JP6431787B2 - アルミナ繊維の製造方法、紡糸液及びアルミナ繊維 - Google Patents
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Description
排ガス浄化装置は、内燃機関の排気通路にケーシングを設け、ケーシングの中に排ガス処理体を配置した構造となっている。排ガス処理体の一例としては、触媒担体又はディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が挙げられる。
そこで、乳酸アルミニウム、シリカゾル及びポリビニルアルコールを混合して紡糸液を調製したところ、濃縮後にポリビニルアルコールが分離するという問題が発生した。
そのため、塩基性塩化アルミニウムを単に乳酸アルミニウムに置き換えただけでは好適な紡糸液が得られないことが判明した。
ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である第1の添加剤と、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である第2の添加剤とを、上記第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、上記第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満の割合となるように混合して混合液を調製する工程と、
上記混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを混合して紡糸液を調製する工程と、
上記紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化する紡糸工程とを行うことを特徴とする。
塩析剤として働く酢酸イオンはシリカゾルに含まれていることが多いため、シリカゾルを混合する前に予め第1の添加剤と第2の添加剤を混合しておくことによって、第1の添加剤が保護された状態となるので、シリカゾルが混合された際に酢酸イオンの影響を受けることが防止される。
そして、硫酸イオンは乳酸アルミニウムに含まれていることが多いため、乳酸アルミニウムを混合する前に予め第1の添加剤と第2の添加剤を混合しておくことによって、第1の添加剤が保護された状態となるので、乳酸アルミニウムが混合された際に硫酸イオンの影響を受けることが防止される。
また、紡糸液中には第2の添加剤が適量(第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満)含まれているので、紡糸液中に各成分が適度に分散した好適な紡糸液となる。
この紡糸液を使用することにより、脱脂焼成工程において塩素ガスを発生させることなく、アルミナ繊維を製造することができる。
以下、本発明のアルミナ繊維の製造方法、紡糸液及びアルミナ繊維について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
本発明のアルミナ繊維の製造方法は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である第1の添加剤と、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である第2の添加剤とを、上記第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、上記第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満の割合となるように混合して混合液を調製する工程と、
上記混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを混合して紡糸液を調製する工程と、
上記紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化する紡糸工程とを行うことを特徴とする。
混合液を調製する工程では、第1の添加剤と第2の添加剤とを混合する。
第1の添加剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である。
第1の添加剤は、紡糸液の粘度が紡糸に適した適切な範囲となるように加える添加剤である。
Po=([η]×103/8.29)(1/0.62)
ポリビニルアルコールのけん化度としては、92.5〜99.0モル%が好ましい。
ポリビニルアルコールのけん化度とは、けん化によってポリビニルアルコールに変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル系モノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対してビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
ポリビニルアルコールとしては、1種類のみからなっていてもよいし、重合度、けん化度、変性度等が互いに異なる2種以上のポリビニルアルコールの混合物であってもよい。
ポリビニルアルコールとしては、日本酢ビ・ボバール株式会社製、JF10、JM17等が挙げられる。
ポリエチレンオキシドの重量平均分子量は、溶媒として水を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレンオキシドで換算した重量平均分子量を指す。
ポリエチレンオキシドとしては、明成化学工業株式会社製、アルコックスE−60やE−100を利用することができる。
ポリアクリルアミドとしては、一般的に市販しているものを利用することができる。
言い換えると、第2の添加剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸、ポリスルホン酸塩、無水マレイン酸、及び、無水マレイン酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であるともいえる。
第2の添加剤は、第1の添加剤を乳酸アルミニウムと混合した場合に生じる第1の添加剤の分離を防止するために加える添加剤である。
ポリアクリル酸及びその塩の重量平均分子量は、溶離液として0.1MNaCl+リン酸バッファー(pH7)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレンオキシドで換算した重量平均分子量を指す。
また、ポリアクリル酸及びその塩としては、1種類のみからなっていてもよいし、重量平均分子量やマレイン酸モノマー単位の含有量、塩の種類の異なる2種以上のポリアクリル酸及びその塩の混合物であってもよい。
ポリアクリル酸及びその塩としては昭和電工株式会社製、ビスコメートNP−800やNP−700を利用することができる。
ポリスルホン酸塩、無水マレイン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。すなわち、ポリスルホン酸ナトリウム、無水マレイン酸ナトリウムであることがより好ましい。
ポリスルホン酸及びその塩や、無水マレイン酸及びその塩としては、一般的に市販しているものを利用することができる。
第2の添加剤の固形分重量がこの範囲内であると、第2の添加剤を加えることにより第1の添加剤の塩析及び分離が生じることを防止する効果が好適に発揮されて、紡糸液中に各成分が適度に分散した好適な紡糸液となる。
第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部未満であると第1の添加剤の塩析及び分離が生じやすく、また、第2の添加剤の固形分重量が1.0重量部以上であると紡糸液が白濁して分離した状態となる。
また、第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、第2の添加剤の固形分重量は、好ましくは0.02重量部以上、0.1重量部未満である。
紡糸液を調製する工程では、第1の添加剤と第2の添加剤の混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを加えて紡糸液を調製する。
具体的な混合の順序としては、第1の添加剤と第2の添加剤の混合液にシリカゾルを加えて、その後に乳酸アルミニウムを加える順序(順序1)でもよく、第1の添加剤と第2の添加剤の混合液に乳酸アルミニウムを加えて、その後にシリカゾルを加える順序(順序2)でもよく、シリカゾルと乳酸アルミニウムを混合しておき、シリカゾルと乳酸アルミニウムの混合液に第1の添加剤と第2の添加剤の混合液を加える順序(順序3)でもよい。これらの中では順序3が好ましい。
シリカゾルを第1の添加剤と混合する前に予め第1の添加剤と第2の添加剤を混合しておくことが重要であり、シリカゾルと第1の添加剤が混合される前に第1の添加剤を第2の添加剤によって保護しておくことにより、シリカゾルに含まれる酢酸イオンの影響によって第1の添加剤の塩析及び分離が生じることを防止することができる。
シリカゾル中のシリカ粒子の比表面積測定は、シリカゾルを乾燥した後に行う。
d=6000/(S・ρ)・・・(1)
d(nm):平均粒子径
S(m2/g):測定した比表面積
ρ:(g/cm3):シリカ粒子の真密度(2.2g/cm3)
カチオン系シリカゾルとしては、アルミ化合物等のカチオン性水和金属化合物で表面処理することによりカチオン性にしたタイプのシリカゾルが挙げられる。
例えば、日産化学工業株式会社製、スノーテックスST−AK−XS(平均粒子径5nm、分散安定剤として酢酸を含む)、スノーテックスST−AK−A(平均粒子径12nm、分散安定剤として酢酸を含む)等が挙げられる。
乳酸アルミニウムとしては、塩基性乳酸アルミニウムが好ましい。
塩基性乳酸アルミニウムは、化学式がAl(OH)3−x(Lac.Acid)x・nH2O(式中、xは0<x≦3の数、nは水和水の付加数、Lac.Acidは乳酸イオンである)で示され、ヒドロキシアクオアルミニウムイオンが重合した多核錯体からなる高分子電解質である。例えば、多木化学株式会社製、タキセラムM−160L、タキセラムM−160P等の商品名で市販されている。
紡糸工程では、紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化することによりアルミナ繊維を製造する。
紡糸及び焼成の方法としては従来から公知の方法を用いることができるが、例えば以下のような方法が挙げられる。
まず、紡糸液をブローイング法により紡糸して所定の平均繊維径を有するアルミナ繊維前駆体を作製する。
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸液供給用ノズルから押し出される紡糸液を供給することによってアルミナ繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
そして、アルミナ繊維前駆体を1000〜1600℃で焼成することによってアルミナ繊維に転換し、アルミナ繊維を得ることができる。
焼成の前に、有機成分を飛ばすための脱脂工程を行ってもよい。
ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である第1の添加剤と、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である第2の添加剤とを、上記第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、上記第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満の割合となるように混合して混合液を調製し、上記混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを混合することにより得られることを特徴とする。
図1は、保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示した斜視図である。図1に示すように、本発明の保持シール材は、所定の長手方向の長さ(以下、図1中、矢印Lで示す)、幅(図1中、矢印Wで示す)及び厚さ(図1中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板形状のマットから構成されていてもよい。
なお、「平面視略矩形」とは、凸部及び凹部を含む概念である。また、平面視略矩形には、角部が90°以外の角度を有する形状も含まれる。
ニードリング法の場合、紡糸液を紡糸して得られるアルミナ繊維前駆体を積層してアルミナ繊維前駆体シートを作製し、このシートにニードリング処理を施した後に焼成してアルミナ繊維からなる無機繊維シートを作製する。
ニードリング法の場合、ニードリング処理後の焼成によりアルミナ繊維前駆体がアルミナ繊維となるので、ここまでの工程が本発明のアルミナ繊維の製造方法であるともいえる。
そして、このようにして得られた保持シール材は、ハニカムフィルタ、触媒担体等の排ガス処理体の周囲に巻き付けてケーシング内に配設されて、排ガス浄化装置として使用される。
排ガス処理体及び排ガス浄化装置の詳細な説明は省略する。
この紡糸液を使用することにより、脱脂焼成工程において塩素ガスを発生させることなく、アルミナ繊維を製造することができる。
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ボバール株式会社製、JM1700)の10重量%水溶液を準備し、ポリビニルアルコールの固形分重量100重量部に対して固形分重量0.03重量部となる量のポリアクリル酸ナトリウム(昭和電工株式会社製、ビスコメートNP−700)を混合して混合液(第1の添加剤と第2の添加剤の混合液)を調製した。
別に、乳酸アルミニウム(多木化学株式会社製、タキセラムM−160L)とシリカゾル(日産化学工業株式会社製、スノーテックスST−AK−XS)を、焼成後の無機繊維における配合比がAl2O3:SiO2=72:28(重量比)になる割合で混合して混合液(乳酸アルミニウムとシリカゾルの混合液)を調製した。
乳酸アルミニウムとシリカゾルの混合液に含まれる固形分重量の合計100重量部に対して、ポリビニルアルコールの固形分重量が7.5重量部になるように、乳酸アルミニウムとシリカゾルの混合液と、第1の添加剤と第2の添加剤の混合液とを混合した。
そして、エバポレーターにて60℃に加熱しながら濃縮することにより、固形分濃度40重量%の紡糸液を得た。
ポリアクリル酸ナトリウムの添加量を、ポリビニルアルコールの固形分重量100重量部に対して固形分重量0.1重量部となる量に変更した他は実施例1と同様にして紡糸液を得た。
ポリアクリル酸ナトリウムを添加せず、乳酸アルミニウムとシリカゾルの混合液と、ポリビニルアルコールを、乳酸アルミニウムとシリカゾルの混合液に含まれる固形分重量の合計100重量部に対して、ポリビニルアルコールの固形分重量が7.5重量部になるように混合した他は実施例1と同様にして紡糸液を得た。
ポリアクリル酸ナトリウムの添加量を、ポリビニルアルコールの固形分重量100重量部に対して固形分重量1.0重量部となる量に変更した他は実施例1と同様にして紡糸液を得た。
各実施例及び各比較例で作製した紡糸液について、紡糸液の状態を目視観察した。
図2(a)、図2(b)、図2(c)、図2(d)は、それぞれ実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の紡糸液の写真である。
実施例1及び2の紡糸液は、分散状態が保たれていた。
一方、比較例1の紡糸液は、第2の添加剤であるポリアクリル酸ナトリウムが添加されていないためにポリビニルアルコールが分離していた。比較例2の紡糸液は第2の添加剤であるポリアクリル酸ナトリウムの固形分重量が、ポリビニルアルコールの固形分重量100重量部に対して1.0重量%であるため、紡糸液が白濁していた。
111 凸部
112 凹部
Claims (5)
- ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である第1の添加剤と、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である第2の添加剤とを、前記第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、前記第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満の割合となるように混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを混合して紡糸液を調製する工程と、
前記紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化する紡糸工程とを行うことを特徴とするアルミナ繊維の製造方法。 - 前記第1の添加剤がポリビニルアルコールであり、前記第2の添加剤がポリアクリル酸ナトリウムである請求項1に記載のアルミナ繊維の製造方法。
- 前記シリカゾルは平均粒子径が5〜100nmのカチオン系シリカゾルである請求項1又は2に記載のアルミナ繊維の製造方法。
- ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である第1の添加剤と、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である第2の添加剤とを、前記第1の添加剤の固形分重量100重量部に対して、前記第2の添加剤の固形分重量が0.01重量部以上1.0重量部未満の割合となるように混合して混合液を調製し、前記混合液にシリカゾル及び乳酸アルミニウムを混合することにより得られることを特徴とする紡糸液。
- 請求項4に記載の紡糸液を紡糸し、焼成して繊維化することにより得られることを特徴とするアルミナ繊維。
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