JP5998170B2 - 六方晶フェライト粉末の製造方法および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
以下は、本発明者による推測であって本発明を何ら限定するものではないが、本発明者は、還元性化合物は、前駆体が六方晶フェライトに転換する反応を促進する作用を奏すると考えており、この点が、六方晶フェライトの飽和磁化の向上に寄与しているのではないかと推察している。より詳しくは、還元性化合物が、前駆体が六方晶フェライトに転換する反応を促進する結果、結晶性の高い六方晶フェライトが得られることが、飽和磁化の向上に寄与しているのではないかと、本発明者は推察している。
加えて、還元性化合物が、前駆体が六方晶フェライトへ転換する反応を促進することにより迅速に反応が進行することが、得られる六方晶フェライトの微粒子化にも寄与しているのではないかと推察される。更には、還元性化合物の使用により前駆体が六方晶フェライトへ転換する反応が迅速に進行することは、粒子サイズのばらつきが少ない(粒子サイズの均一性に優れる)六方晶フェライトを得る観点からも望ましいと、本発明者は考えている。ただし還元性化合物が無機化合物の場合、これのみでは微粒子化を十分に達成することは難しく、有機化合物を併用すべきことも、本発明者による検討の結果、明らかとなった。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧することにより、前駆体を六方晶フェライトに転換すること、
を含み、
上記水系溶液は、
常温常圧下で固体または液体として存在し、かつ還元性を有する還元性有機化合物および還元性無機化合物からなる群から選択される還元性化合物を少なくとも含み、
還元性化合物として還元性無機化合物を含む場合、有機化合物を更に含む、六方晶フェライト粉末の製造方法、
に関する。
上記製造方法により得られた六方晶フェライト粉末、
に関する。
非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記強磁性粉末が、上述の六方晶フェライト粉末である磁気記録媒体、
に関する。
更に、本発明の一態様によれば、上記六方晶フェライト粉末を含む磁性層を有し、高いSNRを示すことができる磁気記録媒体を提供することもできる。
本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末の製造方法は、六方晶フェライト前駆体(以下、単に「前駆体」とも記載する。)を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧することにより、前記前駆体を六方晶フェライトに転換することを含み、上記水系溶液は、常温常圧下で固体または液体として存在し、かつ還元性を有する還元性有機化合物および還元性無機化合物からなる群から選択される還元性化合物を少なくとも含み、還元性化合物として還元性無機化合物を含む場合、有機化合物を更に含む。
上記製造方法により、粒子サイズが小さく、しかも飽和磁化の高い六方晶フェライト粉末を得ることができる理由については、先に記載した通りである。なお上記のように加熱および加圧される水系溶液は、六方晶フェライト前駆体とともに、還元性有機化合物を、または有機化合物(還元性の有無を問わない)と還元性無機化合物とを、含んでいる。これら化合物は、六方晶フェライト前駆体調製時に、前駆体の原材料と混合してもよい。または、前駆体調製後に前駆体と混合してもよい。または前駆体の原材料との混合と、調製した前駆体との混合を、ともに行ってもよい。
以下、上記製造方法について、更に詳細に説明する。
(i)原材料(鉄塩、二価金属塩)、塩基、水系溶媒
六方晶フェライト前駆体とは、高温高圧の水の存在下に置かれることにより六方晶フェライトに転換(フェライト化)するものであればよい。高温高圧の水とは、加熱および加圧されている水をいい、詳細は後述する。前駆体は、水に対して高い溶解性を示し後述する水系溶媒に溶解するものであってもよく、水に対する溶解性に乏しく、水系溶媒中でコロイド粒子として分散(ゾル状)していてもよい。
以上説明した六方晶フェライトの前駆体は、鉄塩と二価金属塩とを、塩基を含む水系溶液中で混合することにより得ることができる。上記水系溶液中では、通常、鉄原子と二価金属原子とを含む塩(例えば水酸化物)が粒子状、好ましくはコロイド粒子として析出する。ここで析出する粒子は、その後に高温高圧の水の存在下に置かれることによりフェライト化し六方晶フェライトとなる。
塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、無機塩基に限定されるものではなく、有機塩基を用いることもできる。上記製造方法では、前駆体調製のための水系溶液は塩基を含むが、塩基とともに添加される塩の中には酸性を示すものもあるため、水系溶液のpHは、塩基性に限定されるものではなく、中性または酸性の場合もある。水系溶液のpHは、前駆体調製時(反応時)の液温でのpHとして、例えば4以上14以下であり、前駆体調製のための反応を良好に進行させる観点から、5以上14以下であることが好ましく、6以上13以下であることがより好ましく、6以上12以下であることが更に好ましい。7以上または7超のpH(中性〜塩基性)であることが、より一層好ましい。反応時の水系溶液の液温は、加熱または冷却により温度制御してもよく、温度制御なしの室温であってもよい。好ましくは、上記液温は、10〜90℃の範囲であり、温度制御なし(例えば20〜25℃程度)で反応を十分に進行させることができる。温度制御のために、後述する回分式反応槽および連続式反応槽は、加熱手段や冷却手段を備えていてもよい。
一態様では、還元性化合物は、前駆体調製時に原材料および塩基とともに水系溶媒と混合することができる。前駆体調製のための水系溶液中に還元性化合物を共存させることにより、前駆体表面および内部の少なくともいずれかに還元性化合物を存在させることができる。ここで還元性化合物として常温常圧下で固体または液体として存在する化合物を用いる理由は、前駆体における還元性化合物の存在状態(例えば表面への付着状態)の均一性を高めることを考慮したものである。また、工程の安全性の観点からも、常温常圧下で固体または液体として存在する化合物は好ましい。こうして調製された前駆体を、詳細を後述するように六方晶フェライトに転換することにより、粒子サイズが小さく、しかも飽和磁化の高い六方晶フェライトを得ることができる。ただし他の一態様では、調製後の前駆体を還元性化合物と混合した後に、六方晶フェライトに転換させることもできる。詳細は後述する。
有機化合物の使用量は、前駆体100質量部に対して0.01〜1000質量部の範囲とすることが好ましく、0.05〜500質量部の範囲とすることがより好ましく、0.1〜300質量部の範囲とすることがより好ましい。ここで基準とする前駆体量は、実測値または原材料仕込み量からの理論生成量である。この点は、以下に前駆体量を基準として記載する値についても、同様とする。
上記製造方法では、六方晶フェライトの前駆体、上記還元性化合物、および有機化合物を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧することにより、前駆体を六方晶フェライトに転換する。還元性化合物、有機化合物を前駆体調製時に添加していなかった場合には、六方晶フェライトへの転換反応に付すまでの間に、前駆体と上記化合物とを混合する。
一般に、溶媒として水を含む流体を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えることにより、流体に含まれる水は亜臨界〜超臨界状態となる。含まれる水が、好ましくは亜臨界〜超臨界状態となることにより六方晶フェライトの前駆体がフェライトに転換する反応(フェライト化)が進行する結果、六方晶フェライトを得ることができる。
(1)六方晶フェライト前駆体および還元性化合物を含む水系溶液を、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、上記反応流路内で六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する。
(2)六方晶フェライト前駆体および還元性化合物を含む水系溶液を、加熱および加圧された水、好ましくは200℃以上に加熱され、かつ20MPa以上の圧力が加えられた水、と混合した後に、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上の圧力を加えて加圧する反応流路に連続的に送液することにより、六方晶フェライト前駆体を六方晶フェライトに転換する。
本発明の更なる態様は、上述の製造方法により得られた六方晶フェライト粉末に関する。
1.磁性層表面にヤマト科学製プラズマリアクターで1〜2分間表面処理を施し、磁性層表面の有機物成分(結合剤、硬化剤等)を灰化して取り除く。
2.シクロヘキサノンまたはアセトンなどの有機溶剤を浸したろ紙を金属棒のエッジ部に貼り付け、その上で上記1.の処理後の磁性層表面をこすり、磁性層成分を磁性層からろ紙へ転写し剥離する。
3.上記2.で剥離した成分をシクロヘキサノンやアセトンなどの溶媒の中に振るい落とし(ろ紙ごと溶媒の中にいれ超音波分散機で振るい落とす)、溶媒を乾燥させ剥離成分を取り出す。
4.上記3.でかき落とした成分を十分洗浄したガラス試験管に入れ、その中にn−ブチルアミンを磁性層成分の20ml程度加えてガラス試験管を封緘する。(n−ブチルアミンは、灰化せず残留した結合剤を分解できる量加える。)
5.ガラス試験管を170℃で20時間以上加熱し、有機物成分を分解する。
6.上記5.の分解後の沈殿物を純水で十分に洗浄後乾燥させ、粉末を取り出す。
7.上記6.で採取した粉末にネオジウム磁石を近づけ吸着した粉末(即ち強磁性粉末)を取り出す。
以上の工程により、磁性層から磁性粉を採取することができる。上記処理による粒子へのダメージはほとんどないため、上記方法により、磁性層に含まれていた状態の粉末の粒子サイズの測定が可能である。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、強磁性粉末として、上述の本発明の一態様にかかる六方晶フェライト粉末を含む磁気記録媒体に関する。上記六方晶フェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることにより、優れた電磁変換特性(高SNR)を有する磁気記録媒体を提供することができる。
以下、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
磁性層に使用される強磁性粉末およびその製造方法の詳細は、前述の通りである。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落0036〜0039を参照できる。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが、好ましくは3〜80μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.02〜0.12μmであり、更に好ましくは0.03〜0.10μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
磁気記録媒体には、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末(六方晶フェライト粉末)、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液、非磁性層塗布液またはバックコート層塗布液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。磁気記録媒体の製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報段落0051〜0057を参照できる。
(1)前駆体溶液(前駆体水溶液)の調製
回分式(バッチ式)反応槽において、精製水に二価金属塩として水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)、鉄塩として硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・9H2O)、KOH、還元性化合物としてヒドラジン(N2H4・H2O)を混合し、マグネチックスターラーで撹拌混合することで、pH=9の前駆体水溶液(ゾル)を調製した。ゾル調製に用いた上二価金属塩および鉄塩の総量は、調製した前駆体溶液(ゾル)の濃度が0.01Mで、Ba/Fe=50原子%になるように調整した。ヒドラジンは、二価金属塩および鉄塩の総量100モル部に対して60モル部になるよう添加した。
(2)有機化合物溶液の調製
次にオレイン酸をエタノールに溶解して有機化合物溶液を調製した。調製した溶液の濃度は0.2Mであった。
(3)六方晶フェライトの合成(前駆体の六方晶フェライトへの転換)
図1に示す製造装置の液槽2に水溶液(ゾル)を、液槽3に有機化合物溶液を導入した。なお製造装置の配管としては、SUS316BAチューブを用いた。
液槽1に導入した精製水を高圧ポンプ5aで送液しつつヒーター4で加熱することで配管100中に高温高圧水を30ml/minで流通させた。この際、加熱手段4cを通過後の高温高圧水の温度が450℃、圧力が30MPaとなるように温度および圧力を制御した。
一方、前駆体溶液(ゾル)と有機化合物溶液は、体積比で水溶液:有機化合物溶液=5:5の割合となるように各々高圧ポンプ5b、5cを用いて液温25℃で配管101、102に送液した。途中、2液を流路を合流させ混合し、得られた混合液を混合部M1において上記高温高圧水と混合させ、引き続き、反応流路6において、400℃、30MPaで加熱・加圧することにより、六方晶フェライトを合成(前駆体を転換)した。
その後、冷却部7において冷水によりバリウムフェライト粒子(磁性粒子)を含んだ液を冷却し、収集した。
収集した粒子をエタノールで洗浄し、続いて遠心分離することにより、バリウムフェライト磁性粒子を分離した。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して10モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して5モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して100モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して200モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して2モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを、二価金属塩と鉄塩の総量100モル部に対して250モル部添加した点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンを添加しなかった点以外、実施例1と同様に行った。
前駆体溶液を有機化合物溶液と混合しなかった点以外、実施例1と同様に行った。
二価金属塩として硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2・4H2O)を用いた点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンの代わりにトリエチルアミン((C2H5)3N)を用いた点以外、実施例1と同様に行った。
ヒドラジンの代わりにトリエタノールアミン((C2H5O)3N)を用いた点以外、実施例1と同様に行った。
(1)X線回折分析
実施例、比較例で得られた粉末についてX線回折分析を行ったところ、いずれもM型六方晶フェライトAFe12O19(A:BaまたはSr)の単一相であることが確認された。
上記X線回折分析は、CuKα線を40kV、45mAの条件で走査し、XRDパターンを測定することにより行った。X線粉末回折スペクトルは、下記の実験条件下で測定した:
・PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
・電圧45kV、強度40mA
・入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
・分散スリットの固定角:1/4度
・マスク:10mm
・散乱防止スリット:1/4度
・測定モード:連続
・1段階あたりの測定時間:3秒
・測定速度:毎秒0.017度
・測定ステップ:0.05度
(2)平均粒子サイズ(平均球相当径)・変動係数の測定
実施例、比較例で得た六方晶フェライト粉末の平均球相当径および変動係数は、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて、先に記載した方法により求めた。
(3)飽和磁化の測定
実施例、比較例で得た六方晶フェライト粉末の飽和磁化を、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定した。
(1)磁性層塗布液処方
六方晶フェライト粉末:100部
ポリウレタン樹脂:12部
質量平均分子量 10000
スルホン酸官能基含有量 0.5meq/g
ダイアモンド微粒子(平均粒子サイズ50nm):2部
カーボンブラック(旭カーボン社製#55、平均粒子サイズ0.015μm):0.5部
ステアリン酸:0.5部
ブチルステアレート:2部
メチルエチルケトン:180部
シクロヘキサノン:100部
(2)非磁性層塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄:100部
平均粒子サイズ 0.09μm
BET法による比表面積 50m2/g
pH 7
DBP吸油量27〜38g/100g
表面処理剤Al2O3 8質量%
カーボンブラック(コロンビアンカーボン社製コンダクテックスSC−U):25部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン社製MR104):13部
ポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR8200):5部
フェニルホスホン酸:3.5部
ブチルステアレート:1部
ステアリン酸:2部
メチルエチルケトン:205部
シクロヘキサノン:135部
(3)磁気テープの作製
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルにポンプで通液し、2000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを非磁性層の塗布液には6.5部、さらにメチルエチルケトン7部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層塗布液を、厚さ5μmのポリエチレンナフタレートベース上に乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層の厚さが70nmになるように逐次重層塗布を行い、乾燥後7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cmにて処理を行った。1/4インチ巾にスリットし表面研磨処理を施して磁気テープを得た。
SNRの評価
各磁気テープの再生出力、ノイズ、SNRを、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用GMRヘッドをドラムテスターに取り付けて、トラック密度16KTPI、線記録密度400Kbpi(面記録密度6.4Gbpsi)の信号を記録した後に測定した。比較例1の測定値を基準とした。
表1に示すように、還元性無機化合物であるヒドラジンとオレイン酸とを併用した実施例1〜8で得られた六方晶フェライト粉末、および還元性有機化合物であるトリエチルアミンまたはトリエタノールアミンを用いた実施例9、10で得られた六方晶フェライト粉末は、比較例1、2で得られた六方晶フェライト粉末と比べて微粒子であり、かつ高い飽和磁化を示した。更に、実施例1〜10で得られた六方晶フェライト粉末を磁性層に含む磁気記録媒体が、優れた電磁変換特性(高SNR)を示すことも確認された。
Claims (13)
- 六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧することにより、前記前駆体を六方晶フェライトに転換すること、
を含み、
前記水系溶液は、常温常圧下で固体または液体として存在し、かつ還元性を有する還元性化合物を少なくとも含み、かつ
前記還元性化合物は、アミン化合物である、
六方晶フェライト粉末の製造方法。 - 鉄塩、二価金属塩、前記還元性化合物、および塩基を水系溶媒中で混合することにより、前記六方晶フェライト前駆体および前記還元性化合物を含む前駆体溶液を調製することを更に含む請求項1に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記混合において、前記鉄塩と二価金属塩との合計量100モル部に対して2〜300モル部の範囲の量の前記還元性化合物を混合する請求項2に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 調製した前駆体溶液を、有機化合物を含む有機化合物溶液と混合することを更に含む請求項2または3に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記有機化合物は、有機カルボン酸およびその塩からなる群から選択される請求項4に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 六方晶フェライト粉末の製造方法であって、
六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液を、300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧することにより、前記前駆体を六方晶フェライトに転換することを含み、ここで前記六方晶フェライト前駆体を含む水系溶液は、常温常圧下で固体または液体として存在し、かつ還元性を有する還元性有機化合物および還元性無機化合物からなる群から選択される還元性化合物を少なくとも含み、前記還元性化合物として還元性無機化合物を含む場合、有機化合物を更に含み、
鉄塩、二価金属塩、前記還元性化合物、および塩基を水系溶媒中で混合することにより、前記六方晶フェライト前駆体および前記還元性化合物を含む前駆体溶液を調製すること、ならびに
調製した前駆体溶液が連続して送液されている流路と有機化合物を含む有機化合物溶液が連続して送液されている流路とを合流させることにより、前記前駆体溶液と有機化合物溶液とを混合すること、
を更に含む、六方晶フェライト粉末の製造方法。 - 前記有機化合物は、有機カルボン酸およびその塩からなる群から選択される請求項6に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記前駆体溶液と有機化合物溶液との混合溶液を、加熱および加圧されている水と混合した後に、内部を流れる流体を300℃以上に加熱し、かつ20MPa以上に加圧する反応流路に送液することにより、該反応流路内で前記転換を行う請求項6または7に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記混合溶液が連続的に送液されている流路と加熱および加圧されている水が連続的に送液されている流路とを合流させることにより、前記混合溶液と加熱および加圧されている水とを混合する、請求項8に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記鉄塩、二価金属塩、前記還元性化合物、および塩基を水系溶媒中で混合することにより、前記鉄塩と二価金属塩との合計量100モル部に対して2〜300モル部の範囲の量の前記還元性化合物が混合される請求項6〜9のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記還元性化合物は、ヒドラジン化合物およびアミン化合物からなる群から選択される請求項6〜10のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 前記転換により得られる六方晶フェライトは、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、およびそれらの混晶からなる群から選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の六方晶フェライト粉末の製造方法。
- 非磁性支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記強磁性粉末は六方晶フェライト粉末であり、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法により前記六方晶フェライト粉末を製造すること、および、
製造した六方晶フェライトおよび結合剤を含む磁性層塗布液を非磁性支持体上に塗布する工程を経て磁性層を形成すること、
を含む、磁気記録媒体の製造方法。
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