<発明の要旨>
広義において、本特許出願は、改良された展伸(wrought)用の熱処理可能なアルミニウム合金、及びその製造方法に関する。具体的には、本特許出願は、改良された展伸用のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品、及びその製造方法に関する。概して、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品は、例えば、溶体化後の冷間加工及び冷間加工後の熱処理により、特性の組合せの改良が得られ、これについては以下に更に詳細に説明する。本出願の目的では、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、3.0〜6.0重量%のマグネシウム及び2.5〜5.0重量%の亜鉛を有するアルミニウム合金であり、マグネシウム及び亜鉛のうちの少なくとも1つが、アルミニウム以外でアルミニウム合金体の主体となる合金元素であり、(重量% Mg)/(重量% Zn)が、0.6〜2.40である。
熱処理可能なアルミニウム合金の圧延形態での製品を製造する1つの従来プロセスを図1に示す。この従来プロセスでは、熱処理可能なアルミニウム合金体(aluminum alloy body)が鋳造され(10)、その後、それが均質化処理され(11)、次いで、中間ゲージ(intermediate gauge)まで熱間圧延される(12)。次に、この熱処理可能なアルミニウム合金体は最終ゲージ(final gauge)まで冷間圧延され(13)、その後、それは溶体化熱処理され、急冷される(quenched)(14)。本明細書で概して「溶体化(solutionizing)」と称される、「溶体化熱処理及び急冷(solution heat treating and quenching)」及びその類似語は、アルミニウム合金体を適当な温度(概して、ソルバス温度を上回る温度)に加熱し、その温度で、可溶元素が固溶体に入り込むことができるように十分長い時間保持し、それらの元素が固溶体中で保持されるように十分急速に冷却することを意味する。高温で形成された固溶体は、溶質原子が粗大な非整合粒子(incoherent particles)として析出しないように十分な速さで冷却することにより過飽和状態に保持され得る。溶体化処理(14)の後、アルミニウム合金体は、任意選択で少し延伸されて(例えば、1〜5%)平坦化され(15)、熱処理され(16)、任意選択で最終処理実務(17)が施される。図1は、T6質別のアルミニウム合金を製造するためのプロセス経路と一致している(T6質別については本出願で後に定義する)。
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品を製造するための新規プロセスの一実施態様を図2aに示す。この新規プロセスでは、溶体化後冷間加工のためのマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を調製し(100)、その後、それが冷間加工され(200)、次いで、熱処理される(300)。この新規プロセスはまた、任意選択で、最終処理(複数可)(400)を含んでもよく、これについては後に更に詳細に説明する。「溶体化後冷間加工(post-solutionizing cold work)」及びその類似語は、溶体化後のアルミニウム合金体の冷間加工を意味する。マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体に適用される溶体化後冷間加工の加工度は、概して、少なくとも25%以上、例えば、50%を超える冷間加工である。まず溶体化し、次いで、少なくとも25%冷間加工し、次いで、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を適宜熱処理することにより、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、改良された特性を実現し得、これについては以下に更に詳細に説明する。例えば、従来のT6質別アルミニウム合金製品に比べて5〜25%以上の強度の改善が実現され得、またこれらの従来の処理アルミニウム合金製品をT6質別処理するのに要する時間についても(T6質別処理アルミニウム合金と比べて、例えば、10%〜90%速い)。新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体はまた、良好な延性を実現し得、概して、4%を超える伸び、例えば、6〜15%又はそれを超える伸びを実現する。他の特性(例えば、破壊靱性、耐食性、耐疲労クラック進展性、外観)も、維持及び/又は改善され得る。
A.溶体化後冷間加工のための調製
図2aに示すように、新規プロセスは、溶体化後冷間加工のためにアルミニウム合金体を調製すること(100)を含む。アルミニウム合金体の調製は、溶体化後冷間加工のために、従来の半連続鋳造法(例えば、インゴットのダイレクトチル鋳造)及び連続鋳造法(例えば、双ロール式鋳造)を含む、様々な様態で行なうことができる(100)。図3に示すように、調製工程(100)は、概して、アルミニウム合金体を、冷間加工に好適な形態に配置すること(120)及びアルミニウム合金体を溶体化させること(140)を含む。配置工程(120)及び溶体化工程(140)は、順次行なわれても、互いに付随して(concomitant)発生してもよい。様々な調製工程(100)のいくつかの非限定的な例を図4〜8に示しており、これらは以下で更に詳細に説明する。溶体化後冷間加工のためにアルミニウム合金体を調製(100)する他の方法が当業者に知られており、本明細書には明示していないが、これら他の方法も本発明の調製工程(100)の範囲内である。
1つのアプローチにおいて、調製工程(100)は半連続鋳造法を含む。一実施態様において、かつ図4を次に参照して、配置工程(120)は、アルミニウム合金体(例えば、インゴット又はビレットの形態)を鋳造すること(122)、アルミニウム合金体を均質化処理すること(124)、アルミニウム合金体を熱間加工すること(126)、及び任意選択で、アルミニウム合金体を冷間加工すること(128)を含む。配置工程(120)の後、溶体化工程(140)が行われる。鋳造後のアルミニウム合金体はインゴット/ビレットの形態にはないであろうが、連続鋳造操作を用いて同様の工程を行ってもよい(120)。
別の実施形態において、かつ図5を次に参照して、調製工程(100)は、アルミニウム合金体を鋳造すること(122)、アルミニウム合金体を均質化すること(124)、及びアルミニウム合金体を熱間加工すること(126)を含む。この実施形態において、熱間加工工程(126)は、可溶元素を固溶体に配置するために行われ得、その後、アルミニウム合金体は急冷され(図示せず)、結果として溶体化工程(140)となる。これは、配置工程(120)及び溶体化工程(140)が互いに付随して行われる一例である。この実施態様は、なかでも、プレスクエンチ製品(例えば、押出成形製品)や熱間圧延後に急冷される熱間圧延製品に適用され得る。
別のアプローチにおいて、調製工程(100)は、連続鋳造法を含み、なかでも、例えば、ベルト式鋳造、ロッド式鋳造、双ロール式鋳造、双ベルト式鋳造(例えば、ハザレー(Hazelett)式鋳造)、ドラッグ式鋳造、及びブロック式鋳造などが含まれる。連続鋳造法を用いる調製工程(100)の一実施形態を図6aに示す。この実施形態において、アルミニウム合金体は鋳造され、ほぼ同時に、すなわち、互いに付随して、溶体化される(142)。鋳造により、アルミニウム合金体は、冷間加工するのに十分な形態となる。鋳造中の凝固速度が十分に速いとき、アルミニウム合金体は溶体化も行われる。この実施形態において、鋳造/溶体化工程(142)に、鋳造後のアルミニウム合金体の急冷が含まれ得る(図示せず)。この実施形態は、鋳造プロセスの中でも特に、双ロール式鋳造プロセスに適用され得る。図6のプロセスを行うことが可能ないくつかの双ロール式鋳造装置及びプロセスが、米国特許第7,182,825号、米国特許第7,125,612号、米国特許第7,503,378号、及び米国特許第6,672,368号に記載されており、また以下の図6b−1〜6xに対して記載されている。
別の実施形態において、かつ図7を次に参照して、調製工程(100)は、アルミニウム合金体を鋳造すること(122)及び、鋳造工程(122)の後に、アルミニウム合金体を溶体化させること(140)を含む。この実施形態において、配置工程(120)は鋳造(122)を含む。この実施形態は、他の鋳造プロセスの中でも特に、双ロール式鋳造法に適用される。
別の実施形態において、かつ図8を次に参照して、調製工程(100)は、アルミニウム合金体を鋳造すること(122)、アルミニウム合金体を熱間加工すること(126)、及び任意選択でアルミニウム合金体を冷間加工すること(128)を含む。この実施形態において、配置工程(120)は、鋳造(122)工程、熱間加工(126)工程、及び任意選択で冷間加工(128)工程を含む。配置工程(120)の後、溶体化工程(140)が行われる。この実施形態は連続鋳造プロセスに適用し得る。
図2a、3〜6a、及び7〜8に示す工程の多くは、バッチ式又は連続式で行うことができる。一例として、冷間加工(200)及び熱処理工程(300)は連続して行われる。この例では、溶体化されたアルミニウム合金体は、周囲条件(ambient conditions)で冷間加工に入ってもよい。本明細書に記載する新規方法を用いると比較的短い時間で熱処理を達成できるので、冷間加工されたアルミニウム合金体は、冷間加工後直ちに熱処理され得る(300)(例えば、インライン)(例えば、この熱処理工程(300)は、冷間加工工程(200)に付随して行われる)。ことによると、このような熱処理は、冷間加工装置の出口の近傍で、又は冷間加工装置に接続された別の加熱装置において、発生することができる。これは生産性を改善させ得る。別の例では、及び以下の冷間加工の節(節B)に記載するように、調製工程(100)及び冷間加工工程(200)は、図6aに示すように、連続して(例えば、連続鋳造装置が使用される場合)、かつ連続鋳造後のアルミニウム合金体が冷間加工工程(200)へと即座に連続して進められ得るように、完了される。この実施形態において、鋳造/溶体化工程(142)は、アルミニウム合金体を好適な冷間加工温度(例えば、66℃(150°F)未満)に急冷することを含んでもよい。別の実施形態において、調製工程(100)、冷間加工工程(200)、及び熱処理工程(300)の3つ全ては、連続して完了される。
上記したように、調製工程(100)は、概して、アルミニウム合金体の溶体化を含む。前述したように、「溶体化(solutionizing)」は、アルミニウム合金体の急冷(図示せず)を含み、この急冷は、液体(例えば、水又は有機溶液を介して)、気体(例えば、空冷)、又は更に固体(例えば、アルミニウム合金体の1つ以上の面の冷却された固体)を介して遂行され得る。一実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金体を液体又は気体と接触させることを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、急冷は、アルミニウム合金体の熱間加工及び/又は冷間加工を行わずに発生する。例えば、急冷は、他の技術の中でも特に、浸漬、噴霧、及び/又はジェット乾燥により、アルミニウム合金体を変形させることなく発生し得る。図2a、3〜6a、7〜9、及び12に示すように、溶体化工程は、概して、調製工程の最終工程であり、冷間加工工程の直前である。
他の調製工程(100)(例えば、粉末冶金法)を使用して、溶体化後冷間加工のためのアルミニウム合金体を調製することができるが、そのような他の調製工程は、アルミニウム合金体を冷間加工に好適な状態にして(120)、アルミニウム合金体を溶体化させる(140)限りにおいて、本発明の調製工程(100)の範囲に入ることは当業者に認識されることであり、それは、配置(120)工程と溶体化(140)工程が互いに付随して(例えば同時に)行われるか又は順次行われるかに関係なく、また、配置工程(120)が溶体化工程(140)の前に行われるか否か(逆もまた同様)にも関係ない。
i.連続鋳造実施形態
a.双ロール連続鋳造−−連続鋳造及び溶体化
一実施形態において、本開示のアルミニウム合金体は、水平双ロール又は双ベルトキャスターの間で連続鋳造されることによって、溶体化後の冷間加工のために調製されてもよく、溶体化は、連続鋳造に付随して発生する(例えば、連続鋳造方法に起因して)。このような実施形態では、アルミニウム合金体は、内部冷却されたロールの対と並列及び連通することによって、連続鋳造され得る。次に図6b−1〜6b−2を参照して、水平双ロール連続鋳造装置の一実施形態が例示される。この装置は、それぞれ矢印A1及びA1の方向に回転する反転冷却ロールR1及びR2の対を使用する。水平という用語は、鋳造片(S)が、水平配向に、又は水平から前後30度の角度で製造されることを意味する。図6b−2でより詳細に示すように、セラミック材料で作製され得る供給口先端部Tは、溶融金属Mを矢印の方向に送ることができる。供給口先端部TとそれぞれのロールR1及びR2との間にある間隙G1及びG2は可能な限り小さく維持され得るが、しかし、先端部TとロールR1及びR2との間の接触は回避されるべきである。理論に束縛されることなく、小さい間隙を維持することは、溶融金属が漏出することを防ぎ、溶融金属がR1及びR2に沿って大気に曝露することを最小化することを助けると考えられている。間隙G1及びG2の好適な寸法は、0.254mm(0.01インチ)であってもよい。ロールR1とR2との中心線を通る平面Lは、ロールニップNとして言及されるロールR1とR2との間の最小隙間領域を通過する。
溶融金属Mは、冷却ロールR1及びR2に、それぞれ領域2−6及び4−6で直接接触し得る。ロールR1及びR2と接触する際に、金属Mは冷却及び固体化される。冷却されている金属は、ロールR1に隣接する固体化された金属の上部シェル、及びロールR2に隣接する固体化された金属の下部シェル8−6をもたらす。シェル6−6及び8−6の厚さは、金属MがニップNに向かって前進するにつれて増大する。固体化された金属の大型のデンドライト10−6(原寸表示ではない)は、上部シェル6−6及び下部シェル8−6の各々と溶融金属Mとの間の界面でもたらされる。大型のデンドライト10−6は、破壊され、溶融金属Mのより遅い移動流の中心部分12−6中へと引き込まれ得、矢印C1及びC2の方向に運ばれ得る。流れの引き込み動作によって、大型のデンドライト10−6は、より小型のデンドライト14−6(原寸表示ではない)へと更に破壊され得る。領域16−6として言及されるニップNの上流にある中心部分12−6では、金属Mは半固体であり、固体構成要素(固体化された小型のデンドライト14−6)及び溶融金属構成要素を含んでもよい。領域16−6中の金属Mは、その中の小型のデンドライト14−6の分散に一部起因する軟練りを有してもよい。ニップNの場所で、溶融金属の一部は、矢印C1及びC2とは反対の方向に後方に押し込まれ得る。ニップNでのロールR1及びR2の前方回転は、実質的に金属の固体部分(中心部分12−6における上部シェル6−6及び下部シェル8−6並びに小型のデンドライト14−6)のみを前進させ、同時に、溶融金属をニップNから上流にある中心部分12−6に押し込んで、金属が、それがニップNの先を離れるときに完全に固体であり得るようにする。ニップNの下流で、中心部分12−6は、上部シェル6−6と下部シェル8−6との間に挟まれた小型のデンドライト14−6を含む固体中心層又は領域18−6であり得る。中心層又は領域18−6では、小型のデンドライト14−6は、20ミクロン〜50ミクロンのサイズであり、概して球状の形状を有してもよい。上部シェル6−6及び下部シェル8−6並びに固体化された中心層18−6という単鋳造金属シート/層の3つの層又は領域は、固体鋳造片20−6を構成する。それゆえ、アルミニウム合金片20−6は、アルミニウム合金の第1の層又は領域、及びアルミニウム合金の第2の層又は領域(シェル6−6及び8−6に対応)を、その間に中間層又は領域(固体化された中心層18−6)を伴って含む。固体中心層又は領域18−6は、片20−6の厚さ全体の20パーセント〜30パーセントを構成し得る。小型のデンドライト14−6の濃度は、流れの半固体領域16−6、又は中心部分12−6においてよりも、片20−6の固体中心層18−6においてより高くてもよい。溶融アルミニウム合金は、以下の組成の節(節G)に記載する合金元素のうちのいずれかなどの、包晶形成合金元素及び共晶形成合金元素を含む合金元素の初期濃度を有し得る。アルミニウムとの包晶形成物である合金元素の例としては、Ti、V、Zr、及びCrが挙げられる。アルミニウムとの共晶形成物の例としては、Si、Fe、Ni、Zn、Mg、Cu、Li、及びMnが挙げられる。
上述のように、アルミニウム合金体は、3.0〜6.0重量%のマグネシウム及び2.5〜5.0重量%の亜鉛を含み、マグネシウム及び亜鉛のうちの少なくとも1つは、アルミニウム以外でアルミニウム合金体の主体となる合金元素であり、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、0.6〜2.40である。アルミニウム合金溶融物の固体化中、デンドライトは、典型的に、周囲の元溶融物、及びより高い濃度の包晶形成物よりも、低い濃度の共晶形成物を有する。領域16−6では、ニップの上流にある中心領域において、小型のデンドライト14−6については、共晶形成物が部分的に枯渇しており、一方で、小型のデンドライトを取り囲む溶融金属については、共晶形成物が幾分か豊富である。結果として、上部シェル6−6及び下部シェル8−6における共晶形成物及び包晶形成物の濃度と比べて、大規模なデンドライト群を含む片20−6の固体中心層は又は領域18−6については、共晶形成物が枯渇しており、包晶形成物が豊富である。換言すれば、中心層又は領域18−6における共晶形成合金元素の濃度は、概して、第1の層又は領域6−6及び第2の層又は領域8−6未満である。同様に、中心層又は領域18−6における包晶形成合金元素の濃度は、概して、第1の層又は領域6−6及び第2の層又は領域8−6を超える。それゆえ、一部の実施形態において、合金は、アルミニウム合金製品の中心線でのMg及び/又はZnの量と比べて、合金製品の上部領域又は下部領域においてMg及びZnのうちの少なくとも1つの量をより多く(その領域におけるより高い平均貫通濃度)含み、これらの領域における濃度は、以下に記載する濃度プロファイル手順を使用して決定される。一実施形態において、合金は、合金製品の上部領域又は下部領域においてMg及びZn両方のより高い濃度を含む。一実施形態において、合金は、合金製品の上部領域及び下部領域両方においてMg及びZnのうちの少なくとも1つのより高い濃度を含む。一実施形態において、合金は、合金製品の上部領域及び下部領域両方においてMg及びZn両方のより高い濃度を含む。一実施形態において、合金は、製品の中心線でのMg及び/又はZn濃度と比べて、少なくとも1%高いMg及び/又はZn濃度(場合に応じて上部又は下部領域における平均濃度)を含む。一実施形態において、合金は、製品の中心線でのMg及び/又はZn濃度と比べて、少なくとも3%高いMg及び/又はZn濃度(場合に応じて上部又は下部領域における平均濃度)を含む。一実施形態において、合金は、製品の中心線でのMg及び/又はZn濃度と比べて、少なくとも5%高いMg及び/又はZn濃度(場合に応じて上部又は下部領域における平均濃度)を含む。一実施形態において、合金は、製品の中心線でのMg及び/又はZn濃度と比べて、少なくとも7%高いMg及び/又はZn濃度(場合に応じて上部又は下部領域における平均濃度)を含む。一実施形態において、合金は、製品の中心線でのMg及び/又はZn濃度と比べて、少なくとも9%高いMg及び/又はZn濃度(場合に応じて上部又は下部領域における平均濃度)を含む。
<濃度プロファイル手順−Si、Mg、Cu、Zn、Mn、Fe用>
1.試料調製
・アルミニウムシート試料を、Luciteに取り付け、標準の金属組織調製手順を使用して(ASTM E3−01(2007)Standard Guide for Preparation of Metallographic Specimensを参照)、縦方向表面を研磨する。試料の研磨表面を、市販の炭素コーティング装備を使用して、炭素でコーティングする。炭素コーティングは、厚さ数ミクロンである。
2.電子プローブマイクロ分析(EPMA)装備
・JEOL JXA8600 Superprobeを使用して、調製したアルミニウムシート試料中の厚さ方向組成プロファイルを得る。Superprobeは4つの波長分散型分光器(WDS)検出器を有し、そのうち2つはガスフロー(P−10)カウンターであり、他はXeガス封止カウンターである。元素の検出範囲は、ベリリウム(Be)からウラン(U)までである。定量分析検出限界は、0.02重量%である。計器には、ステージ制御並びに無人の定量及び定性分析を可能にするGeller Microanalytical Dspec/Dquant自動化を装備する。
3.電子プローブマイクロ分析(EPMA)分析手順
・Superprobeは、次の条件に設定する。加速電圧15kV、ビーム強度100nA、電子ビームは試料の最低13個の異なる区分を測定できるように適切なサイズにデフォーカス(例えば、厚さ0.15cm(0.060インチ)の標本に対しては100μmにデフォーカス)、及び各元素に対する露出時間は10秒。バックグラウンド補正は、陽性及び陰性バックグラウンド上に、5秒の計数時間で、3つの無作為の場所で試料表面に行った。
・シート試料の厚さ全体を、試料の圧延方向に垂直な直線に沿った複数の場所でスキャンしながら、1つのEPMAラインスキャンを画定する。シート試料の中心線にあるものを中間の数の点として、奇数の点を使用した。点間の間隔はビーム直径と等しい。各点で、場合に応じて、Mn、Cu、Mg、Zn、Si、及びFeの元素のうち任意のものを分析することができる。Siは、ガスフロー(P−10)カウンターを用いてPET回折結晶によって分析し、Fe、Cu、Zn、及びMnは、Xeガス封止カウンターを用いてLIF回折結晶により、Mgは、ガスフロー(P−10)カウンターを用いてTAP回折結晶によって分析する。各元素に対する計数時間は10秒である。このラインスキャンは、シート試料の長さにかけて30回繰り返される。試料のいずれか1つの場所において、各元素の報告された組成は、厚さが同一である場所での30回の測定の平均値であるはずである。
・上部領域及び下部領域における濃度は、(i)上部領域及び下部領域の縁部(表面)、並びに(ii)中心領域と上部領域及び下部領域の各々との間の移行帯を除く、これらの領域の各々における平均測定濃度である。上部領域及び下部領域の各々におけるこのような元素の平均濃度を決定するためには、元素の濃度を、これらの領域の各々における最低4つの異なる場所で測定する必要がある。
・測定した元素を、ZAF/Phi(pz)補正モデルHeinrich/Duncumb−Reedを用いて、DQuant分析パッケージCITZAF、v4.01を使用して較正した。この技法は、NISTのDr.Curt Heinrichに由来し、伝統的なDuncumb−Reed吸収補正を使用する。(Heinrich,Microbeam Analysis−−1985,79、−−1989,223を参照されたい。)
<濃度プロファイル手順−Li用(連続切片化)>
・リチウムを含有する製品については連続切片化を使用し、ここでは、切片(厚さ方向)を、(i)0.030以上の厚さを有する試料については機械加工、又は(ii)0.030未満の厚さを有する試料については適切なエッチャントによる化学的薄膜化によって得る。中心線の試料が常に製造されるように、少なくとも13個の異なる厚さ方向の試料を得た。次に、試料の各々を、原子吸光によってそのLi含有量について分析する。
ロールR1及びR2は、溶融金属Mの熱に対するヒートシンクとして働き得る。一実施形態において、熱は、均一な様式で溶融金属MからロールR1及びR2へと伝導して、鋳造片20−6の表面における均一性を確実にし得る。ロールR1及びR2のそれぞれの表面D1及びD2は、鋼又は銅から作製されてもよく、テクスチャ加工されてもよく、かつ溶融金属Mに接触し得る表面のむら(図示せず)を含んでもよい。表面のむらは、表面D1及びD2からの熱伝導を増加させる働きをし、表面D1及びD2において制御された程度の不均一性を課すことにより、表面D1及びD2にわたる均一な熱伝導をもたらし得る。表面のむらは、溝、くぼみ、刻み、又は他の構造の形態にあってもよく、1センチメートル当たり8〜47個の表面のむら、又は1センチメートル当たり約24個の表面のむら(1インチ当たり20〜120個の表面のむら、又は1インチ当たり約60個の表面のむら)という規則的なパターンで間隔をあけられてもよい。表面のむらは、5ミクロン〜50ミクロンの範囲、又は代替的に約30ミクロンの高さを有し得る。ロールR1及びR2は、クロム又はニッケルなどの、ロールR1及びR2からの鋳造片の分離を強化するための材料でコーティングされてもよい。
ロールR1及びR2の適切な速度の制御、維持、及び選択は、本装置及び方法を使用した片を連続鋳造する能力に影響し得る。圧延速度は、溶融金属MがニップNに向かって前進する速度を決定する。速度が遅すぎると、大型のデンドライト10−6は、中心部分12−6に取り込まれ、壊れて小型のデンドライト14−6となるのに十分な力を受けないことになる。ある実施形態において、圧延速度は、溶融金属Mの凍結前面、又は完全固体化点が、ニップNで形成され得るように選択され得る。したがって、本鋳造装置及び方法は、毎分7.6〜122メートル(毎分25〜400フィート)、あるいは毎分15〜122メートル(毎分50〜400フィート)、あるいは毎分30〜122メートル(毎分100〜400フィート)、及びあるいは毎分46〜91メートル(毎分150〜300フィート)の範囲の速度など、高速での操作に適していてもよい。溶融アルミニウムがロールR1及びR2に送達される単位領域当たりの線速度は、ロールR1及びR2の速度未満、又はロール速度の約4分の1であってもよい。テクスチャ表面D1及びD2が溶融金属Mからの均一な熱伝導を確実にするため、少なくとも一部では、本開示の装置及び方法によって、高速連続鋳造が達成可能であり得る。このような高い鋳造速度及び関連する急速な固体化速度に起因して、水溶性成分は、実質的に固溶体中に保持され得る、すなわち、溶体化工程は、鋳造工程に付随して発生し得る。
ロール分離力は、本開示の鋳造装置及び方法の使用におけるパラメータとなり得る。本開示の連続鋳造装置及び方法の1つの利益は、金属がニップNに達するまで固体片が製造されないことであり得る。厚さは、ロールR1とロールR2との間のニップNの寸法によって決定される。ロール分離力は、ニップNの上流かつニップNから離れて溶融金属を圧搾するのに十分に大きくてもよい。ニップNを通過する過剰な溶融金属は、上部シェル6−6及び下部シェル8−6並びに固体中心領域18−6の層を、相互に剥離させ、不整合にし得る。ニップNに達する溶融金属が不十分であると、片は未熟に形成され得る。未熟に形成された片は、ロールR1及びR2によって変形させられ、中心線の偏析を被り得る。好適なロール分離力は、幅1センチメートル当たり44〜525ニュートン(幅1インチ当たり25〜300ポンド)の鋳造、又は幅1センチメートル当たり175ニュートン(幅1インチ当たり100ポンド)の鋳造の範囲であってもよい。概して、より厚い片を鋳造する場合、熱を除去するためには、より遅い鋳造速度が必要とされ得る。完全固体のアルミニウム片はニップの上流では製造されないため、このようなより遅い鋳造速度は、過剰なロール分離力をもたらさない。アルミニウム合金片20−6中の粒子は、ロールによって適用される力が低いため(幅1センチメートル当たり525ニュートン(幅1インチ当たり300ポンド)以下)、実質的に変形されない。また更に、片20−6は、それがニップNに達するまでは固体ではないため、「熱間圧延」されない。それゆえ、片20−6は、鋳造プロセス自体に起因して熱機械的処理を受けず、続いて熱間圧延されない場合、片20−6中の粒子は、概して、実質的に変形されず、冷間加工工程(200)の前に、固体化時に達成されたそれらの初期構造、すなわち、球状などの等軸構造を保持する。
薄いゲージのアルミニウム片製品は、本開示の連続鋳造装置及び方法を使用して鋳造され得る。アルミニウム合金片は、0.254cm(0.100インチ)以下の厚さで、毎分7.6〜122メートル(毎分25〜400フィート)、あるいは毎分15〜122メートル(毎分50〜400フィート)、及びあるいは毎分30〜122メートル(毎分100〜400フィート)の範囲の鋳造速度で、製造され得る。より厚いゲージのアルミニウム合金片も、例えば、0.632cm(0.249インチ)以下の厚さで、本開示の方法を使用して製造され得る。それゆえ、連続鋳造片は、概して、アルミニウム工業会規格によるところのシート又は箔製品の厚さを有する。
ロール表面D1及びD2は、鋳造中に熱くなり得、昇温で酸化する傾向にあり得る。鋳造中のロール表面の不均一な酸化は、ロールR1及びR2の熱伝導特性を変化させ得る。よって、ロール表面D1及びD2を使用前に酸化させて、鋳造中のその変化を最小限にしてもよい。ロール表面D1及びD2を時折又は連続的にブラッシングして、アルミニウム及びアルミニウム合金の鋳造中に堆積し得る残屑を除去することが有益であり得る。鋳造片の小片は、片Sから抜け出て、ロール表面D1及びD2に付着し得る。これらのアルミニウム合金片の小片は、酸化する傾向にあり得、それにより、ロール表面D1及びD2の熱伝導特性における不均一性がもたらされ得る。ロール表面D1及びD2のブラッシングにより、ロール表面D1及びD2上に集積し得る残屑による不均一性の問題が回避される。
本開示に従うアルミニウム合金の連続鋳造は、片Sの所望のゲージに対応するニップNの所望の寸法を最初に選択することによって達成され得る。ロールR1及びR2の速度は、所望の製造速度まで、又は圧延がロールR1とロールR2との間で起こっていることを示すレベルまでロール分離力を増加させる速度未満である速度まで増加させてもよい。本発明によって企図される速度(すなわち、毎分7.6〜122メートル(毎分25〜400フィート))での鋳造は、鋳塊鋳造としてのアルミニウム合金鋳造よりも約1000倍早くアルミニウム合金片を固体化させ、鋳塊としてのアルミニウム合金鋳造と比べて片の特性を改善させる。溶融金属が冷却される速度は、金属の外側領域の急速な固体化が達成されるように選択され得る。実に、金属の外側領域の冷却は、少なくとも毎秒セ氏1000度の速度で発生し得る。
上述のように、高い鋳造速度及び関連する急速な固体化速度に起因して、水溶性成分は、実質的に固溶体中に保持され得る、すなわち、溶体化工程は、鋳造工程に付随して発生し得る。固溶体中に保持される溶質の量は、合金の電気伝導度に関係し、より低い電気伝導値は、固溶体中のより多い溶質として言い換えられる。それゆえ、一実施形態において、上に開示した連続鋳造プロセスによって作製されるアルミニウム合金体は、低い電気伝導値を実現し得る。一実施形態において、付随する鋳造及び溶体化に起因して、このような方法に従って処理されたアルミニウム合金は、合金の理論的に最小の電気伝導度の50%以内である。本小節((A)(i))で使用される場合、アルミニウム合金体が「合金の理論的に最小の電気伝導度のXX%以内」であるとき、合金は、アルミニウム合金体を最大の理論的電気伝導度と最小の理論的電気伝導度との間の差異のXX%以内にする測定電気伝導度を有する。換言すれば、理論的に最小の電気伝導度のXX%以内とは、((測定EC−最小の理論的EC)/(最大の理論的EC−最小の理論的EC)×100%となり、測定電気伝導度は、調製工程(100)、冷間加工工程(200)、及び熱処理工程(300)が完了した後に、ASTM E1004(2009)に従って測定される。例えば、アルミニウム合金が、23.7% IACSの最小の理論的電気伝導度を有し、かつ55.3% IACSの最大の理論的電気伝導度を有する場合、最大の理論的値と最小の理論的値との差異は、31.6% IACSであり得る。この同一のアルミニウム合金の実測電気伝導度が27.7% IACSであった場合、それは、最小の理論的値の約12.7%(12.6582%=(測定EC−最小の理論的EC)/(最大の理論的EC−最小の理論的EC)、又は((27.7−23.7)/31.6)以内であり得る。最大及び最小抵抗率の値は、溶液中及び溶液外で種々の元素が抵抗率に与える影響を説明する、Alminum:Properties and Physical Metallurgy,ed.J.E.Hatch,American Society for Metals,Metals Park,OH,1984,p.205において提供される定数を使用して計算し得る。次に、抵抗率の値を、% IACSでの電気伝導度に変換し得る(2.65マイクロ−オーム−cmの純アルミニウムのベース抵抗率を仮定)。理論的に最小の電気伝導度は、全ての合金元素が固溶体中にある状況に関係する。理論的に最大の電気伝導度は、全ての合金元素が固溶体外にある状況に関係する。
一実施形態において、上に開示した連続鋳造プロセスによって作製されるアルミニウム合金体は、合金の理論的に最小の電気伝導度の40%以内である。別の実施形態において、このような方法に従って処理されたアルミニウム合金は、合金の理論的に最小の電気伝導度の30%以内である。更に別の実施形態において、このような方法に従って処理されたアルミニウム合金は、合金の理論的に最小の電気伝導度の20%以内である。別の実施形態において、このような方法に従って処理されたアルミニウム合金は、合金の理論的に最小の電気伝導度の15%以下以内である。同様の電気伝導値は、節(C)及び(D)中で以下に記載する連続鋳造実施形態において実現され得る。
b.溶体化を伴う連続鋳造の例
以下の表に示される重量パーセントで表される合金元素を有する溶融アルミニウム合金を、上部ベルトがニップの上流にある固体化金属に接触しないヒートシンクベルトキャスター上で連続鋳造した。本明細書で報告される試験は、ロールキャスター上では実行しなかった。しかしながら、本プロセスは、固体化金属の加工なしでのロールの対に対する鋳造をシミュレーションするように設計した。
合金6−1及び6−2に適用された単位幅当たりの力対種々の間隙設定に対する圧延速度を、それぞれ図6c及び6dにグラフで示す。全ての場合において、ロールによって適用された力は、350ニュートン/幅1センチメートル(200lbs/幅1インチ)未満であった。
合金6−1の片(厚さ0.2センチメートル(0.09インチ))を合金元素の偏析について分析した。片の厚さにかけての合金元素の濃度を、共晶形成元素(Si、Fe、Ni、及びZn)については図6eに、包晶形成元素(Ti、V、及びZr)については図6fにグラフで表す。共晶形成合金元素は片の中心部分において部分的に枯渇しており、一方で、包晶形成合金元素は片の中心部分において豊富である。
図6gは、毎分57.3メートル(毎分188フィート)の鋳造速度、0.24センチメートル(0.094インチ)の片の平均厚さ、39.4センチメートル(15.5インチ)の片の幅、及び幅1センチメートル当たり180ニュートン(幅1インチ当たり103ポンド)の適用力で製造した合金6−1の3つの片の積み重ねの横断面を25倍に拡大した顕微鏡写真である。1つの片の全層が、薄く暗いバンドの対の間で、図6gにおいて見られる。片全体における中心のより暗いバンドは、共晶形成合金元素が部分的に枯渇している上記の中心層18−6に対応し、一方で、フォール片の外側のより明るい部分は、上記の上部シェル6−6及び下部シェル8−6に対応する。図6hは、100倍に拡大した図6gの中心片の顕微鏡写真である。中心のより暗いバンドにおける粒子の球状の性質は、片の加工がキャスター中で発生しなかったことを示す。
図6iは、毎分70.4メートル(毎分231フィート)の鋳造速度、0.235センチメートル(0.0925インチ)のロール間隙、39.45センチメートル(15.5インチ)の片の幅、及び幅1センチメートル当たり170ニュートン(幅1インチ当たり97ポンド)の適用力で製造した合金6−2の2つの片の積み重ねの横断面を25倍に拡大した顕微鏡写真である。1つの片の全層及びもう1つの片の一部分は図6iによって例示する。図6iの片も、共晶形成合金元素が枯渇した、中心のより暗いバンドを呈する。図6jは、100倍に拡大した図6iの片の中心部分の顕微鏡写真である。中心のより暗いバンドにおける粒子の球状の性質も、片の加工がキャスター中で発生しなかったことを示す。
合金6−2の片(厚さ0.3センチメートル(0.1インチ))を合金元素の偏析について分析した。片の厚さにかけての合金元素の濃度を、共晶形成元素(Mg、Mn、Cu、Fe、及びSi)については図6k、包晶形成元素(Ti及びV)については図6lにグラフで表す。共晶形成合金元素は片の中心部分において部分的に枯渇しており、一方で、包晶形成合金元素は片の中心部分において豊富である。
図6mは、毎分59.7メートル(毎分196フィート)の鋳造速度、約0.25cm(0.098インチ)の片の平均厚さ、39.6cm(15.6インチ)の片の幅、及び幅1センチメートル当たり122ニュートン(幅1インチ当たり70ポンド)の適用力で製造した合金6−3の陽極酸化片の横断面を50倍に拡大した顕微鏡写真である。顕微鏡写真は、片の上面及び底面は示さずに、上部部分と下部部分とに挟まれた片の中心部分を示す。片における中心のより明るいバンドは、共晶形成合金元素が部分的に枯渇している上記の中心層18−6に対応し、一方で、片全体の外側のより暗い部分は、上記の上部シェル6−6及び下部シェル8−6に対応する。片中に見られる粒子は球状であり、これは、それに加工がされていないことを示す。
ロールR1及びR2を出る熱せられた片Sを、片Sが自己を支持するのに十分に冷えるまで支持することが有益であり得る。1つの支持機構を図6nに示し、ロールR1及びR2を出る片Sの下に位置付けられる連続コンベヤーベルトBを含む。ベルトBは、滑車Pの周りを移動し、片Sを所定の距離(例えば、約3メートル(10フィート))支持する。滑車Pの間のベルトBの長さは、鋳造プロセス、片Sの出口温度、及び片Sの合金によって決定されてもよい。ベルトBに好適な材料としては、固体形態にあるか又はメッシュとしての線維ガラス及び金属(例えば、鋼)が挙げられる。あるいは、図6oに示すように、支持機構は、片Sが冷える間にその上を移動するメタルシューなどの定置支持表面を含む。シューHは、熱せられた片Sが容易に付着しない材料で作製され得る。片SがロールR1及びR2を出る際に破損しがちであるというある特定の場合には、片Sは、空気又は水などの液体によって場所Eで冷却されてもよい。典型的には、片Sは、約593℃(1100°F)でロールR1及びR2を出る。片温度をニップNの約20〜25cm(8〜10インチ)内で約538℃(1000°F)に低下させることが望ましい場合がある。片を場所Eで冷却してその冷却量を達成するための1つの好適な機構は、米国特許第4,823,860号に記載される。別個の急冷装置を使用して、片を更に急冷し、上述の冷却速度を達成してもよい。
一実施形態において、方法は、鋳造後のシートを急冷することを含む。これらの実施形態では、溶体化工程は、溶体化熱処理及び急冷を含み、溶体化熱処理は、連続鋳造に起因して遂行される。調製工程は、アルミニウム合金シートを連続鋳造装置から除去し、除去工程後ではあるがアルミニウム合金シートが371℃(700°F)の温度に達する前に、アルミニウム合金シートを急冷することを更に含み、この急冷は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒50℃(毎秒100°F)の速度で低下させ、それにより溶体化を遂行する。溶体化工程を遂行するため、連続鋳造装置を出るアルミニウム合金片の温度は、急冷工程中のアルミニウム合金シートの温度よりも高い。
一実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートが427℃(800°F)の温度に達する前に開始される。別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートが482℃(900°F)の温度に達する前に開始される。更に別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートが538℃(1000°F)の温度に達する前に開始される。別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートが593℃(1100°F)の温度に達する前に開始される。
一実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒100℃(毎秒200°F)の速度で低下させる。別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒200℃(毎秒400°F)の速度で低下させる。更に別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒400℃(毎秒800°F)の速度で低下させる。別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒800℃(毎秒1600°F)の速度で低下させる。更に別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒1600℃(毎秒3200°F)の速度で低下させる。別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒3200℃(毎秒6400°F)の速度で低下させる。更に別の実施形態において、急冷工程は、アルミニウム合金シートの温度を少なくとも毎秒5000℃(毎秒10,000°F)の速度で低下させる。
急冷工程は、アルミニウム合金シートを低温にするために遂行し得る(例えば、後続の冷間加工工程に起因して)。一実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを93℃(200°F)以下の温度に冷却することを含む(すなわち、急冷工程完了時のアルミニウム合金シートの温度は、93℃(200°F)以下である)。別の実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを66℃(150°F)以下の温度に冷却することを含む。更に別の実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを38℃(100°F)以下の温度に冷却することを含む。別の実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを周囲温度に冷却することを含む。
急冷工程は、任意の好適な冷却媒体によって遂行されてもよい。一実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを気体と接触させることを含む。一実施形態において、気体は空気である。一実施形態において、急冷は、アルミニウム合金シートを液体と接触させることを含む。一実施形態において、液体は、水又は別の水性冷却溶液など、水性である。一実施形態において、液体は油である。一実施形態において、油は炭化水素系である。別の実施形態において、油はシリコーン系である。
いくつかの実施形態では、急冷は、連続鋳造装置の下流にある急冷装置によって遂行される。他の実施形態においては、外気冷却が使用される。
c.双ロール連続鋳造−−粒子状物質を用いた連続鋳造
一実施形態において、双ロール鋳造装置及びプロセスは、中に粒子状物質を有するアルミニウム合金製品を生成し得る。粒子状物質は、酸化アルミニウム、炭化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ホウ素などの任意の非金属材料、又は鋳造中にインサイツで創出されたか、若しくは溶融アルミニウム合金に付加された金属材料であることができる。この実施形態の目的では、「上部(upper)」、「下部」、「右側」、「左側」、「垂直」、「平行」、「上部(top)」、「底部」という用語、及びこれらの派生語は、場合に応じて6p〜6sの図面中に配向されるように、本開示に関係する。
次に図6pを参照して、この実施形態においては、鋳造/溶体化工程142は、提供される粒子状物質を持つ片を連続鋳造することを含み得る。工程1006では、粒子状物質を含有する溶融アルミニウム合金は、図6b−1及び6b−2に対して上に記載した鋳造装置などの鋳造装置に送達されてもよい。工程1026では、鋳造装置は、溶融金属の少なくとも一部分を急速に冷却して、溶融金属の外部領域(領域(area)、シェル、及び層としても言及される)、及び粒子状物質で強化した内部領域(領域(area)、シェル、及び層としても言及される)を固体化させ得る。固体化された外側領域の厚さは、合金が鋳造されるときに増加し得る。
鋳造装置を出る製品は、単層製品であってもよく、外側固体領域内に挟まれた、粒子状物質を含有する工程1026中で形成された固体内部領域を含んでもよい。単層製品は、シート、プレート、又は箔などであるこれらに限定されない種々の形態で生成されることができる。押出し鋳造では、製品は、ワイヤ、ロッド、棒、又は他の押出しの形態にあってもよい。
図6b−2と同様であるが次は図6qを参照して、粒子状物質100−6を含有する溶融アルミニウム合金金属Mは、ロールキャスターのロールR1とR2との間に提供され得る。当業者であれば、ロールR1及びR2がロールキャスターの鋳造表面であることを理解するであろう。典型的には、R1及びR2は冷却されて、ロールR1及びR2にそれぞれ領域2−6及び4−6で直接接触する溶融金属Mの固体化を助ける。ロールR1及びR2と接触する際に、金属Mは冷却及び固体化される。冷却されている金属は、ロールR1に隣接する固体化された金属の第1の領域又はシェル6−6、及びロールR2に隣接する固体化された金属の第2の領域又はシェル8−6として固体化する。領域又はシェル8−6及び6−6の各々の厚さは、金属MがニップNに向かって前進するにつれて増加する。最初は、粒子状物質100−6は、第1の領域8−6及び第2の領域6−6の各々と溶融金属Mとの間の界面に位置し得る。溶融金属Mが冷却されたロールR1、R2の反対面の間を移動するときに、粒子状物質100−6は、溶融金属Mのより遅い移動流の「内部部分」としてもこの実施形態では言及される中心領域(又は部分)12−6の中へと引き込まれ、矢印C1及びC2の方向に運ばれ得る。領域16−6として言及される、ニップNの上流にある中心領域12では、金属Mは半固体であり、粒子状物質100−6構成要素及び溶融金属M構成要素を含む。領域16−6中の溶融金属Mは、その中の粒子状物質100−6の分散に一部起因する軟練りを有してもよい。ニップNでのロールR1及びR2の前方回転は、実質的に、金属の固体部分、すなわち、第1の領域6−6及び第2の領域8−6、並びに中心領域12−6中の粒子状物質のみを前進させ、同時に、溶融金属MをニップNから上流にある中心部分12−6に押し込んで、金属が、それがニップNの先を離れるときに実質的に固体であるようにする。ニップNの下流で、中心領域12−6は、第1の領域6−6と領域シェル8−6との間にサンドイッチされた粒子状物質100−6を含有する固体中心領域(又は層)18−6である。明確化のために、第1の領域6−6と第2の領域8−6との間にサンドイッチされた高濃度の粒子状物質100−6を持つ中心層又は領域18−6を有する、上に記載した単層の単連続鋳造アルミニウム物品は、傾斜機能性MMC構造としても言及される。中心層18−6における粒子状物質100−6のサイズは、少なくとも30ミクロンである。片製品においては、固体内部領域(又は部分)は、片の厚さ全体の20〜30パーセントを構成し得る。図6qのキャスターは概して水平な配向で製造片20−6として示されてはいるが、これは、片20−6が傾斜して又は垂直にキャスターを出得るとして限定することは意味していない。
図6qに対して記載した鋳造プロセスは、図6pにおいて上で概説した方法工程に従う。ロールキャスターに工程1006中で送達された溶融金属は、工程1026において冷却され、固体化し始める。冷却されている金属は、冷却された鋳造表面R1、R2に近接又は隣接している、固体化された金属の外側層、すなわち、第1の領域6−6及び第2の領域8−6を生じさせる。前述の段落において述べたように、第1の領域(又はシェル)6−6及び第2の領域(又はシェル)8−6の厚さは、金属が鋳造装置を通って前進するにつれて増加する。工程1026によって、粒子状物質100−6は、固体化された外側領域6−6及び8−6に部分的に囲まれる中心部分12−6の中へと引き込まれ得る。図6qにおいて、第1の領域6−6及び第2の領域8−6は、中心領域18−6を実質的に取り囲む。換言すれば、粒子状物質100−6を含有する中心領域18−6は、濃度勾配に沿って、単層製品内で第1の領域6−6と第2の領域8−6との間に位置する。別の言い方をすれば、中心領域18−6は、第1のシェル6−6と第2のシェル8−6との間にサンドイッチされる。他の鋳造装置においては、第1及び/又は第2のシェルは、内側層を完全に取り囲んでもよい。工程1026の後、中心領域18−6は固体化されて、内部領域(又は層)を製造し得る。固体化を完了する前、片20−6の中心領域12−6は、半固体であり、粒子状物質構成要素及び溶融金属構成要素を含む。この段階にある金属は、その中の粒子状物質の分散に一部起因する軟練りを有してもよい。
工程1026の後しばらくすると、製品は、完全に固体化され、内部領域(又は層)を含み、この内部領域(又は層)は、粒子状物質、並びに内部領域(又は層)を実質的に取り囲む第1及び第2のシェル、すなわち、外部領域又は層を含む。内部領域(又は層)の厚さは、製品の厚さの約10〜40%であってもよい。代替的な実施形態において、内部領域(又は層)は、約70体積%の粒子状物質100−6からなってもよく、一方で、第1及び第2のシェルは各々独立して、約15体積%の粒子状物質100−6からなる。また更なる実施形態において、内部領域(又は層)は、少なくとも70体積%の粒子状物質100−6からなってもよく、一方で、第1及び第2のシェルは各々独立して、15体積%未満の粒子状物質100−6からなる。
鋳造中、内側領域への粒子状物質100−6の移動は、溶融金属の内側領域と固体化された外側領域との間の速度差に起因する剪断力によって引き起こされ得る。内側領域への移動を容易にするために、ロールキャスターを、少なくとも9メートル/分(30fpm)、あるいは少なくとも12メートル/分(40fpm)、及びあるいは毎分少なくとも15メートル(50fpm(フィート毎分))の速度で操作してもよい。換言すれば、鋳造中、少なくとも30ミクロンのサイズを有する粒子状物質100−6は、一様に分配された状態から、より濃縮された状態、すなわち、鋳造中の内部領域へと移動する。理論に束縛されることなく、毎分3メートル(毎分10フィート)未満の速度で操作されるロールキャスターは、粒子状物質(少なくとも30ミクロンのサイズを有する)を内部領域(又は層)へと移動させるのに必要とされる剪断力を生成しないと考えられている。
ロールR1及びR2の適切な速度の制御、維持、及び選択は、鋳造装置の操作性に影響し得る。圧延速度は、溶融金属MがニップNに向かって前進する速度を決定する。速度が遅すぎると、粒子状物質100−6は、金属製品の中心部分18−6に取り込まれるのに十分な力を受けない場合がある。一実施形態において、装置は、毎分15〜91メートル(毎分50〜300フィート)の範囲の速度で操作される。溶融アルミニウムがロールR1及びR2に送達される線速度は、ロールR1及びR2の速度未満、又は圧延速度の約4分の1であってもよい。
次に図6rを参照して、ここでは、本開示に従う傾斜機能性MMC鋳造のミクロ構造が示される。示されている片400−6は、15重量%のアルミナを含み、0.01cm(0.004インチ)ゲージである。粒子状物質410−6は、より高い濃度の粒子が中心領域(又は層、又は部分)401−06に集中しつつ、片400−6全体に分布しているのが見られ、一方で、それぞれ外側領域(又は層、又はシェル)402−06及び403−06では、より低い濃度が見られ得る。理論に束縛されることなく、鋳造中の溶融物の急速な固体化に起因して、粒子状物質410−6とアルミニウムマトリックスとの間には反応がないと考えられている。また更に、図6sで見られ得るように、粒子と金属マトリックスとの間の界面における損傷はない。粒子状物質は製品の表面上に突き出ないため、圧延機ロールを摩耗又は消磨させない。
d.双ロール連続鋳造−−非混和性金属の連続鋳造
別の実施形態において、双ロール鋳造装置及びプロセスは、その中に非混和相を有するアルミニウム合金製品を生成し得る。好適な非混和相元素としては、Sn、Pb、Bi、及びCdが挙げられ、以下の組成の節(節G)において以下に開示する量で存在してもよい。この実施形態の目的では、「上部(upper)」、「下部」、「右側」、「左側」、「垂直」、「平行」、「上部(top)」、「底部」という用語、及びこれらの派生語は、場合に応じて6t〜6xの図面中に配向されるように、本開示に関係する。
次に図6tを参照して、この実施形態において、鋳造/溶体化工程142は、提供されるその中に少なくとも1つの非混和相を持つ片を連続鋳造することを含み得る。工程1046では、溶融アルミニウム合金及び少なくとも1つの非混和相元素は、図6b−1及び6b−2に対して上に記載した鋳造装置などの鋳造装置に送達されてもよい。工程1066では、鋳造装置は、毎分15〜91メートル(毎分50〜300フィート)の範囲の鋳造速度で操作される。
これからプロセスが図6u〜6wに示される装置に関して例示されるが、このプロセスは、図6b−1、6b−2、6n、6o、6q、及び7a〜7bに示される装置、並びに他の型の連続鋳造装置にも適用可能である。図6uに示されるように、装置は、上部滑車1467及び1667の対、並びに対応する下部滑車1867及び2067の対によって運ばれる鋳型として働く無端ベルト1067及び1267の対を含む。各滑車は、それぞれ、軸2167、2267、2467、及び2667の周りを回転するように取り付けられ得る。滑車は、好適な耐熱型であってもよく、上部滑車1467及び1667の両方又はいずれかは、好適なモーター手段(図示せず)によって駆動される。下部滑車1867及び2067についても同様である。ベルト1067及び1267の各々は、無端ベルトであり、概して、鋳造される金属との反応性が低い又は無い金属で形成される。鋼及び銅合金ベルトを使用することで良好な結果が達成されるが、アルミニウムなどの他ベルトを使用することもできる。本発明のこの実施形態において、鋳型は、鋳造ベルト1067及び1267として実装されることに留意されたい。しかしながら、鋳型は、例えば、単一の型、1つ以上のロール、又はブロックのセットを含むことができる。
滑車は、図6u及び6vに例示されるように、間に成形用の間隙を伴って上下に位置付けられる。間隙は、鋳造される金属片の所望の厚さに対応するように寸法決定される。それゆえ、鋳造される金属片の厚さは、鋳造ベルト1067及び1267に垂直である滑車1467及び1867の軸を通過する線に沿って滑車1467及び1867の上を通過するベルト1067及び1267の間のニップの寸法によって決定される。鋳造される溶融金属は、タンディッシュなどの金属供給手段2867を通して成形区域に供給され得る。タンディッシュ2867の内部は、幅において、鋳造される製品の幅に対応し、最大で鋳造ベルト1067及び1267のより狭い部分の幅までの幅を有することができる。タンディッシュ28は、溶融金属の水平流をベルト1067とベルト1267との間の成形区域に送達するために、金属供給送達鋳造先端部3067を含む。
それゆえ、先端部3067は、図6vに示されるように、先端部3067に直ぐに隣接するベルト1067及び1267と併せて、溶融金属の水平流が流れ込む成形区域を画定する。それゆえ、先端部から実質的に水平に流れる溶融金属の流れは、ベルト1067及びベルト1267各々の湾曲の間の成形区域を、滑車1467及び1867のニップまで満たす。流れは固体化され始め、鋳造片が滑車1467及び1867のニップに達する時点までに実質的に固体化される。溶融金属の水平に流れる流れを、それが滑車1467及び1867の周りを通過するベルト1067及び1267の湾曲区分と接触する成形区域に供給することは、歪みを制限し、それにより溶融金属とベルト各々との間のより良好な熱的接触を維持し、同時に鋳造片の上面及び底面の質を改善させる働きをする。
図6u〜6wに示される鋳造装置は、ベルト1067と1267との間の成形用間隙中で鋳造される金属と接触している無端ベルトのその部分と反対に位置付けられる冷却装置3267及び3467の対を含んでもよい。冷却手段3267及び3467は、それゆえに、ベルト1067及び1267を、それらがそれぞれ滑車1667及び2067を通過した直後、かつそれらが溶融金属と接触する前に、冷却する働きをする。図6u及び6wで例示されるように、冷却器3267及び3467は、それぞれベルト1067及び1267の復路上に、示されるように位置付けられる。冷却装置3267及び3467は、ベルトをそれらの厚さ全体に冷却するために、ベルト1067及び1267の内側及び/又は外側に直接冷却液を噴霧するように位置付けられる液体冷却先端部などの従来の冷却装置であることができる。
それゆえ、溶融金属は、タンディッシュから、鋳造先端部3067を通して、ベルト1067及び1267が鋳造片からベルト1067及び1267への熱伝導によって加熱される、ベルト1067と1267との間に画定される鋳造又は成形区域へと水平に流れる。鋳造金属片は、鋳造ベルト1067及び1267の各々が滑車1667及び2067の中心線を過ぎて回るまで、鋳造ベルト1067と1267との間に留まり、それらによって運搬される。その後、復路ループにおいて、冷却装置3267及び3467は、それぞれベルト1067及び1267を冷却し、成形区域でベルトに伝導された熱を実質的に全てそこから除去する。鋳造先端部3067を通したタンディッシュからの溶融金属の供給は、図6w中でより詳細に示され、ここで鋳造先端部3067は、間に中心開口部4467を画定する上壁4067及び下壁4267で形成され、その幅は実質的にベルト1067及び1267の幅にわたって伸長し得る。
鋳造先端部3067の壁4067及び4267の遠位端部は、それぞれ鋳造ベルト1067及び1267の表面に近位であり、溶融金属が中心開口部4467を通って流れ込む鋳造空洞又は成形区域4467を、ベルト1067及び1267によって画定する。鋳造空洞4667中の溶融金属がベルト1067と1267との間を流れるとき、溶融金属はその熱をベルト1067及び1267に伝導し、同時に溶融金属を冷却して、鋳造ベルト1067と1267との間に維持された固体片5067を形成する。十分な後退(入口滑車1467及び1867のクローゼット接近として画定される4767、溶融金属4667の第1の接点とニップ4867との間の距離として画定される)が、ニップ4867の前に実質的に完全な固体化を可能にするために提供される。
操作中、液体状態において非混和性である相を含む溶融アルミニウム合金は、タンディッシュ2867を介して、鋳造先端部3067を通り、ベルト1067と1267との間に画定された鋳造区域中へと導入される。一実施形態において、滑車1467及び1867上を通過するベルト1067と1267との間のニップの寸法は、0.2〜0.632センチメートル(0.08〜0.249インチ)の範囲にあり、鋳造速度は、15〜91メートル/分(50〜300fpm)である。これらの条件下で、非混和性液相の液滴は、凝固前面の前で核となってもよく、急速に移動する凍結前面によって、第2のデンドライトアーム(「SDA」)の空間の間の空間中に取り込まれてもよい。それゆえ、得られる鋳造片は、非混和相の液滴の均一な分布を含み得る。
次に図6xを見ると、本発明に従って製造されたAl−6Sn(6重量パーセントの錫を有するアルミニウム合金)片40067の切片の顕微鏡写真が示される。片は、3マイクロメートル以下である微細なSn粒子40167の均一な分布を示す。この結果は、典型的には40ミクロン〜400ミクロンのサイズである、鋳塊から又は圧延鋳造によって作製された材料からもたらされ得る粒子よりも、数倍小さい。
B.冷間加工
図2aを再び参照すると、上記したように、新規プロセスは、アルミニウム合金体を高度に冷間加工すること(200)を含む。「冷間加工(cold working)」及びその類似語は、アルミニウム合金体を、少なくとも1つの方向に、熱間加工温度より低い温度(例えば、204℃(400°F)以下)で変形することを意味する。冷間加工は、冷間加工法の種類の中でも特に、圧延、押出し、鍛造、絞り、しごき、スピニング、フロー成形、及びそれらの組合せのうちの1つ以上のものによって加えられ得る。これらの冷間加工法は、様々なマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の製造の少なくとも一部分を支援し得る(以下の製品用途を参照)。
i.冷間圧延
一実施態様において、かつ図9を次に参照して、冷間加工工程(200)は、冷間圧延(220)を含む(また、場合によっては、冷間圧延(220)からなり、任意選択で、平坦化するための延伸又は真直化(240)を含む)。この実施形態において、上記したように、冷間圧延工程(220)は溶体化工程(140)の後に行われる。冷間圧延(220)は、アルミニウム合金体の厚さを減少させる製作技術であり、概して、ローラによって圧力を加えることによって行われ、アルミニウム合金体は、熱間圧延(124)に用いられる温度より低い温度(例えば、204℃(400°F)以下)の圧延設備に装入される。一実施形態において、アルミニウム合金体は周囲条件の圧延設備に装入され、すなわち、この実施形態において、冷間圧延工程(220)は周囲条件で開始される。
冷間圧延工程(220)によりマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体の厚さは少なくとも25%減少される。冷間圧延工程(220)は1つ以上の圧延パス回数で行われ得る。一実施形態において、冷間圧延工程(220)によりアルミニウム合金体は中間ゲージから最終ゲージまで圧延される。冷間圧延工程(220)によって、シート製品、プレート製品、又はホイル製品が製造され得る。ホイル製品は、厚さが0.02センチメートル(0.006インチ)未満の圧延製品である。シート製品は、厚さが0.02センチメートル〜0.632センチメートル(0.006インチ〜0.249インチ)の圧延製品である。プレート製品は、厚さが0.635センチメートル(0.250インチ)以上の圧延製品である。
「XX%の冷間圧延」及びその類似語は、XXCR%を意味し、ここで、XXCR%は、アルミニウム合金体が冷間圧延によりT1の第1厚さからT2の第2厚さまで減少した場合に達成される厚さ減少量であり、ここで、T1は冷間圧延工程(200)前(例えば、溶体化後)の厚さであり、T2は冷間圧延工程(200)後の厚さである。換言すれば、XXCR%は以下に等しい:
XXCR%=(1−T2/T1)*100%
例えば、アルミニウム合金体を第1厚さ(T1)15.0mmから第2厚さ3.0mm(T2)まで冷間圧延した場合、XXCR%は80%である。「80%冷間圧延する」「80%冷間圧延された」などの語句は、XXCR%=80%という表現と同じである。
一実施形態において、アルミニウム合金体は、少なくとも30%冷間圧延され(XXCR%≧30%)(220)、すなわち、厚さが少なくとも30%減少される。他の実施形態において、アルミニウム合金体は、少なくとも35%(XXCR%≧35%)、又は少なくとも40%(XXCR%≧40%)、又は少なくとも45%(XXCR%≧45%)、又は少なくとも50%(XXCR%≧50%)、又は少なくとも55%(XXCR%≧55%)、又は少なくとも60%(XXCR%≧60%)、又は少なくとも65%(XXCR%≧65%)、又は少なくとも70%(XXCR%≧70%)、又は少なくとも75%(XXCR%≧75%)、又は少なくとも80%(XXCR%≧80%)、又は少なくとも85%(XXCR%≧85%)、又は少なくとも90%(XXCR%≧90%)、又はそれを超えて冷間圧延される(220)。
いくつかの実施形態において、90%を超えて冷間圧延する(XXCR%≦90%)(220)ことは非現実的又は非理想的であり得る。これらの実施形態において、アルミニウム合金体は、87%以下で冷間圧延され得(XXCR%≦87%)(220)、例えば、85%以下(XXCR%≦85%)、又は83%以下(XXCR%≦83%)、又は80%以下(XXCR%≦80%)で冷間圧延され得る(220)。
一実施形態において、アルミニウム合金体は、50%超〜85%以下の範囲で冷間圧延される(50%<XXCR%≦85%)。この冷間圧延量によって、好ましい特性を有するアルミニウム合金体を製造し得る。関連する実施形態において、アルミニウム合金体は、55%〜85%の範囲で冷間圧延され得る(55%≦XXCR%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、60%〜85%の範囲で冷間圧延され得る(60%≦XXCR%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、65%〜85%の範囲で冷間圧延され得る(65%≦XXCR%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、70%〜80%の範囲で冷間圧延され得る(70%≦XXCR%≦80%)。
図9を更に参照すると、該プロセスのこの実施形態において、任意選択で、事前冷間圧延(128)を行うことができる。この事前冷間圧延工程(128)により、(熱間圧延(126)による)アルミニウム合金体の中間ゲージを、溶体化(140)前に第2の中間ゲージに更に減少させ得る。例えば、冷間圧延工程(128)を用いることにより、第2の中間ゲージにし得るので、冷間圧延工程(220)における最終冷間圧延ゲージの製造が容易になる。
ii.他の冷間加工技術
冷間圧延の他に、再び図2aを参照して、冷間加工は、冷間加工法の種類の中でも特に、押出し、鍛造、絞り、しごき、スピニング、フロー成形、及びそれらの組合せの1つ以上のものによって、単独で又は冷間圧延と組み合わせて加えられ得る。上述したように、アルミニウム合金体は、概して、溶体化後に少なくとも25%冷間加工される。一実施形態において、冷間加工によって、アルミニウム合金体はその実質的に最終の形態に加工される(すなわち、最終製品形態にするのに追加の熱間加工工程及び/又は冷間加工工程は必要ではない)。
「XX%冷間加工する」(「XXCW%」)及びその類似語は、アルミニウム合金体の冷間加工量について、アルミニウム合金体がXX%冷間圧延された(XXCR%)場合に達成されるであろう塑性歪み量と少なくとも同程度に大きい等価塑性歪み(equivalent plastic strain)(下記参照)を達成するのに十分な量の冷間加工を意味する。例えば、「68.2%冷間加工する」という語句は、アルミニウム合金体の冷間加工量について、アルミニウム合金体が68.2%冷間圧延された場合に達成されるであろう塑性歪み量と少なくとも同程度に大きい等価塑性歪みを達成するのに十分な量の冷間加工を意味する。XXCW%及びXXCR%はどちらも、アルミニウム合金体があたかもXX%冷間圧延されたかのように(又は実際の冷間圧延の場合、実際にXX%冷間圧延される)、アルミニウム合金体において生じた等価塑性歪み量のことを指すため、これらの用語は本明細書において互換的に用いられ、この等価塑性歪み量のことを指す。
等価塑性歪みは真歪み(true strain)と関係している。例えば、冷間圧延XX%、すなわち、XX
CR%は、真歪み値により表すことができ、ここで、真歪み(ε
true)は下記の式により求められる:
上記式中、%CRはXX
CR%であり、真歪み値は等価塑性歪み値に変換し得る。冷間圧延中に二軸歪みが生じる場合には、等価塑性歪みの推定値は真歪み値より1.155倍大きくなる(2÷√3=1.155)。二軸歪みは、冷間圧延工程中に加えられる塑性歪みの種類を表す。冷間圧延XX%と、真歪み値及び等価塑性歪み値との相関関係を示す表が、下記に提供される。
これらの等価塑性歪み値は以下を前提条件としている:
A.弾性歪みはない。
B.真塑性歪みは体積の一定性を維持する。
C.負荷は比例する。
比例負荷については、上記原理及び/又は他の原理を用いて、様々な冷間加工についての等価塑性歪みを決定し得る。非比例負荷については、冷間加工による等価塑性歪みを、下記の式を用いて決定し得る:
上記式中、de
pは等価塑性歪み増分であり、
上記は主塑性歪み成分の増分を表す。これらについては、Plasticity,A.Mendelson,Krieger Pub Co;2nd edition(August 1983),ISBN−10:0898745829を参照されたい。
冷間加工工程(200)には、アルミニウム合金体を第1の方法(例えば、圧縮)で変形し、次いで、そのアルミニウム合金体を第2の方法(例えば、延伸)で変形することが含まれ得ること、そして、本明細書に記載する等価塑性歪みとは、冷間加工工程(200)の一部として行われた全ての変形加工による累積歪みを指すことは当業者ならば理解するであろう。更に、冷間加工工程(200)によって歪みは生じるが、アルミニウム合金体の最終寸法は必ずしも変化しないということも当業者ならば理解するであろう。例えば、アルミニウム合金体を第1の方法(例えば、圧縮)で冷間変形させ、その後、それを第2の方法(例えば、延伸)で冷間変形させることができ、その累積結果から、冷間加工工程(200)の様々な冷間変形工程により歪みは増加していても、アルミニウム合金体の最終寸法は、冷間加工工程(200)前のアルミニウム合金体とほぼ同じである。同様に、曲げ工程とその後に逆曲げ工程を行なうことによって高い累積歪みを達成し得る。
累積等価塑性歪み、ひいては、XXCR%は、任意の所定の冷間加工操作、又は一連の冷間加工操作について、それらの冷間加工操作によってもたらされた等価塑性歪みを計算し、次いで、上に示した方法及び当業者に既知の他の方法によってその対応するXXCR%値を求めることにより決定し得る。例えば、アルミニウム合金体に冷間絞り加工することができ、当業者であれば、アルミニウム合金体にもたらされた等価塑性歪み量を、冷間絞りの操作パラメータに基づいて計算し得る。冷間絞りによって、例えば、等価塑性歪み約0.9552がもたらされた場合、この冷間絞り工程はXXCR%約56.3%に相当する(0.9552/1.155により真歪み値は0.8270(εtrue)であり、次に、上の式(1)を用いると、対応するXXCR%は56.3%となる)。したがって、この例では、冷間加工が冷間絞りであり、冷間圧延ではなかったとしても、XXCR%=56.3である。更に、「XX%冷間加工する」(「XXCW%」)は、単に冷間圧延によってアルミニウム合金体の厚さがXX%減少(「XXCR%」)された場合に達成されるであろう等価塑性歪み量と少なくとも同程度に大きい等価塑性歪みを達成するのに十分な量のアルミニウム合金体を冷間加工することと(上に)定義されており、XXCWもまた56.3%である。一連の冷間加工操作を用いる場合にも同様の計算を行うことができ、そのような状況では、一連の冷間加工操作による累積等価塑性歪みを用いて、XXCR%を決定することになろう。
前述のように、冷間加工(200)は、アルミニウム合金体がXXCW%又はXXCR%≧25%、すなわち、≧0.3322の等価塑性歪みを実現するように行われる。「XX%冷間加工する」及びその類似語は、XXCW%を意味する。「80%冷間加工する」及び「80%冷間加工された」の記載は、XXCW%=80という表現と同じである。不均一な冷間加工作業の調整については、等価塑性歪み量、したがって、XXCW又はXXCRの量が、冷間加工(200)を受けたアルミニウム合金体の部分(複数可)において決定される。
一実施形態において、アルミニウム合金体は、少なくとも0.4119(すなわち、XXCW%≧30%)の等価塑性歪み(「EPS」)を達成及び実現するのに十分な冷間加工を受ける(200)。他の実施形態において、アルミニウム合金体は、EPSが少なくとも0.4974(XXCW%≧35%)、又は少なくとも0.5899(XXCW%≧40%)、又は少なくとも0.6903(XXCW%≧45%)、又は少なくとも0.8004、(XXCW%≧50%)、又は少なくとも0.9220(XXCW%≧55%)、又は少なくとも1.0583(XXCW%≧60%)、又は少なくとも1.2120(XXCW%≧65%)、又は少なくとも1.3902(XXCW%≧70%)、又は少なくとも1.6008(XXCW%≧75%)、又は少なくとも1.8584(XXCW%≧80%)、又は少なくとも2.1906(XXCW%≧85%)、又は少なくとも2.6588(XXCW%≧90%)、又はそれを超える値を達成及び実現するのに十分な冷間加工を受ける(200)。
いくつかの実施形態において、90%を超えて冷間加工する(XXCW%≦90%及びEPS≦2.6588)(200)ことは非現実的又は非理想的であり得る。これらの実施形態において、アルミニウム合金体は、87%以下で冷間加工され得(XXCW%≦87%及びEPS≦2.3564)(200)、例えば、85%以下(XXCW%≦85%及びEPS≦2.1906)、又は83%以下(XXCW%≦83%及びEPS≦2.0466)、又は80%以下(XXCW%≦80%及びEPS≦1.8584)で冷間加工(200)され得る。
一実施形態において、アルミニウム合金体は、50%超〜85%以下の範囲で冷間加工(200)される(50%≦XXCW%≦85%)。この冷間加工(200)量は、好ましい特性を有するアルミニウム合金体を製造し得る。関連する実施形態において、アルミニウム合金体は、55%〜85%の範囲で冷間加工(200)される(55%≦XXCW%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、60%〜85%の範囲で冷間加工(200)される(60%≦XXCW%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、65%〜85%の範囲で冷間加工(200)される(65%≦XXCW%≦85%)。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、70%〜80%の範囲で冷間加工(200)される(70%≦XXCW%≦80%)。
iii.勾配
冷間加工工程(200)は、アルミニウム合金体が略均一に変形するように、なかでも、上述した圧延プロセス、又は従来の押出プロセスなどを介して調整され得る。他の実施形態において、冷間加工工程は、アルミニウム合金体が略不均一に変形するように調整され得る。したがって、いくつかの実施形態において、該プロセスにより、調整された冷間加工勾配を有するアルミニウム合金体を製造し得、すなわち、アルミニウム合金体の第1の部分は調整された第1の冷間加工量を受け、アルミニウム合金体の第2の部分は調整された第2の冷間加工量を受け、この場合、第1の冷間加工量は第2の冷間加工量とは異なる。調整された不均一冷間加工を達成するために、単独で又は組み合わせて行うことができる冷間加工操作(200)の例としては、なかでも、鍛造、バニッシング、ショットピーニング、フロー成形、及びスピンフォーミングが挙げられる。そのような冷間加工工程は、なかでも、冷間圧延及び/又は押出しなどの略均一な冷間加工と組み合わせて利用することもできる。上述のように、調整された不均一冷間加工工程の場合、等価塑性歪み量は、冷間加工(200)を受けるアルミニウム合金体の部分(複数可)において決定される。それゆえ、熱処理工程(300)の後に、このような製品は、第1の強度有する第1の部分、及び第2の強度を有する第2の部分を有し、第1の強度は第2の強度とは異なる。
調整された製品は、例えば、より高い強度が材料の1つの部分で求められるが、材料の別の部分ではより低い強度及び/又はより高い延性が求められる状況において、有用であり得る。例えば、自動車部品又は航空宇宙用部品は、その外周の周りでの急な曲げ半径及び/又は深絞り要件などの形成要件を有し得るが、それが他の部品に接着される場所では高い強度も必要とし得る(例えば、ボルト締め、リベット打ち、又は溶接)。典型的には、これら2つの特徴は、相互に相反する。しかしながら、選択的強化を使用することで、単板が両方の要件を満たすことが可能である。
以下で更に詳細に記載するように、調整した冷間加工を使用して、第1の部分及び第2の部分を有する一体型アルミニウム合金体(例えば、シート、プレート、又は管)を製造することができ、第1の部分は少なくとも25%の冷間加工を有し、第2の部分は第1の部分より少なくとも5%少ない冷間加工を有する、すなわち、第1及び第2の部分は、異なる量の誘導された冷間加工を有する(例えば、以下に記載の図2b〜2mを参照されたい)。この小節(B)(iii)との関連で、「少なくともXX%少ない冷間加工」及び類似語は、XX%値が第1の冷間加工パーセント値から引かれることを意味する。例えば、第2の部分が、少なくともYY%の冷間加工を有する第1の部分よりも少なくともXX%少ない冷間加工を有する場合、第2の部分は、YY%−XX%以下の冷間加工を有し得る。
一実施形態において、第2の部分は第1の部分に隣接する(例えば、以下の図2jを参照されたい)。この小節(B)(iii)の目的では、「隣接」は、近接しているか、又は近いが、必ずしも接触していないことを意味する。一実施形態において、隣接した第2の部分は、第1の部分に接触する。別の実施形態において、第1の部分が一体型アルミニウム合金体の第1の端部であり、第2の部分が一体型アルミニウム合金体の第2の端部である場合など、第2の部分は、第1の部分に隣接せず、離れている(例えば、以下に記載の図2b及び2dを参照されたい)。
一実施形態において、第1の部分及び第2の部分を有する一体型アルミニウム合金体は、シート又はプレートである。一実施形態において、このシート又はプレートは、均一な厚さを有する(例えば、以下に記載の図2d、2e、2g、2h、2j、及び2kを参照されたい)。別の実施形態において、シート又はプレートは不均一な厚さを有し、第1の部分はシート又はプレートの第1の厚さと関連付けられ、第2の部分はシート又はプレートの第2の厚さと関連付けられる(例えば、以下に記載の図2i及び2lを参照されたい)。
一実施形態において、一体型アルミニウム合金体の第1の部分は、少なくとも30%の冷間加工を有する。他の実施形態において、第1の部分は、少なくとも40%の冷間加工、又は少なくとも45%の冷間加工、又は少なくとも50%の冷間加工、又は少なくとも55%の冷間加工、又は少なくとも60%の冷間加工、又は少なくとも65%の冷間加工、又は少なくとも70%の冷間加工、又は少なくとも75%の冷間加工、又は少なくとも80%の冷間加工、又は少なくとも85%の冷間加工、又は少なくとも90%の冷間加工、又はそれ以上など、少なくとも35%の冷間加工を有する。これらの実施形態のいずれにおいても、第2の部分は、第1の部分よりも少なくとも10%少ない冷間加工を有してもよい。これらの実施形態のうちの1つにおいて、第2の部分は、第1の部分よりも少なくとも15%少ない冷間加工を有してもよい。これらの実施形態のうちの他のものにおいて、第2の部分は、第1の部分よりも、第2の部分よりも少なくとも20%少ない冷間加工、又は少なくとも25%少ない冷間加工、又は少なくとも30%少ない冷間加工、又は少なくとも35%少ない冷間加工、又は少なくとも40%少ない冷間加工、又は少なくとも45%少ない冷間加工、又は少なくとも50%少ない冷間加工、又は少なくとも55%少ない冷間加工、又は少なくとも60%少ない冷間加工、又は少なくとも65%少ない冷間加工、又は少なくとも70%少ない冷間加工、又は少なくとも75%少ない冷間加工、又は少なくとも80%少ない冷間加工、又は少なくとも85%少ない冷間加工、又は少なくとも90%少ない冷間加工を有してもよい。一実施形態において、第2の部分は、冷間加工操作中に冷間加工を受けない。
一実施形態において、一体型アルミニウム合金体の第1の部分は、第2の部分と比べて、少なくとも5%高い強度(引張降伏強度及び/又は最大引張強度)を有する。他の実施形態において、一体型アルミニウム合金体の第1の部分は、第2の部分と比べて、少なくとも10%高い、又は少なくとも20%高い、又は少なくとも30%高い、又は少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、又は少なくとも60%高い、又は少なくとも70%高い、又は少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、又は少なくとも100%高い(2倍)、又はそれ以上を有する。一実施形態において、第1の部分は、少なくとも4%の伸びを有する。他の実施形態において、第1の部分は、少なくとも6%、又は少なくとも8%、又は少なくとも10%、又は少なくとも12%、又はそれより高い伸びを有する。一実施形態において、第2の部分は、第1の部分よりも高い伸びを有する(延性/成形性に関係する)。
これらの第1の部分及び第2の部分を有する一体型アルミニウム合金体は、組立品の部品へと形成されてもよい。部品は、所定の製品(以下、節Fで定義する)へと形成されてもよい。しかしながら、部品は必ずしも形成を必要とするわけではないため、部品が所定の形状の製品であることは求められない。一実施形態において、第1の部分を有する部品は組立品の部品であり、第1の部分は、移動式装置(例えば、車両)又は定置式装置(例えば、建造物)の接着点などの、その組立品の接着点と関連付けられる。
一実施形態において、部品は車両の部品である。一実施形態において、部品は、一体型アルミニウム合金体の第1の部分及び第2の部分を含み、第1の部分は、第2の部分よりも高い強度を有する。一実施形態において、車両は自動車車両であり、接着点は、車両の「点荷重位置」に関係する。「点荷重位置」は、点荷重状態を特徴とする位置であり、可動体又は定置体に関係し得る。「点荷重状態」は、1つの場所で集中した、高荷重伝達を特徴とする構造(可動式又は定置式)における状態である。この荷重伝達は、溶接、リベット打ち、ボルト締めなどによって典型的に接合された領域中などの、構造の接着場所(複数可)で発生し得る。点荷重位置は、高応力に付される可能性があり得る(例えば、地上用車両の衝突事象、航空宇宙用車両の翼接着場所)。なかでも、座席取付用レール接着点(前方及び後方)、シートベルト接着点、付属物接着点(例えば、防火壁)、保護用ドアビーム接着点(例えば、ヒンジ、固定金具、ロック機構/ラッチ、保護用ドアビーム接着点)、エンジン取付部分、車体取付部分、ショックタワー、及びサスペンション制御アームといった自動車部品が、自動車車両の点荷重位置に関係し得る。これらの部品の多くが、図2n〜2o及び2p−1〜2p−3で例示される。別の実施形態において、車両は、バス、ワゴン車、牽引用トラック、ボックストレーラー、平台トレーラー、レクリエーション用車両(RV)、自動二輪車、全地形用車両(ATV)などの別の地上用車両であってもよく、部品は、第1の部分が接着点と関連付けられるように、これらの車両のために調整されてもよい。別の実施形態において、車両は、航空宇宙用車両であってもよく、部品は、航空宇宙用部品であり、部品の第1の部分は、例えば、航空宇宙用車両の接着点と関連付けられてもよい。別の実施形態において、車両は、海洋用船舶であってもよく、部品は、海洋用部品であり、部品の第1の部分は、海洋用車両の接着点と関連付けられてもよい。別の実施形態において、車両は、鉄道車又は機関車であってもよく、部品は、鉄道車又は機関車部品であり、部品の第1の部分は、鉄道車又は機関車の接着点と関連付けられてもよい。これらの部品は、例えば、弾道組立品中の装甲部品、又は海上プラットフォームのための部品などの、他の非車両組立品中で使用されてもよい。
別の実施形態において、第1の部分及び第2の部分を有する一体型アルミニウム合金体は、以下に記載の熱処理の節(節C(i))に記載する所定の状態のうちのいずれかなどの、所定の状態を達成するように処理されてもよい。このような実施形態では、第1の部分及び第2の部分のうちの少なくとも1つは、調整された特性を有する一体型アルミニウム合金体の製造を容易にするために、所定の条件(322)を達成する。例えば、第1の部分は、第1の所定の状態(例えば、第1の所定の強度及び/又は伸び)を達成するように処理されてもよく、第2の部分は、第2の所定の状態(例えば、第2の所定の強度及び/又は伸び)を達成するように処理されてもよく、第2の所定の状態は、第1の所定の状態とは異なる。一実施形態において、第1の部分は、第1の所定の強度(例えば、所定の引張降伏強度及び/又は所定の最大引張強度)へと加工され、第2の部分は、第2の所定の強度へと加工され、第1の所定の強度は、第2の所定の強度よりも高い。一実施形態において、第1の所定の強度は、上に記載した第1の部分と第2の部分との間の強度差のいずれかなど、第2の所定の強度よりも少なくとも5%高い。これらの実施形態のいずれにおいても、第2の部分は、第1の部分よりも高い伸びを実現する。このようなアルミニウム合金体は、例えば、調整した補強特性との組み合わせという可能性をもって、調整したエネルギー吸収特性を提供するために、有用であり得る。例えば、第1の部分及び第2の部分を有する一体型アルミニウム合金体から作製された部品は、第2の部分がエネルギー吸収区域(例えば、より高い延性を持ち、任意により低い強度を持つ)と関連付けられ、第1の部分が補強区域(例えば、より高い強度を持ち、任意により低い延性を持つ)と関連付けられるように、設計及び製造されてもよい。このような部品は、例えば、なかでも、自動車部品及び装甲用途において有用であり得る。一実施形態において、このような部品は、軽量衝突管理のために設計された自動車部品である。このような自動車部品の例としては、なかでも、前面クラッシュカン、ピラー(例えば、Aピラー、Bピラー)、ロッカーパネル又はシルパネル、前面上部レール(ショットガン)、下部縦材、フロントガラスヘッダー、上部ルーフサイドレール、シートレール、保護用ドアビーム、後方縦材、及びドアパネルが挙げられる。これらの部品の多くが、図2n〜2o及び2p−1〜2p−3で例示される。
上に記載するように、第2の部分は、第1の部分に隣接してもよい。他の実施形態において、第2の部分は、第1の部分から離れている。後者の実施形態のうちのいくつかにおいて、第1の部分は、一体型アルミニウム合金体の第1の端部であり、第2の部分は、一体型アルミニウム合金体の第2の端部であり、第1の端部は、少なくとも25%の冷間加工を含み、第2の端部は、第1の端部と比べて、少なくとも5%少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、このような合金体は不均一な厚さであってもよく、第1の端部は第1の厚さを有し、第2の端部は第2の厚さを有し、第1の厚さは、第2の厚さよりも少なくとも10%薄い。このような合金体は、第1の端部が第1の厚さを有し、第2の端部が第2の厚さを有する場合、及び第1の厚さが、第2の厚さの3%以内(例えば、第2の厚さの1%以内、又は第2の厚さの0.5%以内、又は第2の厚さの0.1%以内、又はそれ以下)である場合、代替的に均一な厚さを有してもよい。いずれの実施形態においても、アルミニウム合金体は、第1の端部及び第2の端部を分離している中間部分を有し得る。一実施形態において、中間部分における冷間加工の量は、第1の部分から第2の部分へと漸減し、逆もまた同様である(例えば、下に記載する図2b、2d、及び2iを参照されたい)。一実施形態において、中間部分は、概して、第1の端部から第2の端部へと均一に漸減する(例えば、図2b及び2dを参照されたい)。別の実施形態において、冷間加工の量は、第1の端部から第2の端部へと不均一に変化する(例えば、下に記載する図2c、2e、及び2fを参照されたい)。一実施形態において、第1の端部及び第2の端部は、一体型アルミニウム合金体の平行方向と関連付けられるため、製品の「L」方向に対して調整され得る。別の実施形態において、第1の端部及び第2の端部は、シート又はプレートの横方向と関連付けられるため、特性は、製品の「LT」又は横方向に対して調整され得る。
第1及び/又は第2の部分は、以下の特性の節(節H)に列挙する特性に列挙される特性のいずれかなどの、改善された特性を獲得し得る。一実施形態において、第1及び第2の部分の両方は、(a)冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金体、及び(b)1つのT6質別のアルミニウム合金体の基準品のうちの1つ以上と比べて、以下の特性の節(節H)に列挙する改善された強度特性/値のいずれかなどの、強度の改善を達成する。「冷間加工したままの状態」及び「T6質別の基準となるアルミニウム合金体」は、以下の節Dに定義する。一実施形態において、第1及び第2の部分の両方は、(a)冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金体、及び(b)1つのT6質別のアルミニウム合金体の基準品のうちの1つ以上と比べて、以下の特性の節(節H)に列挙する改善された強度特性/値のいずれかなどの、強度の及び伸びにおける改善を達成する。
調整された量の冷間加工を有するアルミニウム合金体内の調整された量の冷間加工を製造するための、アルミニウム合金体、装置、及び方法の実施形態が、図2b〜2lで例示される。1つのアプローチにおいては、冷間加工工程(200)前の不均一特性を有する一体型アルミニウム合金体が使用される。不均一特性を有するアルミニウム合金体の例が、図2b及び2cに例示される。図2bでは、アルミニウム合金体210bは、台形立体(楔形)の形態にあり、第1の端部210b−E1と関連付けられる第1の高さH1、及び第2の端部210b−E2と関連付けられる第2の高さH2を有し、第2の高さH2は、第1の高さH1とは異なり、この場合、第1の高さよりも短い。このような特性を有するアルミニウム合金体は、アルミニウム合金体の押出し(又は他の形成プロセス)を介してか、又は機械加工によって、溶体化工程(140)の前か、又はそれに付随して、製造されてもよい。
次に図2dを参照して、アルミニウム合金体が冷間加工工程(この場合、ローラ210rによる冷間圧延)に付されるとき、アルミニウム合金体210bは、単一ゲージ(例えば、最終ゲージ)で冷間加工装置210rを出るが、高さの差異に起因して、第2の端部210b−E2は、第1の端部210−E1よりも少ない冷間加工を受け、冷間加工の量は、台形立体の斜面に起因して、これら2つの端部210b−E1と端部210b−E2との間でアルミニウム合金体210bにわたって異なることになる。第1の端部210b−E1で誘導される冷間加工の量は、少なくとも25%であり、節(B)(i)又は(B)(ii)で上に記載した冷間加工レベルのうちのいずれであってもよい。それゆえ、冷間加工の後に、アルミニウム合金体210bは、第1の端部210b−E1と関連付けられる冷間加工の第1のレベル、及び第2の端部210b−E2と関連付けられる冷間加工の第2のレベルを有し、冷間加工の量は、概して第1の端部210b−E1と第2の端部210b−E2との間で均一に減少する。つまり、圧延方向(L方向)にアルミニウム合金体中で誘導された冷間加工の量は、第1の端部210b−E1と第2の端部210b−E2との間で概して均一に減少することになる。しかしながら、直角(LT)方向の冷間加工の量は、概して、いずれの所与のLT平面に対しても同一であることになる。このような製品は、例えば、1つの場所では高い強度、別の場所では形成のための高い延性が所望される、自動車部品パネル、又は1つの場所では高い強度、別の場所では高い耐損傷性が所望される、スパー若しくはウイングスキンなどの航空宇宙構造として有用であり得る。例えば、ウイングスキンは、機内端部(胴体に隣接)及び機外端部を有してもよく、機外端部は、より多くの冷間加工を受け(すなわち、第1の端部と関連付けられる)、そのため、より高い強度を有し(より高い剛性を伴う可能性がある)、機内端部は、より少ない冷間加工を受け(すなわち、第2の端部と関連付けられる)、そのため、改善された耐損傷性(靭性及び/又は耐疲労クラック進展性)を有する。
図2b及び2dは、アルミニウム合金体の厚さが、線形斜面に起因して、1つの端部から別の端部へと概して均一に漸減する状況を例示するが、非線形合金体を使用して、不均一な冷間加工を誘導することができる。一実施形態において、圧延されようとしているアルミニウム合金体は、適用に応じて凹面又は凸面であってもよい、少なくとも1つの曲面を含む。複数の曲面が使用される場合には、複数の異なる曲線が存在することになり、それら各々は、適用に応じて凹面又は凸面であってもよい。
別の実施形態において、アルミニウム合金体210bは、第1の端部210b−E1及び第2の端部210b−E2がほぼ同時にローラ210rに入るように約90°回転され得る。第1の端部210b−E1で誘導される冷間加工の量は、少なくとも25%であり、節(B)(i)又は(B)(ii)で上に記載した冷間加工レベルのうちのいずれであってもよい。しかしながら、この実施形態においては、横方向にアルミニウム合金中で誘導された冷間加工の量は、第1の端部210b−E1と第2の端部210b−E2との間で概して均一に減少することになる。しかしながら、L方向の冷間加工の量は、概して、いずれの所与のL方向平面に対しても同一であることになる。これらの実施形態は、第1の特性(例えば、より高い強度)を有する第1のスパーキャップ、及び第2の特性(例えば、より低い強度、より高い耐損傷性(靭性及び/又は耐疲労クラック進展性))を有する第2のスパーキャップを持つウイングスパーを製造するのに有用であり得、圧延製品の第1の端部は、第1のスパーキャップ(より多くの加工を受ける)と関連付けられ、圧延製品の第2の端部は、第2のスパーキャップ(より少ない加工を受ける)と関連付けられる。
別の実施形態において、また次に図2cを参照して、アルミニウム合金体210cは、冷間加工工程(200)の後にアルミニウム合金体全体で変化のある冷間加工を誘導するように、冷間加工工程(200)の前に、複数の異なるプロファイル210p1〜210p9を有してもよい。具体的には、アルミニウム合金体210cは、複数の概して平坦なプロファイル210p1、210p3、210p5、210p7、及び210p9、並びに複数の平坦なプロファイルを分離している階段状で先細の複数のプロファイル210p2、210p4、210p6、210p8を含む。このようなプロファイルは、例えば、溶体化工程(140)前にアルミニウム合金体を押出し又は機械加工することによって製造され得る。
次に図2eを参照して、アルミニウム合金体210が冷間加工(この場合、ローラ210rによる冷間圧延)されるとき、アルミニウム合金体210cは、単一の均一なゲージ(例えば、最終ゲージ、中間ゲージ)で冷間加工装置210rを出るが、調整された量の冷間加工を有するアルミニウム合金体210cの種々の区分(210CW1〜210CW9)を伴う。例示される実施形態では、圧延アルミニウム合金体210dは、区分210CW1及び210CW9において冷間加工の第1の量、区分210CW2及び210CW8において冷間加工の第2の量、区分210CW3及び210CW7において冷間加工の第3の量、区分210CW4及び210CW6において冷間加工の第4の量、区分210CW5において冷間加工の第5の量を受け、冷間加工の第5の量は、冷間加工の第4の量より高く、冷間加工の第4の量は、冷間加工の第3の量より高く、冷間加工の第3の量は、冷間加工の第2の量より高く、冷間加工の第2の量は、第1の量の冷間加工より高い。冷間加工のこれらの部分のうちの少なくとも1つは、少なくとも25%の冷間加工を受ける。一実施形態において、本部分のうちの少なくとも2つは、少なくとも25%の冷間加工を受ける。別の実施形態において、これらの部分のうちの少なくとも3つは、少なくとも25%の冷間加工を受ける。更に別の実施形態において、これらの部分のうちの少なくとも4つは、少なくとも25%の冷間加工を受ける。別の実施形態において、全ての部分は、少なくとも25%の冷間加工を受ける。一実施形態において、本部分のうちの少なくとも1つは、冷間加工を受けない(例えば、冷間加工前に最終ゲージにある)。図2eはいくつかの異なる部分を例示するが、図2eの原理は、少なくとも2つの異なる部分を有するあらゆるアルミニウム合金体に適用されてもよく、各部分は、圧延時の冷間加工の差異のように、異なる高さを有する。
一実施形態において、アルミニウム合金体の1つの部分とアルミニウム合金体の少なくとも1つの他の部分との間の冷間加工における差異は、少なくとも10%である。すなわち、第1の部分が、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも10%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも15%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも20%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも25%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも30%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも35%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも40%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも45%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも50%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも55%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも60%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも65%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも70%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも75%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも80%多いか又は少ない冷間加工を有する。別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも85%多いか又は少ない冷間加工を有する。更に別の実施形態において、第1の部分は、少なくとも1つの他の部分よりも、場合によって少なくとも90%多いか又は少ない冷間加工を有する。上記の調整した冷間加工の差異は、図2b〜2mで例示される調整された冷間加工実施形態のいずれにも適用され、調整された冷間加工が誘導され得るいずれの他の実施形態にも適用される。
図2dで例示される実施形態では、圧延方向(L方向)にアルミニウム合金体中で誘導された冷間加工の量は、プロファイル210p1〜210p9及び対応する冷間加工区分210CW1〜210CW9に従って変化することになる。しかしながら、直角(LT)方向の冷間加工の量は、概して、いずれの所与のLT平面に対しても同一であることになる。このような製品は、例えば、なかでも、航空宇宙用部品、バス、トラック、鉄道車、圧力容器、及び海洋用部品のためのスティフナなどの、1つの端部では高成形性が必要とされるがもう1つの端部では高強度が必要とされる部品又は部分として有用であり得る。
別の実施形態において、かつ図2fで例示されるように、アルミニウム合金体210cは、第1の端部210c−E1及び第2の端部210c−E2がほぼ同時にローラ210rに入るように約90°回転され得る。この実施形態において、LT方向にアルミニウム合金体中で誘導された冷間加工の量は、プロファイル210p1〜210p9及び対応する冷間加工区分210CW1〜210CW9に従って変化することになる。しかしながら、L方向の冷間加工の量は、概して、いずれの所与のL方向平面に対しても同一であることになる。この実施形態は、例えば、なかでも、高成形性が端部で必要とされるが、高強度が中心で所望される、車用のドアのロッカーパネルとして、及び自動車用ピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー)、又は他のホワイトボディ部品として、有用であり得る。
別の実施形態において、かつ次に図2gを参照して、様々なプロファイルを有するアルミニウム合金体210gは、例示されるように、円筒形などの概して均一なゲージの最終製品210gfpへと冷間加工され得る。この実施形態において、冷間加工は、例えば、冷間鋳造工程210g−1及び210g−2によって達成されてもよい。より少ない又はより多い冷間鋳造工程が用いられてもよい。上記の図2d〜2fと同様に、最終製品210gfpは、冷間加工前のアルミニウム合金体の様々なプロファイルに起因する、冷間加工の様々な区分を有し得る。例示される実施形態において、最終製品210gfpは、円筒の中間部分(MP)における冷間加工の第1の量、円筒の縁部(E)付近の冷間加工の第2の部分、及び中間部分(MP)から縁部(E)へと延在する冷間加工の概して均一に減少する量を、概して含有し得、少なくとも中間部分(MP)が、節(B)(i)又は(B)(ii)において上に記載する冷間加工レベルのうちのいずれかなどの、少なくとも25%の冷間加工を受ける。
更に別の実施形態において、かつ図2hで例示されるように、様々なプロファイルを有するアルミニウム合金体210hは、例示されるように、円筒形などの概して均一なゲージの最終製品210hfpへと冷間加工され得る。この実施形態において、冷間加工は、例えば、冷間鋳造工程210h−1及び210h−2によって達成されてもよい。より少ない又はより多い冷間鋳造工程が用いられてもよい。上記の図2d〜2gと同様に、最終製品210hfpは、冷間加工前のアルミニウム合金体の様々なプロファイルに起因する、冷間加工の様々な区分を有し得る。例示される実施形態において、最終製品210hfpは、円筒の中間部分(MP)における冷間加工の第1の量、円筒の縁部(E)付近の冷間加工の第2の部分、及び中間部分(MP)から縁部(E)へと延在する冷間加工の概して均一に増加する量を、概して含有し得、少なくとも縁部(E)は、節(B)(i)又は(B)(ii)において上に記載する冷間加工レベルのうちのいずれかなどの、少なくとも25%の冷間加工を受ける。
別のアプローチにおいて、冷間加工装置は、アルミニウム合金体中で様々な冷間加工を誘導するために変化される。例えば、かつ次に図2iを参照して、中間ゲージ製品210iは、ローラ210rによって圧延されてもよく、圧延の間、ローラは、L方向の様々な冷間加工を有する台形立体(楔部)210tsを製造するように、徐々に分離される。アルミニウム合金体210tsは、第1の端部から第2の端部までで様々な冷間加工を有することになり、この場合、このような様々な冷間加工は、第1の端部から第2の端部へと概して均一に漸減することになり、端部のうちの少なくとも1つは、節(B)(i)又は(B)(ii)において上に記載する冷間加工レベルのうちのいずれかなどの、少なくとも25%の冷間加工を受ける。ローラ210rはまた、任意の適切にプロファイルされた最終製品を製造するために不均一に変化させてもよい。
別の実施形態において、装置は、溶体化工程(140)の前にアルミニウム合金体中で所定のパターンを製造し得る。例えば、かつ次に図2j及び2mを参照して、アルミニウム合金体211は1つ以上の形成/型押しロール212に送り込まれてもよく、形成/型押しロール212は、アルミニウム合金体211を第1のゲージ(例えば、中間ゲージ)に圧延し得、またその圧痕部分213によって複数の隆起部分214を製造し得る。次に、アルミニウム合金体は、溶体化140され、その後、冷間ローラ210rによって第2のゲージへと冷間圧延され得る。第2のゲージは、最終ゲージであってもよく、かつ第1のゲージと同一であるか、又は異なってもよい。冷間圧延したアルミニウム合金体211crは、それゆえ、冷間加工の第1の量を有する複数の偏析した第1の部分215、及び冷間加工の第2の量を有する複数の第2の部分216を含んでもよく、第1の部分215のうちの少なくともいくつかは、節(B)(i)又は(B)(ii)において上に記載する冷間加工レベルのうちのいずれかなどの、少なくとも25%の冷間加工を受ける。それゆえ、調整された3次元の冷間加工量を有する一体型アルミニウム合金体が製造され得、第1の部分は、圧延製品の縦方向及び長手横方向のうちの1つ以上(すなわち、Xが縦方向に関係し、Yが横方向に関係する、X−Y座標面のあらゆる場所)に確定的に置かれる。理解され得るように、任意の数のローラを使用して、冷間加工の調整されたレベルを有する製品を製造することができる。また更に、特徴が圧延製品の上部に対して例示されたが、特徴は、圧延製品の底部に、又は圧延製品の上部及び底部の両方に実装されてもよいことが理解されるであろう。また、各圧延装置は、複数のロールスタンドを含んでもよく、及び/又は複数のロール孔型を使用して圧延を達成してもよい。
例示される実施形態において、第1の部分215は、第2の部分216よりも多い量の冷間加工を受け、第2の部分216は概して、第1の部分215を取り囲む。一実施形態において、第1の部分のうちの少なくともいくつかは、第2の部分よりも少なくとも5%多い冷間加工(上に記載した冷間加工の差異のうちのいずれかなど)を受ける。一実施形態において、第2の部分は、少なくともいくらかの冷間加工を受ける。一実施形態において、第2の部分はまた、少なくとも25%の冷間加工を受ける。別の実施形態において、第2の部分は、冷間加工をほとんど又は全く受けない(すなわち、第1のゲージは概して第2のゲージと同等である)。
いくつかの実施形態において、握り部分219は、アルミニウム合金体を1つ以上のローラに通すことができるように合金体に利用されてもよく、例えば、図2jで例示されるように、アルミニウム合金体の縁部で利用されてもよい。このような握り部分219は、アルミニウム合金体の縁部にあるように例示されるが、これらは、また又はあるいは、適切な場合、合金体の1つ以上の中間部分に位置して、圧延装置を通した合金体の移動を容易にしてもよい。
いくつかの実施形態において、概して同一のサイズの隆起部分214を製造するために、ロール212のくぼみ213が概して同一のサイズであるときなど、第1の部分215は、各々、概して同量の冷間加工を受け得る。他の実施形態において、ロール212のくぼみ213が、少なくとも2つの異なるサイズを有するゆえに、異なるサイズの隆起部分214を製造する場合など、第1の部分のうちの少なくとも1つは、第1の量の冷間加工を受け、第1の部分のうちの少なくとも別のものは、第2の量の冷間加工を受ける。これらの実施形態において、第1の部分のうちの少なくともいくつかは、少なくとも25%の冷間加工を受け、一方で、第1の部分のうち他のものは、25%未満の冷間加工を受け得る。これらの製品は、例えば、強化領域が例えば接着点に位置するが、非強化領域はアルミニウム合金体が成形性を必要する場所に位置する、ドアパネルとして有用であり得る。
第1の部分215は、1つ以上の識別子を含み得る。一実施形態において、視覚識別子217aは、型押しロール212によって与えられ、冷間圧延操作を通して持ち越されてもよい。このような識別子(複数可)217aを使用して、材料を適切に分離することができるように、第1の部分215のパターンが位置する場所を特定し得る。他の実施形態において、第1の部分215は、第1の部分それら自体の上に型押しされた標識によって視覚的に特定され得る。これらの指標217aを使用して、例えば、高強度領域を特定することができ、及び/又は、材料の受け取り主が、このような領域が実際に材料中で製造されたことを確認できるようにし得る。別の実施形態においては、登録記号などの視覚識別子217bを、冷間加工工程後に材料を分離させる場所を特定するために(例えば、材料ブランクの開始/終了を設定するために)使用してもよい。
自動車部品の他には、図2jに示されるように製造される一体型合金体は、例えば、調整された高強度部分を有する航空宇宙用部品の製造に有用であり得る。例えば、このような一体型合金体は、ウイングスキン又は胴体パネルとして有用であり得る。高強度部分(例えば、第1の部分)は、場合に応じて、接着点に対して使用され得るか、又はストリンガ、リブ、若しくはフレームがウイングスキン若しくは胴体パネルに接着する場所に位置し得る。
一実施形態において、かつ図2jを引き続き参照すると、複数の陥没部分218はアルミニウム合金体中に与えられ、これらの陥没部分218は、冷間圧延210rの前には、1つ以上の隆起部分214に隣接する。このような陥没部分218は、冷間加工プロセス中に隆起部分214の材料を収容し得る。陥没部分218は、例えば、適切な圧延輪(例えば、溝/陥没部分をもたらすために少なくとも1つの隆起面を有するもの)を使用することによってか、又は例えば機械加工によって、得られてもよい。陥没部分218は、冷間加工プロセスに対して適切に成形され得る。例えば、垂直プレス型を使用して材料を冷間加工する場合、概して対称な陥没部分218が使用され、このような陥没部分は、概して、隆起部分214を取り囲む。アルミニウム合金体が冷間圧延される場合、他の構成のなかでも、隆起部分218の各々の背面及び/又は側面に隣接して位置する陥没部分218を有することによってなど、非対称な陥没部分218を使用して、隆起部分214の流れを収容し得る。このような陥没部分218は、適切にサイズ決定及び/又は成形されて、残留応力の適切なレベルを促進することができる。
別の実施形態において、かつ次に図2kを参照して、ローラ212は、伸長された隆起部分214を有するアルミニウム合金体を製造する圧痕213を含み得る。例示される実施形態において、隆起部分214は、合金体の長さを、それが冷間ローラ210rに達するまで伸長させる。均一なゲージの製造を容易にするために、陥没部分218(図示せず)は、伸長された隆起部分214の片面(又は両面)に隣接して位置し得る。この合金体は、溶体化され得、溶体化140の後、冷間圧延210rは隆起部分214を平坦化及び加工することになり、概して均一なゲージ(例えば、最終ゲージ)を有するが第1の冷間加工した部分215が合金体の長さを伸長させるアルミニウム合金体を製造し得る。1つ以上の第2の部分216は、高冷間加工部分215に隣接して延在してもよく、その第2の部分は、冷間加工を受ける場合も受けない場合もある。例示される実施形態において、第1の部分215は、L方向にアルミニウム合金体の長さを伸長させ、同じくL方向にアルミニウム合金体の長さを伸長させる2つの第2の部分216によって取り囲まれ、かつそれらに隣接する。このようなアルミニウム合金体は、例えば、自動車用ロッカーパネルとして有用であり得る。
理解され得るように、図2kの実施形態は反転させることができ(図示せず)、ローラ212は、ローラ212のどちらかの縁部上に2つの圧痕213を含むことにより、圧延製品の縁部上に位置する第1の部分215を製造する。この実施形態において、第2の部分216は、第1の部分215を分離させ、圧延製品の中間部分に位置する。この実施形態において、第1及び第2の部分は、概して同様の厚さであってもよいが、縁部215は高冷間加工を有し、中間216は低冷間加工を有するか、又は冷間加工を有しない。このようなアルミニウム合金体は、例えば、接着が製品の縁部でなされ、製品の中間部が、例えば、高い延性を必要とし得る部品として有用であり得る。図2kには示されないが、アルミニウム合金体は、任意の特定の適用に適切なだけ多くの、概して平行な第1の部分215及び第2の部分214を含み得る。
別の実施形態において、かつ次に図2lを参照して、中間ゲージの概して均一な圧延製品が、冷間ローラ210rに供給される。冷間ローラ210rは、冷間ローラ210rを出た後で合金体の長さを伸長させる第2の部分216を製造する圧痕213を含む。冷間ローラ210rはまた、第1の部分215を製造し、第1の部分のうちの少なくとも1つは、少なくとも25%の冷間加工を有する。第2の部分216は、冷間加工を受ける場合も受けない場合もある。例示される実施形態では、2つの第1の部分215は、L方向にアルミニウム合金体の長さを伸長させ、第2の部分216によって分離され、この.第2の部分216は、同じくL方向にアルミニウム合金体の長さを伸長させるが、第1の部分215とは異なる(より大きい)厚さを有する。このようなアルミニウム合金体は、例えば、剛性を提供するために追加の厚さが必要とされる製品用途(例えば、航空宇宙用ウイングスキン、鉄道車)において、有用であり得る。別の同様の実施形態(図示せず)において、冷間ローラは、LT方向に対する様々な直径であってもよく、それゆえ、複数の部分を製造し、部分の各々は、異なる量の冷間加工を有するが、部分のうちの少なくとも1つは、少なくとも25%の冷間加工を受ける。図2lには示されないが、アルミニウム合金体は、任意の特定の適用に適切なだけ多くの、概して平行な第1の部分215及び第2の部分214を含み得る。
別の実施形態において(図示せず)、冷間加工装置は、図2lに例示されるものと同様の材料も製造し得る、アルミニウム合金体の一部のみを選択的に除去する機器(例えば、機械加工によって)を含んでもよい。一実施形態において、機器は、アルミニウム合金体の一部分を穿孔して、例えば、アルミニウム合金体が捩れる、撓む、あるいは歪むことのないように、応力の除去を容易にする。別の実施形態において、機器は、アルミニウム合金体の厚さの一部分を除去する。一実施形態において、装置は、アルミニウム合金体が捩れる、撓む、あるいは歪むことのないように、製造された材料を分離させる。
別の実施形態において(図示せず)、様々な量の冷間加工は、例を挙げると、スエージング、フロー成形、剪断成形、冷間鍛造、又は冷間拡大のうちの1つ以上によって、管状製品の長さに沿って与えられることができる。圧延製品について上に記載するように、様々なレベルの冷間加工は、溶体化工程後及び熱処理工程前に与えられることができるか、あるいは溶体化工程前に与えられることができ、この場合には、機械加工も初期形状を創出するために使用され得る。この場合、冷間加工工程は、最終断面において均一であるか、又は様々な最終形状を有するかのいずれかであるアルミニウム合金製品を提供することができる。このような方法は、例えば、中心区分と比べて、片方又は両方の端部で異なる特性を持つパイプ又は管の創出において有用であり得る。一実施形態において、一体型アルミニウム合金管状製品が提供され、管状製品は、第1の部分、及び第1の部分に隣接する第2の部分を有し、第1の部分は、少なくとも25%の冷間加工を含み、第2の部分は、上記の冷間加工の差異のうちのいずれかなどの、第1の部分と比べて少なくとも5%少ない冷間加工を有する。一実施形態において、一体型アルミニウム合金管状製品は、均一な内径を有する。一実施形態において、一体型アルミニウム合金管状製品は、均一な外径を有する。一実施形態において、一体型アルミニウム合金管状製品は、均一な内径及び外径を有する。
図2b〜2mの特徴は冷間圧延及び/又は冷間鍛造に対して記載したが、他の冷間加工機構を用いて、調整された冷間加工を有するアルミニウム合金体を製造してもよい。また更に、様々なプロファイルを有するアルミニウム合金体は、上記のものを含む多種多様な既知の様式で、並びになかでも、押出し、鍛造、及び機械加工によっても製造されることができる。このようなプロファイル化されたアルミニウム合金体は、その後、上記の様式のいずれかで冷間加工されて、調整された冷間加工を有するアルミニウム合金体を製造することができる。
iv.冷間加工温度
冷間加工工程(200)は、熱間加工温度より低い温度(例えば、204℃(400°F)以下)で開始し得る。1つのアプローチにおいて、冷間加工工程(200)は、溶体化(140)後アルミニウム合金体が十分に低い温度に達した時点で開始される。一実施形態において、冷間加工工程(200)は、アルミニウム合金体の温度が121℃(250°F)以下であるときに開始し得る。他の実施形態において、冷間加工工程(200)は、アルミニウム合金体の温度が93℃(200°F)以下、又は79℃(175°F)以下、又は66℃(150°F)以下、又は52(125°F)以下、又はそれよりも低いときに開始し得る。一実施形態において、冷間加工工程(200)は、アルミニウム合金体の温度がおよそ周囲温度であるときに開始し得る。他の実施形態において、冷間加工工程(200)は、より高い温度、例えば、アルミニウム合金体の温度が121℃(250°F)から熱間加工温度未満の範囲(例えば、204℃(400°F)未満)であるときに開始し得る。
一実施形態において、冷間加工工程(200)は、意図的な加熱又は有意義な加熱(例えば、アルミニウム合金体のミクロ構造及び/又は特性に重大な変化を生じさせることを意図的な加熱)を一切行わずに開始され、及び/又は終了される。アルミニウム合金体は冷間加工工程(200)による温度上昇を実現し得るが、そのような冷間加工工程(200)は、熱間加工温度と見なされる温度より低い温度で加工操作が始まるため、冷間加工(200)と見なされることは当業者には理解されるであろう。複数の冷間加工操作を用いて冷間加工工程(200)を行う場合、これらの操作の各々が上記温度(複数可)のいずれかを用いることができ、その温度は前後に行われる冷間加工操作で用いられる温度と同じであっても異なっていてもよい。
上述したように、冷間加工(200)は、概して、溶体化(140)後アルミニウム合金体が十分に低い温度に達した時点で開始される。概して、溶体化工程(140)終了と冷間加工工程(200)開始の間では、アルミニウム合金体に意図的な熱処理又は有意義な熱処理は実施されず、すなわち、該プロセスでは、溶体化工程(140)終了と冷間加工工程(200)開始の間に熱処理を行わなくてよい。場合によっては、冷間加工工程(200)は、(例えば、冷間加工を容易にするために)溶体化工程(140)終了直後に開始される。一実施形態において、冷間加工工程(200)は、溶体化工程(140)終了後72時間以内に開始される。他の実施形態において、冷間加工工程(200)は、溶体化工程(140)の終了後60時間以内、又は48時間以内、又は36時間以内、又は24時間以内、又は20時間以内、又は16時間以内、又は12時間以内、又はそれより短い時間内に開始される。一実施形態において、冷間加工工程(200)は、溶体化工程(140)終了から、数分以内、又はそれより短い時間内に開始される(例えば、連続鋳造プロセスの場合)。他の実施形態において、冷間加工工程(200)は、溶体化工程(140)終了に付随して開始される(例えば、連続鋳造プロセスの場合)。
他の例においては、溶体化工程(140)終了から長時間が経過した後に冷間加工(200)を開始することで十分であり得る。これらの例における冷間加工工程(200)は、溶体化工程(140)終了から1週間若しくは数週間又は1ヶ月若しくは数ヶ月経過した後に行われ得る。
C.熱処理
図2aを更に参照すると、熱処理工程(300)は冷間加工工程(200)の後に行われる。「熱処理」及びその類似語は、アルミニウム合金体を高温に到達させることを意図的なアルミニウム合金体の加熱を意味する。熱処理工程(300)は、アルミニウム合金体を、ある状態又は特性(例えば、なかでも、選択された強度、選択された延性)を達成するのに十分な時間及び温度で加熱することを含むことができる。
溶体化後、ほとんどの熱処理可能合金は、室温で特性の変化を示す。これは、「自然時効(natural aging)」と呼ばれ、溶体化後直ちに、又はインキュベーション期間後に始まることがある。自然時効中の特性変化の速度は合金によって広範囲にわたって異なるため、安定状態へ近づけるのに、数日を要するだけの場合もあれば、数年を要することもある。自然時効は意図的な加熱を行わなくても発生するので、自然時効は熱処理工程(300)ではない。しかしながら、自然時効は、熱処理工程(300)の前に発生することもあれば、かつ/又は後に発生することもある。自然時効は熱処理工程(300)の前の所定の時間(例えば、数分又は数時間から数週間、あるいはそれより長い期間)、発生することがある。自然時効は、溶体化工程(140)、冷間加工工程(200)、及び熱処理工程(300)のいずれかの工程の間又はその後に発生することがある。
熱処理工程(300)により、アルミニウム合金体は選択された温度範囲内の温度に加熱される。熱処理工程(300)の目的では、この温度は、熱処理工程(300)中のアルミニウム合金体の平均温度のことを指す。熱処理工程(300)は、複数の処理工程、例えば、第1の温度で第1の期間にわたって処理を行ない、第2の温度で第2の期間にわたって処理を行なうことを含むことができる。第1の温度は、第2の温度より高くても低くてもよく、第1の期間は第2の期間より短くても長くてもよい。
熱処理工程(300)では、以下に記載するように、概して、アルミニウム合金体が未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を達成/維持するように行われる。以下で更に詳細に記載するように、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造は、特性の改良をもたらし得る。この点について、熱処理工程(300)は、概して、アルミニウム合金体を高温に加熱することを含んでいるが、その温度は、アルミニウム合金体の再結晶化温度より低く、すなわち、アルミニウム合金体が、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を得ることはないであろう。例えば、熱処理工程(300)は、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を、66℃〜218℃(150°F〜425°F)の範囲(又はそれより高い温度)であるが、アルミニウム合金体の再結晶化温度よりは低い温度に加熱することを含むことができる。特に218℃(425°F)を超過して熱処理するときは、製造されるアルミニウム合金体が改善された特性を実現するように、曝露時間を制限することが必要であり得る。理解され得るように、より高い熱処理温度が使用される場合には、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造及び/又は他の所望の特性(例えば、高温曝露からの転位の除去に起因する過度の軟化の不在)を実現するために、より短い曝露期間が求められてもよい。
熱処理工程(300)は、(例えば、所望の/選択された特性又は特性の組み合わせを達成するために)アルミニウム合金体を1つ以上の選択された温度で(複数可)1つ以上の選択された期間(複数可)にわたって維持するのに好適なあらゆる方法で行うことができる。一実施形態において、熱処理工程(300)は時効処理炉などの中で行われる。別の実施形態において、熱処理工程(300)は塗装焼付サイクル(paint-bake cycle)の間に行われる。塗装焼付サイクルは、自動車産業や他の産業において、塗布した塗料を、短時間(例えば、5〜30分)焼き付けることによって硬化させるために用いられる。本プロセスによって高強度を有するアルミニウム合金体を短時間で製造できることを考えると、以下に記載するように、塗装焼付サイクルなどを利用して、熱処理工程(300)を行うことができ、それによって、熱処理工程と塗装焼付工程とを別個に行なう必要性はなくなる。同様に、他の実施形態において、熱処理工程(300)はコーティングの硬化工程などの間に行なうこともできる。
一実施形態において、方法は、(i)溶体化アルミニウム合金体を受け取ること、及び(ii)その後、アルミニウム合金体を冷間加工すること、及び(iii)その後、アルミニウム合金体を熱処理することを含み、冷間加工工程及び熱処理工程は、上記の特性の節(節H)に列挙する特性のうちのいずれかの達成など、(a)冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金及び(b)T6質別のアルミニウム合金体の基準品のうちの1つ以上と比べて改善された特性を獲得するように遂行される。このような方法は、以下の製品用途の節(節I)に記載するアルミニウム合金製品のうちのいずれにも適用可能であるため、それらと共に用いられ得る。
別の実施形態において、方法は、(i)溶体化され、その後少なくとも25%冷間加工されたアルミニウム合金体を受け取ること、及び(ii)その後、アルミニウム合金体を熱処理することを含み、冷間加工工程及び熱処理工程は、上記の特性の節(節H)に列挙する特性のうちのいずれかの達成など、(a)冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金及び(b)T6質別のアルミニウム合金体の基準品のうちの1つ以上と比べて改善された特性を獲得するように遂行される。このような方法は、以下の製品用途の節(節I)に記載するアルミニウム合金製品のうちのいずれにも適用可能であるため、それらと共に用いられ得る。
i.1つ以上の事前選択された前駆体状態を達成するための冷間加工及び/又は熱処理工程(複数可)の完了
1つのアプローチにおいて、アルミニウム合金体は、それが冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)のうちの少なくとも1つの間に事前選択された前駆体状態を達成するように処理される。事前選択された前駆体状態は、アルミニウム合金体の製造の前に選択される状態であり、別の状態(通常は、アルミニウム合金製品の所望の最終状態又は特性などの、別の既知の状態)の前駆体である。例えば、かつ以下で更に詳細に説明されるように、冷間加工工程(200)を完了したアルミニウム合金供給業者は、合金体を熱処理工程(300)の一部としての事前選択された加熱実務に付すことによって、事前選択された亜時効状態のアルミニウム合金体(例えば、シート)を供給し得る。アルミニウム合金供給業者の顧客は、このアルミニウム合金体を受け取り得、合金体を所定の形状の製品へと温感成形して熱処理工程(300)の残りの部分を完了させ、かつこのプロセス中にアルミニウム合金体の強度を更に増加させることなどによって、このアルミニウム合金体を更に熱処理してもよい。それゆえ、アルミニウム合金供給業者は、供給業者の第1の加熱工程と顧客の後の第2の加熱工程との組み合わせにより、所定の特性(例えば、なかでも、ピーク付近の強度、強度と延性との所定の組み合わせ)を有するアルミニウム合金体が製造されるように、供給業者の第1の加熱工程を調整してもよい。多くの他の変型が存在し、その多くは以下で更に詳細に説明される。
A.複数の熱処理工程
一実施態様において、かつ次に図2q−1を参照して、熱処理工程(300)は、第1の加熱工程(320)及び第2の加熱工程(340)を含む。第1の加熱工程(320)を実施して、事前選択された状態(322)(例えば、第1の選択された状態)を達成し得る。同様に、第2の加熱工程(340)を実施して、別の事前選択された状態(342)(例えば、第2の選択された状態)を達成してもよい。
次に図2q−2を参照して、第1の選択された状態(322)は、例えば、他の特性のなかでも、所定の強度、所定の伸び、又は強度と伸びとの所定の組み合わせ(330)を達成するように、選択され得る。それゆえ、選択された状態(322)は、所定の亜時効状態(324)、ピークの時効状態(326)、又は所定の過時効状態(328)であり得る。一実施形態において、第1の加熱工程(320)は、第1の選択された状態(322)を達成するように、第1の選択された時間及び第1の選択された温度で実施される。
同様に、かつ次に図2q−3を参照して、第2の加熱工程(340)は、他の特性のなかでも、所定の強度、所定の伸び、又は強度と伸びとの所定の組み合わせを達成するように、選択され得る(350)。それゆえ、第2の加熱工程(340)は、所定の亜時効状態(344)、ピークの時効状態(346)、又は所定の過時効状態(348)のうちのいずれかなどの、第2の選択された状態(342)を達成するように実施され得る。いくつかの実施形態において、第2の加熱工程(340)は、第2の選択された状態(342)を達成するように、第2の選択された時間及び第2の選択された温度で実施される。
第1の加熱工程(320)が、1つ以上の事前選択された状態を達成するように調整され得るとすると、調整されたアルミニウム合金体は、第1の加熱工程(320)において、及び第2の加熱工程(340)による後続処理のための第1の場所で、製造され得る。例えば、アルミニウム合金供給業者は、第1の場所で第1の加熱工程を実施して、選択された状態(322)を達成してもよい。アルミニウム合金供給業者はその後、このようなアルミニウム合金体を顧客(又は他の存在)に提供し、その顧客(又は他の存在)は、第1の場所から離れた第2の場所で第2の加熱工程(340)を続いて実施し得る(例えば、第2の選択された状態(342)達成するように)。これにより、所定の特性を有する調整されたアルミニウム合金体が獲得され得る。
例として、かつ次に図2q−4を参照して、第1の加熱工程(320)により、所定の亜時効状態(324)が達成され得る。この所定の亜時効状態は、所定量のアルミニウム合金体の最大引張強度及び/又は引張降伏強度以内など、所定量のアルミニウム合金体のピーク強度以内であってもよい。一実施形態において、所定の亜時効状態(324)は、アルミニウム合金体のピーク強度の30%以内である。他の実施形態において、所定の亜時効状態(324)は、アルミニウム合金体のピーク強度の20%以内、又は10%以内、又は5%以内、又はそれ以下である。一実施形態において、所定の亜時効状態(324)は、304kPa(20ksi)のアルミニウム合金体のピーク強度以内である。他の実施形態において、所定の亜時効状態(324)は、228kPa(15ksi)以内、又は152kPa(10ksi)以内、又は76kPa(5ksi)以内、又はそれ以下のアルミニウム合金体のピーク強度以内である。それゆえ、第1の加熱工程(320)に付されたアルミニウム合金体は、供給業者から顧客へと供給されてもよく、所定の亜時効状態(324)にあってもよい。一方、第2の加熱工程(340)は、事前の所定の亜時効状態(324)に対して、所定のより高い強度状態(372)を達成するように、顧客によって完了され得る。この所定のより高い強度状態(372)は、アルミニウム合金体のピーク最大引張強度及び/又はピーク引張降伏強度など、所定量のアルミニウム合金体のピーク強度以内であってもよい。一実施形態において、所定のより高い強度状態(372)は、アルミニウム合金体のピーク強度の15%以内である。他の実施形態において、所定のより高い強度状態(372)は、アルミニウム合金体のピーク強度の10%以内、又は8%以内、又は6%以内、又は4%以内、又は2%以内、又はそれ以下である。同様に、所定のより高い強度状態(372)は、228kPa(15ksi)のアルミニウム合金体のピーク強度以内であってもよい。他の実施形態において、所定のより高い強度状態(372)は、152kPa(10ksi)以内、又は121kPa(8ksi)以内、又は91kPa(6ksi)以内、又は61kPa(4ksi)以内、又は30kPa(2ksi)以内、又は15kPa(1ksi)以内、又はそれ以下のアルミニウム合金体のピーク強度状態であってもよい。
例示として、顧客は、調製工程(100)、冷間加工工程(200)、及び第1の加熱工程(320)に付された結果として所定の亜時効状態(324)にあるアルミニウム合金体を受け取ると、続いて第2の加熱工程(340)を実施して、第2の所定のより高い強度状態(372)を達成し得る。例えば、かつ次に図2q−5を参照して、第2の加熱工程(340)は、なかでも、温間成形プロセス、塗装焼付プロセス、乾燥プロセス、及び/又は時効処理炉中で実施される調整された時効プロセスのうちの1つ以上であってもよい。このような第2の加熱工程(340)プロセスは、特定のアルミニウム合金体及びその対応する最終形態に適切なように、いかなる順番で実施されてもよい。
1つの非限定的な例において、かつ以下で更に詳細に記載するように、アルミニウム合金シートは、第1の加熱工程(320)の完了後に、自動車部品製造業者に供給され得る。それゆえ、自動車部品製造業者は、後の処理のための所定の選択された状態(322)にあるアルミニウム合金シートを受け取り得る。自動車部品製造業者はその後、第2の加熱工程(340)の少なくとも一部の間に、この部分を所定の形状の製品に成形し得る(以下の節Fにおいて定義される「温間成形」)。温間成形工程後、自動車部品製造業者は、この所定の形状の製品を塗装焼付及び/又は乾燥させることで、アルミニウム合金体を第2の加熱工程(340)の一部としての追加の熱処理に付して、第2の選択された状態(342)を達成し得る。同様に、自動車部品製造業者は、他の加熱作業のうちのいずれかの前又は後に、所定の形状の製品を時効処理炉などに付して、所定の形状の製品の特性を調整してもよい。
いずれの合金についても、ピーク強度は時効曲線に基づいて知り得るとすると、自動車部品製造業者は、第1の選択された状態(322)にあるアルミニウム合金体を受け取ることで、自動車部品製造業者の後続の熱処理によって、より高い強度状態などの第2の選択された状態が達成されるようにすることが可能であり得る。いくつかの実施形態において、自動車部品製造業者は、上に記載するように、第2の加熱工程(340)を実施して、ピーク強度又はピーク付近の強度状態(346)の達成を容易にし得る。他の実施形態において、自動車部品製造業者は、特性の所定のセット(350)を達成するように、所定の過時効状態(348)及び/又は亜時効状態(344)を選択し得る。例えば、過時効状態(348)においては、自動車部品製造業者は、ピーク強度状態と比べてわずかに低い強度でより高い延性を達成することで、ピーク強度状態(346)と比べて異なる特性のセットを促進してもよい。同様に、亜時効特性(344)は、自動車部品製造業者にとって有用であり得る機械的特性の異なるセットを提供し得る。それゆえ、以下の特性の節(節H)に記載する特性のうちのいずれかなどの所定の特性を有する調整されたアルミニウム合金体が獲得され得る。
次に図2q−6を参照して、熱処理実務の1つの特定の実施形態が例示される。この実施形態において、アルミニウム合金体は、冷間加工したままの状態かT3質別かのいずれかで顧客に供給され得る(すなわち、顧客は、冷間加工工程(200)後の、アルミニウム合金供給業者による熱処理が一切適用されていないアルミニウム合金を受け取り得る)。この実施形態において、顧客は、熱処理工程(300)及び任意選択の最終処理工程(400)を完了し得る。例示される実施形態に示されるように、任意選択の最終処理は、熱処理工程(300)中に所定の形状の製品(500)の形成を含んでもよい。つまり、顧客は、温間成形工程(320’)を含み得る熱処理工程全てを完了する。なかでも図2q−5に例示されるもののいずれかなどの、他の又は代替的な熱処理が、顧客によって用いられてもよい。
再び図2q−1を参照して、第1の加熱工程(320)は第1の場所で実施されてもよく、第2の加熱工程(340)は第2の場所で実施されてもよく、第1の加熱工程(320)以前の工程もまた、第1の場所で完了されてもよい。つまり、溶体化後の冷間加工工程のためにアルミニウム合金体を調製すること(100)は、第1の場所で完了されてもよく、及び/又はアルミニウム合金体冷間加工工程(200)は、第1の場所で完了されてもよい。しかしながら、このような処理工程は、第1の場所で完了される必要はない。同様に、工程の全てが1つの場所で完了され得ることも可能である。また更に、上の例は自動車部品製品に関して説明されるが、このような方法論は、以下の製品用途の節(節I)に記載する製品のうちのいずれかなどの、多くのアルミニウム用途に適用可能である。
また、図2q−1〜2q−5は、2つの事前選択された状態(322)、(342)について記載したが、2つの選択された状態が用いられる必要はない。例えば、ルミニウム供給業者は、顧客による第2の選択された状態の定義なくして、顧客のアルミニウム合金製品の改善を容易にするために、顧客のプロセスについての知識を元に第1の選択された状態(322)を用いてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態において、1つのみの事前選択された状態が用いられる(例えば、選択された状態(322))。また更に、図2aに対して上に記載したように、熱処理工程(300)が1つの場所で完了される場合、熱処理工程(300)は、第1の温度での第1の時間の処理、及び第2の温度での第2の時間の処理などの、複数の処理工程を含んでもよく、この第1の温度は、第2の温度よりも高いか、又は低くてもよく、第1の時間は、第2の時間よりも短いか、又は長くてもよい。同様に、加熱工程(320)及び(340)の各々は、第1の温度での第1の時間の処理、及び第2の温度での第2の時間の処理などの、複数の処理工程を含んでもよく、この第1の温度は、第2の温度よりも高いか、又は低くてもよく、第1の時間は、第2の時間よりも短いか、又は長くてもよい。また更に、2つの別個の加熱工程(320)、(340)のみが例示及び記載されたが、熱処理工程(300)を達成するために、任意の好適な数の場所で、任意の数の別個の加熱工程が用いられてもよいこと、及び事前選択された状態/特性が、これらの別個の加熱工程のうちの1つ以上に関して使用されてもよいことが理解されるであろう。
B.複数の冷間加工工程
上に記載した複数の熱処理工程の実施形態と同様に、複数の冷間加工工程も用いられ得る。一実施態様において、かつ次に図2q−7を参照して、冷間加工工程(200)は、アルミニウム合金体において少なくとも25%の冷間加工を含む、第1の冷間加工工程(220)と第2の冷間加工工程(240)との組み合わせで、第1の冷間加工工程(220)及び第2の冷間加工工程(240)を含む。一実施形態において、第1の冷間加工工程は、それ自体の中に、アルミニウム合金体における少なくとも25%の冷間加工を含む。それゆえ、第1の冷間加工工程(220)を実施して、事前選択された状態(222)(例えば、第1の選択された状態)を達成し得る。同様に、第2の冷間加工工程(240)を実施して、別の事前選択された状態(242)(例えば、第2の選択された状態)を達成してもよい。
次に図2q−8を参照して、第1の選択された状態(222)は、例えば、他の特性のなかでも、所定の強度、所定の伸び、又は強度と伸びとの所定の組み合わせ(230)を達成するように、選択され得る。同様に、第2の選択された状態(232)は、例えば、他の特性のなかでも、所定の強度、所定の伸び、又は強度と伸びとの所定の組み合わせを達成するように、選択され得る(250)。
第1の冷間加工工程(220)が、1つ以上の事前選択された状態を達成するように調整され得るとすると、調整されたアルミニウム合金体は、第1の冷間加工工程(220)において、並びに第2の冷間加工工程(240)及び熱処理工程(300)による後続処理のための第1の場所で、製造され得る。例えば、アルミニウム合金供給業者は、第1の場所で第1の冷間加工工程を実施して、選択された状態(222)を達成してもよい。アルミニウム合金供給業者はその後、このようなアルミニウム合金体を顧客(又は他の存在)に提供し、その顧客(又は他の存在)は、第1の場所から離れた第2の場所(又はより多くの場所)で第2の冷間加工工程(240)及び熱処理工程(300)を続いて実施し得る(例えば、第2の選択された状態(342)達成するように)。それゆえ、以下の特性の節(節H)に記載する特性のうちのいずれかなどの所定の特性を有する調整されたアルミニウム合金体が獲得され得る。
図2q−7〜2q−8は、2つの事前選択された状態(222)、(242)について記載したが、2つの選択された状態が用いられる必要はない。例えば、ルミニウム供給業者は、顧客による第2の選択された状態の定義なくして、顧客のアルミニウム合金製品の改善を容易にするために、顧客のプロセスについての知識を元に第1の選択された状態(222)を用いてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態において、1つのみの事前選択された状態が用いられる(例えば、選択された状態(222))。また更に、2つの冷間加工工程(220)、(240)のみが例示及び記載されたが、冷間加工工程(200)を達成するために、任意の好適な数の場所で、任意の数の別個の冷間加工工程が用いられてもよいこと、及び事前選択された状態/特性が、これらの別個の冷間加工工程のうちの1つ以上に関して使用されてもよいことが理解されるであろう。
C.異なる場所での複数回の冷間加工及び熱処理
別の実施形態において、1つ以上の所定の特性を獲得するために、第1の冷間加工工程及び第1の熱処理工程は、第1の場所で完了されてもよく、第2の冷間加工工程及び第2の熱処理工程は、第2の場所で完了されてもよい。例えば、かつ次に図2q−9を参照して、冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)を完了するために、アルミニウム合金体における少なくとも25%の冷間加工を含む、第1の冷間加工工程(220)と第2の冷間加工工程(240)との組み合わせで、第1の冷間加工工程(220)及び第1の熱処理工程(320)は、第1の場所で完了されてもよく、第2の冷間加工工程(240)及び第2の熱処理工程(340)は、第2の場所で完了されてもよい。一実施形態において、第1の冷間加工工程は、それ自体の中に、アルミニウム合金体における少なくとも25%の冷間加工を含む。
例示として、かつ次に図2q−1、2q−2、及び2q−9を参照して、アルミニウム合金供給業者は、第1の冷間加工工程(220)及び第1の加熱工程(320)を完了して、例えば、なかでも、所定の強度、所定の伸び、又は強度と伸びとの所定の組み合わせ(330)などの、事前に選択された状態(322)を達成し得る。顧客は、溶体化後の冷間加工(100)のために調製され、第1の冷間加工(220)を施され、かつ第1の加熱(320)を施されたアルミニウム合金体を受け取り得る。顧客はその後、第2の冷間加工工程(240)及び第2の熱処理工程(340)を完了して、冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)を完了し、任意選択で最終処理(400)を施し、かつ任意選択で別の事前選択された状態(242)(例えば、第2の選択された状態)を達成してもよい。それゆえ、以下の特性の節(節H)に記載する特性のうちのいずれかなどの所定の特性を有する調整されたアルミニウム合金体が獲得され得る。これらの実施形態は、例えば、なかでも、自動車用途、航空宇宙用途、及び容器用途において有用であり得る。
図2q−9は、2つの事前選択された状態(322)、(342)の達成について記載されたが、2つの選択された状態が用いられる必要はない。例えば、ルミニウム供給業者は、顧客による第2の選択された状態の定義なくして、顧客のアルミニウム合金製品の改善を容易にするために、顧客のプロセスについての知識を元に第1の選択された状態(322)を用いてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態において、1つのみの事前選択された状態が用いられる(例えば、選択された状態(322))。また更に、2つの冷間加工工程(220)、(240)、及び2つの加熱工程(320)、(340)のみが例示及び記載されたが、冷間加工工程(200)を達成するために、任意の数の好適な場所で、任意の数の別個の冷間加工工程が使用されてもよく、熱処理工程(300)を達成するために、任意の好適な数の場所で、任意の数の別個の加熱工程が用いられてもよいこと、並びに事前選択された状態/特性が、これらの別個の冷間加工工程及び/又は別個の加熱工程のうちの1つ以上に関して使用されてもよいことが理解されるであろう。
D.冷間加工と熱処理との組み合わせ
冷間加工工程(200)と熱処理工程(300)を組み合わせることにより、改良された特性を有するアルミニウム合金体を製造することが可能である。冷間加工工程(200)の高い変形形成を適切な熱処理条件(300)と組み合わせることにより、これまで実現されなかった強度と延性の組み合わせ(combination of strength and ductility)を達成できる独特のミクロ構造(以下のミクロ構造を参照)が作り出されるものと考えられる。冷間加工工程(200)は、大きく変形したミクロ構造の生成を容易にし、一方で熱処理工程(300)は、析出硬化を容易にする。冷間加工(200)が少なくとも25%、好ましくは、50%を超え、かつ、好適な熱処理工程(300)が適用される場合に、特性の改良が実現され得る。
1つのアプローチにおいて、冷間加工(200)工程及び熱処理(300)工程は、アルミニウム合金体が強度(例えば、引張降伏強さ(R0.2)又は極限引張強さ(Rm))の増加を達成するように遂行される。強度増加は、L方向、LT方向、又はST方向の1つ以上の方向に実現し得る。「達成するように遂行される」及び類似語は、参照される特性又は複数の特性が、参照される工程又は複数の工程が終結した後に決定される(例えば、特性は、熱処理工程の半ばでは測定されないが、代わりに熱処理工程の終結時に測定される)ことを意味する。
一実施形態において、冷間加工(200)工程及び熱処理(300)工程は、「冷間加工したままの状態(as-cold worked condition)」のアルミニウム合金体を基準品と比較したとき、アルミニウム合金体が強度の増加を達成するように遂行される。一実施形態において、冷間加工(200)工程及び熱処理(300)工程は、T6質別のアルミニウム合金体を基準品と比較したとき、アルミニウム合金体が強度の増加を達成するように遂行される。別の実施形態において、冷間加工(200)工程及び熱処理(300)工程は、T4質別のアルミニウム合金体を基準品と比較したとき、アルミニウム合金体がより高いR値を達成するように遂行される。これらの特性及び他の特性については、下記の「特性」の項で説明する。
「冷間加工したままの状態」(ACWC)は、次のことを意味する:(i)アルミニウム合金体は溶体化後冷間加工のために調製される。(ii)アルミニウム合金体に冷間加工が施される。(iii)溶体化工程(140)終了後、冷間加工工程(200)開始までの時間は4時間以内である。(iv)そのアルミニウム合金体に熱処理は施されない。冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金体の機械的特性は、冷間加工工程(200)の終了から4〜14日以内に測定する必要がある。「冷間加工したままの状態」のアルミニウム合金体の基準品を製造するには、概して、溶体化後冷間加工のためにアルミニウム合金体を調製し(100)、次いで、本明細書に記載する実務に従ってそのアルミニウム合金体を冷間加工し(200)、その後、そのアルミニウム合金体の一部を取り出し、上記の条件に基づいて冷間加工したままの状態にある特性を決定する。アルミニウム合金体の別の部分については、本明細書に記載する新規方法に従って処理を施し、その後、その特性を測定することになり、そうすることで、冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金体の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工が施されたアルミニウム合金体の特性との比較が容易になる(例えば、強度、延性、破壊靱性の比較)。アルミニウム合金体の基準品は、アルミニウム合金体の一部から製造されているため、そのアルミニウム合金体と同じ組成を有するであろう。
「T6質別」及びその類似語は、溶体化し、次いで熱処理されて最大強度状態(ピーク強度から15kPa(1ksi)以内)にあるアルミニウム合金体を意味し、これは、溶体化後に冷間加工されていない、あるいは平坦化又は真直化における冷間加工の効果が機械的特性限度において認められないことがある、合金体に適用される。以下に更に詳細に記載するように、本明細書に記載する新規方法に従って製造されたアルミニウム合金体は、T6質別のアルミニウム合金体と比較して優れた特性を獲得し得る。T6質別のアルミニウム合金体の基準品を製造するには、溶体化後冷間加工のためのアルミニウム合金体を調製し(100)、その後、そのアルミニウム合金体の一部分にT6質別処理を施す(すなわち、T6質別の基準となるアルミニウム合金体)。アルミニウム合金体の別の部分については、本明細書に記載する新規方法に従って処理を施すことになり、そうすることで、T6質別のアルミニウム合金体の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工が施されたアルミニウム合金体の特性との比較が容易になる(例えば、強度、延性、破壊靱性の比較)。アルミニウム合金体の基準品は、アルミニウム合金体の一部から製造されているため、そのアルミニウム合金体と同じ組成を有するであろう。アルミニウム合金体の基準品を、新規アルミニウム合金体と同等の製品形態にするために(例えば、圧延製品の場合には同じ最終ゲージとする)、アルミニウム合金体の基準品は、溶体化工程(140)の前に(熱間及び/又は冷間)加工を必要とする場合がある。
「T4質別」及びその類似語は、溶体化し、次いで自然時効されて実質的に安定した状態になったアルミニウム合金体を意味し、これは、溶体化後に冷間加工されていない、あるいは平坦化又は真直化における冷間加工の効果が機械的特性限度において認められないことがある、合金体に適用される。T4質別のアルミニウム合金体の基準品を製造するには、溶体化後冷間加工のためにアルミニウム合金体を調製し(100)、その後、そのアルミニウム合金体の一部をT4質別に自然時効させる(すなわち、T4質別の基準となるアルミニウム合金体)。アルミニウム合金体の別の部分については、本明細書に記載する新規方法に従って処理を施すことになり、そうすることで、T4質別のアルミニウム合金体の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工が施されたアルミニウム合金体の特性との比較が容易になる(例えば、強度、延性、破壊靱性の比較)。アルミニウム合金体の基準品は、アルミニウム合金体の一部から製造されているため、そのアルミニウム合金体と同じ組成を有するであろう。アルミニウム合金体の基準品を、新規アルミニウム合金体と同等の製品形態にするために(例えば、圧延製品の場合には同じ厚さとする)、アルミニウム合金体の基準品は、溶体化工程(140)の前に(熱間及び/又は冷間)加工を必要とする場合がある。
「T3質別」及びその類似語は、溶体化し、冷間加工され、次いで自然時効された(すなわち、特性が測定される時には熱処理が適用されていない)アルミニウム合金体を意味する。T3質別のアルミニウム合金体の基準品を製造するには、溶体化後冷間加工のためのアルミニウム合金体を調製し(100)、その後、そのアルミニウム合金体を、通常は数日又は数週間後に強度が安定するまで、自然時効(室温で時効)させる。アルミニウム合金体の別の部分については、本明細書に記載する新規プロセスに従って熱処理が施されることになり、そうすることで、T3質別のアルミニウム合金体の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工が施されたアルミニウム合金体の特性との比較が容易になる(例えば、強度、延性、破壊靱性の比較)。アルミニウム合金体の基準品は、アルミニウム合金体の一部から製造されているため、そのアルミニウム合金体と同じ組成を有するであろう。
「T87質別」及びその類義語は、溶体化し、10%冷間加工(圧延又は延伸)され、次いで最大強度状態(15kPa(1ksi)のピーク強度以内)まで熱処理されたアルミニウム合金体を意味する。以下に更に詳細に記載するように、本明細書に記載する新規プロセスに従って製造されたアルミニウム合金体は、相当するT87質別のアルミニウム合金体よりも優れた特性を獲得し得る。T87質別のアルミニウム合金体の基準品を製造するには、溶体化後冷間加工のためのアルミニウム合金体を調製し(100)、その後、そのアルミニウム合金体の一部分にT87質別処理を施す(すなわち、T87質別の基準となるアルミニウム合金体)。アルミニウム合金体の別の部分については、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工を施すことになり、そうすることで、T87質別のアルミニウム合金体の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工が施されたアルミニウム合金体の特性との比較が容易になる(例えば、強度、延性、破壊靱性の比較)。アルミニウム合金体の基準品は、アルミニウム合金体の一部から製造されているため、そのアルミニウム合金体と同じ組成を有するであろう。アルミニウム合金体の基準品を、新規アルミニウム合金体と同等の製品形態にするために(例えば、圧延製品の場合には同じ厚さとする)、アルミニウム合金体の基準品は、溶体化工程(140)の前に(熱間及び/又は冷間)加工を必要とする場合がある。
一実施形態において、冷間加工工程は、400°以下の温度で(例えば、121℃(250°F)以下の温度で)開始され、熱処理工程(300)は、少なくとも66℃(150°F)の温度で実施される。これらの実施形態において、熱処理工程(300)及び冷間加工工程(200)は、それらを実施することで本明細書に記載する新規アルミニウム合金体が製造される限り、重複(部分的に又は完全に)してもよい。これらの実施形態において、熱処理工程(300)は、冷間加工工程(200)と同時に完了され得る。
E.ミクロ構造
i.再結晶化
冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)は、アルミニウム合金体が未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を獲得/維持するように行われる。未再結晶ミクロ構造を主体とする構造とは、以下に定義するように、アルミニウム合金体に含まれる第1型結晶粒が50%未満(体積分率による)であることを意味する。
アルミニウム合金体は結晶ミクロ構造を有する。「結晶ミクロ構造」とは、多結晶材料の構造である。結晶ミクロ構造は、本明細書において結晶粒(grains)と称する結晶(crystals)を有する。「結晶粒」は多結晶材料の結晶である。
「第1型結晶粒(first type grains)」とは、以下に記載するOIM(Orientation Imaging Microscopy)サンプリング法を用いて測定した、以下に定義する「第1結晶粒基準」を満たす結晶ミクロ構造の結晶粒を意味する。アルミニウム合金体は独特のミクロ構造であるため、本出願は、「再結晶粒」又は「未再結晶粒」という従来の用語を用いていない。これらの用語は、状況によっては曖昧であり、論争の対象にもなる。代わりに、「第1型結晶粒」及び「第2型結晶粒」という用語を用いているが、これら型の結晶粒の量は、OIMサンプリング法に詳細に記載したコンピュータによる方法を用いることにより精密かつ正確に決定される。それゆえ、「第1型結晶粒」という用語は、当業者がそのような結晶粒を再結晶されていないと考えるか又は再結晶化されていると考えるかに関係なく、第1結晶粒基準を満たすあらゆる結晶粒を含む。
OIM解析は、T/4(4分の1平面)位置からL−ST面の表面まで行われる。解析する試料のサイズは、概して、ゲージによって異なる。測定に先立ち、OIM試料を標準的な金属組織試料調製方法により調製する。例えば、OIM試料を、Buehler社製Si−−Cペーパを用いて手作業で3分間研磨した後、平均粒径約3ミクロンのBuehler社製ダイヤモンド液体研磨剤を用いて手作業で研磨する。それらの試料をフッ素−ホウ素水溶液中で30〜45秒間陽極酸化(anodize)する。次いで、それらの試料を、三酸化クロムを含有するリン酸水溶液を用いて剥離し、次に洗浄して、乾燥させる。
「OIMサンプリング法」は次のとおりである。
・ソフトウェアは、TexSEM Lab OIM Data Collectionソフトウェアのバージョン5.31(EDAX Inc.,New Jersey,U.S.A.)を使用し、FIREWIRE(Apple,Inc.,California,U.S.A.)により、DigiView 1612 CCDカメラ(TSL/EDAX,Utah,U.S.A.)に接続する。SEMはJEOL JSM6510(JEOL Ltd.Tokyo,Japan)である。
・OIMの使用条件は、傾斜70°、作動距離18mmであり、ダイナミックフォーカス、スポットサイズ1×10−7ampで加速電圧20kVである。コレクションモードは正方格子である。選択は、方位(orientations)が解析に収集されるように行う(すなわち、Houghピーク情報は収集されない)。1走査における領域サイズ(すなわち、フレーム)は、80X、3ミクロンステップで、2mmゲージの試料の場合2.0mm×0.5mmであり、5mmゲージの試料の場合2.0mm×1.2mmである。ゲージに応じて異なるフレームサイズを使用することができる。収集されたデータは*.oscファイルで出力される。このデータを用いて、下に記載するように、第1型結晶粒の体積分率を計算することができる。
・第1型結晶粒の体積分率の計算第1型結晶粒の体積分率は、*.oscファイルのデータ及びTexSEM Lab OIM解析ソフトウェアバージョン5.31を用いて計算される。計算を行なう前に、データのクリーンアップを、許容角度15°、最小粒度=3データポイント、クリーンアップ1反復を用いて行うことができる。次に、第1結晶粒基準(下記)を使用し、ソフトウェアにより第1型結晶粒の量が計算される。
・第1型結晶粒基準粒子方位分布(grain orientation spread)(GOS)により結晶粒許容角度5°で計算する。最小粒度は3データポイントであり、信頼指数は0である。「計算前に分割を適用」、「端の結晶粒を含める」、及び「双晶境界限定を無視する」は全てが必要であり、計算は「結晶粒平均方位」を用いて行なわれる。結晶粒のGOSが≦3°であるとき、全てが第1型結晶粒である。複数フレームが使用される場合、GOSデータは平均される。
「第1型結晶粒体積」(FGV)とは、結晶材料の第1型結晶粒の体積分率を意味する。
「未再結晶率」などは次式によって決定される。
URX%=(1−FGV)*100%
前述したように、アルミニウム合金体は、概して、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を含んでおり、すなわち、FGV<0.50かつURX%≧50%である。一実施態様では、アルミニウム合金体は(体積分率により)0.45以下の第1型結晶粒を含有する(すなわち、上に示した定義によって、アルミニウム合金体は少なくとも55%が未再結晶である(URX%≧55%))。他の実施態様において、アルミニウム合金体は(体積分率により)0.40以下の第1型結晶粒(URX%≧60%)、又は0.35以下の第1型結晶粒(URX%≧65%)、又は0.30以下の第1型結晶粒(URX%≧70%)、又は0.25以下の第1型結晶粒(URX%≧75%)、又は0.20以下の第1型結晶粒(URX%≧80%)、又は0.15以下の第1型結晶粒(URX%≧85%)、又は0.10以下の第1型結晶粒(URX%≧90%)、又はそれより少ない第1型結晶粒を含んでいる。
ii.構造組織(texture)
アルミニウム合金体は独特のミクロ構造を獲得することができる。この独特のミクロ構造は、結晶学的構造組織データから得られるアルミニウム合金体のR値によって示されることができる。アルミニウム合金体のミクロ構造は、合金体の特性(例えば、なかでも、強度、延性、靱性、耐食性)に関連性を有している。
本出願において、R値は、以下に記載するR値決定法によって決定される。
<R値決定法>
{機器}:
使用される機器は、X線発生装置であり、コンピュータ制御の極点図(pole figures)用ユニット(例えば、Rigaku Ultima III回折計(Rigaku USA,The Woodlands,TX)及びデータ収集ソフトウェア及び極点図データ加工用ODFソフトウェア(例えば、Rigaku回折計に付属のRigakuソフトウェア)を具えたものである。反射極点図は、「Elements of X−ray Diffraction」by B.D.Cullity,2nd edition 1978(Addison−Wesley Series in Metallurgy and Materials)及びthe Rigaku User Manual for the Ultima III Diffractometer and Multipurpose Attachment(又は他の同等の回折装置の他の好適なマニュアル)に基づいて捕捉される。
{試料の調製}:
極点図はT/4位置から表面まで測定される。それゆえ、R値決定に用いられる試料は、(好ましくは)2.22センチメートル(7/8インチ)(LT)×3.18センチメートル(1−1/4インチ)(L)である。試料サイズは測定機器に基づいて変更することができる。R値の測定に先立ち、試料は次の要領にて調製される。
1.圧延面を一方の面から、T/4平面より0.254mm(0.01インチ)厚い面に機械加工する(厚さが保証される場合)。
2.T/4位置に化学的にエッチングする。
{極点図のX線測定}:
極点図の反射(シュルツの反射法に基づく)
1.試料を、試料の圧延方向を表示して試料リングホルダーに取り付ける。
2.試料ホルダーユニットを極点図用ユニットに挿入する。
3.試料の方向を、極点図用ユニットと同じ水平面と一致させる(β=0°)
4.垂直発散スリット(DS)と、Ni Kβフィルタを備えた標準極点図受光スリット(RS)と、標準散乱スリット(SS)とを使用する(スリットの決定は、使用する放射線、ピークの2θ、及びピークの幅に応じて行うことができる)。Rigaku Ultima III回折計では2/3deg DS、5mm RS及び6mm SSを使用する。
5.出力を推奨操作電圧及び電流に設定する(Ultima IIIにおいてNiフィルタを用いたCu放射の場合、デフォルト値40KV 44mA)。
6.Al(111)、Al(200)及びAl(220)のα=15°、β=0°からα=90°、β=355°までバックグラウンド強度を、5°ずつのステップで測定し、ステップ毎に1秒間カウントする(3つの極点図は通常、正確なODFを得るのに十分である)。
7.Al(111)、Al(200)、Al(220)及びAl(311)のα=15°、β=0°からα=90°、β=355°までピーク強度を、5°ずつのステップで測定し、ステップ毎に1秒間カウントする。
8.サンプリング領域を広げてサンプリング統計を改善させるために、測定中、試料を毎秒2cm揺動させる。
9.ピーク強度からバックグラウンド強度を差し引く(これは通常、ユーザー固有のソフトウェアによって行われる)。
10.吸収を補正する(通常、ユーザー固有のソフトウェアによって行われる)。
出力データは通常、ODFソフトウェアに入力するフォーマットに変換される。ODFソフトウェアは、データを正規化し、ODFを計算し、正規化された極点図を再計算する。この情報から、Taylor−Bishop−Hillモデルを用いてR値が計算される(Kuroda,M.et al.,Texture optimization of rolled aluminum alloy sheets using a genetic algorithm,Materials Science and Engineering A 385(2004)235〜244及びMan,Chi−Sing,On the r−value of textured sheet metals,International Journal of Plasticity 18(2002)1683〜1706参照)。
本発明の方法に従って製造されたアルミニウム合金体は、従来法で製造された材料と比べて高い正規化R値を達成することができる。「正規化R値(normalized R-value)」などは、圧延方向に対して角度0°でのRV−対照試料のR値によって正規化されたR値を意味する。例えば、RV−対照試料が圧延方向に対して角度0°でR値0.300を得るとすると、このR値及び他の全てのR値は、0.300で割ることによって正規化される。
「RV−対照試料(RV-control sample)」などは、(上で定義した)T4質別のアルミニウム合金の基準品から採取された対照試料を意味する。
「圧延方向(rolling direction)」などは、圧延製品のL方向を意味する(図13参照)。非圧延製品の場合、R値との関連において、「圧延方向」などは、伸びの主方向(例えば、押出方向)を意味する。本出願の目的において、圧延方向に対して角度0°から角度90°まで、5°間隔で、材料の様々なR値を計算した。簡潔化のために、「配向角(orientation angle)」という語が、「圧延方向に対する角度」を意味する語として用いられていることもある。
「最大正規化R値」などは、圧延方向に対する任意の角度で得られる最大正規化R値を意味する。
「最大RV角度」などは、最大正規化R値が得られる角度を意味する。
1つのアプローチにおいて、本明細書に記載する新規方法に従って処理されたアルミニウム合金体は、少なくとも2.0の最大正規化R値を得ることができる。一実施態様において、新規アルミニウム合金体は、少なくとも2.5の最大正規化R値を得ることができる。他の実施態様において、新規アルミニウム合金体は、最大正規化R値が、少なくとも3.0、又は少なくとも3.5、又は少なくとも4.0、又は少なくとも4.5、又は少なくとも5.0又はそれより高い値を得ることができる。最大正規化R値は、20°から70°までの配向角で達成され得る。いくつかの実施態様において、最大正規化R値は、30°から70°までの配向角で達成される。他の実施態様において、最大正規化R値は、35°から65°までの配向角で達成される。更に他の実施態様において、最大正規化R値は、40°から65°までの配向角で達成される。更に他の実施態様において、最大正規化R値は、45°から60°までの配向角で達成される。他の実施態様において、最大正規化R値は、45°から55°までの配向角で達成される。
別のアプローチにおいて、本明細書に記載する新規方法に従って処理されたアルミニウム合金体は、該新規アルミニウム合金体の最大RV角度でRV−対照試料より少なくとも200%高い最大正規化R値を達成することができる。このアプローチにおいて、新規アルミニウム合金体の正規化R値が、該新規アルミニウム合金体の最大RV角度が起こる角度でのRV−対照試料の正規化R値と比較される。例えば、理論上の例としては、冷間加工されたアルミニウム合金体が、そのRV角度50°(最大RV角度)で最大正規化R値を実現した場合には、その最大正規化R値の増加は、同一のRV角度50°でのRV−対照試料の正規化R値で割った、50°でのその正規化R値となり得る。例えば、この理論上の例において、冷間加工されたアルミニウム合金体が、最大RV角度50°で最大正規化R値7.2を実現し、RV−対照試料が、最大RV角度50°で正規化R値2.0を実現した場合、冷間加工されたアルミニウム合金体は、新規アルミニウム合金体の最大RV角度でRV−対照試料より360%高い最大正規化R値を達成し得る(7.2/2.0*100%=360%)。一実施態様において、アルミニウム合金体は、新規アルミニウム合金体の最大RV角度でRV−対照試料より少なくとも250%高い最大正規化R値を達成することができる。他の実施態様において、アルミニウム合金体が達成し得る最大正規化R値は、該アルミニウム合金体の最大RV角度でのRV−対照試料よりも、少なくとも300%高いか、又は少なくとも350%高いか、又は少なくとも400%高いか、又は少なくとも450%高いか、又は少なくとも500%高いか、又は少なくとも550%高いか、又は少なくとも600%高いか、又は少なくとも650%高いか、又は少なくとも700%高いか、又はそれよりも高い。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規方法に従って処理が施されたアルミニウム合金体は、RV−対照試料の最大正規化R値より少なくとも200%高い最大正規化R値を達成することができる。この実施形態では、新規アルミニウム合金体の最大正規化R値は、最大正規化R値が起こる角度とは関係なく、RV−対照試料の最大正規化R値と比較される。例えば、理論上の例としては、冷間加工されたアルミニウム合金体が、そのRV角度50°(最大RV角度)での最大正規化R値を実現した場合には、その最大正規化R値の増加は、RV−対照試料がその最大正規化R値を達成する角度とは関係なく、RV−対照試料の最大正規化R値で割った、50°でのその正規化R値となり得る。例えば、この理論上の例において、冷間加工されたアルミニウム合金体が、最大RV角度50°で最大正規化R値7.2を実現し、RV−対照試料が、その最大RV角度20°で正規化R値3.0を実現した場合、冷間加工されたアルミニウム合金体は、RV−対照試料より240%高い最大正規化R値を実現し得る(7.2/3.0*100%=240%)。一実施態様において、アルミニウム合金体は、RV−対照試料の最大正規化R値より少なくとも250%高い最大正規化R値を達成することができる。他の実施形態において、アルミニウム合金体が達成し得る最大正規化R値は、RV−対照試料の最大正規化R値より、少なくとも300%高いか、又は少なくとも350%高いか、又は少なくとも400%高いか、又は少なくとも450%高いか、又は少なくとも500%高いか、又はそれよりも高い。
F.任意選択の熱処理後処理 熱処理工程(300)の後、任意選択で、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を様々な最終処理(複数可)(400)に付すことができる。例えば、熱処理工程(300)と共に又はその後に、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体に様々な追加加工又は仕上げ加工(例えば、(i)成形加工、(ii)延伸などの機械的特性に実質的に影響を及ぼさない平坦化又は真直化、及び/又は(iii)機械加工、陽極酸化処理、塗装、研磨、バフ仕上げなどの他の工程)に付してもよい。任意選択の最終処理(複数可)工程(400)では、アルミニウム合金体のミクロ構造に物質的に影響を及ぼすと考えられる、あらゆる意図的な/有意義な熱処理(複数可)(例えば、あらゆるアニーリング工程)は行わなくてよい。冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)を組み合わせることにより獲得されたミクロ構造は保持されることができる。
1つのアプローチにおいて、任意選択の最終処理(複数可)(400)は、1つ以上の処理を、熱処理工程(300)と共に行なうことができる。一実施態様において、任意選択の最終処理(複数可)工程(400)は成形工程を含んでおり、この成形工程は熱処理工程(300)と共に(例えば、熱処理工程(300)と同時に)行うことができる。一実施形態において、アルミニウム合金体は、一緒に行う成形及び熱処理操作(例えば、以下の製品用途の節(節I)に列挙される他の製品のなかでも、熱処理工程中に、自動車部品ドア、外側及び/又は内側パネル、ホワイトボディ部品、ボンネット、トランクリッド、及び同様の部品を成形すること)によって、実質的な最終形態になり得る。一実施形態において、アルミニウム合金体は、成形操作の後、所定の形状の製品の形態にある。一実施形態において、かつ再び図2q−6を参照して、熱処理工程(300)は温間成形工程(320’)からなり、所定の形状の製品が製造され得る。
任意選択の最終処理(複数可)(400)は成形操作(例えば、所定の形状の製品を成形するための室温又は温間成形操作)を含んでもよいため、このような成形操作に起因して、一部の加工(温間又は冷間)が合金体において誘導され得るが、このような成形操作は、このような成形操作が、(i)熱処理工程(300)の達成(完了)後に行われるか、又は(ii)熱処理工程(300)の前か、熱処理工程の最中、すなわち熱処理工程と共に(すなわち、熱処理工程の達成(完了)前に)行われるかのいずれかであるが、0.3322未満の等価塑性歪み(すなわち、上記の表1によるところの25%未満のCW)を含む場合、工程(200)に対する「冷間加工」の定義の中には含まれない。逆に、冷間加工温度(複数可)(上に定義)で発生し、かつ溶体化後及び熱処理工程の完了前に少なくとも0.3322等価塑性歪みを誘導するいずれの成形操作も、上記によるところの「冷間加工」であるため、冷間加工工程(200)の定義に含まれ、任意選択の最終処理工程(400)の定義には含まれない。
本明細書で使用される「所定の形状の製品」及び類似語句は、形状成形操作(例えば、なかでも、絞り、しごき、温間成形、フロー成形、剪断成形、回転成形、ドーム形成、ネッキング、フランジ成形、ねじ切り、ビーディング、曲げ加工、シーミング、スタンピング、液圧成形、及びカーリング)によってある形状へと成形され、その形状が形状成形操作(工程)に先立って決定された製品を意味する。所定の形状の製品の例としては、自動車部品(例えば、とりわけ、ボンネット、フェンダー、ドア、ルーフ、及びトランクの蓋)及び容器(例えば、とりわけ、食品缶、ボトル)、家庭用電子部品(例えば、とりわけ、ノート型パソコン、携帯電話、カメラ、携帯型音楽プレーヤー、携帯端末、コンピュータ、テレビ)、並びに以下の製品用途の節(節I)に記載する多くの他のアルミニウム合金製品が挙げられる。本特許出願の目的では、「所定の形状の製品」は冷間圧延後に製造される単なるシート又はプレート製品は含まず、これは、圧延が本明細書に定義する「成形操作」ではなく、故に圧延製品は「形状成形操作によってある形状へと成形され」ていないためである。代わりに、圧延製品は、後で顧客が最終製品形態に成形(shape)(形成(form))する。一実施形態において、所定の形状の製品は、成形操作後にその最終製品形態になる。「所定の形状の製品」を製造するために利用される成形操作は、熱処理の節(節C、小節i)に記載するように、熱処理工程(300)の前、後、又は熱処理工程と共に行われることができる。
一実施形態において、所定の形状の製品は、フロー成形によって製造された製品である。フロー成形は、圧力を使用して、金属のディスク又は管を1つ以上のローラによってマンドレル上で成形するインクリメンタル金属成形技法であり、これにおいてローラが被加工物を変形させ、それをマンドレルに押し付け、通常は、被加工物を軸方向に伸ばし、同時に被加工物を半径方向に薄層化させるという両方のことを行う。例示として、フロー成形によって製造され得るアルミニウム合金体としては、とりわけ、航空宇宙用部品、基部(例えば、テーブル、旗竿、洗面台)、洗面器、軸受ハウジング、ボウル、弾丸型ヘッドライト形状、クラッチハウジング、コーン、容器、カバー、蓋、キャップ、軍用部品、皿、ドーム、エンジン部品、フィーダー、漏斗、半球体、高圧ガスボトル/ボンベ、ホッパー、警音器(サウンドプロジェクション)、ハウジング、マウンティングリング、楽器(例えば、トランペット、シンバル)、ノーズコーン、ノズル、オイルシール部品、パイプ/管端、深鍋、平鍋、カップ、缶、手桶、バケツ、容器、滑車、反射体、リング、通信衛星パラボラアンテナ、分離器部品、球体、タンク端部/頭部/底部、ベンチュリ形状、汚物容器、ハブ、ローラ、支柱、トルクチューブ、駆動軸、エンジン及びモーターシャフト、軍需物資、並びにホイール(自動車、トラック、自動二輪車など)が挙げられる。
上述のように、成形操作は、熱処理工程(300)の前、最中、又は後に完了され得る。一実施形態において、成形操作は、熱処理工程(300)と共に完了されるため、66℃(150°F)から圧延アルミニウム合金製品の再結晶化温度未満までの温度で行ってもよい。これらの成形操作は、本明細書中では「温間成形」操作として言及される。一実施形態において、温間成形操作は、93℃〜288℃(200°F〜550°F)の温度で行われる。別の実施形態において、温間成形操作は、121℃〜232℃(250°F〜450°F)の温度で行われる。このような成形操作は熱処理工程(300)の一部として完了されるため、これらは、とりわけ、上に記載する図2a、3〜5、6a、7〜9、2q−1〜2q−9に例示される実施形態のうちのいずれかを含む、上記の熱処理の節(節C)に記載する実施形態のうちのいずれかとの組み合わせで使用されてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態において、とりわけ上に記載する図2q−1〜2q−9に例示される実施形態のうちのいずれかを含む、上記の熱処理の節(節C)に記載するように、所定の形状の製品を所定の状態で製造するために、温間成形を使用してもよく、温間成形された部分は、(i)受けた後の状態にあるそれらの強度、及び(ii)T6質別の所定の形状の製品の基準品のうちの1つ以上と比べて、より高い強度を有し得る。「受けた後の状態」及び類似語句は、部分的に冷間加工された状態(工程220による)、冷間加工後の状態(工程200の完全な終了、及び以下の冷間加工された状態の定義による)、T3状態(工程200の完全な終了、及び以下のT3質別の定義による)、又は部分的に熱処理された状態(工程320による)、及びこれらの組み合わせを含む。改善された特性は、以下の特性の節(節H)に記載する改善された特性のうちのいずれかであってもよい。温間成形は、欠陥のない所定の形状の製品の製造を容易にし得る。欠陥のないとは、部品が市販製品としての使用に好適であるために、例を挙げると、割れ、しわ、ルダリング(Ludering)、薄層化、及びミカン肌をほとんど(ごくわずかしか)又は全く有しなくてもよいことを意味する。他の実施形態において、室温成形を使用して、欠陥のない所定の形状の製品を製造してもよい。
他の実施形態において、成形操作は、66℃(150°F)未満の温度で、例えば周囲条件で(室温成形)発生し得るため、熱処理工程(300)の一部ではない。
上記の成形操作は、典型的には、アルミニウム合金体に応力を適用して(例えば、アルミニウム合金シート又はアルミニウム合金プレートなどの圧延アルミニウム合金製品に応力を適用して)、アルミニウム合金体を所定の形状の製品へと成形する。応力の量は成形操作中で変化してもよいが、成形操作中に適用される応力の最大量は、通常、少なくとも0.01EPS(等価塑性歪み)である。一実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.05EPSである。別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.07EPSである。更に別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.10EPSである。別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.15EPSである。更に別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.20EPSである。別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.25EPSである。更に別の実施形態において、成形操作中に適用される応力の最大量は、少なくとも0.30EPSである。これらの実施形態のいずれにおいても、成形操作中に適用される応力の最大量は、0.3322EPS未満であり得る。
成形工程の後、所定の形状の製品は、成形工程の使用者によって流通及び/又はさもなければ使用されてもよい。例えば、自動車部品製造業者は、自動車部品を成形し、その後、その自動車部品を使用して車両を組立ててもよい。航空宇宙用車両製造業者は、航空宇宙用部品を成形し、その後、その航空宇宙用部品を使用して航空宇宙用車両を組立ててもよい。容器製造業者は、容器を成形し、その後、このような容器を、消費のためのファイリング及び流通に対して食品又は飲料流通業者に提供してもよい。多くの他の変型が存在し、以下の製品用途の節(節I)に列挙されるアルミニウム合金製品の多くは、製造業者によって成形されることができ、その後、さもなければ組立品中で使用、及び/又は流通され得る。
G.組成
上述のように、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、3.0〜6.0重量%のマグネシウム及び2.5〜5.0重量%の亜鉛を有するアルミニウム合金から作製され、マグネシウム及び亜鉛のうちの少なくとも1つは、アルミニウム以外でアルミニウム合金体の主体となる合金元素であり、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、0.6〜2.40である。マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金はまた、以下に定義するように、第2の元素、第3の元素、及び/又は他の元素を含んでもよい。
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、3.0〜6.0重量%のマグネシウム(Mg)を含む。一実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも3.25重量%のMgを含む。別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも3.50重量%のMgを含む。更に別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも3.75重量%のMgを含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、5.5重量%以下のMgを含む。別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、5.0重量%以下のMgを含む。更に別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、4.5重量%以下のMgを含む。
一実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも2.75重量%のZnを含む。別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも3.0重量%のZnを含む。別の実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも3.25重量%のZnを含む。一実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、4.5重量%以下のZnを含む。一実施形態において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、4.0重量%以下のZnを含む。
一実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)(すなわち、Mg/Zn比)は、少なくとも0.75である。別の実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、少なくとも0.90である。更に別の実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、少なくとも1.0である。別の実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、少なくとも1.02である。一実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)(すなわち、Mg/Zn比)は、2.00以下である。別の実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、1.75以下である。別の実施形態において、(重量% Mg)/(重量% Zn)は、1.50以下である。
マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は第2の元素を含むことができる。第2の元素は、銅、ケイ素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、銅を含む。別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、ケイ素を含む。更に別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、銅とケイ素との両方を含む。これら第2の元素が、マグネシウム及び亜鉛の主要元素と共に十分な量で存在すると、歪み硬化反応及び/又は析出硬化反応のうちの1つ又は両方を促進することができる。このように、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金が、本明細書に記載する新規プロセスと共に用いられるとき、(例えばT6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体と比べて)強度の改善などの特性の組み合わせの改善を実現することができる。
銅が用いられる場合、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、少なくとも0.05重量%のCuを含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも0.10重量%のCuを含む。マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、1.0重量%以下、例えば0.5重量%以下のCuを含む。他の実施態様において、銅は不純物として合金に含まれており、これらの実施形態では、0.05重量%未満のCuのレベルで存在する。
ケイ素が用いられる場合、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、少なくとも0.10重量%のSiを含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、少なくとも0.15重量%のSiを含む。マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、0.50重量%以下のSiを含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、0.35重量%以下のSiを含む。別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、0.25重量%以下のSiを含む。他の実施態様において、ケイ素は不純物として合金に含まれており、これらの実施形態では、0.10重量%未満のSiのレベルで存在する。
マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、なかでも、機械的特性、物理的特性又は腐食特性(すなわち、強度、靱性、耐疲労性、耐食性)を改善させること、高温での特性を改善させること、鋳造を容易にすること、鋳造又は展伸される結晶粒構造を制御すること、及び/又は機械加工性を改善させることなどの様々な目的のために、第3の元素を含むことができる。存在する場合、これら第3の元素は、次のうちの1つ以上を含むことができる:(i)Ag及びLiのうちの1つ以上を各々が最大3.0重量%、(ii)Mn、Sn、Bi、Cd、及びPbのうちの1つ以上を各々が最大2.0重量%、(iii)Fe、Sr、Sb及びCrのうちの1つ以上を各々が最大1.0重量%、並びに(iv)Ni、V、Zr、Sc、Ti、Hf、Mo、Co、及び希土類元素のうちの1つ以上を各々が最大0.5重量%。存在する場合、第3の元素は、通常、少なくとも0.01重量%の量で合金中に含まれる。
マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、第3の元素又は不純物として、鉄を含むことができる。鉄が合金中に第3の元素として含まれない場合、鉄は、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中に不純物として含まれることができる。これらの実施形態では、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、鉄を0.50重量%以下含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、鉄を0.25重量%以下含む。別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、鉄を0.15重量%以下含む。更に別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、鉄を0.10重量%以下含む。別の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、鉄を0.05重量%以下含む。
マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、概して、少量の「他の元素」(例えば、鋳造助剤及びFeでない不純物)を含む。他の元素とは、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中に含まれることができる周期表元素のうち、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、第2の元素(含まれる場合)、第3の元素(含まれる場合)、及び鉄(含まれる場合)を除く他のあらゆる元素を意味する。第2の元素及び/又は第3の元素のうちのいずかの元素が合金中に単なる不純物として含まれる場合、そのような元素は、鉄を除き、「他の元素」の範囲に含まれる。例えば、マグネシウム−亜鉛合金が銅を合金添加元素としてではなく、不純物(すなわち、本特許出願の目的では0.05重量%より少ないCu)として含む場合には、その銅は「他の元素」の範囲に含まれ得る。同様に、マグネシウム−亜鉛合金がケイ素を合金添加元素としてではなく、不純物(すなわち、本特許出願の目的では0.01重量%より少ないSi)として含む場合には、そのケイ素は「他の元素」の範囲に含まれ得る。別の例として、Mn、Ag、及びZrがマグネシウム−亜鉛合金中に合金添加元素として含まれる場合には、それらの第3の元素は「他の元素」の範囲に含まれないが、他の第3の元素は、合金中に単なる不純物として含まれ得るため、他の元素の範囲に含まれ得る。しかしながら、鉄がマグネシウム−亜鉛合金中に不純物として含まれる場合、それらには、上記のように、それ自体の規定された不純物限度があるため「他の元素」の範囲に含まれない。
概して、アルミニウム合金体は、他の元素のうちのいずれの元素も各々が0.25重量%以下を含み、これらの他の元素の合計量は0.50重量%を超えない。一実施態様において、これらの他の元素はそれぞれ、個々に、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中に0.10重量%を超えず、これらの他の元素の合計量はマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中0.35重量%を超えない。別の実施態様において、これらの他の元素はそれぞれ、個別に、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中0.05重量%を超えず、これらの他の元素の合計量はマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中0.15重量%を超えない。別の実施態様において、これらの他の元素はそれぞれ、個々に、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中0.03重量%を超えず、これらの他の元素の合計量はマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金中0.10重量%を超えない。
第1の合金元素、第2の合金元素、及び第3の合金元素の合計量は、アルミニウム合金体が適切に溶体化されることができるように選択されるべきである(例えば、構成粒子の量を制限しながら硬化を容易にするために)。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、溶体化後にマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金が可溶性構成粒子を含まないか又は実質的に含まないようにする量の合金元素を含む。一実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、溶体化後にアルミニウム合金が少量の(例えば、制限された/最少の)不溶性構成粒子を含むようにする量の合金元素を含む。他の実施態様において、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は、制御された量の不溶性構成粒子から恩恵を受けることもある。
H.特性
本明細書に記載する新規プロセスによって製造された新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、改善された特性の組み合わせを達成(実現)することができる。
i.強度
上述のように、冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)により、冷間加工したままの状態及び/又はT6質別(上に定義した)のアルミニウム合金の基準品と比べて強度の改善を達成することができる。強度特性は、概して、ASTM E8及びB557に準拠して測定されるが、製品形態に対して適切なように、他の適用可能な基準(例えば、締結具に対してはNASM 1312−8及び/又はNASM 1312−13の使用)に準拠して測定されてもよい。
1つのアプローチにおいて、アルミニウム合金体は、強度(TYS及び/又はUTS)について、T6状態のアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも5%の増加を達成する。一実施態様において、アルミニウム合金体は、引張降伏強度について、T6状態のアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも6%の増加を達成する。他の実施態様において、アルミニウム合金体は、引張降伏強度について、T6状態のアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも7%の増加、又は少なくとも8%の増加、又は少なくとも9%の増加、又は少なくとも10%の増加、又は少なくとも11%の増加、又は少なくとも12%の増加、又は少なくとも13%の増加、又は少なくとも14%の増加、又は少なくとも15%の増加、又は少なくとも16%の増加、又は少なくとも17%の増加、又は少なくとも18%の増加、又は少なくとも19%の増加、又は少なくとも20%の増加、又は少なくとも21%の増加、又は少なくとも22%の増加、又は少なくとも23%の増加、又は少なくとも24%の増加、又は少なくとも25%の増加、又はそれ以上の増加を達成する。これらの増加はL方向及び/又はLT方向に実現することができる。アルミニウム合金体が締結具である場合、その引張降伏強度は、NASM 1312−8に準拠して試験してもよく、引張降伏強度に対する上記又は下記の改善のうちのいずれをも実現し得る。
関連する実施態様において、アルミニウム合金体は、極限引張強度について、T6状態のアルミニウム合金体と比べて、少なくとも6%の増加を達成することができる。他の実施態様において、アルミニウム合金体は、極限引張強度について、T6状態のアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも7%の増加、又は少なくとも8%の増加、又は少なくとも9%の増加、又は少なくとも10%の増加、又は少なくとも11%の増加、又は少なくとも12%の増加、又は少なくとも13%の増加、又は少なくとも14%の増加、又は少なくとも15%の増加、又は少なくとも16%の増加、又は少なくとも17%の増加、又は少なくとも18%の増加、又は少なくとも19%の増加、又は少なくとも20%の増加、又は少なくとも21%の増加、又は少なくとも22%の増加、又は少なくとも23%の増加、又は少なくとも24%の増加、又は少なくとも25%の増加、又はそれ以上の増加を達成することができる。これらの増加はL方向及び/又はLT方向に実現することができる。
関連する実施形態において、アルミニウム合金締結具は、剪断強度について、アルミニウム合金締結具の基準品と比べて、少なくとも2%の増加を達成することができ、そのアルミニウム合金締結具の基準品は、T6質別及びT87質別のうちの1つにあり、その剪断強度は、NASM 1312−13に準拠して試験される。他の実施形態において、アルミニウム合金締結具は、剪断強度について、アルミニウム合金締結具の基準品と比べて、少なくとも4%の増加、又は少なくとも6%の増加、又は少なくとも8%の増加、又は少なくとも10%の増加、又は少なくとも12%の増加、又は少なくとも14%の増加、又は少なくとも16%の増加、又は少なくとも18%の増加、又は少なくとも20%の増加、又は少なくとも22%の増加、又は少なくとも24%の増加、又は少なくとも25%の増加、又はそれ以上の増加を達成することができ、そのアルミニウム合金締結具の基準品は、T6質別及びT87質別のうちの1つにある。
1つのアプローチにおいて、アルミニウム合金体は、冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも同等の引張降伏強度を達成する。一実施形態において、アルミニウム合金体は、引張降伏強度について、冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも2%の増加を達成する。他の実施形態において、アルミニウム合金体は、引張降伏強度について、冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも4%の増加、又は少なくとも6%の増加、又は少なくとも8%の増加、又は少なくとも10%の増加、又は少なくとも12%の増加、又は少なくとも14%の増加、又は少なくとも16%の増加、又はそれ以上の増加を達成する。極限引張強度に対しても同様の結果を得ることができる。これらの増加はL方向又はLT方向に実現することができる。
一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、LT方向の典型的な引張降伏強度について少なくとも532kPa(35ksi)を実現する。他の実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、LT方向の典型的引張降伏強度について、少なくとも608kPa、又は少なくとも684kPa、又は少なくとも760kPa、又は又は少なくとも775kPa、又は少なくとも790kPa、又は少なくとも806kPa、又は少なくとも820kPa、又は少なくとも836kPa、又は少なくとも851kPa、又は少なくとも866kPa、又は少なくとも882kPa、又は少なくとも896kPa、又は少なくとも912kPa、又は少なくとも927kPa、又は少なくとも942kPa、又は少なくとも957kPa、又は少なくとも973kPa、又は少なくとも988kPa、又は少なくとも1003kPa、又は少なくとも1018kPa、又は少なくとも1034kPa、又は少なくとも1049kPa、又は少なくとも1064kPa、又は少なくとも1079kPa、又は少なくとも1094kPa、又は少なくとも1110kPa、又は少なくとも1125kPa、少なくとも1140kPa(40ksi、又は少なくとも45ksi、又は少なくとも50ksi、又は少なくとも51ksi、又は少なくとも52ksi、又は少なくとも53ksi、又は少なくとも54ksi、又は少なくとも55ksi、又は少なくとも56ksi、又は少なくとも57ksi、又は少なくとも58ksi、又は少なくとも59ksi、又は少なくとも60ksi、又は少なくとも61ksi、又は少なくとも62ksi、又は少なくとも63ksi、又は少なくとも64ksi、又は少なくとも65ksi、又は少なくとも66ksi、又は少なくとも67ksi、又は少なくとも68ksi、又は少なくとも69ksi、又は少なくとも70ksi、又は少なくとも71ksi、又は少なくとも72ksi、又は少なくとも73ksi、又は少なくとも74ksi、又は少なくとも75ksi)、又はそれ以上を実現する。平行方向(L)においても同様の結果を達成することができる。
関連する実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、LT方向の典型的極限引張強度について、少なくとも608kPa(40ksi)を実現する。他の実施形態において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、LT方向の典型的極限引張強度について、少なくとも684kPa、又は少なくとも760kPa、又は又は少なくとも775kPa、又は少なくとも790kPa、又は少なくとも806kPa、又は少なくとも820kPa、又は少なくとも836kPa、又は少なくとも851kPa、又は少なくとも866kPa、又は少なくとも882kPa、又は少なくとも896kPa、又は少なくとも912kPa、又は少なくとも927kPa、又は少なくとも942kPa、又は少なくとも957kPa、又は少なくとも973kPa、又は少なくとも988kPa、又は少なくとも1003kPa、又は少なくとも1018kPa、又は少なくとも1034kPa、又は少なくとも1049kPa、又は少なくとも1064kPa、又は少なくとも1079kPa、又は少なくとも1094kPa、又は少なくとも1110kPa、又は少なくとも1125kPa、少なくとも1140kPa(45ksi、又は少なくとも50ksi、51ksi、又は少なくとも52ksi、又は少なくとも53ksi、又は少なくとも54ksi、又は少なくとも55ksi、又は少なくとも56ksi、又は少なくとも57ksi、又は少なくとも58ksi、又は少なくとも59ksi、又は少なくとも60ksi、又は少なくとも61ksi、又は少なくとも62ksi、又は少なくとも63ksi、又は少なくとも64ksi、又は少なくとも65ksi、又は少なくとも66ksi、又は少なくとも67ksi、又は少なくとも68ksi、又は少なくとも69ksi、又は少なくとも70ksi、又は少なくとも71ksi、又は少なくとも72ksi、又は少なくとも73ksi、又は少なくとも74ksi、又は少なくとも75ksi)、又はそれ以上を実現する。縦方向(L)においても同様の結果を達成することができる。
新規なマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、T6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金の基準品と比べて、短時間で高強度を達成することができる。一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、T6質別のアルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも10%速くそのピーク強度を実現する。10%速い処理の例として、T6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体が35時間の処理でそのピーク強度を実現する場合、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体では31.5時間以下でそのピーク強度を実現し得る。他の実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、そのピーク強度を、T6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金の基準品と比べて、少なくとも20%速く、又は少なくとも25%速く、又は少なくとも30%速く、又は少なくとも35%速く、又は少なくとも40%速く、又は少なくとも45%速く、又は少なくとも50%速く、又は少なくとも55%速く、又は少なくとも60%速く、又は少なくとも65%速く、又は少なくとも70%速く、又は少なくとも75%速く、又は少なくとも80%速く、又は少なくとも85%速く、又は少なくとも90%速く、又はそれ以上速く実現する。
一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、10時間未満の熱処理時間でそのピーク強度を実現する。他の実施態様において、新規なマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、そのピーク強度を、9時間未満、又は8時間未満、又は7時間未満、又は6時間未満、又は5時間未満、又は4時間未満、又は3時間未満、又は2時間未満、又は1時間未満、又は50分未満、又は40分未満、又は30分未満、又は20分未満、又は15分未満、又は10分未満の熱処理時間、又はそれ未満で実現する。熱処理時間が短いため、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を熱処理するのに、塗装焼付サイクル又は塗布硬化を用いることが可能である。
ii.延性
アルミニウム合金体は、上記強度と組み合わせて、良好な延性を実現することができる。1つのアプローチにおいて、アルミニウム合金体は、4%を超える伸び(L及び/又はLT)を達成する。一実施形態において、アルミニウム合金体は、少なくとも5%の伸び(L及び/又はLT)を達成する。他の実施形態において、アルミニウム合金体は、少なくとも6%、又は少なくとも7%、又は少なくとも8%、又は少なくとも9%、又は少なくとも10%、又は少なくとも11%、又は少なくとも12%、又は少なくとも13%、又は少なくとも14%、又は少なくとも15%、又は少なくとも16%、又はそれ以上の伸び(L及び/又はLT)を達成することができる。
iii.破壊靭性
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、良好な破壊靱性特性を実現することができる。靱性特性は、概して、平面歪み破壊靱性(例えば、KIC及びKQ)についてはASTM E399及びASTM B645に準拠して測定され、平面応力破壊靱性(例えば、Kapp及びKRR25)についてはASTM E561及びB646に準拠して測定される。
一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、T6質別のアルミニウム合金の基準品と比べて10%以下の靱性低下を実現する。他の実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、T6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金の基準品と比べて、9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下の靱性低下を実現する。一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、T6質別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金の基準品の靱性と少なくとも同等の靱性を実現する。
iv.応力腐食割れ
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、良好な応力腐食割れ抵抗を実現することができる。応力腐食割れ(SCC)抵抗は、概して、ASTM G47に準拠して測定される。例えば、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、良好な強度及び/又は靱性を達成することができ、同時に良好なSCC耐食性を達成することができる。一実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、レベル1の耐食性を実現する。別の実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、レベル2の耐食性を実現する。更に別の実施態様において、新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は、レベル3の耐食性を実現する。
v.耐剥離性(exfoliation resistance)
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体は耐剥離性であることができる。耐剥離性は、概して、ASTM G34に準拠して測定される。一実施態様において、アルミニウム合金体は、EB以上のEXCO評価を実現する。別の実施態様において、アルミニウム合金体は、EA以上のEXCO評価を実現する。更に別の実施態様において、アルミニウム合金体は、P以上のEXCO評価を実現する。
vi.外観
本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、改善された外観を実現することができる。下記外観基準は、HunterLab Dorigon II(Hunter Associates Laboratory INC,Reston,VA)、又は同等の機器によって測定することができる。
本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも5%高い正反射率を実現することができる。一実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金と比べて、少なくとも6%高い正反射率を実現する。他の実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも7%高いか、又は少なくとも8%高いか、又は少なくとも9%高いか、又は少なくとも10%高いか、又は少なくとも11%高いか、又は少なくとも12%高いか、又は少なくとも13%高いか、又はそれ以上の正反射率を実現する。
本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも10%高い2°拡散を実現することができる。一実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも12%高い2°拡散を実現する。他の実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも14%高いか、又は少なくとも16%高いか、又は少なくとも18%高いか、又は少なくとも20%高いか、又は少なくとも22%高いか、又はそれ以上の2°拡散を実現する。
本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも15%高い2写像性を実現することができる。一実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも18%高い2写像性を実現する。他の実施態様において、新規アルミニウム合金体は、T6質別の基準となるアルミニウム合金体と比べて、少なくとも21%高いか、又は少なくとも24%高いか、又は少なくとも27%高いか、又は少なくとも30%高いか、又はそれ以上の2写像性を実現する。
本明細書に記載する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、改善された光沢特性を実現することができる。一実施形態において、開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体の意図される観察面は、T6質別のアルミニウム合金体の基準品の意図される観察面と比べて、少なくとも同等の60°光沢度を実現する。一実施形態において、新規アルミニウム合金体は、T6質別のアルミニウム合金体の基準品の意図される観察面と比較して、少なくとも2%高い60°光沢度を実現する。他の実施形態において、新規アルミニウム合金体の意図される観察面は、T6質別のアルミニウム合金体の基準品の意図される観察面と比較して、少なくとも4%高いか、又は少なくとも6%高いか、又は少なくとも8%高いか、又はそれ以上の60°光沢度を実現する。「60°光沢度」及び類似語は、60°の光沢角度、及び製造業者が推奨する基準に従って操作したBYK Gardner haze−gloss Reflectometer(又は同様の光沢計)を使用した、アルミニウム合金体の意図される観察面の測定から得た60°光沢度を意味する。
vi.表面粗さ
本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金体は、低い表面粗さを有し得る(例えば、なかでも、ほとんど又は全くルダリングを有しない、ほとんど又は全くミカン肌を有しない)。一実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、2.5マイクロメートル(100マイクロインチ)(Ra)を実現する。別の実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、2.3マイクロメートル(90マイクロインチ)(Ra)を実現する。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、2.0マイクロメートル(80マイクロインチ)(Ra)を実現する。別の実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、1.8マイクロメートル(70マイクロインチ)(Ra)を実現する。更に別の実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、1.5マイクロメートル(60マイクロインチ)(Ra)を実現する。別の実施形態において、アルミニウム合金体は、表面粗さ(Ra)について、LT方向で測定した場合、1.3マイクロメートル(50マイクロインチ)(Ra)以下を実現する。この小節(H)(vi)の目的のために、表面粗さは、ASTM E8及びB557に準拠して実施した引張試験によって破壊まで引っ張った標本上で測定される。
I.製品用途
本明細書に記載する新規プロセスは、様々な製品用途に適用可能性を有する。一実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、ウイングスキン(上面及び下面)又はストリンガ/スティフナ、胴体スキン又はストリンガ、リブ、フレーム、スパー、シートトラック、隔壁、円周フレーム、尾翼(例えば、水平安定板及び垂直安定板など)、フロアビーム、シートトラック、ドア、及び操縦翼面部品(例えば、方向舵、補助翼)などの航空宇宙用途に使用される。そのような部品における潜在的利点の多くは、挙げるとすると、高強度、優れた耐食性、疲労亀裂の発生及び進展に対する抵抗性の改善、靱性の改善を含む製品の使用によって、そのような部品中で実現されることができる。そのような特性の組合せを改善することにより、軽量化又は検査間隔の低減をもたらすことができる。
別の実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、弾薬筒及び装甲などの軍需品/弾道学/軍事用途に使用される。弾薬筒としては、小型武器及び大砲に使用されるもの又は迫撃砲若しくは戦車一斉射撃に使用されるものが挙げられる。他の弾薬部品としては、送弾筒及びフィンが挙げられ得る。迫撃砲、起爆部品も、精密誘導爆弾及びミサイルのフィン及び制御面と同様に、可能性のある別の用途である。装甲部品としては、軍用車両の装甲板又は構造用部品が挙げられる。そのような用途において、本製品は、軽量化又は信頼性若しくは精度の改善をもたらすことができる。
別の実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、産業工学及び/又は航空宇宙産業において使用され得る、ボルト、リベット、ねじ、スタッド、インサート、ナット、及び締付けボルトなどの締結具用途に使用される。これらの用途では、本製品は、チタン合金又はスチールのような他の重い材料の代替として、軽量化のために使用され得る。他の場合には、本製品は、優れた耐久性を提供することができる。
別の実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、クロージャーパネル(例えば、なかでも、ボンネット、フェンダー、ドア、ルーフ、及びトランクの蓋)、ホイール、及び、ホワイトボディなどの大きな強度が要求される用途(例えば、ピラー、補強材)などの自動車用途に使用される。これらの用途のうちのいくつかにおいて、本製品は、部品の小型化及び軽量化を可能にし得る。
別の実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、船舶及びボート(例えば、なかでも、船体、甲板、帆柱、及び上部構造)に対してなど、海洋用途に使用される。これらの用途のうちのいくつかにおいて、本製品は、小型化及び軽量化を可能にするために使用され得る。いくつかの他の場合には、本製品は、耐食性に劣る製品に代えて使用することにより、信頼性及び寿命を強化させることができる。
別の実施態様において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、ホッパータンク及び有蓋車などの鉄道用途に使用される。ホッパー車又はタンク車の場合、本製品は、ホッパー及びタンク自体に又は支持構造に使用され得る。これらの場合、本製品は、軽量化(小型化による)又は輸送される製品との適合性の強化をもたらすことができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、トラックトラクター、ボックストレーラー、平床トレーラー、バス、パッケージバン、レクリエーション用車両(RV)、全地形用車両(ATV)などの陸上輸送用途に使用される。トラックトラクター、バス、パッケージバン、及びRVでは、本製品は、クロージャーパネル又はフレーム、バンパー又は燃料タンクに使用することにより、小型化及び軽量化を可能にし得る。対応して、本合金体をホイールに使用して、耐久性若しくは軽量化の強化、又は外観の改善をもたらすこともできる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、ライザー、補助ライン、ドリルパイプ、チョーク/キルライン、産出パイプ、及び縦樋(fall pipe)などの石油及びガス用途に使用される。これらの用途において、本製品は、薄肉化及び軽量化を可能にし得る。他の使用としては、腐食性能を改善させるための代替材料としてか、又は掘削流体若しくは産出流体との適合性を改善させるための代替材料が挙げられ得る。本製品は、なかでも、居住モジュール及びヘリポートのような探査に用いられる補助装備にも使用することができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、蓋及びタブ、食品用缶、ビン、トレー、並びにキャップなどの包装用途に使用される。これらの用途における利点としては、小型化及び包装重量又はコスト削減の機会が挙げられ得る。他の場合には、本製品は、包装品内容物との適合性の強化、又は耐食性の改善を有し得る。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、照明、鏡、及び集光型太陽熱発電などの反射体に使用される。これらの用途において、本製品は、所与の強度レベルにおいて、何もしない状態(bare condition)、コーティングした状態、又は陽極酸化させた状態でより良好な反射品質をもたらすことができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、建物パネル/ファサード、エントランス、フレーミングシステム、及びカーテンウォールシステムなどの建築用途に使用される。そのような用途において、本製品は、優れた外観若しくは耐久性、又は小型化に関連する軽量化をもたらすことができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、コネクター、端子、ケーブル、ブスバー、ロッド、及びワイヤなどの電気的用途に使用される。いくつかの場合には、本製品は、所与の通電容量に対する低下傾向の軽減をもたらし得る。本製品から作製されたコネクターは、長期間に亘り、接続の高い完全性を維持する強化された性能を有し得る。他のワイヤやケーブルにおいては、本製品は、所与レベルの通電容量での耐疲労性の改善をもたらすことができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、小型化及び軽量化をもたらすことができる、なかでも積層品に使用される高強度シート製品の製造のためなどの繊維金属積層品用途に使用される。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、踏板、工具箱、ボルト締付デッキ、ブリッジデッキ、及びランプなどの産業工学用途に使用され、特性の改善による小型化及び重量又は材料使用量の低減が可能となり得る。
トレッドシート又は踏板に特に関係して、本明細書に開示する新規方法は、改善されたトレッドシート又は踏板製品(「圧延トレッド製品」)をもたらすことができる。圧延トレッド製品は、シート又はプレート製品の外面上に隆起ボタンの所定のパターンを有する製品である。トレッドシートは、0.10センチメートル〜0.632センチメートル(0.040インチ〜0.249インチ)の厚さを有し、踏板は、0.635センチメートル〜1.91センチメートル(0.250インチ〜0.750インチ)の厚さを有する。所定のパターンは、所定のパターンに対応する複数の圧痕を中に有するローラを使用して、アルミニウム合金体の冷間圧延の間に圧延トレッド製品中に導入され得、ここで冷間圧延が少なくとも25%の冷間加工を達成する。所定のパターンのボタンの各々は、概して、0.500〜0.197〜2.50センチメートル(0.984インチ)の範囲の高さなど、所定の高さを有する。冷間圧延工程(200)後、圧延トレッド製品は熱処理(300)され、冷間圧延工程(200)及び熱処理工程(300)の組み合わせは、圧延トレッド製品が、冷間加工したままの状態にあるトレッドシート又は踏板と比べて、改善された長手横引張降伏強度を実現するように達成される。一実施形態において、圧延トレッド製品は、基準となる圧延トレッド製品よりも少なくとも5%高いLT引張降伏強度を実現し、ここで基準となるトレッドシート又は踏板は、圧延トレッド製品と同一の組成を有するが、基準となる圧延トレッド製品は、T6質別の基準品に対して上の特性の節(節H(i))に記載したLT降伏強度パーセンテージの改善のうちのいずれかなど、T6質別へと加工される(すなわち、最終ゲージへと冷間圧延され、その後溶体化され、その後15kPa(1ksi)のそのピーク引張降伏強度内へと時効される)。一実施形態において、製造されたトレッド製品は、EN 1386:1996によって定義されるように、欠陥がない。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、流体容器(タンク)に用いられ、なかでも、リング、ドーム、バレルなどに使用される。いくつかの場合には、タンクは静置貯蔵用に使用することができる。他の場合には、タンクは、打上げロケット又は航空機の部品であり得る。これらの用途における利点としては、小型化又は収容される製品との適合性の改善が挙げられる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、家庭用製品用途として、例えば、ノート型パソコン、携帯電話、カメラ、携帯型音楽プレーヤー、携帯端末、コンピュータ、テレビ、電子レンジ、調理器具、洗濯機/乾燥機、冷蔵庫、スポーツ用品、又は耐久性若しくは望ましい外観が求められる他のあらゆる家庭用電子製品などに使用される。別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、なかでも、医療機器、セキュリティーシステム、及び事務用品に使用される。
別の実施形態において、新規方法は、冷間穴拡大プロセスに適用されることができ、例えば、なかでも耐疲労性改善のための穴処理に適用され、上記のように、冷間加工勾配及び調整された特性がもたらされ得る。この冷間穴拡大プロセスは、なかでも、鍛造ホイール、航空機構造体に適用されることができる。
別の実施形態において、新規プロセスは、冷間間接押出プロセスに適用されることができ、例えば、なかでも、缶、ボトル、エアゾール缶、及びガスボンベの製造に適用され得る。これらの場合には、製品に高強度がもたらされることで、材料使用量を低減することができる。他の場合には、内容物との適合性改善により、保存寿命を延ばすことができる。
別の実施形態において、本明細書に記載する新規プロセスによって作製された製品は、熱交換器用途に使用されることができ、例えば、なかでも、管材料及びフィンなどに使用され、強度の改善により材料使用量の低減を達成することができる。耐久性の改善及び寿命の延長も実現することができる。
別の実施形態において、新規プロセスは、適合プロセス(conforming processes)にも適用されることができ、例えば、熱交換器部品(例えば、管材料)の製造などに適用され、強度の改善により材料使用量の低減を達成することができる。耐久性の改善及び寿命の延長も実現することができる。
これらの製品用途のうちのいくつかの一部の特定の実施形態を、以下の小節に記載する。
(i)弾薬筒/ケース
1つのアプローチにおいて、本明細書に開示する新規方法は、改善されたアルミニウム弾薬筒(ケース又はケーシングとも呼ばれる)をもたらし得る。本明細書に記載する新規方法による、アルミニウム合金弾薬筒を製造するための新規プロセスの一実施形態が、図2rに例示される。この方法において、シート、プレート、又は押出ロッド若しくはバーなどのアルミニウム合金体(2r−1)が、出発材料として使用されてもよい。この材料は次いで、中間厚さT1を持つ底部を有する部材2r−2へと押出し又は絞り加工されてもよい。部材2r−2を次いで溶体化し、その後、底部を冷間加工してT2の最終厚さにしてもよく(例えば、冷間圧造、冷間鍛造、冷間フロー成形、及び同等手段を介して)、ここでT2は、底部における少なくとも25%の冷間加工を、冷間形成操作に起因して誘導するように選択される(2r〜3)。一実施形態において、T2は、底部における少なくとも35%の冷間加工、例えば、底部における少なくとも50%の冷間加工、又はそれよりも多くの冷間加工を、冷間形成操作に起因して誘導するように選択される。冷間加工の量は、上の冷間加工の節(節B)に記載する冷間加工量のいずれであってもよい。底部における加工の量及びその後の熱処理(300)に起因して、このような筒は、強固な底部を有し得、これは、例えば、焼付プロセスにおいて歪みを制限する、及び/又は筒取り出しを容易にするのに有用であり得る。これらの方法を介して製造されるアルミニウム合金筒は、なかでもショットガンケーシング及び50〜150mmケーシングなどの大径のケーシング、並びに同等物の場合などに、均一の側壁(2r−3及び2r−4)を有し得る。一実施形態において、側壁はまた、なかでも絞り、しごき、又はフロー成形によってなど、多量の冷間加工により製造される。このような実施形態において、側壁及び底部は、同時に冷間加工を受けてもよく(例えば、フロー成形)、又は底部及び側壁は、別個の冷間加工操作を介して別個の工程で冷間加工を受けてもよい。それゆえ、本明細書に開示する新規プロセスにより製造されるアルミニウム合金筒は、上の特性の節(節H)に記載する改善された特性のうちのいずれかなどの、底部、側壁、又は両方における改善された特性を実現し得る。一実施形態において、及び熱処理の節(節C、小節i)に記載するように、アルミニウム合金体(2r−1)は、弾薬筒へと形成される前に、溶体化されるか、又は溶体化されて部分的に冷間加工されてもよい。
図2rの方法を介して製造されるアルミニウム合金筒は、首部分を有してもよい(2r−5)。この首部分は、従来の操作によって冷間加工工程後に製造されてもよい。弾丸挿入及び弾丸を定置に固定する圧着を容易にするために、首部における局所的な軟化が必要とされ得る。
(ii)装甲部品
本明細書に開示する新規方法はまた、改善された装甲製品、本体、及び部品を製造する際にも有用であり得る。一実施形態において、方法は、アルミニウム合金装甲製品、本体、又は部品を受け取ることと、アルミニウム合金装甲製品、本体、又は部品を組立品の装甲部品として取り付けることとを含む。この実施形態において、受け取った状態のアルミニウム合金装甲製品、本体、又は部品は、本明細書に記載する方法によって、すなわち、溶体化、次いで冷間加工、及び次いで熱処理によって、例えば上の節(A)〜(C)に記載する方法のうちのいずれかを介して、調製済であってもよい。一実施形態において、組立品は、車両である。一実施形態において、車両は、軍用車両である。別の実施形態において、車両は、自動車車両、ワゴン車、バス、牽引用トレーラー、及び同等物などの商業用車両である。別の実施形態において、組立品は、防護衣組立品である。
装甲部品は、組立品において使用するために設計され、徹甲弾、爆破、及び/又は破片などの1つ以上の弾丸を阻止する主目的を持つ、部品である。装甲部品は通常、このような弾丸が阻止されない場合に1人以上の人物を損傷し得る場合の用途において使用される。一実施形態において、アルミニウム合金装甲部品は、T6質別のアルミニウム合金装甲部品の基準品と比べて、少なくとも1%高いV50弾道限界を有し、このV50弾道限界は、MIL−STD−662F(1997)(所与の合金を穿孔する50%確率を持つ衝突速度及び)に従って試験される。V50弾道限界は、徹甲弾(AP)及び/又は模擬破片弾(FSP)のいずれに対するものであってもよい。
一実施形態において、V50弾道限界は、徹甲抵抗性であり、アルミニウム合金装甲部品は、T6質別のアルミニウム合金装甲部品の基準品と比べて、少なくとも5%高いV50 AP抵抗性を有する。他の実施形態において、アルミニウム合金装甲部品は、T6質別のアルミニウム合金装甲部品の基準品と比べて、少なくとも6%高い、又は少なくとも7%高い、又は少なくとも8%高い、又は少なくとも9%高い、又は少なくとも10%高いV50 AP抵抗性、又はそれよりも多くを有する。
別の実施形態において、このV50弾道限界は、模擬破片弾抵抗性であり、製造されたアルミニウム合金は、T6質別のアルミニウム合金装甲部品の基準品と比べて、少なくとも2%高いV50 FSP抵抗性を有する。他の実施形態において、アルミニウム合金装甲部品は、T6質別のアルミニウム合金製品の基準品と比べて、少なくとも3%高い、又は少なくとも4%高い、又は少なくとも5%高いV50 FSP抵抗性、又はそれよりも多くを有する。
一実施形態において、新規アルミニウム合金装甲部品は、0.064センチメートル〜10センチメートル(0.025インチ〜4.0インチ)の厚さを有し、T6質別のアルミニウム合金装甲部品の基準品と比べて、少なくとも5%高いV50徹甲抵抗性を実現する。一実施形態において、アルミニウム合金装甲部品は、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を含む。一実施形態において、装甲部品は、0.635センチメートル〜10センチメートル(0.250インチ〜4.0インチ)の範囲にある厚さを有するプレート又は鍛造物である。別の実施形態において、装甲部品は、2.5センチメートル〜6.4センチメートル(1.0インチ〜2.5インチ)の範囲にある厚さを有するプレート又は鍛造物である。別の実施形態において、装甲部品は、0.064〜0.632センチメートル(0.025〜0.249インチ)の範囲にある厚さを有するシートである(例えば、防護衣用)。
(iii)家庭用電子製品
本明細書に開示する新規方法はまた、家庭用電子機器用の改善されたアルミニウム合金製品を製造する際にも有用であり得る。一実施形態において、方法は、溶体化されたアルミニウム合金体を冷間加工し、次いでこのアルミニウム合金体を熱処理することを含む。本方法は、アルミニウム合金体を、家庭用電子製品のための外側部品の形態で、所定の形状の製品へと形成することを含み得る。形成工程は、上の熱処理の節(節C、小節i)及び/又は任意選択の熱処理後処理の節(節F)に記載するように、熱処理工程(300)の前、後、又は最中に行われてもよい。
「家庭用電子製品のための外側部品」及び類似語は、通常の使用過程の間に、家庭用電子製品の消費者に一般に可視的である製品を意味する。例えば、外側部品は、家庭用電子製品の外側カバー(例えば、ファサード)、又は家庭用電子製品のスタンド若しくは他の非ファサード部分であり得る。外側部品は、0.038センチメートル〜1.3センチメートル(0.015インチ〜0.50インチ)の厚さを有してもよい。一実施形態において、外側部品は、家庭用電子製品のための外側カバーであり、0.038センチメートル〜0.16センチメートル(0.015インチ〜0.063インチ)の厚さを有する。
一実施形態において、方法は、圧延又は鍛造アルミニウム合金体を受け取ることであって、このアルミニウム合金体が溶体化によって調製済みであることと、次いで最終ゲージへと冷間加工することであって、この冷間がアルミニウム合金体において少なくとも25%の冷間加工を誘導し、冷間加工が冷間圧延及び冷間鍛造のうちの1つであることと、次いで圧延されたアルミニウム合金体を家庭用電子製品のための外側部品へと形成することとを含む。一実施形態において、方法は、アルミニウム合金を熱処理することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、受け取り工程の後に発生する。一実施形態において、熱処理工程は、形成工程に付随して発生する。一実施形態において、形成工程中に、アルミニウム合金体は、上の熱処理の節(節C)のように、少なくとも66℃(150°F)からアルミニウム合金体の再結晶化温度未満までの温度に付される。
別の実施形態において、熱処理工程は、受け取り工程の後に発生し、すなわち、アルミニウム合金体は、受け取り時に少なくとも部分的に熱処理済みである。一実施形態において、形成工程は、66℃(150°F)未満で完了される。一実施形態において、形成工程は、周囲条件で完了される。
上の実施形態のいずれにおいても、形成工程は、アルミニウム合金製体の少なくとも一部分に歪みを適用して、外側部品を獲得することを含み、適用工程の歪みの最大量は、上の任意選択の熱処理後処理の節(節F)に列挙される等価塑性歪み値のいずれか等の、少なくとも0.01の等価塑性歪みと同等である。冷間加工、熱処理、及び形成工程は、外側部品が未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を含むように行われるべきである。
本明細書に記載する新規方法は、上に列挙した家庭用電子製品のいずれをも含む家庭用電子製品のための多様な外側部品を製造する際に有用であり得る。一実施形態において、家庭用電子製品は、ノート型パソコン、携帯電話、カメラ、携帯型音楽プレーヤー、携帯端末、コンピュータ、テレビ、電子レンジ、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、及びそれらの組み合わせのうちの1つである。別の実施形態において、家庭用電子製品は、ノート型パソコン、携帯電話、携帯型音楽プレーヤー、及びそれらの組み合わせのうちの1つであり、外側部品は、0.038センチメートル〜0.160センチメートル(0.015〜0.063インチ)の厚さを有する外側カバーである。
本明細書に記載する新規方法は、改善された特性を有する外側部品を製造し得る。一実施形態において、外側部品は、T6質別のアルミニウム合金外側部品の基準品と比べて、少なくとも5%高い正規化耐デント性を実現する。「正規化耐デント性」は、デント量(DA)の逆数をアルミニウム合金体の厚さで除算する(すなわち、(1/DA)/厚さ、ことによって正規化した、アルミニウム合金体の耐デント性を意味する。例えば、デント量が0.064センチメートル(0.0250インチ)であり、製品が0.0826センチメートル(0.0325インチ)の厚さを有した場合、その正規化耐デント性は、14.68毎cm2(94.67毎インチ2)となろう。「デント量」は、下に記載するデント試験手順によってもたらされる、デントサイズを意味する。他の実施形態において、本明細書に記載する新規方法により加工された新規アルミニウム合金から作製される、家庭用電子製品の外側部品は、T6質別の外側部品の基準品よりも少なくとも10%高い、又は少なくとも15%高い、又は少なくとも20%高い、又は少なくとも25%高い、又は少なくとも30%高い、又はそれよりも高い耐デント性を実現する。
一実施形態において、本明細書に記載する新規方法により加工された新規アルミニウム合金から作製される、家庭用電子製品の外側部品は、T6質別に加工された合金6061から作製される同一の外側部品よりも少なくとも5%高い正規化耐デント性を実現する。他の実施形態において、本明細書に記載する新規方法により加工された新規アルミニウム合金から作製される、家庭用電子製品の外側部品は、T6質別に加工された合金6061から作製される同一の外側部品よりも少なくとも10%高い、又は少なくとも15%高い、又はそれよりも高い正規化耐デント性を実現する。
一実施形態において、本明細書に記載する新規方法により加工された新規アルミニウム合金から作製される、家庭用電子製品の外側部品は、H32質別に加工された合金5052から作製される同じ外側部品よりも少なくとも10%高い正規化耐デント性を実現する。他の実施形態において、本明細書に記載する新規方法により加工された新規アルミニウム合金から作製される、家庭用電子製品の外側部品は、H32質別に加工された合金5052から作製される同じ外側部品よりも少なくとも30%高い、又は少なくとも50%高い、又はそれよりも高い正規化耐デント性を実現する。
外側部品は、意図される観察面を有し得、この意図される観察面は、視覚的に明白な表面欠陥がない可能性がある。「意図される観察面」及び類似語は、通常の製品使用中に消費者によって観察されることが意図される表面を意味する。内面(例えば、外側カバーの内側)は一般に、通常の製品使用中に観察されることが意図されない。例えば、携帯電子機器の内面は、通常の製品使用中(例えば、テキストメッセージを送信するために使用するとき及び/又は電話で会話するために使用するとき)に通常は観察されないが、このような内面は、バッテリーを交換するときなどの非通常使用の間にまれに観察されることがあり、故に、このような内面は、意図される観察面ではない。「視覚的に明白な表面欠陥がない」及び類似語は、カバーの意図される観察面に表面欠陥が実質的にないことを意味し、これは20/20視力を持つ人間の視覚によって観察され、カバーが、カバーを観察している人間の眼から少なくとも46センチメートル(18インチ)離れて位置するときのものである。視覚的に明白な表面欠陥の例としては、なかでも形成プロセス及び/又は合金ミクロ構造に起因して観察され得る、表面的な欠陥が挙げられる。視覚的に明白な表面欠陥の存在は一般に、陽極酸化処理後(例えば、陽極酸化処理直後、又は例としてコーティング若しくは他の色素/着色剤の適用後)に決定される。一実施形態において、外側部品は、上の特性の節(節H)に列挙される外観特性のいずれかなどの、維持された又は改善された外観特性を実現する。一実施形態において、外側部品の意図される観察面は、T6質別のアルミニウム合金外側部品の基準品基準品の意図される観察面と比べて、少なくとも同等の60°光沢度を実現する。「60°光沢度」及び類似語は、60°の光沢角度、及び製造業者が推奨する基準に従って操作したBYK Gardner haze−gloss Reflectometer(又は同様の光沢計)を使用した、アルミニウム合金体の意図される観察面の測定から得た60°光沢度を意味する。
(iv)容器
本明細書に開示する新規方法はまた、改善された特性を有する新規アルミニウム合金容器を製造する際にも有用であり得る。容器を製造する1つの方法が図2s−1に例示され、溶体化されたアルミニウム合金体を容器へと冷間加工し(200−C)、次いでこの容器を熱処理し(300−C)、任意選択で最終処理を施す(400−C)ことを含む。新規アルミニウム合金容器を獲得するために用いられ得る冷間加工工程(200−C)、熱処理工程(300−C)、及び任意選択の最終処理(複数可)(400−C)の例は、以下に更に詳細に説明する。
次の定義がこの小節(I)(iv)に適用される。
・「上部」、「底部」、「より下」、「より上」、「の下」、「の上」などの用語は、冷間加工又は形成プロセス中のアルミニウム合金容器の向きを問わず、平面上に置かれている完成したアルミニウム合金容器の位置に相対的である。いくつかの実施形態において、容器の上部は、開口部を有する。
・「容器」は、飲料缶、ボトル、食品缶、エアゾール缶、1ピース缶、2ピース缶、及び3ピース缶を含むが、これらに限定されない、アルミニウム合金から作製される任意の種類の容器である。
・「完成アルミニウム合金容器」は、それが最終消費者によって使用される前に追加の冷間加工又は形成工程を経ることのないアルミニウム合金容器である。
・「絞り」は、アルミニウム合金をカップの形態で抜き出すことを意味し、初期絞り、再絞り、及び深絞りを含み得る。
・「しごき」は、カップの壁を、パンチでカップの側壁をしごきリングに対して押し付けることにより、延伸及び薄層化することを意味する。
・「ドーム形成」は、容器の底部を製造することを意味する。容器の底部は、ドーム様に成形されてもよく、平坦であってもよく、または交互の形状を有してもよい。
・「ネッキング」は、容器の一部分の直径を狭小化することを意味する。
・「フランジング」は、容器上にフランジを製造することを意味する。
・「ねじ切り」は、容器にねじ山を製造することを意味する。
・「ビーディング」は、容器の側壁に円周ビードを製造することを意味する。
・「シーミング」は、蓋を容器に、機械的に結合する等して取り付ける方法である。
・「カーリング」は、蓋、端部、つまみ、ねじ式閉鎖具、王冠、巻き締め式ピルファープルーフ閉鎖具等の、閉鎖を受け入れるための容器の上部縁を製造することを意味する。
・「冷間加工したままの状態にある容器の基準品」は、特許請求される容器と同一に調製されるが、その機械的特性が、冷間加工工程の完了後かつ熱処理工程の前に試験される、アルミニウム合金容器の製品を意味する。好ましくは、形成されたままの状態にある容器の基準品の機械的特性は、冷間加工工程の完了から4〜14日以内に測定される。冷間加工したままの状態にある容器の基準品を製造するためには、本明細書に記載する実務に従ってアルミニウム合金体を容器へと冷間加工することになり、その後、アルミニウム合金容器の一部分を取り出して、冷間加工したままの状態にあるその特性を上述の要件につき決定する。アルミニウム合金容器の別の部分は、本明細書に記載する新規プロセスに従って熱処理され、その後、その特性が測定されることになり、そうすることで、冷間加工したままの状態にある容器の基準品の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工された容器の特性との間の比較が容易になる(例えば、なかでもドーム反転圧、真空強度、強度、及び/又は伸びを比較するため)。新規容器及び冷間加工したままの状態にある容器の基準品の両方は、同じアルミニウム合金容器から製造されるため、それらは同じ組成を有することになろう。それゆえ、容器の基準品は、新規容器と同じ合金、ゲージ、及び形状から構成される。
・「ドーム反転圧」は、その圧力を上回ると缶の底部が「飛び出し」、凹面になる代わりに凸面になる、閾値圧力を意味する。いくつかの実施形態において、アルミニウム合金は、容器の底部が凹面になる代わりに平坦になることを可能にするのに十分に強固である。この場合、ドーム反転圧は、その圧力を上回ると缶の底部が「飛び出し」、平坦になる代わりに凸面になる、閾値圧力を意味する。ドーム反転圧は、Altek Company飲料缶及び蓋テスターModel 9009C5を使用して測定されてもよい。
・「側壁」は、容器の側面の壁である。
・「T6質別の容器の基準品の側壁」及び類似語は、溶体化され、次いで熱処理されて最大強度状態(ピーク強度から15kPa(1ksi)以内)にある容器の側壁を意味する。以下に更に詳細に説明するように、本明細書に記載する新規プロセスに従って製造されたアルミニウム合金容器は、T6質別のアルミニウム合金体と比べて、優れた特性を獲得し得る。T6質別のアルミニウム合金容器の基準品の側壁を製造するためには、アルミニウム合金容器の側壁を得、その後、側壁の一部分がT6質別に加工されることになろう(すなわち、溶体化され、次いで熱処理されて最大強度状態(ピーク強度から15kPa(1ksi)以内にされる)。側壁の別の部分については、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工されることになり、そうすることで、T6質別のアルミニウム合金容器の基準品の側壁の特性と、本明細書に記載する新規プロセスに従って加工されたアルミニウム合金容器の特性との比較が容易になる(例えば、なかでもドーム反転圧、真空強度、強度、及び/又は伸びを比較するため)。双方の側壁は、同一のアルミニウム合金容器から得られるため、それらは同一の組成、ゲージ、及び形状を有することになろう。
・「真空強度」は、その圧力を上回ると容器の側壁が内側に倒壊する、閾値真空圧を意味する。真空強度は、Altek Company food Panel Strength(側壁倒壊抵抗性)テスターModel 9025によって測定されてもよい。
上述のように、新規アルミニウム合金容器は、冷間加工(200−C)及び次いで熱処理(300−C)によって調製され得る。一実施形態において、シート又はスラグなどのアルミニウム合金体は、少なくとも25%冷間加工され(例えば、絞り、しごき、及び衝撃押出しのうちの1つ以上によって)、この冷間加工工程は、上の冷間加工の節(節B)に開示する冷間加工量のうちのいずれかの分だけなど、容器の少なくとも一部分への少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、少なくとも25%の冷間加工は、側壁の一部(またはその全部)において誘導される。一実施形態において、少なくとも25%の冷間加工は、底部の一部(またはその全部)において誘導される。いくつかの実施形態において、冷間加工工程(200−C)は、アルミニウム合金体の少なくとも一部分を容器へと冷間加工することを含む。いくつかの実施形態において、冷間加工工程(200−C)は、アルミニウム合金体の少なくとも一部分を容器へと冷間加工することを含み、冷間加工は、容器の少なくとも一部分への少なくとも35%の冷間加工、又は少なくとも50%の冷間加工、又は少なくとも75%の冷間加工、又はそれよりも多くを誘導する。一実施形態において、冷間加工操作は、66℃(150°F)未満の温度で開始される。
一実施形態において、アルミニウム合金体は、冷間加工前にシート形態にある。これらの実施形態のいずれにおいても、アルミニウム合金シートは、容器に適切な厚さのものであり得る。いくつかの実施形態において、底部及び/又は側壁のドーム反転圧、真空強度、及び/又は引張降伏強度は、同じゲージ及び形状を有する先行技術の容器のそれらよりも大きい場合があるので、容器のゲージは、同じ形状を有する先行技術の容器に比べて低減され得る一方で、容器の最低限の性能要件は維持され得る。このゲージを縮小する能力は、低減された容器重量及び費用をもたらし得る。例えば、飲料容器を製造することに関して、シートは、0.0274センチメートル未満、又は0.0254センチメートル未満、又は0.0249センチメートル未満、又は0.0241センチメートル未満、又は0.0239センチメートル未満、又は0.1537センチメートル未満(0.0108インチ、又は0.0100インチ未満、又は0.0098インチ未満、又は0.0095インチ未満、又は0.0094インチ未満、又は0.0605インチ未満)の厚さを有し得る。食品缶に関しては、シートは、0.0213センチメートル未満、又は0.0203センチメートル未満、又は0.0193センチメートル未満、又は0.0188センチメートル未満(0.0084インチ、又は0.0080インチ未満、又は0.0076インチ未満、又は0.0074インチ未満)の厚さを有し得る。エアロゾル缶に関しては、シートは、0.020センチメートル(0.008インチ)未満の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、アルミニウム合金シートは、事前コーティングされており、すなわち、アルミニウム合金シートは、冷間加工工程(200−C)の前にコーティングでコーティングされる。
冷間加工工程(200−C)後、容器は、熱処理(300−C)され得る。熱処理工程(300−C)は、上の熱処理の節(節C)により遂行される。いくつかの実施形態において、熱処理工程(300−C)は、アルミニウム合金容器を、66℃(150°F)からアルミニウム合金体の再結晶化温度よりも低い温度の範囲で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程(300−C)は、66℃〜316℃(150°F〜600°)の温度で完了される。一実施形態において、熱処理工程(300−C)は、288C(550°F)以下、例えば、260C(500°F)以下、又は232C(450°F)以下、又は218C(425°F)以下の温度で完了される。いくつかの実施形態において、冷間加工工程(200−C)及び熱処理工程(300−C)は、アルミニウム合金容器が(上のミクロ構造の節(節E)に定義される)未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を保持又は実現するように行われる。理解され得るように、より高い熱処理温度が使用されるとき、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造及び/又は他の所望される特性を実現するために必要とされる曝露期間は、より短くなり得る。一実施形態において、受け取った状態のアルミニウム合金体は、受け取った状態のアルミニウム合金シートが少なくとも25%溶体化後に冷間圧延されたときなどには、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を有し得る。冷間加工工程(200−C)及び熱処理工程(300−C)は、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を実現又は保持するために遂行され得る(容器及び本体のミクロ構造は異なり得るが、それらは、節Eの定義による未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を有する)。一実施態様において、かつ次に図2s−2を参照して、熱処理工程(300−C)は、容器をオーブンの中に挿入する工程(320−C)などの、標準の容器作製工程においてすでに生じた工程を含んでもよい。例えば、容器が冷間加工(例えば、絞り(220−C)及び(任意選択で)しごき(240−C)、又は衝撃押出し(図示せず)による)を介して製造された後、熱処理工程(300−C)は、例えば、容器を洗浄後に乾燥させるように、容器の内側に適用されたコーティングを硬化させるように、及び/又は容器の外側に適用された塗装を乾燥させるように、容器をオーブン(又は他の加熱装置)の中に挿入する工程(320−C)を含み得る。
図2s−1に示されるように、任意選択の最終処理(複数可)工程(400−C)を使用して容器を製造してもよい。いくつかの場合において、かつ図2s−1に例示されるように、任意選択の最終処理(400)のうちの少なくとも一部は、熱処理工程(300−C)の後に生じてもよい。いくつかの又は他の場合において、かつ次に図2s〜3を参照して、いくつかの最終処理(400−C’)は、熱処理(300−C)の前又は最中に発生する。例えば、かつ以下に更に詳細に説明するように、塗装及び/又はコーティングが、冷間加工工程(200−C)の後に適用されてもよく、その後、このような塗装及び/又はコーティングが硬化されてもよい。一実施形態において、かつ上の段落に説明するように、熱処理工程(300−C)を使用して、このような塗装及び/又はコーティングを硬化させてもよく、したがって最終処理工程(400−C)の少なくとも一部分は、熱処理工程(300−C)の少なくとも一部分に付随して生じてもよい。
他の実施形態において、塗装及び/又はコーティングは、熱処理(300−C)の開始、及び容器の潜在的な硬化(hardening)を回避するように、低温で硬化(cured)させられ得る。つまり、容器を加熱するために使用されるオーブン(又は他の加熱装置)は、容器がその最終形態となるまで回避され得る。熱処理すると強度が増加し得るため、熱を回避することにより、容器が最終的に形成された後まで(例えば、その最終形状へとせぎり加工、フランジング加工、カーリング加工、ねじ切り加工、及び/若しくはビーディング加工、又は別様に形成することにより)、アルミニウム合金容器が比較的柔軟に留まることが可能となり得る。例えば、かつ次に2s−4及び2s−5を参照して、少なくともいくつかの仕上げ及び/又は形成操作(400−C’)が熱処理工程(300−C)に先立って行われ得る。例示される実施形態において、適用される場合には塗装及び/又はコーティングが、紫外線などの放射線を介して、かつ容器の意図的な伝導加熱及び/又は対流加熱の不在下で、硬化させられ得る。この実施形態において、このような放射工程はアルミニウム合金体を実質的に加熱することはないので、硬化は、容器を熱処理(300−C)することはないであろう。一例において、図2s−4に例示されるように、溶体化されたアルミニウム合金シートを容器へと冷間加工する工程(200−C)は、容器を絞り加工すること(220−C)及び任意選択で容器をしごき加工すること(240−C)を含み得る。冷間加工工程(200−C)の後、容器は、塗装され(410−C)、次いで放射線を介して硬化され(420−C)、次いでネッキングされかつ/又はビーティングされ(430−C)てもよく、その後、それが熱処理される(300−C)。同様に、かつ次に図2s−5に例示されるように、溶体化されたアルミニウム合金シートを容器へと冷間加工する工程(200−C)は、容器を絞り加工すること(220−C)及び任意選択で容器をしごき加工すること(240−C)を含み得る。冷間加工工程(200−C)の後、容器は、コーティングされ(410−C)、次いで放射線を介して硬化され(420−C)、次いでネッキングされかつ/又はビーティングされ(430−C)てもよい。それゆえ、任意選択の最終処理(複数可)(400−C及び/又は400−C’)工程は、「形成操作」(上の節Fに定義される)を含んでもよく、これには、熱処理工程(300−C)の前、最中、又は後に、容器をその最終形状へとせぎり加工、フランジング加工、ビーディング加工、カーリング加工、及び/若しくはねじ切り加工、並びに/又は別様に形成することが含まれ得る。
いくつかの実施形態において、アルミニウム合金は、容器製造プロセス中により強固になり得るため、より柔軟でより形成可能なアルミニウム合金体を用いてプロセスを開始することが可能である。このようなアルミニウム合金体はしがたって、従来技術のプロセスによって作製される同じ容器よりも、複雑な形状へとより容易に形成され得、かつ/又はより少数の工程において製造され得る。
この固有の加工技術に起因して、なかでもコラム座屈強度、ドーム反転圧、及び真空強度の改善のうちの1つ以上などの、改善された特性が実現され得る。一実施形態において、新規アルミニウム合金容器は、冷間加工したままの状態にあるアルミニウム合金容器の基準品に勝る改善された特性を実現する。別の実施形態において、新規アルミニウム合金容器は、T6質別のアルミニウム合金容器の基準品に勝る改善された特性を実現する。
一実施形態において、冷間加工及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態にある容器の基準品と比べて、ドーム反転圧の少なくとも5%の増加を実現するように遂行される。これらの実施形態のいくつかにおいて、冷間加工及び熱処理工程は、容器が少なくとも0.6MPa(90lbs/sq.インチ)のドーム反転圧を有するように遂行される。
1つのアプローチにおいて、冷間加工工程は、容器の側壁の少なくとも一部分において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、冷間加工及び熱処理工程は、T6質別の容器の基準品の同じ側壁部分の引張降伏強度と比較して、少なくとも25%の冷間加工を有する側壁の部分に対して、上の特性の節(節H)に記載する引張降伏強度改善のうちのいずれかなどの、引張降伏強度の少なくとも5%の増加を実現するように遂行される。別の実施形態において、冷間加工及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態にある容器の同じ側壁部分の引張降伏強度と比較して、少なくとも25%の冷間加工を有する側壁の部分に対して、上の特性の節(節H)に記載する引張降伏強度改善のうちのいずれかなどの、引張降伏強度の少なくとも5%の増加を実現するように遂行される。別の実施形態において、冷間加工及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態にある容器と比べて、真空強度の少なくとも5%の改善を実現するように遂行される。いくつかの実施形態において、冷間加工及び熱処理工程は、容器が少なくとも0.17MPa、少なくとも0.19MPa、又は少なくとも0.2MPa(24psi、少なくとも28psi、又は少なくとも30psi)、又はそれよりも高い真空強度を有するように遂行される。いくつかの実施形態において、容器の側壁は、(i)同じゲージ及び形状の従来技術の容器、(ii)冷間加工したままの状態にある容器、並びに/又は(iii)T6質別の容器の基準品よりも穿刺抵抗である。
いくつかの実施形態が改善された強度を有する容器をもたらすとしても、容器の成形性は、維持され得るか、又は更に改善され得る。例えば、いくつかの実施形態において、アルミニウム合金容器の該当部分(又はその全部)は、少なくとも4%、又は少なくとも5%、又は少なくとも6%、又は少なくとも7%、又は少なくとも8%、又はそれよりも多くの伸びを実現し得る。
上述の実施形態のいずれにおいても、アルミニウム合金体は、改善された特性(単数又は複数)を実現するために、歪み硬化反応及び/又は析出硬化反応のうちの少なくとも1つを促進するのに十分な溶質を含有し得る。本開示の方法によって作製された容器によって実現される潜在的に改善された強度はまた、平坦な底部又はより大きいドーム窓を有する容器の製造を容易にし得る。
容器を製造する方法の上の実施形態の全てにおいて、シートは、冷間加工の節(節B)及び/又は熱処理の節(節C)により、容器へと冷間加工する前に、例えば冷間圧延を介して、冷間加工済であり得る。
図2s−6を参照して、いくつかの実施形態において、容器(800−C)は、側壁(820−C)及び基部又はドームとしても知られる底部(840−C)を有する。側壁(820−C)及び底部(840−C)を含むアルミニウム合金容器(800−C)は、単一の連続したアルミニウム合金シートであってもよい。他の実施形態において、かつ次に2s−7を参照して、容器は、閉鎖具(900−C)である。いくつかの実施形態において、閉鎖具は、蓋である。
(v)締結具
1つのアプローチにおいて、本明細書に開示する新規方法は、改善された締結具製品をもたらし得る。「締結具」は、2つ以上の部品を接続することを主目的とする、圧延、押出し、又は絞り素材から作製された製品である。本明細書に記載する新規プロセスにより作製された締結具は、溶体化後の冷間加工のために調製され(100)、次いで25%よりも多く冷間加工され(200)、次いで熱処理され(300)てもよい。一実施形態において、冷間加工工程(200)は、冷間鍛造、冷間スエージング、及び冷間圧延のうちの1つによって、アルミニウム合金体を締結具へと冷間加工することを含む。一実施形態において、冷間加工工程の第1の部分が、締結具供給素材(例えば、冷間加工されたロッド(ワイヤを含む)又はバー)を製造し、冷間加工工程の第2の部分が、締結具を製造する(例えば、冷間鍛造又は冷間スエージングを介して)。このような部分冷間加工、及び同様の方法は、熱処理の節(節C、小節i)に記載するように完了されてもよい。
締結具は、1ピース又はマルチピースのシステムであってもよい。1ピース締結具は、本体及び頭部を有してもよい。締結システムは、本体及び頭部を持つ第1のピース、並びに第1のピースに取り付けられるように設計された、ナット又はカラーなどの第2のピース(ロック用部材)などの、少なくとも2つの部品を有する。本体及び頭部を有する締結具の例としては、リベット、ねじ釘、釘、及びボルト(例えば、ロックボルト)が挙げられる。締結具の一部は、1つ以上のねじ山を有してもよい。締結具は、少なくとも2つの主要な故障モードを有し、このうち第1のモードは、主要な荷重方向が締結具の中心線に平行である引張、及び主要な荷重が締結具の中心線に垂直である剪断である。締結具の本体の平行方向最大引張強度は、引張におけるその故障荷重を決定する際の主要因であり、剪断強度は、剪断におけるその故障荷重を決定する際の主要因である。1つのアプローチにおいて、新規アルミニウム合金締結具は、上の特性の節(節H(i))に記載する引張降伏強度及び/又は最大引張強度値のうちのいずれかなどの、冷間加工したままの状態及び/又はT6状態にあるアルミニウム合金締結具の基準品よりも少なくとも2%高い引張降伏強度及び/又は最大引張強度を実現する。一実施形態において、新規アルミニウム合金締結具は、上の特性の節(節H(i))に記載する剪断強度値のうちのいずれかなどの、締結具の基準品よりも少なくとも2%高い剪断強度を実現し、この締結具の基準品は、T6質別のものである。改善された強度特性は、締結具のピン、頭部、又はロック機構のうちの1つ以上に関連し得る。一実施形態において、改善された強度は、締結具のピンに関連する。別の実施形態において、改善された強度は、締結具の頭部に関連する。更に別の実施形態において、改善された強度は、締結具のロック機構に関連する。1つのアプローチにおいて、新規アルミニウム合金締結具は、上のミクロ構造の節(節E(i))に記載する未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を有した。
一実施形態において、方法は、アルミニウム合金体を締結具素材へと第1に冷間加工することを含む。本方法は、締結具素材を締結具へと第2に冷間加工することを含む。この第2の冷間加工工程は、頭部、ピン、及び/又はロック用部材を製造し得る。第3の冷間加工工程が任意選択で用いられてもよく、ここで少なくとも1つのねじ山(「ねじ式部分」)が締結具において(例えば、ピン及び/又はロック用部材において)製造される。第1、第2、及び任意選択の第3の冷間加工工程は、少なくとも25%の冷間加工を有する締結具をもたらし得る。アルミニウム合金締結具は次いで、上に提供するように、熱処理され得る。一実施形態において、第1の冷間加工工程は、締結具素材への少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、第2の冷間加工工程は、締結具への少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、第3の冷間加工工程は、ねじ式部分への少なくとも25%の冷間加工を誘導する。それゆえ、締結具の1つ以上の部分は、加工に応じて、上の冷間加工の節(節B)に記載する冷間加工量などの、25%を超える冷間加工を有してもよい。
(vi)ロッド
1つのアプローチにおいて、本明細書に開示する新規方法は、改善されたロッド製品をもたらし得る。アルミニウム工業会によって定義されるように、ロッド製品は、ロッド又はワイヤ製品である。一実施形態において、方法は、上に記載した、溶体化後の冷間加工のためにアルミニウム合金ロッドを調製すること、調製工程後にアルミニウム合金ロッドを最終ゲージへと冷間加工すること(冷間加工は少なくとも25%の冷間加工をロッド中に誘導する)、及び冷間加工工程後にアルミニウム合金ロッドを熱処理することを含み、冷間加工工程及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態及び/又はT6質別及び/又はT87質別のアルミニウム合金ロッドの基準品と比べて、縦方向最大引張強度における増加、又は上記の特性の節(節H)に記載する改善された特性のうち任意の他のものを獲得するように遂行される。このような改善された特性は、上記の特性の節(節H)に記載するように、より短い時間で実現され得る。一実施形態において、冷間加工工程は、1つの冷間絞り、冷間ロッド圧延、及び冷間スエージングを含んでもよい。一実施形態において、冷間加工後、ロッドはワイヤゲージにある。1つのアプローチにおいて、新規アルミニウム合金ロッドは、アルミニウム合金ロッドの基準品よりも高い最大引張強度を実現し、この基準品は、上記の特性の節(節H)に記載する最大引張強度値のうちのいずれかなどの、T6質別及びT87質別のうちの1つにある。1つのアプローチにおいて、新規アルミニウム合金ロッドは、上記のミクロ構造の節(節E(i))に記載するように、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を有した。
(vii)ホイール
本明細書に記載する新規方法はまた、改善されたホイール製品の製造に有用であり得る。次に図2t−1及び2t−2を参照して、本明細書に記載する新規方法によって製造され得るホイール(110−W)の一実施形態が例示される。例示されるホイール(110−W)は、ディスク正面(112−W)、リム(114−W)、ドロップウェル(116−W)、ビードシート(118−W)、及び取付フランジ(120−W)を含む。リム(112−W)は、タイヤが取り付けられ得るホイールの外側部分である。取付フランジ(120−W)は、ホイールが車両に直接取り付けられる(例えば、接触している)場所である。ディスク正面(112−W)は、リムと取付フランジとの間に位置する。図2t−1及び2t−2に示されるホイールは、自動車用ホイールである。しかしながら、本明細書に記載する新規方法は、市販のホイール、又は少なくとも25%が冷間加工によって形成され得るホイールの任意の他の型に適用可能であってもよいことを理解されたい。また、当業者であれば、ホイールがより多部品又はより少ない部品を有してもよいことを理解する。
一実施形態において、溶体化アルミニウム合金体(例えば、鋳塊などの溶体化アルミニウム合金原料)は、上記の冷間加工の節(節B)に記載するように冷間加工(200)されてもよく、この冷間加工は、ホイールの少なくとも一部分中に少なくとも25%の冷間加工を誘導する。例えば、ホイール(110−W)の製造中、この冷間加工工程は、ディスク正面(112−W)、リム(114−W)、ドロップウェル(116−W)、ビードシート(118−W)、及び取付フランジ(120−W)のうちの少なくとも1つにおいて少なくとも25%の冷間加工を誘導してもよい。一実施形態において、冷間加工は、ディスク正面(112−W)において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、冷間加工は、リム(114−W)において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、冷間加工は、ドロップウェル(116−W)において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、冷間加工は、ビードシート(118−W)において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。一実施形態において、冷間加工は、取付けフランジ(120−W)において少なくとも25%の冷間加工を誘導する。上記の冷間加工の節(節B)に記載する冷間加工量のうちのいずれかなどの、より高いレベルの冷間加工が誘導されてもよい。一実施形態において、冷間加工工程は、ホイールの少なくとも一部分において少なくとも35%の冷間加工を誘導し、その一部分は、上述のホイール部品のうちのいずれかの一部(又は全体)であってもよい。別の実施形態において、冷間加工工程は、ホイールの少なくとも一部分において少なくとも50%の冷間加工、又は少なくとも75%の冷間加工、又は少なくとも90%の冷間加工を誘導し、その一部分は、上述のホイール部品のうちのいずれかの一部(又は全体)であってもよい。更に別の実施形態において、冷間加工工程は、ホイールの少なくとも一部分において少なくとも90%の冷間加工を誘導し、その一部分は、上述のホイール部品のうちのいずれかの一部(又は全体)であってもよい。
冷間加工工程は、スピニング、圧延、バニッシング、フロー成形、剪断成形、ピルガリング、スエージング、ラジアル鍛造、コギング、鍛造、押出し、口絞加工、液圧成形、及びこれらの組み合わせの操作のうちの1つ以上を利用して、ホイールを冷間加工し製造し得る。一実施形態において、冷間加工はフロー成形を含む。
一実施形態において、冷間加工工程(200)は、1つ以上の成形技法を使用してホイールを成形する。所望の冷間加工された産出形状(例えば、ホイール)の幾何学的複雑性は、(1)全体的な形状は、より簡便に処理することができる小領域へと細分され得ること、並びに(2)変形特徴は、余剰加工及び高い変形圧力のうちの1つであろうこと、という2つの主要な形成プロセス留意点を有する。
中間製作幾何は、2つの領域に細分され得る。第1の領域は、幾何の中心線から外側動径部分へと延在するディスク正面(ホイール正面、頭部、又はハブ領域とも呼ばれる)である。第2の領域は、短い厚肉の円筒に類似したホイールリム領域(チューブウェル又はスカート領域とも呼ばれる)である。この実施形態において、ディスク正面及びリム領域は、一体ホイール設計において繋がっていると考えられたい。繋がってはいるが、これらの領域は、独立した変形プロセスが繋がれた領域の両方の最終産出形状を形成する、独立した領域と見なすことができる。これら2つの領域がマルチピースホイール設計の別個のピースである実施形態においては、独立した変形プロセスを使用して、継ぎ合わせる前に各ピースを形成することができる。いくつかの実施形態において、マルチピースホイールのピースは、異なるアルミニウム合金からなることができ、合金のうちの少なくとも1つは、熱処理可能なアルミニウム合金である。
いくつかの実施形態において、所望の冷間形成された産出形状への幾何変換は、固有の余剰変形による形成プロセスの使用を必要とする。これらのプロセスは、初期及び最終区分寸法のみを考慮して計算されたものよりも大きい効果的な歪みを与える。これは、対応してより高くなった流動応力をもたらす。材料の溶体化後の冷気流動応力は、その溶体化前の冷気流動応力の対応物よりも著しく高い。それゆえ、中間製作幾何から産出幾何を形成するために必要最小限の冷間加工を与えることは、中間製作幾何を形成するいかなる溶体化前の変形よりも、装備荷重の点で著しく大きな課題である。
ディスク正面及びリム領域を形成するために利用可能な一般的変形カテゴリーは3つある。これらの操作のうちのいくつかは、組み合わせる又は複数回完了させることで、所望の幾何の局所的厚さ及び外形の両方を生成することができる。
・インクリメンタル成形−これらの変形の選択肢は、成形荷重が部品上の小さい局部的な領域に集中して、部品を変形させることができる高い成形圧力を達成するものである。リム領域を寸法決定し輪郭付けるための選択肢としては、フロー成形、剪断成形、スピニング、圧延、ピルガリング、スエージング、冷間鍛造、及びラジアル鍛造が挙げられる。表面領域を寸法決定し輪郭付けるための選択肢としては、フロー成形、スピニング、剪断成形、ラジアル鍛造、及びコギング(半径方向及び/又は円周方向)が挙げられる。
・バルク成形−これらの変形の選択肢は、部品を開又は閉ダイキャビティ中に置き、工具の動きによって力を働かせて、部品を変形させ形を作る。リム領域を寸法決定し輪郭付けるための選択肢としては、鍛造、押出し、スエージング、及びピルガリングが挙げられる。ディスク正面領域を寸法決定し輪郭付けるための選択肢としては、鍛造、口絞加工、剪断押出し、半径方向及び/又は円周方向コギングが挙げられる。
・液圧成形−これらの変形の選択肢は、流体で加圧した閉キャビティ中に部品を置くが、部品の一部の表面は、変形を引きこす加圧流体に曝露されない。冷たい溶体化した材料の流動応力よりも数倍大きい静水圧が、変形を引き起こすために必要とされる。流動応力は、出発の溶体化予備成形物の幾何に依存する。
フロー成形は、圧力を使用して、金属のディスク又は管を1つ以上のローラによってマンドレル上で成形するインクリメンタル金属成形技法であり、これにおいてローラが被加工物を変形させ、それをマンドレルに押し付け、通常は、被加工物を軸方向に伸ばし、同時に被加工物を半径方向に薄層化させるという両方のことを行う。フロー成形は、被加工物を摩擦及び変形に付す。これら2つの因子が被加工物を加熱し、このため冷却液が一部の場合に必要とされ得る。フロー成形は、多くの場合、自動車用ホイール及び他のアクシメトリック形状製品の製作に使用され、ホイールを機械加工したブランクから正味幅へと導くために使用することができる。フロー成形中、被加工物は冷間加工され、その機械的特性を変化させるため、その強度は、鍛造金属の強度と同様になる。
一実施形態において、ホイールは、リムの直径よりも小さい直径を有するが、少なくとも25%変形させられて最終の正面厚さを形成するのに十分な厚さ有する、平坦な円筒から開始して増加的に形成される。第1に、正面をマンドレルの正表面に対してフロー成形して、最終ディスク厚さ及び輪郭を達成してもよい。このフロー成形操作はまた、十分な金属を最終のリム外側直径を超えて急速に外側に移動させて、リムを作製し得る。あるいは、開始の平坦な円筒は、プレートを所望の正面厚さへと交差圧延することによって形成することができる。必要とされるリム材料は、適切にサイズ決定されたより大きい開始直径を有することによって利用可能となり得る。第2に、スカートをリムへとフロー成形し、マンドレルのリム正面に対して輪郭付ける。マルチピースホイールをフロー成形するとき、ディスク正面及びリムなどの部品は、同様のインクリメンタル成形プロセスを使用して別個に成形し得る。
バルク成形を伴う一実施形態において、溶体化材料の開始円筒を鍛造して、ディスク正面領域を成形し、真っ直ぐなリムを押出しする。その後リムを最終厚さ及び輪郭へとフロー成形し得る。別の選択肢は、リムを最終形状へとスエージングすることである。あるいは、溶体化した厚肉の円筒をブラインド面キャビティ(blind face cavity)へと鍛造してもよく、ここで、それを剪断間接押出しによって半径方向に内側にして、正面領域を形成する。
液圧成形を伴う一実施形態において、溶体化予備成形物は、(1)最小限の冷間還元を達成するための最小限の高さを伴って、外側直径上により多くの材料があるようにくぼんだ上側、及び(2)ホイールリムほどのサイズである環状突起を持つ底側を有する。その後、予備成形物の底部環状突起に対応する底部環状チャンバ開口部を持つ静圧チャンバ中に予備成形物を置いてもよい。予備成形物の環状突起は、圧力下で迅速に密封を形成するために、チャンバの底部環状開口部に適合するように漸増してもよい。次に、流体が上面を押すことでメタルフローが環状開口部から出るように、チャンバを加圧し得る。外側半径方向領域にある追加の材料はリムを形成する金属を供給し、同時に中間のより薄い領域は、ホイール正面領域を冷間加工する間に、金属を外側に半径方向に薄層化させ、押して、上部皿型形状をより平坦な形状に変換する。
冷間加工の後に、ホイールは、以下の熱処理の節(節C)のように、熱処理(300)されてもよい。一実施形態において、ホイールは、66℃(150°F)〜その再結晶化温度未満の温度で熱処理される。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを218℃(425°F)以下の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを204℃(400°F)以下の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを191℃(375°F)以下の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを177℃(350°F)以下の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを少なくとも93℃(200°F)の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを少なくとも121℃(250°F)の温度で加熱することを含む。一実施形態において、熱処理工程は、ホイールを少なくとも149℃(300°F)の温度で加熱することを含む。
冷間加工工程(200)及び熱処理工程(300)は、冷間加工と熱処理との組み合わせの節(上記の節D)に記載するように、改善された特性を有するホイールを獲得するように行われてもよい。一実施形態において、冷間加工工程及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態にあるホイールの冷間加工した部分における縦方向引張降伏強度と比べて、ホイールの冷間加工した部分における縦方向(L)引張降伏強度の少なくとも5%の改善を達成するように遂行される。別の実施形態において、冷間加工工程及び熱処理工程は、冷間加工したままの状態にあるホイールの冷間加工した部分における縦方向引張降伏強度と比べて、ホイールの冷間加工した部分における、縦方向引張降伏強度の少なくとも10%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも15%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも16%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも17%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも18%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも19%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも20%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも21%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも22%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも23%の改善、又は少なくとも縦方向張降伏強度の少なくとも24%の改善、又は縦方向引張降伏強度の少なくとも25%の改善、又はそれ以上を達成するように遂行される。いくつかの実施形態において、熱処理工程の後に、ホイールの冷間加工した部分は、上の特性の節(節H)に記載する伸び値のいずれかなどの、少なくとも4%の縦方向の伸びを有する。一実施形態において、熱処理工程の後に、ホイールの冷間加工した部分は、少なくとも6%の縦方向の伸びを有してもよい。他の実施形態において、熱処理工程の後に、ホイールの冷間加工した部分は、少なくとも10%、又は少なくとも12%、又は少なくとも14%、又は少なくとも16%、又はそれ以上などの、少なくとも8%の伸びを実現する。
本明細書に開示する新規プロセスによって作製されるアルミニウム合金ホイール製品は、少なくとも25%の冷間加工を有するホイールの一部分において別の又は代替的な改善された特性(単数又は複数)を実現し得る。例えば、少なくとも25%の冷間加工を有するホイールの一部分は、上記の特性の節(節H)に記載するT6の改善のうちのいずれかなどの、T6質別へと加工されたホイールの基準品の同一部分の縦方向引張降伏強度と比べて、少なくとも5%高い縦方向引張降伏強度を実現し得る。
上述の実施形態のいずれにおいても、アルミニウム合金体は、改善された特性(単数又は複数)を実現するために、歪み硬化反応及び/又は析出硬化反応のうちの少なくとも1つを促進するのに十分な溶質を含有し得る。
新規ホイール製品は、少なくとも25%の冷間加工を受けるホイールの一部分において、上記のミクロ構造の節(節E)に記載するミクロ構造のうちのいずれかなどの、未再結晶ミクロ構造を主体とする構造を実現し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも25%の冷間加工を受けるホイールの一部分は、少なくとも75%再結晶化されていない。
一実施形態において、ホイール又は他の所定の形状の製品は、本明細書に記載する技法によって製作された少なくとも1つの部品を含む組立品であることができる。マルチピースホイールの場合には、1つの部品が、リム、ドロップウェル、及びビードシートを含み、別の部品が、ディスク正面及び又は取付フランジを含むことができる。一実施形態において、組立品は、本明細書に記載する技法を使用して製作された異なるアルミニウム合金を含むことができ、そのアルミニウム合金のうちの少なくとも1つは、熱処理可能なアルミニウム合金である。
(viii)多層製品
新規マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品は、多層用途において使用を見出し得る。例えば、多層製品は、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金体を第1の層として使用し、1xxx〜8xxx合金のいずれかを第2の層として使用して形成することが可能である。図12は、多層製品を製造するための方法の一実施形態を例示する。例示される実施形態において、図9に対して上に記載するように、多層製品が製造され(107)、その後、均質化処理(122)され、熱間圧延(126)され、溶体化(140)され、次いで冷間圧延(220)され得る。多層製品は、なかでも、多合金鋳造、ロール圧接、接着接合、溶接、及び冶金的接合によって製造され得る。多層合金鋳造技法としては、Kilmerらに対する米国特許出願公開第20030079856号、Andersonらに対する米国特許出願第20050011630号、Chuらに対する同第20080182122号、及びNovelisに対する国際公開第WO2007/098583号(いわゆるFUSION(商標)鋳造プロセス)に記載されるものが挙げられる。
例えば、第1の層は、本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品であってもよい。第2の層は、別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品(第1のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品と同一の合金、又はそれとは異なる合金であってもよい)を含み、1xxx〜8xxxアルミニウム合金製品のうちのいずれであってもよい。第1及び第2の層は、同一の厚さを有してもよく、又は異なる厚さであってもよい。それゆえ、多層製品は調整された特性を実現し得、第1の層は特性の第1のセットを実現し、第2の層は特性の第2のセットを実現する。多層製品を製造するための少なくとも2つの異なる層の処理を、以下で更に詳細に考察する。
1つのアプローチにおいて、第2の層は、1xxx、3xxx、4xxx、5xxx、及び一部の8xxxアルミニウム合金のうちのいずれかなどの、熱処理可能でない合金を含む。このアプローチにおいて、多層製品は、本明細書に開示する新規プロセスに従って加工されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層と、熱処理可能でない合金、すなわち、AlMgZn−NHT製品の少なくとも第2の層とを含み、このマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金は第1の層であり、NHTは熱処理可能でないアルミニウム合金の第2の層である。
一実施形態において、第2の層は、1xxx、3xxx、5xxx、及び一部の8xxxアルミニウム合金のうちのいずれかなどの、耐食型合金を含む。これらの実施形態において、第1の層は、改善された強度特性を提供し得、第2の層は、耐食特性を提供し得る。熱処理可能でない合金は第2の層として使用されるため、この第2の層は自然時効されなくてもよく、それゆえ、その延性を保持し得る。それゆえ、いくつかの場合には、第2の層は、より高い延性、及び/又は第1の層とは異なる強度を有してもよい。よって、調整された延性差異(又は勾配)及び/又は調整された強度差異(又は勾配)を持つ多層製品が製造され得る。一実施形態において、第2の層は、多層製品の外側層であり、延性変化に対するこの第2の層の耐性は、縁曲げ操作(例えば、なかでも、内側及び/又は外側ドアパネル用途などの、自動車部品シート用途のため)に有用であり得る。一実施形態において、第2の層は、少なくとも3重量%のMgを有する5xxxアルミニウム合金である。第2の層が、1xxx、3xxx、又は5xxxアルミニウム合金であるときなどの一実施形態において、第2の層は、第1のアルミニウム合金層と比べて、改善された外観特性を有するアルミニウム合金を含む。
別のアプローチにおいて、第2の層は、2xxxアルミニウム合金、同一又は別のマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金、6xxxアルミニウム合金、7xxxアルミニウム合金、Al−Li合金、及び一部の8xxxアルミニウム合金、すなわち、AlMgZn−HT製品のうちのいずれかなどの熱処理可能な合金を含み、このマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金(AlMgZn)は熱処理可能なアルミニウム合金の第1の層であり、HTは第2の層である。第2の層は、熱処理可能なアルミニウム合金であるため、本明細書に開示する新規プロセスに従って加工され、従来法で加工された材料よりも改善された特性を実現し得る。しかしながら、第2の層が本明細書に開示する新規プロセスに従って加工される必要はなく、すなわち、熱処理可能な材料の第2の層は、従来法で加工されてもよい。本明細書で使用されるAl−Li合金は、0.25〜5.0重量%のLiを含有する任意のアルミニウム合金である。多層製品を製造するための少なくとも2つの異なる層の処理を、以下で更に詳細に考察する。
一実施形態において、多層製品はAlMgZn(1)−AlMgZn(2)製品であり、AlMgZn(1)は、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層であり、AlMgZn(2)は、マグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第2の層であり、この第2の層は、従来法で加工されてもよいか、又は本明細書に開示するプロセスに従って製造されてもよい。この実施形態において、第1及び第2の層は、少なくとも1つの組成的差異又は少なくとも1つの処理的差異を有する。一実施形態において、AlMgZn(1)は、AlMgZn(2)とは異なる組成を有する。一実施形態において、AlMgZn(1)は、AlMgZn(2)と比べて異なる量の冷間加工を受ける。一実施形態において、AlMgZn(1)は、AlMgZn(2)と比べて異なる熱処理実務を受ける。
一実施形態において、多層製品はAlMgZn−7xxx製品であり、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層であり、7xxxは、本明細書に開示するプロセスに従って製造される場合もされない場合もある、7xxxアルミニウム合金製品の第2の層である。このような多層製品は、なかでも、自動車用途、航空宇宙用途、及び装甲用途において適用性を見出し得る。
一実施形態において、多層製品はAlMgZn−2xxx製品であり、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層であり、2xxxは、本明細書に開示するプロセスに従って製造される場合もされない場合もある、2xxxアルミニウム合金製品の第2の層である。このような多層製品は、なかでも、自動車用途、航空宇宙用途、及び装甲用途において適用性を見出し得る。
一実施形態において、多層製品はAlMgZn−Al−Li製品であり、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層であり、Al−Liは、本明細書に開示するプロセスに従って製造される場合もされない場合もある、Al−Liアルミニウム合金製品の第2の層である。このような多層製品は、なかでも、自動車用途、航空宇宙用途、及び装甲用途において適用性を見出し得る。
一実施形態において、多層製品はAlMgZn−8xxx(HT)製品であり、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の第1の層であり、8xxx(HT)は、本明細書に開示するプロセスに従って製造される場合もされない場合もある、熱処理可能な8xxx(HT)アルミニウム合金製品の第2の層である。このような多層製品は、なかでも、包装用途、自動車用途、航空宇宙用途、及び装甲用途において適用性を見出し得る。
一実施形態において、第2の層は、第1のアルミニウム合金層と比べて改善された溶接性(例えば、スポット溶接に対して)を有するアルミニウム合金を含む。この第2の層は、熱処理可能であるかないかに関わらず、良好な溶接性を有するいかなるアルミニウム合金であってもよい。良好な溶接性を有する合金の例としては、3xxx、4xxx、5xxx、6xxx、及び一部の低Cuの7xxx合金が挙げられる。一実施形態において、第2の層は、第1の層よりも低い融点を有する。それゆえ、第1及び第2の層の溶接中に、第2の層が融解することにより、第1の層と第2の層との間の接合が創出され得る(すなわち、溶接プロセスにより接着接合の創出がもたらされる)。別の実施形態において、第2の層は、第1の層よりも低い抵抗性を有し、これは、スポット溶接用途に有用であり得る。
多層製品は、種々の様式で製造され得る。一実施形態において、第1及び第2の層は、(i)共に創出されるか、(ii)冷間加工工程(200)の前に相互に連結されるかのいずれかである。第1及び第2の層は、Kilmerらに対する米国特許出願公開第20030079856号、Andersonらに対する米国特許出願第20050011630号、Chuらに対する同第20080182122号、及びNovelisに対する国際公開第WO2007/098583号(いわゆるFUSION(商標)鋳造プロセス)に記載される鋳造技法などによって、鋳造中に共に創出されてもよい。第1及び第2の層は、接着接合、ロール結合、及び同様の技法によって、共に連結され得る(すなわち、別個に鋳造され、その後継ぎ合わされ得る)。第1及び第2の層は、冷間加工工程の前は相互に隣接しており、両層は、後続の冷間加工工程(200)よって少なくとも25%の冷間加工をうけることになる。多層製品はその後、続いて熱処理(300)されてもよい。
第2の層は熱処理可能でない合金である一実施形態において、熱処理工程(300)によって、冷間加工したままの状態にあるその第2の層の特性と比べてより高い延性を有するが、強度はより低いこの第2の層がもたらされ得る。逆に、第1の層は本明細書に開示するプロセスに従って加工されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金であるため、この第1の層は、冷間加工したままの状態にある第1の層の特性と比べて、改善された強度及び延性の両方を実現し得る。それゆえ、多層製品は、調整されたより低い強度、多層製品の外側表面上のより高い延性特性を有し得るが、多層製品の内側に向かってより高い強度特性を有し得る。これは、例えば、弾丸による貫通に抵抗する第1の層、及び剥離に抵抗する第2の層を伴って、装甲用途において有用であり得る。
別の実施形態において、第1及び第2の層は、冷間加工工程(200)後及び熱処理工程前に1つに連結される。この実施形態において、各層は、調整された量の溶体化後の冷間加工(第2の層に対しては多少)を受けるが、第1の層は、冷間加工工程(200)によって少なくとも25%の冷間加工を受ける。多層製品はその後、続いて熱処理(300)されてもよい。いくつかの実施形態においては、熱処理工程(300)を使用して、2つの層の連結を達成し得る(例えば、接着接合硬化工程として、つまり、熱処理工程が接着接合を補助し、その工程は、この実施形態において相互に付随して完了され得る)。
更に別の実施形態において、第1及び第2の層は、熱処理工程(300)後に1つに連結される。この実施形態において、各層は、調整された量の冷間加工及び調整された量の熱処理を受け得るが、第1の層は、冷間加工工程(200)によって少なくとも25%の冷間加工を受け、第1の層は、熱処理されて、少なくとも1つの改善された特性(例えば、冷間加工したままの状態と比べた、又はT6質別の製品の基準品と比べた、より高い強度)を達成し得る。
多層製品は、第3の層、又は任意の数の追加の層を含み得る。1つのアプローチにおいて、多層製品は、少なくとも3つの層を含む。一実施形態において、本明細書に開示するプロセスに従って加工されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層は、2つの外側層の間に「サンドイッチ」される。これら2つの外側層は、同一の合金(例えば、両方とも同一の1xxx合金)であり得るか、又はこれら2つの外側層は、異なる合金(例えば、1つは1xxxアルミニウム合金で、他のものは別の型の1xxx合金、別の例としては、1つは1xxx合金で、他のものは5xxx合金、と続く)であり得る。
1つのアプローチにおいて、多層製品はNHT−AlMgZn−NHT製品であり、ここで、上記のように、NHTは熱処理可能でない合金の層を表し、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層である。一実施形態において、多層製品は3xxx−AlMgZn−3xxxであり、外側層は3xxxアルミニウム合金製品であり、内側層は本明細書に開示するプロセスに従って加工されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品である。このような多層製品は、例を挙げると、包装(例えば、容器(缶、ボトル、閉鎖具)、トレー、又は他の構成)において、自動車用途(例えば、パネル又はホワイトボディ)、航空宇宙用途(例えば、胴体スキン、ストリンガ、フレーム、隔壁、スパー、リブなど)、及び海洋構造用途(例えば、隔壁、フレーム、船体、甲板など)において利用を見出し得る。同様に、5xxx−AlMgZn−5xxx製品は、同一又は同様の目的に使用することができる。NHT−AlMgZn−NHTの他の組み合わせを用いてもよく、同一のNHTをAlMgZn層の両側に使用することは必要とされない、すなわち、異なるNHT合金を使用してAlMgZn層をサンドイッチしてもよい。
別のアプローチにおいて、多層製品はAlMgZn(1)−HT−AlMgZn(2)製品であり、ここで、上記のように、HTは熱処理可能な合金の層を表し、AlMgZn(1)及びAlMgZn(2)のうちの少なくとも1つは、本明細書に開示する新規プロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層であり、この層は、同一の組成又は異なる組成を有してもよい。一実施形態において、AlMgZn(1)層及びAlMgZn(2)層の両方は、同一の組成を有し、本明細書に開示する新規プロセスに従って製造される。AlMgZn(1)−HT−AlMgZn(2)、このような製品は、なかでも、クロージャーパネル、ホワイトボディ(BIW)構造、座席システム、又はサスペンション部品などの自動車用途に有用であり得る。このような製品はまた、打上げロケット又はペイロード部品を含む、商用又は軍事航空宇宙用部品においても有用であり得る。このような部品は、小型、中型、若しくは大型トラック構造、又はバスにおける商用輸送製品に更に有用であり得る。AlMgZn−HT−AlMgZn製品は、自動車、トラック、又はバスのためのマルチピースホイールに有用であり得る。このような製品はまた、建材パネルにも有用であり得る。このような製品は、更に装甲部品のために有用であり得る。
別のアプローチにおいて、多層製品はAlMgZn−NHT−AlMgZn製品であり、ここで、上記のように、NHTは熱処理可能でない合金の層を表し、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層である。このような製品は、船舶又はボート、及び水陸両用軍用車両のための海洋用途に使用される部品において有用であり得る。このような製品はまた、なかでも、クロージャーパネル、BIW構造、座席システム、又はサスペンション部品などの自動車用途に有用であり得る。このような製品は、更に包装システム(例えば、容器(缶、ボトル、閉鎖具)、トレー)に有用であり得る。AlMgZn−NHT−AlMgZn製品はまた、照明部品にも有用であり得る。特に、AlMgZn合金がより低い強度のHT合金と組み合わされる場合、これは、自動車の耐衝撃性又はエネルギー吸収用途に有用であり得る。
別のアプローチにおいて、多層製品はHT(1)−AlMgZn−HT(2)製品であり、ここで、上記のように、HTは熱処理可能な合金の層を表し、その層(HT(1)及びHT(2))は、同一又は異なる組成を有してもよく、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層である。このような製品は、打上げロケット又はペイロード部品を含む、商用又は軍事航空宇宙用部品においても有用であり得る。特に、AlMgZn合金がより高い強度のHT合金と組み合わされる場合、これは、自動車の耐衝撃性又はエネルギー吸収用途に有用であり得る。
別のアプローチにおいて、多層製品はHT−AlMgZn−NHT製品であり、ここで、上記のように、HTは熱処理可能な合金の層を表し、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層であり、上記のように、NHTは、熱処理可能でない合金の層を表す。このような製品は、打上げロケット又はペイロード部品を含む、商用又は軍事航空宇宙用部品においても有用であり得る。このような製品はまた、クロージャーパネル、BIW構造、座席システム、又はサスペンション部品における自動車用途に有用であり得る。このような製品は、自動車の耐衝撃性又は他のエネルギー吸収用途に有用であることができる。このような部品は、小型、中型、若しくは大型トラック構造、又はバスにおける商用輸送製品に更に有用であり得る。このような製品は、更に装甲部品のために有用であり得る。
別のアプローチにおいて、多層製品はAlMgZn−NHT−HT製品であり、ここで、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層であり、上記のように、NHTは、熱処理可能でない合金の層を表し、上記のように、HTは、熱処理可能な合金の層を表す。このような製品は、打上げロケット又はペイロード部品を含む、商用又は軍事航空宇宙用部品においても有用であり得る。このような製品はまた、クロージャーパネル、BIW構造、座席システム、又はサスペンション部品における自動車用途に有用であり得る。このような部品は、小型、中型、若しくは大型トラック構造、又はバスにおける商用輸送製品に更に有用であり得る。このような製品は、自動車の耐衝撃性又は他のエネルギー吸収用途に有用であることができる。
別のアプローチにおいて、多層製品はAlMgZn−HT−NHT製品であり、ここで、AlMgZnは、本明細書に開示するプロセスに従って製造されたマグネシウム−亜鉛アルミニウム合金製品の層であり、上記のように、HTは、熱処理可能な合金の層を表し、上記のように、NHTは、熱処理可能でない合金の層を表す。このような製品は、船舶又はボート、及び水陸両用軍用車両のための海洋用途に使用される部品において有用であり得る。このような製品はまた、クロージャーパネル、BIW構造、座席システム、又はサスペンション部品における自動車用途に有用であり得る。このような製品は、更に包装システム(例えば、容器(缶、ボトル、閉鎖具)、トレー)に有用であり得る。このような製品はまた、建材パネルにも有用であり得る。このような製品は、更に装甲部品のために有用であり得る。AlMgZn−HT−NHT製品はまた、照明部品にも有用であり得る。
1つのアプローチにおいて、本方法は、鋳造後にアルミニウム合金体が、第1の熱処理可能な合金の第1の層、及び第2の熱処理可能な合金か熱処理可能でない合金かいずれかの第2の層を含む、アルミニウム合金体の鋳造(例えば、共同所有のChuらに対する米国特許公開第US2010/0247954号(この特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される技法を使用して)、(b)アルミニウム合金体の溶体化、(c)アルミニウム合金体中に少なくとも25%の冷間加工を誘導する、アルミニウム合金体の冷間加工、並びに(d)アルミニウム合金体の熱処理を含む。それゆえ、第1の層及び第2の層を有するアルミニウム合金体が製造され得、その層は相互に異なり得る。一実施形態において、第2の層は、第2の熱処理可能な合金を含む。一実施形態において、第2の熱処理可能な合金は、第1の熱処理可能な合金とは異なる。別の実施形態において、第2の熱処理可能な合金は、第1の熱処理可能な合金と同一である(しかし、層は異なる)。このアルミニウム合金体は、上記の特性の節(節H)に記載する特性のうちのいずれかなどの、改善された強度、延性、又は他の特性を実現し得る。一実施形態において、本方法は、熱処理工程の後に、少なくとも第1及び第2の層を有するこのアルミニウム合金体を有する組立品を組立てることを含む。一実施形態において、少なくとも第1及び第2の層を有するこのアルミニウム合金体は、装甲部品である。別の実施形態において、少なくとも第1及び第2の層を有するこのアルミニウム合金体は、自動車部品である。
別の実施形態において、本方法は、アルミニウム合金体の鋳造を含み、鋳造の後に、アルミニウム合金体は、第1の領域が第1の組成を含み、第2の領域が第2の組成を含む、組成勾配を含み、第2の組成は、第1の組成とは単に名目上異なるだけではない(例えば、単なるマクロ偏析効果を超えた組成勾配)。このようなアルミニウム合金体を製造するために利用可能な技法は、共同所有のSawtellらに対する米国特許出願第2010/0297467に記載され、この特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、第1の組成は、それを熱処理可能なアルミニウム合金とする(すなわち、析出硬化が可能である)組成であり、合金体の第2の領域は、第1の領域の熱処理可能な合金とは名目上異なるだけではない組成を有する。一実施形態において、連続濃度勾配は、第1の領域と第2の領域との間に存在する。第1の領域と第2の領域との間の連続濃度勾配は、線形であるか、又は指数関数的であってもよい。一実施形態において、アルミニウム合金体は、第3の領域を含む。一実施形態において、第3の領域は、第1の領域と同一の濃度を含み、第2の領域によって第1の領域から分離される。一実施形態において、第1の領域と第2の領域との間の濃度勾配は、線形である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、第2の領域と第3の領域との間の濃度勾配は、線形である。実施形態のうちのいくつかにおいて、第2の領域と第3の領域との間の濃度勾配は、指数関数的である。一実施形態において、意図的な組成勾配を有するアルミニウム合金体は、溶体化され、その後、アルミニウム合金体中で少なくとも25%の冷間加工を誘導するように冷間加工され、その後、熱処理され得る。それゆえ、調整された組成勾配を有するアルミニウム合金体が製造され得る。このアルミニウム合金体は、上記の特性の節(節H)に記載する特性のうちのいずれかなどの、改善された強度、延性、又は他の特性を実現し得る。一実施形態において、本方法は、熱処理工程の後に、第1の領域及び第2の領域を有するこのアルミニウム合金体を有する組立品を組立てることを含む。一実施形態において、少なくとも第1及び第2の領域を有するこのアルミニウム合金体は、装甲部品である。別の実施形態において、第1及び第2の領域を有するこのアルミニウム合金体は、自動車部品である。別の実施形態において、第1及び第2の領域を有するこのアルミニウム合金体は、航空宇宙用部品である。
上述のように、任意の数の追加のアルミニウム合金層が、上に記載の多層アプローチ及び/又は実施形態のうちのいずれにおいても使用され得る。また更に、任意の数の非アルミニウム合金層(例えば、プラスチック層、樹脂/繊維層)が、上に記載の多層アプローチ及び/又は実施形態のうちのいずれにおいても付加され得る。また更に、上に記載の多層製品のうちのいずれも、上記の冷間加工の節(節B(iii))に記載する冷間加工勾配処理技法と共に用いられ得る。
本明細書に開示する新規プロセスによって作製される製品で用いられ得る多層製品スタイルの例としては、例えば、Chuらに対する米国特許出願公開第2008/0182122号、Chuらに対する同第2010/0247954号、Kamatらに対する同第2010/0279143号、Chuらに対する同第2011/0100579号、及びRiojaらに対する同第2011/0252956号に記載されるものが挙げられる。
J.組み合わせ
節A、B、C、及びFにおいてそれぞれ上に記載した、調製、冷間加工、熱処理、及び任意選択の最終処理の装置及び方法論は、本明細書に記載するような任意の好適な様式で組み合わされて、節D及びHに記載した改善されたアルミニウム合金体及び/又は特性のうちのいずれか、節Eに記載したミクロ構造のうちのいずれかを達成し、かつ節A〜Iのうちのいずれかに記載したアルミニウム合金体及び製品のうちのいずれかを達成してもよく、節Gに提供された組成は、このようなアルミニウム合金体を獲得するように、場合に応じて調整され得る。それゆえ、これら節A〜Iに記載した方法論及び装置の全てのこのような組み合わせは、このような目的のために組み合わせ可能であると認識され、従って、このような発明の組み合わせを保護するために、任意の好適な組み合わせで組み合わされ、特許請求され得る。また更に、この新たな技術のこれら及び他の態様、利点、並びに新規特徴は、以下の説明において一部示され、説明及び図面を考察すれば当業者には明白となるか、又は特許出願によって提供される技術の1つ以上の実施形態を実践することにより、習得され得る。