JP6429321B2 - ウェーハの製造方法及びマルチワイヤ放電加工装置 - Google Patents

ウェーハの製造方法及びマルチワイヤ放電加工装置 Download PDF

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Description

本発明は、ウェーハの製造方法及びマルチワイヤ放電加工装置に関する。
従来、円柱状インゴットからウェーハを切り出す場合等における切断手段として、砥粒を用いたワイヤーソーが知られている。しかし、このようなワイヤーソーでは、加工用砥粒が混合された加工液(スラリー)を同時に供給する必要があり、その取扱いは容易でない。また、ワイヤがワークに直接接触するため、特に硬度の高いSiC(炭化ケイ素)等の場合、加工中にワイヤが断線するおそれがあり、断線が生じた場合には復旧までに長時間を要する不都合があった。
そこで、マルチワイヤ放電加工装置が発案された。放電加工によりワイヤとインゴットは接触していないため、インゴットにかかる負荷が非常に低く、スラリーによるスクラッチ等の傷も発生しない。
マルチワイヤ放電加工では、加工により発生する切削屑がワイヤとインゴットの間に滞留すると、切削屑を介して放電が集中したり、集中放電により加熱したワイヤが切れたりする問題がある。
そこで、インゴットの両側に加工液供給手段(ノズル)を配設し、インゴットの両側から加工溝に加工液を供給して切削屑を除去する方法が採られている。
200μm以下という非常に狭い幅の加工溝に加工液を供給するため、強力な勢いで加工液を送り込む必要がある。また、ワイヤとインゴットとの更に狭い隙間に加工液を送り込んで切削屑を除去する必要があるため、切削屑を除去することは容易ではない。そこで、インゴットを揺動し、インゴットとワイヤを適宜近接させて、切削屑を除去しつつ加工を行う方法が考案された(特許文献1)。
特開2012−240128号公報
しかしながら、インゴットを揺動させながらインゴットの両側から加工液を供給すると、両側から供給する加工液が衝突して対流を起こすことで、逆に切削屑の除去を阻害する要因となってしまう問題がある。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加工液供給手段から供給される加工液が衝突して対流が発生し、切削屑を除去する効果が落ちることを抑制するウェーハの製造方法及びマルチワイヤ放電加工装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るウェーハの製造方法は、ワイヤでインゴットを放電加工しウェーハにスライスするウェーハの製造方法であって、間隔をおいて隣接する複数のガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻き掛けられたワイヤと、インゴットを固定する基台部と、該基台部に固定されたインゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該ワイヤと該基台部とを相対的に加工送りさせる駆動手段と、該ワイヤと該基台部に固定されたインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、インゴットを挟んだ該ワイヤの走行方向の前後に配設され該ワイヤに沿ってインゴットに加工液を噴射する一対の加工液供給手段と、を備えたマルチワイヤ放電加工装置を用い、該ワイヤとインゴットとを加工送りさせつつ、インゴットの切断面に沿ってインゴットが任意の角度で天秤のごとく揺動するよう該ワイヤとインゴットとを相対移動して加工する加工ステップにおいて、揺動動作によって該ワイヤとインゴットとの距離が離間する側の該加工液供給手段は、供給する該加工液の量を減少させる、又は停止させることを特徴とする。
また、本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置は、ワイヤでインゴットを放電加工しウェーハにスライスするマルチワイヤ放電加工装置であって、間隔をおいて隣接する複数のガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻き掛けられたワイヤと、インゴットを固定する基台部と、該基台部に固定されたインゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該ワイヤと該基台部とを相対的に加工送りさせる駆動手段と、該ワイヤと該基台部に固定されたインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、インゴットを挟んだ該ワイヤの走行方向の前後に配設され該ワイヤに沿ってインゴットに加工液を噴射する一対の加工液供給手段と、構成要素を制御する制御手段と、を備え、該駆動手段は、該ワイヤとインゴットとを加工送りさせつつ、インゴットの切断面に沿ってインゴットを任意の角度で天秤のごとく揺動させ、該制御手段は、揺動動作によって該ワイヤとインゴットとの距離が離間する側の該加工液供給手段から供給する該加工液の量を減少させる、又は停止させることを特徴とする。
本発明のウェーハの製造方法及びマルチワイヤ放電加工装置によれば、揺動動作によってワイヤとインゴットとの距離が離間する側の加工液供給手段が、供給する加工液の量を減少又は停止させることで、両方の加工液供給手段から供給される加工液が衝突して対流し、切削屑を除去する効果が落ちることを抑制する効果を奏する。また、加工液の使用量を削減できる。
図1は、マルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す正面図である。 図2は、加工液供給手段の構成例を示す断面図である。 図3は、マルチワイヤ放電加工装置の動作例を示すフローチャートである。 図4は、加工液供給手段の動作例(その1)を示す正面図である。 図5は、加工液供給手段の動作例(その2)を示す正面図である。 図6は、加工液供給手段の動作例(その3)を示す側面図である。 図7は、加工液供給手段の動作例(その4)を示す一部拡大図である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態〕
実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置について説明する。図1は、マルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す正面図である。図2は、加工液供給手段の構成例を示す断面図である。
マルチワイヤ放電加工装置1は、ワイヤRでインゴットIを放電加工してウェーハに切断(スライス)するものである。マルチワイヤ放電加工装置1は、図1に示すように、繰り出しボビン10と、ガイドローラ部20と、巻き取りボビン30と、切断ワイヤ部40と、基台部50と、直動機構60と、揺動機構70と、加工槽80と、給電手段90と、一対の加工液供給手段100A,100Bと、移動手段110と、制御手段120とを備えている。
繰り出しボビン10は、ワイヤRをガイドローラ部20に繰り出すものである。繰り出しボビン10には、放電加工に用いられる黄銅などの金属線である未使用のワイヤRが巻き回されている。
ガイドローラ部20は、繰り出しボビン10の近傍に配設され、ワイヤRを案内するものである。ガイドローラ部20は、円柱状のガイドローラ21〜24を備えている。4個のガイドローラ21〜24は、その軸方向が平行で、矩形の形状を成すようにそれぞれが矩形の角に配設されている。
ガイドローラ21とガイドローラ22で形成される線分と、ガイドローラ24とガイドローラ23で形成される線分は平行になるように配設されている。ガイドローラ21〜24は、繰り出しボビン10から繰り出されたワイヤRを複数回掛け回して巻き取りボビン30に送り出す。巻き取りボビン30は、ガイドローラ部20の近傍に配設され、ガイドローラ部20から送り出された使用済みのワイヤRを巻き取るものである。
繰り出しボビン10、ガイドローラ21〜24及び巻き取りボビン30は、図示しないモータによって回転駆動される。なお、全てのガイドローラ21〜24をモータ駆動とする必要はなく、例えばガイドローラ22,24を従動ローラとしてもよい。
ここで、Y軸方向は、ガイドローラ21〜24の軸方向である。X軸方向は、Y軸方向に同一水平面上で直交し、ワイヤRが走行する第1の方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向、すなわち鉛直方向であり、ワイヤRが走行する第2の方向である。
繰り出しボビン10は、図示しないモータによって回転駆動され、ワイヤRをガイドローラ21に対して繰り出す。ガイドローラ21は、繰り出しボビン10から繰り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ22に送り出す。ガイドローラ22は、ガイドローラ21から送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ23に送り出す。ガイドローラ23は、ガイドローラ22から送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ24に送り出す。ガイドローラ24は、ガイドローラ23から送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ21に送り出す。これにより、ガイドローラ21〜24にワイヤRが1周巻き掛けられたことになる。
ワイヤRは、ガイドローラ21〜24の軸方向(Y軸方向)に一定の間隔をあけて複数回、例えば8回巻き掛けられている。ガイドローラ22に最後に巻き掛けられたワイヤRは、巻き取りボビン30に送り出されて巻き取られる。このように、ワイヤRは、ガイドローラ21〜24の軸方向に一定の間隔をあけて複数回、例えば8回巻き掛けられ、ガイドローラ21〜24の間で並列してX軸方向及びZ軸方向に走行する。
切断ワイヤ部40は、インゴットIを切断する箇所であり、X軸方向に隣接する一対のガイドローラ23とガイドローラ24との間に一定のテンションを有して張設された複数本、例えば8本の並列するワイヤRによって構成される。切断ワイヤ部40を構成するワイヤRの間隔は0.5mm〜数mm程度である。インゴットIは、このワイヤRの間隔で切断される。インゴットIは導電性がある材料であり、SiC、単結晶ダイヤ、シリコン、GaN(窒化ガリウム)等から形成されている。この例では、インゴットIの形状は円柱である。
基台部50は、インゴットIを固定するものであり、切断ワイヤ部40に対向した位置に配設されている。例えば、基台部50は、切断ワイヤ部40の上方に配設され、装置本体2に対してZ軸方向に上下動自在に配設されている。基台部50は、基台51と、取り付け板52とを備えている。基台51には、Z軸方向の下側に取り付け板52が固定されている。取り付け板52には、図示しない導電性接着剤により、インゴットIの周面が固定される。
直動機構60及び揺動機構70は、駆動手段であり、ワイヤRとインゴットIとを加工送りさせつつ、インゴットIの切断面I(図4等参照)に沿ってインゴットIを任意の角度で天秤のごとく揺動させるものである。直動機構60は、基台部50の取り付け板52に固定されたインゴットIを加工送り方向(Z軸方向)に移動させる。例えば、直動機構60は、Z軸方向に平行に延在される図示しないボールねじと、パルスモータ等で構成される駆動源とを有する。直動機構60は、ボールねじのナットに固定された基台部50を加工送り方向に移動させ、基台部50の取り付け板52に固定されたインゴットIの周面を切断ワイヤ部40のワイヤRに切り込ませる。
揺動機構70は、Y軸方向を回転軸とし、揺動の回転支点Pには、インゴットIの中心が位置合わせされる。揺動機構70は、基台部50に配設され、基台部50を回転させるための図示しない歯車と、歯車を回転させる図示しないパルスモータとを備えている。パルスモータを正転又は逆転させ、回転支点PをY軸方向に通る回動軸回りに基台部50を回転させてインゴットIを揺動させる。インゴットIを揺動させる揺動速度は、0.5°/s〜5°/s程度である。インゴットIを揺動させる揺動角度は、回転支点PをZ軸方向に通る直線を始線L(0°)としたとき、始線Lに対してプラス方向Lに5°以下程度であり、マイナス方向Lに5°以下程度である。
加工槽80は、誘電体である純水や油などの加工液Fが貯留されている。加工槽80の中には、切断ワイヤ部40のワイヤRが浸漬されている。放電加工は、切断ワイヤ部40のワイヤRが浸漬された状態で実施される。
加工槽80の底には、ウェーハを収容するための籠81が配置されている。籠81は、インゴットIの真下に配置されている。籠81は、インゴットIのサイズよりも大きく形成され、一定の深さを有している。基台51の取り付け板52に固定されたインゴットIが切断されて分離されたウェーハは、沈下して籠81に収容される。
給電手段90は、ワイヤRに高周波パルス電力を供給するものである。給電手段90は、高周波パルス電源ユニット91と、2個の電極92とを備えている。高周波パルス電源ユニット91は、基台51に接続され、基台51を介してインゴットIにプラスの高周波パルス電力を供給する。また、高周波パルス電源ユニット91は、2個の電極92に接続されている。一方の電極92は、ガイドローラ21とガイドローラ24との間に張設されるワイヤRに接続され、他方の電極92は、ガイドローラ22とガイドローラ23との間に張設されるワイヤRに接続されている。高周波パルス電源ユニット91は、2個の電極92を介してマイナスの高周波パルス電力をワイヤRに供給する。
高周波パルス電源ユニット91から高周波パルス電力を供給して、ワイヤRとインゴットIとの極間に電圧を印加すると、切断ワイヤ部40のワイヤRは、正面に配置されたインゴットIに対して放電を行う。例えば、加工槽80の液中で絶縁状態にあるインゴットIとワイヤRの間隔が数十μm位まで接近すると、インゴットIとワイヤRの絶縁が破壊されて放電が発生する。この放電によってインゴットIが加熱されて溶融され、さらに加工液Fの温度が急激に上昇することにより加工液Fが気化し、体積膨張によって溶融箇所を飛散させる。このように、高周波パルス電力を供給して極間に電圧を印加することで、ワイヤRによりインゴットIを溶融すると共に飛散させる処理を断続的に行ってインゴットIを切断する。このとき、インゴットIとワイヤRとの隙間には、切削屑U(図7参照)が発生する。
一対の加工液供給手段100A,100Bは、インゴットIを挟んだワイヤRの走行方向(X軸方向)の前後に配設され、ワイヤRに沿ってインゴットIに加工液Fを噴射して切削屑Uを除去するものである。加工液供給手段100Aは、図2に示すように、筐体101と、ノズル部102と、防振挟持部103とを備えている。ノズル部102及び防振挟持部103は、筐体101内に収容されている。
ノズル部102は、筐体101の前面101a側に設けられ、加工液FをインゴットIに向けて噴射する噴射口102aと、噴射口102aに連結され、筐体101内に設けられた中空部102bと、加工液Fを中空部102bに供給する供給配管102cと、供給配管102cを中空部102bに取り付ける配管取付部102dとを備えている。
噴射口102aは、矩形状に形成され、ワイヤRが噴射口102aを通過するように開口されている。噴射口102aの長手方向の長さは、並列するワイヤRの並列方向の長さよりも若干長く設定され、噴射口102aの短手方向の長さは、ワイヤRが接触しない程度の長さに設定されている。これにより、噴射口102aからワイヤRに沿って加工液Fが直線状に噴射されるようになる。供給配管102cは、一端が配管取付部102dを介して中空部102bに接続され、他端が図示しない加工液供給部に接続されている。加工液供給部から所定の液圧で加工液Fが供給され、加工液供給部から供給された加工液Fは、供給配管102cを経由して中空部102b内に満たされて噴射口102aからワイヤRに沿ってインゴットIに向けて直線状に噴射される。
防振挟持部103は、ノズル部102の後方に設けられた収容部101bに配設されている。すなわち、インゴットIから見て、最初にノズル部102が配設され、次に防振挟持部103が配設されている。防振挟持部103は、並列するワイヤRをZ軸方向から挟む一対の弾性部材103aを備えている。弾性部材103aは、フェルトやウレタンゴム等から形成され、直方体の形状を成している。弾性部材103aは、長手方向の長さが、並列するワイヤRの並列方向(Y軸方向)の長さよりも長く形成されている。弾性部材103aは、収容部101bに収容され、並列する8本のワイヤRをZ軸方向から挟持して、8本のワイヤRに接触している。なお、加工液供給手段100Bも、加工液供給手段100Aと同じ構成であり、ノズル部102及び防振挟持部103を備えている。
移動手段110は、インゴットIの外周面に沿って一対の加工液供給手段100A,100BをX軸方向に移動させてインゴットIの近傍に位置付けるものである。移動手段110は、加工液供給手段100A,100Bを支持するブラケット111と、ワイヤRの走行方向(X軸方向)に対して平行に延在される図示しないボールねじと、パルスモータ等で構成される駆動源とを有し、ボールねじのナットにはブラケット111が固定されている。
ブラケット111の形状は直方体であり、長手方向がZ軸方向を向くように装置本体2に取り付けられている。それぞれのブラケット111の下端側には加工液供給手段100A,100Bの各々が取り付けられ、ブラケット111の上端側は、ボールねじのナットに固定されている。装置本体2には、ブラケット111がX軸方向に移動する範囲において、長穴112が開口されている。移動手段110は、ボールねじのナットに固定されたブラケット111を、長穴112に沿ってワイヤRの走行方向(X軸方向)に移動させる。
移動手段110は、インゴットIとワイヤRとの隙間の切削屑Uを効果的に除去するために、インゴットIに対して最短距離をとるように、加工液供給手段100A,100BをワイヤRの走行方向(X軸方向)に進退移動させる。例えば、ワイヤRにより切断するインゴットIの加工長に応じて、加工液供給手段100Aと加工液供給手段100Bの間隔は決定される。例えば、加工送り方向(Z軸方向)において、切断するインゴットIの入口側では、切断するインゴットIの加工長が中心付近より短いため、加工液供給手段100A,100Bの間隔は短くなる。一方、切断するインゴットIの中心付近では、切断するインゴットIの加工長が入口側より長いため、加工液供給手段100A,100Bの間隔は長くなる。
制御手段120は、高周波パルス電源ユニット91に接続され、高周波パルス電力の周波数などを制御する。また、制御手段120は、直動機構60及び揺動機構70に接続され、インゴットIを揺動させながら加工送り方向に移動させる。例えば、制御手段120は、揺動機構70のパルスモータの駆動回路に正転パルス信号又は逆転パルス信号を出力して、インゴットIを正転又は逆転させて揺動させる。また、制御手段120は、加工液供給手段100A,100B及び移動手段110に接続され、加工液Fの供給や加工液供給手段100A,100Bの位置を制御する。
次に、マルチワイヤ放電加工装置1を用いてウェーハを製造する方法について説明する。図3は、マルチワイヤ放電加工装置の動作例を示すフローチャートである。図4は、加工液供給手段の動作例(その1)を示す正面図である。図5は、加工液供給手段の動作例(その2)を示す正面図である。図6は、加工液供給手段の動作例(その3)を示す側面図である。図7は、加工液供給手段の動作例(その4)を示す一部拡大図であり、図6に示す囲い部分Jの拡大図である。
先ず、制御手段120は、高周波パルス電源ユニット91を制御して、インゴットIとワイヤRに高周波パルス電力を供給する(図3に示すステップS1)。
次に、制御手段120は、直動機構60及び揺動機構70を制御して、インゴットIを揺動させながら加工送り方向に移動させる(ステップS2)。例えば、制御手段120は、直動機構60のパルスモータの駆動回路にパルス信号を出力してインゴットIをZ軸方向に下降させる。また、制御手段120は、揺動機構70のパルスモータの駆動回路に一定数の正転パルス信号を連続して出力し、インゴットIをプラス方向Lに回転させる。さらに、制御手段120は、揺動機構70のパルスモータの駆動回路に一定数の逆転パルス信号を連続して出力し、インゴットIをマイナス方向Lに回転させる。制御手段120は、連続する正転パルス信号及び逆転パルス信号を繰り返し出力して、インゴットIを所定の角度で揺動させる。インゴットIとワイヤRが接近すると、インゴットIとワイヤRの絶縁が破壊されて放電が発生し、インゴットIが溶融されて切断される(ステップS3)。
次に、制御手段120は、インゴットIがプラス方向L又はマイナス方向Lのいずれに揺動されているかを判断する(ステップS4)。例えば、制御手段120は、正転パルス信号及び逆転パルス信号の出力回数に基づいてインゴットIがプラス方向L又はマイナス方向Lに揺動しているかを判断する。正転パルス信号及び逆転パルス信号の出力回数の差がゼロの場合、インゴットIは、始線L(0°)に位置しており、プラス方向Lにもマイナス方向Lにも揺動していない。制御手段120は、正転パルス信号の出力回数が逆転パルス信号の出力回数よりも多ければ、図4に示すように、インゴットIがプラス方向Lに揺動していると判断する。このとき、インゴットIの加工領域M1は、インゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が離間するので放電加工が実施されない。一方、インゴットIの加工領域K1は、インゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が接近するので放電加工が実施される。
また、制御手段120は、正転パルス信号の出力回数が逆転パルス信号の出力回数よりも少なければ、図5に示すように、インゴットIがマイナス方向Lに揺動していると判断する。このとき、インゴットIの加工領域M2は、インゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が離間するので放電加工が実施されない。一方、インゴットIの加工領域K2は、インゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が接近するので放電加工が実施される。
制御手段120は、インゴットIがプラス方向Lに揺動していると判断した場合(ステップS4:YES)、図4に示すように、揺動によってインゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が接近する側に位置する加工液供給手段100Bから加工液FをインゴットIに向けて噴射させる(ステップS5)。さらに、制御手段120は、揺動によってワイヤRとインゴットIとの距離が離間する側に位置する加工液供給手段100Aから噴射する加工液Fを停止させる。加工液供給手段100Aから噴射する加工液Fは停止されているので対流が発生せず、加工液供給手段100Bから噴射された加工液Fは、ワイヤRに沿って一方向に流動する。加工液供給手段100Bから噴射されて一方向に流動する加工液Fは、図6及び図7に示すように、インゴットIとワイヤRとの隙間に存在する切削屑Uを流して加工溝Dから除去する。
次に、制御手段120は、インゴットIを完全に切断したか否かを判断する(ステップS6)。例えば、制御手段120は、直動機構60によりインゴットIを加工送り方向に移動させた移動距離と、インゴットIの切断距離の基準を示す基準値とを比較して、移動距離が基準値を超えていれば、インゴットIが完全に切断されてウェーハが形成されたと判断する。インゴットIを完全に切断後、図示しない移動手段により、インゴットIをウェーハの厚さ方向(Y軸方向)に移動させて、ウェーハを基台部50の取り付け板52から分離し、分離したウェーハを籠81に収容して放電加工処理を終了する(ステップS6:YES)。また、移動距離が基準値を超えていなければ、インゴットIが完全に切断されていないと判断して(ステップS6:NO)、上述のステップS4に戻って、インゴットIがプラス方向L又はマイナス方向Lのいずれに揺動しているかを判断する。なお、ワイヤRとインゴットIに流れる電力量によって放電が発生しているか否かを判定し、インゴットIが完全に切断されたと判断しても良い。
制御手段120は、図5に示すように、インゴットIがマイナス方向Lに揺動していると判断した場合(ステップS4:NO)、揺動によってインゴットIとワイヤRのZ軸方向の距離が接近する側に位置する加工液供給手段100Aから加工液FをインゴットIに向けて噴射すると共に、揺動によってワイヤRとインゴットIとの距離が離間する側に位置する加工液供給手段100Bから噴射する加工液Fを停止させる(ステップS7)。
以上のように、実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置及びウェーハの製造方法によれば、揺動によってワイヤRとインゴットIとの距離が離間する側の加工液供給手段100A(又は加工液供給手段100B)は、噴射する加工液Fを停止させるものである。
これにより、両側の加工液供給手段100A,100Bから同時に加工液Fが噴射されないので、加工液Fが相反する方向へ流れず、噴射された加工液Fが衝突することを防止できる。従って、噴射された加工液Fにより対流が発生せず、インゴットIの加工溝Dに向けて噴射された加工液Fの勢いが持続するので、噴射された加工液Fは、インゴットIとワイヤRとの隙間に存在する切削屑Uを勢いよく流して除去することができる。
また、インゴットIを揺動させることにより、インゴットIが加工される領域が絞られる(加工領域K1,K2)。例えば、加工領域K1に近い側に位置する加工液供給手段100Bから加工領域K1に対して集中的に加工液Fを噴射できるので、加工領域K1の切削屑Uを効果的に除去できる。さらに、揺動によりインゴットIが加工されていない加工領域M1には、インゴットIとワイヤRとの間に隙間が生じているので、加工液供給手段100Bから加工領域K1に噴射された加工液Fは、加工領域K1の切削屑Uと共に反対側の加工領域M1の隙間に勢いよく流れ出すので、切削屑Uを効果的に除去できる。これにより、切削屑Uによる放電加工の精度低下を抑制できる。
〔変形例〕
ワイヤRとインゴットIとの距離が離間する側の加工液供給手段100A(又は、加工液供給手段100B)から噴射する加工液Fを停止させる制御に限定されない。例えば、ワイヤRとインゴットIとの距離が離間する側の加工液供給手段100A(又は、加工液供給手段100B)から噴射する加工液Fの量を、ワイヤRとインゴットIとの距離が離間しない側の加工液供給手段100B(又は、加工液供給手段100A)から噴射される加工液Fの量よりも減少させるように制御してもよい。
また、加工液供給手段100A,100Bは、ノズル部102及び防振挟持部103を備えている例を説明したが、ノズル部102のみを備える構成としてもよい。
また、Z軸方向の上方から下方に向けてインゴットIを移動させて放電加工を実施したが、Z軸方向の下方から上方に向けてインゴットIを移動させて放電加工を実施してもよい。
また、切断ワイヤ部40のワイヤRをX軸方向に走行するように配設したが、切断ワイヤ部40のワイヤRをZ軸方向に走行するように配設してもよい。この場合、加工液供給手段100A,100Bは、Z軸方向にインゴットIの両側に配設され、インゴットIの外周面に沿ってZ軸方向にお互いが接近又は離間するように移動する。
また、基台部50の取り付け板52に固定されたインゴットIの中心位置を回転支点Pとしたが、これに限定されない。例えば、基台51の所定位置を回転支点PにしてインゴットIを揺動させてもよい。この場合、インゴットIの中心と回転支点Pとの位置がずれるため、インゴットIは振り子のごとく揺動される。
また、基台部50に固定されたインゴットIを揺動させたが、インゴットIを固定して切断ワイヤ部40をインゴットIの切断面Iに沿って天秤のごとく揺動させるようにしてもよい。
1 マルチワイヤ放電加工装置
40 切断ワイヤ部
50 基台部
60 直動機構
70 揺動機構
80 加工槽
91 高周波パルス電源ユニット
92 電極
100A,100B 加工液供給手段
102 ノズル部
102a 噴射口
103 防振挟持部
D 加工溝
F 加工液
I インゴット
K1,K2 加工領域
L 始線
プラス方向
マイナス方向
P 回転支点
R ワイヤ
U 切削屑

Claims (2)

  1. ワイヤでインゴットを放電加工しウェーハにスライスするウェーハの製造方法であって、
    間隔をおいて隣接する複数のガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻き掛けられたワイヤと、インゴットを固定する基台部と、該基台部に固定されたインゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該ワイヤと該基台部とを相対的に加工送りさせる駆動手段と、該ワイヤと該基台部に固定されたインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、インゴットを挟んだ該ワイヤの走行方向の前後に配設され該ワイヤに沿ってインゴットに加工液を噴射する一対の加工液供給手段と、を備えたマルチワイヤ放電加工装置を用い、
    該ワイヤとインゴットとを加工送りさせつつ、インゴットの切断面に沿ってインゴットが任意の角度で天秤のごとく揺動するよう該ワイヤとインゴットとを相対移動して加工する加工ステップにおいて、
    揺動動作によって該ワイヤとインゴットとの距離が離間する側の該加工液供給手段は、供給する該加工液の量を減少させる、又は停止させることを特徴とするウェーハの製造方法。
  2. ワイヤでインゴットを放電加工しウェーハにスライスするマルチワイヤ放電加工装置であって、
    間隔をおいて隣接する複数のガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻き掛けられたワイヤと、インゴットを固定する基台部と、該基台部に固定されたインゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該ワイヤと該基台部とを相対的に加工送りさせる駆動手段と、該ワイヤと該基台部に固定されたインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、インゴットを挟んだ該ワイヤの走行方向の前後に配設され該ワイヤに沿ってインゴットに加工液を噴射する一対の加工液供給手段と、構成要素を制御する制御手段と、を備え、
    該駆動手段は、該ワイヤとインゴットとを加工送りさせつつ、インゴットの切断面に沿ってインゴットを任意の角度で天秤のごとく揺動させ、
    該制御手段は、揺動動作によって該ワイヤとインゴットとの距離が離間する側の該加工液供給手段から供給する該加工液の量を減少させる、又は停止させることを特徴とするマルチワイヤ放電加工装置。
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