しかしながら、特許文献1の技術は、べた基礎用に提案された技術であり、立上り基礎を厚み方向に貫通するように排水管を施工する布基礎に適した技術には必ずしもなっていない。
また、特許文献1の技術では、べた基礎を打設して鞘管を埋設固定する際に、配筋間の所定位置に鞘管を予め仮固定して設置しておく必要があるが、鞘管が傾かないように適切に仮固定しておくことが難しい。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管路施工方法およびそれに用いる基礎貫通用継手を提供することである。
この発明の他の目的は、立上り基礎を貫通する排水管を施工するのに適した、管路施工方法およびそれに用いる基礎貫通用継手を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、鞘管を適切に仮固定できる、管路施工方法およびそれに用いる基礎貫通用継手を提供することである。
第1の発明は、エルボ状の内管とエルボ状の鞘管とを備える基礎貫通用継手を用いて、建物の立上り基礎を貫通する排水管を施工する管路施工方法であって、内管は、鞘管内に配管される排水管を構成する可撓性を有さない硬質管であって、エルボ部と、エルボ部の下流側に設けられ、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備え、エルボ部と横管部とが当該内管を鞘管内に差し入れる前に接合されて一体化されているものであり、鞘管は、横向きに開口する横開口部と上向きに開口する上開口部とを備え、上開口部がエルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を抜き差し可能な大きさを有しているものであり、(a)ボイド孔を有する立上り基礎を打設するステップ、(b)基礎貫通用継手を用意するステップ、(c)ボイド孔に対して横開口部を嵌め込んで鞘管を設置するステップ、(d)上開口部の周囲を覆うように土間コンクリートを打設し、鞘管を埋設固定するステップ、および(e)鞘管およびボイド孔に排水管を挿通して設置するステップを含み、ステップ(e)では、エルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を上開口部から鞘管内に挿入して、横管部と屋外側配管とを連結する、管路施工方法である。
第1の発明では、先ず、ステップ(a)において、ボイド孔を有する立上り基礎を打設する。また、ステップ(b)では、基礎貫通用継手を用意しておく。この基礎貫通用継手は、エルボ状の内管とエルボ状の鞘管とを備える。ここで、内管は、鞘管内に配管される排水管を構成する可撓性を有さない硬質管であって、エルボ部と、エルボ部の下流側に設けられ、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備え、エルボ部と横管部とが当該内管を鞘管内に差し入れる前に接合されて一体化されているものである。また、鞘管は、横向きに開口する横開口部と上向きに開口する上開口部とを備え、上開口部がエルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を抜き差し可能な大きさを有しているものである。そして、ステップ(c)において、ステップ(a)で打設した立上り基礎のボイド孔に対して、ステップ(b)で用意した鞘管の横開口部を屋内側から嵌め込み、鞘管を設置する。ボイド孔に鞘管の横開口部を嵌め込むことで、鞘管の動きが規制されて、鞘管が安定的に仮固定される。その後、ステップ(d)において、鞘管の上開口部の周囲を覆うように土間コンクリートを打設して、鞘管を埋設固定する。これによって、立上り基礎の屋外側の側面から土間コンクリートの上面まで延びる貫通路が形成される。最後に、ステップ(e)において、ステップ(d)で形成された貫通路(鞘管およびボイド孔)内に排水管を挿通して設置する。この際には、エルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を上開口部から鞘管内に挿入して、横管部と屋外側配管とを連結する。
第1の発明によれば、ボイド孔を有する立上り基礎を打設した後に鞘管を埋設固定するという、従来のべた基礎用の鞘管工法とは全く異なる、立上り基礎を貫通する排水管を施工するのに適した新規な管路施工方法が提供される。
また、第1の発明によれば、鞘管を設置する際には、立上り基礎のボイド孔に鞘管の横開口部を嵌め込むので、鞘管を安定的に仮固定できる。したがって、鞘管の設置が容易となり、延いては立上り基礎を貫通する排水管の施工が容易となる。
さらに、第1の発明によれば、鞘管内に挿通されるエルボ状の内管は、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備えており、鞘管の上開口部の大きさは、このエルボ状の内管を分割等することなくそのまま抜き差し可能な大きさとされる。このため、排水管を施工する際には、内管と屋内側配管および屋外側配管との接続を含む排水管の接続作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能となる。また、排水管を更新する際には、排水管の切断作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能であり、鞘管内に残る排水管も上開口部から容易に抜き取ることができる。したがって、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。また、排水管の更新も容易となる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(b)において、横開口部の外周面に形成されるストッパを有する鞘管を含む基礎貫通用継手を用意し、ステップ(c)において、ボイド孔の縁にストッパが当接する位置まで横開口部を嵌め込むことによって、鞘管を位置決めする。
第2の発明では、ステップ(b)で用意する基礎貫通用継手の鞘管は、横開口部の外周面に形成されるストッパを有するものである。そして、ステップ(c)で立上り基礎のボイド孔に対して鞘管の横開口部を嵌め込む際には、ボイド孔の縁にストッパが当接する位置まで横開口部を嵌め込むことによって、鞘管を位置決めする。
第2の発明によれば、ボイド孔の縁とストッパとを当接させることで、鞘管を容易に位置決めすることができる。
第3の発明は、エルボ状の内管とエルボ状の鞘管とを備え、建物の立上り基礎を貫通する排水管の施工に用いられる基礎貫通用継手であって、内管は、鞘管内に配管される排水管を構成する可撓性を有さない硬質管であって、エルボ部、およびエルボ部の下流側に設けられ、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備え、鞘管は、横向きに開口し、立上り基礎に形成されたボイド孔に嵌め込まれる横開口部、横開口部の上流側に設けられ、当該横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部、湾曲部の上流側に設けられて上向きに開口する上開口部、および横開口部の外周面に形成されるストッパを備え、エルボ部と横管部とは、内管を鞘管内に差し入れる前に接合されて一体化されており、上開口部は、エルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を抜き差し可能な大きさを有する、基礎貫通用継手である。
第3の発明では、基礎貫通用継手は、エルボ状の内管とエルボ状の鞘管とを含み、建物の立上り基礎を貫通する排水管の施工に用いられる。内管は、鞘管内に配管される排水管を構成する可撓性を有さない硬質管であって、エルボ部と、エルボ部の下流側に設けられ、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備える。一方、鞘管は、横向きに開口する横開口部と、横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部と、上向きに開口する上開口部とを備える。また、横開口部の外周面には、ストッパが形成される。また、内管のエルボ部と横管部とは、内管を鞘管内に差し入れる前に接合されて一体化されており、鞘管の上開口部は、エルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を抜き差し可能な大きさを有する。立上り基礎を貫通する排水管の施工時において、鞘管を設置する際には、ボイド孔の縁と鞘管のストッパとが当接するまで、横開口部がボイド孔に嵌め込まれる。
第3の発明によれば、ボイド孔の縁とストッパとを当接させることで、鞘管を容易に位置決めすることができる。
また、第3の発明によれば、鞘管内に挿通されるエルボ状の内管は、立上り基礎の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備えており、鞘管の上開口部の大きさは、このエルボ状の内管を分割等することなくそのまま抜き差し可能な大きさとされる。このため、排水管を施工する際には、内管と屋内側配管および屋外側配管との接続を含む排水管の接続作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能となる。また、排水管を更新する際には、排水管の切断作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能であり、鞘管内に残る排水管も上開口部から容易に抜き取ることができる。したがって、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。また、排水管の更新も容易となる。
第4の発明は、第3の発明に従属し、鞘管の下面に設けられ、土面上に載置するための脚部をさらに備える。
第4の発明では、鞘管の下面には、脚部が設けられる。脚部は、鞘管を設置する際に、土面上に載置されることによって鞘管を支持して、鞘管の転倒を防止する。したがって、より安定的に鞘管を仮固定できる。
第5の発明は、第3または第4の発明に従属し、ストッパの基礎当接面から横開口部の先端までの長さは、立上り基礎の厚みよりも小さい。
第5の発明では、ストッパの基礎当接面から横開口部の先端までの長さは、立上り基礎の厚みよりも小さく設定される。すなわち、鞘管の横開口部は、ボイド孔の軸方向全長に亘って嵌め込まれのではなく、ボイド孔の屋内側部分にのみ嵌め込まれる。
第5の発明によれば、鞘管の小型化を図ることができ、部材コストを低減できる。
第6の発明は、第3ないし第5のいずれかの発明に従属し、ストッパは、横開口部の周方向全長に亘って基礎当接面を有する。
第6の発明では、ストッパは、横開口部の周方向全長に亘って基礎当接面を有する。つまり、ストッパの基礎当接面は、ボイド孔の縁の周方向全長に当接される。
第6の発明によれば、土間コンクリートを打設する際に、埋め戻し用の土または生コンクリートが、横開口部の外周面とボイド孔の内周面との間の隙間に侵入(流出)することが防止される。
この発明によれば、ボイド孔を有する立上り基礎を打設した後に鞘管を埋設固定するという、従来のべた基礎用の鞘管工法とは全く異なる、立上り基礎を貫通する排水管を施工するのに適した新規な管路施工方法が提供される。
また、この発明によれば、鞘管を設置する際には、立上り基礎のボイド孔に鞘管の横開口部を嵌め込むので、鞘管を安定的に仮固定できる。したがって、鞘管の設置が容易となり、延いては立上り基礎を貫通する排水管の施工が容易となる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1および図2を参照して、この発明の一実施例である基礎貫通用継手(以下、単に「継手」という。)10は、建物の布基礎100の立上り基礎(立上り部)102を貫通する排水管を施工するために用いられる。この継手10は、内管12と鞘管14とを備える二重管構造を有している。鞘管14は、布基礎100の屋外側と屋内側とを連通する貫通路、つまり立上り基礎102の屋外側の側面から土間コンクリート124の上面まで延びる貫通路の一部を構成する。また、内管12は、排水管の一部を構成する管であって、鞘管14(貫通路)内に挿通されて、屋内側配管110と屋外側配管112とを連結する。
布基礎100は、立上り基礎102とその下端に設けられるフーチング104とを備え、逆T字形の断面形状を有する。また、立上り基礎102には、布基礎100の打設時においてボイド孔106が予め形成される。ボイド孔106は、排水管の外径よりも若干大きく、鞘管14の横開口部30の外径と略同じ大きさの内径を有する断面円形の貫通孔であって、二重管継手10の鞘管14と共に上記貫通路を構成する。
なお、立上り基礎102の厚みは、一般的には150〜170mmに設定されるが、この実施例では、最も厚い部類に入る195mmを想定している。また、施工する排水管は、内径100mmの合成樹脂管を想定している。後述する継手10の各部の寸法は、これらに合わせて設定された寸法である。
先ず、継手10の構成について具体的に説明する。継手10は、上述のように、内管12と鞘管14とを備える。
図3に示すように、内管12は、可撓性を有さないエルボ状の硬質管であって、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。内管12は、エルボ部20とその下流側に設けられる横管部22とを備え、横方向に長い略L字状に形成される。エルボ部20は、その一端から他端にかけて90°の角度で湾曲する曲管状の部分である。また、横管部22は、エルボ部20の下流側端部から横方向に延びる直管状の部分である。この実施例では、両端部に受口を有する汎用の90°エルボの下流側受口に対して、汎用の直管(プレーン管)を接着接合することによって、内管12が形成される。すなわち、内管12の上流側端部(曲管部20側の先端部)には、屋内側配管110と接続される受口24が上向きに形成され、内管12の下流側端部(横管部22側の先端部)には、屋外側配管112と接続される差口26が横向きに形成される。
横管部22の軸方向長さL1は、立上り基礎102の厚みよりも大きく設定され、後述のように、排水管を施工する際、鞘管14内で内管12を立上り基礎102側に寄せたときに、横管部22の先端部分(差口26)が立上り基礎102から屋外に突出する長さとされる(図8(D)参照)。具体的には、横管部22の軸方向長さL1は、たとえば300mmであり、横管部22の先端部分が立上り基礎102から屋外に突出する長さは、横管部22の先端部分に対する屋外側配管112の接続作業が可能なように、たとえば50mmとされる。
また、横管部22の軸方向における内管12の全体長さL2は、たとえば424mmである。また、エルボ部20の外径、つまり横管部22の軸方向と直交する方向における内管12の最大幅は、たとえば125mmである。
なお、この実施例では、鞘管14内に内管12を挿通(配置)したとき、内管12のエルボ部20の端面が、後述する鞘管14の上開口部34の端面34aよりも少し下方に位置するように内管12を形成している(図2参照)。しかし、これに限定されることはなく、エルボ部20の端面と上開口部34の端面34aとは面一になっていてもよいし、内管12のエルボ部20の端面が上開口部34の端面34aよりも上方に位置していてもよい。つまり、鞘管14に対するエルボ部20の上流側端部(受口24)の配置位置は、適宜変更可能である。
図4および図5に示すように、鞘管14は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレンなどの合成樹脂によって形成される。鞘管14は、横開口部30、湾曲部32および上開口部34を備え、全体として90°エルボ状に形成される。横開口部30は、横方向に延びる断面円形の短直管状に形成され、横向きに開口する。横開口部30の内径は、たとえば119mmであり、その外径は、たとえば124mmである。湾曲部32は、横管部30の上流側に設けられ、横管部30の基端部30aから連続して上向きに湾曲する筒状に形成される。また、上開口部34は、湾曲部32の上流側に設けられ、上下方向に延びる短直管状に形成されて、上向きに開口する。
上開口部34は、横開口部30の軸方向において対向配置される半円筒状の側壁と、横開口部30の軸方向と直交する方向において対向配置される平板状の側壁とを有し、小判形状(角丸長方形状)に開口する。この上開口部34の大きさ(開口面積)は、上述のような長い横管部22を有する内管12を、分割等することなくそのまま抜き差し可能な大きさに設定される。ただし、上開口部34の大きさは、部材コストや後述する土間コンクリート124の見た目などを考慮すると、なるべく小さくすることが好ましい。
そこで、この実施例では、横開口部30の軸方向における上開口部34の内径R1は、鞘管14内に内管12を差し入れる際において、内管12の横管部22の先端が横開口部30の基端部30a(湾曲部32から横開口部30への移行部分)に達したときに、内管12のエルボ部20の後端側部分28が上開口部34の端面34aにぎりぎり当たらない程度の大きさに設定される(図7(C)参照)。これにより、上開口部34の大きさを抑えつつ、内管12を上開口部34からそのまま抜き差しできる。また、鞘管14内に内管12を配置した際には、内管12は、横管部22の軸方向に沿って移動可能となる。つまり、排水管の配管可動域が存在するようになる。上開口部34の内径R1は、たとえば355mmである。
また、横開口部30の軸方向と直交する方向における上開口部34の内径R2は、内管12のエルボ部20の外径と同じまたは略同じ大きさに設定される。これにより、上開口部34の大きさが抑えられる。また、鞘管14内に内管12を挿通した際には、内管12は、鞘管14の平板状の側壁に支えられて、横開口部30の軸方向と直交する方向に倒れ難くなる。上開口部34の内径R2は、たとえば125mmである。
また、湾曲部32の外面には、脚部36が設けられる。脚部36は、矩形板状に形成され、湾曲部32の下面から横開口部30の軸方向と直交する方向に突出する。脚部36は、鞘管14を設置する際には、直接または防湿シート122を介して土面上に載置されることによって鞘管14を支持し、鞘管14の転倒を防止する。また、土間コンクリート124を打設する際には、生コンクリートの浮力による鞘管14の浮きを防止する。このような脚部36を備えることによって、後述のように鞘管14を埋設固定する際に、鞘管14をより安定的に仮固定できる。
さらに、図6からよく分かるように、横開口部30の外周面には、鍔状のストッパ38が設けられる。ストッパ38は、横開口部30の外周面から段差状に突き出す突起であって、横開口部30の周方向全長に亘って延びる。このストッパ38は、ボイド孔106の縁に当接される基礎当接面38aを有する。後述のように、横開口部30をボイド孔106に嵌め込んで鞘管14を設置する際には、ボイド孔106の縁と基礎当接面38aとが当接することによって、鞘管14が位置決めされる。また、基礎当接面38aをボイド孔106の縁の周方向全長に当接させることによって、土間コンクリート124を打設する際に、埋め戻し用の土または生コンクリートが、横開口部30外周面とボイド孔106内周面との間の隙間に侵入(流出)することが防止される。
また、基礎当接面38aから横開口部30の先端までの長さは、立上り基礎102の厚み、つまりボイド孔106の軸方向長さよりも小さく設定され、たとえば30mmに設定される。すなわち、鞘管14の横開口部30は、ボイド孔106の軸方向全長に亘って嵌め込まれるわけではない。これによって、鞘管14の小型化を図ることができ、部材コストを低減できる。ただし、基礎当接面38aから横開口部30の先端までの長さは、立上り基礎102の厚みと同じ、或いはそれより大きく設定することも可能である。
続いて、図7および図8を参照して、継手10を用いて建物の立上り基礎102を貫通する排水管を施工する管路施工方法の一例について説明する。
この管路施工方法では、先ず、図7(A)に示すように、布基礎100(立上り基礎102およびフーチング104)を打設する。具体的には、布基礎100を打設するための基礎型枠を形成し、基礎型枠内に鉄筋を配置する。また、排水管の配管位置には、立上り基礎102の下部を厚み方向に貫通するように、円筒状のボイド管を配置しておく。そして、基礎型枠内に生コンクリートを流し込み、所定時間養生してコンクリートが固化した後、基礎型枠およびボイド管を除去する。これによって、ボイド孔106を有する立上り基礎102とフーチング104とを備える布基礎100が打設される。ただし、ボイド管は、立上り基礎102に埋め殺しされるものであってもよい。また、ボイド孔106の屋内側には、鞘管14を設置するための空間を設けると共に、屋内側の土120の上には、防湿シート122を設置しておく。なお、防湿シート122は、鞘管14を載置する部分を切り欠いておくこともできる。
布基礎100を打設すると、次に、図7(B)に示すように、ボイド孔106の屋内側端部に鞘管14の横開口部30を嵌め込んで、鞘管14を設置する。この際には、鞘管14の脚部36が直接または防湿シート122を介して土面上に載置されると共に、ボイド孔106の縁と鞘管14のストッパ38の基礎当接面38aとが当接するまで横開口部30がボイド孔106に嵌め込まれる。ボイド孔106に横開口部30を嵌め込むことで、鞘管14の動きが規制され、鞘管14が安定的に仮固定される。また、脚部36が土面上に載置されることで、横開口部30の軸方向周りの鞘管14の回転が確実に防止され、鞘管14がより安定的に仮固定される。さらに、ボイド孔106の縁と基礎当接面38aとが当接することで、鞘管14が容易に位置決めされる。
その後、鞘管14の周囲の空間を土で埋め戻した後、或いはそのまま、鞘管14の上開口部34の周囲を覆うように土間コンクリート124を打設して、鞘管14を埋設固定する。この際、生コンクリートの浮力による鞘管14の浮きが脚部36によって防止される。また、埋め戻し用の土または生コンクリートが横開口部30外周面とボイド孔106内周面との間の隙間に侵入(流出)してしまうことが、ストッパ38によって防止される。
以上の作業により、立上り基礎102の屋外側の側面から土間コンクリート124の上面までを連通させる貫通路(配管通路)が、鞘管14およびボイド孔106によって形成される。
鞘管14を埋設固定すると、次に、図7(C)に示すように、鞘管14内に内管12を差し入れる。具体的には、先ず、鞘管14(貫通路)の外部において、内管12の受口24に対して屋内側配管(配管部材)110を接着接合し、その後、上開口部34から鞘管14内に内管12を斜め方向に差し込む。そして、内管12の横管部22の先端が横開口部30の基端部30aに達したときに、横管部22の先端を支点として内管12を鞘管14内に回し入れる。
続いて、図8(D)に示すように、内管12を立上り基礎102側に寄せて、内管12の横管部22の先端部分(差口26)を屋外に突出させる。そして、図8(E)に示すように、貫通路の外部において、ソケット114を介して横管部22の差口26に対して屋外側配管(配管部材)112を接着接合する。
次に、図8(F)に示すように、所望する屋内側配管110の配管位置に合わせて、接続した屋外側配管112と共に内管12を移動させて、横開口部30の軸方向における内管12の配置位置を調整する。その後、ボイド孔106の屋外側開口縁にシリコンシーラントなどのコーキング108を施し、屋外側配管112の外周面とボイド孔106の内周面との間の隙間を塞ぐ。なお、図示は省略するが、鞘管14の上開口部34には、その上端開口を封止する蓋を適宜設けておくとよい。また、内管12と鞘管14との間の隙間をスポンジ等で埋めてもよい。
最後に、屋外側配管112の周囲を土等で埋め戻すことによって、立上り基礎102を貫通する排水管の施工が終了し、図1に示すような基礎貫通配管構造が形成される。
続いて、図9を参照して、上記のように継手10を用いて施工された排水管を更新する管路更新方法の一例について説明する。
老朽化等により排水管を更新する必要が生じた場合には、先ず、図9(A)に示すように、排水管の屋内側配管110を鞘管14の外部で切断する。なお、図9(A)では、鞘管14の上開口部34の端面34a近傍で屋内側配管110を切断するようにしているが、この切断位置は、もっと上の方であってもよい。
次に、図9(B)に示すように、鞘管14内の排水管を立上り基礎102側に寄せる。そして、立上り基礎102(ボイド孔106)から屋外に突出する排水管を、立上り基礎102の屋外側の側面近傍で切断する。この際には、ソケット114の上流端よりも立上り基礎102側の位置において排水管を切断するようにする。これにより、鞘管14(貫通路)内に残る排水管の全体長さは、内管12の全体長さL2以下の長さとなる。
続いて、図9(C)に示すように、鞘管14内に残る排水管を上開口部34から抜き取る。上述のように、鞘管14内に残る排水管の全体長さは、内管12の全体長さL2以下の長さとなっているので、鞘管14内でそれ以上切断することなく、排水管を上開口部34からそのまま抜き取ることができる。
その後、図7(B)〜図8(F)に示した方法と同様にして、新規の排水管を鞘管14(貫通路)内に挿通して設置することによって、排水管の更新が完了する。
以上のように、この実施例によれば、ボイド孔106を有する立上り基礎102を打設した後に鞘管14を埋設固定するという、従来のべた基礎用の鞘管工法とは全く異なる、立上り基礎102を貫通する排水管を施工するのに適した新規な管路施工方法およびそれに用いる継手10が提供される。
また、鞘管14を設置する際には、立上り基礎102のボイド孔106に鞘管14の横開口部30を嵌め込むので、鞘管14の動きが規制されて、鞘管14を安定的に仮固定できる。したがって、鞘管14の設置が容易となり、延いては立上り基礎102を貫通する排水管の施工が容易となる。
さらに、ボイド孔106の縁と基礎当接面38aとを当接させることで、鞘管14を容易に位置決めすることができる。
また、この実施例によれば、継手10は、内管12が立上り基礎102の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部22を備え、鞘管14の上開口部34は、その内管12を抜き差し可能な大きさを有する。このため、排水管を施工する際には、内管12と屋内側配管110および屋外側配管112との接続を含む排水管の接続作業を全て、鞘管14(貫通路)の外部で行うことが可能となる。したがって、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。
また、排水管を更新する際には、排水管の切断作業を全て、鞘管14(貫通路)の外部で行うことが可能であり、鞘管14内に残る排水管も上開口部34から容易に抜き取ることができる。したがって、排水管の更新も容易であり、土間コンクリート124を破壊する必要もなく、誤って鞘管14等を傷付けてしまう恐れもない。
さらに、埋設設置した鞘管14内に内管12を配置した後でも、横管部22の軸方向に沿って内管12を自由に移動させることができる、つまり内管12の配置位置を調整可能なので、排水管を施工し易い。
さらにまた、内管12は、汎用の90°エルボや直管などを利用して製作でき、専用部材としては鞘管14を製作するだけでよい。したがって、継手10の製作コストを低減できる。また、鞘管14の寸法は、立上り基礎102の厚みとして最も厚い部類に入る195mmを想定して設定しているので、それよりも厚みの小さい立上り基礎102に対しても鞘管14を使用でき、部材コストをより低減できる。
なお、上述の実施例では、汎用の90°エルボに汎用の直管を接着接合することによって内管12を形成したが、これに限定されない。たとえば、内管12は、部材を接続するのではなく予め一体成形されるものであってもよいし、汎用の90°エルボに汎用の直管をゴム輪接合して形成されるものであってもよい。ただし、専用部品を少なくしてコストを低減するという観点および止水性の観点からは、汎用部材を接着接合して内管12を形成することが好ましい。
また、上述の実施例では、内管12の上流側端部を受口24とし、下流側端部を差口26としたが、内管12の両端部は、受口および差口のいずれでも構わない。また、内管12の両端部は、接着接合されるものではなく、ゴム輪接合されるものであってもよい。
さらに、上述の実施例では、内管12のエルボ部20を90°の角度で湾曲させるようにしたが、エルボ部20は、たとえば45°や60°の角度で湾曲するものであってもよい。
さらにまた、上述の実施例では、鞘管14内に内管12を差し入れる際、予め内管12の受口24に対して屋内側配管110の配管部材(縦管)を接続しておくようにしたが、これを限定されない。たとえば、鞘管14内に内管12を差し入れ、内管12の下流側端部の差口26に屋外側配管112を接続した後、内管12の受口24に対して屋内側配管110の配管部材を接続してもよい。この場合には、鞘管14に対するエルボ部20の上流側端部(受口24)の配置位置によっては、鞘管14内での接続となる場合があるが、鞘管14の上開口部34の開口端近傍での接続となるため、貫通路の中央部における接続と比較して、容易かつ適切に実行できる。
また、上述の実施例では、内管12の受口24に屋内側配管110として縦管を接続しているが、これに限定されない。内管12の受口24には、たとえば、曲管が接続されてもよいし、直接または接続管を介して、合流桝や旋回桝などの桝が接続されてもよい。
さらに、上述の実施例では、鞘管14の上開口部34を小判形状(角丸長方形状)に開口させるようにしたが、上開口部34は、馬蹄形、楕円形および円形に開口させてもよい。ただし、上開口部34を馬蹄形などに形成して上開口部34の側壁に角部を設けると、角部に応力が集中して破損の原因となるため、上開口部34には角部は設けないことが好ましい。
さらに、上述の実施例では、内管12を分割等することなくそのまま抜き差し可能な大きさに鞘管14の上開口部34の大きさを設定したが、これに限定されない。ただし、上開口部34の大きさを小さくする場合には、排水管の施工時に鞘管14内で排水管(内管12)を接続したり、排水管の更新時に鞘管14内で排水管を切断したりする必要が生じる。
また、上述の実施例では、鞘管14の湾曲部32を比較的緩やかに上向きに湾曲させているが、図10に示すように、湾曲部32は、横開口部30の基端部から略垂直方向に立ち上がるように湾曲させてもよい。これによって、上開口部34を横開口部30側、つまり立上り基礎104のより近傍に寄せて配置することが可能となるので、立上り基礎104の屋内側の壁面に沿わせて屋内側配管110を配管し易くなる。
さらに、上述の実施例では、横開口部30の周方向全長に亘って延びるようにストッパ38を形成したが、ストッパ38は、必ずしも周方向全長に形成される必要はなく、周方向に間欠的に形成されていてもよい。言い換えると、ストッパ38の基礎当接面38aは、必ずしも周方向全長に亘ってボイド孔106の縁と当接する必要はない。
さらに、上述の実施例では、立上り基礎102に断面円形のボイド孔106を形成し、このボイド孔106に鞘管14の横開口部30を嵌め込むようにしたが、ボイド孔106の断面形状は特に限定されない。ボイド孔106は、たとえば、断面矩形や断面馬蹄形(アーチ形)の貫通孔であってもよい。この場合には、ボイド孔106の形状に合わせて横開口部30の外形が変更される。
たとえばボイド孔106を断面馬蹄形に形成する場合には、図11に示すように、鞘管14の横開口部30の挿入部40は、ボイド孔106の断面形状に合わせて、馬蹄形の外形を有するように形成される。ボイド孔106に横開口部30の挿入部40を嵌め込むと、挿入部40の下面が平面状に形成されていることから、横開口部30の軸方向周りの鞘管14の回転が確実に防止され、鞘管14がより安定的に仮固定される。なお、この場合には、ストッパ38の基礎当接面38aは、その略上半分においてボイド孔106の縁と当接する。
また、ボイド孔106は、たとえば、鞘管14の挿入部40が挿入される屋内側部分のみを断面馬蹄形とし、それ以外の屋外側部分は断面円形とすることもできる。この場合には、鞘管14のストッパ38は必ずしも設ける必要はなく、鞘管14の挿入部40の端面と、ボイド孔106の馬蹄形部分の奥側の縁とを当接させることによって、鞘管14を位置決めするとよい。つまり、鞘管14の挿入部40の端面を、横開口部30の周方向全長に亘る基礎当接面(ストッパ)として機能させることもできる。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。