特許文献1の技術では、鞘管内に排水管を挿通して設置するとき、鞘管の横鞘管部内、つまりべた基礎を貫通する貫通路の中央部において、90°エルボ継手の下部接続口と下流側の横排水管とを接着接合する。しかし、狭小で目視も困難な鞘管(貫通路)の内部で排水管(内管)の接着接合を適切に行うことは困難である。このため、接合不良が発生して、施工した排水管の止水性に問題が生じる恐れがあり、また、接合部分から接着剤がはみ出して鞘管と内管とが固着してしまう等の不具合が生じる恐れもある。
また、特許文献1の技術では、排水管の更新を行うときには、バール等の工具を鞘管内の隙間に差し込んで、鞘管内で90°エルボ継手の破壊等を行う。しかし、狭小な鞘管内で工具を用いて90°エルボ継手を破壊等することは困難である。また、90°エルボ継手を破壊等するときに、鞘管を傷つけてしまう恐れもある。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、基礎貫通用二重管継手、それを用いる管路施工方法および管路更新方法を提供することである。
この発明の他の目的は、施工性に優れ、排水管の更新も容易である、基礎貫通用二重管継手、それを用いる管路施工方法および管路更新方法を提供することである。
第1の発明は、内管と鞘管とを有し、建物の基礎を貫通する排水管を施工するための基礎貫通用二重管継手であって、内管は、所定角度で湾曲するエルボ部、およびエルボ部の下流側に設けられ、基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備え、鞘管は、横向きに開口する横開口部、横開口部の上流側に設けられ、当該横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部、および湾曲部の上流側に設けられ、上向きに開口するかつ内管を抜き差し可能な大きさを有する上開口部を備え、エルボ部と横管部とは、内管を鞘管内に差し入れる前に接合されて一体化されており、横管部の軸方向長さは、内管を鞘管内に差し入れて基礎の立上り部側に寄せたとき、当該横管部の先端部分が屋外側配管と接続可能な突出長さで屋外に突出する長さであり、鞘管は、エルボ部と横管部とが一体化された状態の内管を上開口部から抜き差し可能である、基礎貫通用二重管継手である。
第1の発明では、基礎貫通用二重管継手は、内管と鞘管とを備え、建物の基礎を貫通する排水管を施工するために用いられる。内管は、所定角度で湾曲するエルボ部と、基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備える。また、鞘管は、横向きに開口する横開口部と、横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部と、上向きに開口するかつ内管を抜き差し可能な大きさを有する上開口部とを備える。
上記のように、この基礎貫通用二重管継手は、内管が基礎の立上り部(立上り基礎)の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備え、その内管を抜き差し可能な大きさに鞘管の上開口部が形成される。このため、排水管を施工する際には、内管と屋内側配管および屋外側配管との接続を含む排水管の接続作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能となる。また、排水管を更新する際には、排水管の切断作業を全て、鞘管の外部で行うことが可能であり、鞘管内に残る排水管も上開口部から容易に抜き取ることができる。
第1の発明によれば、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。また、排水管の更新も容易となる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、横開口部の軸方向における上開口部の内径は、鞘管内に内管を差し入れる際において、横管部の先端が横開口部の基端部に達したときにエルボ部の後端側部分が上開口部の端面に当たらない大きさに設定される。
第2の発明では、鞘管の上開口部の横開口部軸方向における内径は、排水管の配管時に内管を鞘管内に差し入れる際において、内管の横管部の先端が横開口部の基端部に達したときに、内管のエルボ部の後端側部分が上開口部の端面に対してたとえばぎりぎり当たらない程度の大きさに設定される(図7(B)参照)。
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、横開口部の軸方向と直交する方向における上開口部の内径は、エルボ部の外径と同じまたは略同じ大きさに設定される。
第3の発明では、鞘管の上開口部の横開口部軸方向と直交する方向における内径は、内管のエルボ部の外径と同じまたは略同じ大きさに設定される。これにより、上開口部の大きさ(開口面積)が抑えられる。また、鞘管内に内管を配置した際には、内管は、鞘管の側壁に支えられて、横開口部の軸方向と直交する方向に倒れ難くなる。
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、湾曲部の外面に設けられる固定用の脚部をさらに備える。
第4の発明では、鞘管の湾曲部には、外方に突出する固定用の脚部が設けられる。脚部は、鞘管を設置する際に、土面上に載置されたり、鉄筋と連結されたりすることによって、鞘管を仮固定する。また、土間コンクリートを打設する際などに、生コンクリートの浮力による鞘管の浮きを防止する。
第4の発明によれば、鞘管を埋設固定する際に、鞘管を安定的に仮固定できる。
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、基礎は布基礎である。
第5の発明では、基礎貫通用二重管継手は、建物の布基礎の立上り部を貫通する排水管を施工するために用いられる。
第6の発明は、基礎貫通用二重管継手を用いて、建物の基礎を貫通する排水管を施工する管路施工方法であって、基礎貫通用二重管継手は、内管と鞘管とを有し、内管は、所定角度で湾曲するエルボ部と、エルボ部の下流側に設けられ、基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備え、鞘管は、横向きに開口する横開口部と、横開口部の上流側に設けられ、当該横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部と、湾曲部の上流側に設けられ、上向きに開口するかつ内管を抜き差し可能な大きさを有する上開口部とを備えるものであり、(a)基礎を打設すると共に、横開口部が屋外と連通しかつ上開口部が屋内と連通するように鞘管を所定位置に埋設固定するステップ、(b)上開口部から鞘管内に内管を差し入れるステップ、および(c)内管を基礎の立上り部側に寄せて当該内管の横管部の先端部分を屋外に突出させ、横管部の先端部分に屋外側配管を接続するステップを含む、管路施工方法である。
第6の発明では、基礎貫通用二重管継手を用いて建物の基礎を貫通する排水管を施工する。この基礎貫通用二重管継手は、布基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備える内管と、その内管を抜き差し可能な大きさに形成される上開口部を備える鞘管とを含むものである。この管路施工方法では、先ず、ステップ(a)において、布基礎やべた基礎などのコンクリート基礎を打設すると共に、鞘管の横開口部が屋外と連通しかつ上開口部が屋内と連通するように鞘管を所定位置に埋設固定して、屋内と屋外とを貫通する貫通路(配管通路)を形成する。また、ステップ(b)において、上開口部から鞘管内に内管を差し入れる。そして、ステップ(c)において、内管を基礎の立上り部側に寄せて、内管の横管部の先端部分を屋外に突出させた状態とし、その状態で横管部の先端部分に屋外側配管を接続する。なお、内管の上流側端部(エルボ部の先端部分)に屋内側配管を接続するのは、鞘管内に内管を差し入れる前および後のいずれであってもよい。
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。
第7の発明は、第6の発明に従属し、ステップ(c)の後、接続した屋外側配管と共に内管を移動させて、横開口部の軸方向における当該内管の配置位置を調整するステップをさらに含む。
第7の発明では、ステップ(d)において、ステップ(c)で接続した屋外側配管と共に内管を移動させて、横開口部の軸方向における内管の配置位置を調整する。
第7の発明によれば、埋設設置した鞘管内に内管を配置した後でも、内管の配置位置を調整可能なので、排水管を施工し易い。
第8の発明は、基礎貫通用二重管継手を用いて施工された排水管を更新する管路更新方法であって、記基礎貫通用二重管継手は、内管と鞘管とを有し、内管は、所定角度で湾曲するエルボ部と、エルボ部の下流側に設けられ、基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部とを備え、記鞘管は、横向きに開口する横開口部と、横開口部の上流側に設けられ、当該横開口部の基端部から上向きに湾曲する湾曲部と、湾曲部の上流側に設けられ、上向きに開口するかつ内管を抜き差し可能な大きさを有する上開口部とを備えるものであり、(a)排水管の屋内側配管を鞘管外部で切断するステップ、(b)ステップ(a)の後、鞘管内の排水管を基礎の立上り部側に寄せ、立上り部から屋外に突出する排水管を当該立上り部の屋外側近傍で切断するステップ、(c)鞘管内に残る排水管を当該鞘管の上開口部から抜き取るステップ、および(d)鞘管内に新規の排水管を挿通して設置するステップを含む、管路更新方法である。
第8の発明では、基礎貫通用二重管継手を用いて施工された排水管を更新する。この基礎貫通用二重管継手は、布基礎の立上り部の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部を備える内管と、その内管を抜き差し可能な大きさに形成される上開口部を備える鞘管とを含むものである。この管路構成方法では、先ず、ステップ(a)において、排水管の屋内側配管を鞘管外部で切断する。また、ステップ(b)において、鞘管内の排水管を基礎の立上り部側、つまり鞘管の横開口部側に寄せる。そして、立上り部から屋外に突出する排水管を立上り部の屋外側の側面近傍で切断する。その後、ステップ(c)において、鞘管内に残る排水管を鞘管の上開口部から抜き取った後、ステップ(d)において、鞘管内に新規の排水管を挿通して設置する。
第8の発明によれば、排水管の切断作業を全て鞘管の外部で行い、また、鞘管内に残る排水管も上開口部から抜き取るだけなので、排水管の更新が容易である。
この発明によれば、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。また、排水管の更新も容易となる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1および図2を参照して、この発明の一実施例である基礎貫通用二重管継手(以下、単に「二重管継手」という。)10は、布基礎やべた基礎などのコンクリート基礎を貫通する排水管を施工するために用いられる。この二重管継手10は、内管12と鞘管14とを備える二重管構造を有している。鞘管14は、コンクリート基礎の屋内側と屋外側とを連通する貫通路(この実施例では貫通路の一部)を構成する。また、内管12は、排水管の一部を構成する管であって、鞘管14(貫通路)内に挿通されて、屋内側配管110と屋外側配管112とを連結する。
この実施例では、布基礎100に対して二重管継手10を適用した例を示す。布基礎100は、立上り部(立上り基礎)102とその下端に設けられるフーチング104とを備え、逆T字形の断面形状を有する。また、立上り部102には、布基礎100の打設時においてボイド孔106が予め形成される。ボイド孔106は、排水管の外径よりも若干大きい内径を有する断面円形の貫通孔であって、二重管継手10の鞘管14と共に上記貫通路を構成する。
なお、布基礎100の立上り部102の厚みは、一般的には150〜170mmに設定されるが、この実施例では、最も厚い部類に入る195mmを想定している。また、施工する排水管は、内径100mmの合成樹脂管を想定している。後述する二重管継手10の各部の寸法は、これらに合わせて設定された寸法である。
以下、二重管継手10の構成について具体的に説明する。二重管継手10は、上述のように、内管12および鞘管14を備える。
図3に示すように、内管12は、可撓性を有さない硬質管であって、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。内管12は、エルボ部20とその下流側に設けられる横管部22とを備え、横方向に長い略L字状に形成される。エルボ部20は、その一端から他端にかけて90°の角度で湾曲する曲管状の部分である。また、横管部22は、エルボ部20の下流側端部から横方向に延びる直管状の部分である。この実施例では、両端部に受口を有する汎用の90°エルボの下流側受口に対して、汎用の直管(プレーン管)を接着接合することによって、内管12が形成される。すなわち、内管12の上流側端部(曲管部20側の先端部)には、屋内側配管110と接続される受口24が上向きに形成され、内管12の下流側端部(横管部22側の先端部)には、屋外側配管112と接続される差口26が横向きに形成される。
横管部22の軸方向長さL1は、布基礎100の立上り部102の厚みよりも大きく設定され、後述のように、排水管を施工する際、鞘管14内で内管12を布基礎100の立上り部102側に寄せたときに、横管部22の先端部分(差口26)が立上り部102から屋外に突出する長さとされる(図8(D)参照)。具体的には、横管部22の軸方向長さL1は、たとえば300mmであり、横管部22の先端部分が立上り部102から屋外に突出する長さは、横管部22の先端部分に対する屋外側配管112の接続作業が可能なように、たとえば50mmとされる。
また、横管部22の軸方向における内管12の全体長さL2は、たとえば424mmである。また、エルボ部20の外径、つまり横管部22の軸方向と直交する方向における内管12の最大幅は、たとえば125mmである。
なお、この実施例では、鞘管14内に内管12を挿通したとき、内管12のエルボ部20の端面が、後述する鞘管14の上開口部34の端面34aよりも少し下方に位置するように内管12を形成している(図2参照)。しかし、これに限定されることはなく、エルボ部20の端面と上開口部34の端面34aとは面一になっていてもよいし、内管12のエルボ部20の端面が上開口部34の端面34aよりも上方に位置していてもよい。つまり、鞘管14に対するエルボ部20の上流側端部(受口24)の配置位置は、適宜変更可能である。
図4および図5に示すように、鞘管14は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレンなどの合成樹脂によって形成される。鞘管14は、横開口部30、湾曲部32および上開口部34を備え、全体として90°エルボ状に形成される。横開口部30は、横方向に延びる断面円形の短直管状に形成され、横向きに開口する。横開口部30の内径は、たとえば119mmである。湾曲部32は、横管部30の上流側に設けられ、横管部30の基端部30aから連続して上向きに湾曲する筒状に形成される。また、上開口部34は、湾曲部32の上流側に設けられ、上下方向に延びる短直管状に形成されて、上向きに開口する。
上開口部34は、横開口部30の軸方向において対向配置される半円筒状の側壁と、横開口部30の軸方向と直交する方向において対向配置される平板状の側壁とを有し、小判形状(角丸長方形状)に開口する。この上開口部34の大きさ(開口面積)は、上述のように長い横管部22を有する内管12を、分割等することなくそのまま抜き差し可能な大きさに設定される。上開口部34の大きさは、内管12をそのまま抜き差し可能な大きさであれば特に限定されないが、部材コストや後述する土間コンクリート124の見た目などを考慮すると、なるべく小さくすることが好ましい。
そこで、この実施例では、横開口部30の軸方向における上開口部34の内径R1は、鞘管14内に内管12を差し入れる際において、内管12の横管部22の先端が横開口部30の基端部30a(湾曲部32から横開口部30への移行部分)に達したときに、内管12のエルボ部20の後端側部分28が上開口部34の端面34aにぎりぎり当たらない程度の大きさに設定される(図7(B)参照)。これにより、上開口部34の大きさが抑えられる。また、鞘管14内に内管12を配置した際には、内管12は、横管部22の軸方向に沿って移動可能となる。つまり、排水管の配管可動域が存在するようになる。上開口部34の内径R1は、たとえば355mmである。
また、横開口部30の軸方向と直交する方向における上開口部34の内径R2は、内管12のエルボ部20の外径と同じまたは略同じ大きさに設定される。これにより、上開口部34の大きさが抑えられる。また、鞘管14内に内管12を挿通した際には、内管12は、鞘管14の平板状の側壁に支えられて、横開口部30の軸方向と直交する方向に倒れ難くなる。上開口部34の内径R2は、たとえば125mmである。
また、湾曲部32の外面には、固定用の脚部36が設けられる。脚部36は、矩形板状に形成され、湾曲部32の下面から横開口部30の軸方向と直交する方向に突出する。脚部36は、鞘管14を設置する際には、直接または防湿シート122を介して土面上に載置されることで鞘管14の転倒を防止すると共に、土間コンクリート124を打設する際には、生コンクリートの浮力による鞘管14の浮きを防止する。このような脚部36を備えることによって、後述のように鞘管14を埋設固定する際に、鞘管14を安定的に仮固定できる。
さらに、図6からよく分かるように、横開口部30の外周面には、鍔状のストッパ38が設けられる。ストッパ38は、横開口部30の外周面から段差状に突き出す突起であって、横開口部30の周方向全長に亘って延びる。このストッパ38は、ボイド孔106の縁に当接される基礎当接面38aを有する。後述のように、横開口部30をボイド孔106に嵌め込んで鞘管14を設置する際には、ボイド孔106の縁と基礎当接面38aとが当接することによって、鞘管14が位置決めされる。また、基礎当接面38aをボイド孔106の縁の周方向全長に当接させることによって、土間コンクリート124を打設する際に、埋め戻し用の土または生コンクリートが、横開口部30外周面とボイド孔106内周面との間の隙間に侵入(流出)することが防止される。
また、基礎当接面38aから横開口部30の先端までの長さは、布基礎100の立上り部102の厚み、つまりボイド孔106の軸方向長さよりも小さく設定され、たとえば30mmに設定される。すなわち、鞘管14の横開口部30は、ボイド孔106の軸方向全長に亘って嵌め込まれるわけではない。これによって、鞘管14の小型化を図ることができ、部材コストを低減できる。ただし、基礎当接面38aから横開口部30の先端までの長さは、布基礎100の立上り部102の厚みと同じ、或いはそれより大きく設定することも可能である。
続いて、図7および図8を参照して、二重管継手10を用いて建物の布基礎100を貫通する排水管を施工する管路施工方法の一例について説明する。
この管路施工方法では、先ず、図7(A)に示すように、建物の布基礎100を打設すると共に、鞘管14の横開口部30が屋外と連通しかつ上開口部34が屋内と連通するように、鞘管14を所定位置に埋設固定する。
具体的には、先ず、布基礎100を打設するための基礎型枠を形成し、基礎型枠内に鉄筋を配置する。また、排水管の配管位置には、立上り部102の下部を厚み方向に貫通するように、円筒状のボイド管を配置しておく。そして、基礎型枠内に生コンクリートを流し込み、所定時間養生してコンクリートが固化した後、基礎型枠およびボイド管を除去する。これによって、立上り部102にボイド孔106を有する布基礎100が打設される。ただし、ボイド管は、立上り部102に埋め殺しされるものであってもよい。また、ボイド孔106の屋内側には、鞘管14を設置するための空間を設けると共に、屋内側の土120の上には、防湿シート122を設置しておく。なお、防湿シート122は、鞘管14を載置する部分を切り欠いておくこともできる。
そして、ボイド孔106の屋内側端部に鞘管14の横開口部30を嵌め込んで、鞘管14を設置する。この際には、鞘管14の脚部36が直接または防湿シート122を介して土面上に載置されると共に、ボイド孔106の縁と鞘管14の横開口部30の基礎当接面38aとが当接するまで横開口部30がボイド孔106に嵌め込まれる。ボイド孔106に横開口部30を嵌め込むことで、鞘管14が安定的に仮固定される。また、脚部36が土面上に載置されることで、横開口部30の軸方向周りの鞘管14の回転が確実に防止され、鞘管14がより安定的に仮固定される。さらに、ボイド孔106の縁と基礎当接面38aとが当接することで、鞘管14が容易に位置決めされる。
その後、鞘管14の周囲の空間を土で埋め戻した後、或いはそのまま、鞘管14の上開口部34の周囲を覆うように土間コンクリート124を打設して、鞘管14を埋設固定する。この際、生コンクリートの浮力による鞘管14の浮きが脚部36によって防止される。また、埋め戻し用の土または生コンクリートが横開口部30外周面とボイド孔106内周面との間の隙間に侵入(流出)してしまうことが、ストッパ38によって防止される。
以上の作業により、布基礎100の屋内側と屋外側とを連通する貫通路(配管通路)が、鞘管14およびボイド孔106によって形成される。
鞘管14を埋設固定すると、次に、図7(B)および(C)に示すように、鞘管14内に内管12を差し入れる。具体的には、先ず、鞘管14(貫通路)の外部において、内管12の受口24に対して屋内側配管(配管部材)110を接着接合し、その後、上開口部34から鞘管14内に内管12を斜め方向に差し込む。そして、内管12の横管部22の先端が横開口部30の基端部30aに達したときに、横管部22の先端を支点として内管12を鞘管14内に回し入れる。
続いて、図8(D)に示すように、内管12を布基礎100の立上り部102側に寄せて、内管12の横管部22の先端部分(差口26)を屋外に突出させる。そして、図8(E)に示すように、貫通路の外部において、ソケット114を介して横管部22の差口26に対して屋外側配管(配管部材)112を接着接合する。
次に、図8(F)に示すように、所望する屋内側配管110の配管位置に合わせて、接続した屋外側配管112と共に内管12を移動させて、横開口部30の軸方向における内管12の配置位置を調整する。その後、ボイド孔106の屋外側開口縁にシリコンシーラントなどのコーキング108を施し、屋外側配管112の外周面とボイド孔106の内周面との間の隙間を塞ぐ。なお、図示は省略するが、鞘管14の上開口部34には、その上端開口を封止する蓋を適宜設けておくとよい。また、内管12と鞘管14との間の隙間をスポンジ等で埋めてもよい。
最後に、屋外側配管112の周囲を土等で埋め戻すことによって、布基礎100の立上り部102を貫通する排水管の施工が終了し、図1に示すような基礎貫通配管構造が形成される。
続いて、図9を参照して、上記のように二重管継手10を用いて施工された排水管を更新する管路更新方法の一例について説明する。
老朽化等により排水管を更新する必要が生じた場合には、先ず、図9(A)に示すように、排水管の屋内側配管110を鞘管14の外部で切断する。なお、図9(A)では、鞘管14の上開口部34の端面34a近傍で屋内側配管110を切断するようにしているが、この切断位置は、もっと上の方であってもよい。
次に、図9(B)に示すように、鞘管14内の排水管を布基礎100の立上り部102側に寄せる。そして、立上り部102(ボイド孔106)から屋外に突出する排水管を、立上り部102の屋外側の側面近傍で切断する。この際には、ソケット114の上流端よりも立上り部102側の位置において排水管を切断するようにする。これにより、鞘管14(貫通路)内に残る排水管の全体長さは、内管12の全体長さL2以下の長さとなる。
続いて、図9(C)に示すように、鞘管14内に残る排水管を上開口部34から抜き取る。上述のように、鞘管14内に残る排水管の全体長さは、内管12の全体長さL2以下の長さとなっているので、鞘管14内でそれ以上切断することなく、排水管を上開口部34からそのまま抜き取ることができる。
その後、図7(B)〜図8(F)に示した方法と同様にして、新規の排水管を鞘管14(貫通路)内に挿通して設置することによって、排水管の更新が完了する。
以上のように、この実施例によれば、内管12が布基礎100の立上り部102の厚みよりも大きい軸方向長さを有する横管部22を備え、鞘管14の上開口部34は、その内管12を抜き差し可能な大きさを有する。このため、排水管を施工する際には、内管12と屋内側配管110および屋外側配管112との接続を含む排水管の接続作業を全て、鞘管14(貫通路)の外部で行うことが可能となる。したがって、排水管の接続作業を容易かつ適切に実行でき、配管時の施工性に優れる。
また、排水管を更新する際には、排水管の切断作業を全て、鞘管14(貫通路)の外部で行うことが可能であり、鞘管14内に残る排水管も上開口部34から容易に抜き取ることができる。したがって、排水管の更新も容易であり、誤って鞘管14等を傷付けてしまう恐れもない。
さらに、埋設設置した鞘管14内に内管12を配置した後でも、横管部22の軸方向に沿って内管12を自由に移動させることができる、つまり内管12の配置位置を調整可能なので、排水管を施工し易い。
さらにまた、内管12は、汎用の90°エルボや直管などを利用して製作でき、専用部材としては鞘管14を製作するだけでよい。したがって、二重管継手10の製作コストを低減できる。また、鞘管14の寸法は、立上り部102の厚みとして最も厚い部類に入る195mmを想定して設定しているので、それよりも厚みの小さい立上り部102を有する布基礎100に対しても鞘管14を使用でき、部材コストをより低減できる。
なお、上述の実施例では、汎用の90°エルボに汎用の直管を接着接合することによって内管12を形成したが、これに限定されない。たとえば、内管12は、部材を接続するのではなく予め一体成形されるものであってもよいし、汎用の90°エルボに汎用の直管をゴム輪接合して形成されるものであってもよい。ただし、専用部品を少なくしてコストを低減するという観点および止水性の観点からは、汎用部材を接着接合して内管12を形成することが好ましい。
また、上述の実施例では、内管12の上流側端部を受口24とし、下流側端部を差口26としたが、内管12の両端部は、受口および差口のいずれでも構わない。また、内管12の両端部は、接着接合されるものではなく、ゴム輪接合されるものであってもよい。
さらに、上述の実施例では、内管12のエルボ部20を90°の角度で湾曲させるようにしたが、エルボ部20は、たとえば45°や60°の角度で湾曲するものであってもよい。
さらにまた、上述の実施例では、鞘管14内に内管12を差し入れる際、予め内管12の受口24に対して屋内側配管110の配管部材(縦管)を接続しておくようにしたが、これを限定されない。たとえば、鞘管14内に内管12を差し入れ、内管12の下流側端部の差口26に屋外側配管112を接続した後、内管12の受口24に対して屋内側配管110の配管部材を接続してもよい。この場合には、鞘管14に対するエルボ部20の上流側端部(受口24)の配置位置によっては、鞘管14内での接続となる場合があるが、鞘管14の上開口部34の開口端近傍での接続となるため、貫通路の中央部における接続と比較して、容易かつ適切に実行できる。
また、上述の実施例では、内管12の受口24に屋内側配管110として縦管を接続しているが、これに限定されない。内管12の受口24には、たとえば、曲管が接続されてもよいし、直接または接続管を介して、合流桝や旋回桝などの桝が接続されてもよい。
さらに、上述の実施例では、鞘管14の上開口部34を小判形状(角丸長方形状)に開口させるようにしたが、上開口部34は、馬蹄形、楕円形および円形に開口させてもよい。ただし、上開口部34を馬蹄形などに形成して上開口部34の側壁に角部を設けると、角部に応力が集中して破損の原因となるため、上開口部34には角部は設けないことが好ましい。
また、上述の実施例では、鞘管14の湾曲部32を比較的緩やかに上向きに湾曲させているが、図10に示すように、湾曲部32は、横開口部30の基端部から略垂直方向に立ち上がるように湾曲させてもよい。これによって、上開口部34を横開口部30側、つまり立上り部104のより近傍に寄せて配置することが可能となるので、立上り部104の屋内側の壁面に沿わせて屋内側配管110を配管し易くなる。
さらに、上述の実施例では、横開口部30の周方向全長に亘って延びるようにストッパ38を形成したが、ストッパ38は、必ずしも周方向全長に形成される必要はなく、周方向に間欠的に形成されていてもよい。言い換えると、ストッパ38の基礎当接面38aは、必ずしも周方向全長に亘ってボイド孔106の縁と当接する必要はない。
さらに、上述の実施例では、布基礎100の立上り部102に断面円形のボイド孔106を形成し、このボイド孔106に鞘管14の横開口部30を嵌め込むようにしたが、ボイド孔106の断面形状は特に限定されない。ボイド孔106は、たとえば、断面矩形や断面馬蹄形(アーチ形)の貫通孔であってもよい。この場合には、ボイド孔106の形状に合わせて横開口部30の外形が変更される。
たとえばボイド孔106を断面馬蹄形に形成する場合には、図11に示すように、鞘管14の横開口部30の挿入部40は、ボイド孔106の断面形状に合わせて、馬蹄形の外形を有するように形成される。ボイド孔106に横開口部30の挿入部40を嵌め込むと、挿入部40の下面が平面状に形成されていることから、横開口部30の軸方向周りの鞘管14の回転が確実に防止され、鞘管14がより安定的に仮固定される。なお、この場合には、ストッパ38の基礎当接面38aは、その略上半分においてボイド孔106の縁と当接する。
また、ボイド孔106は、たとえば、鞘管14の挿入部40が挿入される屋内側部分のみを断面馬蹄形とし、それ以外の屋外側部分は断面円形とすることもできる。この場合には、鞘管14のストッパ38は必ずしも設ける必要はなく、鞘管14の挿入部40の端面と、ボイド孔106の馬蹄形部分の奥側の縁とを当接させることによって、鞘管14を位置決めするとよい。つまり、鞘管14の挿入部40の端面を、横開口部30の周方向全長に亘る基礎当接面(ストッパ)として機能させることもできる。
また、上述の実施例では、布基礎100に対して二重管継手10を適用した例を示したが、図12に示すように、べた基礎130に対して二重管継手10を適用することもできる。
図12および図13に示すように、べた基礎130用の二重管継手10の鞘管14としては、横開口部30の軸方向長さの大きいものが用いられ、鞘管14をべた基礎130に埋設固定した際には、鞘管14の横開口部30の端面が屋外に露出して開口する。つまり、べた基礎130用の二重管継手10では、鞘管14のみによって、べた基礎130の屋内側と屋外側とを連通する貫通路が構成される。軸方向長さの大きい横開口部30を有する鞘管14を製作するときには、たとえば、図4に示す鞘管14に対して直管(延長用鞘管)を接続するようにしてもよいし、部材を接続するのではなく予め一体成形するようにしてもよい。
二重管継手10を用いてべた基礎130を貫通する排水管を施工する場合には、先ず、べた基礎130を打設するための基礎型枠を形成する。基礎型枠内には、鉄筋を適宜配置しておく。また、排水管の配管位置には、鞘管14の上開口部34の端面が屋内側に露出し、かつ横開口部30の端面が屋外側に露出するように、鞘管14を設置する。この際には、たとえば、鞘管14の脚部36を鉄筋上に載置し、結束バンド等の連結具を用いて鉄筋と脚部36と連結することによって、鞘管14を仮固定しておくとよい。
鞘管の設置後、基礎型枠内に生コンクリートを流し込み、所定時間養生してコンクリートが固化した後、基礎型枠を除去することによって、鞘管14が埋設固定されたべた基礎130が打設される。その後、図7(B)〜図8(F)に示した方法と同様にして、内管12を含む排水管を鞘管14内に挿通して設置することによって、べた基礎130を貫通する排水管の施工が完了する。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。