JP6433394B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
これに対し、特許文献3、4には、バリウムまたはストロンチウムフェライトが開示されている。フェライトは、結晶構造の違いによりスピネルフェライト、バリウムフェライト等に分類される。例えば特許文献2に記載されているコバルトフェライトはスピネルフェライトであるのに対し、バリウムフェライトやストロンチウムフェライトは、六方晶フェライトである。
非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記強磁性粉末は、下記式1:
長軸長/短軸長<1.2
を満たす等方状粒子、即ち、長軸長を短軸長で除した値が1.2未満である等方状粒子を、粒子数基準で80%以上含む六方晶フェライト粉末であり、
上記六方晶フェライト粉末の平均粒子サイズは30nm以下であり、かつ、
磁性層の垂直方向角型比は、0.65以上1.00以下である磁気記録媒体、
を新たに見出した。
なお本発明および本明細書における粒子に関する「等方状」とは、板状ではないことをいうものとする。等方状には、楕円状、球状が包含され、また八面体形状や不定形も包含される。一方、板状とは主表面を有する形状である。主表面とは、粒子上で最も多くの面積を占める外表面のことをいう。例えば板状の六方晶フェライトの粒子形状の一例としては、六角平面形状が挙げられる。六角平面形状において、最も多くの面積を占める表面は六角形の外表面であり、この部分を主表面という。
等方状の形状を有する六方晶フェライトとしては、特許文献3、4には実質的に球状(substantially spherical)の形状を有するバリウムまたはストロンチウムフェライトが開示されているが、実施例で得られている粉末の粒子サイズは最も小さいものでも0.1μm(100nm)であり(特許文献3、4のExample 6、Example 7参照)、高密度記録化を達成するための強磁性粉末としては適さないものである。
これに対し、本発明者らは、式1を満たす等方状粒子を多く(具体的には、粒子数基準で80%以上)含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末の垂直方向における配向性(以下、「垂直配向性」とも記載する。)を高めて磁性層の垂直方向角型比を0.65以上1.00以下とすることにより、高密度記録領域における電磁変換特性の向上が可能になることを新たに見出し、上記磁気記録媒体を完成させた。六方晶フェライト粉末は、理由は明らかではないが、結晶構造に起因するためか、特許文献1、2に記載されているような他の種類の強磁性粉末と比べて、粒子形状が等方状になると垂直配向性が低下する傾向があり、長軸長/短軸長の値が小さくなるほどその傾向が強くなる。また、粒子サイズが小さくなるほど、垂直配向性が低下する傾向もある。そのため、上記のように式1を満たす等方状粒子を多く含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末を、磁性層において垂直方向角型比が0.65以上1.00以下となるように垂直方向に配向させることは、従来困難であった。
これに対し本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比を0.65以上1.00以下の範囲に制御することを可能とした。そのための手段については、後述する。そしてかかる磁性層を有する磁気記録媒体は、高密度記録領域において優れた電磁変換特性を発揮することができることが、本発明者らにより新たに見出されたのである。
なお六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比に関して、特開2012−203955号公報の実施例には、板状の六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比が上記範囲内にあることの開示がある(同公報の表1参照)。ただし、特開2012−203955号公報には、式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末の記載も、かかる六方晶フェライト粉末の垂直配向性を高めるための手段の記載もない。
以上が、上記磁気記録媒体に関する本発明者らによる推察であるが、推察に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
なお、本明細書に記載の「直交」等の角度に関する記載には、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
本発明の一態様は、
非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記強磁性粉末は、下記式1:
長軸長/短軸長<1.2
を満たす等方状粒子を、粒子数基準で80%以上含む六方晶フェライト粉末であり、
上記六方晶フェライト粉末の平均粒子サイズは30nm以下であり、かつ、
磁性層の垂直方向角型比は、0.65以上1.00以下である磁気記録媒体、
に関する。以下、上記磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
<<形状、サイズ>>
上記磁気記録媒体の磁性層に含まれる強磁性粉末は、上記式1を満たす等方状粒子を、粒子数基準で80%以上含む六方晶フェライト粉末である。六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(M型)、W型、Y型、Z型が知られている。上記六方晶フェライト粉末を構成する六方晶フェライト粒子(強磁性粒子)の結晶構造は、上記いずれの結晶構造であってもよい。また、六方晶フェライトは、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、カルシウムフェライト、鉛フェライト、およびこれらの二種以上の混晶のいずれであってもよい。
また、六方晶フェライト粉末を構成する六方晶フェライト粒子の中で、上記式1を満たす等方状粒子に該当しない粒子の形状は限定されるものではなく、等方状であっても板状であってもよい。
次に、上記磁気記録媒体の磁性層に含まれる強磁性粉末(上述の六方晶フェライト粉末)が有し得る磁気特性について記載する。ただし、上記磁気記録媒体の磁性層に含まれる強磁性粉末は、上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含む六方晶フェライト粉末であればよく、下記磁気特性を有さないものであってもよいことはいうまでもない。
上記六方晶フェライト粉末は、共沈法、逆ミセル法、水熱合成法、ガラス結晶化法等の六方晶フェライト粉末の製造方法として公知の製造方法により製造することができる。好ましい製造方法の一態様として、水熱合成法による製造方法について以下に説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
(1)六方晶フェライト前駆体調製時の反応系のpH変動を抑制する;
(2)六方晶フェライト前駆体の調製を、連続的な製造プロセスの中で行う;
(3)六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応を、還元性化合物存在下で行う;
(4)高温高圧水と、六方晶フェライト前駆体と、後述する有機化合物の共存開始箇所における液温を制御する;
(5)六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応を行う反応系のpHを制御する;
等が挙げられる。これらの1つまたは2つ以上を任意に組み合わせて行うことにより、上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末を得ることができる。
以下に、連続的水熱合成法について更に詳細に説明する中で、上記具体的手法についても説明する。
(i)原材料(鉄塩、二価金属塩)、塩基、水系溶媒
六方晶フェライト前駆体とは、高温高圧の水の存在下に置かれることにより六方晶フェライトに転換(フェライト化)するものであればよい。高温高圧の水とは、加熱および加圧されている水をいい、詳細は後述する。前駆体は、水に対して高い溶解性を示し後述する水系溶媒に溶解するものであってもよく、水に対する溶解性に乏しく、水系溶媒中でコロイド粒子として分散(ゾル状)していてもよい。
以上説明した六方晶フェライトの前駆体は、鉄塩と二価金属塩とを、塩基を含む水系溶液中で混合することにより得ることができる。上記水系溶液中では、通常、鉄原子と二価金属原子とを含む塩(例えば水酸化物)が粒子状、好ましくはコロイド粒子として析出する。ここで析出する粒子は、その後に高温高圧の水の存在下に置かれることによりフェライト化し六方晶フェライトとなる。
塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、無機塩基に限定されるものではなく、有機塩基を用いることもできる。前駆体調製のための水系溶液が塩基を含む場合、塩基とともに添加される塩の中には酸性を示すものもあるため、水系溶液のpHは、塩基性に限定されるものではなく、中性または酸性の場合もある。水系溶液のpHは、前駆体調製時(反応時)の液温でのpHとして、例えば4.00以上14.00以下であり、前駆体調製のための反応を良好に進行させる観点から、5.00以上14.00以下であることが好ましく、6.00以上13.00以下であることがより好ましく、6.00以上12.00以下であることが一層好ましい。7.00以上または7.00超のpH(中性〜塩基性)であることが、より一層好ましい。反応時の水系溶液の液温は、加熱または冷却により温度制御してもよく、温度制御なしの室温であってもよい。好ましくは、上記液温は、10〜90℃の範囲であり、温度制御なし(例えば20〜25℃程度)で反応を十分に進行させることができる。温度制御のために、後述する反応槽は、加熱手段や冷却手段を備えていてもよい。また、後述する送液路を、温度制御のために加熱手段によって加熱してもよく、冷却手段によって冷却してもよい。
上記のように調製された六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応は、還元性有機化合物および還元性無機化合物からなる群から選択される還元性化合物の存在下で行うことができる。一態様では、そのためには、六方晶フェライト前駆体の調製を、還元性化合物の存在下で行ってもよい。例えば、具体的一態様では、還元性化合物を、前駆体調製時に原材料および塩基とともに水系溶媒と混合することができる。前駆体調製のための水系溶液中に還元性化合物を共存させることにより、前駆体表面および内部の少なくともいずれかに還元性化合物を存在させることができる。ここで還元性とは、他の化合物へ水素原子を付加する能力および電子を供与する能力の一方または両方を有することを言う。還元性化合物としては、常温常圧下で固体または液体として存在する化合物が好ましい。常温常圧下で固体または液体で存在するとは、少なくとも、25℃1気圧(約1013.25hPa)において固体または液体として存在することをいい、固体と液体が混合した状態で存在することも包含されることとする。還元性化合物として常温常圧下で固体または液体として存在する化合物を用いることは、前駆体における還元性化合物の存在状態(例えば表面への付着状態)の均一性を高めるうえで好ましい。また、工程の安全性の観点からも、常温常圧下で固体または液体として存在する化合物は好ましい。
上記の前駆体の調製は、有機化合物(還元性の有無を問わない)の存在下で行うこともできる。有機化合物の存在下で調製された前駆体は、表面に有機化合物が被着した状態で六方晶フェライトに転換され(転換反応に付され)、高温高圧の水が存在する反応系内で一旦瞬間的に溶解した後に結晶化し、これにより六方晶フェライトが粒子として析出する(六方晶フェライトへ転換する)と考えられる。この溶解〜結晶化までの間に粒子近傍に有機化合物が存在することが、結晶化する六方晶フェライト粒子の微粒子化、粒子サイズの均一化、形状制御に寄与するのではないかと、本発明者らは推察している。また、前駆体を有機化合物存在下で調製することは、前駆体の凝集が抑制され、粒子サイズが小さく、更には粒子サイズの均一性に優れる前駆体が得られることに寄与し、このことがより一層微粒子で、更には粒子サイズの均一性に優れる六方晶フェライトが得られることに寄与するのではないかと、本発明者らは考えている。
GPC装置:HLC−8120(東ソー製):
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー製、7.8mmID(内径)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
上記有機化合物の詳細については、特開2015−127986号公報段落0056〜0063を参照できる。
(1)上記有機化合物として前駆体調製時に使用することにより;
(2)詳細を後述するように前駆体を六方晶フェライトに転換する反応の反応において使用することにより;
(3)磁性層の成分として使用することにより;または、
(4)上記(1)〜(3)の2以上で使用することにより、
上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末の垂直配向性を高めることができ、この六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比を0.65以上1.00以下とすることが可能になることが新たに見出された。理由は定かではないが、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーは、配向処理において磁場が印加された湿潤状態の磁性層における上記式1を満たす等方状粒子の回転を妨げ難くする役割を果たすか、磁場印加終了から磁性層の乾燥までの間に上記式1を満たす等方状粒子を動き難くする役割を果たすか、それら両方の役割を果たすからではないかと、本発明者らは推察している。ただし上記推察は、本発明を何ら限定するものではない。
なお前述の特開2015−28830号公報には、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーに包含される化合物の開示がある。しかし同公報には、かかる化合物が、上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末の垂直配向性の向上に寄与することについて示唆となり得る記載はない。ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーにより上記六方晶フェライト粉末の垂直配向性の向上が可能になること、および上記六方晶フェライト粉末の垂直配向性を向上することにより0.65以上1.00以下の垂直方向角型比を実現した磁性層を有する磁気記録媒体が、高密度記録領域において優れた電磁変換特性を発揮できることは、本発明者らの鋭意検討の結果、初めて見出されたことである。
前駆体調製時の原材料、塩基、必要に応じて添加される還元性化合物、有機化合物の混合順序は特に限定されるものではない。上記成分を任意の順序で順次水系溶媒へ添加してもよく、2種以上を同時に混合してもよく、すべてを同時に混合してもよい。また、一態様では、混合は、反応槽内で行うことができる。反応槽では、通常、マグネチックスターラー等の公知の撹拌手段により上記成分と水系溶媒を含む水系溶液の撹拌混合が行われる。また、他の一態様では、前駆体の調製を、連続的な製造プロセスの中で行うこともできる。好ましくは、鉄塩および二価金属塩を含む溶液が送液されている送液路を、塩基含有水系溶液が送液されている送液路と合流させることにより、両溶液を混合することによって、前駆体を調製することができる。
一方、反応槽への二価金属塩の供給は、任意の段階で開始される。例えば、鉄塩および塩基の供給開始前または後、いずれか一方の供給開始から他方の供給開始前の間の期間、等に、反応槽への二価金属塩の供給を開始することができる。供給継続期間中の原材料の供給については、常時供給を続ける(継続的に供給する)ことにより行ってもよく、供給の実施と停止を繰り返す(断続的に供給する)ことにより行ってもよい。少なくとも、単位時間あたりの供給量を制御する制御対象の原材料は、精密かつ容易な制御を行う観点からは、連続的に供給することが好ましい。
pHbefore−2.00≦pH≦pHbefore+2.00
の範囲内にあるように、供給継続期間における鉄塩、二価金属塩、および塩基の少なくとも1つの単位時間あたりの供給量を制御する供給量制御、ならびに反応槽内の反応液への酸添加の少なくとも一方を行う。供給量制御のみ、または酸添加のみを行ってもよく、供給量制御および酸添加を並行して行ってもよく、任意の順序で、任意に繰り返し、行ってもよい。
上記の単位時間あたりの供給量とは、特に限定されるものではなく、例えば1時間あたりの供給量、1分あたりの供給量、1秒あたりの供給量等の、任意の間隔毎の供給量をいう。液体については、単位時間あたりの供給量を、流速で示すこともできる。前駆体調製時に原材料を一度に全量混合せずに供給継続期間を設けて徐々に混合することは、こうして調製される前駆体を転換して得られる六方晶フェライトの微粒子化に主に寄与すると考えられる。そして供給継続期間における反応槽中の反応液のpHを制御することは、こうして調製された前駆体の転換により得られる六方晶フェライトの粒子形状や粒子サイズの均一化に寄与すると、本発明者らは推察している。これは主に、原材料の溶解度、中でも鉄塩の溶解度のpH依存性が大きいことによるものと、本発明者らは考えている。ここで、単位時間あたりの供給量の制御とは、単位時間あたりの供給量を変化させること、即ち、増加させるか、減少させるか、増加させ次いで減少させるか、減少させ次いで増加させることを、1回以上行うことをいう。増加、減少は、いずれも連続的に行ってもよく、段階的に行ってもよい。増加、減少の程度(即ち供給量の増加率または減少率)は、pH変動を所望の範囲内に抑えることができればよく、任意に調整可能である。
供給継続期間における反応槽中の反応液のpHは、
pHbefore−1.50≦pH≦pHbefore+1.50
の範囲内にあることがより好ましく、
pHbefore−1.00≦pH≦pHbefore+1.00
の範囲内にあることが更に好ましく、
pHbefore−0.50≦pH≦pHbefore+0.50
の範囲内にあることがいっそう好ましい。
その他、図2に示す連続式反応槽を用いる態様の詳細は、図1に示す回分式反応槽を用いる態様について、記載した通りである。
有機化合物は、上記の通り、一態様では前駆体調製時に添加することができる。または、前駆体を六方晶フェライトに転換する反応の反応において有機化合物を使用することができる。一態様では、有機化合物を、溶媒に添加した有機化合物溶液として、前駆体溶液と混合することができる。他の一態様では、有機化合物を、高温高圧水が送液されている送液路へ導入することができる。上記態様では、有機化合物は、六方晶フェライト前駆体100質量部に対して1〜1000質量部程度の量で混合することが好ましい。溶媒としては、水、または水と混和性もしくは親水性の有機溶媒が好ましい。この点からは、有機溶媒としては極性溶媒の使用が好適である。好ましい有機溶媒としては、前述の各種溶媒を挙げることができる。有機化合物溶液における有機化合物濃度は、上記の好ましい量の有機化合物が混合または導入されるように設定すればよい。なお有機化合物は、前駆体調製時に添加し、かつ前駆体を六方晶フェライトに転換する反応に更に添加してもよい。2以上の段階で有機化合物を使用する場合、各段階で使用する有機化合物は同じであっても異なっていてもよい。いずれか1以上の段階において、先に記載したポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーを使用することは、上記式1を満たす等方状粒子の粒子サイズの均一性を高める(即ち、粒子サイズの変動係数を小さくする)ためにも好ましい。この点も、本発明者らによって初めて見出された。
六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応は、好ましくは、以下の工程:
六方晶フェライト前駆体および有機化合物を、同時または順次、加熱および加圧されながら連続的に水が送液されている送液路に導入すること;
上記送液路を介して、六方晶フェライト前駆体、有機化合物および水を少なくとも含む水系溶液を、内部を流れる流体を加熱および加圧する反応流路に連続的に送液することにより、反応流路内で六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換すること;
六方晶フェライトを含む水系溶液を、上記反応流路から排出し冷却部へ送液すること;
冷却部において冷却された水系溶液から六方晶フェライトを回収すること;
により行うことができる。ここで、上記送液路における六方晶フェライト前駆体と有機化合物との共存開始箇所の液温を制御することが、先に記載した六方晶フェライト粉末を得るための手段の1つとして挙げることができる。
また、上記冷却後の水系溶液のpHは、反応流路内の反応系におけるpHと同様か、相関しており、この冷却後の水系溶液のpHを制御することも、上記六方晶フェライト粉末を得るための手段の1つとして挙げることができる。
また、高温高圧水が送液されている送液路へ六方晶フェライト前駆体溶液の流路を合流させた後、この合流箇所より下流側に位置する箇所において、送液路へ有機化合物溶液の流路を合流させるのであれば、有機化合物溶液の流路と送液路との合流箇所である。ここで下流側とは、送液路内の送液方向において、より反応流路側をいう。また、後述する上流側とは、この逆をいう。
または逆に、高温高圧水が送液されている送液路へ有機化合物溶液の流路を合流させた後、この合流箇所より下流側に位置する箇所において、送液路へ六方晶フェライト前駆体溶液の流路を合流させるのであれば、六方晶フェライト前駆体溶液の流路と送液路との合流箇所である。
前駆体と有機化合物との混合の一態様としては、先に記載した通り、前駆体調製を有機化合物の存在下で行う態様が挙げられる。こうして得られた前駆体溶液には、前駆体と有機化合物が含まれ、好ましくは前駆体表面に有機化合物が被着している。以下、本態様を、態様Aと記載する。
他の一態様としては、高温高圧水が送液されている送液路へ、前駆体溶液、有機化合物溶液を順次導入する態様が挙げられる。以下、本態様を、態様Bと記載する。
また、他の一態様としては、前駆体溶液と有機化合物溶液とを混合した後に、得られた混合溶液を高温高圧水が送液されている送液路へ導入する態様が挙げられる。以下、本態様を、態様Cと記載する。
態様B、Cには、更に、前駆体の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様も包含される。
以下、上記態様A〜Cについて、図面を参照し説明する。
より詳しくは、図3は、態様Aに好適な製造装置の一例の概略説明図である、図4は、態様Bに好適な製造装置の一例の概略説明図である。図5は、態様Cに好適な製造装置の一例の概略説明図である。
また、図6、図7は、それぞれ、態様Bにおいて、前駆体(前駆体溶液)の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様に好適な製造装置の一例の概略説明図である。図8は、態様Cにおいて、前駆体(前駆体溶液)の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様に好適な製造装置の一例の概略説明図である。
図3〜8において、同一の構成要素については、同一の符号が付されている。
図4および図5に示す製造装置では、上記構成に加えて更に、液槽33、加圧送液手段35c、流路102が含まれる。
図6、図7および図8に示す製造装置では、上記構成に加えて更に、液槽41、42、加圧送液手段35d、35e、流路103、104、105が含まれる。
そして、図6に示す製造装置では、こうして得られた混合流を、流路105を経て、混合部M1において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と合流させる。更に、こうして得られた混合流を、混合部M2において、液槽33から加圧送液手段35cにより流路102に送液された有機化合物溶液と合流させる。
図7に示す製造装置は、上記のように得られた混合流を、流路105を経て、混合部M2において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と液槽33から加圧送液手段35cにより流路102に送液された有機化合物溶液とを混合部M1において合流させて得られた混合流と、合流させる。
図6、図7に示す製造装置では、上記送液路において六方晶フェライト前駆体溶液と有機化合物との混合が開始する共存開始箇所は、混合部M2である。
図6、図7に示す製造装置について、以降の工程の詳細は、先に図4に示す製造装置について記載した通りである。
そして、こうして得られた混合流を、流路105の混合部M5において、液槽33から加圧送液手段35cにより配管102に送液された有機化合物溶液と合流させる。更に、こうして得られた混合流を、混合部M1において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と合流させる。図8に示す製造装置では、上記送液路において六方晶フェライト前駆体溶液と有機化合物との混合が開始する共存開始箇所は、混合部M1である。
以降の工程の詳細は、先に図5に示す製造装置について記載した通りである。
<<垂直方向角型比>>
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、磁性層に強磁性粉末として上記六方晶フェライト粉末を含み、かつ磁性層の垂直方向角型比が0.65以上1.00以下である。磁性層の垂直方向角型比は、電磁変換特性向上の観点からは、好ましくは0.67以上であり、より好ましくは0.70以上である。また、磁性層の垂直方向角型比は、例えば0.90以下、0.85以下または0.80以下であることができるが、電磁変換特性向上の観点からは高いほど好ましいため、これらに限定されるものではない。なお垂直方向角型比は、原理上、最大値は1.00である。上記六方晶フェライト粉末の垂直配向性を高めることによって、上記六方晶フェライト粉末を含み、かつ0.65以上1.00以下の垂直方向角型比を示す磁性層を形成することができる。
(強磁性粉末)
磁性層に含まれる強磁性粉末の詳細は、前述の通りである。磁性層における強磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。上記充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
磁性層は、強磁性粉末とともに結合剤を含む。磁性層に含まれる結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報段落0029〜0031を参照できる。また、上記樹脂とともにポリイソシアネート系硬化剤を任意の量で使用することも可能である。
磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。以上説明した添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。
次に非磁性層について説明する。本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落0036〜0039を参照できる。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体において、非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0〜80.0μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10nm〜150nmであり、高密度記録化の観点から、好ましくは20nm〜120nmであり、更に好ましくは30nm〜100nmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を有することもできる。バックコート層は、非磁性粉末および結合剤を含む層であり、非磁性粉末として、カーボンブラックと無機粉末の少なくとも一方、好ましくは両方を含むことができる。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、一般に塗布型磁気記録媒体製造のために使用される各種有機溶媒を挙げることができる。各層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、結合剤、非磁性粉末、任意に添加される各種添加剤、溶媒等すべての原料は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用組成物を分散させるためには、ガラスビーズやその他のビーズを用いることができる。このような分散ビーズとしては、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散ビーズの粒径(ビーズ径)と充填率は最適化して用いることができる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の一態様は、上記磁気記録媒体と磁気再生ヘッドとを含む磁気信号再生装置に関する。
下記ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−1〜J−23は、特開2015−28830号公報の合成例21〜43にしたがい合成したポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマー(特開2015−28830号公報中、ポリアルキレンイミン誘導体J−1〜J−23)である。
(1)原料溶液の調製
精製水にバリウム塩として水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)、鉄塩として硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・9H2O)を溶解することで上記のバリウム塩および鉄塩を含んだ水溶液(原料溶液)を調製した。調製した原料溶液中のバリウム塩および鉄塩の合計濃度は0.075mol/Lで、Ba/Feモル比は0.5であった。
また、水酸化カリウムを水に添加し溶解することで水酸化カリウム水溶液(濃度0.20mol/L)を調製した。
(2)有機化合物溶液の調製
オレイン酸をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を調製した。
(3)六方晶フェライトの合成反応
図6に示す製造装置の液槽41に上記(1)で調製した原料溶液を、液槽42に上記(1)で調製した水酸化カリウム水溶液を、液槽33に有機化合物溶液として上記(2)で調製した有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを配管として用いた。
液槽31に導入した精製水を高圧ポンプ35aで送液しつつヒーター34で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段34cを通過後の高温高圧水の温度が350℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
原料溶液と水酸化カリウム水溶液は、体積比で原料溶液:水酸化カリウム水溶液=50:50の割合となるように各々加圧送液手段(高圧ポンプ35d、35e)を用いて液温25℃で配管103、104に送液し、混合部M4において混合した後、引き続き配管105に送液し混合部M1において上記高温高圧水と混合させた。
一方、有機化合物溶液は、体積比で(原料溶液+水酸化カリウム水溶液):有機化合物溶液=40:60の割合となるように加圧送液手段(高圧ポンプ35c)を用いて液温25℃で配管102に送液し、混合部M2において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応器36において加熱・加圧することにより、六方晶フェライトを合成(前駆体を転換)した。
反応流路36において混合流は30MPaに加圧され、反応流路36の排出口D1における液温(熱電対により測定)が390℃となるように300℃以上の温度に加熱された。
その後、六方晶フェライト粒子を含む液を反応流路36から排出し、水冷機構を備えた冷却部37において100℃以下に冷却した後、圧力調整弁39を経て回収部40において回収した。回収した液の一部を採取し、液温25℃に調整した後にpHメーター(HORIBA製のポータブルpHメーターDシリーズ)によりpHを測定したところ、pH9.30であった。回収部から回収した液の残りから六方晶フェライトの粒子を収集した。収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより粉末を分離した。
こうして六方晶フェライト粉末1を得た。
上記(2)の有機化合物溶液の調製において、オレイン酸に代えて、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−2をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.075mol/L)を調製した。
上記で調製した有機化合物溶液を用いた点以外、調製例1と同様の方法で六方晶フェライト粉末2を得た。
上記(2)の有機化合物溶液の調製において、オレイン酸に代えて、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−3をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.075mol/L)を調製した。
上記で調製した有機化合物溶液を用いた点以外、調製例1と同様の方法で六方晶フェライト粉末3を得た。
上記(2)の有機化合物溶液の調製において、オレイン酸に代えて、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−6をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.075mol/L)を調製した。
上記で調製した有機化合物溶液を用いた点以外、調製例1と同様の方法で六方晶フェライト粉末4を得た。
上記(2)の有機化合物溶液の調製において、オレイン酸に代えて、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−7をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.075mol/L)を調製した。
上記で調製した有機化合物溶液を用いた点以外、調製例1と同様の方法で六方晶フェライト粉末5を得た。
上記(2)の有機化合物溶液の調製において、オレイン酸に代えて、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーJ−11をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.075mol/L)を調製した。
上記で調製した有機化合物溶液を用いた点以外、調製例1と同様の方法で六方晶フェライト粉末6を得た。
(1)X線回折分析による同定
上記調製例で得た粉末をX線回折分析したところ、いずれも六方晶フェライト(バリウムフェライト)であることが確認された。
(2)六方晶フェライト粉末の平均粒子サイズ、式1を満たす等方状粒子の平均粒子サイズおよび粒子サイズの変動係数
上記調製例で得た六方晶フェライト粉末の平均粒子サイズ(平均長軸長)、下記(3)により上記式1を満たす等方状粒子と判定された全粒子についての平均粒子サイズ(平均長軸長)および粒子サイズ(長軸長)の変動係数を、電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて、先に記載した方法により求めた。
(3)粒子の形態観察
前述の方法により、上記調製例で得た粉末から無作為に抽出した500個の粒子について形態観察を実施し、全粒子中で上記式1を満たす等方状粒子の占める割合を算出した。
(4)飽和磁化、保磁力の測定
上記調製例で得た六方晶フェライト粉末の飽和磁化および保磁力を、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い磁界強度1194kA/m(15kOe)で測定した。
また、調製例1で得た六方晶フェライト粉末1と調製例2〜6で得た六方晶フェライト粉末2〜6との対比から、六方晶フェライトの合成時にポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーを用いることにより、オレイン酸を用いる場合と比べて式1を満たす等方状粒子の粒子サイズの均一性を高めることができることが確認できる。六方晶フェライト粉末の多く(粒子数基準で80%以上)を占める式1を満たす等方状粒子の粒子サイズの均一性を高めることは、この六方晶フェライト粉末を磁性層に含む磁気記録媒体の電磁変換特性の更なる向上につながるため好ましい。
(1)磁性層形成用組成物処方
(磁性液)
強磁性粉末(上記調製例1で得た六方晶フェライト粉末1):100.0部
ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマー(表3参照):8.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.4meq/g)
シクロヘキサノン:150.0部
メチルエチルケトン:150.0部
(研磨剤液A)
アルミナ研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):3.0部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.3部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.3meq/g)
シクロヘキサノン:26.7部
(研磨剤液B)
ダイヤモンド研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):1部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.1部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.3meq/g)
シクロヘキサノン:26.7部
(シリカゾル)
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ:100nm):0.2部
メチルエチルケトン:1.4部
(その他成分)
ステアリン酸:2.0部
ブチルステアレート:6.0部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート):2.5部
(仕上げ添加溶媒)
シクロヘキサノン:200.0部
メチルエチルケトン:200.0部
非磁性無機粉末 α−酸化鉄:100.0部
平均粒子サイズ:10.0nm
平均針状比(長軸長/短軸長の平均値):1.9
BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積:75m2/g
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):25.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:18.0部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
ステアリン酸:1.0部
シクロヘキサノン:300.0部
メチルエチルケトン:300.0部
非磁性無機粉末 α−酸化鉄:80.0部
平均粒子サイズ:0.15μm
平均針状比(長軸長/短軸長の平均値):7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):20.0部
塩化ビニル共重合体:13.0部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
ステアリン酸:3.0部
ブチルステアレート:3.0部
ポリイソシアネート:5.0部
メチルエチルケトン:155.0部
シクロヘキサノン:355.0部
上記磁性液を、バッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmΦのジルコニアビーズを使用した。研磨剤液AおよびBはバッチ型超音波装置(20kHz,300W)で24時間分散した。これらの分散液を他の成分(シリカゾル、その他成分および仕上げ添加溶媒)と混合後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で30分処理を行った。その後、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い磁性層形成用組成物を作製した。
非磁性層形成用組成物については、各成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて、24時間分散した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.1mmΦのジルコニアビーズを使用した。得られた分散液を0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い非磁性層形成用組成物を作製した。
バックコート層形成用組成物は、潤滑剤(ステアリン酸およびブチルステアレート)とポリイソシアネート、シクロヘキサノン200.0部を除いた各成分をオープンニーダにより混練・希釈した後、横型ビーズミル分散機により、1mmΦのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、ローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、12パスの分散処理を行った。その後残りの成分を分散液に添加し、ディゾルバーで攪拌した。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過しバックコート層形成用組成物を作製した。
その後、厚み5μmのポリエチレンナフタレート製支持体に、乾燥後の厚みが100nmになるように非磁性層形成用組成物を塗布、乾燥した後、その上に乾燥後の厚みが70nmになるように磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。この磁性層形成用組成物の塗布層が未乾状態にあるうちに磁場強度0.6Tの磁場を、塗布層の表面に対し垂直方向に印加し垂直配向処理を行った後乾燥させた。その後支持体の反対面に乾燥後の厚みが0.4μmになるようにバックコート層形成用組成物を塗布、乾燥させた。
その後金属ロールのみから構成されるカレンダで、速度100m/分、線圧300kg/cm、カレンダロールの表面温度100℃で表面平滑化処理(カレンダ処理)を行った後、雰囲気温度70℃の環境で36時間熱処理を行った。熱処理後1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットし、磁気テープを得た。
磁性層形成用組成物に、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーを添加せず、代わりにSO3Na基含有ポリウレタン樹脂の添加量を8.0部増量した点以外、実施例1−1と同様の方法で磁気テープを得た。
磁性層形成用組成物に、ポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーに代えて2,3−ジヒドロキシナフタレン8.0部を添加した点以外、実施例1−1と同様の方法で磁気テープを得た。
磁性層形成用組成物の強磁性粉末として 粉末を構成する粒子が板状粒子である下記六方晶フェライト粉末(板状六方晶フェライト粉末)を用いた点以外、実施例1−6と同様の方法で磁気テープを得た。前述の評価方法(3)により、粉末から無作為に抽出した500個の粒子について形態観察を実施し、全粒子が板状粒子であることを確認した。上記の無作為に抽出した500個の粒子について、前述の評価方法(2)と同様に電子顕微鏡を用いて求めた板径の平均値(平均板径)、および板径/板厚の平均値(平均板状比)は、以下の値であった。
<板状六方晶フェライト粉末>
平均粒子サイズ(平均板径):20nm
平均板状比:2.7
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
飽和磁化:46A・m2/kg
保磁力:160kA/m(2000Oe)
磁性層形成用組成物の強磁性粉末として 比較例1−3と同様に上記板状六方晶フェライト粉末を用いた点以外、比較例1−1と同様の方法で磁気テープを得た。
磁性層形成用組成物の強磁性粉末として、表3に示す六方晶フェライト粉末を用いた点以外、比較例1−1と同様の方法で磁気テープを得た。
磁性層形成用組成物の強磁性粉末として表3に示す六方晶フェライト粉末を用いた点およびポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーとして表3に示すポリアルキレンイミン−ポリエステル系ポリマーを用いた点以外、実施例1−1と同様の方法で磁気テープを得た。
1.垂直方向角型比
実施例、比較例の各磁気テープの垂直方向角型比を、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて磁界強度1194kA/m(15kOe)で測定した。
2.電磁変換特性(SNR)の評価
実施例、比較例の各磁気テープに対して、下記条件で磁気信号をテープ長手方向に記録し、MR(magnetoresistive)ヘッドで再生した。再生信号をシバソク製スペクトラムアナライザーで周波数分析し、300kfciの出力と、0〜600kfci範囲で積分したノイズとの比をSNRとした。
(記録再生条件)
記録:記録トラック幅5μm
記録ギャップ0.17μm
ヘッド飽和磁束密度Bs1.8T
再生:再生トラック幅0.4μm
シールド間距離(sh(shield)−sh距離)0.08μm
記録波長:300kfci
なお比較例1−2で磁性層形成用組成物に添加した有機化合物(2,3−ジヒドロキシナフタレン)に関して、特開2012−203955号公報の実施例には、垂直配向処理によって、この有機化合物と板状の六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比が0.70になったことが記載されている。しかし、比較例1−2では、2,3−ジヒドロキシナフタレンを用いても、上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末を含む磁性層の垂直方向角型比を0.65以上1.00以下とすることはできなかった。このことからも、上記式1を満たす等方状粒子を粒子数基準で80%以上含み、かつ平均粒子サイズが30nm以下の六方晶フェライト粉末の垂直配向性を高めることは従来困難であり、本発明者らの鋭意検討の結果、初めて可能になったことが確認できる。
Claims (5)
- 非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は、下記式1:
長軸長/短軸長<1.2
を満たす等方状粒子を、粒子数基準で80%以上含む六方晶フェライト粉末であり、
前記等方状とは、板状ではないことであり、
前記六方晶フェライト粉末の平均粒子サイズは30nm以下であり、かつ、
前記磁性層の垂直方向角型比は、0.65以上1.00以下である磁気記録媒体。 - 前記強磁性粉末は、前記等方状粒子を、粒子数基準で90%以上含む六方晶フェライト粉末である請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記等方状粒子の粒子サイズの変動係数は、25%以下である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 前記等方状粒子の粒子サイズの変動係数は、20%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、ポリアルキレンイミン鎖およびポリエステル鎖を含む化合物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
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