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、上記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、
上記Tg(A)と上記Tg(B)が、以下の式(a)を満たす
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
(3)上記ガラス転移温度Tg(B)が以下の式(b)を満たす
Tg(B)≧100℃ (b)
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)とを炭化水素溶媒に溶解して混合することにより環状オレフィン系重合体溶液を調製する工程を含む、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
[3]
上記[2]に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
上記環状オレフィン系重合体溶液中の上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)の合計濃度が、10g/L以上300g/L以下である、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一項に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
上記Tg(B)が、以下の式(c)を満たす、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
Tg(B)≧120℃ (c)
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一項に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
上記Tg(A)と上記Tg(B)が、以下の式(d)を満たす、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧5℃ (d)
[6]
環状オレフィン系重合体(A)と、上記環状オレフィン系重合体(A)とガラス転移温度が異なる環状オレフィン系重合体(B)と、を含み、
下記(1)乃至(3)の要件を満たすことを特徴とする環状オレフィン系重合体組成物。
(1)上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、
上記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、
上記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下である
(2)上記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、上記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、
上記Tg(A)と上記Tg(B)が、以下の式(a)を満たす
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
(3)上記ガラス転移温度Tg(B)が以下の式(b)を満たす
Tg(B)≧100℃ (b)
本発明によれば、環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度をより一層高めることができる。
実施例1〜3の環状オレフィン系重合体組成物の原料重合体の含有比率とガラス転移温度の関係を示す図である。 実施例4及び比較例1の環状オレフィン系重合体組成物の原料重合体の含有比率とガラス転移温度の関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態では、数値範囲の「〜」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
[環状オレフィン系重合体組成物の製造方法]
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法は、特定の組成比、ガラス転移温度の条件を満たす上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)と、を混合して環状オレフィン系重合体組成物を得ることを特徴とする。具体的には、上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、上記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、上記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下であり、上記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、上記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、上記Tg(A)と上記Tg(B)が、以下の式(a)および(b)を満たす。
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
Tg(B)≧100℃ (b)
以下、具体的に説明する。
(環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B))
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は環状炭化水素構造を必須構成単位とする重合体である。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は、従来知られている環状オレフィン系重合体と同様の骨格を有するものを例示することができる。例えば、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィンのメタセシス重合体の水素添加物(主鎖に炭素五員環骨格を有する構造)や、オレフィンとノルボルネン骨格を有する環状オレフィンとの共重合体(主鎖にノルボルナン構造の様な環状オレフィンの基本骨格を有する構造)などを代表例として挙げることができる。
これらの重合体は、基本的に環状炭化水素構造単位の含有率が高いほど、高いTgを発現する傾向があることが知られている。市販の製品である、ゼオネックス(登録商標)、アートン(登録商標)、アペル(登録商標)等と同様の骨格を有していると考えてよい。
本実施形態において、環状オレフィン系重合体(A)は環状オレフィン系重合体(B)よりもTgが高いことを特徴とする。なお、本実施形態において、ガラス転移温度は全てセルシウス温度(摂氏)で表示される。
また、環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度であるTg(A)と環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度であるTg(B)の差は、下記の式(a)を満たす。
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
Tg(A)とTg(B)との差(Tg(A)−Tg(B))は、好ましくは14℃以下であり、より好ましくは13℃以下である。
Tg(A)とTg(B)との差が上記上限値以下であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。また、得られる環状オレフィン系重合体組成物を用いたレンズの透明性などの光学特性を向上させることができる。
また、Tg(A)とTg(B)との差(Tg(A)−Tg(B))は、好ましくは4℃以上である。Tg(A)とTg(B)との差が上記下限値以上であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(B)のTg(B)は、下記の式(b)を満たす。
Tg(B)≧100℃ (b)
Tg(B)は、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上であり、特に好ましくは135℃以上である。
Tg(B)が上記下限値以上であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
また、Tg(B)の上限は、特に限定されないが、好ましくは160℃以下であり、さらに好ましくは157℃以下であり、さらに好ましくは155℃以下である。
また、Tg(A)は、好ましくは125℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。Tg(A)が上記下限値以上であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
また、Tg(A)は、上記(a)の要件を満たす範囲であれば特に限定されないが、好ましくは175℃以下であり、より好ましくは172℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。Tg(A)が上記上限値以下であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、環状オレフィン系重合体(A)の配合量は40質量部以上、好ましくは43質量部以上、より好ましくは45質量部以上、特に好ましくは48質量部以上であり、そして、80質量部以下、好ましくは75質量部以下、より好ましくは72質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。ここで、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物に含まれる環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部とする。
環状オレフィン系重合体(A)の配合量が上記範囲内であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、環状オレフィン系重合体(B)の配合量は20質量部以上、好ましくは25質量部以上、より好ましくは28質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、そして、60質量部以下、好ましくは57質量部以下、より好ましくは55質量部以下、特に好ましくは52質量部以下である。ここで、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物に含まれる環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部とする。
環状オレフィン系重合体(B)の配合量が上記範囲内であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度の向上効果がより効果的に得られる。
本実施形態に用いられる環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)としては、繰り返し構造単位の少なくとも一部に脂環族構造を有する重合体が好ましく、下記式(1)で表される1種ないし2種以上の構造を有する重合体が好ましい。
Figure 0006434232
上記式(1)中、x、 yは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x、yはモル基準である。
nは置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の整数である。
は炭素原子数2〜20、好ましくは2〜12の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の2+n価の基である。
は水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の1価の基である。
は炭素原子数2〜10、好ましくは2〜5の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の4価の基である。
QはCOORである。Rは水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の1価の基であり、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜3の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の1価の基である。
上記式(1)中の各記号については、次のような好ましい条件を挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]Rが、構造中に少なくとも環構造を1箇所持つ基である。
[2]Rが、n=0の場合、下記の例示構造(a)、(b)、(c)である。
Figure 0006434232
上記式(a)〜式(c)中、Rは式(1)と同じである。
[3]nが0である。
[4]y/xが、20/80≦y/x≦65/35を満たす実数である。
[5]Rが、水素原子及び/または−CHである。
[6]Qが、−COOHまたは、−COOCH基である。
本実施形態に用いられる環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)としては、下記式(2)で表される1種または2種以上の構造を有する重合体であることがさらに好ましい。
Figure 0006434232
上記式(2)中、Rは、炭素原子数2〜20、好ましくは2〜12の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の2価の基である。
は、水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の1価の基である。
上記式(2)中、x、yは共重合比を示し、5/95≦y/x≦95/5を満たす実数である。好ましくは50/50≦y/x≦95/5、さらに好ましくは、55/45≦y/x≦80/20である。x、yはモル基準である。
上記式(2)中の各記号については、次のような好ましい条件を挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]R基が、下記式(3)で表される2価の基である。
Figure 0006434232
上記式(3)中、pは、0乃至2の整数である。好ましくは、上記式(3)においてpが1である2価の基である。
[2]Rは、水素原子である。
この中でも、これらを組み合わせた態様として、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)の共重合によって得られるポリマーであることが好ましい。
環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)としては、エチレンおよび環状オレフィンからなる共重合体が好ましく、環状オレフィンがノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、1, 4−メタノ−1, 4, 4a, 9a−テトラヒドロフルオレン、シクロペンタジエン−ベンザイン付加物(ベンゾノルボルナジエン)およびシクロペンタジエン−アセナフチレン付加物からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましく、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)の共重合によって得られるポリマーであることが全ての中で最も好ましい。
上記のような構造は、オレフィンと環状オレフィンの共重合だけでなく、環状オレフィン単独や、環状オレフィンとオレフィンとのメタセシス重合によっても得ることができる。
また、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は特に限定されないが、本実施形態の効果を損なわない限りにおいては、重合体が3構造を含んでいてもよい。
また、共重合体のタイプは特に限定されないが、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等、公知の様々な共重合体のタイプを適用することができる。それらの中でも、好ましくはランダム共重合体が好ましい。
本実施形態に用いられる環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は、本実施形態の成形方法によって得られるレンズ等の製品の良好な物性を損なわない範囲で、他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は特に限定されないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。上記共重合比が上記上限値以下であると、得られる製品の光学物性をより良好なものとし、より高精度の光学部品を得ることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)の分子量は特に限定されないが、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、好ましくは0.03dl/g以上10dl/g以下、さらに好ましくは0.05dl/g以上5dl/g以下であり、最も好ましくは0.10dl/g以上4dl/g以下である。
上記極限粘度[η]が上記上限値以下であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物の成形性をより良好なものとすることができる。また、上記極限粘度[η]が上記下限値以上であると、得られる環状オレフィン系重合体組成物の耐熱性や機械的強度をより良好なものとすることができる。
なお、環状オレフィン系重合体の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H添加量、重合温度などの重合条件により制御することが可能である。
(ガラス転移温度の測定方法)
本実施形態において、環状オレフィン系重合体や環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、下記の条件で測定できる。
はじめに、試料である環状オレフィン系重合体や環状オレフィン系重合体組成物5mg程度を0.01mgの桁まで秤量し、アルミパンに封入する。
次に、上記試料を封入したアルミパンを、例えば、SIIナノテクノロジー社(現−日立ハイテクノロジーズ社)製EXSTAR DSC 7020型装置などの示差走査熱量計にセットし、窒素雰囲気下で、下記の昇温、降温条件によりDSC測定を行う。
・測定条件
1)30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持する。ただし、ガラス転移温度が検出できなかった場合は、温度範囲を30℃〜220℃に変更し、保持温度も220℃に変更する。
2)次いで、100℃/分で30℃まで降温し、30℃で10分間保持する。
3)次いで、30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温する。ただし、上記1)の温度範囲を30℃〜220℃に変更して実施した場合は、温度範囲を30℃〜250℃に変更する。
最後に、3)で得られたDSCチャートから、常法に基づきガラス転移温度を決定する。
(環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)の製造方法)
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は以下の方法で製造できる。本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)がエチレン・環状オレフィン共重合体の場合は、エチレンと環状オレフィンとを用いて例えば、特開2008−248171号公報の段落0058〜0063に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合を炭化水素溶媒中で行ない、触媒として該炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いてエチレン・環状オレフィン共重合体を製造することが好ましい。
上記の環状炭化水素構造単位に対応する環状オレフィンとして具体的に好ましい化合物は、公知の好ましい化合物を使用することができる。例えば、特開2008−248171号公報の段落0031〜0057に開示されている環状オレフィン化合物を挙げることができる。これらの中でも特に好ましい化合物としては、ノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテン)や、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンを挙げることが出来る。
また、この共重合反応では固体状第4族元素メタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状第4族メタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。
ここで第4族元素の遷移金属は、ジルコニウム、チタン又はハフニウムであり、これらの遷移金属は少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している。ここで、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としてはアルキル基が置換していてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基等を挙げることができる。これらの基は、アルキレン基など他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等である。
さらに有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常オレフィン系樹脂の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状第4族元素メタロセン系触媒については、例えば特開昭61−221206号、特開昭64−106号及び特開平2−173112号公報等に記載されている。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)が開環重合体又は開環共重合体の場合は、例えば、上記環状オレフィン化合物を開環重合触媒の存在下に、重合又は共重合させることにより製造することができる。
このような開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、インジウム、白金、チタン、ジルコニウム又はモリブテンなどから選ばれる金属のハロゲン化物;硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;アセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)が開環重合体又は開環共重合体の場合は、開環重合体又は開環共重合体を水素添加して用いるのが一般的であるが、上記のようにして得られる開環重合体又は開環共重合体100質量部と未反応環状オレフィンモノマー(不飽和炭化水素)0.01〜10質量部を含む樹脂組成物を、従来公知の水素添加触媒の存在下に水素化して得ることができる。この時、未反応環状オレフィンモノマー(不飽和炭化水素)と開環重合体又は開環共重合体が同時に水素添加されるので反応が簡便で好ましい。
次に、上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)と、を混合して環状オレフィン系重合体組成物を得る。
上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)と、を混合する方法は特に限定されないが、例えば、溶融混合、炭化水素溶媒などに溶解させて混合する溶液混合など公知の方法を用いることができる。これらの中でも、溶液混合する方法が好ましい。
溶液混合では、環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)とを溶媒に溶解して混合することにより環状オレフィン系重合体溶液を調製する。
溶液混合法に用いる溶媒としては炭化水素溶媒が好ましく、炭素数4〜20の炭化水素溶媒がより好ましく、環状構造を有する炭化水素溶媒が特に好ましい。具体的には、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン等の鎖状炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリンなどの環状炭化水素などから選択される一種または二種以上を用いることができる。
溶液混合法で環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)とを混合する場合、環状オレフィン系重合体溶液中の環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)の合計濃度((環状オレフィン系重合体(A)の質量+環状オレフィン系重合体(B)の質量)/炭化水素溶媒の質量)は、好ましくは10g/L以上300g/L以下、より好ましくは20g/L以上250g/L以下、さらに好ましくは25g/L以上200g/L以下である。
環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)とを溶液混合法で混合する際の温度は特に限定されないが、溶液粘度や生産性、重合体の変性抑制などの観点から、好ましくは20℃(室温)以上200℃以下、より好ましくは20℃(室温)以上150℃以下、さらに好ましくは40℃以上120℃以下の範囲に設定される。
溶液混合法で環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)とを混合した後、溶媒を除去することにより環状オレフィン系重合体組成物が得られる。
混合後の溶媒を除去する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、環状オレフィン系重合体の貧溶媒であるメタノール等の低級アルコールに、得られた環状オレフィン系重合体溶液を滴下して環状オレフィン系重合体を析出させ、これを濾別、減圧乾燥して回収する方法;得られた環状オレフィン系重合体溶液を高温下で加圧、脱圧を繰り返して溶媒を除去する方法;スチームストリッピング法などを挙げることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法によれば、環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)のそれぞれの重合体のガラス転移温度の加成性から予想される値よりも高いガラス転移温度を示す環状オレフィン系重合体組成物を得ることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度が、環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度であるTg(A)を超える場合もある。このような効果を発現する理由は定かではないが、本発明者らは、以下のように考えている。
高いガラス転移温度を示す重合体は、重合体分子鎖が動きにくい構造をしていることが知られている。本実施形態のような特定の関係にある環状オレフィン系重合体(A)と環状オレフィン系重合体(B)とが特定の割合で共存する系では、ガラス転移温度がやや低い環状オレフィン系重合体(B)が、環状オレフィン系重合体(A)の分子鎖同士を疑似架橋させるような効果を果たしているのではないかと考えている。それゆえ、環状オレフィン系重合体(A)の分子鎖の運動性がさらに制約され、その結果、ガラス転移温度が高くなっているのではないかと推測される。この機構であれば、どのような環状オレフィン系重合体であっても同様の効果を示すと考えられる。
なお、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度が高くなり過ぎると、重合体がより剛直な構造や、密な構造となり、疑似架橋構造を取り難くなる場合がある。このため、環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度が高くなり過ぎると、本実施形態のガラス転移温度の向上効果の程度は相対的に低くなる場合がある。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)、環状オレフィン系重合体(B)および環状オレフィン系重合体組成物には、上述の成分に加えて、得られる光学部品などの製品の良好な特性を損なわない範囲で、公知の耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤などがさらに配合されていてもよい。
たとえば、任意成分として配合される耐候安定剤は、耐光安定剤として例えば公知のヒンダードアミン系添加剤の他、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ニッケル系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
ヒンダードアミン系耐光安定剤は、通常構造中に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、ならびに2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有している化合物であって、具体的には、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(例えば、サノール LS−2626、三共社製))、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(例えば、Tinuvin 144、日本チバガイギー社製)などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、具体的には、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチル−フェニル)−5−クロロ・ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロ・ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−n−オクトキシ・フェニル)ベンゾトリアゾールなどや、市販されているTinuvin328、TinuvinPS(共に、チバ・ガイギー社製)、やSEESORB709(2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、白石カルシウム社製)などのベンゾトリアゾール誘導体などが例示される。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ・ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ−5−スルフォベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルフォベンゾフェノン・トリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノンなどや、Uvinul 490(2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ・ベンゾフェノンと他の四置換ベンゾフェノンの混合物、GAF社製)、Permyl B−100(ベンゾフェノン化合物、Ferro社製)などが例示される。
また、任意成分として配合される耐熱安定剤としては、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'−オキザミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレートなどの多価アルコール脂肪酸エステル;などを挙げることができる。
また、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニル−4,4'−イソプロピリデンジフェノール−ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系安定剤を使用してもよい。これらは単独で配合してもよいが、組み合わせて配合してもよい。たとえばテトラキス[メチレン−3−(3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛とグリセリンモノステアレートとの組み合わせなどを例示できる。これらの安定剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本実施形態で使用される環状オレフィン系重合体と他の樹脂成分や添加剤との混合方法は限定されるものではなく、公知の方法を適用できる。たとえば各成分を同時に混合する方法などが挙げられる。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法を用いれば、比較的低いガラス転移温度の環状オレフィン系重合体を用いながらも、高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系重合体組成物を得ることができる。一般的に、ガラス転移温度の低い環状オレフィン系重合体の方がガラス転移温度の高い環状オレフィン系重合体に比して製造コストが安価な傾向がある。そのため、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法を用いれば、より安価に高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系重合体組成物を製造することができる。そのため、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物の製造方法の工業的意義は大きい。
[環状オレフィン系重合体組成物]
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物は、環状オレフィン系重合体(A)と、上記環状オレフィン系重合体(A)とガラス転移温度が異なる環状オレフィン系重合体(B)と、を含む。そして、上記環状オレフィン系重合体(A)と上記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、上記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、上記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下であり、上記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、上記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、上記Tg(A)と上記Tg(B)が、以下の式(a)および(b)を満たす。
15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
Tg(B)≧100℃ (b)
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物に含まれる環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)は、上記の[環状オレフィン系重合体組成物の製造方法]で述べた環状オレフィン系重合体(A)および環状オレフィン系重合体(B)と同様であるので、ここでは説明は省略する。
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物は、上記の通り高いガラス転移温度を有する。したがって該組成物は耐熱性が高い。このため、特に車載用の各種デバイスに使用されるレンズなど、耐熱性を求められる用途に好適に用いることができる。その他にも、耐熱性と光学特性の両立を求められる用途、例えば、耐熱フィルムなどの用途に好適に用いることができる。
また、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物は、耐熱性、機械的強度、透明性に優れる成形体を与えることができるので、高周波基板、層間絶縁膜、透明フレキシブルディスプレイ、電子ペーパー、離型フィルム、医療用容器、食品・医療用包装材、ガスバリアフィルム、光学レンズ、透明接着剤、キャパシタ材、電線被覆材、医療用カテーテルのマンドレル、太陽電池用部材、自動車用部材、航空宇宙用部材といった用途で使用することができる。
より具体的な例としては、本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物を含む樹脂層に金属箔を積層させることで、回路基板材料を作製することができる。本実施形態に係る環状オレフィン系重合体組成物は、材料として優れた耐熱性、透明性、機械的特性、誘電特性等を付与することができるので、高周波回路基板などの高周波用途に好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
[重合体の合成例]
(テトラシクロドデセンの合成)
特開平6−9437号公報の実施例1に記載の方法で、テトラシクロドデセンを合成した。
(重合)
撹拌装置を付したガラス製4つ口フラスコ反応器を十分に乾燥窒素で置換した。次いで、常温域で精製シクロヘキサン溶媒と上記テトラシクロドデセンを加えた。(400mLスケールとした。)
これにエチレンと、必要に応じて窒素とを供給した。その供給速度は、合計で40〜100L/分の範囲で数種の条件を選択して実施した。過剰の供給ガスはベントラインに送り、系内は常圧に保持した。
次いで、これに公知の塩素含有バナジウム化合物と、公知の塩素含有有機アルミニウム化合物とを加えて、反応を開始した。温度は19〜20℃に保持し、重合時間は1〜10分の範囲内で数種類の条件で実施した。
重合終了後、引き続き窒素下で、必要に応じて反応液に濃塩酸(和光純薬社製特級)を10ml加えて撹拌した。
次いで、アセトン/メタノール(体積比1/3)混合溶媒を撹拌しながら上記の反応液をゆっくり投入して重合体を析出させた。上記の混合溶媒の撹拌を止め、重合体を沈殿させたのち、グラスフィルターで濾過し、得られた重合体をメタノールで十分に洗浄した。
次いで、50mmHg以下、80℃、12時間以上の条件で減圧乾燥し、重合体粉末を得た。各種条件で得られた重合体1〜10の物性を表1に示す。
Figure 0006434232
[実施例1〜4および比較例1]
上記の方法で得られた環状オレフィン系重合体1〜10を原料重合体とし、それらを所定の質量比で混合し、シクロヘキサンに溶解させた。
アセトン/メタノール(体積比1/3)混合溶媒を撹拌しながら上記の重合体溶液をゆっくり投入して重合体を析出させた。次いで、上記の混合溶媒の撹拌を止め、重合体を沈殿させたのち、グラスフィルターで濾過した。
次いで、得られた沈殿物を減圧乾燥し(条件:圧力50mmHg以下、80℃、12時間以上)、重合体粉末を得た。
各種条件で得られた環状オレフィン系重合体組成物中の原料重合体の配合割合およびガラス転移温度を表2に示す。
また、これらの環状オレフィン系重合体の含有比率(質量比)とガラス転移温度の関係を図1および図2に示す。
Figure 0006434232
これらの結果から、特定のガラス転移温度差の関係にある環状オレフィン系重合体の混合物が、原料重合体以上のガラス転移温度を発現することが分かった。
よって、例えば、環状オレフィン系重合体を特定の条件で複数種組み合わせるという比較的シンプルな方法により、さらに高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系重合体組成物、即ち、耐熱性に優れた環状オレフィン系重合体組成物が得られることが分かった。

Claims (7)

  1. 以下の要件(1)、(2)、(3)および(4)を満たす、環状オレフィン系重合体(A)とガラス転移温度が異なる環状オレフィン系重合体(B)とを溶液混合法により混合することを特徴とし、
    前記環状オレフィン系重合体(A)と前記環状オレフィン系重合体(B)とを炭化水素溶媒に溶解して混合することにより環状オレフィン系重合体溶液を調製する工程を含み、
    前記環状オレフィン系重合体(A)および前記環状オレフィン系重合体(B)がエチレンおよび環状オレフィンからなる共重合体である環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
    (1)前記環状オレフィン系重合体(A)と前記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、
    前記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、
    前記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下である
    (2)前記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、前記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、
    前記Tg(A)と前記Tg(B)が、以下の式(a)を満たす
    15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
    (3)前記ガラス転移温度Tg(B)が、以下の式(b)を満たす
    Tg(B)≧135℃ (b)
    (4)前記ガラス転移温度Tg(A)が、以下の式(c)を満たす
    175℃≧Tg(A)≧150℃ (c)
    ただし、前記Tg(A)と前記Tg(B)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、以下の測定条件で測定した値である。
    ・測定条件
    1)30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持する。ただし、ガラス転移温度が検出できなかった場合は、温度範囲を30℃〜220℃に変更し、保持温度も220℃に変更する。
    2)次いで、100℃/分で30℃まで降温し、30℃で10分間保持する。
    3)次いで、30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温する。ただし、上記1)の温度範囲を30℃〜220℃に変更して実施した場合は、温度範囲を30℃〜250℃に変更する。
    最後に、3)で得られたDSCチャートから、常法に基づきガラス転移温度を決定する。
  2. 請求項に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
    前記環状オレフィン系重合体溶液中の前記環状オレフィン系重合体(A)と前記環状オレフィン系重合体(B)の合計濃度が、10g/L以上300g/L以下である、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
    前記Tg(A)と前記Tg(B)が、以下の式(d)を満たす、環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
    15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧5℃ (d)
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載の環状オレフィン系重合体組成物の製造方法において、
    前記環状オレフィン系重合体(A)および前記環状オレフィン系重合体(B)を構成する前記環状オレフィンがビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンからなる群から選択される少なくとも一種を含む環状オレフィン系重合体組成物の製造方法。
  5. 環状オレフィン系重合体(A)と、前記環状オレフィン系重合体(A)とガラス転移温度が異なる環状オレフィン系重合体(B)と、を含み、
    前記環状オレフィン系重合体(A)および前記環状オレフィン系重合体(B)がエチレンおよび環状オレフィンからなる共重合体であり、
    下記(1)乃至(5)の要件を満たすことを特徴とする環状オレフィン系重合体組成物。
    (1)前記環状オレフィン系重合体(A)と前記環状オレフィン系重合体(B)との合計を100質量部としたとき、
    前記環状オレフィン系重合体(A)の配合量が40質量部以上80質量部以下であり、
    前記環状オレフィン系重合体(B)の配合量が20質量部以上60質量部以下である
    (2)前記環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度をTg(A)とし、前記環状オレフィン系重合体(B)のガラス転移温度をTg(B)としたとき、
    前記Tg(A)と前記Tg(B)が、以下の式(a)を満たす
    15℃≧Tg(A)−Tg(B)≧3℃ (a)
    (3)前記ガラス転移温度Tg(B)が、以下の式(b)を満たす
    Tg(B)≧135℃ (b)
    (4)前記ガラス転移温度Tg(A)が、以下の式(c)を満たす
    175℃≧Tg(A)≧150℃ (c)
    (5)前記環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度Tgが、前記ガラス転移温度Tg(A)よりも大きい
    ただし、前記Tg(A)と前記Tg(B)と前記Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、以下の測定条件で測定した値である。
    ・測定条件
    1)30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持する。ただし、ガラス転移温度が検出できなかった場合は、温度範囲を30℃〜220℃に変更し、保持温度も220℃に変更する。
    2)次いで、100℃/分で30℃まで降温し、30℃で10分間保持する。
    3)次いで、30℃〜200℃の範囲で、10℃/分で昇温する。ただし、上記1)の温度範囲を30℃〜220℃に変更して実施した場合は、温度範囲を30℃〜250℃に変更する。
    最後に、3)で得られたDSCチャートから、常法に基づきガラス転移温度を決定する。
  6. 前記環状オレフィン系重合体組成物のガラス転移温度Tgが162℃以上である、請求項5に記載の環状オレフィン系重合体組成物。
  7. 請求項5または6に記載の環状オレフィン系重合体組成物において、
    前記環状オレフィン系重合体(A)および前記環状オレフィン系重合体(B)を構成する前記環状オレフィンがビシクロ[2,2,1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンからなる群から選択される少なくとも一種を含む環状オレフィン系重合体組成物。
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