JP6046189B2 - 六方晶フェライト粉末および磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
下記式(1):
長軸長/短軸長<2.0 …(1)
を満たす等方状六方晶フェライト粒子を粒子数基準で70%以上含み、
平均粒子サイズが10.0nm以上35.0nm以下であり、かつ
飽和磁化が30A・m2/kg以上である六方晶フェライト粉末、
を新たに見出した。上記六方晶フェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として含む磁気記録媒体は、磁性層が高い塗膜耐久性を示すことができることも、本発明者による検討により明らかとなった。粒子サイズが小さな六方晶フェライト粉末であっても、上記の等方状粒子を粒子数基準で70%以上含むものであれば、30A・m2/kg以上の飽和磁化を示すことができる点は、特許文献1をはじめとする従来の技術からは予期し得ない、本発明者により得られた新たな知見である。更に、そのような六方晶フェライト粉末を強磁性粉末として含む磁性層が、高い塗膜耐久性を示すことができることも、本発明者により新たに見出された知見である。
1.磁性層表面にヤマト科学製プラズマリアクターで1〜2分間表面処理を施し、磁性層表面の有機物成分(結合剤、硬化剤等)を灰化して取り除く。
2.シクロヘキサノンまたはアセトンなどの有機溶剤を浸したろ紙を金属棒のエッジ部に貼り付け、その上で上記1.の処理後の磁性層表面をこすり、磁性層成分を磁気テープからろ紙へ転写し剥離する。
3.上記2.で剥離した成分をシクロヘキサノンやアセトンなどの溶媒の中に振るい落とし(ろ紙ごと溶媒の中にいれ超音波分散機で振るい落とす)、溶媒を乾燥させ剥離成分を取り出す。
4.上記3.でかき落とした成分を十分洗浄したガラス試験管に入れ、その中にn−ブチルアミンを磁性層成分の20ml程度加えてガラス試験管を封緘する。(n−ブチルアミンは、灰化せず残留した結合剤を分解できる量加える。)
5.ガラス試験管を170℃で20時間以上加熱し、有機物成分を分解する。
6.上記5.の分解後の沈殿物を純水で十分に洗浄後乾燥させ、粉末を取り出す。
7.上記6.で採取した粉末にネオジウム磁石を近づけ吸着した粉末(即ち六方晶フェライト粉末)を取り出す。
以上の工程により、磁性層から六方晶フェライト粉末を採取することができる。上記処理による粒子へのダメージはほとんどないため、上記方法により、磁性層に含まれていた状態の粉末の粒子サイズの測定が可能である。
60≦KuV/kT …(A)
を満たす熱的安定性を有する。ここで、式(A)中、Kuは異方性定数、Vは活性化体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度を表す。
非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
強磁性粉末が、上記六方晶フェライト粉末である磁気記録媒体、
に関する。
本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末は、下記式(1):
長軸長/短軸長<2.0 …(1)
を満たす等方状六方晶フェライト粒子を粒子数基準で70%以上含み、平均粒子サイズが10.0nm以上35.0nm以下であり、かつ飽和磁化が30A・m2/kg以上である。
以下、上記六方晶フェライト粉末について、更に詳細に説明する。
上記六方晶フェライト粉末は、平均粒子サイズが10.0nm以上35.0nm以下である
なお平均粒子サイズとは、先に記載した方法により求められる。平均粒子サイズが10nm以上の六方晶フェライト粉末は、磁化の安定性が高く、磁気記録用磁性粉として好適である。この点から平均粒子サイズは、12.0nm以上であることが好ましく、15.0nm以上であることがより好ましい。また、磁性層の塗膜耐久性をより向上する観点からは、平均粒子サイズは、15.0nm以上であることが好ましく、20.0nm以上であることがより好ましい。一方、平均粒子サイズが35.0nm以下の六方晶フェライト粉末は、高密度記録用の磁性粉として好適である。この点から平均粒子サイズは、好ましくは33.0nm以下であり、より好ましくは30.0nm以下である。
長軸長/短軸長<2.0 …(1)
を満たし、かつ前述の定義による等方状粒子に該当するものである六方晶フェライト粉末が、高い飽和磁化を示すことができることを新たに見出した。式(1)を満たす等方状粒子において、上記の比(長軸長/短軸長)は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.2以上である。上記六方晶フェライト粉末において式(1)を満たす等方状粒子の占める割合は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。また、式(1)を満たす等方状粒子の占める割合は、例えば99%以下、98%以下、または96%以下であるが、式(1)を満たす等方状粒子の占める割合は高いほど好ましく、100%であってもよい。
飽和磁化については、上記六方晶フェライト粉末の飽和磁化は、30A・m2/kg以上である。平均粒子サイズが10nm以上30nmの六方晶フェライト粉末において、30A・m2/kg以上の飽和磁化を実現することは従来困難であったところ、上記のように粒子形状のばらつきを低減することにより実現することが可能となったものである。飽和磁化は、好ましくは33A・m2/kg以上であり、より好ましくは35A・m2/kg以上である。一方、飽和磁化は、ノイズ低減の観点からは、80A・m2/kg以下であることが好ましく、60A・m2/kg以下であることがより好ましい。
60≦KuV/kT …(A)
を満たす熱的安定性を示すことができる。より好ましくは、KuV/kTは70以上であり、更に好ましくは75以上である。KuV/kTは、例えば100以下、または90以下であるが、高いほど好ましい。
本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末は、共沈法、逆ミセル法、水熱合成法、ガラス結晶化法等の六方晶フェライト粉末の製造方法として公知の製造方法により製造することができる。好ましい製造方法の一態様として、水熱合成法による製造方法について以下に説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
(1)六方晶フェライト前駆体調製時の反応系のpH変動を抑制する;
(2)六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応を、還元性化合物存在下で行う;
(3)高温高圧水と、六方晶フェライト前駆体と、後述する有機化合物の共存開始箇所における液温を制御する;
(4)六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応を行う反応系のpHを制御する;
等が挙げられ、これらの1つまたは2つ以上を任意に組み合わせて行うことにより、先に記載した本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末を得ることができる。
以下に、連続的水熱合成法について更に詳細に説明する中で、上記具体的手法についても説明する。
(i)原材料(鉄塩、二価金属塩)、塩基、水系溶媒
六方晶フェライト前駆体とは、高温高圧の水の存在下に置かれることにより六方晶フェライトに転換(フェライト化)するものであればよい。高温高圧の水とは、加熱および加圧されている水をいい、詳細は後述する。前駆体は、水に対して高い溶解性を示し後述する水系溶媒に溶解するものであってもよく、水に対する溶解性に乏しく、水系溶媒中でコロイド粒子として分散(ゾル状)していてもよい。
以上説明した六方晶フェライトの前駆体は、鉄塩と二価金属塩とを、塩基を含む水系溶液中で混合することにより得ることができる。上記水系溶液中では、通常、鉄原子と二価金属原子とを含む塩(例えば水酸化物)が粒子状、好ましくはコロイド粒子として析出する。ここで析出する粒子は、その後に高温高圧の水の存在下に置かれることによりフェライト化し六方晶フェライトとなる。
塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、無機塩基に限定されるものではなく、有機塩基を用いることもできる。前駆体調製のための水系溶液が塩基を含む場合、塩基とともに添加される塩の中には酸性を示すものもあるため、水系溶液のpHは、塩基性に限定されるものではなく、中性または酸性の場合もある。水系溶液のpHは、前駆体調製時(反応時)の液温でのpHとして、例えば4.00以上14.00以下であり、前駆体調製のための反応を良好に進行させる観点から、5.00以上14.00以下であることが好ましく、6.00以上13.00以下であることがより好ましく、6.00以上12.00以下であることが一層好ましい。7.00以上または7.00超のpH(中性〜塩基性)であることが、より一層好ましい。反応時の水系溶液の液温は、加熱または冷却により温度制御してもよく、温度制御なしの室温であってもよい。好ましくは、上記液温は、10〜90℃の範囲であり、温度制御なし(例えば20〜25℃程度)で反応を十分に進行させることができる。温度制御のために、後述する反応槽は、加熱手段や冷却手段を備えていてもよい。また、後述する送液路を、温度制御のために加熱手段によって加熱してもよく、冷却手段によって冷却してもよい。
上記のように調製された六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応は、還元性有機化合物および還元性無機化合物からなる群から選択される還元性化合物の存在下で行うことができる。一態様では、そのためには、六方晶フェライト前駆体の調製を、還元性化合物の存在下で行ってもよい。例えば、具体的一態様では、還元性化合物を、前駆体調製時に原材料および塩基とともに水系溶媒と混合することができる。前駆体調製のための水系溶液中に還元性化合物を共存させることにより、前駆体表面および内部の少なくともいずれかに還元性化合物を存在させることができる。ここで還元性とは、他の化合物へ水素原子を付加する能力および電子を供与する能力の一方または両方を有することを言う。還元性化合物としては、常温常圧下で固体または液体として存在する化合物が好ましい。常温常圧下で固体または液体で存在するとは、少なくとも、25℃1気圧(約1013.25hPa)において固体または液体として存在することをいい、固体と液体が混合した状態で存在することも包含されることとする。還元性化合物として常温常圧下で固体または液体として存在する化合物を用いることは、前駆体における還元性化合物の存在状態(例えば表面への付着状態)の均一性を高めるうえで好ましい。また、工程の安全性の観点からも、常温常圧下で固体または液体として存在する化合物は好ましい。
上記の前駆体の調製は、有機化合物(還元性の有無を問わない)の存在下で行うこともできる。有機化合物の存在下で調製された前駆体は、表面に有機化合物が被着した状態で六方晶フェライトに転換され(転換反応に付され)、高温高圧の水が存在する反応系内で一旦瞬間的に溶解した後に結晶化し、これにより六方晶フェライトが粒子として析出する(六方晶フェライトへ転換する)と考えられる。この溶解〜結晶化までの間に粒子近傍に有機化合物が存在することが、結晶化する六方晶フェライト粒子の微粒子化、粒子サイズの均一化、形状制御に寄与するのではないかと、本発明者は推察している。また、前駆体を有機化合物存在下で調製することは、前駆体の凝集が抑制され、粒子サイズが小さく、更には粒子サイズの均一性に優れる前駆体が得られることに寄与し、このことがより一層微粒子で、更には粒子サイズの均一性に優れる六方晶フェライトが得られることに寄与するのではないかと、本発明者は考えている。
前駆体調製時の原材料、塩基、必要に応じて添加される還元性化合物、有機化合物の混合順序は特に限定されるものではない。上記成分を任意の順序で順次水系溶媒へ添加してもよく、2種以上を同時に混合してもよく、すべてを同時に混合してもよい。また、一態様では、混合は、反応槽内で行うことができる。反応槽では、通常、マグネチックスターラー等の公知の撹拌手段により上記成分と水系溶媒を含む水系溶液の撹拌混合が行われる。また、他の一態様では、前駆体の調製を、連続的な製造プロセスの中で行うこともできる。好ましくは、鉄塩および二価金属塩を含む溶液が送液されている送液路を、塩基含有水系溶液が送液されている送液路と合流させることにより、両溶液を混合することによって、前駆体を調製することができる。
一方、反応槽への二価金属塩の供給は、任意の段階で開始される。例えば、鉄塩および塩基の供給開始前または後、いずれか一方の供給開始から他方の供給開始前の間の期間、等に、反応槽への二価金属塩の供給を開始することができる。供給継続期間中の原材料の供給については、常時供給を続ける(継続的に供給する)ことにより行ってもよく、供給の実施と停止を繰り返す(断続的に供給する)ことにより行ってもよい。少なくとも、単位時間あたりの供給量を制御する制御対象の原材料は、精密かつ容易な制御を行う観点からは、連続的に供給することが好ましい。
pHbefore−2.00≦pH≦pHbefore+2.00
の範囲内にあるように、供給継続期間における鉄塩、二価金属塩、および塩基の少なくとも1つの単位時間あたりの供給量を制御する供給量制御、ならびに反応槽内の反応液への酸添加の少なくとも一方を行う。供給量制御のみ、または酸添加のみを行ってもよく、供給量制御および酸添加を並行して行ってもよく、任意の順序で、任意に繰り返し、行ってもよい。
上記の単位時間あたりの供給量とは、特に限定されるものではなく、例えば1時間あたりの供給量、1分あたりの供給量、1秒あたりの供給量等の、任意の間隔毎の供給量をいう。液体については、単位時間あたりの供給量を、流速で示すこともできる。前駆体調製時に原材料を一度に全量混合せずに供給継続期間を設けて徐々に混合することは、こうして調製される前駆体を転換して得られる六方晶フェライトの微粒子化に主に寄与すると考えられる。そして供給継続期間における反応槽中の反応液のpHを制御することは、こうして調製された前駆体の転換により得られる六方晶フェライトの粒子形状や粒子サイズの均一化に寄与すると、本発明者は推察している。これは主に、原材料の溶解度、中でも鉄塩の溶解度のpH依存性が大きいことによるものと、本発明者は考えている。ここで、単位時間あたりの供給量の制御とは、単位時間あたりの供給量を変化させること、即ち、増加させるか、減少させるか、増加させ次いで減少させるか、減少させ次いで増加させることを、1回以上行うことをいう。増加、減少は、いずれも連続的に行ってもよく、段階的に行ってもよい。増加、減少の程度(即ち供給量の増加率または減少率)は、pH変動を所望の範囲内に抑えることができればよく、任意に調整可能である。
供給継続期間における反応槽中の反応液のpHは、
pHbefore−1.50≦pH≦pHbefore+1.50
の範囲内にあることがより好ましく、
pHbefore−1.00≦pH≦pHbefore+1.00
の範囲内にあることが更に好ましく、
pHbefore−0.50≦pH≦pHbefore+0.50
の範囲内にあることがいっそう好ましい。
その他、図2に示す連続式反応槽を用いる態様の詳細は、図1に示す回分式反応槽を用いる態様について、記載した通りである。
有機化合物は、上記の通り、一態様では前駆体調製時に添加することができる。また、他の一態様では、有機化合物を、溶媒に添加した有機化合物溶液として、前駆体溶液と混合することができ、または高温高圧水が送液されている送液路へ導入することができる。この場合、有機化合物は、六方晶フェライト前駆体100質量部に対して1〜1000質量部程度の量で混合することが好ましい。溶媒としては、水、または水と混和性もしくは親水性の有機溶媒が好ましい。この点からは、有機溶媒としては極性溶媒の使用が好適である。好ましい有機溶媒としては、前述の各種溶媒を挙げることができる。有機化合物溶液における有機化合物濃度は、上記の好ましい量の有機化合物が混合または導入されるように設定すればよい。
六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する反応は、好ましくは、以下の工程:
六方晶フェライト前駆体および有機化合物を、同時または順次、加熱および加圧されながら連続的に水が送液されている送液路に導入すること;
上記送液路を介して、六方晶フェライト前駆体、有機化合物および水を少なくとも含む水系溶液を、内部を流れる流体を加熱および加圧する反応流路に連続的に送液することにより、反応流路内で六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換すること;
六方晶フェライトを含む水系溶液を、上記反応流路から排出し冷却部へ送液すること;
冷却部において冷却された水系溶液から六方晶フェライトを回収すること;
により行うことができる。ここで、上記送液路における六方晶フェライト前駆体と有機化合物との共存開始箇所の液温を制御することが、先に記載した本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末を得るための手段の1つとして挙げることができる。
また、上記冷却後の水系溶液のpHは、反応流路内の反応系におけるpHと同様か、相関しており、この冷却後の水系溶液のpHを制御することも、上記六方晶フェライト粉末を得るための手段の1つとして挙げることができる。
また、高温高圧水が送液されている送液路へ六方晶フェライト前駆体含有溶液の流路を合流させた後、この合流箇所より下流側に位置する箇所において、送液路へ有機化合物含有溶液の流路を合流させるのであれば、有機化合物含有溶液の流路と送液路との合流箇所である。ここで下流側とは、送液路内の送液方向において、より反応流路側をいう。また、後述する上流側とは、この逆をいう。
または逆に、高温高圧水が送液されている送液路へ有機化合物含有溶液の流路を合流させた後、この合流箇所より下流側に位置する箇所において、送液路へ六方晶フェライト前駆体含有溶液の流路を合流させるのであれば、六方晶フェライト前駆体含有溶液の流路と送液路との合流箇所である。
前駆体と有機化合物との混合の一態様としては、先に記載した通り、前駆体調製を有機化合物の存在下で行う態様が挙げられる。こうして得られた前駆体溶液には、前駆体と有機化合物が含まれ、好ましくは前駆体表面に有機化合物が被着している。以下、本態様を、態様Aと記載する。
他の一態様としては、高温高圧水が送液されている送液路へ、前駆体溶液、有機化合物溶液を順次導入する態様が挙げられる。以下、本態様を、態様Bと記載する。
また、他の一態様としては、前駆体溶液と有機化合物溶液とを混合した後に、得られた混合溶液を高温高圧水が送液されている送液路へ導入する態様が挙げられる。以下、本態様を、態様Cと記載する。
態様B、Cには、更に、前駆体の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様も包含される。
以下、上記態様A〜Cについて、図面を参照し説明する。
より詳しくは、図3は、態様Aに好適な製造装置の一例の概略説明図である、図4は、態様Bに好適な製造装置の一例の概略説明図である。図5は、態様Cに好適な製造装置の一例の概略説明図である。
また、図6、図7は、それぞれ、態様Bにおいて、前駆体(前駆体溶液)の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様に好適な製造装置の一例の概略説明図である。図8は、態様Cにおいて、前駆体(前駆体溶液)の調製も連続的な製造プロセスの中で行う態様に好適な製造装置の一例の概略説明図である。
図3〜8において、同一の構成要素については、同一の符号が付されている。
図4および図5に示す製造装置では、上記構成に加えて更に、液槽33、加圧送液手段35c、流路102が含まれる。
図6、図7および図8に示す製造装置では、上記構成に加えて更に、液槽41、42、加圧送液手段35d、35e、流路103、104、105が含まれる。
そして、図6に示す製造装置では、こうして得られた混合流を、流路105を経て、混合部M1において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と合流させる。更に、こうして得られた混合流を、混合部M2において、液槽33から加圧送液手段35cにより流路102に送液された有機化合物溶液と合流させる。
図7に示す製造装置は、上記のように得られた混合流を、流路105を経て、混合部M2において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と液槽33から加圧送液手段35cにより流路102に送液された有機化合物溶液とを混合部M1において合流させて得られた混合流と、合流させる。
図6、図7に示す製造装置では、上記送液路において六方晶フェライト前駆体溶液と有機化合物との混合が開始する共存開始箇所は、混合部M2である。
図6、図7に示す製造装置について、以降の工程の詳細は、先に図4に示す製造装置について記載した通りである。
そして、こうして得られた混合流を、流路105の混合部M5において、液槽33から加圧送液手段35cにより配管102に送液された有機化合物溶液と合流させる。更に、こうして得られた混合流を、混合部M1において、液槽31から加圧送液手段35aにより流路100に送液され、加熱手段34により加熱された高温高圧水と合流させる。図8に示す製造装置では、上記送液路において六方晶フェライト前駆体溶液と有機化合物との混合が開始する共存開始箇所は、混合部M1である。
以降の工程の詳細は、先に図5に示す製造装置について記載した通りである。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、強磁性粉末として、上記の本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末を含む磁気記録媒体に関する。本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末を強磁性粉末として用いることにより、高い塗膜耐久性を有する磁性層の形成が可能となり、また優れた電磁変換特性を示す磁気記録媒体を得ることも可能となる。この点は、本発明者により新たに見出された知見である。
以下、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
磁性層に使用される強磁性粉末の詳細は、前述の通りである。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落0036〜0039を参照できる。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが、好ましくは3〜80μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.02〜0.12μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.10μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
磁気記録媒体には、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液、非磁性層塗布液またはバックコート層塗布液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。また、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズも好適である。これら分散ビーズの粒径と充填率は最適化して用いることができる分散機は公知のものを使用することができる。磁気記録媒体の製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報段落0051〜0057を参照できる。
(1)前駆体含有水溶液の調製
図1に概略を示す回分式反応槽10を用いて、以下の方法で前駆体含有水溶液を調製した。以下の工程は、反応槽中の液温度が30℃に維持されるように、ヒーターにより温度制御して行った。また、下記の水溶液の供給開始から停止までの間、撹拌羽根14による撹拌を継続した。
反応槽10に満たした精製水に、精製水100gあたり4.0gの硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)を添加し液温30℃で攪拌した。こうして調製した水溶液に、濃度1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を、供給路13を介して一定流速(流速7.5ml/min)で供給した。水酸化カリウム水溶液の供給を停止した後、精製水100gあたり1.6gの水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)2・8H2O))を添加して調製した水酸化カリウム水溶液を、供給路11を介して一定流速(流速25ml/min)で供給することで、前駆体含有水溶液(水酸化物ゾル)を調製した。
図3に示す製造装置の液槽32に、上記(1)で調製した水溶液(ゾル)を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを用いた。
液槽31に導入した精製水を高圧ポンプ35aで送液しつつヒーター34で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段34cを通過後の高温高圧水の温度が345℃、圧力が30MPaとなるよう温度および圧力を制御した。
一方、液槽32に導入した水溶液(ゾル)を25℃で配管101に高圧ポンプ35bを用いて送液し混合部M1において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、オレイン酸をエタノールに溶解した有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を25℃で配管102に高圧ポンプ35cを用いて送液し混合部M2において高温高圧水と水溶液(水酸化物ゾル)の混合液と合流させた。混合部M2における液温は、熱電対により測定した。有機化合物溶液を合流させた混合流を、反応流路36において加熱および加圧することにより、六方晶フェライトを合成(前駆体を転換)した。反応流路36において混合流は30MPaに加圧され、反応流路36の排出口D1における液温(熱電対により測定)が350℃となるように300℃以上の温度に加熱された。
その後、六方晶フェライトを含む液を反応流路36から排出し、水冷機構を備えた冷却部37において100℃以下に冷却した後、圧力調整弁39を経て回収部40において回収した。回収した液の一部を採取し、液温25℃に調整した後にpHメーター(HORIBA製のポータブルpHメーターDシリーズ)によりpHを測定した。回収部から回収した液の残りから六方晶フェライトの粒子を収集した。収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより粉末を分離した。
有機化合物溶液をオレイン酸カリウムを精製水に溶解したオレイン酸カリウム水溶液(濃度0.75mol/L)に変更し、オレイン酸カリウム水溶液のpHを水酸化カリウムを添加することにより調整した結果、回収部で回収された液のpHは、表1に示す値となった。
更に、反応流路36の排出口D1における液温(熱電対により測定)が400℃となるように加熱を行った。
その他は実施例1−1と同様に実施した。
図1に概略を示す回分式反応槽10を用いて、以下の方法で前駆体含有水溶液を調製した。
その他は、実施例1−1と同様に実施した。
以下の工程は、反応槽中の液温度が30℃に維持されるように、ヒーターにより温度制御して行った。また、下記の水溶液の供給開始から停止までの間、撹拌羽根14による撹拌を継続した。
反応槽10において、反応前溶液として、精製水を酸または塩基によりpHを11.50に調整した。
水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)2・8H2O)を精製水100gあたり1.6g添加して調製した水酸化バリウム水溶液を供給路11を介して、硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)を精製水100gあたり4.1g添加して調製した水酸化鉄(III)水溶液を供給路12を介して、濃度1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を供給路13を介して、貯蔵槽から送液ポンプで送液し、反応槽10への供給を開始した。三種の水溶液の反応槽への供給は送液ポンプの動作プログラムを設定することにより同時に行った。三種の水溶液の供給は、供給開始から終了までは停止することなく連続して行った。水酸化バリウム水溶液と硝酸鉄(III)水溶液は、いずれも流速を25cm3/minに設定し単位時間あたりの供給量を、供給中(送液中)一定に維持した。これに対し、水酸カリウム水溶液の流速は、pHのモニタリング結果をフィードバックし流速を制御するプログラム(フィードバック制御プログラム)により制御した結果、流速5.0〜10.0cm3/min程度の範囲で増減を繰り返した。
その後、三種の水溶液の反応槽10への供給を同時に停止した。こうして前駆体含有水溶液(水酸化物ゾル)を得た。
反応槽10への供給中に継続してモニターしたpHと反応前溶液のpHとの差分最大値は0.70、供給終了時のpHは12.00であった。
(1)原料溶液の調製
精製水に水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・9H2O)を溶解することで上記の鉄塩およびバリウム塩を含んだ水溶液(原料溶液)を調製した。調製した原料溶液中の鉄塩およびバリウム塩の合計濃度は0.075mol/Lで、Ba/Feモル比は0.5であった。
また、水酸化カリウムを水に添加し溶解することで水酸化カリウム水溶液(濃度0.20mol/L)を調製した。
(2)有機化合物溶液の調製
オレイン酸をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を調製した。
(3)六方晶フェライトの合成反応
図6に示す製造装置の液槽41に上記(1)で調製した原料溶液を、液槽42に上記(1)で調製した水酸化カリウム水溶液を、液槽33に有機化合物溶液として上記(2)で調製した有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを配管として用いた。
液槽31に導入した精製水を高圧ポンプ35aで送液しつつヒーター34で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段34cを通過後の高温高圧水の温度が350℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
原料溶液と水酸化カリウム水溶液は、体積比で原料溶液:水酸化カリウム水溶液=50:50の割合となるように各々加熱加圧手段(高圧ポンプ35d、35e)を用いて液温25℃で配管103、104に送液し、混合部M4において混合した後、引き続き配管105に送液し混合部M1において上記高温高圧水と混合させた。
一方、有機化合物溶液は、体積比で(原料溶液+水酸化カリウム水溶液):有機化合物溶液=40:60の割合となるように加熱加圧手段(高圧ポンプ35c)を用いて液温25℃で配管102に送液し、混合部M2において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応器36において加熱・加圧することにより、六方晶フェライトを合成(前駆体を転換)した。
反応流路36において混合流は30MPaに加圧され、反応流路36の排出口D1における液温(熱電対により測定)が400℃となるように300℃以上の温度に加熱された。
その後、六方晶フェライト粒子を含む液を反応流路36から排出し、水冷機構を備えた冷却部37において100℃以下に冷却した後、圧力調整弁39を経て回収部40において回収した。回収した液の一部を採取し、液温25℃に調整した後にpHメーター(HORIBA製のポータブルpHメーターDシリーズ)によりpHを測定した。回収部から回収した液の残りから六方晶フェライトの粒子を収集した。収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより粉末を分離した。
(1)原料溶液の調製
精製水に水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・9H2O)を溶解することで上記の鉄塩およびバリウム塩を含んだ水溶液(原料溶液)を調整した。調製した原料溶液中の鉄塩およびバリウム塩の合計濃度は0.075mol/Lで、Ba/Feモル比は0.5であった。
また、水酸化カリウムを水に添加し溶解することで水酸化カリウム水溶液(濃度0.20mol/L)を調製した。
(2)有機化合物溶液の調製
オレイン酸をエタノールに溶解して有機化合物溶液(濃度0.75mol/L)を調製した。
(3)六方晶フェライトの合成反応
図7に示す製造装置の液槽41に上記(1)で調製した原料溶液を、液槽42に上記(1)で調製した水酸化カリウム水溶液を、液槽33に上記(2)で調製した有機化合物溶液を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを配管として用いた。
液槽31に導入した精製水を高圧ポンプ35aで送液しつつヒーター34で加熱することで配管100中に高温高圧水を流通させた。この際、加熱手段34cを通過後の高温高圧水の温度が350℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
有機化合物溶液は、体積比で(原料溶液+水酸化カリウム水溶液):有機化合物溶液=40:60の割合となるように加熱加圧手段(高圧ポンプ)35cを用いて液温25℃で配管102に送液し、混合部M1において上記高温高圧水と混合させた。
一方、原料溶液と水酸化カリウム水溶液は、体積比で原料溶液:水酸化カリウム水溶液=50:50の割合となるように各々加熱加圧手段(高圧ポンプ)35d、35eを用いて液温25℃で配管103、104に送液し、混合部M4において混合した後、引き続き配管105に送液し混合部M2において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応器36において加熱・加圧することにより、六方晶フェライトを合成(前駆体を転換)した。
反応流路36において混合流は30MPaに加圧され、反応流路36の排出口D1における液温(熱電対により測定)が400℃となるように300℃以上の温度に加熱された。
その後、六方晶フェライトを含む液を反応流路36から排出し、水冷機構を備えた冷却部37において100℃以下に冷却した後、圧力調整弁39を経て回収部40において回収した。回収した液の一部を採取し、液温25℃に調整した後にpHメーター(HORIBA製のポータブルpHメーターDシリーズ)によりpHを測定した。回収部から回収した液の残りから六方晶フェライトの粒子を収集した。収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより粉末を分離した。
ヒーター34の温度設定を調整することにより送液路100に送液される高温高圧水の温度を上げた結果、混合部M2における温度は表1に示す値となった。
その他は実施例1−1と同様に実施した。
オレイン酸カリウム水溶液に添加する水酸化カリウム水溶液量を実施例1−2より増量した結果、回収部で回収された液のpHは、表1に示す値となった。
その他は実施例1−2と同様に実施した。
前駆体含有水溶液の調製時に添加する水酸化カリウム水溶液量を実施例1−1より減量した結果、回収部で回収された液のpHは、表1に示す値となった。
その他は実施例1−1と同様に実施した。
(1)X線回折分析による同定
実施例、比較例で得られた粉末をX線回折分析したところ、いずれも六方晶フェライト(バリウムフェライト)であることが確認された。
(2)平均粒子サイズ(平均長軸長)、粒子サイズの変動係数
実施例、比較例で得られた粉末の平均粒子サイズ(平均長軸長)、下記(3)により式(1)を満たす等方状粒子と判定された全粒子についての平均粒子サイズ(平均長軸長)および粒子サイズ(長軸長)の変動係数を、電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて、先に記載した方法により求めた。
(3)粒子の形態観察
前述の方法により、実施例、比較例で作製した粉末から無作為に抽出した500個の粒子について形態観察を実施し、全粒子中で式(1)を満たす等方状粒子の占める割合を算出した。なお実施例1−1〜1−3に関し、式(1)を満たす等方状粒子と判定された全粒子は、長軸長/短軸長は1.0以上であった。
(4)飽和磁化σs、保磁力Hcの測定
実施例、比較例で得た六方晶フェライト粉末の飽和磁化σsおよび保磁力Hcを、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定した。
(5)SFDの測定
上記保磁力測定と同じ装置および同じ磁場強度にて磁場に対する磁化量を測定し、その微分曲線の半値幅を保磁力Hcで規格化したものを反転磁界分布SFDとして求めた。
(6)異方性定数、熱的安定性KuV/kTの測定
振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いてHc測定部の磁場スイープ速度を3分と30分で測定し、以下の熱揺らぎによるHcと磁化反転体積の関係式から活性化体積Vと異方性定数Kuを計算した。算出した値から、KuV/kTを求めた。
Hc=2Ku/Ms{1−[(KuT/kV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数、Ms:飽和磁化、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、V:活性化体積、A:スピン歳差周波数、t:磁界反転時間]
(1)磁性層塗布液処方
(磁性液)
強磁性粉末(上記実施例または比較例で得た粉末、表2記載):100部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:14部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.4meq/g)
シクロヘキサノン:150部
メチルエチルケトン:150部
(研磨剤液)
研磨剤液A アルミナ研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):3部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.3部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.3meq/g)
シクロヘキサノン:26.7部
研磨剤液B ダイヤモンド研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):1部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.1部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.3meq/g)
シクロヘキサノン:26.7部
(シリカゾル)
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ:100nm):0.2部
メチルエチルケトン:1.4部
(その他成分)
ステアリン酸:2部
ブチルステアレート:6部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート):2.5部
(仕上げ添加溶剤)
シクロヘキサノン:200部
メチルエチルケトン:200部
非磁性無機粉末 α−酸化鉄:100部
平均粒子サイズ:10nm
平均針状比:1.9
BET比表面積:75m2/g
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):25部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:18部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
ステアリン酸:1部
シクロヘキサノン:300部
メチルエチルケトン:300部
非磁性無機粉末 α−酸化鉄:80部
平均粒子サイズ:0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):20部
塩化ビニル共重合体:13部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:6部
フェニルホスホン酸:3部
シクロヘキサノン:155部
メチルエチルケトン:155部
ステアリン酸:3部
ブチルステアレート:3部
ポリイソシアネート:5部
シクロヘキサノン:200部
上記磁性液を、バッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散した。分散メディアとしては、0.5mmΦのジルコニアビーズを使用した。研磨剤液はバッチ型超音波装置(20kHz,300W)で24時間分散した。これらの分散液を他の成分(シリカゾル、その他成分および仕上げ添加溶剤)と混合後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で30分処理を行った。その後、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い磁性層塗布液を作製した。
非磁性層塗布液については、各成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて、24時間分散した。分散メディアとしては、0.1mmΦのジルコニアビーズを使用した。得られた分散液を0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過を行い非磁性層用塗布液を作製した。
バックコート層塗布液は、潤滑剤(ステアリン酸およびブチルステアレート)とポリイソシアネート、シクロヘキサノン200部を除いた各成分をオープン型ニーダにより混練・希釈した後、横型ビーズミル分散機により、1mmΦのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80%、ローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、12パスの分散処理を行った。その後残りの成分を分散液に添加し、ディゾルバーで攪拌した。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過しバックコート層塗布液を作製した。
その後、厚み5μmのポリエチレンナフタレート製支持体(光学式3次元粗さ計で、20倍対物レンズを使用して測定した際の中心線表面粗さ(Ra値):1.5nm、幅方向ヤング率:8GPa、縦方向ヤング率:6GPa)に、乾燥後の厚みが100nmになるように非磁性層塗布液を塗布、乾燥した後、その上に乾燥後の厚みが70nmになるように磁性層塗布液を塗布した。この磁性層塗布液が未乾状態にあるうちに磁場強度0.6Tの磁場を、塗布面に対し垂直方向に印加し垂直配向処理を行った後乾燥させた。その後支持体の反対面に乾燥後の厚みが0.4μmになるようにバックコート層塗布液を塗布、乾燥させた。
その後金属ロールのみから構成されるカレンダで、速度100m/分、線圧300kg/cm、温度100℃で表面平滑化処理を行った後、70℃のDry環境で36時間熱処理を行った。熱処理後1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットし、磁気テープを得た。
1.電磁変換特性(SNR)の評価
作製した各磁気テープに対して、下記条件で磁気信号をテープ長手方向に記録し、MRヘッドで再生した。再生信号をシバソク製スペクトラムアナライザーで周波数分析し、300kfciの出力と、0〜600kfci範囲で積分したノイズとの比をSNRとした。
(記録再生条件)
記録:記録トラック幅5μm
記録ギャップ0.17μm
ヘッド飽和磁束密度Bs1.8T
再生:再生トラック幅0.4μm
シールド間距離(sh−sh距離)0.08μm
記録波長:300kfci
温度23℃相対湿度10%RH環境下において、直径4mmのアルミナ球を、作製した各磁気テープの磁性層表面で荷重20gにて20回繰り返し走行させた後のテープ磁性層表面を光学顕微鏡(倍率:200倍)により観察し、以下の基準によって評価した。
A・・・光学顕微鏡の視野中で試料表面のキズがみられないもの
B・・・光学顕微鏡の視野中で試料表面のキズが1〜5箇所以下のもの
C・・・光学顕微鏡の視野中で試料表面のキズが6〜10箇所以下のもの
D・・・光学顕微鏡の視野中で試料表面のキズが11〜50箇所以下のもの
E・・・光学顕微鏡の視野中で試料表面のキズが50箇所超のもの
表2に示すように、実施例2−1〜2−5の磁気テープの磁性層は、高い塗膜耐久性を示した。更に、実施例2−1〜2−5の磁気テープは、優れた電磁変換特性(高SNR)を示した。
表1に示すように、実施例2−1〜2−5の磁気テープの磁性層に用いた六方晶フェライト粉末は、平均粒子サイズが小さく、かつ等方状粒子を多く含んでいた。これらの点が、表2に示されている優れた電磁変換特性と高い塗膜耐久性達成に寄与していると、本発明者は推察している。
Claims (11)
- 下記式(1):
長軸長/短軸長<2.0 …(1)
を満たす等方状六方晶フェライト粒子を粒子数基準で70%以上含み、前記等方状とは、板状ではないことであり、
平均粒子サイズが10.0nm以上35.0nm以下であり、かつ
飽和磁化が30A・m2/kg以上である六方晶フェライト粉末。 - 保磁力が159kA/m以上318kA/m以下である請求項1に記載の六方晶フェライト粉末。
- 下記式(A):
60≦KuV/kT …(A)
を満たす熱的安定性を有し、式(A)中、Kuは異方性定数、Vは活性化体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度を表す、請求項1または2に記載の六方晶フェライト粉末。 - 反転磁界分布が0.8以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 平均粒子サイズが20.0nm以上30.0nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 前記式(1)を満たす等方状粒子の平均粒子サイズは10.0nm以上30.0nm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 前記式(1)を満たす等方状粒子の平均粒子サイズは15.0nm以上25.0nm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 前記式(1)を満たす等方状粒子の粒子サイズの変動係数は30%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 前記式(1)を満たす等方状六方晶フェライト粒子を粒子数基準で80%以上含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 磁気記録用磁性粉である請求項1〜9のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末。
- 非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末である磁気記録媒体。
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